§E19.3正則曲面・接平面・向き

最終更新

曲面を扱うには、曲線のときと同じ選択を一段複雑な形で行わなければならない。パラメータ表示を対象にすると、同じ図形に無数の表示があり、どの量が図形の性質かが分からない。逆に部分集合だけを対象にすると、微分することができない。曲線では、区間からR3\mathbb{R}^3への写像そのものを対象に取り、パラメータの取り替えで変わらない量を分離した。曲面では、二変数のパラメータ表示を一枚では全体に及ぼすことができないので、部分集合を対象に取り、局所的な表示の全体をその上に載せるという順序で構成する。

本記事は正則曲面を「三次元 Euclid 空間の二次元埋め込み部分多様体」として定義する。「多様体入門」が用意した埋め込み部分多様体の定義を使うので、曲面は最初から可微分構造を持つ。そのうえで、この定義が「各点の近傍が正則パラメータ表示の像である」という条件と同値であることを示し、二つの表示の間の座標変換が滑らかな微分同相であることを定数階数定理から導く。この一点を確立すると、以後の記事は座標で計算した量が座標の取り替えで正しく振る舞うかどうかだけを確かめればよくなる。

本記事で実際に示すのは次の六つである。第一に、正則曲面と正則パラメータ表示による特徴づけの同値性を示す。第二に、正則パラメータ表示の像が曲面の開集合であること、および座標変換が滑らかな微分同相であることを示す。第三に、グラフと正則値の逆像が曲面を与えること、および正則曲面が局所的にグラフであることを示す。第四に、その帰結として、頂点を含む円錐が正則曲面でないことを示す。第五に、接平面を微分の像として定め、表示に依らないこと、および曲面上の曲線の速度ベクトルの全体に一致することを示す。第六に、向きを連続な単位法線ベクトル場として定め、Möbius の帯が向きづけ可能でないことを示す。

R3\mathbb{R}^3の標準内積を⟨ , ⟩\langle\ ,\ \rangle、ノルムを∥ ∥\lVert\ \rVertと書く。ベクトル積×\timesは§E19.2 定義 1.1のものであり、その基本性質は§E19.2 補題 1.2を用いる。R3\mathbb{R}^3のチャートとは、開集合Ω⊆R3\Omega\subseteq\mathbb{R}^3と、開集合φ(Ω)⊆R3\varphi(\Omega)\subseteq\mathbb{R}^3へのC∞C^\infty微分同相φ ⁣:Ω→φ(Ω)\varphi\colon\Omega\to\varphi(\Omega)の対(Ω,φ)(\Omega,\varphi)をいう。R2\mathbb{R}^2の開集合についても同様である。断りのない「滑らか」はC∞C^\inftyを指す。

1 正則曲面と正則パラメータ表示

定義 1.1. 部分集合M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3が正則曲面 (regular surface) であるとは、MMが§E17.5 定義 4.1の意味でR3\mathbb{R}^3の22次元埋め込み部分多様体であること、すなわち各p∈Mp\in Mに対してR3\mathbb{R}^3のチャート(Ω,φ)(\Omega,\varphi)であってp∈Ωp\in\Omegaかつ

φ(Ω∩M)=φ(Ω)∩(R2×{0})\varphi(\Omega\cap M)=\varphi(\Omega)\cap\bigl(\mathbb{R}^2\times\{0\}\bigr)

を満たすものが存在することをいう。ここでR2×{0}={x∈R3∣x3=0}\mathbb{R}^2\times\{0\}=\{x\in\mathbb{R}^3\mid x_3=0\}である。このようなチャートをスライスチャート (slice chart) という。

MMにはR3\mathbb{R}^3からの部分空間位相を与える。§E17.5 命題 4.2により、MMはこの位相について22次元C∞C^\infty多様体になる。

注意 1.2 (別の流儀との違い). 「実解析 II」は面積分を扱うために§E4.20 定義 2.3として別の意味の正則曲面を定義している。そちらは階数が11または22の場合をまとめて扱い、対象をコンパクトなものに限り、正則性も一階または二階連続微分可能である。本単元が扱う驚異の定理と Gauss–Codazzi 方程式は少なくとも三階の微分を必要とし、対象もコンパクトとは限らないので、その定義を本単元の曲面の定義として用いない。本記事の定義 1.1は「多様体入門」の埋め込み部分多様体をそのまま二次元・三次元の場合に読んだものである。

定義 1.3.U⊆R2U\subseteq\mathbb{R}^2を開集合とする。C∞C^\infty写像x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3が正則パラメータ表示 (regular parametrization) であるとは、次の三つがすべて成り立つことをいう。

  1. すべてのq∈Uq\in Uに対して、全微分dxq ⁣:R2→R3d\boldsymbol{x}_q\colon\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^3が単射である(x\boldsymbol{x}がはめ込みである)。
  2. x\boldsymbol{x}は単射である。
  3. 像x(U)\boldsymbol{x}(U)にR3\mathbb{R}^3からの部分空間位相を与えたとき、x ⁣:U→x(U)\boldsymbol{x}\colon U\to\boldsymbol{x}(U)は同相写像である。

UUの座標を(u,v)(u,v)と書き、偏微分をxu\boldsymbol{x}_u、xv\boldsymbol{x}_vと書く。M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3に対してx(U)⊆M\boldsymbol{x}(U)\subseteq Mが成り立つとき、x\boldsymbol{x}をMMの正則パラメータ表示という。

補題 1.4.x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3をC∞C^\infty写像、q∈Uq\in Uとする。dxqd\boldsymbol{x}_qが単射であることとxu(q)×xv(q)≠0\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q)\ne\boldsymbol{0}であることは同値である。

証明.dxq(a,b)=a xu(q)+b xv(q)d\boldsymbol{x}_q(a,b)=a\,\boldsymbol{x}_u(q)+b\,\boldsymbol{x}_v(q)であるから、dxqd\boldsymbol{x}_qが単射であることとxu(q),xv(q)\boldsymbol{x}_u(q),\boldsymbol{x}_v(q)が一次独立であることは同値である。

一次従属であるとする。一方が零ベクトルならば§E19.2 補題 1.2 (2)の線形性からベクトル積は零である。ともに零でなければxv(q)=λxu(q)\boldsymbol{x}_v(q)=\lambda\boldsymbol{x}_u(q)と書くことができ、§E19.2 補題 1.2 (2)の線形性とu×u=0u\times u=\boldsymbol{0}からベクトル積は零である。

一次独立であるとする。wwを(xu(q),xv(q),w)(\boldsymbol{x}_u(q),\boldsymbol{x}_v(q),w)がR3\mathbb{R}^3の基底になるように取ると、§E19.2 補題 1.2 (1)により

⟨xu(q)×xv(q), w⟩=det⁡(xu(q),xv(q),w)≠0\bigl\langle\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q),\ w\bigr\rangle=\det\bigl(\boldsymbol{x}_u(q),\boldsymbol{x}_v(q),w\bigr)\ne0

であるから、ベクトル積は零でない。▨

補題 1.5.U⊆R2U\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、y ⁣:U→R3\boldsymbol{y}\colon U\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込み、q0∈Uq_0\in Uとする。このとき、q0q_0の開近傍U1⊆UU_1\subseteq U、y(q0)\boldsymbol{y}(q_0)のR3\mathbb{R}^3における開近傍Ω\Omega、およびC∞C^\infty写像π ⁣:Ω→R2\pi\colon\Omega\to\mathbb{R}^2が存在して

y(U1)⊆Ω,π(y(q))=q(q∈U1)\boldsymbol{y}(U_1)\subseteq\Omega,\qquad \pi\bigl(\boldsymbol{y}(q)\bigr)=q\quad(q\in U_1)

が成り立つ。とくにy∣U1\boldsymbol{y}|_{U_1}は単射であり、像への同相写像である。

証明.UUを22次元C∞C^\infty多様体、R3\mathbb{R}^3を33次元C∞C^\infty多様体と見る(§E17.1 例 2.4)。§E17.3 命題 5.5によりdyqd\boldsymbol{y}_qの階数は Jacobi 行列の階数に等しく、はめ込みであることから、UUの各点で階数は22である。とくにq0q_0のある近傍の上で階数は定数22である。

§E17.5 定理 3.1をk=2k=2として適用すると、q0q_0を含むUUのチャート(V,ϕ)(V,\phi)とy(q0)\boldsymbol{y}(q_0)を含むR3\mathbb{R}^3のチャート(W,ψ)(W,\psi)であって、y(V)⊆W\boldsymbol{y}(V)\subseteq Wかつ

ψ∘y∘ϕ−1(x1,x2)=(x1,x2,0)((x1,x2)∈ϕ(V))\psi\circ\boldsymbol{y}\circ\phi^{-1}(x_1,x_2)=(x_1,x_2,0)\qquad\bigl((x_1,x_2)\in\phi(V)\bigr)

を満たすものが存在する。pr ⁣:R3→R2\mathrm{pr}\colon\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^2を最初の二成分への射影とし、π0=pr∘ψ ⁣:W→R2\pi_0=\mathrm{pr}\circ\psi\colon W\to\mathbb{R}^2と置くと、上の式から

