§E19.5Gauss 写像・Weingarten 写像・第二基本形式

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平面と円柱は局所等長である(§E19.4 例 7.4)。したがって、二つの曲面の第一基本形式が一致していても、三次元空間への入り方は一致しない。曲がり方を測るには、第一基本形式に現れない情報、すなわち単位法線ベクトルが点とともにどれだけ向きを変えるかを用いる必要がある。

本記事は、向きを与える単位法線ベクトル場を単位球面への写像とみなした Gauss 写像を導入し、その微分の符号を変えたものを Weingarten 写像として定める。中心となる主張は、Weingarten 写像が第一基本形式に関して自己共役であることである。この事実によって、Weingarten 写像に対応する対称双線形形式として第二基本形式が定まり、次の記事でスペクトル定理を適用する道が開く。

本記事が示す範囲は次のとおりである。単位法線の微分が接平面に値を持つこと、Weingarten 写像の定義と自己共役性、第二基本形式の定義と成分表示、Weingarten 写像の成分行列、向きの反転に対する符号の変化、および法曲率が法断面の符号つき曲率に等しいことである。主曲率、Gauss 曲率および平均曲率は次の記事が扱う。

以下では、M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3は正則曲面(§E19.3 定義 1.1)を表し、⟨ , ⟩\langle\ ,\ \rangleはR3\mathbb{R}^3の標準内積、∥ ∥\lVert\ \rVertはそのノルム、×\timesはベクトル積を表す。S2={p∈R3:∥p∥=1}S^2=\{\boldsymbol{p}\in\mathbb{R}^3:\lVert\boldsymbol{p}\rVert=1\}と書く。曲線の主法線ベクトルNcN_{\mathrm{c}}(§E19.2 定義 3.1)と区別するため、曲面の単位法線ベクトルには添字を付けずにNNと書く。

1 Gauss 写像と Weingarten 写像

定義 1.1.MMを向きづけられた正則曲面とし、NNをその向きを与える単位法線ベクトル場(§E19.3 定義 4.2)とする。∥N(p)∥=1\lVert N(p)\rVert=1であるからNNはMMからS2S^2への写像とみなすことができる。この写像N ⁣:M→S2N\colon M\to S^2を、MMのGauss 写像 (Gauss map) という。

補題 1.2.定義 1.1のNNは§E19.4 定義 2.2の意味で滑らかな写像M→R3M\to\mathbb{R}^3である。さらに、正則パラメータ表示x ⁣:U→M\boldsymbol{x}\colon U\to Mに対して、UUの上の局所定数な関数ε\varepsilonで値が11または−1-1であるものが存在して

N∘x=ε xu×xv∥xu×xv∥N\circ\boldsymbol{x}=\varepsilon\,\frac{\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v}{\lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVert}

が成り立つ。

証明.x ⁣:U→M\boldsymbol{x}\colon U\to Mを正則パラメータ表示とする。xu×xv\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_vはxu\boldsymbol{x}_uとxv\boldsymbol{x}_vの両方に直交し、§E19.4 補題 1.5により∥xu×xv∥=EG−F2>0\lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVert=\sqrt{EG-F^2}>0である。したがって

n=xu×xv∥xu×xv∥\boldsymbol{n}=\frac{\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v}{\lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVert}

はUUの上のC∞C^\infty写像であり、各点でTx(q)MT_{\boldsymbol{x}(q)}Mに直交する単位ベクトルである。

q∈Uq\in Uに対してN(x(q))N(\boldsymbol{x}(q))もTx(q)MT_{\boldsymbol{x}(q)}Mに直交する単位ベクトルである。Tx(q)MT_{\boldsymbol{x}(q)}Mの直交補空間は一次元であるから、N(x(q))=ε(q)n(q)N(\boldsymbol{x}(q))=\varepsilon(q)\boldsymbol{n}(q)を満たすε(q)∈{1,−1}\varepsilon(q)\in\{1,-1\}がただ一つ定まり、ε=⟨N∘x,n⟩\varepsilon=\langle N\circ\boldsymbol{x},\boldsymbol{n}\rangleと書くことができる。NNは連続でありn\boldsymbol{n}は連続であるからε\varepsilonは連続であり、値が{1,−1}\{1,-1\}に含まれるので局所的に定数である。したがってN∘x=εnN\circ\boldsymbol{x}=\varepsilon\boldsymbol{n}はC∞C^\inftyである。パラメータ表示は任意であるから、NNは滑らかである。▨

補題 1.3.MMを向きづけられた正則曲面、NNをその Gauss 写像、p∈Mp\in Mとする。すべてのX∈TpMX\in T_pMについて

dNp(X)∈TpMdN_p(X)\in T_pM

が成り立つ。

証明.TpMT_pMはN(p)N(p)に直交する二次元線形部分空間であり、N(p)⊥N(p)^{\perp}も二次元であるからTpM=N(p)⊥T_pM=N(p)^{\perp}である。

γ\gammaをγ(0)=p\gamma(0)=p、γ′(0)=X\gamma'(0)=Xを満たすMMの中のC∞C^\infty曲線とする(§E19.4 補題 2.3 (2))。すべてのttについて⟨N(γ(t)),N(γ(t))⟩=1\langle N(\gamma(t)),N(\gamma(t))\rangle=1であるから、両辺をttで微分してt=0t=0と置くと

2⟨(N∘γ)′(0), N(p)⟩=02\bigl\langle (N\circ\gamma)'(0),\,N(p)\bigr\rangle=0

である。§E19.4 定義 2.2により(N∘γ)′(0)=dNp(X)(N\circ\gamma)'(0)=dN_p(X)であるからdNp(X)∈N(p)⊥=TpMdN_p(X)\in N(p)^{\perp}=T_pMである。▨

定義 1.4.MMを向きづけられた正則曲面、NNをその Gauss 写像、p∈Mp\in Mとする。

Sp=−dNpS_p=-dN_p

をppにおけるWeingarten 写像 (Weingarten map) という。補題 1.3によりSpS_pの値はTpMT_pMに属し、§E19.4 補題 2.3 (3)によりdNpdN_pは線形であるから、SpS_pはTpMT_pMの線形変換である。点を動かすときは添字を省いてSSと書く。

命題 1.5.x ⁣:U→M\boldsymbol{x}\colon U\to Mを正則パラメータ表示とし、NNをN∘xN\circ\boldsymbol{x}と同一視して、その偏導関数をNuN_u、NvN_vと書く(§E19.4 注意 2.4)。このときUUの各点で

