§E7.13直積群

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二つの群から元を一つずつ選び、各成分で独立に演算すると、新しい群を構成することができる。この構成が外部直積であり、複数の群を組み合わせる最も基本的な方法の一つである。たとえば、中国剰余定理は加法群の同型Z/6Z≅Z/2Z×Z/3Z\Z/6\Z\cong\Z/2\Z\times\Z/3\Zを与える。

一つの群の中に二つの部分群がある場合には、その群が二つの部分群の直積と同じ構造を持つかという問いが生じる。二つの正規部分群が群全体を生成し、共通部分が単位元だけであるとき、各元を二つの部分群の元の積として一意に表すことができる。この状況を内部直積として捉えると、部分群から群全体の構造を復元することができる。

本記事では、外部直積と内部直積の基本的な性質、内部直積の判定および代表的な例を解説する。

1 外部直積

定義 1.1. 群AAとBBに対し、集合A×BA\times B上の積を

(a1,b1)(a2,b2)=(a1a2,b1b2) (a_1,b_1)(a_2,b_2)=(a_1a_2,b_1b_2)

と定める。この演算を備えた集合をAAとBBの外部直積 (external direct product) と呼ぶ。

命題 1.2. 外部直積A×BA\times Bは群である。単位元と逆元は

eA×B=(eA,eB),(a,b)−1=(a−1,b−1) e_{A\times B}=(e_A,e_B),\qquad (a,b)^{-1}=(a^{-1},b^{-1})

である。AAとBBが有限群ならば、

∣A×B∣=∣A∣ ∣B∣ |A\times B|=|A|\,|B|

である。

証明.(ai,bi)∈A×B(a_i,b_i)\in A\times Bとする。積は成分ごとにAAとBBの元を与えるから閉じている。結合律は

((a1,b1)(a2,b2))(a3,b3)=((a1a2)a3,(b1b2)b3)=(a1(a2a3),b1(b2b3))=(a1,b1)((a2,b2)(a3,b3))\begin{aligned} \bigl((a_1,b_1)(a_2,b_2)\bigr)(a_3,b_3) &=((a_1a_2)a_3,(b_1b_2)b_3)\\ &=(a_1(a_2a_3),b_1(b_2b_3))\\ &=(a_1,b_1)\bigl((a_2,b_2)(a_3,b_3)\bigr) \end{aligned}

から従う。また、

(eA,eB)(a,b)=(a,b)=(a,b)(eA,eB) (e_A,e_B)(a,b)=(a,b)=(a,b)(e_A,e_B)

であり、

(a,b)(a−1,b−1)=(eA,eB)=(a−1,b−1)(a,b) (a,b)(a^{-1},b^{-1})=(e_A,e_B) =(a^{-1},b^{-1})(a,b)

である。したがって群の公理がすべて成り立つ。有限の場合の位数の公式は、有限集合の直積の要素数に関する乗法原理から従う。▨

外部直積には、各因子を表す標準的な部分群がある。

命題 1.3.

A~=A×{eB},B~={eA}×B \widetilde A=A\times\{e_B\},\qquad \widetilde B=\{e_A\}\times B

とする。このとき

A~⊴A×B,B~⊴A×B, \widetilde A\trianglelefteq A\times B,\qquad \widetilde B\trianglelefteq A\times B,A~∩B~={(eA,eB)},A~B~=A×B \widetilde A\cap\widetilde B=\{(e_A,e_B)\},\qquad \widetilde A\widetilde B=A\times B

が成り立つ。また、A~\widetilde Aの各元とB~\widetilde Bの各元は可換する。

証明.(eA,eB)∈A~(e_A,e_B)\in\widetilde Aであり、

(a1,eB)(a2,eB)−1=(a1a2−1,eB)∈A~ (a_1,e_B)(a_2,e_B)^{-1}=(a_1a_2^{-1},e_B)\in\widetilde A

であるから、A~≤A×B\widetilde A\leq A\times Bである。また、(eA,eB)∈B~(e_A,e_B)\in\widetilde Bであり、

