§E19.11Gauss 方程式と Gauss の驚異の定理

最終更新

Gauss 曲率は、Weingarten 写像の行列式として定義された(§E19.6 定義 2.1)。Weingarten 写像は単位法線の微分であるから、この定義は曲面が三次元空間へどのように入っているかを用いている。本記事は、その定義にもかかわらず Gauss 曲率が第一基本形式とその二階までの微分だけで決まることを証明する。

証明の骨格は二つの等式の突き合わせである。前の記事は、接続形式ω12\omega_{12}が余標構だけで決まること(§E19.10 定理 3.2)と、その外微分が法線方向の接続形式で書かれること(§E19.10 定理 5.4)を示した。本記事は、後者の右辺−ω13∧ω23-\omega_{13}\wedge\omega_{23}が−K ω1∧ω2-K\,\omega_1\wedge\omega_2に等しいという Gauss 方程式を証明する。二つを合わせると、外在的に定義されたKKが、内在的に決まる量dω12d\omega_{12}によって表される。

本記事が実際に示すのは次の五つである。第一に、Gauss 方程式である。第二に、接続形式の外微分が−K dA-K\,dAに等しいことである。第三に、抽象曲面に対しても Gauss 曲率が標構の取り方に依らずに定まることである。第四に、局所等長写像が Gauss 曲率を保つという驚異の定理と、その帰結として球面の開部分集合が平面へ局所等長に写らないことである。第五に、直交座標における Gauss 曲率の内在的な閉じた式と、格子による平面の商がその値を恒等的に零とする例である。

以下、M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3を正則曲面(§E19.3 定義 1.1)、U⊆MU\subseteq Mを開集合とし、第一基本形式をI\mathrm{I}、第二基本形式をII\mathrm{II}、Weingarten 写像をSS、Gauss 曲率をKKと書く。標構と余標構、接続形式の記号は§E19.10 定義 1.2と§E19.10 定義 2.1に従う。

1 Gauss 方程式

定理 1.1 (Gauss 方程式).MMを向きづけられた正則曲面、(e1,e2,e3)(e_1,e_2,e_3)をUU上の適合標構(§E19.10 定義 1.2)とする。このときUUの上で

ω13∧ω23=K ω1∧ω2=K dA\omega_{13}\wedge\omega_{23}=K\,\omega_1\wedge\omega_2=K\,dA

が成り立つ。

証明.hij=II(ei,ej)h_{ij}=\mathrm{II}(e_i,e_j)(i,j∈{1,2}i,j\in\{1,2\})と置く。§E19.10 命題 5.3により

ω13=h11 ω1+h12 ω2,ω23=h12 ω1+h22 ω2\omega_{13}=h_{11}\,\omega_1+h_{12}\,\omega_2,\qquad \omega_{23}=h_{12}\,\omega_1+h_{22}\,\omega_2

である。ω1∧ω1=ω2∧ω2=0\omega_1\wedge\omega_1=\omega_2\wedge\omega_2=0とω2∧ω1=−ω1∧ω2\omega_2\wedge\omega_1=-\omega_1\wedge\omega_2(§E17.10 系 3.6)により

ω13∧ω23=h11h22 ω1∧ω2+h12h12 ω2∧ω1=(h11h22−h122) ω1∧ω2\omega_{13}\wedge\omega_{23} =h_{11}h_{22}\,\omega_1\wedge\omega_2+h_{12}h_{12}\,\omega_2\wedge\omega_1 =\bigl(h_{11}h_{22}-h_{12}^2\bigr)\,\omega_1\wedge\omega_2

である。

(e1,e2)(e_1,e_2)は各点でTpMT_pMの正規直交基底であるから、S(ei)=∑j=12⟨S(ei),ej⟩ ej=∑j=12hij ejS(e_i)=\sum_{j=1}^{2}\langle S(e_i),e_j\rangle\,e_j=\sum_{j=1}^{2}h_{ij}\,e_jである(§E19.5 定義 3.1)。すなわち、基底{e1,e2}\{e_1,e_2\}に関するSSの表現行列は(hij)(h_{ij})の転置である。行列式は転置で変わらないから

h11h22−h122=det⁡S=Kh_{11}h_{22}-h_{12}^2=\det S=K

である(§E19.6 定義 2.1)。最後に、適合標構に対してω1∧ω2=dA\omega_1\wedge\omega_2=dAである(§E19.10 命題 1.4)。▨

定理 1.2.MMを正則曲面(向きづけ可能であることは仮定しない)、U⊆MU\subseteq Mを開集合、(e1,e2)(e_1,e_2)をUU上の正規直交接標構、(ω1,ω2)(\omega_1,\omega_2)をその余標構、ω12\omega_{12}をその接続形式とする。このときUUの上で

dω12=−K ω1∧ω2d\omega_{12}=-K\,\omega_1\wedge\omega_2

が成り立つ。とくに(e1,e2,e3)(e_1,e_2,e_3)が適合標構であるときはdω12=−K dAd\omega_{12}=-K\,dAである。

証明.N=e1×e2N=e_1\times e_2と置く。§E19.2 補題 1.2 (3)により、NNは各点で単位ベクトルでありe1e_1とe2e_2の両方に直交するから、UUの上の単位法線ベクトル場である。e1,e2e_1,e_2はC∞C^\inftyであるからNNもC∞C^\inftyである。したがってUUはNNによって向きづけられた正則曲面であり、(e1,e2,N)(e_1,e_2,N)はその適合標構である。

