1 自己準同型のモノイド
定義 1.1. 群Gに対し、
End(G)={f:G→G∣f は群準同型}と置き、その元をGの自己準同型 (endomorphism) と呼ぶ。また、
Aut(G)={f∈End(G)∣f は全単射}と置き、その元をGの自己同型 (automorphism) と呼ぶ。
定義 1.2. 集合Mと二項演算
M×M⟶M,(x,y)⟼xyの組がモノイド (monoid) であるとは、この演算が結合律を満たし、両側単位元を持つことをいう。モノイドでは、各元が逆元を持つことを要求しない。
命題 1.3. 写像の合成を積とすると、End(G)はモノイドをなす。単位元は恒等写像idGである。
証明.f,g∈End(G)とする。§E7.3 命題 1.4により、f∘g∈End(G)である。写像の合成は結合的であり、
idG∘f=f=f∘idGが成り立つ。したがってEnd(G)はモノイドである。▨
証明では、全単射な準同型の合成、恒等写像、逆写像がすべて自己同型であることを順に確認し、Aut(G)の群公理を閉じる。次に、End(G)で両側逆元を持つ自己準同型が全単射であることを示す。逆向きには、全単射な準同型の逆写像も準同型であることを用い、自己同型がEnd(G)の可逆元であることを確認する。
定理 1.4.Aut(G)は写像の合成について群をなす。さらに、Aut(G)はモノイドEnd(G)の可逆元全体に等しい。
証明. 全単射の合成は全単射であるから、Aut(G)は合成について閉じている。結合律は写像の合成から従い、idGは自己同型である。f∈Aut(G)とする。§E7.3 命題 1.5により、f−1∈Aut(G)である。したがってAut(G)は群をなす。
f∈End(G)がモノイドの可逆元ならば、あるg∈End(G)が存在して
f∘g=idG,g∘f=idGとなる。よってfは全単射であり、f∈Aut(G)である。逆にf∈Aut(G)ならば、上で確認したようにf−1∈End(G)であるから、fはEnd(G)の可逆元である。▨
例 1.5 (可逆でない自己準同型). 加法群C4=Z/4Z上の写像
δ([x]4)=[2x]4は自己準同型である。しかし、δ([0]4)=δ([2]4)=[0]4であるから単射でない。したがってδは自己同型ではなく、End(C4)の可逆元でもない。この例は、End(G)が一般には群にならないことを示す。
2 内部自己同型
§E7.12 定義 1.1で定義したように、各g∈Gは写像
cg:G⟶G,cg(x)=gxg−1
を定める。
定義 2.1.
Inn(G)={cg∣g∈G}と置く。この集合をGの内部自己同型群 (inner automorphism group) と呼び、その元をGの内部自己同型 (inner automorphism) と呼ぶ。
証明では、まずcgが積を保ち、cg−1を逆写像に持つことを示す。次にcg∘ch=cghを直接計算し、c:G→Aut(G)の準同型性を得る。cg=idGの条件を全ての元との可換性へ書き換えて核をZ(G)と同定し、像は定義からInn(G)と同定する。最後に第一同型定理を適用してG/Z(G)≅Inn(G)を導く。
定理 2.2. 各cgはGの自己同型であり、写像
c:G⟶Aut(G),c(g)=cgは群準同型である。その核と像は
kerc=Z(G),imc=Inn(G)である。したがって
G/Z(G)≅Inn(G)が成り立つ。
証明.g,x,y∈Gに対し、
cg(xy)=gxyg−1=(gxg−1)(gyg−1)=cg(x)cg(y)であるから、cgは準同型である。また、
cg∘cg−1=idG=cg−1∘cgであるため、cg∈Aut(G)である。
g,h,x∈Gに対し、
(cg∘ch)(x)=g(hxh−1)g−1=(gh)x(gh)−1=cgh(x)である。したがってc(gh)=c(g)∘c(h)であり、cは群準同型である。
g∈kercであることは、すべてのx∈Gに対して
gxg−1=xが成り立つことと同値である。この等式はgx=xgがすべてのx∈Gについて成り立つことと同値であるから、kerc=Z(G)である。像がInn(G)であることは定義から従う。§E7.8 定理 1.1 (第一同型定理)をcに適用すると、
G/Z(G)=G/kerc≅imc=Inn(G)を得る。▨
Inn(G)は準同型cの像であるから、Aut(G)の部分群である。
3 内部自己同型群の正規性
証明では、α∈Aut(G)とcg∈Inn(G)を固定し、α∘cg∘α−1の各x∈Gにおける値を計算する。この計算がcα(g)(x)に等しいことから、自己同型による共役がInn(G)を自分自身へ写す包含を得る。最後にα−1に同じ包含を適用して逆包含を導き、正規性を結論する。
定理 3.1.