S(xu)=−Nu,S(xv)=−NvS(\boldsymbol{x}_u)=-N_u,\qquad S(\boldsymbol{x}_v)=-N_v

が成り立つ。

証明.§E19.4 注意 2.4によりdNp(xu)=NudN_p(\boldsymbol{x}_u)=N_u、dNp(xv)=NvdN_p(\boldsymbol{x}_v)=N_vである。定義 1.4の定義S=−dNS=-dNを適用すると主張を得る。▨

2 自己共役性

Weingarten 写像が自己共役であることは、第二基本形式を対称双線形形式として定義するための根拠であり、次の記事でスペクトル定理を適用するための唯一の入口でもある。証明の骨格は次のとおりである。示すべき等式はXXとYYについて双線形であるから、接平面の基底xu\boldsymbol{x}_u、xv\boldsymbol{x}_vの組についてだけ確かめれば足りる。単位法線が二つの座標接ベクトルの両方に直交するという関係式を、それぞれ別の変数で偏微分すると、どちらも⟨N,xuv⟩\langle N,\boldsymbol{x}_{uv}\rangleと⟨N,xvu⟩\langle N,\boldsymbol{x}_{vu}\rangleを与える。二階偏導関数の交換によってこの二つが一致する。

定理 2.1.MMを向きづけられた正則曲面、NNをその Gauss 写像、p∈Mp\in Mとする。すべてのX,Y∈TpMX,Y\in T_pMについて

⟨Sp(X),Y⟩=⟨X,Sp(Y)⟩\langle S_p(X),Y\rangle=\langle X,S_p(Y)\rangle

が成り立つ。すなわちSpS_pは二次元実内積空間(TpM,Ip)(T_pM,\mathrm{I}_p)の自己随伴作用素(§E3.35 定義 2.1)である。

証明.x ⁣:U→M\boldsymbol{x}\colon U\to Mをppを像に含む正則パラメータ表示とし、q=x−1(p)q=\boldsymbol{x}^{-1}(p)と置く。写像

(X,Y)⟼⟨Sp(X),Y⟩−⟨X,Sp(Y)⟩(X,Y)\longmapsto\langle S_p(X),Y\rangle-\langle X,S_p(Y)\rangle

はTpM×TpMT_pM\times T_pMの上で双線形であり、X=YX=Yのときは値が00である。したがって、基底{xu(q),xv(q)}\{\boldsymbol{x}_u(q),\boldsymbol{x}_v(q)\}の四つの組のうち、(xu,xv)(\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v)の場合に値が00であることを示せば、双線形性から全体で00であることが従う。

UUの各点でNNはTMT Mに直交するので

⟨N,xu⟩=0,⟨N,xv⟩=0\langle N,\boldsymbol{x}_u\rangle=0,\qquad\langle N,\boldsymbol{x}_v\rangle=0

がUUの上で恒等的に成り立つ。第二の等式をuuで偏微分すると

⟨Nu,xv⟩+⟨N,xvu⟩=0\langle N_u,\boldsymbol{x}_v\rangle+\langle N,\boldsymbol{x}_{vu}\rangle=0

であり、第一の等式をvvで偏微分すると

⟨Nv,xu⟩+⟨N,xuv⟩=0\langle N_v,\boldsymbol{x}_u\rangle+\langle N,\boldsymbol{x}_{uv}\rangle=0

である。x\boldsymbol{x}はC∞C^\inftyであるから、とくに各成分はC2C^2であり、§E4.4 定理 2.1を三つの成分のそれぞれへ適用してxuv=xvu\boldsymbol{x}_{uv}=\boldsymbol{x}_{vu}を得る。したがって二つの式の第二項は等しく

⟨Nu,xv⟩=−⟨N,xuv⟩=⟨Nv,xu⟩\langle N_u,\boldsymbol{x}_v\rangle=-\langle N,\boldsymbol{x}_{uv}\rangle=\langle N_v,\boldsymbol{x}_u\rangle

である。命題 1.5により

⟨S(xu),xv⟩=−⟨Nu,xv⟩=−⟨Nv,xu⟩=⟨xu,S(xv)⟩\langle S(\boldsymbol{x}_u),\boldsymbol{x}_v\rangle=-\langle N_u,\boldsymbol{x}_v\rangle =-\langle N_v,\boldsymbol{x}_u\rangle=\langle\boldsymbol{x}_u,S(\boldsymbol{x}_v)\rangle

であるから、求める等式を得る。

最後の主張を確かめる。§E19.4 命題 1.2により(TpM,Ip)(T_pM,\mathrm{I}_p)は二次元実内積空間であり、Ip\mathrm{I}_pはR3\mathbb{R}^3の標準内積の制限であるから、上で示した等式はIp(Sp(X),Y)=Ip(X,Sp(Y))\mathrm{I}_p(S_p(X),Y)=\mathrm{I}_p(X,S_p(Y))と同じである。これは§E3.35 定義 2.1の自己随伴性の条件である。▨

注意 2.2 (この証明が用いた仮定). 上の証明が用いたのは、NNが各点で接平面に直交する単位ベクトルであることと、パラメータ表示の二階偏導関数が交換することだけである。したがって、曲面がC2C^2であれば結論は成り立つ。

一方、第一基本形式が定める内積と第二基本形式とを結ぶこの対応は、二次形式の一般論から自動的に従うものではない。「線形代数 II」が扱う対称双線形形式の理論は、基底の取り替えによる合同変換を扱っており、内積空間の作用素論とは接続していない。上の定理は、その接続を曲面の場合に具体的に与えている。

3 第二基本形式

定義 3.1.MMを向きづけられた正則曲面、NNをその Gauss 写像、p∈Mp\in Mとする。

IIp(X,Y)=⟨Sp(X),Y⟩(X,Y∈TpM)\mathrm{II}_p(X,Y)=\langle S_p(X),Y\rangle\qquad(X,Y\in T_pM)

を、MMのppにおける第二基本形式 (second fundamental form) という。SpS_pは線形であるからIIp\mathrm{II}_pは双線形であり、定理 2.1により対称である。

第二基本形式は単位法線の選び方に依存する。NNを−N-Nへ取り替えたときの変化は命題 3.4が述べる。

命題 3.2.x ⁣:U→M\boldsymbol{x}\colon U\to Mを正則パラメータ表示とする。

e=II(xu,xu),f=II(xu,xv),g=II(xv,xv)e=\mathrm{II}(\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_u),\qquad f=\mathrm{II}(\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v),\qquad g=\mathrm{II}(\boldsymbol{x}_v,\boldsymbol{x}_v)

