§E7.17Sylow の定理

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§E7.6 定理 2.1は、有限群の部分群の位数が群の位数を割ることを述べる。しかし、群の位数を割るすべての正の整数に対して、その整数を位数とする部分群が存在するとは限らない。Sylow の定理は、素数冪について存在を保証し、最大の素数冪位数をもつ部分群の間の関係も決定する。

定義 1.ppを素数とする。有限群GGの部分群HHの位数がppの冪であるとき、HHを pp部分群 (p-subgroup) という。

∣G∣=pnm,p∤m|G|=p^n m,\qquad p\nmid m

とする。位数がpnp^nである部分群を Sylowpp部分群 (Sylow p-subgroup) という。

証明は三段階からなる。最初に、pnp^n個の元からなる部分集合全体へGGを作用させて Sylowpp部分群を構成する。次に、任意のpp部分群を左剰余類集合へ作用させて、いずれかの Sylowpp部分群に含める。最後に、Sylowpp部分群全体への共役作用から、共役性と個数の条件を導く。

1 Sylowpp部分群の存在

存在証明で用いる二項係数の整除性を先に確認する。

補題 1.1.ppを素数、nnを正の整数、mmをp∤mp\nmid mを満たす正の整数とする。このとき

p∤(pnmpn).p\nmid \binom{p^n m}{p^n}.

証明. 正の整数aaに対し、aaを割るppの冪の最大の指数をνp(a)\nu_p(a)と書く。

(pnmpn)=m∏j=1pn−1pnm−jpn−j(1)\binom{p^n m}{p^n} =m\prod_{j=1}^{p^n-1}\frac{p^n m-j}{p^n-j} \tag{1}

と書く。1≤j<pn1\le j<p^nに対し、j=pruj=p^r u、p∤up\nmid uと書けばr<nr<nである。このとき

pnm−j=pr(pn−rm−u),pn−j=pr(pn−r−u)p^n m-j=p^r\bigl(p^{n-r}m-u\bigr),\qquad p^n-j=p^r\bigl(p^{n-r}-u\bigr)

であり、括弧内の二つの整数はいずれもppで割り切れない。したがって

νp(pnm−j)=r=νp(pn−j)\nu_p(p^n m-j)=r=\nu_p(p^n-j)

である。(1) の各分数は分子と分母に同じpp指数をもち、mmもppで割り切れない。二項係数は整数なので、そのpp指数は00である。▨

最初に、GGのpnp^n元部分集合全体Ω\Omegaを構成し、前の補題を用いてp∤∣Ω∣p\nmid|\Omega|を示す。次に、GGのΩ\Omegaへの左作用の軌道から、大きさがppで割り切れない軌道と、その軌道に属する部分集合SSを取る。軌道安定化群定理によってSSの安定化群HHの位数がpnp^nで割り切れることを示す。最後に、H→SH\to Sという単射を構成して∣H∣≤pn|H|\leq p^nを得て、∣H∣=pn|H|=p^nへ帰着する。

定理 1.2 (Sylow の第一定理).ppを素数とし、有限群GGの位数を

∣G∣=pnm,n≥1,p∤m|G|=p^n m,\qquad n\ge 1,\qquad p\nmid m

と書く。このとき、GGは Sylowpp部分群をもつ。

証明.GGのpnp^n元部分集合全体をΩ\Omegaとし、GGを

g⋅S={gs∣s∈S}g\cdot S=\{gs\mid s\in S\}

によってΩ\Omegaへ作用させる。前の補題により

∣Ω∣=(pnmpn)|\Omega|=\binom{p^n m}{p^n}

はppで割り切れない。Ω\OmegaをGGの軌道へ分割したとき、すべての軌道の大きさがppで割り切れるならば∣Ω∣|\Omega|もppで割り切れる。したがって、大きさがppで割り切れない軌道が存在する。

そのような軌道からS∈ΩS\in\Omegaを取り、SSの安定化群をH=GSH=G_Sとする。軌道安定化群定理により

∣G⋅S∣=[G:H]|G\cdot S|=[G:H]

であるから、p∤[G:H]p\nmid [G:H]である。等式∣G∣=[G:H]∣H∣|G|=[G:H]|H|からpn∣∣H∣p^n\mid |H|を得る。

s∈Ss\in Sを一つ固定する。h∈Hh\in HならばhS=ShS=Sなのでhs∈Shs\in Sである。写像H→S, h↦hsH\to S,\ h\mapsto hsは、群の取消律により単射である。したがって