π0(y(q))=ϕ(q)(q∈V)\pi_0\bigl(\boldsymbol{y}(q)\bigr)=\phi(q)\qquad(q\in V)

が成り立つ。

Ω=W∩π0−1(ϕ(V))\Omega=W\cap\pi_0^{-1}\bigl(\phi(V)\bigr)と置く。π0\pi_0は連続でϕ(V)\phi(V)は開であるからΩ\Omegaは開集合であり、π0(y(q0))=ϕ(q0)∈ϕ(V)\pi_0(\boldsymbol{y}(q_0))=\phi(q_0)\in\phi(V)であるからy(q0)∈Ω\boldsymbol{y}(q_0)\in\Omegaである。同じ理由でy(V)⊆Ω\boldsymbol{y}(V)\subseteq\Omegaである。U1=VU_1=Vと置き、π=ϕ−1∘π0∣Ω\pi=\phi^{-1}\circ\pi_0|_{\Omega}と定める。ϕ−1\phi^{-1}はC∞C^\inftyであるからπ\piはC∞C^\inftyであり、q∈U1q\in U_1に対してπ(y(q))=ϕ−1(ϕ(q))=q\pi(\boldsymbol{y}(q))=\phi^{-1}(\phi(q))=qである。

最後の主張を示す。y(q)=y(q′)\boldsymbol{y}(q)=\boldsymbol{y}(q')(q,q′∈U1q,q'\in U_1)ならばq=π(y(q))=π(y(q′))=q′q=\pi(\boldsymbol{y}(q))=\pi(\boldsymbol{y}(q'))=q'であるから単射である。逆写像はy(U1)\boldsymbol{y}(U_1)の上でπ\piの制限に一致し、π\piは連続であるから、y∣U1\boldsymbol{y}|_{U_1}は像への同相写像である。▨

定理 1.6.M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3とする。次の二つは同値である。

  1. MMは正則曲面である。
  2. 各p∈Mp\in Mに対して、MMの正則パラメータ表示x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3であって、p∈x(U)p\in\boldsymbol{x}(U)かつx(U)\boldsymbol{x}(U)がMMの開集合であるものが存在する。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。p∈Mp\in Mとし、スライスチャート(Ω,φ)(\Omega,\varphi)を取る。U={a∈R2∣(a,0)∈φ(Ω)}U=\{a\in\mathbb{R}^2\mid(a,0)\in\varphi(\Omega)\}と置くと、a↦(a,0)a\mapsto(a,0)は連続でφ(Ω)\varphi(\Omega)は開であるからUUはR2\mathbb{R}^2の開集合である。

x ⁣:U→R3,x(a)=φ−1(a,0)\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3,\qquad\boldsymbol{x}(a)=\varphi^{-1}(a,0)

と定める。φ−1\varphi^{-1}はC∞C^\inftyであるからx\boldsymbol{x}はC∞C^\inftyである。dxad\boldsymbol{x}_aは、単射線形写像w↦(w,0)w\mapsto(w,0)と線形同型d(φ−1)(a,0)d(\varphi^{-1})_{(a,0)}の合成であるから単射である。φ−1\varphi^{-1}が単射であることからx\boldsymbol{x}も単射である。像は

x(U)=φ−1(φ(Ω)∩(R2×{0}))=φ−1(φ(Ω∩M))=Ω∩M\boldsymbol{x}(U)=\varphi^{-1}\Bigl(\varphi(\Omega)\cap\bigl(\mathbb{R}^2\times\{0\}\bigr)\Bigr)=\varphi^{-1}\bigl(\varphi(\Omega\cap M)\bigr)=\Omega\cap M

であり、これはMMの開集合であってppを含む。逆写像はx−1=pr∘φ∣Ω∩M\boldsymbol{x}^{-1}=\mathrm{pr}\circ\varphi|_{\Omega\cap M}であり、連続写像の制限であるから連続である。よってx\boldsymbol{x}は 2 の条件を満たす。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。p∈Mp\in Mとし、2 のx ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3を取り、q0=x−1(p)q_0=\boldsymbol{x}^{-1}(p)と置く。補題 1.5の証明と同じく§E17.5 定理 3.1を適用して、q0q_0を含むUUのチャート(V,ϕ)(V,\phi)とppを含むR3\mathbb{R}^3のチャート(W,ψ)(W,\psi)で、x(V)⊆W\boldsymbol{x}(V)\subseteq Wかつ

ψ∘x∘ϕ−1(x1,x2)=(x1,x2,0)\psi\circ\boldsymbol{x}\circ\phi^{-1}(x_1,x_2)=(x_1,x_2,0)

を満たすものを取る。とくに

ψ(x(V))=ϕ(V)×{0}\psi\bigl(\boldsymbol{x}(V)\bigr)=\phi(V)\times\{0\}

である。

x\boldsymbol{x}は像への同相写像でありVVは開であるから、x(V)\boldsymbol{x}(V)はx(U)\boldsymbol{x}(U)の開集合である。仮定よりx(U)\boldsymbol{x}(U)はMMの開集合であるから、x(V)\boldsymbol{x}(V)はMMの開集合であり、R3\mathbb{R}^3の開集合GGを取ってx(V)=M∩G\boldsymbol{x}(V)=M\cap Gと書くことができる。

Ω=W∩G∩ψ−1(ϕ(V)×R)\Omega=W\cap G\cap\psi^{-1}\bigl(\phi(V)\times\mathbb{R}\bigr)

と置く。ψ\psiは連続でありϕ(V)×R\phi(V)\times\mathbb{R}はR3\mathbb{R}^3の開集合であるからΩ\Omegaは開集合である。p∈Wp\in W、p∈x(V)⊆Gp\in\boldsymbol{x}(V)\subseteq G、ψ(p)=(ϕ(q0),0)\psi(p)=(\phi(q_0),0)かつϕ(q0)∈ϕ(V)\phi(q_0)\in\phi(V)であるからp∈Ωp\in\Omegaである。

(Ω,ψ∣Ω)(\Omega,\psi|_{\Omega})がスライスチャートであることを示す。

包含ψ(Ω∩M)⊆ψ(Ω)∩(R2×{0})\psi(\Omega\cap M)\subseteq\psi(\Omega)\cap(\mathbb{R}^2\times\{0\})を示す。z∈Ω∩Mz\in\Omega\cap Mとするとz∈G∩M=x(V)z\in G\cap M=\boldsymbol{x}(V)であるからψ(z)∈ϕ(V)×{0}⊆R2×{0}\psi(z)\in\phi(V)\times\{0\}\subseteq\mathbb{R}^2\times\{0\}である。

逆の包含を示す。y∈ψ(Ω)∩(R2×{0})y\in\psi(\Omega)\cap(\mathbb{R}^2\times\{0\})とし、y=(a,0)y=(a,0)、y=ψ(z)y=\psi(z)(z∈Ωz\in\Omega)と書く。z∈ψ−1(ϕ(V)×R)z\in\psi^{-1}(\phi(V)\times\mathbb{R})であるからa∈ϕ(V)a\in\phi(V)である。q=ϕ−1(a)∈Vq=\phi^{-1}(a)\in Vと置くと

ψ(x(q))=(a,0)=y=ψ(z)\psi\bigl(\boldsymbol{x}(q)\bigr)=(a,0)=y=\psi(z)

であり、x(q)∈x(V)⊆W\boldsymbol{x}(q)\in\boldsymbol{x}(V)\subseteq W、z∈Ω⊆Wz\in\Omega\subseteq Wであってψ\psiはWWの上で単射であるからz=x(q)∈Mz=\boldsymbol{x}(q)\in Mである。よってz∈Ω∩Mz\in\Omega\cap Mでありy∈ψ(Ω∩M)y\in\psi(\Omega\cap M)である。

したがってφ=ψ∣Ω\varphi=\psi|_{\Omega}はスライスチャートを与え、ppは任意であったからMMは正則曲面である。▨

命題 1.7.MMを正則曲面、y ⁣:V→R3\boldsymbol{y}\colon V\to\mathbb{R}^3をMMの正則パラメータ表示とする。このとき次が成り立つ。

  1. y(V)\boldsymbol{y}(V)はMMの開集合である。
  2. 各q0∈Vq_0\in Vに対して補題 1.5のU1U_1、Ω\Omega、π\piを取ることができ、y−1\boldsymbol{y}^{-1}はy(U1)\boldsymbol{y}(U_1)の上でC∞C^\infty写像π\piの制限に一致する。

証明.(2)は補題 1.5そのものである。(1)を示す。

q0∈Vq_0\in Vを取り、p=y(q0)p=\boldsymbol{y}(q_0)と置く。MMは正則曲面であるから、ppを含むスライスチャート(ΩM,φ)(\Omega_M,\varphi)を取ることができる。定理 1.6 (1)から 2 を導く部分の構成をこのスライスチャートへ適用すると、正則パラメータ表示

w ⁣:UM→R3,w(a)=φ−1(a,0),UM={a∈R2∣(a,0)∈φ(ΩM)}\boldsymbol{w}\colon U_M\to\mathbb{R}^3,\qquad \boldsymbol{w}(a)=\varphi^{-1}(a,0),\qquad U_M=\{a\in\mathbb{R}^2\mid(a,0)\in\varphi(\Omega_M)\}