と置くと、UUの各点で

e=⟨N,xuu⟩,f=⟨N,xuv⟩,g=⟨N,xvv⟩e=\langle N,\boldsymbol{x}_{uu}\rangle,\qquad f=\langle N,\boldsymbol{x}_{uv}\rangle,\qquad g=\langle N,\boldsymbol{x}_{vv}\rangle

が成り立つ。ee、ff、ggはUUの上のC∞C^\infty関数である。さらにX=axu+bxvX=a\boldsymbol{x}_u+b\boldsymbol{x}_v、Y=cxu+dxvY=c\boldsymbol{x}_u+d\boldsymbol{x}_vに対して

II(X,Y)=eac+f(ad+bc)+gbd=(ab)II(cd),II=(effg)\mathrm{II}(X,Y)=eac+f(ad+bc)+gbd =\begin{pmatrix}a&b\end{pmatrix}\mathrm{II}\begin{pmatrix}c\\d\end{pmatrix}, \qquad \mathrm{II}=\begin{pmatrix}e&f\\f&g\end{pmatrix}

が成り立つ。ここで成分行列を、双線形形式と同じ記号II\mathrm{II}で表した。

証明.⟨N,xu⟩=0\langle N,\boldsymbol{x}_u\rangle=0をuuで偏微分すると⟨Nu,xu⟩+⟨N,xuu⟩=0\langle N_u,\boldsymbol{x}_u\rangle+\langle N,\boldsymbol{x}_{uu}\rangle=0である。命題 1.5により

e=⟨S(xu),xu⟩=−⟨Nu,xu⟩=⟨N,xuu⟩e=\langle S(\boldsymbol{x}_u),\boldsymbol{x}_u\rangle=-\langle N_u,\boldsymbol{x}_u\rangle=\langle N,\boldsymbol{x}_{uu}\rangle

である。同じく⟨N,xu⟩=0\langle N,\boldsymbol{x}_u\rangle=0をvvで偏微分して⟨Nv,xu⟩=−⟨N,xuv⟩\langle N_v,\boldsymbol{x}_u\rangle=-\langle N,\boldsymbol{x}_{uv}\rangleを得るので

f=⟨S(xu),xv⟩=⟨xu,S(xv)⟩=−⟨Nv,xu⟩=⟨N,xuv⟩f=\langle S(\boldsymbol{x}_u),\boldsymbol{x}_v\rangle=\langle\boldsymbol{x}_u,S(\boldsymbol{x}_v)\rangle=-\langle N_v,\boldsymbol{x}_u\rangle=\langle N,\boldsymbol{x}_{uv}\rangle

である。ここで第二の等号は定理 2.1による。⟨N,xv⟩=0\langle N,\boldsymbol{x}_v\rangle=0をvvで偏微分すると、同様にg=⟨N,xvv⟩g=\langle N,\boldsymbol{x}_{vv}\rangleを得る。N∘xN\circ\boldsymbol{x}とx\boldsymbol{x}の二階偏導関数はいずれもC∞C^\inftyであるから、ee、ff、ggはC∞C^\inftyである。

最後の等式はII\mathrm{II}の双線形性と対称性から従う。▨

命題 3.3.命題 3.2の記号のもとで、S(xu)S(\boldsymbol{x}_u)とS(xv)S(\boldsymbol{x}_v)を基底{xu,xv}\{\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v\}で

S(xu)=a11xu+a21xv,S(xv)=a12xu+a22xvS(\boldsymbol{x}_u)=a_{11}\boldsymbol{x}_u+a_{21}\boldsymbol{x}_v,\qquad S(\boldsymbol{x}_v)=a_{12}\boldsymbol{x}_u+a_{22}\boldsymbol{x}_v

と書き、A=(aij)A=(a_{ij})と置く。このとき

A=I−1 II=1EG−F2(eG−fFfG−gFfE−eFgE−fF)A=\mathrm{I}^{-1}\,\mathrm{II} =\frac{1}{EG-F^2}\begin{pmatrix}eG-fF&fG-gF\\fE-eF&gE-fF\end{pmatrix}

が成り立つ。

証明.x1=xu\boldsymbol{x}_1=\boldsymbol{x}_u、x2=xv\boldsymbol{x}_2=\boldsymbol{x}_vと書く。S(xi)=∑kakixkS(\boldsymbol{x}_i)=\sum_{k}a_{ki}\boldsymbol{x}_kであるから

IIij=II(xi,xj)=⟨S(xi),xj⟩=∑kaki⟨xk,xj⟩=∑kaki Ikj=(ATI)ij\mathrm{II}_{ij}=\mathrm{II}(\boldsymbol{x}_i,\boldsymbol{x}_j)=\langle S(\boldsymbol{x}_i),\boldsymbol{x}_j\rangle =\sum_{k}a_{ki}\langle\boldsymbol{x}_k,\boldsymbol{x}_j\rangle=\sum_{k}a_{ki}\,\mathrm{I}_{kj} =\bigl(A^{\mathsf T}\mathrm{I}\bigr)_{ij}

である。§E19.4 命題 1.4によりI\mathrm{I}は可逆であるからAT=II I−1A^{\mathsf T}=\mathrm{II}\,\mathrm{I}^{-1}であり、両辺を転置し、I\mathrm{I}とII\mathrm{II}がともに対称であることを用いるとA=I−1IIA=\mathrm{I}^{-1}\mathrm{II}を得る。

I−1=1EG−F2(G−F−FE)\mathrm{I}^{-1}=\frac{1}{EG-F^2}\begin{pmatrix}G&-F\\-F&E\end{pmatrix}

を代入して積を計算すると、主張の行列表示を得る。▨

命題 3.4.MMを向きづけられた正則曲面、NNをその Gauss 写像とする。N~=−N\tilde N=-NもまたMMの向きを与える単位法線ベクトル場である。N~\tilde Nに関する Weingarten 写像をS~\tilde S、第二基本形式をII~\widetilde{\mathrm{II}}、成分をe~,f~,g~\tilde e,\tilde f,\tilde gと書くと

S~=−S,II~=−II,(e~,f~,g~)=(−e,−f,−g)\tilde S=-S,\qquad \widetilde{\mathrm{II}}=-\mathrm{II},\qquad (\tilde e,\tilde f,\tilde g)=(-e,-f,-g)

が成り立つ。第一基本形式とその成分E,F,GE,F,Gは変わらない。

証明.N~=−N\tilde N=-Nは各点で単位ベクトルであり接平面に直交するから、単位法線ベクトル場である。§E19.4 定義 2.2の微分は各成分について線形であるからdN~p=−dNpd\tilde N_p=-dN_pであり、