§E19.10 定理 5.4と定理 1.1をUUとこの向きに対して適用すると

dω12=−ω13∧ω23=−K ω1∧ω2d\omega_{12}=-\omega_{13}\wedge\omega_{23}=-K\,\omega_1\wedge\omega_2

を得る。ここでKKはNNに関する Gauss 曲率であるが、Gauss 曲率は単位法線の選び方に依らない(§E19.6 注意 2.5)ので、MMの Gauss 曲率のUUへの制限に等しい。▨

2 抽象曲面の Gauss 曲率

定理 1.2の右辺には第二基本形式も単位法線も現れない。左辺は§E19.10 定理 3.2により第一基本形式だけで決まる。したがって、この等式を定義として読むことにより、第一基本形式だけを与えられた対象に対して Gauss 曲率を定めることができる。

定理 2.1.(M,I)(M,\mathrm{I})を抽象曲面(§E19.7 定義 5.1)とする。次が成り立つ。

  1. U⊆MU\subseteq Mを開集合、(e1,e2)(e_1,e_2)をUU上の正規直交接標構、(ω1,ω2)(\omega_1,\omega_2)をその余標構、ω12\omega_{12}をその接続形式(§E19.10 注意 6.1)とする。このときUU上のC∞C^\infty関数K(e1,e2)K_{(e_1,e_2)}がただ一つ定まって dω12=−K(e1,e2) ω1∧ω2d\omega_{12}=-K_{(e_1,e_2)}\,\omega_1\wedge\omega_2 が成り立つ。
  2. K(e1,e2)K_{(e_1,e_2)}は標構の取り方に依らない。すなわち、UU上の二つの正規直交接標構に対する関数はUUの上で一致する。したがってMM全体の上のC∞C^\infty関数KKがただ一つ定まる。このKKを(M,I)(M,\mathrm{I})のGauss 曲率という。
  3. MMが正則曲面でありI\mathrm{I}がその第一基本形式であるとき、2 のKKは§E19.6 定義 2.1の Gauss 曲率に一致する。

証明.(1)を示す。まず、UU上の任意の二次微分形式ξ\xiがξ=ξ(e1,e2) ω1∧ω2\xi=\xi(e_1,e_2)\,\omega_1\wedge\omega_2と書かれることを見る。p∈Up\in UとX,Y∈TpMX,Y\in T_pMを取る。X=ω1(X)e1+ω2(X)e2X=\omega_1(X)e_1+\omega_2(X)e_2とYYの同様の展開を代入し、ξp\xi_pが双線形かつ交代的であることを用いると

ξp(X,Y)=(ω1(X)ω2(Y)−ω2(X)ω1(Y)) ξp(e1,e2)=ξp(e1,e2) (ω1∧ω2)(X,Y)\xi_p(X,Y)=\bigl(\omega_1(X)\omega_2(Y)-\omega_2(X)\omega_1(Y)\bigr)\,\xi_p(e_1,e_2) =\xi_p(e_1,e_2)\,\bigl(\omega_1\wedge\omega_2\bigr)(X,Y)

である。ξ=dω12\xi=d\omega_{12}に適用し、K(e1,e2)=−dω12(e1,e2)K_{(e_1,e_2)}=-d\omega_{12}(e_1,e_2)と置くと主張の等式を得る。dω12d\omega_{12}はC∞C^\infty二次微分形式でありe1,e2e_1,e_2はC∞C^\infty接ベクトル場であるから、K(e1,e2)K_{(e_1,e_2)}はC∞C^\infty関数である。一意性は、ω1∧ω2\omega_1\wedge\omega_2が(e1,e2)(e_1,e_2)に対して値11を取るので各点で消えないことによる。

(2)を示す。(e~1,e~2)(\tilde e_1,\tilde e_2)をUU上の別の正規直交接標構とする。二つの関数が一致することは各点の近傍で確かめれば足りる。§E19.10 定理 4.1 (3)により、各点の連結な近傍VVの上で(e~1,e~2)(\tilde e_1,\tilde e_2)は§E19.10 定理 4.1 (1)の形か、または§E19.10 定理 4.1 (1)の形と§E19.10 定理 4.1 (2)との合成の形である。

§E19.10 定理 4.1 (1)の形、すなわちθ∈C∞(V)\theta\in C^\infty(V)による回転の場合、同命題によりω~12=ω12+dθ\tilde\omega_{12}=\omega_{12}+d\thetaである。d(dθ)=0d(d\theta)=0(§E17.11 定義 2.1 条件 (d))であるからdω~12=dω12d\tilde\omega_{12}=d\omega_{12}であり、またω~1∧ω~2=ω1∧ω2\tilde\omega_1\wedge\tilde\omega_2=\omega_1\wedge\omega_2である。したがって

−K(e~1,e~2) ω1∧ω2=dω12=−K(e1,e2) ω1∧ω2-K_{(\tilde e_1,\tilde e_2)}\,\omega_1\wedge\omega_2=d\omega_{12}=-K_{(e_1,e_2)}\,\omega_1\wedge\omega_2

