§E7.20組成列と Jordan–Hölder の定理

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有限群を単純群へ段階的に分解するとき、途中で選ぶ正規部分群は一意とは限らない。Jordan–Hölder の定理は、選択が異なっても、最後に現れる単純群の多重集合が変わらないことを保証する。本稿では、二つの正規列を同時に細分する Schreier の定理を Zassenhaus の蝶補題から証明し、その帰結として Jordan–Hölder の定理を導く。

1 正規列、細分、組成列

定義 1.1. 群GGの正規列 (normal series) とは、有限個の真の包含からなる列

G=G0▹G1▹⋯▹Gr={eG},Gi+1⊴GiG=G_0\triangleright G_1\triangleright\cdots\triangleright G_r=\{e_G\}, \qquad G_{i+1}\trianglelefteq G_i

である。各商群Gi/Gi+1G_i/G_{i+1}を、この正規列の因子 (factor of a normal series) という。

正規列の隣り合う二項の間へ部分群を挿入して得られる正規列を、元の正規列の細分 (refinement of a normal series) という。

二つの正規列の因子の間に、同型な因子を対応させる全単射が存在するとき、二つの正規列は同値 (equivalent normal series) であるという。因子を並べる順序は問わないが、同じ同型型が複数回現れる場合には、その重複度を保つ。

ここで用いる正規列では、Gi+1G_{i+1}が直前のGiG_iで正規であることだけを仮定する。各GiG_iがGG全体で正規であるとは限らない。

定義 1.2. 正規列

G=G0▹G1▹⋯▹Gr={eG}G=G_0\triangleright G_1\triangleright\cdots\triangleright G_r=\{e_G\}

のすべての因子Gi/Gi+1G_i/G_{i+1}が単純群であるとき、この列をGGの組成列 (composition series) といい、各因子を組成因子 (composition factor) という。組成列の因子の個数rrを、その組成列の長さ (length of a composition series) という。自明群の空の列は長さ00の組成列である。

補題 1.3. 正規列が組成列であることと、その正規列が真の細分をもたないことは同値である。

証明. 正規列の一つの区間

Gi▹Gi+1G_i\triangleright G_{i+1}

を考える。Gi/Gi+1G_i/G_{i+1}が単純でないならば、非自明な真の正規部分群H‾⊴Gi/Gi+1\overline H\trianglelefteq G_i/G_{i+1}が存在する。商写像による逆像をHHとすると、

Gi▹H▹Gi+1G_i\triangleright H\triangleright G_{i+1}

であり、HHを挿入して真の細分を得る。

逆に、上の区間へHHを挿入する真の細分が存在するならば、H⊴GiH\trianglelefteq G_iかつGi+1⊊H⊊GiG_{i+1}\subsetneq H\subsetneq G_iである。したがってH/Gi+1H/G_{i+1}はGi/Gi+1G_i/G_{i+1}の非自明な真の正規部分群であり、この因子は単純でない。すべての区間に同じ議論を適用すれば結論を得る。

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2 Zassenhaus の蝶補題

二つの正規列を比較する局所計算が、次の蝶補題である。

補題 2.1 (Zassenhaus の蝶補題).A,BA,Bを群GGの部分群とし、A′⊴AA'\trianglelefteq A、B′⊴BB'\trianglelefteq Bとする。次の四つの部分群を定める。

A1=A′(A∩B),A0=A′(A∩B′),B1=B′(A∩B),B0=B′(A′∩B).\begin{aligned} A_1&=A'(A\cap B),& A_0&=A'(A\cap B'),\\ B_1&=B'(A\cap B),& B_0&=B'(A'\cap B). \end{aligned}