∣H∣≤∣S∣=pn.|H|\le |S|=p^n.

pn∣∣H∣p^n\mid |H|と合わせると∣H∣=pn|H|=p^nとなる。ゆえにHHは Sylowpp部分群である。▨

2 包含、共役性、個数

最初に、任意のpp部分群QQを左剰余類集合G/PG/Pへ作用させ、軌道分解から固定剰余類gPgPを取る。固定条件をQ≤gPg−1Q\leq gPg^{-1}という包含へ移し、QQも Sylowpp部分群である場合には位数を比較して共役性を得る。次に、GGの Sylowpp部分群全体への共役作用からnp=[G:NG(P)]n_p=[G:N_G(P)]を導き、np∣mn_p\mid mを示す。最後に、PP自身の共役作用では固定点がPPだけであることを確認し、残る軌道の大きさからnp≡1(modp)n_p\equiv1\pmod pへ帰着する。

定理 2.1 (pp部分群の包含と Sylow の第二・第三定理).ppを素数とし、有限群GGの位数を∣G∣=pnm|G|=p^n m、p∤mp\nmid mと書く。 Sylowpp部分群をPPとする。このとき、次が成り立つ。

  1. 任意のpp部分群Q≤GQ\le Gに対し、あるg∈Gg\in Gが存在してQ≤gPg−1Q\le gPg^{-1}となる。

  2. 任意の二つの Sylowpp部分群はGGの元によって共役である。

  3. Sylowpp部分群の個数をnpn_pとすると、

    np≡1(modp),np∣mn_p\equiv 1\pmod p,\qquad n_p\mid m

    が成り立つ。

証明. 最初に(1)を証明する。QQを任意のpp部分群とし、QQを左剰余類集合G/PG/Pへ左乗法で作用させる。各QQ軌道の大きさは∣Q∣|Q|を割るのでppの冪である。一方、

∣G/P∣=[G:P]=m|G/P|=[G:P]=m

はppで割り切れない。したがって、大きさが11である軌道が存在する。固定点となる剰余類をgPgPとすると、すべてのq∈Qq\in Qについて

qgP=gPqgP=gP

が成り立つ。この等式はg−1qg∈Pg^{-1}qg\in Pと同値である。ゆえにQ≤gPg−1Q\le gPg^{-1}である。

QQ自身も Sylowpp部分群である場合、QQとgPg−1gPg^{-1}の位数はともにpnp^nである。したがって(1)の包含は等号となり、(2)を得る。

(3)を証明する。Sylowpp部分群全体の集合をSp\mathcal S_pとする。(2)により、GGのSp\mathcal S_pへの共役作用は可移的である。P∈SpP\in\mathcal S_pの安定化群は正規化群NG(P)N_G(P)なので、

np=∣Sp∣=[G:NG(P)].(2)n_p=|\mathcal S_p|=[G:N_G(P)]. \tag{2}

P≤NG(P)P\le N_G(P)であるから、指数の積公式により (2) は

np=[G:NG(P)]∣[G:P]=mn_p=[G:N_G(P)]\mid [G:P]=m

を満たす。

次にPP自身をSp\mathcal S_pへ共役で作用させる。Q∈SpQ\in\mathcal S_pがこの作用の固定点ならばP≤NG(Q)P\le N_G(Q)である。Q⊴NG(Q)Q\trianglelefteq N_G(Q)なのでPQPQは部分群であり、

∣PQ∣=∣P∣∣Q∣∣P∩Q∣|PQ|=\frac{|P||Q|}{|P\cap Q|}

はppの冪である。Q≤PQQ\le PQかつQQは Sylowpp部分群なのでPQ=QPQ=Qであり、P≤QP\le Qとなる。両者の位数は等しいからP=QP=Qである。したがって、このPP作用の固定点はPP一つだけである。残る軌道の大きさはppの正の冪なので、

np=∣Sp∣≡1(modp)n_p=|\mathcal S_p|\equiv 1\pmod p

を得る。▨

正規化群を用いる最後の議論は、次の補題としても利用することができる。

補題 2.2.PPを有限群GGの Sylowpp部分群とし、QQをQ≤NG(P)Q\le N_G(P)を満たすpp部分群とする。このときQ≤PQ\le Pである。

