1 Gauss 方程式
定理 1.1 (Gauss 方程式).Mを向きづけられた正則曲面、(e1,e2,e3)をU上の適合標構(§E19.10 定義 1.2)とする。このときUの上で
ω13∧ω23=Kω1∧ω2=KdAが成り立つ。
証明.hij=II(ei,ej)(i,j∈{1,2})と置く。§E19.10 命題 5.3により
ω13=h11ω1+h12ω2,ω23=h12ω1+h22ω2である。ω1∧ω1=ω2∧ω2=0とω2∧ω1=−ω1∧ω2(§E17.10 系 3.6)により
ω13∧ω23=h11h22ω1∧ω2+h12h12ω2∧ω1=(h11h22−h122)ω1∧ω2である。
(e1,e2)は各点でTpMの正規直交基底であるから、S(ei)=∑j=12⟨S(ei),ej⟩ej=∑j=12hijejである(§E19.5 定義 3.1)。すなわち、基底{e1,e2}に関するSの表現行列は(hij)の転置である。行列式は転置で変わらないから
h11h22−h122=detS=Kである(§E19.6 定義 2.1)。最後に、適合標構に対してω1∧ω2=dAである(§E19.10 命題 1.4)。▨
証明.N=e1×e2と置く。§E19.2 補題 1.2 (3)により、Nは各点で単位ベクトルでありe1とe2の両方に直交するから、Uの上の単位法線ベクトル場である。e1,e2はC∞であるからNもC∞である。したがってUはNによって向きづけられた正則曲面であり、(e1,e2,N)はその適合標構である。
§E19.10 定理 5.4と定理 1.1をUとこの向きに対して適用すると
dω12=−ω13∧ω23=−Kω1∧ω2を得る。ここでKはNに関する Gauss 曲率であるが、Gauss 曲率は単位法線の選び方に依らない(§E19.6 注意 2.5)ので、Mの Gauss 曲率のUへの制限に等しい。▨
2 抽象曲面の Gauss 曲率
定理 1.2の右辺には第二基本形式も単位法線も現れない。左辺は§E19.10 定理 3.2により第一基本形式だけで決まる。したがって、この等式を定義として読むことにより、第一基本形式だけを与えられた対象に対して Gauss 曲率を定めることができる。
定理 2.1.(M,I)を抽象曲面(§E19.7 定義 5.1)とする。次が成り立つ。
- U⊆Mを開集合、(e1,e2)をU上の正規直交接標構、(ω1,ω2)をその余標構、ω12をその接続形式(§E19.10 注意 6.1)とする。このときU上のC∞関数K(e1,e2)がただ一つ定まって
dω12=−K(e1,e2)ω1∧ω2
が成り立つ。
- K(e1,e2)は標構の取り方に依らない。すなわち、U上の二つの正規直交接標構に対する関数はUの上で一致する。したがってM全体の上のC∞関数Kがただ一つ定まる。このKを(M,I)のGauss 曲率という。
- Mが正則曲面でありIがその第一基本形式であるとき、2 のKは§E19.6 定義 2.1の Gauss 曲率に一致する。
証明.(1)を示す。まず、U上の任意の二次微分形式ξがξ=ξ(e1,e2)ω1∧ω2と書かれることを見る。p∈UとX,Y∈TpMを取る。X=ω1(X)e1+ω2(X)e2とYの同様の展開を代入し、ξpが双線形かつ交代的であることを用いると
ξp(X,Y)=(ω1(X)ω2(Y)−ω2(X)ω1(Y))ξp(e1,e2)=ξp(e1,e2)(ω1∧ω2)(X,Y)である。ξ=dω12に適用し、K(e1,e2)=−dω12(e1,e2)と置くと主張の等式を得る。dω12はC∞二次微分形式でありe1,e2はC∞接ベクトル場であるから、K(e1,e2)はC∞関数である。一意性は、ω1∧ω2が(e1,e2)に対して値1を取るので各点で消えないことによる。
(2)を示す。(e~1,e~2)をU上の別の正規直交接標構とする。二つの関数が一致することは各点の近傍で確かめれば足りる。§E19.10 定理 4.1 (3)により、各点の連結な近傍Vの上で(e~1,e~2)は§E19.10 定理 4.1 (1)の形か、または§E19.10 定理 4.1 (1)の形と§E19.10 定理 4.1 (2)との合成の形である。