このときA0⊴A1A_0\trianglelefteq A_1、B0⊴B1B_0\trianglelefteq B_1であり、

A1/A0≅B1/B0A_1/A_0\cong B_1/B_0

が成り立つ。

証明.D=A∩BD=A\cap B、X=A∩B′X=A\cap B'、Y=A′∩BY=A'\cap Bとおく。最初にX,Y⊴DX,Y\trianglelefteq Dを個別に確認する。d∈Dd\in Dとx∈Xx\in Xに対し、d,x∈Ad,x\in Aなのでdxd−1∈Adxd^{-1}\in Aである。また、d∈Bd\in B、x∈B′x\in B'とB′⊴BB'\trianglelefteq Bからdxd−1∈B′dxd^{-1}\in B'である。したがってdxd−1∈Xdxd^{-1}\in Xであり、X⊴DX\trianglelefteq Dとなる。

d∈Dd\in Dとy∈Yy\in Yに対しては、d∈Ad\in A、y∈A′y\in A'とA′⊴AA'\trianglelefteq Aからdyd−1∈A′dyd^{-1}\in A'である。一方、d,y∈Bd,y\in Bなのでdyd−1∈Bdyd^{-1}\in Bである。したがってdyd−1∈Ydyd^{-1}\in Yであり、Y⊴DY\trianglelefteq Dとなる。

A′⊴AA'\trianglelefteq AかつA1=A′D≤AA_1=A'D\leq Aなので、A′⊴A1A'\trianglelefteq A_1である。商写像をqA ⁣:A1→A1/A′q_A\colon A_1\to A_1/A'とする。等式A1=A′DA_1=A'DからqA(A1)=qA(D)q_A(A_1)=q_A(D)であり、等式A0=A′XA_0=A'XからqA(A0)=qA(X)q_A(A_0)=q_A(X)である。X⊴DX\trianglelefteq DなのでqA(X)⊴qA(D)q_A(X)\trianglelefteq q_A(D)であり、A0=qA−1(qA(X))A_0=q_A^{-1}(q_A(X))である。したがってA0⊴A1A_0\trianglelefteq A_1となる。

同じ包含をBB側でも明記する。B′⊴BB'\trianglelefteq BかつB1=B′D≤BB_1=B'D\leq Bなので、B′⊴B1B'\trianglelefteq B_1である。商写像をqB ⁣:B1→B1/B′q_B\colon B_1\to B_1/B'とすると、

qB(B1)=qB(D),qB(B0)=qB(Y).q_B(B_1)=q_B(D),\qquad q_B(B_0)=q_B(Y).

Y⊴DY\trianglelefteq DなのでqB(Y)⊴qB(D)q_B(Y)\trianglelefteq q_B(D)であり、B0=qB−1(qB(Y))B_0=q_B^{-1}(q_B(Y))である。したがってB0⊴B1B_0\trianglelefteq B_1となる。

共通の核を

K=YX=(A′∩B)(A∩B′)K=YX=(A'\cap B)(A\cap B')

とおく。XXとYYはともにDDの正規部分群なので、KKはDDの正規部分群であり、XY=YX=KXY=YX=Kである。準同型

φA ⁣:D⟶A1/A0,d⟼dA0\varphi_A\colon D\longrightarrow A_1/A_0, \qquad d\longmapsto dA_0

を考える。任意のA1/A0A_1/A_0の元は、a′∈A′a'\in A'、d∈Dd\in Dを用いてa′dA0a'dA_0と表すことができる。A′⊆A0A'\subseteq A_0なのでa′dA0=dA0=φA(d)a'dA_0=dA_0=\varphi_A(d)であり、φA\varphi_Aは全射である。その核はD∩A0D\cap A_0である。

D∩A0=D∩(A′(A∩B′))=(A′∩B)(A∩B′)=K.(1)D\cap A_0 =D\cap\bigl(A'(A\cap B')\bigr) =(A'\cap B)(A\cap B') =K. \tag{1}

D∩A0⊆KD\cap A_0\subseteq Kを示す。d∈D∩A0d\in D\cap A_0ならばd=a′xd=a'x、a′∈A′a'\in A'、x∈Xx\in Xと表される。x∈Dx\in Dなのでa′=dx−1∈A′∩D=A′∩B=Ya'=dx^{-1}\in A'\cap D=A'\cap B=Yであり、d=a′x∈YX=Kd=a'x\in YX=Kとなる。逆に、y∈Yy\in Yとx∈Xx\in Xに対して、y,x∈Dy,x\in Dなのでyx∈Dyx\in Dである。また、y∈A′y\in A'とx∈Xx\in Xからyx∈A′X=A0yx\in A'X=A_0である。したがってK=YX⊆D∩A0K=YX\subseteq D\cap A_0となり、式 (1) を得る。