S~p=−dN~p=dNp=−Sp\tilde S_p=-d\tilde N_p=dN_p=-S_p

である。したがってII~p(X,Y)=⟨S~p(X),Y⟩=−⟨Sp(X),Y⟩=−IIp(X,Y)\widetilde{\mathrm{II}}_p(X,Y)=\langle\tilde S_p(X),Y\rangle=-\langle S_p(X),Y\rangle=-\mathrm{II}_p(X,Y)であり、成分についても符号が反転する。第一基本形式はR3\mathbb{R}^3の標準内積の接平面への制限であり、その定義にNNが現れないので変わらない。▨

4 法曲率と法断面

補題 4.1.MMを向きづけられた正則曲面、NNをその Gauss 写像、p∈Mp\in Mとする。γ ⁣:(−ε,ε)→M\gamma\colon(-\varepsilon,\varepsilon)\to Mをγ(0)=p\gamma(0)=pを満たすC∞C^\infty曲線とし、X=γ′(0)X=\gamma'(0)と置く。このとき

⟨γ′′(0), N(p)⟩=IIp(X,X)\bigl\langle\gamma''(0),\,N(p)\bigr\rangle=\mathrm{II}_p(X,X)

が成り立つ。とくに左辺は、γ\gammaのうち速度ベクトルγ′(0)\gamma'(0)だけによって定まる。

証明.§E19.4 補題 2.3 (1)により、すべてのttについてγ′(t)∈Tγ(t)M\gamma'(t)\in T_{\gamma(t)}Mであり、N(γ(t))N(\gamma(t))はこの接平面に直交するから

⟨γ′(t), N(γ(t))⟩=0\bigl\langle\gamma'(t),\,N(\gamma(t))\bigr\rangle=0

が成り立つ。両辺をttで微分してt=0t=0と置くと

⟨γ′′(0),N(p)⟩+⟨γ′(0),(N∘γ)′(0)⟩=0\bigl\langle\gamma''(0),N(p)\bigr\rangle+\bigl\langle\gamma'(0),(N\circ\gamma)'(0)\bigr\rangle=0

である。§E19.4 定義 2.2により(N∘γ)′(0)=dNp(X)=−Sp(X)(N\circ\gamma)'(0)=dN_p(X)=-S_p(X)であるから

⟨γ′′(0),N(p)⟩=⟨X,Sp(X)⟩=⟨Sp(X),X⟩=IIp(X,X)\bigl\langle\gamma''(0),N(p)\bigr\rangle=\langle X,S_p(X)\rangle=\langle S_p(X),X\rangle=\mathrm{II}_p(X,X)

である。ここで第二の等号はR3\mathbb{R}^3の標準内積の対称性による。右辺はXXだけで定まる。▨

定義 4.2.MMを向きづけられた正則曲面、p∈Mp\in Mとし、X∈TpMX\in T_pMが∥X∥=1\lVert X\rVert=1を満たすとする。値

kN(X)=IIp(X,X)k_N(X)=\mathrm{II}_p(X,X)

を、ppにおけるXX方向の法曲率 (normal curvature) という。補題 4.1により、kN(X)k_N(X)はppを通りXXを速度ベクトルとするMMの中のどの曲線についても、その加速度のN(p)N(p)方向の成分に等しい。この値がXX方向の法断面の符号つき曲率に等しいことは定理 4.4で示す。

法断面が正則曲線になることを示すために、曲面を接平面の上のグラフとして局所的に表す。

補題 4.3.MMを正則曲面、p∈Mp\in Mとし、{e1,e2}\{\boldsymbol{e}_1,\boldsymbol{e}_2\}をTpMT_pMの正規直交基底、e3\boldsymbol{e}_3をTpMT_pMに直交する単位ベクトルとする。アフィン写像

Ψ(a,b,c)=p+ae1+be2+ce3\Psi(a,b,c)=p+a\boldsymbol{e}_1+b\boldsymbol{e}_2+c\boldsymbol{e}_3

を考える。このときρ>0\rho>0とC∞C^\infty関数h ⁣:(−ρ,ρ)2→Rh\colon(-\rho,\rho)^2\to\mathbb{R}が存在して、次が成り立つ。

  1. h(0,0)=0h(0,0)=0かつha(0,0)=hb(0,0)=0h_a(0,0)=h_b(0,0)=0である。
  2. y(a,b)=Ψ(a,b,h(a,b))\boldsymbol{y}(a,b)=\Psi\bigl(a,b,h(a,b)\bigr)はMMの正則パラメータ表示であり、y(0,0)=p\boldsymbol{y}(0,0)=pである。
  3. y((−ρ,ρ)2)\boldsymbol{y}\bigl((-\rho,\rho)^2\bigr)はMMの開集合である。

証明.{e1,e2,e3}\{\boldsymbol{e}_1,\boldsymbol{e}_2,\boldsymbol{e}_3\}はR3\mathbb{R}^3の正規直交基底であるから、Ψ\Psiは全単射なアフィン写像であり、Ψ\PsiとΨ−1\Psi^{-1}はともにC∞C^\inftyである。Ψ−1\Psi^{-1}の線形部分はTpMT_pMをR2×{0}\mathbb{R}^2\times\{0\}へ写す。

x ⁣:U→M\boldsymbol{x}\colon U\to Mをppを像に含む正則パラメータ表示、q=x−1(p)q=\boldsymbol{x}^{-1}(p)とする。pr ⁣:R3→R2\mathrm{pr}\colon\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^2を最初の二成分への射影とし

β=pr∘Ψ−1∘x ⁣:U→R2\beta=\mathrm{pr}\circ\Psi^{-1}\circ\boldsymbol{x}\colon U\to\mathbb{R}^2