証明.P⊴NG(P)P\trianglelefteq N_G(P)とQ≤NG(P)Q\le N_G(P)からPQPQは部分群である。その位数は

∣PQ∣=∣P∣∣Q∣∣P∩Q∣|PQ|=\frac{|P||Q|}{|P\cap Q|}

であり、ppの冪である。P≤PQP\le PQであり、PPはGGのpp部分群の中で最大の位数をもつのでPQ=PPQ=Pである。したがってQ≤PQ\le Pである。▨

注意 2.3 (Sylow 部分群の正規性). Sylowpp部分群が正規であることと、Sylowpp部分群が一つだけ存在することは同値である。実際、一つだけならば共役で不変である。正規ならば、共役なすべての Sylowpp部分群がその部分群自身に等しく、第二定理により他の Sylowpp部分群は存在しない。

3 A5A_5の Sylow 部分群と回転軸

この節は Sylow の三定理の証明には用いない具体例であり、§E7.19 命題 5.1を読んだ後に読むこともできる。同参照先の同型によってA5A_5を正二十面体の向きを保つ回転群I+I^+と同一視する。∣A5∣=60=22⋅3⋅5|A_5|=60=2^2\cdot3\cdot5である。

例 3.1 (A5A_5の Sylow 部分群).A5≅I+A_5\cong I^+の Sylow 部分群の個数は

n5=6,n3=10,n2=5n_5=6,\qquad n_3=10,\qquad n_2=5

である。幾何学的には、Sylow55部分群は向かい合う頂点を結ぶ六本の軸、Sylow33部分群は向かい合う面の中心を結ぶ十本の軸に対応する。各 Sylow22部分群は Klein の四元群であり、単位元と、辺の中点を結ぶ三本の軸のまわりの半回転からなる。

証明.A5A_5の位数55の元は55-cycle である。その個数は5!/5=245!/5=24である。各位数55の巡回部分群は四つの非単位元をもち、相異なる二つの位数55の部分群は単位元以外の元を共有しない。したがって

n5=244=6n_5=\frac{24}{4}=6

である。位数33の元は33-cycle であり、その個数は(53)⋅2=20\binom53\cdot2=20である。各位数33の巡回部分群は二つの非単位元をもつため、

n3=202=10n_3=\frac{20}{2}=10

となる。

A5A_5の文字を一つiiに固定し、残る四文字をa,b,c,da,b,c,dと書く。集合

Vi={e, (a b)(c d), (a c)(b d), (a d)(b c)}V_i= \{e,\ (a\,b)(c\,d),\ (a\,c)(b\,d),\ (a\,d)(b\,c)\}

は位数44の部分群であり、Klein の四元群と同型である。i=1,…,5i=1,\ldots,5によって五つの部分群を得る。各二重互換は一つの文字だけを固定するので、相異なるViV_iは単位元以外の元を共有しない。∣A5∣|A_5|を割る最大の22の冪は44なので、各ViV_iは Sylow22部分群である。

逆に、PPを Sylow22部分群とする。A5A_5には位数44の元が存在しないため、PPは Klein の四元群である。x∈P∖{e}x\in P\setminus\{e\}を取ると、xxは二重互換であり、ある一つの文字iiを固定する。PPは可換なのでP≤CA5(x)P\leq C_{A_5}(x)である。置換を共役すると固定点も同じ置換で移るため、xxと可換する置換はxxの唯一の固定点iiを固定する。残る四文字上でxxと可換する偶置換を直接列挙すると、ちょうどViV_iの四元を得る。したがって

P=CA5(x)=ViP=C_{A_5}(x)=V_i

となる。よって Sylow22部分群はV1,…,V5V_1,\ldots,V_5に限られ、n2=5n_2=5である。

A5≅I+A_5\cong I^+のもとで、二重互換は辺軸のまわりの半回転に対応する。したがって各ViV_iの三つの非自明元は三本の辺軸に対応し、十五本の辺軸は五組に分かれる。六つの Sylow55部分群は六本の頂点軸に、十個の Sylow33部分群は十本の面軸に対応する。最後に、

6≡1(mod5),10≡1(mod3),5≡1(mod2)6\equiv1\pmod5,\qquad 10\equiv1\pmod3,\qquad 5\equiv1\pmod2