BB側では、準同型

φB ⁣:D⟶B1/B0,d⟼dB0\varphi_B\colon D\longrightarrow B_1/B_0, \qquad d\longmapsto dB_0

を考える。任意のB1/B0B_1/B_0の元は、b′∈B′b'\in B'、d∈Dd\in Dを用いてb′dB0b'dB_0と表される。B′⊆B0B'\subseteq B_0なのでb′dB0=dB0=φB(d)b'dB_0=dB_0=\varphi_B(d)であり、φB\varphi_Bは全射である。その核を計算すると、

D∩B0=(A′∩B)(A∩B′)=K(2)D\cap B_0 =(A'\cap B)(A\cap B') =K \tag{2}

となる。実際、d∈D∩B0d\in D\cap B_0ならばd=b′yd=b'y、b′∈B′b'\in B'、y∈Yy\in Yと表される。y∈Dy\in Dなのでb′=dy−1∈B′∩D=B′∩A=Xb'=dy^{-1}\in B'\cap D=B'\cap A=Xであり、d=b′y∈XY=Kd=b'y\in XY=Kとなる。逆に、K=XYK=XYなので、その任意の元はx∈Xx\in Xとy∈Yy\in Yを用いてxyxyと表される。x,y∈Dx,y\in Dなのでxy∈Dxy\in Dであり、x∈B′x\in B'とy∈Yy\in Yからxy∈B′Y=B0xy\in B'Y=B_0でもある。したがってK⊆D∩B0K\subseteq D\cap B_0であり、式 (2) を得る。

§E7.8 定理 1.1をφA\varphi_AとφB\varphi_Bに適用すると

A1/A0≅D/K≅B1/B0A_1/A_0\cong D/K\cong B_1/B_0

を得る。得られた同型を直接書けば

A1/A0⟶B1/B0,a′dA0⟼dB0(a′∈A′, d∈D)A_1/A_0\longrightarrow B_1/B_0, \qquad a'dA_0\longmapsto dB_0 \quad(a'\in A',\ d\in D)

である。a′a'はA0A_0に属し、代表元ddの変更は共通の核KKによって吸収されるので、この式は整定義されている。

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3 Schreier の細分定理

最初に、二つの正規列(Gi)(G_i)、(Hj)(H_j)の各区間を交叉させて、部分群Gi,j=Gi+1(Gi∩Hj)G_{i,j}=G_{i+1}(G_i\cap H_j)とHj,i=Hj+1(Hj∩Gi)H_{j,i}=H_{j+1}(H_j\cap G_i)を構成する。次に、各(i,j)(i,j)へ Zassenhaus の蝶補題を適用し、隣接する項の正規性と対応する商の同型を得る。各添字列を順につなぐことで、二つの元の正規列の細分を中間目標として構成する。最後に、対応する自明因子を生じる重複項を両側から同時に削除し、残る因子の全単射へ帰着する。

定理 3.1 (Schreier の細分定理). 群GGの任意の二つの正規列は、互いに同値な細分をもつ。

証明. 二つの正規列を

G=G0▹G1▹⋯▹Gr={eG},G=G_0\triangleright G_1\triangleright\cdots\triangleright G_r=\{e_G\},G=H0▹H1▹⋯▹Hs={eG}G=H_0\triangleright H_1\triangleright\cdots\triangleright H_s=\{e_G\}

とする。0≤i<r0\leq i<r、0≤j≤s0\leq j\leq sに対して

Gi,j=Gi+1(Gi∩Hj)G_{i,j}=G_{i+1}(G_i\cap H_j)

とおく。端では

Gi,0=Gi,Gi,s=Gi+1G_{i,0}=G_i, \qquad G_{i,s}=G_{i+1}

である。第二の正規列については、0≤j<s0\leq j<s、0≤i≤r0\leq i\leq rに対して

Hj,i=Hj+1(Hj∩Gi)H_{j,i}=H_{j+1}(H_j\cap G_i)

とおくと、

Hj,0=Hj,Hj,r=Hj+1H_{j,0}=H_j, \qquad H_{j,r}=H_{j+1}

となる。

補題 2.1を

A=Gi,A′=Gi+1,B=Hj,B′=Hj+1A=G_i,\quad A'=G_{i+1},\quad B=H_j,\quad B'=H_{j+1}

へ適用すると

Gi,j+1⊴Gi,j,Hj,i+1⊴Hj,iG_{i,j+1}\trianglelefteq G_{i,j}, \qquad H_{j,i+1}\trianglelefteq H_{j,i}