であり、ω1∧ω2\omega_1\wedge\omega_2が消えないことから二つの関数はVVの上で一致する。

2 の形、すなわち(e~1,e~2)=(e1,−e2)(\tilde e_1,\tilde e_2)=(e_1,-e_2)の場合、同命題によりω~12=−ω12\tilde\omega_{12}=-\omega_{12}かつω~1∧ω~2=−ω1∧ω2\tilde\omega_1\wedge\tilde\omega_2=-\omega_1\wedge\omega_2であるから

dω~12=−dω12=K(e1,e2) ω1∧ω2=−K(e1,e2) ω~1∧ω~2d\tilde\omega_{12}=-d\omega_{12}=K_{(e_1,e_2)}\,\omega_1\wedge\omega_2 =-K_{(e_1,e_2)}\,\tilde\omega_1\wedge\tilde\omega_2

となり、ふたたび二つの関数は一致する。合成の場合は二つを順に適用すればよい。

MMの各点は、正規直交接標構を取ることができる開近傍を持つ(§E19.10 注意 6.1と§E19.10 命題 1.3)から、重なりの上で値が一致することによりMM全体の上の関数KKが定まる。

(3)を示す。定理 1.2は、正則曲面の任意の正規直交接標構についてdω12=−K ω1∧ω2d\omega_{12}=-K\,\omega_1\wedge\omega_2を与える。1 の一意性により、このKKがK(e1,e2)K_{(e_1,e_2)}である。▨

定義 2.2.(M,I)(M,\mathrm{I})と(Mˉ,Iˉ)(\bar M,\bar{\mathrm{I}})を抽象曲面とする。C∞C^\infty写像ϕ ⁣:M→Mˉ\phi\colon M\to\bar Mが局所等長写像 (local isometry) であるとは、すべてのp∈Mp\in MとすべてのX,Y∈TpMX,Y\in T_pMについて

Iˉϕ(p)(dϕp(X), dϕp(Y))=Ip(X,Y)\bar{\mathrm{I}}_{\phi(p)}\bigl(d\phi_p(X),\,d\phi_p(Y)\bigr)=\mathrm{I}_p(X,Y)

が成り立つことをいう。ϕ\phiが全単射であってϕ−1\phi^{-1}も局所等長写像であるとき、ϕ\phiを等長写像 (isometry) という。

正則曲面を第一基本形式によって抽象曲面とみなす(§E19.7 例 5.2)とき、上の条件は§E19.4 定義 7.1の条件と同じものである。

命題 2.3.ϕ ⁣:M→Mˉ\phi\colon M\to\bar Mを抽象曲面の間の局所等長写像とする。各p∈Mp\in Mについてdϕpd\phi_pは線形同型であり、ppの開近傍VVが存在してϕ\phiのVVへの制限はMˉ\bar Mの開集合への微分同相である。

証明.X∈TpMX\in T_pMがdϕp(X)=0d\phi_p(X)=0を満たすとするとIp(X,X)=Iˉϕ(p)(0,0)=0\mathrm{I}_p(X,X)=\bar{\mathrm{I}}_{\phi(p)}(0,0)=0であり、Ip\mathrm{I}_pは正定値であるからX=0X=0である。したがってdϕpd\phi_pは単射であり、dim⁡TpM=dim⁡Tϕ(p)Mˉ=2\dim T_pM=\dim T_{\phi(p)}\bar M=2であるから線形同型である。

dϕd\phiはすべての点で階数22であるから、ϕ\phiは階数一定の写像である。「多様体入門」の§E17.5 定理 3.1を階数22、次元22の場合に適用すると、ppのまわりのチャートとϕ(p)\phi(p)のまわりのチャートを適当に取ってϕ\phiの座標表示を恒等写像にすることができる。したがってϕ\phiはppの近傍で微分同相である。▨

3 驚異の定理

定理 3.1 (Gauss の驚異の定理).(M,I)(M,\mathrm{I})と(Mˉ,Iˉ)(\bar M,\bar{\mathrm{I}})を抽象曲面、ϕ ⁣:M→Mˉ\phi\colon M\to\bar Mを局所等長写像(定義 2.2)とする。MMとMˉ\bar Mの Gauss 曲率をそれぞれKK、Kˉ\bar Kと書くと、すべてのp∈Mp\in Mについて

K(p)=Kˉ(ϕ(p))K(p)=\bar K\bigl(\phi(p)\bigr)

が成り立つ。

とくにMMとMˉ\bar Mが正則曲面であるとき(定理 2.1 (3)により Gauss 曲率は§E19.6 定義 2.1のものである)、局所等長写像は Gauss 曲率を保つ。すなわち Gauss 曲率は、第二基本形式にも単位法線にも依存せず、第一基本形式だけで決まる。公式 4.1が、第一基本形式の成分とその二階までの偏導関数による明示的な式を与える。

証明の方針を述べる。ϕ(p)\phi(p)のまわりで正規直交接標構を取り、ϕ\phiの微分の逆によってppのまわりへ引き戻す。§E19.10 系 3.4により、余標構だけでなく接続形式も引き戻しで対応する。ここで用いるのが接続形式の一意性である。引き戻しは外微分と可換であるから、dω12d\omega_{12}どうしも対応する。定理 2.1はdω12d\omega_{12}を−K ω1∧ω2-K\,\omega_1\wedge\omega_2と表しており、ω1∧ω2\omega_1\wedge\omega_2は各点で消えない二次微分形式であるから、係数の比較によってKKが決まる。

