§E7.11Burnside の補題

最終更新

図形の塗り分けでは、回転または鏡映によって一致する配置を同一視する。配置の総数を対称変換の個数で割るだけでは、一般には正しい答えを得ることができない。配置ごとに、その配置を固定する対称変換の個数が異なるからである。 Burnside の補題は、この違いを不動点数の平均によって処理する。

本稿では、群作用の積を

(gh)⋅x=g⋅(h⋅x) (gh)\cdot x=g\cdot(h\cdot x)

とする。群作用の基本事項と軌道安定化群定理は§E7.10 定義 2.1および§E7.10 定理 3.4 (軌道安定化群定理)で扱った。有限集合の互いに素な和と直積の計数には、§D2.2 定理 2.1 (加法原理)と§D2.2 定理 2.3 (乗法原理)を用いる。

1 置換と群作用

定義 1.1. 有限集合VVの置換全体の群をSym⁡(V)\operatorname{Sym}(V)と書く。その部分群G≤Sym⁡(V)G\leq\operatorname{Sym}(V)をVV上の置換群 (permutation group) と呼ぶ。

定義 1.2. 有限群GGと有限集合XXに対し、写像

G×X⟶X,(g,x)⟼g⋅x G\times X\longrightarrow X,\qquad (g,x)\longmapsto g\cdot x

が

e⋅x=x,(gh)⋅x=g⋅(h⋅x) e\cdot x=x,\qquad (gh)\cdot x=g\cdot(h\cdot x)

を満たすとき、この写像をGGのXXへの左作用 (left action on a finite set) と呼ぶ。

1.1 塗り分けへの作用

定義 1.3. 頂点集合をVV、色集合をCCとする。塗り分け (coloring) は写像

f ⁣:V⟶C f\colon V\longrightarrow C

である。塗り分け全体の集合をCVC^Vと書く。

図形の対称変換は準同型

ρ ⁣:G⟶Sym⁡(V) \rho\colon G\longrightarrow\operatorname{Sym}(V)

として頂点に作用する。

定義 1.4. 塗り分け全体CVC^Vへの作用を

(g⋅f)(v)=f(ρ(g)−1(v)),すなわちg⋅f=f∘ρ(g)−1 (g\cdot f)(v)=f\bigl(\rho(g)^{-1}(v)\bigr), \qquad\text{すなわち}\qquad g\cdot f=f\circ\rho(g)^{-1}

と定める。この作用を塗り分けへの誘導作用 (induced action on colorings) と呼ぶ。

命題 1.5. 有限集合V,CV,C、有限群GG、群準同型

ρ ⁣:G⟶Sym⁡(V) \rho\colon G\longrightarrow\operatorname{Sym}(V)

に対し、

g⋅f=f∘ρ(g)−1(g∈G, f∈CV) g\cdot f=f\circ\rho(g)^{-1}\qquad(g\in G,\ f\in C^V)

と定める。この式はGGのCVC^Vへの左作用を定める。

証明. 逆写像を用いる理由は、左作用の積の順序と写像の合成の順序を一致させるためである。実際、ρ(gh)=ρ(g)∘ρ(h)\rho(gh)=\rho(g)\circ\rho(h)であるから、

(gh)⋅f=f∘ρ(gh)−1=f∘ρ(h)−1∘ρ(g)−1=g⋅(h⋅f).\begin{aligned} (gh)\cdot f &=f\circ\rho(gh)^{-1}\\ &=f\circ\rho(h)^{-1}\circ\rho(g)^{-1}\\ &=g\cdot(h\cdot f). \end{aligned}

またe⋅f=fe\cdot f=fである。したがって、上の式は左作用を定める。▨

命題 1.6. 二つの塗り分けf1,f2∈CVf_1,f_2\in C^Vが図形の対称変換によって一致することと、f1,f2f_1,f_2が同じGG-軌道に属することとは同値である。

証明. 塗り分けf2f_2がf1f_1に対称変換ggを施して得られることは、定義によりf2=g⋅f1f_2=g\cdot f_1と表される。等式f2=g⋅f1f_2=g\cdot f_1があるg∈Gg\in Gについて成り立つことは、f2∈G⋅f1f_2\in G\cdot f_1と同値である。▨