および

Gi,j/Gi,j+1≅Hj,i/Hj,i+1(3)G_{i,j}/G_{i,j+1} \cong H_{j,i}/H_{j,i+1} \tag{3}

を得る。

各iiについてj=0,…,sj=0,\ldots,sの列を並べ、隣り合うGiG_iの区間を順につなぐと、最初の正規列の細分が得られる。各jjについてi=0,…,ri=0,\ldots,rの列を並べ、隣り合うHjH_jの区間を順につなぐと、第二の正規列の細分が得られる。途中で隣り合う部分群が等しい場合には、その重複を削除する。(3) によって、一方の商が自明であることと対応する他方の商が自明であることは同値なので、重複は対応する位置から同時に削除することができる。

削除後の各因子は (3) によって一対一に同型な因子と対応する。したがって、得られた二つの細分は同値である。

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4 組成列の存在

定理 4.1. 任意の有限群は組成列をもつ。

証明.∣G∣|G|に関する帰納法を用いる。G={eG}G=\{e_G\}ならば空の組成列をもつ。G≠{eG}G\neq\{e_G\}とする。

GGが単純群ならば

G▹{eG}G\triangleright\{e_G\}

が組成列である。GGが単純群でないならば、有限個の真の正規部分群の中から包含に関して極大なものNNを取る。NNはGGより位数が小さいので、帰納法によって組成列

N=N0▹N1▹⋯▹Nt={eG}N=N_0\triangleright N_1\triangleright\cdots\triangleright N_t=\{e_G\}

をもつ。

G/NG/Nが単純であることを示す。G/NG/Nに非自明な真の正規部分群が存在すれば、その商写像による逆像はNNを真に含むGGの真の正規部分群となり、NNの極大性に反する。したがってG/NG/Nは単純である。ゆえに

G▹N=N0▹N1▹⋯▹Nt={eG}G\triangleright N=N_0\triangleright N_1\triangleright\cdots\triangleright N_t=\{e_G\}

はGGの組成列である。

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5 Jordan–Hölder の定理

最初に、群GGの任意の二つの組成列を取り、Schreier の細分定理を適用して互いに同値な細分を構成する。次に、組成列が真の細分をもたないという特徴づけを各細分へ適用する。この一手により、重複項を除いた各細分は元の組成列そのものに戻る。最後に、細分の因子間の全単射を元の組成列へ移し、組成因子の同型型と重複度の一意性へ帰着する。

定理 5.1 (Jordan–Hölder の定理). 組成列をもつ群GGについて、任意の二つの組成列は同値である。したがって、GGの組成因子の同型型は、順序を除き、重複度を含めて一意に定まる。

証明.GGの二つの組成列を取る。定理 3.1によって、両者は互いに同値な細分をもつ。しかし、補題 1.3により、組成列は真の細分をもたない。したがって、Schreier の定理で得られる細分から重複項を除いた列は元の組成列そのものである。二つの組成列は同値であり、各組成因子の同型型と重複度は一致する。

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有限群GGの組成列の長さは、定理 4.1と定理 5.1によって選択によらない。この整数をℓ(G)\ell(G)と書き、GGの組成長という。

定理 5.2.GGを有限群、N⊴GN\trianglelefteq Gとする。このとき、GGの組成因子の多重集合は、NNの組成因子の多重集合とG/NG/Nの組成因子の多重集合の非交和である。特に

ℓ(G)=ℓ(N)+ℓ(G/N)\ell(G)=\ell(N)+\ell(G/N)

が成り立つ。N≠{eG}N\neq\{e_G\}ならば

ℓ(G/N)<ℓ(G)\ell(G/N)<\ell(G)