(eA,b1)(eA,b2)−1=(eA,b1b2−1)∈B~ (e_A,b_1)(e_A,b_2)^{-1}=(e_A,b_1b_2^{-1})\in\widetilde B

であるから、B~≤A×B\widetilde B\leq A\times Bである。

(a,b)∈A×B(a,b)\in A\times Bと(x,eB)∈A~(x,e_B)\in\widetilde Aに対し、

(a,b)(x,eB)(a,b)−1=(axa−1,eB)∈A~ (a,b)(x,e_B)(a,b)^{-1}=(axa^{-1},e_B)\in\widetilde A

であるから、A~⊴A×B\widetilde A\trianglelefteq A\times Bである。また、

(a,b)(eA,y)(a,b)−1=(eA,byb−1)∈B~ (a,b)(e_A,y)(a,b)^{-1}=(e_A,byb^{-1})\in\widetilde B

であるから、B~⊴A×B\widetilde B\trianglelefteq A\times Bである。

(x,eB)=(eA,y)(x,e_B)=(e_A,y)ならばx=eAx=e_Aかつy=eBy=e_Bであるため、共通部分は単位元だけからなる。任意の(a,b)∈A×B(a,b)\in A\times Bは

(a,b)=(a,eB)(eA,b) (a,b)=(a,e_B)(e_A,b)

と表されるから、A~B~=A×B\widetilde A\widetilde B=A\times Bである。さらに、

(a,eB)(eA,b)=(a,b)=(eA,b)(a,eB) (a,e_B)(e_A,b)=(a,b)=(e_A,b)(a,e_B)

である。▨

2 部分群の積

定義 2.1. 群GGの部分群H,K≤GH,K\leq Gに対し、

HK={hk∣h∈H, k∈K} HK=\{hk\mid h\in H,\ k\in K\}

と定め、HHとKKの積 (product of subgroups) と呼ぶ。

次の命題では、HKHKが部分群になるための十分条件を示す。

命題 2.2.H,K≤GH,K\leq Gとする。H⊴GH\trianglelefteq GまたはK⊴GK\trianglelefteq Gならば、HK≤GHK\leq Gである。

証明. まずH⊴GH\trianglelefteq Gとする。hi∈Hh_i\in H、ki∈Kk_i\in Kに対し、

(h1k1)(h2k2)=h1(k1h2k1−1)(k1k2)∈HK (h_1k_1)(h_2k_2) =h_1(k_1h_2k_1^{-1})(k_1k_2)\in HK

である。また、

(hk)−1=k−1h−1=(k−1h−1k)k−1∈HK (hk)^{-1}=k^{-1}h^{-1} =(k^{-1}h^{-1}k)k^{-1}\in HK

である。単位元もHKHKに属するから、HK≤GHK\leq Gである。

次にK⊴GK\trianglelefteq Gとする。この場合には

(h1k1)(h2k2)=(h1h2)(h2−1k1h2)k2∈HK (h_1k_1)(h_2k_2) =(h_1h_2)(h_2^{-1}k_1h_2)k_2\in HK

であり、

(hk)−1=k−1h−1=h−1(hk−1h−1)∈HK (hk)^{-1}=k^{-1}h^{-1} =h^{-1}(hk^{-1}h^{-1})\in HK

である。したがって、この場合にもHK≤GHK\leq Gである。▨

3 内部直積

定義 3.1. 群GGの部分群H,KH,Kが

H⊴G,K⊴G,H∩K={eG},HK=G H\trianglelefteq G,\qquad K\trianglelefteq G,\qquad H\cap K=\{e_G\},\qquad HK=G