§E19.10 定理 4.1 (1)の形、すなわちθ∈C∞(V)による回転の場合、同命題によりω~12=ω12+dθである。d(dθ)=0(§E17.11 定義 2.1 条件 (d))であるからdω~12=dω12であり、またω~1∧ω~2=ω1∧ω2である。したがって
−K(e~1,e~2)ω1∧ω2=dω12=−K(e1,e2)ω1∧ω2であり、ω1∧ω2が消えないことから二つの関数はVの上で一致する。
2 の形、すなわち(e~1,e~2)=(e1,−e2)の場合、同命題によりω~12=−ω12かつω~1∧ω~2=−ω1∧ω2であるから
dω~12=−dω12=K(e1,e2)ω1∧ω2=−K(e1,e2)ω~1∧ω~2となり、ふたたび二つの関数は一致する。合成の場合は二つを順に適用すればよい。
Mの各点は、正規直交接標構を取ることができる開近傍を持つ(§E19.10 注意 6.1と§E19.10 命題 1.3)から、重なりの上で値が一致することによりM全体の上の関数Kが定まる。
(3)を示す。定理 1.2は、正則曲面の任意の正規直交接標構についてdω12=−Kω1∧ω2を与える。1 の一意性により、このKがK(e1,e2)である。▨
定義 2.2.(M,I)と(Mˉ,Iˉ)を抽象曲面とする。C∞写像ϕ:M→Mˉが局所等長写像 (local isometry) であるとは、すべてのp∈MとすべてのX,Y∈TpMについて
Iˉϕ(p)(dϕp(X),dϕp(Y))=Ip(X,Y)が成り立つことをいう。ϕが全単射であってϕ−1も局所等長写像であるとき、ϕを等長写像 (isometry) という。
正則曲面を第一基本形式によって抽象曲面とみなす(§E19.7 例 5.2)とき、上の条件は§E19.4 定義 7.1の条件と同じものである。
命題 2.3.ϕ:M→Mˉを抽象曲面の間の局所等長写像とする。各p∈Mについてdϕpは線形同型であり、pの開近傍Vが存在してϕのVへの制限はMˉの開集合への微分同相である。
証明.X∈TpMがdϕp(X)=0を満たすとするとIp(X,X)=Iˉϕ(p)(0,0)=0であり、Ipは正定値であるからX=0である。したがってdϕpは単射であり、dimTpM=dimTϕ(p)Mˉ=2であるから線形同型である。
dϕはすべての点で階数2であるから、ϕは階数一定の写像である。「多様体入門」の§E17.5 定理 3.1を階数2、次元2の場合に適用すると、pのまわりのチャートとϕ(p)のまわりのチャートを適当に取ってϕの座標表示を恒等写像にすることができる。したがってϕはpの近傍で微分同相である。▨
3 驚異の定理
定理 3.1 (Gauss の驚異の定理).(M,I)と(Mˉ,Iˉ)を抽象曲面、ϕ:M→Mˉを局所等長写像(定義 2.2)とする。MとMˉの Gauss 曲率をそれぞれK、Kˉと書くと、すべてのp∈Mについて
K(p)=Kˉ(ϕ(p))が成り立つ。
とくにMとMˉが正則曲面であるとき(定理 2.1 (3)により Gauss 曲率は§E19.6 定義 2.1のものである)、局所等長写像は Gauss 曲率を保つ。すなわち Gauss 曲率は、第二基本形式にも単位法線にも依存せず、第一基本形式だけで決まる。公式 4.1が、第一基本形式の成分とその二階までの偏導関数による明示的な式を与える。
証明の方針を述べる。ϕ(p)のまわりで正規直交接標構を取り、ϕの微分の逆によってpのまわりへ引き戻す。§E19.10 系 3.4により、余標構だけでなく接続形式も引き戻しで対応する。ここで用いるのが接続形式の一意性である。引き戻しは外微分と可換であるから、dω12どうしも対応する。定理 2.1はdω12を−Kω1∧ω2と表しており、ω1∧ω2は各点で消えない二次微分形式であるから、係数の比較によってKが決まる。
証明.p∈Mを取り、pˉ=ϕ(p)と置く。pˉを含むチャートの定義域をUˉとし、§E19.10 命題 1.3(§E19.10 注意 6.1により抽象曲面に対しても成り立つ)によってUˉ上の正規直交接標構(eˉ1,eˉ2)を取る。その余標構を(ωˉ1,ωˉ2)、接続形式をωˉ12と書く。
命題 2.3により、pの開近傍U⊆ϕ−1(Uˉ)を、ϕの制限がUからMˉの開集合への微分同相となるように取ることができる。§E19.10 系 3.4(同じく§E19.10 注意 6.1により抽象曲面に対しても成り立つ)により、Uの上に正規直交接標構(e1,e2)が定まり、その余標構と接続形式は