である。

証明.NNの組成列を

N=N0▹⋯▹Na={eG}N=N_0\triangleright\cdots\triangleright N_a=\{e_G\}

とし、G/NG/Nの組成列を

G/N=Q0▹⋯▹Qb={N}G/N=Q_0\triangleright\cdots\triangleright Q_b=\{N\}

とする。商写像qN ⁣:G→G/Nq_N\colon G\to G/Nに対してHi=qN−1(Qi)H_i=q_N^{-1}(Q_i)とおくと、

G=H0▹⋯▹Hb=NG=H_0\triangleright\cdots\triangleright H_b=N

となる。各iiについて

Hi/Hi+1≅Qi/Qi+1H_i/H_{i+1}\cong Q_i/Q_{i+1}

である。実際、Hi→Qi/Qi+1H_i\to Q_i/Q_{i+1}、h↦qN(h)Qi+1h\mapsto q_N(h)Q_{i+1}は核Hi+1H_{i+1}をもつ全射準同型なので、§E7.8 定理 1.1を適用することができる。

二つの列を連結して

G=H0▹⋯▹Hb=N=N0▹⋯▹Na={eG}G=H_0\triangleright\cdots\triangleright H_b=N=N_0 \triangleright\cdots\triangleright N_a=\{e_G\}

を得る。各因子はG/NG/NまたはNNの組成因子と同型なので、この列はGGの組成列である。定理 5.1によって、GGの任意の組成列は同じ組成因子の多重集合をもつ。したがって多重集合の主張と長さの等式が従う。

N≠{eG}N\neq\{e_G\}ならばℓ(N)≥1\ell(N)\geq1であるから、

ℓ(G/N)=ℓ(G)−ℓ(N)<ℓ(G)\ell(G/N)=\ell(G)-\ell(N)<\ell(G)

となる。

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6 例と非例

例 6.1 (S3S_3の組成列).A3⊴S3A_3\trianglelefteq S_3であり、

S3▹A3▹{e}S_3\triangleright A_3\triangleright\{e\}

は組成列である。因子は

S3/A3≅C2,A3≅C3S_3/A_3\cong C_2, \qquad A_3\cong C_3

である。したがってS3S_3の組成因子の多重集合は{C2,C3}\{C_2,C_3\}であり、ℓ(S3)=2\ell(S_3)=2である。

例 6.2 (無限巡回群には有限組成列がない). 加法群Z\mathbb Zの非零部分群はすべてnZn\mathbb Zの形であり、Z\mathbb Zと同型である。有限正規列が00に達すると仮定すると、最後の非零項はあるnZn\mathbb Zである。しかし2nZ2n\mathbb Zは

0⊊2nZ⊊nZ0\subsetneq2n\mathbb Z\subsetneq n\mathbb Z

を満たす正規部分群なので、因子nZ/0n\mathbb Z/0は単純でない。したがってZ\mathbb Zは有限組成列をもたない。有限群という仮定が定理 4.1では不可欠である。

7 演習

問題 7.1.

  1. C12C_{12}の組成列を一つ構成し、組成因子の多重集合を求めよ。
  2. 補題 2.1の証明で、K=(A′∩B)(A∩B′)K=(A'\cap B)(A\cap B')がD=A∩BD=A\cap Bの正規部分群であることを、共役を用いて直接確認せよ。
  3. 有限群GGとN⊴GN\trianglelefteq Gについて、N≠GN\neq Gならばℓ(N)<ℓ(G)\ell(N)<\ell(G)であることを示せ。
解答.
  1. 例えば

    C12▹C6▹C3▹{0}C_{12}\triangleright C_6\triangleright C_3\triangleright\{0\}

    と取ることができる。組成因子はC2,C2,C3C_2,C_2,C_3である。

  2. A′∩BA'\cap BとA∩B′A\cap B'はともにDDの正規部分群なので、それらの積は部分群であり、DDの共役で不変である。

  3. 定理 5.2をN⊴GN\trianglelefteq Gに適用するとℓ(G)=ℓ(N)+ℓ(G/N)\ell(G)=\ell(N)+\ell(G/N)である。N≠GN\neq GならばG/NG/Nは非自明なのでℓ(G/N)≥1\ell(G/N)\geq1であり、ℓ(N)<ℓ(G)\ell(N)<\ell(G)となる。

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参考文献

  1. David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004.群の正規列、Schreier の細分定理、Jordan–Hölder の定理を参考にした。
  2. Joseph J. Rotman, An Introduction to the Theory of Groups, 4th ed., Graduate Texts in Mathematics 148, Springer, 1995.Zassenhaus の蝶補題と組成列の標準的な証明構成を参考にした。

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