を満たすとき、GGはHHとKKの内部直積 (internal direct product) であるという。

内部直積では、二つの部分群の元が可換することが正規性と共通部分の条件から従う。

証明では、まず二つの正規部分群の元の交換子がH∩KH\cap Kに属することを示し、自明な共通部分からHHとKKの元が互いに可換することを導く。この可換性を用いて積写像μ(h,k)=hk\mu(h,k)=hkの準同型性を確認し、HK=GHK=GとH∩K={eG}H\cap K=\{e_G\}から全射性と単射性を得る。逆向きでは、μ\muの全単射性から積と共通部分の条件を回収し、直積内の座標部分群の正規性をμ\muで移してH,K⊴GH,K\trianglelefteq Gを示す。

定理 3.2. 群GGと部分群H,K≤GH,K\leq Gに対し、次の二条件は同値である。

  1. H⊴GH\trianglelefteq G、K⊴GK\trianglelefteq G、H∩K={eG}H\cap K=\{e_G\}、HK=GHK=Gが成り立つ。
  2. 積写像 μ ⁣:H×K⟶G,μ(h,k)=hk\mu\colon H\times K\longrightarrow G,\qquad \mu(h,k)=hk は群同型である。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。まず(1)を仮定する。h∈Hh\in H、k∈Kk\in Kとし、交換子を

[h,k]=hkh−1k−1 [h,k]=hkh^{-1}k^{-1}

とする。K⊴GK\trianglelefteq Gから

[h,k]=(hkh−1)k−1∈K [h,k]=(hkh^{-1})k^{-1}\in K

であり、H⊴GH\trianglelefteq Gから

[h,k]=h(kh−1k−1)∈H [h,k]=h(kh^{-1}k^{-1})\in H

である。したがって[h,k]∈H∩K={eG}[h,k]\in H\cap K=\{e_G\}であり、hk=khhk=khが成り立つ。

(h1,k1),(h2,k2)∈H×K(h_1,k_1),(h_2,k_2)\in H\times Kに対し、k1h2=h2k1k_1h_2=h_2k_1を用いると、

μ((h1,k1)(h2,k2))=μ(h1h2,k1k2)=h1h2k1k2=h1k1h2k2=μ(h1,k1)μ(h2,k2)\begin{aligned} \mu\bigl((h_1,k_1)(h_2,k_2)\bigr) &=\mu(h_1h_2,k_1k_2)\\ &=h_1h_2k_1k_2\\ &=h_1k_1h_2k_2\\ &=\mu(h_1,k_1)\mu(h_2,k_2) \end{aligned}

となる。よってμ\muは準同型である。HK=GHK=Gであるからμ\muは全射である。μ(h,k)=eG\mu(h,k)=e_Gならばh=k−1∈H∩Kh=k^{-1}\in H\cap Kであるため、h=k=eGh=k=e_Gである。したがってker⁡μ\ker\muは自明であり、§E7.3 命題 2.2からμ\muは単射である。ゆえにμ\muは群同型である。

(2)⇒\Rightarrow(1)を示す。逆に(2)を仮定する。全射性からHK=GHK=Gである。x∈H∩Kx\in H\cap Kとすると、

μ(x,eG)=x=μ(eG,x) \mu(x,e_G)=x=\mu(e_G,x)

である。単射性から(x,eG)=(eG,x)(x,e_G)=(e_G,x)となるため、x=eGx=e_Gである。よってH∩K={eG}H\cap K=\{e_G\}である。

g∈Gg\in Gとh0∈Hh_0\in Hを取る。全射性によりg=μ(h,k)g=\mu(h,k)と表される。μ\muは同型であるから、

gh0g−1=μ((h,k)(h0,eG)(h,k)−1)=μ(hh0h−1,eG)∈H gh_0g^{-1} =\mu\bigl((h,k)(h_0,e_G)(h,k)^{-1}\bigr) =\mu(hh_0h^{-1},e_G)\in H

である。したがってH⊴GH\trianglelefteq Gである。同じ計算をKKについて書くと、

gk0g−1=μ((h,k)(eG,k0)(h,k)−1)=μ(eG,kk0k−1)∈K gk_0g^{-1} =\mu\bigl((h,k)(e_G,k_0)(h,k)^{-1}\bigr) =\mu(e_G,kk_0k^{-1})\in K