ωi=ϕ∗ωˉi (i=1,2),ω12=ϕ∗ωˉ12を満たす。
引き戻しは外微分と可換であり(「多様体入門」の§E17.11 命題 3.1)、外積とも可換である(同§E17.10 定理 5.3)。定理 2.1をUˉと(eˉ1,eˉ2)に適用するとdωˉ12=−Kˉωˉ1∧ωˉ2であるから
dω12=d(ϕ∗ωˉ12)=ϕ∗(dωˉ12)=ϕ∗(−Kˉωˉ1∧ωˉ2)=−(Kˉ∘ϕ)ω1∧ω2である。一方、定理 2.1をUと(e1,e2)に適用するとdω12=−Kω1∧ω2である。二つの式の差を取ると
(K−Kˉ∘ϕ)ω1∧ω2=0となる。(ω1∧ω2)(e1,e2)=1であるからω1∧ω2はUの各点で消えず、K=Kˉ∘ϕがUの上で成り立つ。とくにpで成り立つ。pは任意であったから主張を得る。▨
系 3.3.r>0とし、Sr={p∈R3:∥p∥=r}、P={(x,y,0):x,y∈R}と置く。V⊆Srを空でない開集合、W⊆Pを空でない開集合とする。このとき、VからPへの局所等長写像も、WからSrへの局所等長写像も存在しない。とくに、球面のどの開部分集合も平面へ等長に写らない。
証明.Vは正則曲面Srの開集合であるから、それ自身が正則曲面である。実際、Srの正則パラメータ表示x:W0→Srを開集合x−1(V)へ制限したものはVの正則パラメータ表示であり、これらの像はVを覆う。Gauss 曲率は各点でSpによって定まり、Spはpの近傍における単位法線だけで決まるので、Vの Gauss 曲率はSrの Gauss 曲率の制限である。W⊆Pについても同様である。
§E19.6 命題 4.3によりSrの Gauss 曲率は至るところ1/r2である。平面の第二基本形式は零である(§E19.5 例 5.1)から、平面の Gauss 曲率は至るところ0である(§E19.6 定義 2.1)。
ϕ:V→Pを局所等長写像とすると、定理 3.1により、q∈Vに対して1/r2=K(q)=KP(ϕ(q))=0となり矛盾する。ψ:W→Srを局所等長写像とすると、同じ定理により0=KP(q)=KSr(ψ(q))=1/r2となり矛盾する。▨
4 内在的な閉じた式
証明.F=0でありE>0、G>0であるから、§E19.10 命題 1.3の標構は
e1=Exu,e2=Gxvであり、余標構は
ω1=Edu,ω2=Gdvである。
接続形式を決定する。外微分を計算すると
dω1=d(E)∧du=(E)vdv∧du=−(E)vdu∧dv,dω2=d(G)∧dv=(G)udu∧dvである。η=Pdu+Qdv(P,QはW上のC∞関数)と置くと
η∧ω2=PG du∧dv,−η∧ω1=−QE dv∧du=QE du∧dvである。したがって
P=−G(E)v=−2EGEv,Q=E(G)u=2EGGuと取ればdω1=η∧ω2とdω2=−η∧ω1がともに成り立つ。§E19.10 定理 3.2により、このηが接続形式ω12である。
外微分を取る。ω12=Pdu+Qdvに対して
dω12=dP∧du+dQ∧dv=(Qu−Pv)du∧dvである。一方ω1∧ω2=EGdu∧dvであるから、定理 1.2により
Qu−Pv=−KEGである。PとQの式を代入すると
∂u∂(2EGGu)+∂v∂(2EGEv)=−KEGであり、両辺を−EGで割ると主張の式を得る。
抽象曲面の場合も、§E19.10 注意 6.1のとおり§E19.10 命題 1.3の標構の構成、§E19.10 定理 3.1および§E19.10 定理 3.2がそのまま成り立ち、定理 2.1 (1)がdω12=−Kω1∧ω2を与えるので、同じ計算がそのまま通用する。▨
例 4.2 (球面).§E19.4 例 6.2の表示ではE=r2、F=0、G=r2sin2u(0<u<π)であるからEG=r2sinuである。Ev=0であり
Gu=2r2sinucosu,EGGu=r2sinu2r2sinucosu=2cosuであるから
K=−2r2sinu1[∂u∂(2cosu)+0]=−2r2sinu−2sinu=r21である。これは§E19.6 命題 4.3が Weingarten 写像から求めた値と一致する。第二基本形式も単位法線も、この計算には現れていない。
例 4.3 (弧長を母線のパラメータに取った回転面).§E19.9 命題 1.2の記号でI=dt2+f(t)2dθ2とする。E=1、F=0、G=f2であるからEG=fである。Eθ=0でありGt=2ff′であるから