が得られ、その像はΩM∩M\Omega_M\cap M(MMの開集合)であり、逆写像はw−1=pr∘φ∣ΩM∩M\boldsymbol{w}^{-1}=\mathrm{pr}\circ\varphi|_{\Omega_M\cap M}である。

V0=y−1(ΩM)V_0=\boldsymbol{y}^{-1}(\Omega_M)と置く。y\boldsymbol{y}は連続であるからV0V_0はVVの開集合であり、q0∈V0q_0\in V_0である。F=pr∘φ∘y∣V0 ⁣:V0→R2F=\mathrm{pr}\circ\varphi\circ\boldsymbol{y}|_{V_0}\colon V_0\to\mathbb{R}^2と定めると、φ\varphiとy\boldsymbol{y}がC∞C^\inftyであるからFFはC∞C^\inftyである。q∈V0q\in V_0に対してy(q)∈ΩM∩M\boldsymbol{y}(q)\in\Omega_M\cap Mであるからφ(y(q))∈R2×{0}\varphi(\boldsymbol{y}(q))\in\mathbb{R}^2\times\{0\}であり、φ(y(q))=(F(q),0)\varphi(\boldsymbol{y}(q))=(F(q),0)と書くことができる。とくにF(q)∈UMF(q)\in U_Mであり

w(F(q))=φ−1(F(q),0)=y(q)\boldsymbol{w}\bigl(F(q)\bigr)=\varphi^{-1}\bigl(F(q),0\bigr)=\boldsymbol{y}(q)

が成り立つ。

§E4.3 定理 1.1によりdwF(q0)∘dFq0=dyq0d\boldsymbol{w}_{F(q_0)}\circ dF_{q_0}=d\boldsymbol{y}_{q_0}である。右辺は単射であるからdFq0dF_{q_0}は単射であり、22次の正方行列であるから可逆である。§E4.7 定理 2.1と§E17.5 補題 1.1により、q0q_0の開近傍V2⊆V0V_2\subseteq V_0が存在してF(V2)F(V_2)はR2\mathbb{R}^2の開集合であり、F∣V2F|_{V_2}はF(V2)F(V_2)へのC∞C^\infty微分同相である。

F(V2)⊆UMF(V_2)\subseteq U_Mであるから、w\boldsymbol{w}がUMU_MからΩM∩M\Omega_M\cap Mへの同相写像であることにより、y(V2)=w(F(V2))\boldsymbol{y}(V_2)=\boldsymbol{w}(F(V_2))はΩM∩M\Omega_M\cap Mの開集合である。ΩM∩M\Omega_M\cap MはMMの開集合であるから、y(V2)\boldsymbol{y}(V_2)はMMの開集合であってppを含みy(V)\boldsymbol{y}(V)に含まれる。q0q_0は任意であったから、y(V)\boldsymbol{y}(V)はMMの各点の近傍であり、MMの開集合である。▨

定理 1.8.MMを正則曲面、x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3とy ⁣:V→R3\boldsymbol{y}\colon V\to\mathbb{R}^3をMMの正則パラメータ表示とし、W=x(U)∩y(V)≠∅W=\boldsymbol{x}(U)\cap\boldsymbol{y}(V)\ne\varnothingとする。このときx−1(W)\boldsymbol{x}^{-1}(W)はUUの開集合、y−1(W)\boldsymbol{y}^{-1}(W)はVVの開集合であり、

h=y−1∘x ⁣:x−1(W)⟶y−1(W)h=\boldsymbol{y}^{-1}\circ\boldsymbol{x}\colon\boldsymbol{x}^{-1}(W)\longrightarrow\boldsymbol{y}^{-1}(W)

はC∞C^\infty微分同相である。

証明.命題 1.7 (1)によりy(V)\boldsymbol{y}(V)はMMの開集合であるから、WWはx(U)\boldsymbol{x}(U)の開集合である。x\boldsymbol{x}はUUからx(U)\boldsymbol{x}(U)への同相写像であるからx−1(W)\boldsymbol{x}^{-1}(W)はUUの開集合である。y\boldsymbol{y}についても同様である。

hhは全単射であり、逆写像はx−1∘y\boldsymbol{x}^{-1}\circ\boldsymbol{y}である。x\boldsymbol{x}が連続、y−1\boldsymbol{y}^{-1}がy(V)\boldsymbol{y}(V)の上で連続であるから、hhは連続である。同じ理由でh−1h^{-1}も連続である。

滑らかさを示す。a0∈x−1(W)a_0\in\boldsymbol{x}^{-1}(W)を取り、q0=h(a0)q_0=h(a_0)と置く。命題 1.7 (2)により、q0q_0の開近傍U1⊆VU_1\subseteq V、y(q0)\boldsymbol{y}(q_0)の開近傍Ω⊆R3\Omega\subseteq\mathbb{R}^3、およびC∞C^\infty写像π ⁣:Ω→R2\pi\colon\Omega\to\mathbb{R}^2でy(U1)⊆Ω\boldsymbol{y}(U_1)\subseteq\Omegaかつπ∘y=id\pi\circ\boldsymbol{y}=\mathrm{id}(U1U_1の上で)を満たすものが存在する。

hhは連続であるからA=h−1(U1)A=h^{-1}(U_1)はx−1(W)\boldsymbol{x}^{-1}(W)の開集合でありa0∈Aa_0\in Aである。a∈Aa\in Aに対してx(a)=y(h(a))\boldsymbol{x}(a)=\boldsymbol{y}(h(a))でありh(a)∈U1h(a)\in U_1であるからx(a)∈Ω\boldsymbol{x}(a)\in\Omegaであり

π(x(a))=π(y(h(a)))=h(a)\pi\bigl(\boldsymbol{x}(a)\bigr)=\pi\bigl(\boldsymbol{y}(h(a))\bigr)=h(a)

が成り立つ。すなわちAAの上でh=π∘xh=\pi\circ\boldsymbol{x}である。右辺はR2\mathbb{R}^2の開集合からR3\mathbb{R}^3の開集合を経てR2\mathbb{R}^2へ至るC∞C^\infty写像の合成であるからC∞C^\inftyである。よってhhはa0a_0の近傍でC∞C^\inftyであり、a0a_0は任意であったからC∞C^\inftyである。x\boldsymbol{x}とy\boldsymbol{y}を入れ替えるとh−1h^{-1}もC∞C^\inftyである。▨

2 曲面を作る二つの方法

命題 2.1.U⊆R2U\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、f ⁣:U→Rf\colon U\to\mathbb{R}をC∞C^\infty関数とし、

M={(u,v,f(u,v)) ∣ (u,v)∈U}M=\bigl\{(u,v,f(u,v))\ \big|\ (u,v)\in U\bigr\}

と置く。x(u,v)=(u,v,f(u,v))\boldsymbol{x}(u,v)=(u,v,f(u,v))は正則パラメータ表示であり、像はMM全体である。したがってMMは正則曲面である。

証明.x\boldsymbol{x}はC∞C^\inftyである。xu=(1,0,fu)\boldsymbol{x}_u=(1,0,f_u)、xv=(0,1,fv)\boldsymbol{x}_v=(0,1,f_v)であるから

xu×xv=(−fu, −fv, 1)≠0\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=(-f_u,\ -f_v,\ 1)\ne\boldsymbol{0}

であり、補題 1.4によりx\boldsymbol{x}ははめ込みである。最初の二成分を見ればx\boldsymbol{x}は単射であり、逆写像はpr\mathrm{pr}のMMへの制限であるから連続である。像はMMそのものであり、MMの開集合である。定理 1.6によりMMは正則曲面である。▨

命題 2.2.Ω⊆R3\Omega\subseteq\mathbb{R}^3を開集合、f ⁣:Ω→Rf\colon\Omega\to\mathbb{R}をC∞C^\infty関数、c∈Rc\in\mathbb{R}とし、M=f−1(c)M=f^{-1}(c)と置く。M≠∅M\ne\varnothingであり、すべてのp∈Mp\in Mで∇f(p)≠0\nabla f(p)\ne\boldsymbol{0}であるとする。このときMMは正則曲面である。

証明.Ω\OmegaはR3\mathbb{R}^3の開集合であるから33次元C∞C^\infty多様体であり、R\mathbb{R}は11次元C∞C^\infty多様体である。§E17.3 命題 5.5によりdfpdf_pの表示行列は1×31\times3行列(∂1f(p),∂2f(p),∂3f(p))\bigl(\partial_1f(p),\partial_2f(p),\partial_3f(p)\bigr)であるから、dfpdf_pが全射であることと∇f(p)≠0\nabla f(p)\ne\boldsymbol{0}であることは同値である。よってccはffの正則値であり、§E17.5 定理 4.3によりMMはΩ\Omegaの3−1=23-1=2次元埋め込み部分多様体である。