と置く。連鎖律(§E4.3 定理 1.1)によりDβ(q)=pr∘L∘Dx(q)D\beta(q)=\mathrm{pr}\circ L\circ D\boldsymbol{x}(q)である。ここでLLはΨ−1\Psi^{-1}の線形部分である。Dx(q)(R2)=TpMD\boldsymbol{x}(q)(\mathbb{R}^2)=T_pM(§E19.3 定義 3.1)であり、L(TpM)=R2×{0}L(T_pM)=\mathbb{R}^2\times\{0\}、pr\mathrm{pr}はこの部分空間の上で同型であるから、Dβ(q)D\beta(q)は可逆である。§E4.7 定理 2.1と§E17.5 補題 1.1により、qqの開近傍U1⊆UU_1\subseteq Uとβ(q)=(0,0)\beta(q)=(0,0)の開近傍W1W_1が存在してβ ⁣:U1→W1\beta\colon U_1\to W_1はC∞C^\infty微分同相である。ρ>0\rho>0を(−ρ,ρ)2⊆W1(-\rho,\rho)^2\subseteq W_1となるように取り、W=(−ρ,ρ)2W=(-\rho,\rho)^2、U0=β−1(W)U_0=\beta^{-1}(W)と置く。

y=x∘(β∣U0)−1 ⁣:W→M\boldsymbol{y}=\boldsymbol{x}\circ(\beta|_{U_0})^{-1}\colon W\to Mと定める。x∣U0\boldsymbol{x}|_{U_0}は正則パラメータ表示であり、(β∣U0)−1(\beta|_{U_0})^{-1}はC∞C^\infty微分同相であるから、y\boldsymbol{y}は正則パラメータ表示でありy(0,0)=x(q)=p\boldsymbol{y}(0,0)=\boldsymbol{x}(q)=pである。像y(W)=x(U0)\boldsymbol{y}(W)=\boldsymbol{x}(U_0)がMMの開集合であることは§E19.4 補題 2.1 (1)による。

Ψ−1∘y\Psi^{-1}\circ\boldsymbol{y}の最初の二成分はpr∘Ψ−1∘x∘(β∣U0)−1=β∘(β∣U0)−1\mathrm{pr}\circ\Psi^{-1}\circ\boldsymbol{x}\circ(\beta|_{U_0})^{-1}=\beta\circ(\beta|_{U_0})^{-1}であり、これはWWの恒等写像である。第三成分をhhと置くとhhはC∞C^\inftyであり

Ψ−1(y(a,b))=(a,b,h(a,b)),すなわちy(a,b)=Ψ(a,b,h(a,b))\Psi^{-1}\bigl(\boldsymbol{y}(a,b)\bigr)=\bigl(a,b,h(a,b)\bigr),\qquad\text{すなわち}\qquad \boldsymbol{y}(a,b)=\Psi\bigl(a,b,h(a,b)\bigr)

である。y(0,0)=p=Ψ(0,0,0)\boldsymbol{y}(0,0)=p=\Psi(0,0,0)であるからh(0,0)=0h(0,0)=0である。

偏微分すると

ya=e1+hae3,yb=e2+hbe3\boldsymbol{y}_a=\boldsymbol{e}_1+h_a\boldsymbol{e}_3,\qquad \boldsymbol{y}_b=\boldsymbol{e}_2+h_b\boldsymbol{e}_3

である。(a,b)=(0,0)(a,b)=(0,0)ではya(0,0),yb(0,0)∈TpM\boldsymbol{y}_a(0,0),\boldsymbol{y}_b(0,0)\in T_pMであり、TpMT_pMはe3\boldsymbol{e}_3に直交するので、e3\boldsymbol{e}_3との内積を取るとha(0,0)=hb(0,0)=0h_a(0,0)=h_b(0,0)=0を得る。▨

定理 4.4.MMを向きづけられた正則曲面、NNをその Gauss 写像、p∈Mp\in Mとし、X∈TpMX\in T_pMが∥X∥=1\lVert X\rVert=1を満たすとする。Π={p+sX+tN(p):s,t∈R}\Pi=\{p+sX+tN(p):s,t\in\mathbb{R}\}を、ppを通りXXとN(p)N(p)が張る平面とする。このとき、R3\mathbb{R}^3の開集合O∋pO\ni pと、00を含む開区間(s−,s+)(s_-,s_+)の上で定義された単位速度のC∞C^\infty曲線β ⁣:(s−,s+)→R3\beta\colon(s_-,s_+)\to\mathbb{R}^3が存在して、次が成り立つ。

  1. β\betaの像はM∩Π∩OM\cap\Pi\cap Oに等しく、β(0)=p\beta(0)=p、β′(0)=X\beta'(0)=Xである。この曲線を、ppにおけるXX方向の法断面という。
  2. β′′(0)=IIp(X,X) N(p)\beta''(0)=\mathrm{II}_p(X,X)\,N(p)が成り立つ。

とくに、法断面のppにおける曲率(§E19.2 定義 3.1の意味)は∣IIp(X,X)∣\lvert\mathrm{II}_p(X,X)\rvertに等しく、IIp(X,X)>0\mathrm{II}_p(X,X)>0であることとβ′′(0)\beta''(0)がN(p)N(p)と同じ向きであることは同値である。

証明.e1=X\boldsymbol{e}_1=X、e2=N(p)×X\boldsymbol{e}_2=N(p)\times X、e3=N(p)\boldsymbol{e}_3=N(p)と置く。XXとN(p)N(p)はともに単位ベクトルであり互いに直交するから、e2\boldsymbol{e}_2は単位ベクトルでありe1\boldsymbol{e}_1とe3\boldsymbol{e}_3の両方に直交する。したがって{e1,e2}\{\boldsymbol{e}_1,\boldsymbol{e}_2\}はTpMT_pMの正規直交基底である。

補題 4.3をこの基底に適用し、ρ\rho、hh、y\boldsymbol{y}、W=(−ρ,ρ)2W=(-\rho,\rho)^2を得る。y(W)\boldsymbol{y}(W)はMMの開集合であるから、R3\mathbb{R}^3の開集合OOでM∩O=y(W)M\cap O=\boldsymbol{y}(W)を満たすものが存在する。

Ψ\Psiを補題 4.3のアフィン写像とするとΠ=Ψ({(a,0,c):a,c∈R})\Pi=\Psi\bigl(\{(a,0,c):a,c\in\mathbb{R}\}\bigr)である。y(a,b)∈Π\boldsymbol{y}(a,b)\in\PiであることはΨ−1(y(a,b))=(a,b,h(a,b))\Psi^{-1}(\boldsymbol{y}(a,b))=(a,b,h(a,b))の第二成分が00であること、すなわちb=0b=0であることと同値である。したがって

M∩Π∩O=y(W)∩Π={y(a,0):∣a∣<ρ}M\cap\Pi\cap O=\boldsymbol{y}(W)\cap\Pi=\{\boldsymbol{y}(a,0):\lvert a\rvert<\rho\}

である。

α(a)=y(a,0)=Ψ(a,0,h(a,0))\alpha(a)=\boldsymbol{y}(a,0)=\Psi\bigl(a,0,h(a,0)\bigr)と置くとα\alphaはC∞C^\inftyであり