証明.p∈Mp\in Mを取り、pˉ=ϕ(p)\bar p=\phi(p)と置く。pˉ\bar pを含むチャートの定義域をUˉ\bar Uとし、§E19.10 命題 1.3(§E19.10 注意 6.1により抽象曲面に対しても成り立つ)によってUˉ\bar U上の正規直交接標構(eˉ1,eˉ2)(\bar e_1,\bar e_2)を取る。その余標構を(ωˉ1,ωˉ2)(\bar\omega_1,\bar\omega_2)、接続形式をωˉ12\bar\omega_{12}と書く。

命題 2.3により、ppの開近傍U⊆ϕ−1(Uˉ)U\subseteq\phi^{-1}(\bar U)を、ϕ\phiの制限がUUからMˉ\bar Mの開集合への微分同相となるように取ることができる。§E19.10 系 3.4(同じく§E19.10 注意 6.1により抽象曲面に対しても成り立つ)により、UUの上に正規直交接標構(e1,e2)(e_1,e_2)が定まり、その余標構と接続形式は

ωi=ϕ∗ωˉi (i=1,2),ω12=ϕ∗ωˉ12\omega_i=\phi^{*}\bar\omega_i\ (i=1,2),\qquad \omega_{12}=\phi^{*}\bar\omega_{12}

を満たす。

引き戻しは外微分と可換であり(「多様体入門」の§E17.11 命題 3.1)、外積とも可換である(同§E17.10 定理 5.3)。定理 2.1をUˉ\bar Uと(eˉ1,eˉ2)(\bar e_1,\bar e_2)に適用するとdωˉ12=−Kˉ ωˉ1∧ωˉ2d\bar\omega_{12}=-\bar K\,\bar\omega_1\wedge\bar\omega_2であるから

dω12=d(ϕ∗ωˉ12)=ϕ∗(dωˉ12)=ϕ∗(−Kˉ ωˉ1∧ωˉ2)=−(Kˉ∘ϕ) ω1∧ω2d\omega_{12}=d\bigl(\phi^{*}\bar\omega_{12}\bigr)=\phi^{*}\bigl(d\bar\omega_{12}\bigr) =\phi^{*}\bigl(-\bar K\,\bar\omega_1\wedge\bar\omega_2\bigr) =-\bigl(\bar K\circ\phi\bigr)\,\omega_1\wedge\omega_2

である。一方、定理 2.1をUUと(e1,e2)(e_1,e_2)に適用するとdω12=−K ω1∧ω2d\omega_{12}=-K\,\omega_1\wedge\omega_2である。二つの式の差を取ると

(K−Kˉ∘ϕ) ω1∧ω2=0\bigl(K-\bar K\circ\phi\bigr)\,\omega_1\wedge\omega_2=0

となる。(ω1∧ω2)(e1,e2)=1(\omega_1\wedge\omega_2)(e_1,e_2)=1であるからω1∧ω2\omega_1\wedge\omega_2はUUの各点で消えず、K=Kˉ∘ϕK=\bar K\circ\phiがUUの上で成り立つ。とくにppで成り立つ。ppは任意であったから主張を得る。▨

注意 3.2 (驚異の定理の逆が成り立たないこと).定理 3.1は、局所等長写像が存在すれば Gauss 曲率が対応することを述べている。逆、すなわち Gauss 曲率が一致すれば局所等長写像が存在するという主張は、本記事では扱わない。Gauss 曲率が同じ定数である二つの曲面が局所等長であることは「Riemann 幾何 I」が扱う。定数でない場合には、Gauss 曲率が一致していても局所等長とは限らない。

系 3.3.r>0r>0とし、Sr={p∈R3:∥p∥=r}S_r=\{p\in\mathbb{R}^3:\lVert p\rVert=r\}、P={(x,y,0):x,y∈R}P=\{(x,y,0):x,y\in\mathbb{R}\}と置く。V⊆SrV\subseteq S_rを空でない開集合、W⊆PW\subseteq Pを空でない開集合とする。このとき、VVからPPへの局所等長写像も、WWからSrS_rへの局所等長写像も存在しない。とくに、球面のどの開部分集合も平面へ等長に写らない。

証明.VVは正則曲面SrS_rの開集合であるから、それ自身が正則曲面である。実際、SrS_rの正則パラメータ表示x ⁣:W0→Sr\boldsymbol{x}\colon W_0\to S_rを開集合x−1(V)\boldsymbol{x}^{-1}(V)へ制限したものはVVの正則パラメータ表示であり、これらの像はVVを覆う。Gauss 曲率は各点でSpS_pによって定まり、SpS_pはppの近傍における単位法線だけで決まるので、VVの Gauss 曲率はSrS_rの Gauss 曲率の制限である。W⊆PW\subseteq Pについても同様である。

§E19.6 命題 4.3によりSrS_rの Gauss 曲率は至るところ1/r21/r^2である。平面の第二基本形式は零である(§E19.5 例 5.1)から、平面の Gauss 曲率は至るところ00である(§E19.6 定義 2.1)。