Ω\OmegaはR3\mathbb{R}^3の開集合であるから、Ω\OmegaのチャートはR3\mathbb{R}^3のチャートでもある。したがってMMに対してΩ\Omegaの中で取ったスライスチャートはR3\mathbb{R}^3のスライスチャートであり、MMはR3\mathbb{R}^3の22次元埋め込み部分多様体、すなわち正則曲面である。▨

例 2.3 (球面).r>0r>0とし、f(p)=∥p∥2f(p)=\lVert p\rVert^2、M=f−1(r2)={p∈R3∣∥p∥=r}M=f^{-1}(r^2)=\{p\in\mathbb{R}^3\mid\lVert p\rVert=r\}と置く。∇f(p)=2p\nabla f(p)=2pであり、p∈Mp\in Mでは∥p∥=r>0\lVert p\rVert=r>0であるから∇f(p)≠0\nabla f(p)\ne\boldsymbol{0}である。命題 2.2によりMMは正則曲面である。これを半径rrの球面という。

球面の標準的なパラメータ表示は

x(u,v)=r(sin⁡ucos⁡v, sin⁡usin⁡v, cos⁡u),(u,v)∈(0,π)×(0,2π)\boldsymbol{x}(u,v)=r\bigl(\sin u\cos v,\ \sin u\sin v,\ \cos u\bigr), \qquad(u,v)\in(0,\pi)\times(0,2\pi)

である。この写像はC∞C^\inftyであり、像はMMに含まれる。偏微分は

xu=r(cos⁡ucos⁡v, cos⁡usin⁡v, −sin⁡u),xv=r(−sin⁡usin⁡v, sin⁡ucos⁡v, 0)\boldsymbol{x}_u=r\bigl(\cos u\cos v,\ \cos u\sin v,\ -\sin u\bigr), \qquad \boldsymbol{x}_v=r\bigl(-\sin u\sin v,\ \sin u\cos v,\ 0\bigr)

であり、ベクトル積を計算すると

xu×xv=r2(sin⁡2ucos⁡v, sin⁡2usin⁡v, sin⁡ucos⁡u)=rsin⁡u⋅x(u,v)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v =r^2\bigl(\sin^2u\cos v,\ \sin^2u\sin v,\ \sin u\cos u\bigr) =r\sin u\cdot\boldsymbol{x}(u,v)

である。u∈(0,π)u\in(0,\pi)ではsin⁡u>0\sin u>0であるから、これは零でなく、補題 1.4によりx\boldsymbol{x}ははめ込みである。∥xu×xv∥=r2sin⁡u\lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVert=r^2\sin uである。像は、球面から半円弧{r(sin⁡u,0,cos⁡u)∣u∈[0,π]}\{r(\sin u,0,\cos u)\mid u\in[0,\pi]\}を除いた集合であり、除かれる集合はコンパクトであるから、像は球面の開集合である。

命題 2.4.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとする。このとき、{1,2,3}\{1,2,3\}の相異なる番号i,j,ki,j,k、R2\mathbb{R}^2の開集合UU、C∞C^\infty関数f ⁣:U→Rf\colon U\to\mathbb{R}が存在して、

W={x∈R3 ∣ (xi,xj)∈U, xk=f(xi,xj)}W=\bigl\{x\in\mathbb{R}^3\ \big|\ (x_i,x_j)\in U,\ x_k=f(x_i,x_j)\bigr\}

がMMの開集合であってppを含む。

証明.定理 1.6により、MMの正則パラメータ表示x ⁣:U0→R3\boldsymbol{x}\colon U_0\to\mathbb{R}^3でp∈x(U0)p\in\boldsymbol{x}(U_0)かつx(U0)\boldsymbol{x}(U_0)がMMの開集合であるものを取り、q0=x−1(p)q_0=\boldsymbol{x}^{-1}(p)と置く。x\boldsymbol{x}のq0q_0における Jacobi 行列は3×23\times2行列であって階数が22であるから、二つの行i<ji<jを選んで、その二行からなる22次小行列式が零でないようにすることができる。残る番号をkkと書く。

P ⁣:R3→R2P\colon\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^2をP(x)=(xi,xj)P(x)=(x_i,x_j)とし、F=P∘xF=P\circ\boldsymbol{x}と置く。dFq0dF_{q_0}の表示行列は上の22次小行列であるから可逆である。§E4.7 定理 2.1と§E17.5 補題 1.1により、q0q_0の開近傍U1⊆U0U_1\subseteq U_0が存在してU=F(U1)U=F(U_1)は開集合であり、F∣U1 ⁣:U1→UF|_{U_1}\colon U_1\to UはC∞C^\infty微分同相である。その逆写像をg ⁣:U→U1g\colon U\to U_1と書き、f(a)=xk(g(a))f(a)=\boldsymbol{x}_k\bigl(g(a)\bigr)(xk\boldsymbol{x}_kはx\boldsymbol{x}の第kk成分)と定める。ffはC∞C^\inftyである。

a∈Ua\in Uに対してx=x(g(a))x=\boldsymbol{x}(g(a))と置くと(xi,xj)=F(g(a))=a(x_i,x_j)=F(g(a))=aかつxk=f(a)x_k=f(a)である。逆にx∈x(U1)x\in\boldsymbol{x}(U_1)ならばx=x(q)x=\boldsymbol{x}(q)(q∈U1q\in U_1)であり、a=F(q)∈Ua=F(q)\in U、g(a)=qg(a)=qであるから(xi,xj)=a(x_i,x_j)=aかつxk=f(a)x_k=f(a)である。よってx(U1)\boldsymbol{x}(U_1)は主張のWWに等しい。U1U_1は開でありx\boldsymbol{x}は像への同相写像であるから、W=x(U1)W=\boldsymbol{x}(U_1)はx(U0)\boldsymbol{x}(U_0)の開集合であり、したがってMMの開集合である。p=x(q0)∈Wp=\boldsymbol{x}(q_0)\in Wである。▨

例 2.5 (頂点を含む円錐は正則曲面でない).

C={(x,y,z)∈R3 ∣ z=x2+y2}C=\bigl\{(x,y,z)\in\mathbb{R}^3\ \big|\ z=\sqrt{x^2+y^2}\bigr\}

と置く。CCは正則曲面ではない。

CCが正則曲面であるとする。原点0=(0,0,0)0=(0,0,0)はCCに属するので、命題 2.4により、番号i,j,ki,j,k、開集合U⊆R2U\subseteq\mathbb{R}^2、C∞C^\infty関数ffが存在して、W={x∣(xi,xj)∈U, xk=f(xi,xj)}W=\{x\mid(x_i,x_j)\in U,\ x_k=f(x_i,x_j)\}はCCの開集合であって00を含む。WWがCCの開集合であることから、ε>0\varepsilon>0が存在してC∩B⊆WC\cap B\subseteq Wが成り立つ。ここでBBは原点を中心とする半径ε\varepsilonの開球である。

(i,j)=(1,2)(i,j)=(1,2)、k=3k=3の場合。∣a∣,∣b∣\lvert a\rvert,\lvert b\rvertが十分小さければ(a,b,a2+b2)∈C∩B⊆W(a,b,\sqrt{a^2+b^2})\in C\cap B\subseteq Wであるからf(a,b)=a2+b2f(a,b)=\sqrt{a^2+b^2}である。とくにt↦f(t,0)=∣t∣t\mapsto f(t,0)=\lvert t\rvertとなるが、この関数はt=0t=0で微分可能でない。ffがC∞C^\inftyであることに反する。

k=1k=1の場合(底面がx2x3x_2x_3平面)。0<t<ε/20<t<\varepsilon/2を取ると、(t,0,t)(t,0,t)と(−t,0,t)(-t,0,t)はともにCCに属し、ノルムがt2<εt\sqrt2<\varepsilonであるからC∩B⊆WC\cap B\subseteq Wに属する。WWの定義により、(x2,x3)=(0,t)(x_2,x_3)=(0,t)に対する第11成分はf(0,t)f(0,t)ただ一つである。しかし二点の第11成分はttと−t-tであってt>0t>0より異なる。矛盾である。

k=2k=2の場合も、(0,t,t)(0,t,t)と(0,−t,t)(0,-t,t)を取れば同じ矛盾が得られる。

以上のいずれの場合も矛盾するので、CCは正則曲面ではない。頂点を除いたC∖{0}C\setminus\{0\}は、{(x,y)≠(0,0)}\{(x,y)\ne(0,0)\}の上のC∞C^\infty関数x2+y2\sqrt{x^2+y^2}のグラフであるから、命題 2.1により正則曲面である。

3 接平面

定義 3.1.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとする。MMの正則パラメータ表示x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3とq∈Uq\in Uをx(q)=p\boldsymbol{x}(q)=pとなるように取り、

TpM=dxq(R2)=span(xu(q), xv(q))T_pM=d\boldsymbol{x}_q\bigl(\mathbb{R}^2\bigr)=\mathrm{span}\bigl(\boldsymbol{x}_u(q),\ \boldsymbol{x}_v(q)\bigr)