定義 1.7.x∈Xx\in Xに対し、

Gx={g∈G∣g⋅x=x} G_x=\{g\in G\mid g\cdot x=x\}

をxxの安定化群 (stabilizer) と呼ぶ。g∈Gg\in Gに対し、

Fix⁡X(g)={x∈X∣g⋅x=x} \operatorname{Fix}_X(g)=\{x\in X\mid g\cdot x=x\}

をggの不動点集合 (fixed-point set) と呼ぶ。

定理 1.8 (有限群に対する軌道安定化群定理). 有限群GGが有限集合XXに作用するとき、各x∈Xx\in Xに対して

∣G⋅x∣=∣G∣∣Gx∣ |G\cdot x|=\frac{|G|}{|G_x|}

が成り立つ。

証明.§E7.10 定理 3.4 (軌道安定化群定理)により、G⋅xG\cdot xと左剰余類集合G/GxG/G_xの間に全単射がある。 Lagrange の定理を用いると

∣G/Gx∣=[G:Gx]=∣G∣∣Gx∣ |G/G_x|=[G:G_x]=\frac{|G|}{|G_x|}

である。▨

2 置換の巡回置換分解と固定される塗り分け

定義 2.1. 有限集合VVの置換σ\sigmaに対し、⟨σ⟩\langle\sigma\rangleのVVへの作用の軌道をσ\sigmaの巡回軌道 (cycle orbit) と呼ぶ。巡回軌道の個数をc(σ)c(\sigma)と書く。

命題 2.2.∣C∣=k|C|=kとする。置換σ∈Sym⁡(V)\sigma\in\operatorname{Sym}(V)が固定する塗り分けの個数は

∣Fix⁡CV(σ)∣=kc(σ) \left|\operatorname{Fix}_{C^V}(\sigma)\right|=k^{c(\sigma)}

である。

証明.σ⋅f=f\sigma\cdot f=fであることは、

f(σ−1(v))=f(v)(v∈V) f(\sigma^{-1}(v))=f(v)\qquad(v\in V)

が成り立つことと同値である。この等式を繰り返し用いると、ffは各巡回軌道上で一定である。逆に、各巡回軌道上で一定な塗り分けはσ\sigmaによって固定される。各巡回軌道にはkk通りの色を独立に選ぶことができるから、不動点数はkc(σ)k^{c(\sigma)}である。▨

3 Burnside の補題

証明では、まず固定された組の集合Ω={(g,x)∈G×X∣g⋅x=x}\Omega=\{(g,x)\in G\times X\mid g\cdot x=x\}を構成する。第一成分を固定して数えることにより、不動点数の総和として∣Ω∣|\Omega|を表す。次に第二成分を固定し、同じ軌道上の安定化群が共役であることと軌道安定化群定理を用いて、各軌道が∣Ω∣|\Omega|へちょうど∣G∣|G|だけ寄与することを示す。最後に二つの計数結果を等置し、∣G∣|G|で割って軌道数の公式を得る。

定理 3.1 (Burnside の補題). 有限群GGが有限集合XXに作用するとき、軌道数は

∣X/G∣=1∣G∣∑g∈G∣Fix⁡X(g)∣ |X/G| =\frac{1}{|G|}\sum_{g\in G}|\operatorname{Fix}_X(g)|

である。

証明. 組の集合

Ω={(g,x)∈G×X∣g⋅x=x} \Omega=\{(g,x)\in G\times X\mid g\cdot x=x\}

を考える。第一成分ggを先に固定して数えると、

∣Ω∣=∑g∈G∣Fix⁡X(g)∣ |\Omega|=\sum_{g\in G}|\operatorname{Fix}_X(g)|

である。

第二成分xxを先に固定して数えると、

∣Ω∣=∑x∈X∣Gx∣ |\Omega|=\sum_{x\in X}|G_x|

である。軌道O⊆X\mathcal O\subseteq Xを一つ固定する。y=h⋅xy=h\cdot xならば

Gy=hGxh−1 G_y=hG_xh^{-1}

である。実際、g⋅y=yg\cdot y=yと(h−1gh)⋅x=x(h^{-1}gh)\cdot x=xは同値である。したがって、安定化群の位数は軌道上で一定である。x∈Ox\in\mathcal Oを一つ取ると、軌道安定化群定理により