ϕ ⁣:V→P\phi\colon V\to Pを局所等長写像とすると、定理 3.1により、q∈Vq\in Vに対して1/r2=K(q)=KP(ϕ(q))=01/r^2=K(q)=K_P(\phi(q))=0となり矛盾する。ψ ⁣:W→Sr\psi\colon W\to S_rを局所等長写像とすると、同じ定理により0=KP(q)=KSr(ψ(q))=1/r20=K_P(q)=K_{S_r}(\psi(q))=1/r^2となり矛盾する。▨

4 内在的な閉じた式

公式 4.1.x ⁣:W→M\boldsymbol{x}\colon W\to Mを正則曲面の正則パラメータ表示とし、第一基本形式の成分がWWの上でF≡0F\equiv0を満たすとする。このときWWの上で

K=−12EG[∂∂u ⁣(GuEG)+∂∂v ⁣(EvEG)]K=-\frac{1}{2\sqrt{EG}}\left[\frac{\partial}{\partial u}\!\left(\frac{G_u}{\sqrt{EG}}\right)+\frac{\partial}{\partial v}\!\left(\frac{E_v}{\sqrt{EG}}\right)\right]

が成り立つ。ここで下付きのu,vu,vは偏微分を表す。同じ式は、抽象曲面のチャートであって第一基本形式の成分がF≡0F\equiv0を満たすものに対しても、定理 2.1の Gauss 曲率について成り立つ。

証明.F=0F=0でありE>0E>0、G>0G>0であるから、§E19.10 命題 1.3の標構は

e1=xuE,e2=xvGe_1=\frac{\boldsymbol{x}_u}{\sqrt{E}},\qquad e_2=\frac{\boldsymbol{x}_v}{\sqrt{G}}

であり、余標構は

ω1=E du,ω2=G dv\omega_1=\sqrt{E}\,du,\qquad \omega_2=\sqrt{G}\,dv

である。

接続形式を決定する。外微分を計算すると

dω1=d(E)∧du=(E)v dv∧du=−(E)v du∧dv,d\omega_1=d\bigl(\sqrt{E}\bigr)\wedge du=\bigl(\sqrt{E}\bigr)_v\,dv\wedge du=-\bigl(\sqrt{E}\bigr)_v\,du\wedge dv,dω2=d(G)∧dv=(G)u du∧dvd\omega_2=d\bigl(\sqrt{G}\bigr)\wedge dv=\bigl(\sqrt{G}\bigr)_u\,du\wedge dv

である。η=P du+Q dv\eta=P\,du+Q\,dv(P,QP,QはWW上のC∞C^\infty関数)と置くと

η∧ω2=PG du∧dv,−η∧ω1=−QE dv∧du=QE du∧dv\eta\wedge\omega_2=P\sqrt{G}\ du\wedge dv,\qquad -\eta\wedge\omega_1=-Q\sqrt{E}\ dv\wedge du=Q\sqrt{E}\ du\wedge dv

である。したがって

P=−(E)vG=−Ev2EG,Q=(G)uE=Gu2EGP=-\frac{\bigl(\sqrt{E}\bigr)_v}{\sqrt{G}}=-\frac{E_v}{2\sqrt{EG}},\qquad Q=\frac{\bigl(\sqrt{G}\bigr)_u}{\sqrt{E}}=\frac{G_u}{2\sqrt{EG}}

と取ればdω1=η∧ω2d\omega_1=\eta\wedge\omega_2とdω2=−η∧ω1d\omega_2=-\eta\wedge\omega_1がともに成り立つ。§E19.10 定理 3.2により、このη\etaが接続形式ω12\omega_{12}である。

外微分を取る。ω12=P du+Q dv\omega_{12}=P\,du+Q\,dvに対して

dω12=dP∧du+dQ∧dv=(Qu−Pv) du∧dvd\omega_{12}=dP\wedge du+dQ\wedge dv=\bigl(Q_u-P_v\bigr)\,du\wedge dv

である。一方ω1∧ω2=EG du∧dv\omega_1\wedge\omega_2=\sqrt{EG}\,du\wedge dvであるから、定理 1.2により

Qu−Pv=−KEGQ_u-P_v=-K\sqrt{EG}

である。PPとQQの式を代入すると

∂∂u ⁣(Gu2EG)+∂∂v ⁣(Ev2EG)=−KEG\frac{\partial}{\partial u}\!\left(\frac{G_u}{2\sqrt{EG}}\right)+\frac{\partial}{\partial v}\!\left(\frac{E_v}{2\sqrt{EG}}\right)=-K\sqrt{EG}

であり、両辺を−EG-\sqrt{EG}で割ると主張の式を得る。

抽象曲面の場合も、§E19.10 注意 6.1のとおり§E19.10 命題 1.3の標構の構成、§E19.10 定理 3.1および§E19.10 定理 3.2がそのまま成り立ち、定理 2.1 (1)がdω12=−K ω1∧ω2d\omega_{12}=-K\,\omega_1\wedge\omega_2を与えるので、同じ計算がそのまま通用する。▨

例 4.2 (球面).§E19.4 例 6.2の表示ではE=r2E=r^2、F=0F=0、G=r2sin⁡2uG=r^2\sin^2u(0<u<π0<u<\pi)であるからEG=r2sin⁡u\sqrt{EG}=r^2\sin uである。Ev=0E_v=0であり