であり、6∣126\mid12、10∣2010\mid20、5∣155\mid15なので、Sylow の第三定理とも一致する。回転軸との対応に必要な幾何学的同一視は次の注意に委ねる。□

注意 3.2 (回転軸との対応の証明責務). 部分群の列挙と個数の計算はA5A_5の置換表示から完結している。各部分群を正二十面体の回転軸へ対応させる箇所は§E7.19 命題 5.1に依存し、同参照先が委ねた幾何学を本記事では再証明しない。この対応は位数pqpqの群の分類には用いない。

4 位数pqpqの群の分類

二つの相異なる素数の積を位数とする群では、Sylow 部分群の個数によって一方の Sylow 部分群が正規となる。半直積を区別するために、位数qqの巡回群の自己同型を確認する。

補題 4.1.p<qp<qを素数とする。位数qqの巡回群CqC_qについて

∣Aut⁡(Cq)∣=q−1|\operatorname{Aut}(C_q)|=q-1

である。さらにp∣(q−1)p\mid(q-1)ならば、Aut⁡(Cq)\operatorname{Aut}(C_q)は位数ppの部分群をちょうど一つもつ。

証明.CqC_qを加法群Z/qZ\mathbb Z/q\mathbb Zと同一視する。自己同型は11の像によって一意に決まり、11の像には非零剰余類を任意に選ぶことができる。したがって

Aut⁡(Cq)≅(Z/qZ)×\operatorname{Aut}(C_q)\cong(\mathbb Z/q\mathbb Z)^\times

であり、その位数はq−1q-1である。

p∣(q−1)p\mid(q-1)とする。§E7.12 定理 6.1により、Aut⁡(Cq)\operatorname{Aut}(C_q)は位数ppの元をもつので、位数ppの部分群が存在する。

一意性を示す。素数qqを法とする剰余類全体は体をなす。実際、非零剰余類[a]q[a]_qに対してgcd⁡(a,q)=1\gcd(a,q)=1であり、Euclid の互除法から得られる Bézout の等式ua+vq=1ua+vq=1を法qqで読むと、[u]q[u]_qが[a]q[a]_qの逆元になる。

体上では、非零多項式の根の個数は次数以下である。実際、aaが多項式f(X)f(X)の根ならば

Xj−aj=(X−a)(Xj−1+aXj−2+⋯+aj−1)X^j-a^j=(X-a)(X^{j-1}+aX^{j-2}+\cdots+a^{j-1})

を各項へ適用してf(X)=(X−a)g(X)f(X)=(X-a)g(X)と書くことができる。aaと異なる根bbに対しては0=f(b)=(b−a)g(b)0=f(b)=(b-a)g(b)であり、b−a≠0b-a\neq0なのでg(b)=0g(b)=0となる。次数についての帰納法により、次数ddの非零多項式の根は高々dd個である。

位数ppの任意の部分群U≤(Z/qZ)×U\le(\mathbb Z/q\mathbb Z)^\timesの各元はXp−1X^p-1の根であり、UUはpp個の元をもつ。多項式Xp−1X^p-1の根は高々pp個なので、UUは根全体の集合に一致する。したがって、どの位数ppの部分群も同じ集合であり、そのような部分群は一つだけである。▨

最初に Sylow 部分群の個数条件を用いて Sylowqq部分群QQを正規部分群とし、Sylowpp部分群PPとともにG=QPG=QPという一意分解を得る。次に、PPのQQへの共役から準同型α ⁣:P→Aut⁡(Q)\alpha\colon P\to\operatorname{Aut}(Q)を構成し、GGを対応する半直積へ同定する。p∤(q−1)p\nmid(q-1)の場合にはα\alphaの像の位数を比較して作用を自明にし、巡回直積へ帰着する。p∣(q−1)p\mid(q-1)の場合には前の補題で像となる位数ppの部分群を一意に定め、CpC_pの自己同型によってすべての非自明な作用を一つの同型型へ帰着する。

定理 4.2.p<qp<qを相異なる素数とし、GGを位数pqpqの群とする。このとき、次が成り立つ。

  1. p∤(q−1)p\nmid(q-1)ならば、GGは巡回群CpqC_{pq}に同型である。
  2. p∣(q−1)p\mid(q-1)ならば、同型を除いて二つの群が存在する。一つは巡回群CpqC_{pq}であり、もう一つは非自明な作用による半直積Cq⋊CpC_q\rtimes C_pである。