α′(a)=e1+ha(a,0) e3≠0\alpha'(a)=\boldsymbol{e}_1+h_a(a,0)\,\boldsymbol{e}_3\ne0

であるから、α\alphaは正則曲線(§E19.1 定義 1.1)である。ha(0,0)=0h_a(0,0)=0よりα(0)=p\alpha(0)=p、α′(0)=e1=X\alpha'(0)=\boldsymbol{e}_1=X、∥α′(0)∥=1\lVert\alpha'(0)\rVert=1である。

a=0a=0を基点とする弧長関数s(a)=∫0a∥α′(τ)∥ dτs(a)=\int_0^a\lVert\alpha'(\tau)\rVert\,d\tau(§E19.1 定義 2.1)を取る。§E19.1 定理 2.2によりssは(−ρ,ρ)(-\rho,\rho)から開区間(s−,s+)=s((−ρ,ρ))(s_-,s_+)=s\bigl((-\rho,\rho)\bigr)への狭義単調増加なC∞C^\infty微分同相であり、s(0)=0s(0)=0であるからs−<0<s+s_-<0<s_+である。β=α∘s−1\beta=\alpha\circ s^{-1}は単位速度のC∞C^\infty曲線であり、α\alphaと像が同じであるから、その像はM∩Π∩OM\cap\Pi\cap Oに等しい。β(0)=α(0)=p\beta(0)=\alpha(0)=pであり、∥α′(0)∥=1\lVert\alpha'(0)\rVert=1からβ′(0)=α′(0)/∥α′(0)∥=X\beta'(0)=\alpha'(0)/\lVert\alpha'(0)\rVert=Xである。以上で(1)が成り立つ。

(2)を示す。β\betaの像はΠ\Piに含まれるから、すべてのttについてβ(t)−p∈span(e1,e3)\beta(t)-p\in\mathrm{span}(\boldsymbol{e}_1,\boldsymbol{e}_3)である。この部分空間は線形部分空間であり、微分は差分商の極限であるからβ′(t)\beta'(t)とβ′′(t)\beta''(t)もこの部分空間に属する。とくにβ′′(0)∈span(X,N(p))\beta''(0)\in\mathrm{span}(X,N(p))である。

∥β′(t)∥2=1\lVert\beta'(t)\rVert^2=1をttで微分すると⟨β′′(t),β′(t)⟩=0\langle\beta''(t),\beta'(t)\rangle=0であり、t=0t=0ではβ′′(0)⊥X\beta''(0)\perp Xである。したがってβ′′(0)∈span(N(p))\beta''(0)\in\mathrm{span}(N(p))であり

β′′(0)=⟨β′′(0),N(p)⟩ N(p)\beta''(0)=\bigl\langle\beta''(0),N(p)\bigr\rangle\,N(p)

である。β\betaはMMの中のC∞C^\infty曲線でありβ(0)=p\beta(0)=p、β′(0)=X\beta'(0)=Xであるから、補題 4.1により⟨β′′(0),N(p)⟩=IIp(X,X)\langle\beta''(0),N(p)\rangle=\mathrm{II}_p(X,X)である。よって(2)が成り立つ。

最後の主張を確かめる。β\betaは単位速度であるから、§E19.2 定義 3.1によりβ\betaのppにおける曲率は∥β′′(0)∥\lVert\beta''(0)\rVertであり、(2)からこれは∣IIp(X,X)∣\lvert\mathrm{II}_p(X,X)\rvertに等しい。符号についての主張も(2)から直ちに従う。▨

5 例

例 5.1 (平面).p0∈R3\boldsymbol{p}_0\in\mathbb{R}^3と一次独立なa,b∈R3\boldsymbol{a},\boldsymbol{b}\in\mathbb{R}^3に対してP={p0+sa+tb:s,t∈R}P=\{\boldsymbol{p}_0+s\boldsymbol{a}+t\boldsymbol{b}:s,t\in\mathbb{R}\}と置く。c=a×b≠0\boldsymbol{c}=\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}\ne0としΛ(p)=⟨p−p0,c⟩\Lambda(\boldsymbol{p})=\langle\boldsymbol{p}-\boldsymbol{p}_0,\boldsymbol{c}\rangleと置くと、P=Λ−1(0)P=\Lambda^{-1}(0)でありdΛp(w)=⟨w,c⟩d\Lambda_{\boldsymbol{p}}(\boldsymbol{w})=\langle\boldsymbol{w},\boldsymbol{c}\rangleは全射であるから、§E17.5 定理 4.3によりPPは正則曲面である。x(u,v)=p0+ua+vb\boldsymbol{x}(u,v)=\boldsymbol{p}_0+u\boldsymbol{a}+v\boldsymbol{b}は単射なはめ込みであり、{a,b}\{\boldsymbol{a},\boldsymbol{b}\}を基底に取った座標が逆写像を与えるので像への同相であり、PPの正則パラメータ表示である。xu=a\boldsymbol{x}_u=\boldsymbol{a}、xv=b\boldsymbol{x}_v=\boldsymbol{b}は定ベクトルであるから、N=(a×b)/∥a×b∥N=(\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b})/\lVert\boldsymbol{a}\times\boldsymbol{b}\rVertは定ベクトルである。したがってNu=Nv=0N_u=N_v=0であり、命題 1.5によりS=0S=0、II=0\mathrm{II}=0である。二階偏導関数はすべて00であるから、命題 3.2からもe=f=g=0e=f=g=0が従う。すべての単位接ベクトルについて法曲率は00である。

例 5.2 (球面).r>0r>0とし、半径rrの球面SrS_rを考える。本単元では閉曲面に内向きの単位法線を取るので

N(p)=−pr(p∈Sr)N(\boldsymbol{p})=-\frac{\boldsymbol{p}}{r}\qquad(\boldsymbol{p}\in S_r)

とする。Λ(p)=∥p∥2\Lambda(\boldsymbol{p})=\lVert\boldsymbol{p}\rVert^2と置くとSr=Λ−1(r2)S_r=\Lambda^{-1}(r^2)であり、dΛp(w)=2⟨p,w⟩d\Lambda_{\boldsymbol{p}}(\boldsymbol{w})=2\langle\boldsymbol{p},\boldsymbol{w}\rangleはp≠0\boldsymbol{p}\ne0で全射であるから、§E17.5 定理 4.3によりSrS_rは正則曲面でありTpSr=ker⁡dΛp=p⊥T_{\boldsymbol{p}}S_r=\ker d\Lambda_{\boldsymbol{p}}=\boldsymbol{p}^{\perp}である。したがってNNは各点で単位ベクトルであって接平面に直交するので、単位法線ベクトル場である。