Gu=2r2sin⁡ucos⁡u,GuEG=2r2sin⁡ucos⁡ur2sin⁡u=2cos⁡uG_u=2r^2\sin u\cos u,\qquad \frac{G_u}{\sqrt{EG}}=\frac{2r^2\sin u\cos u}{r^2\sin u}=2\cos u

であるから

K=−12r2sin⁡u[∂∂u(2cos⁡u)+0]=−−2sin⁡u2r2sin⁡u=1r2K=-\frac{1}{2r^2\sin u}\Bigl[\frac{\partial}{\partial u}\bigl(2\cos u\bigr)+0\Bigr] =-\frac{-2\sin u}{2r^2\sin u}=\frac{1}{r^2}

である。これは§E19.6 命題 4.3が Weingarten 写像から求めた値と一致する。第二基本形式も単位法線も、この計算には現れていない。

例 4.3 (弧長を母線のパラメータに取った回転面).§E19.9 命題 1.2の記号でI=dt2+f(t)2 dθ2\mathrm{I}=dt^2+f(t)^2\,d\theta^2とする。E=1E=1、F=0F=0、G=f2G=f^2であるからEG=f\sqrt{EG}=fである。Eθ=0E_\theta=0でありGt=2ff′G_t=2ff'であるから

GtEG=2ff′f=2f′,K=−12f[∂∂t(2f′)+0]=−f′′f\frac{G_t}{\sqrt{EG}}=\frac{2ff'}{f}=2f',\qquad K=-\frac{1}{2f}\Bigl[\frac{\partial}{\partial t}\bigl(2f'\bigr)+0\Bigr]=-\frac{f''}{f}

である。これは§E19.6 系 4.2が第二基本形式から求めた値と一致する。

二つの場合に値を確かめる。第一に、半径rrの球面はf(t)=rsin⁡(t/r)f(t)=r\sin(t/r)(0<t<πr0<t<\pi r)の場合であり、f′′=−r−1sin⁡(t/r)f''=-r^{-1}\sin(t/r)であるから−f′′/f=1/r2-f''/f=1/r^2である。第二に、母数c>0c>0の懸垂面の母線(φ,ψ)=(ccosh⁡(w/c), w)(\varphi,\psi)=(c\cosh(w/c),\ w)を弧長で径数づけ直す。φ′2+ψ′2=cosh⁡2(w/c)\varphi'^2+\psi'^2=\cosh^2(w/c)であるから弧長はt=csinh⁡(w/c)t=c\sinh(w/c)であり、sinh⁡(w/c)=t/c\sinh(w/c)=t/c、cosh⁡(w/c)=1+t2/c2\cosh(w/c)=\sqrt{1+t^2/c^2}である。よって

f(t)=ccosh⁡wc=c2+t2f(t)=c\cosh\frac{w}{c}=\sqrt{c^2+t^2}

である。f′=t/c2+t2f'=t/\sqrt{c^2+t^2}、

f′′=1c2+t2−t2(c2+t2)3/2=c2(c2+t2)3/2f''=\frac{1}{\sqrt{c^2+t^2}}-\frac{t^2}{(c^2+t^2)^{3/2}}=\frac{c^2}{(c^2+t^2)^{3/2}}

であるから

K=−f′′f=−c2(c2+t2)2K=-\frac{f''}{f}=-\frac{c^2}{(c^2+t^2)^2}

である。一方§E19.6 命題 4.3の値は−1/(c2cosh⁡4(w/c))-1/\bigl(c^2\cosh^4(w/c)\bigr)であり、cosh⁡2(w/c)=(c2+t2)/c2\cosh^2(w/c)=(c^2+t^2)/c^2を代入すると−c2/(c2+t2)2-c^2/(c^2+t^2)^2となって一致する。

注意 4.4 (平面と円柱が同じ Gauss 曲率を持つこと). 平面と円柱は局所等長である(§E19.4 例 7.4)から、定理 3.1により Gauss 曲率が対応する。実際、§E19.6 命題 4.3により円柱の Gauss 曲率は00である。一方、平均曲率は平面で00、半径rrの円柱で1/(2r)1/(2r)であり一致しない。平均曲率は第一基本形式だけでは決まらない。

この対比が、驚異の定理の内容を限定している。定理が述べているのは Gauss 曲率についてだけであり、二つの基本形式から作られる量が一般に第一基本形式で決まるということではない。

5 平坦な計量を持つ円環面

例 5.1 (平坦な計量を持つ円環面).Λ⊆R2\Lambda\subseteq\mathbb{R}^2を格子(「多様体入門」の§E17.23 定義 5.1)とし、T=R2/ΛT=\mathbb{R}^2/\Lambda、π ⁣:R2→T\pi\colon\mathbb{R}^2\to Tを商写像とする。同単元の§E17.23 命題 5.2によりTTは二次元C∞C^\infty多様体であり、π\piは局所微分同相であって、TTは円環面S1×S1S^1\times S^1と微分同相である。

第一基本形式を入れる。pˉ∈T\bar p\in TとX,Y∈TpˉTX,Y\in T_{\bar p}Tに対し、p∈π−1(pˉ)p\in\pi^{-1}(\bar p)を取り

Ipˉ(X,Y)=⟨(dπp)−1X, (dπp)−1Y⟩R2\mathrm{I}_{\bar p}(X,Y)=\bigl\langle (d\pi_p)^{-1}X,\ (d\pi_p)^{-1}Y\bigr\rangle_{\mathbb{R}^2}