Inn(G)⊴Aut(G)が成り立つ。より具体的には、α∈Aut(G)、g∈Gに対し、
α∘cg∘α−1=cα(g)である。
証明.x∈Gとすると、
(α∘cg∘α−1)(x)=α(gα−1(x)g−1)=α(g)xα(g)−1=cα(g)(x)である。したがって
αInn(G)α−1⊆Inn(G)が成り立つ。α−1に同じ包含を適用すると
α−1Inn(G)α⊆Inn(G)である。この包含の両辺をαとα−1で共役すると、
Inn(G)⊆αInn(G)α−1を得る。よって等号が成り立ち、Inn(G)⊴Aut(G)である。▨
定義 3.2. 内部自己同型群による商群
Out(G)=Aut(G)/Inn(G)をGの外部自己同型群 (outer automorphism group) と呼ぶ。
正規性を証明したことにより、この商群の積は剰余類の代表元によらず定まる。
4 有限アーベル群の例
命題 4.1.n≥2とし、Cn=⟨x⟩とする。このとき
Aut(Cn)≅(Z/nZ)×である。また、Cnはアーベル群であるから
Inn(Cn)={idCn},Out(Cn)≅(Z/nZ)×である。
証明.Cnの自己準同型は生成元xの像によって一意に定まり、その像はxaという形である。逆に、各整数aに対して
αa(xm)=xamと定める。xm=xℓならばn∣(m−ℓ)であるからxam=xaℓであり、この式は代表元によらず定まる。また、αa(xm+ℓ)=αa(xm)αa(xℓ)であるから準同型である。したがってCnの自己準同型はすべてこの形である。写像αaが自己同型であることは、xaがCnを生成すること、すなわちgcd(a,n)=1と同値である。実際、xam=eはn∣amと同値であるから、
ord(xa)=gcd(a,n)nである。αa(x)=xaと書くと、
(αa∘αb)(x)=αa(xb)=xabである。したがって
αa⟼[a]nはAut(Cn)から(Z/nZ)×への全単射準同型を与える。
アーベル群ではgxg−1=xがすべてのg,xについて成り立つため、内部自己同型は恒等写像だけである。したがって残りの二つの等式が従う。▨
例 4.2 (Klein の四元群の自己同型).V4={e,a,b,c}を Klein の四元群とする。自己同型は単位元を固定し、三つの非単位元を置換する。逆に、三つの非単位元の任意の置換は、異なる二つの非単位元の積が残りの非単位元になるという乗法規則を保つ。したがって
Aut(V4)≅S3である。V4はアーベル群であるから、
Inn(V4)={idV4},Out(V4)≅S3が成り立つ。
5 自由アーベル群の例
例 5.1 (Znの外部自己同型群).n≥1とし、Znを加法群とする。標準基底をe1,…,enと書く。群準同型f:Zn→Znはf(e1),…,f(en)によって一意に定まり、これらを列ベクトルとして並べた整数行列をAfとすると
f(x)=Afx(x∈Zn)である。逆に、任意の整数行列はこの式によってZnの自己準同型を定める。
fが自己同型ならば、逆写像f−1にも整数行列Af−1が対応し、
AfAf−1=Af−1Af=Inとなる。逆に、整数行列Aが整数行列Bを逆行列に持つならば、x↦Axとx↦Bxは互いに逆な自己同型である。したがって、整数係数の可逆行列全体をGLn(Z)と書けば、
Aut(Zn)≅GLn(Z)である。行列式を用いると、整数行列AがGLn(Z)に属することはdetA=±1と同値である。実際、整数行列BがAの逆行列ならば(detA)(detB)=1であり、二つの行列式は整数なのでdetA=±1となる。逆にdetA=±1ならば
A−1=detA1adj(A)は整数行列である。
Znはアーベル群であるから、すべての内部自己同型は恒等写像である。よって
Out(Zn)≅Aut(Zn)≅GLn(Z)が成り立つ。
6 演習
問題 6.1.
- 自明な自己準同型G→G, x↦eGが可逆であるための必要十分条件を求めよ。
- Aut(C5)、Inn(C5)、Out(C5)をそれぞれ求めよ。
- Z(G)={eG}ならば、共役による準同型c:G→Aut(G)が単射であることを示せ。
- αcgα−1=cα(g)を、二つの写像の各x∈Gにおける値を比較して確認せよ。
解答 (演習の要点).
- 自明な自己準同型の像は{eG}である。この写像が可逆ならば全射なのでG={eG}となる。逆にGが自明群ならば、この写像は恒等写像であり可逆である。
- 命題 4.1により
Aut(C5)≅(Z/5Z)×≅C4.
実際、[2]5の位数は4であるため、(Z/5Z)×は位数4の巡回群である。C5はアーベル群なので
Inn(C5)={idC5},Out(C5)≅C4
である。
- 定理 2.2によりkerc=Z(G)である。Z(G)={eG}ならばkercは自明であるから、§E7.3 命題 2.2によりcは単射である。
- 任意のx∈Gに対して
(α∘cg∘α−1)(x)=α(gα−1(x)g−1)=α(g)xα(g)−1=cα(g)(x)
である。全てのxで値が一致するため、二つの写像は等しい。
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