NNは線形写像p↦−p/r\boldsymbol{p}\mapsto-\boldsymbol{p}/rのSrS_rへの制限であるから、γ(0)=p\gamma(0)=\boldsymbol{p}、γ′(0)=X\gamma'(0)=Xを満たす曲線について(N∘γ)′(0)=−X/r(N\circ\gamma)'(0)=-X/rである。したがって

dNp(X)=−Xr,Sp(X)=Xr,IIp(X,Y)=1r⟨X,Y⟩=1r Ip(X,Y)dN_{\boldsymbol{p}}(X)=-\frac{X}{r},\qquad S_{\boldsymbol{p}}(X)=\frac{X}{r},\qquad \mathrm{II}_{\boldsymbol{p}}(X,Y)=\frac{1}{r}\langle X,Y\rangle=\frac{1}{r}\,\mathrm{I}_{\boldsymbol{p}}(X,Y)

である。すべての単位接ベクトルについて法曲率は1/r1/rである。

§E19.4 例 6.2のパラメータ表示x(u,v)=(rsin⁡ucos⁡v, rsin⁡usin⁡v, rcos⁡u)\boldsymbol{x}(u,v)=(r\sin u\cos v,\ r\sin u\sin v,\ r\cos u)については

xu×xv=rsin⁡u⋅x\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=r\sin u\cdot\boldsymbol{x}

であり、sin⁡u>0\sin u>0であるから、この表示が定める向き(§E19.3 定義 4.2)は外向きのx/r\boldsymbol{x}/rである。したがって内向きのNNは、この表示が定める向きの反対であり、変数の順序を(v,u)(v,u)に取り替えたものが定める向きに一致する。内向きのNNに関する成分はII=I/r\mathrm{II}=\mathrm{I}/rから

e=Er=r,f=0,g=Gr=rsin⁡2ue=\frac{E}{r}=r,\qquad f=0,\qquad g=\frac{G}{r}=r\sin^2u

である。外向きのp/r\boldsymbol{p}/rを取ると、命題 3.4によりS=−id/rS=-\mathrm{id}/r、II=−I/r\mathrm{II}=-\mathrm{I}/rとなり、法曲率はすべての方向で−1/r-1/rである。

例 5.3 (円柱).r>0r>0とし、§E19.4 例 6.3のパラメータ表示x(u,v)=(rcos⁡v, rsin⁡v, u)\boldsymbol{x}(u,v)=(r\cos v,\ r\sin v,\ u)を取る。

xu=(0,0,1),xv=r(−sin⁡v, cos⁡v, 0)\boldsymbol{x}_u=(0,0,1),\qquad\boldsymbol{x}_v=r(-\sin v,\ \cos v,\ 0)

であるから

xu×xv=r(−cos⁡v, −sin⁡v, 0),∥xu×xv∥=r\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=r(-\cos v,\ -\sin v,\ 0),\qquad \lVert\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v\rVert=r

であり、この表示が定める向きはN=(−cos⁡v, −sin⁡v, 0)N=(-\cos v,\ -\sin v,\ 0)である。これは回転軸へ向かう向き、すなわち円柱が囲む領域から見て内向きである。

二階偏導関数はxuu=0\boldsymbol{x}_{uu}=0、xuv=0\boldsymbol{x}_{uv}=0、xvv=r(−cos⁡v, −sin⁡v, 0)\boldsymbol{x}_{vv}=r(-\cos v,\ -\sin v,\ 0)であるから、命題 3.2により

e=0,f=0,g=⟨N,xvv⟩=r(cos⁡2v+sin⁡2v)=re=0,\qquad f=0,\qquad g=\langle N,\boldsymbol{x}_{vv}\rangle=r(\cos^2v+\sin^2v)=r

である。§E19.4 例 6.3のE=1E=1、F=0F=0、G=r2G=r^2と合わせて、命題 3.3により

A=I−1II=(100r−2)(000r)=(000r−1)A=\mathrm{I}^{-1}\mathrm{II}=\begin{pmatrix}1&0\\0&r^{-2}\end{pmatrix}\begin{pmatrix}0&0\\0&r\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}0&0\\0&r^{-1}\end{pmatrix}

である。すなわちS(xu)=0S(\boldsymbol{x}_u)=0、S(xv)=xv/rS(\boldsymbol{x}_v)=\boldsymbol{x}_v/rである。

法曲率を二つの方向で確かめる。母線方向の単位接ベクトルxu\boldsymbol{x}_uについてはII(xu,xu)=e=0\mathrm{II}(\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_u)=e=0である。実際、この方向の法断面は円柱の母線そのものであり、直線の曲率は00である。緯線方向の単位接ベクトルxv/r\boldsymbol{x}_v/rについては

II(xvr,xvr)=gr2=1r\mathrm{II}\Bigl(\frac{\boldsymbol{x}_v}{r},\frac{\boldsymbol{x}_v}{r}\Bigr)=\frac{g}{r^2}=\frac{1}{r}

である。この方向の法断面は半径rrの円周であり、その加速度ベクトルは円の中心へ向かうのでNNと同じ向きである。定理 4.4の符号の規約と一致する。

例 5.4 (関数のグラフ).W⊆R2W\subseteq\mathbb{R}^2を開集合、h ⁣:W→Rh\colon W\to\mathbb{R}をC∞C^\infty関数とし、M={(u,v,h(u,v)):(u,v)∈W}M=\{(u,v,h(u,v)):(u,v)\in W\}と置く。「正則曲面・接平面・向き」の§E19.3 命題 2.1により、MMは正則曲面であり、x(u,v)=(u,v,h(u,v))\boldsymbol{x}(u,v)=(u,v,h(u,v))はその正則パラメータ表示である。

xu=(1,0,hu),xv=(0,1,hv)\boldsymbol{x}_u=(1,0,h_u),\qquad \boldsymbol{x}_v=(0,1,h_v)

であるから

E=1+hu2,F=huhv,G=1+hv2,EG−F2=1+hu2+hv2E=1+h_u^2,\qquad F=h_uh_v,\qquad G=1+h_v^2,\qquad EG-F^2=1+h_u^2+h_v^2

である。またxu×xv=(−hu,−hv,1)\boldsymbol{x}_u\times\boldsymbol{x}_v=(-h_u,-h_v,1)であり、この表示が定める向きは