であるから、K⊴GK\trianglelefteq Gである。以上により(1)が成り立つ。▨

命題 3.3.H⊴GH\trianglelefteq G、K⊴GK\trianglelefteq G、H∩K={eG}H\cap K=\{e_G\}、HK=GHK=Gとする。このとき、各g∈Gg\in Gに対し

g=hk g=hk

を満たすh∈Hh\in H、k∈Kk\in Kが一意に存在する。

証明.HK=GHK=Gであるから、この分解は存在する。h1k1=h2k2h_1k_1=h_2k_2とすると、

h2−1h1=k2k1−1∈H∩K={eG} h_2^{-1}h_1=k_2k_1^{-1}\in H\cap K=\{e_G\}

である。したがってh1=h2h_1=h_2かつk1=k2k_1=k_2であり、分解は一意である。▨

4 例と非例

例 4.1 (円周群の直積としてのトーラス). 複素数の乗法に関する円周群を

S1={z∈C∣∣z∣=1} S^1=\{z\in\mathbb C\mid |z|=1\}

とする。z,w∈S1z,w\in S^1ならば∣zw∣=1|zw|=1であり、z−1=z‾∈S1z^{-1}=\overline z\in S^1であるから、S1S^1は群である。正整数nnに対するnn個の直積

Tn=(S1)n T^n=(S^1)^n

は、各座標で複素数を掛ける群であり、nn次元トーラスと呼ばれる。例えば

T2=S1×S1 T^2=S^1\times S^1

は二つの円周群の外部直積である。ここではTnT^nの群構造だけを用い、積位相や多様体としての構造は用いない。

例 4.2 (トーラスのねじれ部分群). 整数d≥1d\geq1、n≥2n\geq2とする。加法群T=R/Z\mathbb T=\R/\Zから円周群への写像

E ⁣:T⟶S1,[t]⟼e2πitE\colon\mathbb T\longrightarrow S^1,\qquad [t]\longmapsto e^{2\pi it}

は群同型である。実際、指数関数の加法公式と、e2πit=1e^{2\pi it}=1がt∈Zt\in\Zと同値であることから、EEは well-defined な単射準同型である。円周上の任意の点はeiθe^{i\theta}と表されるので、EEは全射でもある。各座標にEEを適用して

Td≅Td=(S1)d\mathbb T^d\cong T^d=(S^1)^d

を得る。

乗法群TdT^dと加法群Td\mathbb T^dのnn-ねじれ部分群をそれぞれ

Td[n]={z∈Td∣zn=1},Td[n]={x∈Td∣nx=0} T^d[n]=\{z\in T^d\mid z^n=1\}, \qquad \mathbb T^d[n]=\{x\in\mathbb T^d\mid nx=0\}

とする。各群はアーベル群なのでz↦znz\mapsto z^nとx↦nxx\mapsto nxは準同型であり、表示された集合はそれぞれの核として部分群になる。各座標にEEを適用する同型は、この二つの部分群を対応させる。

写像

Φ ⁣:(Z/nZ)d⟶Td[n],([k1]n,…,[kd]n)⟼([k1n],…,[kdn]) \Phi\colon(\Z/n\Z)^d\longrightarrow\mathbb T^d[n], \qquad ([k_1]_n,\ldots,[k_d]_n) \longmapsto \left(\left[\frac{k_1}{n}\right],\ldots, \left[\frac{k_d}{n}\right]\right)

を定める。n[kj/n]=[kj]=0n[k_j/n]=[k_j]=0なので、像はTd[n]\mathbb T^d[n]に属する。kjk_jをnnの倍数だけ変えてもkj/nk_j/nのR/Z\R/\Zにおける類は変わらないため、Φ\Phiは well-defined である。また、各座標で

[kj+ℓjn]=[kjn]+[ℓjn]\left[\frac{k_j+\ell_j}{n}\right] =\left[\frac{k_j}{n}\right]+\left[\frac{\ell_j}{n}\right]