EGGt=f2ff′=2f′,K=−2f1[∂t∂(2f′)+0]=−ff′′である。これは§E19.6 系 4.2が第二基本形式から求めた値と一致する。
二つの場合に値を確かめる。第一に、半径rの球面はf(t)=rsin(t/r)(0<t<πr)の場合であり、f′′=−r−1sin(t/r)であるから−f′′/f=1/r2である。第二に、母数c>0の懸垂面の母線(φ,ψ)=(ccosh(w/c), w)を弧長で径数づけ直す。φ′2+ψ′2=cosh2(w/c)であるから弧長はt=csinh(w/c)であり、sinh(w/c)=t/c、cosh(w/c)=1+t2/c2である。よって
f(t)=ccoshcw=c2+t2である。f′=t/c2+t2、
f′′=c2+t21−(c2+t2)3/2t2=(c2+t2)3/2c2であるから
K=−ff′′=−(c2+t2)2c2である。一方§E19.6 命題 4.3の値は−1/(c2cosh4(w/c))であり、cosh2(w/c)=(c2+t2)/c2を代入すると−c2/(c2+t2)2となって一致する。
5 平坦な計量を持つ円環面
例 5.1 (平坦な計量を持つ円環面).Λ⊆R2を格子(「多様体入門」の§E17.23 定義 5.1)とし、T=R2/Λ、π:R2→Tを商写像とする。同単元の§E17.23 命題 5.2によりTは二次元C∞多様体であり、πは局所微分同相であって、Tは円環面S1×S1と微分同相である。
第一基本形式を入れる。pˉ∈TとX,Y∈TpˉTに対し、p∈π−1(pˉ)を取り
Ipˉ(X,Y)=⟨(dπp)−1X, (dπp)−1Y⟩R2と定める。ここで⟨ , ⟩R2はR2の標準内積であり、TpR2をR2と同一視している。πは局所微分同相であるからdπpは線形同型であり、右辺は意味を持つ。この定義はpの取り方に依らない。実際、π−1(pˉ)の二点はpとp+λ(λ∈Λ)の形であり、平行移動τλ(z)=z+λについてπ∘τλ=πが成り立つ。τλの微分は上の同一視のもとで恒等写像であるから
dπp=dπp+λ∘d(τλ)p=dπp+λであり、二つの逆写像は一致する。
πの局所的な逆写像σをチャートに取ると、この定義により第一基本形式の成分はE=1、F=0、G=1である。とくにIは各点で正定値対称双線形形式であり、点について滑らかに変化するから、(T,I)は抽象曲面である(§E19.7 定義 5.1)。定義からπは局所等長写像である(定義 2.2)。
Gauss 曲率が恒等的に零であることを示す。上のチャートの座標を(u,v)とすると、座標基底∂1,∂2は正規直交接標構であり、余標構はω1=du、ω2=dvである。dω1=dω2=0であるから、η=0が§E19.10 定理 3.2の二つの式を満たす。よってω12=0でありdω12=0、すなわち定理 2.1によりK≡0である。同じ結論は公式 4.1にE=G=1、F=0を代入しても得られる。
三次元空間の中に滑らかな曲面として実現されないこと。(T,I)と等長な正則曲面M⊆R3は存在しない。ここで正則曲面は、その第一基本形式によって抽象曲面とみなす(§E19.7 例 5.2)。実際、等長写像Φ:T→M(定義 2.2)が存在したとすると、Φは全単射であり命題 2.3により局所微分同相であるから微分同相である。Λを生成するv1,v2に対してP={sv1+tv2:0≤s,t≤1}と置くとPはコンパクトであり、すべてのz∈R2はΛの元を加えてPの点へ移すことができるのでπ(P)=Tである。したがってTはコンパクト集合の連続像としてコンパクトであり、M=Φ(T)もコンパクトである。定理 3.1によりMの Gauss 曲率は恒等的に0である。一方、§E19.15 定理 6.1により、R3のコンパクトな正則曲面は Gauss 曲率が正である点を必ず持つ。したがって矛盾が生じる。本例はその主張を用いた帰結だけを述べており、本記事の他の主張はこの事実に依存していない。
この主張が述べていること。上で否定したのは、C∞級の正則曲面としての実現である。より低い正則性の等長埋め込みについては何も述べていない。本単元は低い正則性の等長埋め込みを扱わず、その存在も非存在も主張しない。
6 演習
問題 6.1.