∑y∈O∣Gy∣=∣O∣ ∣Gx∣=∣G∣∣Gx∣∣Gx∣=∣G∣ \sum_{y\in\mathcal O}|G_y| =|\mathcal O|\,|G_x| =\frac{|G|}{|G_x|}|G_x| =|G|

である。したがって、すべての軌道について和を取ると

∣Ω∣=∣X/G∣ ∣G∣ |\Omega|=|X/G|\,|G|

となる。二つの計数結果を等置し、∣G∣|G|で割れば主張を得る。▨

定理 3.2 (塗り分けに対する Burnside の補題). 有限群GGが有限頂点集合VVに置換として作用し、∣C∣=k|C|=kとする。対称性を除いた塗り分けの個数は

∣CV/G∣=1∣G∣∑g∈Gkc(ρ(g)) |C^V/G| =\frac{1}{|G|}\sum_{g\in G}k^{c(\rho(g))}

である。

証明.定理 3.1 (Burnside の補題)をX=CVX=C^Vに適用し、命題 2.2を用いればよい。▨

3.1 正方形を二色で塗る

例 3.3 (正方形の二色塗り分け). 正方形の四頂点を二色で塗り、回転によって一致する塗り分けを同一視する。回転群C4C_4の各元が固定する塗り分けの個数は次の通りである。

回転角巡回軌道の個数不動点数0424=16π/212π222=43π/212\begin{array}{c|c|c} \text{回転角} & \text{巡回軌道の個数} & \text{不動点数}\\ \hline 0 & 4 & 2^4=16\\ \pi/2 & 1 & 2\\ \pi & 2 & 2^2=4\\ 3\pi/2 & 1 & 2 \end{array}

したがって、Burnside の補題から軌道数は

16+2+4+24=6 \frac{16+2+4+2}{4}=6

である。

総数1616を∣C4∣=4|C_4|=4で割ると44になるが、正しい答えは66である。一色だけを用いる塗り分けはすべての回転で固定される一方、一般の塗り分けはそうではない。この例は、単純な除法が失敗する理由を示す。

4 正nn角形の回転

正nn角形の頂点をZ/nZ\mathbb Z/n\mathbb Zと同一視する。jj頂点分の回転をrjr^jと書く。この回転はa∈Z/nZa\in\mathbb Z/n\mathbb Zをa+ja+jへ写す。以下ではnnとjjの最大公約数をgcd⁡(n,j)\gcd(n,j)と書き、j=0j=0の場合はgcd⁡(n,0)=n\gcd(n,0)=nと定める。

回転の巡回軌道数を求めるために、二つの補題を用意する。第一の補題は、回転rjr^jを何回合成すると恒等写像へ戻るかを整数の言葉で与える。第二の補題は、rjr^jの巡回軌道の長さがすべて等しいことを、安定化群が単位元だけからなることと軌道安定化群定理から導く。

補題 4.1. 正の整数nnと整数jjに対し、n∣mjn\mid mjを満たす正の整数mmが存在する。そのようなmmのうち最小のものは

ngcd⁡(n,j) \frac{n}{\gcd(n,j)}

である。

証明.d=gcd⁡(n,j)d=\gcd(n,j)と置き、

A={m∈Z∣m>0, n∣mj} A=\{m\in\mathbb Z\mid m>0,\ n\mid mj\}

と置く。m=nm=nはn∣njn\mid njを満たすから、AAは空でない。AAの最小元をttとする。

第一に、t≤n/dt\leq n/dを示す。ddはnnとjjの公約数であるから、n/dn/dは正の整数であり、j/dj/dは整数である。等式(n/d)j=n(j/d)(n/d)j=n(j/d)からn∣(n/d)jn\mid(n/d)jが従うので、n/d∈An/d\in Aである。ttの最小性によりt≤n/dt\leq n/dである。

第二に、t∣nt\mid nを示す。整数の除法によってn=qt+sn=qt+s、0≤s<t0\leq s<tと書く。n∣njn\mid njとn∣tjn\mid tjから

n∣(n−qt)j=sj n\mid(n-qt)j=sj

が従う。s>0s>0ならばs∈As\in Aとなり、ttの最小性に反する。したがってs=0s=0であり、ttはnnを割り切る。

第三に、t≥n/dt\geq n/dを示す。u=n/tu=n/tと置くと、uuは正の整数である。n∣tjn\mid tjはtu∣tjtu\mid tjと書き直すことができ、t>0t>0であるからu∣ju\mid jである。またu∣nu\mid nである。したがってuuはnnとjjの公約数であり、ddが最大公約数であることからu≤du\leq dである。ゆえにt=n/u≥n/dt=n/u\geq n/dである。