と定める。TpMT_pMをppにおけるMMの接平面 (tangent plane) という。dxqd\boldsymbol{x}_qは単射であるから、TpMT_pMはR3\mathbb{R}^3の22次元部分空間である。

命題 3.2.定義 3.1のTpMT_pMは、ppを像に含む正則パラメータ表示の選び方に依らない。

証明.x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3とy ⁣:V→R3\boldsymbol{y}\colon V\to\mathbb{R}^3をMMの正則パラメータ表示、x(q)=y(q′)=p\boldsymbol{x}(q)=\boldsymbol{y}(q')=pとする。W=x(U)∩y(V)W=\boldsymbol{x}(U)\cap\boldsymbol{y}(V)はppを含むので空でなく、定理 1.8によりh=y−1∘xh=\boldsymbol{y}^{-1}\circ\boldsymbol{x}はx−1(W)\boldsymbol{x}^{-1}(W)からy−1(W)\boldsymbol{y}^{-1}(W)へのC∞C^\infty微分同相であり、h(q)=q′h(q)=q'である。x=y∘h\boldsymbol{x}=\boldsymbol{y}\circ hがx−1(W)\boldsymbol{x}^{-1}(W)の上で成り立つので、§E4.3 定理 1.1により

dxq=dyq′∘dhqd\boldsymbol{x}_q=d\boldsymbol{y}_{q'}\circ dh_q

である。hhは微分同相であるからdhqdh_qはR2\mathbb{R}^2の線形同型であり、dhq(R2)=R2dh_q(\mathbb{R}^2)=\mathbb{R}^2である。よって

dxq(R2)=dyq′(dhq(R2))=dyq′(R2)d\boldsymbol{x}_q(\mathbb{R}^2)=d\boldsymbol{y}_{q'}\bigl(dh_q(\mathbb{R}^2)\bigr)=d\boldsymbol{y}_{q'}(\mathbb{R}^2)

である。▨

命題 3.3.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとする。

TpM={α′(0) ∣ ε>0, α ⁣:(−ε,ε)→R3 は C∞, α((−ε,ε))⊆M, α(0)=p}T_pM=\bigl\{\alpha'(0)\ \big|\ \varepsilon>0,\ \alpha\colon(-\varepsilon,\varepsilon)\to\mathbb{R}^3\ \text{は $C^\infty$},\ \alpha\bigl((-\varepsilon,\varepsilon)\bigr)\subseteq M,\ \alpha(0)=p\bigr\}

が成り立つ。

証明. 右辺をSSと書き、x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3をx(q)=p\boldsymbol{x}(q)=pを満たすMMの正則パラメータ表示とする。

TpM⊆ST_pM\subseteq Sを示す。w=dxq(a)∈TpMw=d\boldsymbol{x}_q(a)\in T_pM(a∈R2a\in\mathbb{R}^2)とする。UUは開であるから、ε>0\varepsilon>0を十分小さく取ればq+ta∈Uq+ta\in U(∣t∣<ε\lvert t\rvert<\varepsilon)である。α(t)=x(q+ta)\alpha(t)=\boldsymbol{x}(q+ta)と定めると、α\alphaはC∞C^\inftyで像はx(U)⊆M\boldsymbol{x}(U)\subseteq Mに含まれ、α(0)=p\alpha(0)=p、§E4.3 定理 1.1によりα′(0)=dxq(a)=w\alpha'(0)=d\boldsymbol{x}_q(a)=wである。

S⊆TpMS\subseteq T_pMを示す。α\alphaを右辺の条件を満たす写像とする。命題 1.7 (2)により、qqの開近傍U1⊆UU_1\subseteq U、ppの開近傍Ω⊆R3\Omega\subseteq\mathbb{R}^3、およびC∞C^\infty写像π ⁣:Ω→R2\pi\colon\Omega\to\mathbb{R}^2で、x(U1)⊆Ω\boldsymbol{x}(U_1)\subseteq\OmegaかつU1U_1の上でπ∘x=id\pi\circ\boldsymbol{x}=\mathrm{id}となるものを取る。x∣U1\boldsymbol{x}|_{U_1}もMMの正則パラメータ表示であるから、命題 1.7 (1)によりx(U1)\boldsymbol{x}(U_1)はMMの開集合であり、R3\mathbb{R}^3の開集合GGを取ってx(U1)=M∩G\boldsymbol{x}(U_1)=M\cap Gと書くことができる。

α\alphaは連続でα(0)=p∈G∩Ω\alpha(0)=p\in G\cap\Omegaであるから、ε\varepsilonを小さく取り直してα((−ε,ε))⊆G∩Ω\alpha((-\varepsilon,\varepsilon))\subseteq G\cap\Omegaとしてよい。このときα(t)∈M∩G=x(U1)\alpha(t)\in M\cap G=\boldsymbol{x}(U_1)である。β=π∘α\beta=\pi\circ\alphaと置くとβ\betaはC∞C^\inftyであり、α(t)=x(qt)\alpha(t)=\boldsymbol{x}(q_t)(qt∈U1q_t\in U_1)と書くとβ(t)=π(x(qt))=qt\beta(t)=\pi(\boldsymbol{x}(q_t))=q_tであるから

α(t)=x(β(t))\alpha(t)=\boldsymbol{x}\bigl(\beta(t)\bigr)

が成り立つ。§E4.3 定理 1.1によりα′(0)=dxβ(0)(β′(0))=dxq(β′(0))∈TpM\alpha'(0)=d\boldsymbol{x}_{\beta(0)}(\beta'(0))=d\boldsymbol{x}_q(\beta'(0))\in T_pMである。▨

系 3.4.命題 2.2の設定でM=f−1(c)M=f^{-1}(c)とし、p∈Mp\in Mとする。

TpM={w∈R3 ∣ ⟨∇f(p),w⟩=0}T_pM=\bigl\{w\in\mathbb{R}^3\ \big|\ \langle\nabla f(p),w\rangle=0\bigr\}

が成り立つ。とくに半径rrの球面MMの点ppではTpM={w∣⟨p,w⟩=0}T_pM=\{w\mid\langle p,w\rangle=0\}である。

証明.P={w∣⟨∇f(p),w⟩=0}P=\{w\mid\langle\nabla f(p),w\rangle=0\}と置く。∇f(p)≠0\nabla f(p)\ne\boldsymbol{0}であるからPPは22次元部分空間である。

α\alphaを命題 3.3の条件を満たす写像とすると、像がMMに含まれることからf(α(t))=cf(\alpha(t))=cがすべてのttで成り立つ。§E4.3 定理 1.1により両辺をt=0t=0で微分して⟨∇f(p),α′(0)⟩=0\langle\nabla f(p),\alpha'(0)\rangle=0を得る。よって命題 3.3によりTpM⊆PT_pM\subseteq Pである。TpMT_pMとPPはともに22次元であるから一致する。

球面ではf(p)=∥p∥2f(p)=\lVert p\rVert^2、∇f(p)=2p\nabla f(p)=2pであるから、条件は⟨p,w⟩=0\langle p,w\rangle=0に同値である。▨

命題 3.5.MMを正則曲面、U⊆R2U\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みであってx(U)⊆M\boldsymbol{x}(U)\subseteq Mを満たすものとする。q∈Uq\in U、p=x(q)p=\boldsymbol{x}(q)とすると

TpM=span(xu(q), xv(q))T_pM=\mathrm{span}\bigl(\boldsymbol{x}_u(q),\ \boldsymbol{x}_v(q)\bigr)

が成り立つ。ここでx\boldsymbol{x}が単射であることも像への同相であることも仮定していない。

証明.UUは開であるから、ε>0\varepsilon>0を十分小さく取ればt↦x(q+t e1)t\mapsto\boldsymbol{x}(q+t\,e_1)とt↦x(q+t e2)t\mapsto\boldsymbol{x}(q+t\,e_2)(e1,e2e_1,e_2はR2\mathbb{R}^2の標準基底)は(−ε,ε)(-\varepsilon,\varepsilon)の上で定義される。これらはC∞C^\inftyであり、像はx(U)⊆M\boldsymbol{x}(U)\subseteq Mに含まれ、t=0t=0でppを通る。速度ベクトルはそれぞれxu(q)\boldsymbol{x}_u(q)、xv(q)\boldsymbol{x}_v(q)であるから、命題 3.3によりこの二つはTpMT_pMに属する。

x\boldsymbol{x}ははめ込みであるからxu(q)\boldsymbol{x}_u(q)とxv(q)\boldsymbol{x}_v(q)は一次独立であり、それらが張る部分空間は22次元である。TpMT_pMも22次元であるから、両者は一致する。▨

4 向きと単位法線ベクトル場

命題 4.1.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとする。TpMT_pMの直交補空間は11次元であり、TpMT_pMに直交する単位ベクトルはちょうど二つ存在する。それらは互いに符号を変えたものである。x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みであってx(U)⊆M\boldsymbol{x}(U)\subseteq Mかつx(q)=p\boldsymbol{x}(q)=pを満たすものとすると、その二つは