が成り立つので、Φ\Phiは群準同型である。

Φ(([kj]n)j)=0\Phi(([k_j]_n)_j)=0ならば、各kj/nk_j/nは整数なのでn∣kjn\mid k_jであり、Φ\Phiは単射である。一方、([t1],…,[td])∈Td[n]([t_1],\ldots,[t_d])\in\mathbb T^d[n]ならば、各ntjnt_jは整数である。kj=ntjk_j=nt_jと置くと[tj]=[kj/n][t_j]=[k_j/n]となるため、Φ\Phiは全射である。したがって

Td[n]≅Td[n]≅(Z/nZ)dT^d[n]\cong\mathbb T^d[n]\cong(\Z/n\Z)^d

であり、これらの群の位数はndn^dである。円周上のnn個の等分点e2πik/ne^{2\pi ik/n}(k=0,…,n−1k=0,\ldots,n-1)を各座標で選ぶことにより、位数nnの巡回群dd個の直積が得られる。

補題 4.3. 正整数m,nm,nがgcd⁡(m,n)=1\gcd(m,n)=1を満たすとする。整数xxがm∣xm\mid xかつn∣xn\mid xを満たすならば、

mn∣x mn\mid x

である。

証明. まず、この場合に必要な Bézout の等式を Euclid の互除法から導く。必要ならばm,nm,nを交換してm≥nm\geq nとし、

r0=m,r1=n,ri−1=qiri+ri+1,0≤ri+1<ri r_0=m,\qquad r_1=n,\qquad r_{i-1}=q_i r_i+r_{i+1},\quad 0\leq r_{i+1}<r_i

と除法を繰り返す。非負整数rir_iは正である間は狭義に減少するため、あるssでrs>0r_s>0、rs+1=0r_{s+1}=0となって停止する。各段階で

d∣ri−1, d∣ri⟺d∣ri, d∣ri+1 d\mid r_{i-1},\ d\mid r_i \quad\Longleftrightarrow\quad d\mid r_i,\ d\mid r_{i+1}

が成り立つ。したがってrs=gcd⁡(m,n)=1r_s=\gcd(m,n)=1である。さらに

ri+1=ri−1−qiri r_{i+1}=r_{i-1}-q_i r_i

を最後の式から順に代入すると、あるu,v∈Zu,v\in\mathbb Zにより

um+vn=1 um+vn=1

と表される。

この等式にxxを掛けると

x=umx+vnx x=umx+vnx

となる。n∣xn\mid xであるからumxumxはmnmnで割り切れ、m∣xm\mid xであるからvnxvnxもmnmnで割り切れる。よって両者の和xxもmnmnで割り切れる。▨

定理 4.4.m,n≥2m,n\geq2かつgcd⁡(m,n)=1\gcd(m,n)=1とする。加法群の準同型

Φ ⁣:Z/mnZ⟶Z/mZ×Z/nZ,[x]mn⟼([x]m,[x]n) \Phi\colon\mathbb Z/mn\mathbb Z \longrightarrow \mathbb Z/m\mathbb Z\times\mathbb Z/n\mathbb Z, \qquad [x]_{mn}\longmapsto([x]_m,[x]_n)

は群同型である。

証明.x−yx-yがmnmnの倍数ならばmmとnnの両方の倍数であるから、Φ\Phiは代表元によらず定まる。また、

Φ([x+y]mn)=Φ([x]mn)+Φ([y]mn) \Phi([x+y]_{mn})=\Phi([x]_{mn})+\Phi([y]_{mn})

であるため、Φ\Phiは準同型である。Φ([x]mn)=(0,0)\Phi([x]_{mn})=(0,0)ならば、m∣xm\mid xかつn∣xn\mid xである。補題 4.3によりmn∣xmn\mid xとなるため、核は自明である。§E7.3 命題 2.2からΦ\Phiは単射である。定義域と終域の位数はいずれもmnmnであるから、有限集合間の単射Φ\Phiは全射でもある。したがってΦ\Phiは群同型である。▨