第一と第三の不等式からt=n/dt=n/dを得る。▨

補題 4.2. 正の整数nnと整数jjに対し、

∣⟨rj⟩∣=ngcd⁡(n,j) \left|\langle r^j\rangle\right|=\frac{n}{\gcd(n,j)}

が成り立つ。さらに、rjr^jの巡回軌道はいずれもn/gcd⁡(n,j)n/\gcd(n,j)個の頂点からなる。

証明.t=n/gcd⁡(n,j)t=n/\gcd(n,j)と置く。整数mmに対し、(rj)m(r^j)^mはa∈Z/nZa\in\mathbb Z/n\mathbb Zをa+mja+mjへ写す。したがって、次の三つの条件は同値である。

  1. あるa∈Z/nZa\in\mathbb Z/n\mathbb Zが存在して(rj)m(a)=a(r^j)^m(a)=aが成り立つ。
  2. n∣mjn\mid mjが成り立つ。
  3. すべてのa∈Z/nZa\in\mathbb Z/n\mathbb Zについて(rj)m(a)=a(r^j)^m(a)=aが成り立つ。すなわち(rj)m(r^j)^mは恒等写像である。

実際、Z/nZ\mathbb Z/n\mathbb Zにおいてa+mj=aa+mj=aが成り立つことはn∣mjn\mid mjと同値であり、条件n∣mjn\mid mjはaaに依存しない。

第一に、∣⟨rj⟩∣=t\left|\langle r^j\rangle\right|=tを示す。補題 4.1によりn∣tjn\mid tjであるから、上の同値によって(rj)t(r^j)^tは恒等写像である。整数mmをm=qt+sm=qt+s、0≤s<t0\leq s<tと書くと(rj)m=(rj)s(r^j)^m=(r^j)^sであるから、

⟨rj⟩={(rj)s∣0≤s<t} \langle r^j\rangle=\{(r^j)^s\mid 0\leq s<t\}

である。0≤s′<s<t0\leq s'<s<tについて(rj)s=(rj)s′(r^j)^s=(r^j)^{s'}が成り立つと仮定すると、(rj)s−s′(r^j)^{s-s'}は恒等写像であり、n∣(s−s′)jn\mid(s-s')jかつ0<s−s′<t0<s-s'<tとなる。これは補題 4.1が与える最小性に反する。したがって上のtt個の元は相異なり、∣⟨rj⟩∣=t\left|\langle r^j\rangle\right|=tである。

第二に、各a∈Z/nZa\in\mathbb Z/n\mathbb Zの安定化群が単位元だけからなることを示す。⟨rj⟩\langle r^j\rangleの元(rj)m(r^j)^mがaaを固定するならば、上の同値によって(rj)m(r^j)^mは恒等写像である。したがってaaの安定化群は単位元だけからなる。定理 1.8により、⟨rj⟩\langle r^j\rangleの作用によるaaの軌道の要素数は

∣⟨rj⟩∣1=t \frac{\left|\langle r^j\rangle\right|}{1}=t

である。aaは任意に取ったから、rjr^jの巡回軌道はいずれもtt個の頂点からなる。▨

注意 4.3 (長さが一致するのは回転の場合である). 一般の置換では、巡回軌道の長さは一致しない。たとえばV={1,2,3,4,5}V=\{1,2,3,4,5\}の置換σ\sigmaをσ(1)=2\sigma(1)=2、σ(2)=1\sigma(2)=1、σ(3)=4\sigma(3)=4、σ(4)=5\sigma(4)=5、σ(5)=3\sigma(5)=3で定めると、σ\sigmaの巡回軌道は{1,2}\{1,2\}と{3,4,5}\{3,4,5\}であり、長さは異なる。補題 4.2で長さが一致するのは、⟨rj⟩\langle r^j\rangleの作用において各頂点の安定化群が単位元だけからなり、軌道安定化群定理が与える軌道の要素数が頂点によらないからである。