N=(−hu, −hv, 1)1+hu2+hv2N=\frac{(-h_u,\ -h_v,\ 1)}{\sqrt{1+h_u^2+h_v^2}}

である。二階偏導関数はxuu=(0,0,huu)\boldsymbol{x}_{uu}=(0,0,h_{uu})、xuv=(0,0,huv)\boldsymbol{x}_{uv}=(0,0,h_{uv})、xvv=(0,0,hvv)\boldsymbol{x}_{vv}=(0,0,h_{vv})であるから、命題 3.2により

e=huu1+hu2+hv2,f=huv1+hu2+hv2,g=hvv1+hu2+hv2e=\frac{h_{uu}}{\sqrt{1+h_u^2+h_v^2}},\qquad f=\frac{h_{uv}}{\sqrt{1+h_u^2+h_v^2}},\qquad g=\frac{h_{vv}}{\sqrt{1+h_u^2+h_v^2}}

である。

とくにhu(q)=hv(q)=0h_u(q)=h_v(q)=0を満たす点qqではE=G=1E=G=1、F=0F=0であり、N=(0,0,1)N=(0,0,1)、

(effg)=(huuhuvhuvhvv)\begin{pmatrix}e&f\\f&g\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}h_{uu}&h_{uv}\\h_{uv}&h_{vv}\end{pmatrix}

となる。すなわち、その点における第二基本形式の成分行列はhhの二階偏導関数の行列に一致する。補題 4.3により、正則曲面のどの点についても、適当な直交座標を取ればこの形の表示が得られる。したがって、その点における第二基本形式の成分は、接平面からの高さを表す関数の二階偏導関数である。

6 演習

問題 6.1.

  1. 定理 2.1の証明を、次の三点に注意して再現する。示すべき等式が双線形であることをどこで用いたか、⟨N,xu⟩=0\langle N,\boldsymbol{x}_u\rangle=0と⟨N,xv⟩=0\langle N,\boldsymbol{x}_v\rangle=0のどちらをどの変数で偏微分したか、そして§E4.4 定理 2.1をどの対象へ適用したかを述べる。
  2. 定理 2.1の証明で、基底の四つの組のうち(xu,xv)(\boldsymbol{x}_u,\boldsymbol{x}_v)の場合だけを扱えば足りる理由を書く。(xv,xu)(\boldsymbol{x}_v,\boldsymbol{x}_u)の場合が別に必要でないことも述べる。
  3. 補題 1.3の証明ではTpM=N(p)⊥T_pM=N(p)^{\perp}を用いた。この等式を、包含関係と次元の二段で示す議論を再現する。
  4. 定理 4.4の証明のうち、β′′(0)\beta''(0)がspan(N(p))\mathrm{span}(N(p))に属することを示した部分を再現する。β\betaが単位速度であるという仮定を落とすと、この議論のどの段階が成り立たなくなるかを述べる。
  5. 補題 4.3の証明でDβ(q)D\beta(q)が可逆であることを示した箇所を再現し、e3\boldsymbol{e}_3がTpMT_pMに直交するという仮定をどこで用いたかを特定する。
  6. 命題 3.2の証明を、g=⟨N,xvv⟩g=\langle N,\boldsymbol{x}_{vv}\rangleの場合について書き下す。ffの場合に定理 2.1を用いた理由を述べ、それを用いずにf=⟨N,xuv⟩f=\langle N,\boldsymbol{x}_{uv}\rangleを示す別の道筋を作る。
  7. 命題 3.3の証明ではII=ATI\mathrm{II}=A^{\mathsf T}\mathrm{I}を経由した。添字の位置に注意して、A=I−1IIA=\mathrm{I}^{-1}\mathrm{II}ではなくA=II I−1A=\mathrm{II}\,\mathrm{I}^{-1}と書くと何が誤りになるかを、I\mathrm{I}とII\mathrm{II}が可換とは限らないことに即して述べる。
  8. 例 5.3の計算を、母線方向の変数と緯線方向の変数を入れ替えたパラメータ表示x~(u,v)=(rcos⁡u, rsin⁡u, v)\tilde{\boldsymbol{x}}(u,v)=(r\cos u,\ r\sin u,\ v)について実行し、この表示が定める向きが外向きであることと、成分がe~=−r\tilde e=-r、f~=g~=0\tilde f=\tilde g=0になることを確かめる。

7 境界と次

第二基本形式は単位法線の選び方に依存する。命題 3.4のとおり、向きを反転するとSSとII\mathrm{II}の符号は反転する。したがって、第二基本形式の値を述べるときは、二つの単位法線のどちらを取ったかを必ず明示しなければならない。本単元は閉曲面に内向きの単位法線を取り、その約束のもとで半径rrの球面の法曲率がすべての方向で1/r1/rになる(例 5.2)。次の記事で定める Gauss 曲率は、この符号の反転に影響されない量である。

向きづけ可能でない曲面には大域的な単位法線ベクトル場が存在しない(§E19.3 定義 4.2)。本記事の主張のうち、単位法線を大域的に選ぶことを前提とするものは、そのような曲面には適用しない。一方、SSとII\mathrm{II}は各正則パラメータ表示の像の上では定まるので、符号の反転に影響されない量については、向きづけ可能性を仮定せずに扱うことができる。

定理 2.1は、次の記事でスペクトル定理を適用するための前提である。自己共役性を経ずに「第二基本形式を第一基本形式に関して対角化する」という形で主曲率を導入する道筋もあるが、その道筋は、一方が正定値である二つの二次形式を同時に対角化することができるという主張を要求する。本単元はその主張を証明しないので、自己共役性とスペクトル定理を経る道筋だけを採る。

定理 4.4は、単位接ベクトル一つに対して一つの数を対応させる。この対応が接平面の上でどのような形をしているか、すなわち法曲率の最大値と最小値がどこで実現されるかは、次の記事が主曲率として答える。

参考文献

  1. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.Gauss 写像とその微分の自己共役性、第二基本形式、法曲率、Meusnier の定理、および形状作用素の符号の規約を参考にした。
  2. Barrett O'Neill, Elementary Differential Geometry, 2 (revised) ed., Academic Press, 2006.shape operator を法線ベクトル場の共変微分として導入する扱いと、その対称性の証明を参考にした。
  3. Sebastián Montiel and Antonio Ros, Curves and Surfaces, 2nd ed., Graduate Studies in Mathematics 69, American Mathematical Society, Providence, 2009.Gauss 写像の微分が自己共役であることの証明と、法断面による法曲率の解釈を参考にした。

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