±xu(q)×xv(q)∥xu(q)×xv(q)∥\pm\frac{\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q)}{\lVert\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q)\rVert}

である。

証明.TpMT_pMはR3\mathbb{R}^3の22次元部分空間であるから、その直交補空間は11次元である。11次元部分空間の単位ベクトルは、生成元を正規化したものとその符号を変えたものの二つに限る。

補題 1.4によりxu(q)×xv(q)≠0\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q)\ne\boldsymbol{0}であり、§E19.2 補題 1.2 (2)によりこれはxu(q)\boldsymbol{x}_u(q)ともxv(q)\boldsymbol{x}_v(q)とも直交する。命題 3.5によりTpMT_pMはこの二つが張る空間であるから、ベクトル積は直交補空間に属する零でないベクトルであり、正規化したものが上の二つの一方である。▨

定義 4.2.MMを正則曲面とする。連続写像N ⁣:M→R3N\colon M\to\mathbb{R}^3であって、すべてのp∈Mp\in MでN(p)N(p)がTpMT_pMに直交する単位ベクトルであるものを、MMの単位法線ベクトル場 (unit normal vector field) という。そのようなNNが存在するときMMは向きづけ可能 (orientable) であるといい、NNを一つ選ぶことをMMに向き (orientation) を入れるという。

正則パラメータ表示x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3は、その像の上に

N=xu×xv∥xu×xv∥N=\frac{\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v}{\lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVert}

によって向きを定める。この式を、パラメータ表示が定める向きと呼ぶ。

球面のように、曲面が有界な領域の境界であることが具体的に確かめられる場合には、本単元ではその領域の内側を向く単位法線を取る。別の取り方をする場合は、その都度どちらを取ったかを明示する。この選択は、後の記事で定義する第二基本形式、主曲率および平均曲率の符号を変えるので、例ごとに明示しなければならない。

命題 4.3.MMを正則曲面、NNをMMの単位法線ベクトル場とする。

  1. x ⁣:U→R3\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^3をC∞C^\inftyのはめ込みで、x(U)⊆M\boldsymbol{x}(U)\subseteq MかつUUが連結であるものとすると、ε∈{1,−1}\varepsilon\in\{1,-1\}が存在して N(x(q))=ε xu(q)×xv(q)∥xu(q)×xv(q)∥(q∈U)N\bigl(\boldsymbol{x}(q)\bigr)=\varepsilon\,\frac{\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q)}{\lVert\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q)\rVert}\qquad(q\in U) が成り立つ。とくにN∘xN\circ\boldsymbol{x}はC∞C^\inftyである。
  2. MMが連結ならば、MMの単位法線ベクトル場はNNと−N-Nのちょうど二つである。

証明.(1)を示す。n(q)=(xu(q)×xv(q))/∥xu(q)×xv(q)∥n(q)=(\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q))/\lVert\boldsymbol{x}_u(q)\times\boldsymbol{x}_v(q)\rVertと置く。x\boldsymbol{x}はC∞C^\inftyであり分母は消えないから、nnはUUの上でC∞C^\inftyである。命題 4.1により、各qqでN(x(q))=±n(q)N(\boldsymbol{x}(q))=\pm n(q)であるから、関数η(q)=⟨N(x(q)),n(q)⟩\eta(q)=\langle N(\boldsymbol{x}(q)),n(q)\rangleは値11と−1-1しか取らない。NNとx\boldsymbol{x}とnnは連続であるからη\etaは連続であり、UUは連結であるからη\etaは定数である。その値をε\varepsilonとすればよい。N∘x=εnN\circ\boldsymbol{x}=\varepsilon nはC∞C^\inftyである。

(2)を示す。N1,N2N_1,N_2を二つの単位法線ベクトル場とすると、命題 4.1により各ppで⟨N1(p),N2(p)⟩∈{1,−1}\langle N_1(p),N_2(p)\rangle\in\{1,-1\}である。この関数は連続でありMMは連結であるから定数である。値が11ならばN2=N1N_2=N_1、値が−1-1ならばN2=−N1N_2=-N_1である。−N-Nが単位法線ベクトル場であることは定義から明らかであるから、ちょうど二つである。▨

例 4.4 (球面の向き). 半径rrの球面MMは連結であり、系 3.4によりTpM={w∣⟨p,w⟩=0}T_pM=\{w\mid\langle p,w\rangle=0\}である。p/rp/rは単位ベクトルであってTpMT_pMに直交するから、N(p)=p/rN(p)=p/rは連続な単位法線ベクトル場であり、MMは向きづけ可能である。命題 4.3 (2)により、単位法線ベクトル場はp↦p/rp\mapsto p/rとp↦−p/rp\mapsto-p/rの二つである。前者は球面が囲む球体の外側を向き、後者は内側を向く。

定義 4.2の約束により、本単元では球面にN(p)=−p/rN(p)=-p/r(内向き)を取る。

例 2.3の標準的なパラメータ表示ははめ込みであり像がMMに含まれるので、命題 4.3 (1)を適用することができる。xu×xv=rsin⁡u⋅x(u,v)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=r\sin u\cdot\boldsymbol{x}(u,v)とsin⁡u>0\sin u>0から、この表示が定める向きは外向きのp/rp/rである。内向きの向きを与える表示が必要なときは、変数の順序を入れ替えたx~(v,u)=x(u,v)\tilde{\boldsymbol{x}}(v,u)=\boldsymbol{x}(u,v)を用いる。実際x~v×x~u=−xu×xv\tilde{\boldsymbol{x}}_v\times\tilde{\boldsymbol{x}}_u=-\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_vである。

証明の方針は次のとおりである。Möbius の帯の中心円をパラメータuuで一周させると、パラメータ表示が定める単位法線n(u)n(u)はuuを2π2\piだけ増やしたときに符号を変える。ところがuuとu+2πu+2\piは帯の同じ点を指す。したがって、帯全体で定義された連続な単位法線NNがあるとすると、⟨N,n⟩\langle N,n\rangleは値±1\pm1を取る連続関数として定数でなければならないのに、一周すると符号が変わることになり矛盾する。

例 4.5 (Möbius の帯は向きづけ可能でない).D=R×(−1,1)D=\mathbb{R}\times(-1,1)とし、x ⁣:D→R3\boldsymbol{x}\colon D\to\mathbb{R}^3を

x(u,v)=((2+vcos⁡u2)cos⁡u, (2+vcos⁡u2)sin⁡u, vsin⁡u2)\boldsymbol{x}(u,v)=\Bigl(\bigl(2+v\cos\tfrac u2\bigr)\cos u,\ \bigl(2+v\cos\tfrac u2\bigr)\sin u,\ v\sin\tfrac u2\Bigr)

で定め、M=x(D)M=\boldsymbol{x}(D)と置く。MMをMöbius の帯という。MMは正則曲面であり、向きづけ可能でない。

記号。r(u,v)=2+vcos⁡u2r(u,v)=2+v\cos\frac u2と置く。∣v∣<1\lvert v\rvert<1であるからr≥2−∣v∣>1>0r\ge2-\lvert v\rvert>1>0である。

はめ込みであること。

xv=(cos⁡u2cos⁡u, cos⁡u2sin⁡u, sin⁡u2),xu=(rucos⁡u−rsin⁡u, rusin⁡u+rcos⁡u, v2cos⁡u2)\boldsymbol{x}_v=\Bigl(\cos\tfrac u2\cos u,\ \cos\tfrac u2\sin u,\ \sin\tfrac u2\Bigr), \qquad \boldsymbol{x}_u=\Bigl(r_u\cos u-r\sin u,\ r_u\sin u+r\cos u,\ \tfrac v2\cos\tfrac u2\Bigr)

であり、ru=−v2sin⁡u2r_u=-\frac v2\sin\frac u2である。∥xv∥2=cos⁡2u2+sin⁡2u2=1\lVert\boldsymbol{x}_v\rVert^2=\cos^2\frac u2+\sin^2\frac u2=1である。内積を計算すると

⟨xu,xv⟩=cos⁡u2⋅ru+v2cos⁡u2sin⁡u2=cos⁡u2(−v2sin⁡u2+v2sin⁡u2)=0\langle\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v\rangle =\cos\tfrac u2\cdot r_u+\tfrac v2\cos\tfrac u2\sin\tfrac u2 =\cos\tfrac u2\Bigl(-\tfrac v2\sin\tfrac u2+\tfrac v2\sin\tfrac u2\Bigr)=0

であり、

∥xu∥2=ru2+r2+v24cos⁡2u2=r2+v24>0\lVert\boldsymbol{x}_u\rVert^2=r_u^2+r^2+\tfrac{v^2}{4}\cos^2\tfrac u2=r^2+\tfrac{v^2}{4}>0