証明. Sylow 部分群の個数をnp,nqn_p,n_qとする。nq∣pn_q\mid pかつnq≡1(modq)n_q\equiv1\pmod qでありp<qp<qなので、nq=1n_q=1である。したがって Sylowqq部分群QQは正規である。素数位数の群は巡回群なのでQ≅CqQ\cong C_qである。 Sylowpp部分群PPの位数はppであるから、非単位元はPPを生成する。したがってP≅CpP\cong C_pである。

P∩Q={eG}P\cap Q=\{e_G\}であり、

∣QP∣=∣Q∣∣P∣∣Q∩P∣=pq=∣G∣|QP|=\frac{|Q||P|}{|Q\cap P|}=pq=|G|

なのでG=QPG=QPである。各元はqpqp、q∈Q, p∈Pq\in Q,\ p\in Pと一意に書かれる。QQの正規性により、共役は準同型

α ⁣:P⟶Aut⁡(Q),αx(y)=xyx−1\alpha\colon P\longrightarrow\operatorname{Aut}(Q),\qquad \alpha_x(y)=xyx^{-1}

を定める。この作用に対する積

(y,x)(z,w)=(yαx(z),xw)(y,x)(z,w)=\bigl(y\alpha_x(z),xw\bigr)

はGGにおける積と一致する。したがってG≅Q⋊αPG\cong Q\rtimes_\alpha Pである。

p∤(q−1)p\nmid(q-1)の場合、準同型α\alphaの像の位数はppの約数である一方、∣Aut⁡(Q)∣=q−1|\operatorname{Aut}(Q)|=q-1も割る。したがって像は自明である。ゆえにPPとQQは互いに可換し、G≅Cq×CpG\cong C_q\times C_pとなる。Cq×CpC_q\times C_pの二つの標準生成元の組は位数lcm⁡(q,p)=pq\operatorname{lcm}(q,p)=pqをもつので、G≅CpqG\cong C_{pq}である。

p∣(q−1)p\mid(q-1)の場合を考える。自明な作用は前段と同じ巡回群を与える。前の補題によりAut⁡(Cq)\operatorname{Aut}(C_q)には位数ppの部分群が存在するので、非自明な準同型Cp→Aut⁡(Cq)C_p\to\operatorname{Aut}(C_q)が存在し、非自明な半直積も存在する。

非自明な準同型Cp→Aut⁡(Cq)C_p\to\operatorname{Aut}(C_q)の核はCpC_pの真の部分群なので自明であり、その像は位数ppである。前の補題により像は一意である。二つの非自明な作用α,β\alpha,\betaを取ると、CpC_pのある自己同型τ\tauが存在してβ=α∘τ\beta=\alpha\circ\tauとなる。このとき

Cq⋊βCp⟶Cq⋊αCp,(y,x)⟼(y,τ(x))C_q\rtimes_\beta C_p\longrightarrow C_q\rtimes_\alpha C_p,\qquad (y,x)\longmapsto(y,\tau(x))

は同型である。したがって非自明な半直積の同型型は一つだけである。非自明な半直積は非可換であるから、巡回群とは同型でない。以上により二つの同型型を得る。▨

例 4.3 (位数1515の群).15=3⋅515=3\cdot5では3∤(5−1)3\nmid(5-1)である。したがって、位数1515の群は巡回群C15C_{15}に限る。

例 4.4 (整除条件を満たす場合).21=3⋅721=3\cdot7では3∣(7−1)3\mid(7-1)である。したがって、位数2121の群には巡回群C21C_{21}と一つの非可換な半直積C7⋊C3C_7\rtimes C_3がある。位数66の場合には、二つの同型型がC6C_6とS3≅C3⋊C2S_3\cong C_3\rtimes C_2になる。

類等式と Sylow の定理を併用する例も確認する。

例 4.5 (位数p2p^2の群).ppを素数、GGを位数p2p^2の群とする。§E7.12 定理 5.2から、∣Z(G)∣|Z(G)|はppまたはp2p^2である。