命題 4.4. 回転rjr^jの頂点上の巡回軌道数は

c(rj)=gcd⁡(n,j) c(r^j)=\gcd(n,j)

である。

証明.t=n/gcd⁡(n,j)t=n/\gcd(n,j)と置く。補題 4.2により、rjr^jの巡回軌道はいずれもちょうどtt個の頂点からなる。§E7.10 命題 3.2により、巡回軌道の全体はZ/nZ\mathbb Z/n\mathbb Zを互いに素な部分集合へ分割する。したがって§D2.2 定理 2.1により

n=c(rj) t n=c(r^j)\,t

であり、

c(rj)=nt=gcd⁡(n,j) c(r^j)=\frac nt=\gcd(n,j)

である。▨

証明では、まず Burnside の補題により、各回転rjr^jの巡回軌道数から不動塗り分け数を求める。命題 4.4を用いると、最初の和∑jkgcd⁡(n,j)\sum_j k^{\gcd(n,j)}が得られる。次に、回転をgcd⁡(n,j)\gcd(n,j)の値ごとに分類し、nnの各正の約数ddに対してgcd⁡(n,j)=n/d\gcd(n,j)=n/dを満たすjjがφ(d)\varphi(d)個であることを、指数の形j=(n/d)aj=(n/d)aから確認する。最後に同じ巡回軌道数を持つ回転の寄与をまとめ、約数にわたる第二の和へ帰着する。

定理 4.5.n≥3n\geq3、k≥1k\geq1とする。正nn角形の頂点をkk色で塗り、回転によって一致する塗り分けを同一視する。その個数は

Nrot(n,k)=1n∑j=0n−1kgcd⁡(n,j)=1n∑d∣nφ(d)kn/d N_{\mathrm{rot}}(n,k) =\frac{1}{n}\sum_{j=0}^{n-1}k^{\gcd(n,j)} =\frac{1}{n}\sum_{d\mid n}\varphi(d)k^{n/d}

である。ここでφ\varphiは Euler のトーシェント関数である。この関数の定義は§D2.3 定義 3.1 (オイラーの関数)で扱った。

証明. 回転群Cn=⟨r⟩C_n=\langle r\rangleに定理 3.2 (塗り分けに対する Burnside の補題)を適用する。命題 4.4により、rjr^jの不動点数はkgcd⁡(n,j)k^{\gcd(n,j)}である。この不動点数を Burnside の補題の式へ代入すると、第一の等式を得る。

第二の等式を示す。ddをnnの正の約数とし、e=n/de=n/dと置く。0≤j<n0\leq j<nを満たす整数jjについて、

gcd⁡(n,j)=e⟺j=ea,0≤a<d,gcd⁡(a,d)=1 \gcd(n,j)=e \quad\Longleftrightarrow\quad j=ea,\quad 0\leq a<d,\quad \gcd(a,d)=1

が成り立つことを示す。

はじめに、jjがj=eaj=ea、0≤a<d0\leq a<dの形に書けている場合を扱う。正の整数mmに対し、n∣mjn\mid mjはed∣meaed\mid meaと書き直すことができ、e>0e>0であるから、この条件はd∣mad\mid maと同値である。補題 4.1により、n∣mjn\mid mjを満たす最小の正の整数はn/gcd⁡(n,j)n/\gcd(n,j)であり、d∣mad\mid maを満たす最小の正の整数はd/gcd⁡(d,a)d/\gcd(d,a)である。二つの条件が同値であることから

ngcd⁡(n,j)=dgcd⁡(d,a),すなわちgcd⁡(n,j)=egcd⁡(d,a) \frac{n}{\gcd(n,j)}=\frac{d}{\gcd(d,a)}, \qquad\text{すなわち}\qquad \gcd(n,j)=e\gcd(d,a)

を得る。したがって、gcd⁡(n,j)=e\gcd(n,j)=eとgcd⁡(a,d)=1\gcd(a,d)=1とは同値である。次にgcd⁡(n,j)=e\gcd(n,j)=eとすると、eeはjjを割り切るからj=eaj=eaと書くことができ、0≤j<n=ed0\leq j<n=edから0≤a<d0\leq a<dである。以上により上の同値が成り立つ。