である。二つは直交しともに零でないから一次独立であり、補題 1.4によりx\boldsymbol{x}ははめ込みである。

同一視の規則。x(u,v)=x(u′,v′)\boldsymbol{x}(u,v)=\boldsymbol{x}(u',v')であるための必要十分条件は、u′−u∈4πZu'-u\in4\pi\mathbb{Z}かつv′=vv'=vであるか、u′−u∈2π+4πZu'-u\in2\pi+4\pi\mathbb{Z}かつv′=−vv'=-vであるかのいずれかである。実際、第一・第二成分からr(cos⁡u,sin⁡u)r(\cos u,\sin u)が定まりr>0r>0であるからuuは2π2\piを法として定まる。u′=u+2mπu'=u+2m\piと書くと、mmが偶数のときはcos⁡u′2=cos⁡u2\cos\frac{u'}2=\cos\frac u2、sin⁡u′2=sin⁡u2\sin\frac{u'}2=\sin\frac u2であるからr′=rr'=rとz′=zz'=zからv′cos⁡u2=vcos⁡u2v'\cos\frac u2=v\cos\frac u2かつv′sin⁡u2=vsin⁡u2v'\sin\frac u2=v\sin\frac u2となり、(cos⁡u2,sin⁡u2)≠(0,0)(\cos\frac u2,\sin\frac u2)\ne(0,0)よりv′=vv'=vである。mmが奇数のときは符号が反転してv′=−vv'=-vである。

二つの表示がMMを覆うこと。U1=(0,2π)×(−1,1)U_1=(0,2\pi)\times(-1,1)、U2=(−π,π)×(−1,1)U_2=(-\pi,\pi)\times(-1,1)と置く。U1U_1の二点(u,v)(u,v)、(u′,v′)(u',v')について∣u′−u∣<2π\lvert u'-u\rvert<2\piであるから、同一視の規則によりx(u,v)=x(u′,v′)\boldsymbol{x}(u,v)=\boldsymbol{x}(u',v')ならばu′=uu'=uかつv′=vv'=vである。よってx∣U1\boldsymbol{x}|_{U_1}は単射である。U2U_2についても同様である。MMの任意の点はu≢0u\not\equiv0またはu≢πu\not\equiv\pi(いずれも2π2\piを法とする)を満たす表示を持つから、M=x(U1)∪x(U2)M=\boldsymbol{x}(U_1)\cup\boldsymbol{x}(U_2)である。

像がMMの開集合であること。x(U1)\boldsymbol{x}(U_1)はu≡0u\equiv0に対応する点を除いた集合であり、その除かれる点の全体は{(2+v,0,0)∣∣v∣<1}={(x,0,0)∣1<x<3}\{(2+v,0,0)\mid\lvert v\rvert<1\}=\{(x,0,0)\mid1<x<3\}である。MMのうちy=z=0y=z=0を満たす点を求めると、rsin⁡u=0r\sin u=0とr>1r>1からsin⁡u=0\sin u=0であり、u≡0u\equiv0のときは上の集合、u≡πu\equiv\piのときはsin⁡u2=±1\sin\frac u2=\pm1からv=0v=0となり点(−2,0,0)(-2,0,0)である。したがって

x(U1)=M∖(M∩{(x,0,0) ∣ x≥1})\boldsymbol{x}(U_1)=M\setminus\Bigl(M\cap\bigl\{(x,0,0)\ \big|\ x\ge1\bigr\}\Bigr)

であり、右辺で除いている集合はR3\mathbb{R}^3の閉集合とMMの共通部分であるからMMの閉集合である。よってx(U1)\boldsymbol{x}(U_1)はMMの開集合である。同様に、x(U2)\boldsymbol{x}(U_2)から除かれる点の全体は{(−2,0,z)∣∣z∣<1}\{(-2,0,z)\mid\lvert z\rvert<1\}であり、これはM∩{x=−2, y=0}M\cap\{x=-2,\ y=0\}に等しいのでMMの閉集合であり、x(U2)\boldsymbol{x}(U_2)はMMの開集合である。

像への同相であること。x∣U1\boldsymbol{x}|_{U_1}について示す。p=(X,Y,Z)∈x(U1)p=(X,Y,Z)\in\boldsymbol{x}(U_1)に対しρ=X2+Y2\rho=\sqrt{X^2+Y^2}と置くとρ=r>1\rho=r>1であり、(cos⁡u,sin⁡u)=(X,Y)/ρ(\cos u,\sin u)=(X,Y)/\rhoかつu∈(0,2π)u\in(0,2\pi)である。写像c ⁣:[0,2π]→R2c\colon[0,2\pi]\to\mathbb{R}^2、c(u)=(cos⁡u,sin⁡u)c(u)=(\cos u,\sin u)を考える。pn→pp_n\to p(いずれもx(U1)\boldsymbol{x}(U_1)の点)とし、対応するun,u∈(0,2π)u_n,u\in(0,2\pi)を取るとc(un)→c(u)c(u_n)\to c(u)である。(un)(u_n)は有界であるから任意の部分列がさらに収束する部分列を持ち、その極限u∗∈[0,2π]u^{*}\in[0,2\pi]はc(u∗)=c(u)c(u^{*})=c(u)を満たす。ccは(0,2π)(0,2\pi)の上で単射でありc(0)=c(2π)=(1,0)≠c(u)c(0)=c(2\pi)=(1,0)\ne c(u)であるからu∗=uu^{*}=uである。すべての部分列が同じ極限を持つ部分列を含むのでun→uu_n\to uである。よってp↦up\mapsto uは連続である。さらにρ−2=vcos⁡u2\rho-2=v\cos\frac u2とZ=vsin⁡u2Z=v\sin\frac u2から

v=(ρ−2)cos⁡u2+Zsin⁡u2v=(\rho-2)\cos\tfrac u2+Z\sin\tfrac u2

であり、これも連続である。したがって(x∣U1)−1(\boldsymbol{x}|_{U_1})^{-1}は連続である。U2U_2についても、ccの定義域を[−π,π][-\pi,\pi]に取り替えて同じ議論を行えばよい。

以上によりx∣U1\boldsymbol{x}|_{U_1}とx∣U2\boldsymbol{x}|_{U_2}は正則パラメータ表示であって像がMMの開集合であり、二つの像はMMを覆う。定理 1.6によりMMは正則曲面である。

向きづけ可能でないこと。v=0v=0の上でベクトル積を計算する。r=2r=2、ru=0r_u=0であるから

xu(u,0)=(−2sin⁡u, 2cos⁡u, 0),xv(u,0)=(cos⁡u2cos⁡u, cos⁡u2sin⁡u, sin⁡u2)\boldsymbol{x}_u(u,0)=(-2\sin u,\ 2\cos u,\ 0),\qquad \boldsymbol{x}_v(u,0)=\Bigl(\cos\tfrac u2\cos u,\ \cos\tfrac u2\sin u,\ \sin\tfrac u2\Bigr)

であり

xu×xv∣v=0=2(cos⁡usin⁡u2, sin⁡usin⁡u2, −cos⁡u2)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\big|_{v=0} =2\Bigl(\cos u\sin\tfrac u2,\ \sin u\sin\tfrac u2,\ -\cos\tfrac u2\Bigr)

である。第三成分は−2sin⁡ucos⁡u2sin⁡u−2cos⁡ucos⁡u2cos⁡u=−2cos⁡u2-2\sin u\cos\frac u2\sin u-2\cos u\cos\frac u2\cos u=-2\cos\frac u2から得た。この長さは22であるから

n(u)=(cos⁡usin⁡u2, sin⁡usin⁡u2, −cos⁡u2)n(u)=\Bigl(\cos u\sin\tfrac u2,\ \sin u\sin\tfrac u2,\ -\cos\tfrac u2\Bigr)

は単位ベクトルである。x ⁣:D→R3\boldsymbol{x}\colon D\to\mathbb{R}^3はC∞C^\inftyのはめ込みであって像がMMに含まれるから、命題 3.5と命題 4.1により、n(u)n(u)はx(u,0)\boldsymbol{x}(u,0)におけるMMの単位法線である。ここでx\boldsymbol{x}が単射でないことは差し支えない。nnはuuについて連続であり

n(u+2π)=(−cos⁡usin⁡u2, −sin⁡usin⁡u2, cos⁡u2)=−n(u)n(u+2\pi)=\Bigl(-\cos u\sin\tfrac u2,\ -\sin u\sin\tfrac u2,\ \cos\tfrac u2\Bigr)=-n(u)

が成り立つ。一方、同一視の規則によりx(u+2π,0)=x(u,0)\boldsymbol{x}(u+2\pi,0)=\boldsymbol{x}(u,0)である。

MMが向きづけ可能であるとし、単位法線ベクトル場NNを取る。η(u)=⟨N(x(u,0)), n(u)⟩\eta(u)=\bigl\langle N(\boldsymbol{x}(u,0)),\ n(u)\bigr\rangleと置くと、命題 4.1によりη(u)∈{1,−1}\eta(u)\in\{1,-1\}であり、η\etaは連続関数の合成として連続である。R\mathbb{R}は連結であるからη\etaは定数である。しかし

η(u+2π)=⟨N(x(u+2π,0)), n(u+2π)⟩=⟨N(x(u,0)), −n(u)⟩=−η(u)\eta(u+2\pi)=\bigl\langle N(\boldsymbol{x}(u+2\pi,0)),\ n(u+2\pi)\bigr\rangle =\bigl\langle N(\boldsymbol{x}(u,0)),\ -n(u)\bigr\rangle=-\eta(u)