と定める。ここで⟨ , ⟩R2\langle\ ,\ \rangle_{\mathbb{R}^2}はR2\mathbb{R}^2の標準内積であり、TpR2T_p\mathbb{R}^2をR2\mathbb{R}^2と同一視している。π\piは局所微分同相であるからdπpd\pi_pは線形同型であり、右辺は意味を持つ。この定義はppの取り方に依らない。実際、π−1(pˉ)\pi^{-1}(\bar p)の二点はppとp+λp+\lambda(λ∈Λ\lambda\in\Lambda)の形であり、平行移動τλ(z)=z+λ\tau_\lambda(z)=z+\lambdaについてπ∘τλ=π\pi\circ\tau_\lambda=\piが成り立つ。τλ\tau_\lambdaの微分は上の同一視のもとで恒等写像であるから

dπp=dπp+λ∘d(τλ)p=dπp+λd\pi_p=d\pi_{p+\lambda}\circ d(\tau_\lambda)_p=d\pi_{p+\lambda}

であり、二つの逆写像は一致する。

π\piの局所的な逆写像σ\sigmaをチャートに取ると、この定義により第一基本形式の成分はE=1E=1、F=0F=0、G=1G=1である。とくにI\mathrm{I}は各点で正定値対称双線形形式であり、点について滑らかに変化するから、(T,I)(T,\mathrm{I})は抽象曲面である(§E19.7 定義 5.1)。定義からπ\piは局所等長写像である(定義 2.2)。

Gauss 曲率が恒等的に零であることを示す。上のチャートの座標を(u,v)(u,v)とすると、座標基底∂1,∂2\partial_1,\partial_2は正規直交接標構であり、余標構はω1=du\omega_1=du、ω2=dv\omega_2=dvである。dω1=dω2=0d\omega_1=d\omega_2=0であるから、η=0\eta=0が§E19.10 定理 3.2の二つの式を満たす。よってω12=0\omega_{12}=0でありdω12=0d\omega_{12}=0、すなわち定理 2.1によりK≡0K\equiv0である。同じ結論は公式 4.1にE=G=1E=G=1、F=0F=0を代入しても得られる。

三次元空間の中に滑らかな曲面として実現されないこと。(T,I)(T,\mathrm{I})と等長な正則曲面M⊆R3M\subseteq\mathbb{R}^3は存在しない。ここで正則曲面は、その第一基本形式によって抽象曲面とみなす(§E19.7 例 5.2)。実際、等長写像Φ ⁣:T→M\Phi\colon T\to M(定義 2.2)が存在したとすると、Φ\Phiは全単射であり命題 2.3により局所微分同相であるから微分同相である。Λ\Lambdaを生成するv1,v2v_1,v_2に対してP={sv1+tv2:0≤s,t≤1}P=\{sv_1+tv_2:0\le s,t\le1\}と置くとPPはコンパクトであり、すべてのz∈R2z\in\mathbb{R}^2はΛ\Lambdaの元を加えてPPの点へ移すことができるのでπ(P)=T\pi(P)=Tである。したがってTTはコンパクト集合の連続像としてコンパクトであり、M=Φ(T)M=\Phi(T)もコンパクトである。定理 3.1によりMMの Gauss 曲率は恒等的に00である。一方、§E19.15 定理 6.1により、R3\mathbb{R}^3のコンパクトな正則曲面は Gauss 曲率が正である点を必ず持つ。したがって矛盾が生じる。本例はその主張を用いた帰結だけを述べており、本記事の他の主張はこの事実に依存していない。

この主張が述べていること。上で否定したのは、C∞C^\infty級の正則曲面としての実現である。より低い正則性の等長埋め込みについては何も述べていない。本単元は低い正則性の等長埋め込みを扱わず、その存在も非存在も主張しない。

注意 5.2 (埋め込まれた円環面との対比).§E19.6 注意 4.4が計算したとおり、R3\mathbb{R}^3の中の円環面Ta,bT_{a,b}には Gauss 曲率が正の点と負の点がともに存在する。一方、例 5.1の(T,I)(T,\mathrm{I})ではK≡0K\equiv0である。二つは微分同相な二次元多様体でありながら、第一基本形式が異なる。

したがって、Gauss 曲率の符号の分布は多様体としての位相だけでは決まらない。位相だけで決まるのはKKの値ではなく、KKの曲面全体にわたる積分である。その内容は「大域 Gauss–Bonnet と Euler 標数」が扱う。

6 演習

問題 6.1.