例 4.5 (法 6 に対する中国剰余定理). 定理でm=2m=2、n=3n=3とすると

Z/6Z≅Z/2Z×Z/3Z \mathbb Z/6\mathbb Z \cong \mathbb Z/2\mathbb Z\times\mathbb Z/3\mathbb Z

が成り立つ。

例 4.6 (Klein の四元群). Klein の四元群を

V4={e,a,b,c},a2=b2=c2=e,ab=c V_4=\{e,a,b,c\},\qquad a^2=b^2=c^2=e,\qquad ab=c

とする。H=⟨a⟩H=\langle a\rangle、K=⟨b⟩K=\langle b\rangleと置く。V4V_4はアーベル群であるからH,K⊴V4H,K\trianglelefteq V_4であり、

H∩K={e},HK=V4 H\cap K=\{e\},\qquad HK=V_4

である。内部直積の判定により

V4≅C2×C2 V_4\cong C_2\times C_2

が成り立つ。

例 4.7 (同じ位数だけでは直積にならない).C4C_4とC2×C2C_2\times C_2はともに位数44であるが、同型ではない。C4C_4は位数44の元を持つ一方、C2×C2C_2\times C_2の単位元でない各元の位数は22である。したがって、群の位数が因子の位数の積に等しいことだけでは、直積分解を結論することができない。

5 演習

問題 5.1.

  1. A×BA\times Bにおいて(a,b)(a,b)の位数が有限であるとき、その位数がlcm⁡(ord⁡(a),ord⁡(b))\operatorname{lcm}(\operatorname{ord}(a),\operatorname{ord}(b))に等しいことを示せ。
  2. H,K⊴GH,K\trianglelefteq GならばHK=KHHK=KHであることを示せ。
  3. 内部直積の条件のもとで、表現g=hkg=hkが一意であることを積写像の単射性から説明せよ。
  4. Z/12Z\mathbb Z/12\mathbb Zを、互いに素な位数を持つ二つの巡回群の直積として表せ。
解答 (演習の要点).
  1. (a,b)r=(eA,eB)(a,b)^r=(e_A,e_B)であることはar=eAa^r=e_Aかつbr=eBb^r=e_Bと同値である。したがって正整数rrが(a,b)(a,b)の冪を単位元にすることは、ord⁡(a)∣r\operatorname{ord}(a)\mid rかつord⁡(b)∣r\operatorname{ord}(b)\mid rと同値である。そのような最小の正整数はlcm⁡(ord⁡(a),ord⁡(b))\operatorname{lcm}(\operatorname{ord}(a),\operatorname{ord}(b))である。
  2. h∈Hh\in H、k∈Kk\in Kとする。K⊴GK\trianglelefteq Gからhk=(hkh−1)h∈KHhk=(hkh^{-1})h\in KHであるためHK⊆KHHK\subseteq KHとなる。同様にH⊴GH\trianglelefteq GからKH⊆HKKH\subseteq HKとなり、HK=KHHK=KHを得る。
  3. 積写像μ ⁣:H×K→G\mu\colon H\times K\to Gは単射である。g=h1k1=h2k2g=h_1k_1=h_2k_2ならばμ(h1,k1)=μ(h2,k2)\mu(h_1,k_1)=\mu(h_2,k_2)であるため、(h1,k1)=(h2,k2)(h_1,k_1)=(h_2,k_2)となる。
  4. gcd⁡(3,4)=1\gcd(3,4)=1であるから、定理 4.4により Z/12Z≅Z/3Z×Z/4Z\mathbb Z/12\mathbb Z \cong\mathbb Z/3\mathbb Z\times\mathbb Z/4\mathbb Z である。二因子の位数3,43,4は互いに素である。

▨

参考文献

  1. David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004.直積と内部直積を参考にした。
  2. Joseph A. Gallian, Contemporary Abstract Algebra, 10th ed., Textbooks in Mathematics, CRC Press, 2021.外部直積と有限アーベル群の例を参考にした。

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