であり、η\etaの値が±1\pm1であることと矛盾する。よってMMは向きづけ可能でない。

5 演習

問題 5.1 (正則曲面・接平面・向きの確認). 次の各問に答えよ。

  1. 補題 1.5の証明で、§E17.5 定理 3.1の仮定である「近傍の上での階数の一定性」を満たしていることを確かめよ。点における階数だけを仮定した場合に何を述べることができなくなるかを説明せよ。
  2. 定理 1.6 (2)から 1 を導く部分で、Ω\OmegaをW∩G∩ψ−1(ϕ(V)×R)W\cap G\cap\psi^{-1}(\phi(V)\times\mathbb{R})と三つの共通部分に取った。三つの因子がそれぞれどの包含関係のために必要かを述べよ。どれか一つを落とすと証明のどこが成り立たなくなるかを示せ。
  3. 定義 1.3 条件 (c)(像への同相であること)を外すと、定理 1.8の証明のどこが成り立たなくなるかを述べよ。
  4. 命題 1.7 (1)の証明を再現せよ。逆関数定理を適用するためにdFq0dF_{q_0}が可逆であることを示した箇所を明示せよ。
  5. 例 2.5の三つの場合分けを再現せよ。頂点を除いた円錐が正則曲面であることと矛盾しない理由を述べよ。
  6. 命題 3.3のS⊆TpMS\subseteq T_pMの証明で、ε\varepsilonを小さく取り直す操作が必要な理由を述べよ。
  7. 円柱M={(x,y,z)∣x2+y2=1}M=\{(x,y,z)\mid x^2+y^2=1\}が正則曲面であることを命題 2.2によって示し、点p=(1,0,0)p=(1,0,0)における接平面と、二つの単位法線を求めよ。
  8. 例 4.5において、x\boldsymbol{x}の定義域をD=R×(−1,1)D=\mathbb{R}\times(-1,1)からU1=(0,2π)×(−1,1)U_1=(0,2\pi)\times(-1,1)へ制限し、曲面をx(U1)\boldsymbol{x}(U_1)に取り替えると、向きづけ可能でないことの議論のどこが成り立たなくなるかを述べよ。さらにx(U1)\boldsymbol{x}(U_1)が向きづけ可能であることを示せ。
解答 (演習の解答).

(1)はめ込みであることはUUのすべての点で階数が22であることを意味するから、q0q_0の任意の近傍の上で階数は定数22である。点における階数だけを仮定すると、§E17.5 定理 3.1の証明で∂G/∂v=0\partial G/\partial v=0を近傍全体で導く段が成り立たず、標準形が得られない。(2)WWはψ\psiが定義されチャートであるために必要である。GGはΩ∩M⊆x(V)\Omega\cap M\subseteq\boldsymbol{x}(V)を保証するために必要であり、これを落とすとψ(Ω∩M)⊆R2×{0}\psi(\Omega\cap M)\subseteq\mathbb{R}^2\times\{0\}を導くことができない。ψ−1(ϕ(V)×R)\psi^{-1}(\phi(V)\times\mathbb{R})は逆の包含に必要であり、これを落とすとψ(Ω)\psi(\Omega)の第三成分が零である点がϕ(V)×{0}\phi(V)\times\{0\}に入るとは限らず、その点がMMに属することを結論することができない。(3)条件 3 は二か所で使う。第一に、x−1(W)\boldsymbol{x}^{-1}(W)が開集合であることの証明でx−1\boldsymbol{x}^{-1}の連続性を使う。第二に、h=y−1∘xh=\boldsymbol{y}^{-1}\circ\boldsymbol{x}の連続性からA=h−1(U1)A=h^{-1}(U_1)が開集合であることを導く箇所で使う。hhの連続性が無いと、局所的な表示h=π∘xh=\pi\circ\boldsymbol{x}が成り立つ範囲が開集合であることを導くことができない。(4)本文のとおりである。w∘F=y\boldsymbol{w}\circ F=\boldsymbol{y}を微分してdw∘dF=dyd\boldsymbol{w}\circ dF=d\boldsymbol{y}を得る。右辺が単射であることからdFq0dF_{q_0}が単射であり、22次の正方行列であるから可逆である。(5)本文のとおりである。頂点を除いた円錐は原点を含まないので、原点における局所的なグラフ表示についての議論の対象にならない。矛盾を導いたのは原点の近傍についての主張であり、原点を除いた部分については何も主張していない。(6)π\piはΩ\Omegaの上でしか定義されておらず、α(t)=x(β(t))\alpha(t)=\boldsymbol{x}(\beta(t))を導くにはα(t)\alpha(t)がx(U1)=M∩G\boldsymbol{x}(U_1)=M\cap Gに属している必要がある。α\alphaの値が最初からG∩ΩG\cap\Omegaに入っている保証はないので、連続性を用いて定義域を縮める。(7)f(x,y,z)=x2+y2f(x,y,z)=x^2+y^2と置くと∇f=(2x,2y,0)\nabla f=(2x,2y,0)であり、MMの点ではx2+y2=1x^2+y^2=1であるから∇f≠0\nabla f\ne\boldsymbol{0}である。よって11は正則値であり命題 2.2によりMMは正則曲面である。p=(1,0,0)p=(1,0,0)では∇f(p)=(2,0,0)\nabla f(p)=(2,0,0)であるから、系 3.4によりTpM={(0,b,c)∣b,c∈R}T_pM=\{(0,b,c)\mid b,c\in\mathbb{R}\}である。単位法線は±(1,0,0)\pm(1,0,0)の二つであり、回転軸の側を向くのは(−1,0,0)(-1,0,0)である。(8)矛盾はη(u+2π)=−η(u)\eta(u+2\pi)=-\eta(u)から導かれるので、uuとu+2πu+2\piの両方が定義域に入っている必要がある。定義域をU1=(0,2π)×(−1,1)U_1=(0,2\pi)\times(-1,1)に取り替えると、u∈(0,2π)u\in(0,2\pi)に対してu+2πu+2\piは定義域に入らないので、この等式を書くことができない。実際x∣U1\boldsymbol{x}|_{U_1}は正則パラメータ表示でありU1U_1は連結であるから、n=(xu×xv)/∥xu×xv∥n=(\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v)/\lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVertをx∣U1\boldsymbol{x}|_{U_1}の逆写像と合成したものはx(U1)\boldsymbol{x}(U_1)の上の連続な単位法線ベクトル場を与える。よってx(U1)\boldsymbol{x}(U_1)は向きづけ可能である。▨

6 仮定と後続記事の境界

正則パラメータ表示の三つの条件は、どれも落とすことができない。はめ込みであることを落とすと接平面が定まらない。単射性を落とすと像が自分自身と交わり、一点における接平面が一意でなくなる。像への同相であることを落とすと、定理 1.8の証明で座標変換の定義域が開集合であることと、その連続性を導くことができない。「多様体入門」の§E17.5 例 2.2と§E17.5 例 2.4は、はめ込みかつ単射でありながら像への同相でない例である。

本記事は計量を導入しない。接平面の記述にR3\mathbb{R}^3の内積が現れるが、それを曲面の上の量として名づけていない。接平面へ内積を制限して得られる第一基本形式は、次の記事「第一基本形式と面積要素」が定義する。面積要素、局所等長写像、および曲面上の曲線の長さも同じ記事が扱う。

向きは連続な単位法線ベクトル場の選択である。例 4.5のとおり、そのような場が存在しない曲面がある。「位相幾何入門」が扱う局所ホモロジーによる向きは、これとは別に定義された概念である。二つの向きの対応は本記事では扱わず、大域 Gauss–Bonnet の定理で Euler 標数を引用する記事が確かめる。

角や頂点を持つ集合は扱わない。例 2.5のとおり、頂点を含む円錐は正則曲面ではない。境界を持つ曲面も本記事の対象ではない。局所 Gauss–Bonnet の定理で扱う領域は、正則曲面の中の、境界が区分的に滑らかな部分集合であって、曲面そのものが境界を持つわけではない。

定理 1.8は、以後のすべての記事が座標に依らない量を定義するときの基礎である。第一基本形式の成分、第二基本形式の成分、Christoffel 記号はいずれも座標に依存する量であり、それらから作った Gauss 曲率と平均曲率が座標に依らないことは、この定理を経由して確かめる。

参考文献

  1. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.正則曲面の定義、座標変換が微分同相であること、接平面、および Möbius の帯を向きづけ可能でない例とする扱い方を参考にした。
  2. John M. Lee, Introduction to Smooth Manifolds, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 218, Springer, New York, 2013.埋め込み部分多様体とスライスチャート、および像が部分多様体になるための条件を参考にした。
  3. Sebastián Montiel and Antonio Ros, Curves and Surfaces, 2nd ed., Graduate Studies in Mathematics 69, American Mathematical Society, Providence, 2009.三次元 Euclid 空間の曲面を部分多様体として定義する流儀と、向きづけ可能性の扱いを参考にした。

前提記事