11以上dd以下でddと互いに素な整数の個数はφ(d)\varphi(d)である。d≥2d\geq2の場合、0≤a<d0\leq a<dでddと互いに素な整数aaの個数はこれに等しく、d=1d=1の場合はどちらの個数も11である。したがって、gcd⁡(n,j)=n/d\gcd(n,j)=n/dを満たすjj(0≤j<n0\leq j<n)はちょうどφ(d)\varphi(d)個あり、命題 4.4により、そのような回転rjr^jの巡回軌道数はn/dn/dである。gcd⁡(n,j)\gcd(n,j)はnnの正の約数であるから、d=n/gcd⁡(n,j)d=n/\gcd(n,j)もまたnnの正の約数であり、各jj(0≤j<n0\leq j<n)はこのddに対してちょうど一度数えられる。したがってddをnnの正の約数全体にわたって動かせば、

∑j=0n−1kgcd⁡(n,j)=∑d∣nφ(d)kn/d \sum_{j=0}^{n-1}k^{\gcd(n,j)} =\sum_{d\mid n}\varphi(d)k^{n/d}

を得る。▨

例 4.6 (正六角形を三色で塗る). 回転だけを同一視するとき、

Nrot(6,3)=16(36+3+32+33+32+3)=7806=130\begin{aligned} N_{\mathrm{rot}}(6,3) &=\frac{1}{6}\left( 3^6+3+3^2+3^3+3^2+3 \right)\\ &=\frac{780}{6}=130 \end{aligned}

である。

5 正nn角形と二面体群D2nD_{2n}

回転と鏡映をすべて含む正nn角形の二面体群をD2nD_{2n}と書く。ここでは∣D2n∣=2n|D_{2n}|=2nとする。

証明では、D2nD_{2n}のnn個の回転とnn個の鏡映を分けて、 Burnside の補題に現れる不動点数の和を計算する。回転の寄与には回転だけの場合の約数和をそのまま用いる。鏡映についてはnnの奇偶で軸の型を分け、固定頂点と二点軌道の個数から各不動塗り分け数を求める。最後に回転と鏡映の和を足し、群の位数2n2nで割る。

定理 5.1.n≥3n\geq3、k≥1k\geq1とする。正nn角形の頂点をkk色で塗り、二面体群D2nD_{2n}の回転または鏡映によって一致する塗り分けを同一視する。その個数は

Ndih(n,k)=12n(∑d∣nφ(d)kn/d+Rn(k)) N_{\mathrm{dih}}(n,k) =\frac{1}{2n} \left( \sum_{d\mid n}\varphi(d)k^{n/d}+R_n(k) \right)

である。ただし、

Rn(k)={nk(n+1)/2,n が奇数のとき,n2(kn/2+1+kn/2),n が偶数のとき R_n(k)= \begin{cases} nk^{(n+1)/2}, & n\text{ が奇数のとき},\\[4pt] \dfrac n2\left(k^{n/2+1}+k^{n/2}\right), & n\text{ が偶数のとき} \end{cases}

である。

証明. 回転による不動点数の和は定理 4.5の証明から

∑d∣nφ(d)kn/d \sum_{d\mid n}\varphi(d)k^{n/d}

である。鏡映による不動点数の和を求める。

nnが奇数ならば、各鏡映軸は一つの頂点とその対辺の中点を通る。この鏡映は一つの頂点を固定し、残りのn−1n-1個の頂点を(n−1)/2(n-1)/2個の二点軌道に分ける。したがって巡回軌道数は(n+1)/2(n+1)/2であり、一つの鏡映の不動塗り分け数はk(n+1)/2k^{(n+1)/2}である。鏡映はnn個あるから、

Rn(k)=nk(n+1)/2 R_n(k)=nk^{(n+1)/2}

である。

nnが偶数ならば、鏡映は二種類ある。向かい合う二頂点を通る軸に関する鏡映はn/2n/2個あり、二頂点を固定して残りを二点ずつ交換する。巡回軌道数は

2+n−22=n2+1 2+\frac{n-2}{2}=\frac n2+1

である。向かい合う二辺の中点を通る軸に関する鏡映もn/2n/2個あり、頂点を固定せず、頂点をn/2n/2個の二点軌道に分ける。したがって、鏡映による不動点数の和は