- 定理 1.1の証明のうち、(hij)が基底{e1,e2}に関するSの表現行列の転置であることを示した部分を再現する。標構が正規直交でない場合にh11h22−h122とdetSの関係がどう変わるかを、§E19.6 公式 2.3と対比して述べる。
- 定理 1.2の証明では、向きづけ可能性を仮定せずにN=e1×e2と置いた。この一手を用いずに、向きづけられた曲面についてだけ主張を述べたとすると、定理 2.1 (3)の証明のどの段階が成り立たなくなるかを述べる。
- 定理 3.1の証明を、引き戻しの記号を用いずに書き直す。すなわち、Uの各点でdω12(e1,e2)とdωˉ12(eˉ1,eˉ2)を比較する形に直し、どの段階で§E19.10 定理 3.2が必要になるかを特定する。
- 定理 3.1の証明で§E19.10 定理 3.2を用いないとする。すなわち、ω12を周囲の空間における微分による定義のまま扱うとする。このときϕ∗ωˉ12=ω12を示そうとしても議論が閉じない理由を、ϕが第二基本形式について何も保たないことに即して述べる。
- 定理 2.1 (1)の証明のうち、二次微分形式がξ(e1,e2)ω1∧ω2と書かれることを示した部分を再現する。三次元多様体で同じ主張を述べようとすると、どこが成り立たなくなるかを述べる。
- 定理 2.1 (2)の証明では、標構の取り替えを回転と一つの反転に分けた。反転の場合にdω~12とω~1∧ω~2がともに符号を変えることを確かめ、片方だけが符号を変える取り替えが存在しない理由を述べる。
- 公式 4.1の導出を、F≡0を仮定せずに実行しようとするとどこで式が複雑になるかを述べる。§E19.10 命題 1.3の余標構を用いてdω1とdω2を書き下し、ω12=Pdu+Qdvの係数P,Qを決める連立一次方程式の形まで書く。
- 公式 4.1を、単位半径の球面の座標E=1、F=0、G=sin2uに適用してK=1を確かめる。次に、同じ式を平面の極座標E=1、F=0、G=r2に適用してK=0を確かめる。
- 例 5.1の第一基本形式がpの取り方に依らないことの証明を再現する。Λを保つ線形写像であって直交変換でないものによって商を取ると、同じ手順のどこが成り立たなくなるかを述べる。
- 例 5.1の非存在の議論では、コンパクト性と Gauss 曲率の二つを用いた。コンパクト性の仮定を落とすと結論が得られない理由を、円柱がK≡0を満たすR3の正則曲面であることに即して述べる。
7 境界と次
驚異の定理が保証する範囲。定理 3.1は、局所等長写像が Gauss 曲率を保つことを述べる。逆は本記事では扱わない(注意 3.2)。また、二つの曲面の Gauss 曲率が一致するという条件は、第二基本形式について何も述べない。同じ第一基本形式を持ちながら第二基本形式が異なる曲面が存在するかどうか、および二つの基本形式の組がどのような条件を満たすかは、「曲面論の基本定理」が扱う。
平均曲率は内在的でないこと。注意 4.4のとおり、平均曲率は第一基本形式だけでは決まらない。H≡0という条件も同様であり、極小曲面は空間への入り方によって定まる対象である。その扱いは「面積の第一変分と極小曲面」が行う。
一般次元へ広げないこと。本記事の議論は、接平面が二次元であること、したがって各点で交代二次形式の全体が一次元であることに依存している。一般次元の Riemann 多様体では、曲率は関数ではなく曲率テンソルであり、Gauss 方程式も部分多様体の第二基本形式を含むテンソルの等式になる。その扱いは「Riemann 幾何 I」が行う。
低い正則性を扱わないこと。例 5.1が否定したのは、平坦な計量を持つ円環面をC∞級の正則曲面として実現することである。本単元の曲面はすべてC∞級であり、より弱い正則性のもとで何が成り立つかは扱わない。
次の記事へ渡すもの。定理 1.1は、二つの基本形式が満たす関係式の一つである。もう一つは、法線方向の接続形式の外微分から得られる Codazzi–Mainardi 方程式であり、二つを合わせたものが適合条件になる。適合条件を満たす二つの形式から曲面を復元することが「曲面論の基本定理」の主定理である。定理 1.2のdω12=−KdAは、局所 Gauss–Bonnet の定理で接続形式を境界に沿って積分するときの出発点になる。定理 2.1は、Gauss–Bonnet の定理をR3に埋め込まれていない曲面へ適用するために必要である。