  1. 定理 1.1の証明のうち、(hij)(h_{ij})が基底{e1,e2}\{e_1,e_2\}に関するSSの表現行列の転置であることを示した部分を再現する。標構が正規直交でない場合にh11h22−h122h_{11}h_{22}-h_{12}^2とdet⁡S\det Sの関係がどう変わるかを、§E19.6 公式 2.3と対比して述べる。
  2. 定理 1.2の証明では、向きづけ可能性を仮定せずにN=e1×e2N=e_1\times e_2と置いた。この一手を用いずに、向きづけられた曲面についてだけ主張を述べたとすると、定理 2.1 (3)の証明のどの段階が成り立たなくなるかを述べる。
  3. 定理 3.1の証明を、引き戻しの記号を用いずに書き直す。すなわち、UUの各点でdω12(e1,e2)d\omega_{12}(e_1,e_2)とdωˉ12(eˉ1,eˉ2)d\bar\omega_{12}(\bar e_1,\bar e_2)を比較する形に直し、どの段階で§E19.10 定理 3.2が必要になるかを特定する。
  4. 定理 3.1の証明で§E19.10 定理 3.2を用いないとする。すなわち、ω12\omega_{12}を周囲の空間における微分による定義のまま扱うとする。このときϕ∗ωˉ12=ω12\phi^{*}\bar\omega_{12}=\omega_{12}を示そうとしても議論が閉じない理由を、ϕ\phiが第二基本形式について何も保たないことに即して述べる。
  5. 定理 2.1 (1)の証明のうち、二次微分形式がξ(e1,e2) ω1∧ω2\xi(e_1,e_2)\,\omega_1\wedge\omega_2と書かれることを示した部分を再現する。三次元多様体で同じ主張を述べようとすると、どこが成り立たなくなるかを述べる。
  6. 定理 2.1 (2)の証明では、標構の取り替えを回転と一つの反転に分けた。反転の場合にdω~12d\tilde\omega_{12}とω~1∧ω~2\tilde\omega_1\wedge\tilde\omega_2がともに符号を変えることを確かめ、片方だけが符号を変える取り替えが存在しない理由を述べる。
  7. 公式 4.1の導出を、F≡0F\equiv0を仮定せずに実行しようとするとどこで式が複雑になるかを述べる。§E19.10 命題 1.3の余標構を用いてdω1d\omega_1とdω2d\omega_2を書き下し、ω12=P du+Q dv\omega_{12}=P\,du+Q\,dvの係数P,QP,Qを決める連立一次方程式の形まで書く。
  8. 公式 4.1を、単位半径の球面の座標E=1E=1、F=0F=0、G=sin⁡2uG=\sin^2uに適用してK=1K=1を確かめる。次に、同じ式を平面の極座標E=1E=1、F=0F=0、G=r2G=r^2に適用してK=0K=0を確かめる。
  9. 例 5.1の第一基本形式がppの取り方に依らないことの証明を再現する。Λ\Lambdaを保つ線形写像であって直交変換でないものによって商を取ると、同じ手順のどこが成り立たなくなるかを述べる。
  10. 例 5.1の非存在の議論では、コンパクト性と Gauss 曲率の二つを用いた。コンパクト性の仮定を落とすと結論が得られない理由を、円柱がK≡0K\equiv0を満たすR3\mathbb{R}^3の正則曲面であることに即して述べる。

7 境界と次

驚異の定理が保証する範囲。定理 3.1は、局所等長写像が Gauss 曲率を保つことを述べる。逆は本記事では扱わない(注意 3.2)。また、二つの曲面の Gauss 曲率が一致するという条件は、第二基本形式について何も述べない。同じ第一基本形式を持ちながら第二基本形式が異なる曲面が存在するかどうか、および二つの基本形式の組がどのような条件を満たすかは、「曲面論の基本定理」が扱う。

平均曲率は内在的でないこと。注意 4.4のとおり、平均曲率は第一基本形式だけでは決まらない。H≡0H\equiv0という条件も同様であり、極小曲面は空間への入り方によって定まる対象である。その扱いは「面積の第一変分と極小曲面」が行う。

一般次元へ広げないこと。本記事の議論は、接平面が二次元であること、したがって各点で交代二次形式の全体が一次元であることに依存している。一般次元の Riemann 多様体では、曲率は関数ではなく曲率テンソルであり、Gauss 方程式も部分多様体の第二基本形式を含むテンソルの等式になる。その扱いは「Riemann 幾何 I」が行う。

低い正則性を扱わないこと。例 5.1が否定したのは、平坦な計量を持つ円環面をC∞C^\infty級の正則曲面として実現することである。本単元の曲面はすべてC∞C^\infty級であり、より弱い正則性のもとで何が成り立つかは扱わない。

次の記事へ渡すもの。定理 1.1は、二つの基本形式が満たす関係式の一つである。もう一つは、法線方向の接続形式の外微分から得られる Codazzi–Mainardi 方程式であり、二つを合わせたものが適合条件になる。適合条件を満たす二つの形式から曲面を復元することが「曲面論の基本定理」の主定理である。定理 1.2のdω12=−K dAd\omega_{12}=-K\,dAは、局所 Gauss–Bonnet の定理で接続形式を境界に沿って積分するときの出発点になる。定理 2.1は、Gauss–Bonnet の定理をR3\mathbb{R}^3に埋め込まれていない曲面へ適用するために必要である。

参考文献

  1. Manfredo P. do Carmo, Differential Geometry of Curves and Surfaces, revised and updated second ed., Dover Publications, Mineola, N.Y., 2016.Gauss 方程式と驚異の定理、直交座標における Gauss 曲率の内在的な表示、第一基本形式だけを与えられた二次元の対象に対する Gauss 曲率の定義、および平坦な計量を持つ円環面の扱いを参考にした。
  2. Barrett O'Neill, Elementary Differential Geometry, 2 (revised) ed., Academic Press, 2006.構造方程式から Gauss 曲率を取り出す扱いと、局所等長写像が Gauss 曲率を保つことの証明を参考にした。

前提記事