Rn(k)=n2kn/2+1+n2kn/2 R_n(k)=\frac n2k^{n/2+1}+\frac n2k^{n/2}

である。最後に、位数2n2nのD2nD_{2n}に Burnside の補題を適用すれば主張を得る。▨

例 5.2 (二面体群D12D_{12}による正六角形の塗り分け). 正六角形の頂点を三色で塗り、二面体群D12D_{12}の作用で一致する塗り分けを同一視する。回転による不動点数の和は

36+2⋅3+2⋅32+33=780 3^6+2\cdot3+2\cdot3^2+3^3=780

である。頂点を二つ固定する鏡映は三つあり、それぞれ34=813^4=81個の塗り分けを固定する。頂点を固定しない鏡映も三つあり、それぞれ33=273^3=27個の塗り分けを固定する。したがって、

Ndih(6,3)=780+3⋅81+3⋅2712=92 N_{\mathrm{dih}}(6,3) =\frac{780+3\cdot81+3\cdot27}{12} =92

である。

注意 5.3 (得られるのは個数であって代表ではない).定理 3.2 (塗り分けに対する Burnside の補題)が与えるのは軌道の個数であり、各軌道の代表となる塗り分けではない。代表を求めるには、配置を一つずつ調べ、すでに得た軌道に属するかどうかを別に判定する必要がある。

6 演習

問題 6.1.

  1. 正三角形の頂点をkk色で塗り、回転だけを同一視する場合の軌道数を求めよ。
  2. 正方形の頂点を二色で塗り、二面体群D8D_8の作用で一致する塗り分けを同一視する場合の軌道数を求めよ。
  3. nnが偶数のとき、二面体群D2nD_{2n}に含まれる二種類の鏡映の巡回軌道数がそれぞれn/2+1n/2+1とn/2n/2になることを、頂点の対応を図示して確かめよ。
  4. Burnside の補題の証明において、各軌道が集合Ω={(g,x)∣g⋅x=x}\Omega=\{(g,x)\mid g\cdot x=x\}の要素をちょうど∣G∣|G|個与える理由を説明せよ。
解答 (演習の要点).
  1. 恒等回転はk3k^3個の塗り分けを固定し、二つの非自明な回転はそれぞれ三頂点を一つの巡回軌道にするためkk個を固定する。Burnside の補題により軌道数は k3+2k3\frac{k^3+2k}{3} である。
  2. 四つの回転による不動点数の和は24+2+22+2=242^4+2+2^2+2=24である。二つの頂点軸の鏡映はそれぞれ三つの巡回軌道を持ち、二つの辺軸の鏡映はそれぞれ二つの巡回軌道を持つため、鏡映による和も2⋅23+2⋅22=242\cdot2^3+2\cdot2^2=24である。したがってD8D_8による軌道数は 24+248=6\frac{24+24}{8}=6 となる。
  3. 頂点を通る軸の鏡映は二頂点を固定し、残るn−2n-2頂点を(n−2)/2(n-2)/2個の二点軌道に分けるので、巡回軌道数は2+(n−2)/2=n/2+12+(n-2)/2=n/2+1である。辺の中点を通る軸の鏡映は頂点を固定せず、全頂点をn/2n/2個の二点軌道に分ける。
  4. 一つの軌道O\mathcal Oを固定し、x∈Ox\in\mathcal Oを取る。同じ軌道上の安定化群は互いに共役なので位数はすべて∣Gx∣|G_x|であり、 ∑y∈O∣Gy∣=∣O∣ ∣Gx∣=[G:Gx]∣Gx∣=∣G∣\sum_{y\in\mathcal O}|G_y| =|\mathcal O|\,|G_x| =[G:G_x]|G_x|=|G| である。この左辺は第二成分がO\mathcal Oに属するΩ\Omegaの要素数であるため、各軌道の寄与は∣G∣|G|となる。

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参考文献

  1. Peter J. Cameron, Combinatorics: Topics, Techniques, Algorithms, Cambridge University Press, Cambridge, 1994.群作用による軌道の数え上げを参考にした。
  2. J. H. van Lint and R. M. Wilson, A Course in Combinatorics, 2nd ed., Cambridge University Press, 2001.Burnside の補題と Pólya の数え上げを参考にした。

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