∣Z(G)∣=p|Z(G)|=pと仮定するとG/Z(G)G/Z(G)は位数ppなので巡回群である。一般にG/Z(G)=⟨gZ(G)⟩G/Z(G)=\langle gZ(G)\rangleならば、任意のx,y∈Gx,y\in Gは

x=gaz,y=gbw(z,w∈Z(G))x=g^a z,\qquad y=g^b w\qquad (z,w\in Z(G))

と書くことができ、xy=yxxy=yxとなる。したがってG/Z(G)G/Z(G)が巡回群ならばGGはアーベル群である。するとZ(G)=GZ(G)=Gとなり∣Z(G)∣=p|Z(G)|=pに矛盾する。ゆえに∣Z(G)∣=p2|Z(G)|=p^2であり、GGはアーベル群である。

5 演習

問題 5.1.

  1. pp部分群QQのG/PG/Pへの作用を用いる証明で、p∤[G:P]p\nmid [G:P]が固定点の存在を導く箇所を、軌道の大きさを明示して再構成せよ。
  2. p<qp<qかつp∣(q−1)p\mid(q-1)とする。二つの非自明な作用Cp→Aut⁡(Cq)C_p\to\operatorname{Aut}(C_q)が同型な半直積を与える証明で、CpC_pの自己同型を用いる理由を説明せよ。
  3. 位数1212の群に Sylow の個数条件を適用し、n3=1n_3=1または44であることを示せ。さらに、個数条件だけでは二つの値のどちらであるかを決定することができない理由を述べよ。
解答 (演習の解答).
  1. QQの各軌道の大きさは、軌道に属する剰余類xPxPに対して、軌道安定化群定理によって[Q:QxP][Q:Q_{xP}]と表されるため、∣Q∣|Q|を割るppの冪である。一方、

    ∣G/P∣=[G:P]=m,p∤m|G/P|=[G:P]=m,\qquad p\nmid m

    である。大きさが11である軌道がなければ、すべての軌道の大きさがppで割り切れ、その和∣G/P∣|G/P|もppで割り切れるため矛盾する。したがって固定剰余類gPgPが存在し、qgP=gPqgP=gPがすべてのq∈Qq\in Qについて成り立つ。この等式はg−1qg∈Pg^{-1}qg\in Pと同値なので、結論はQ≤gPg−1Q\leq gPg^{-1}である。

  2. 非自明な準同型α,β ⁣:Cp→Aut⁡(Cq)\alpha,\beta\colon C_p\to\operatorname{Aut}(C_q)の核は自明なので、両者の像は位数ppである。補題 4.1によりAut⁡(Cq)\operatorname{Aut}(C_q)の位数ppの部分群は一つだけであるから、

    im⁡α=im⁡β.\operatorname{im}\alpha=\operatorname{im}\beta.

    したがって、共通の像上で定めた逆写像を用いるτ=α−1∘β ⁣:Cp→Cp\tau=\alpha^{-1}\circ\beta\colon C_p\to C_pは自己同型であり、β=α∘τ\beta=\alpha\circ\tauとなる。この等式により(y,x)↦(y,τ(x))(y,x)\mapsto(y,\tau(x))はCq⋊βCpC_q\rtimes_\beta C_pからCq⋊αCpC_q\rtimes_\alpha C_pへの同型となる。

  3. 12=3⋅412=3\cdot4なので、Sylow の第三定理から

    n3∣4,n3≡1(mod3)n_3\mid4,\qquad n_3\equiv1\pmod3

    を得る。44の正の約数のうち11を法33として11に合同なものは11と44なので、n3=1n_3=1または44である。得られた整除条件と合同条件は必要条件にすぎず、実際にC12C_{12}ではn3=1n_3=1である一方、A4A_4では八つの33-cycle が二個ずつ四つの位数33の部分群を作るためn3=4n_3=4である。したがって個数条件だけでは一方を選ぶことができない。

▨

参考文献

  1. David S. Dummit and Richard M. Foote, Abstract Algebra, 3rd ed., Wiley, 2004.群作用による Sylow の定理と位数 pq の群の扱いを参考にした。
  2. Joseph J. Rotman, An Introduction to the Theory of Groups, 4th ed., Graduate Texts in Mathematics 148, Springer, 1995.Sylow の定理と有限群への応用の扱いを参考にした。
  3. H. S. M. Coxeter, Regular Polytopes, 3rd ed., Dover Publications, New York, 1973, originally published 1963.正二十面体の回転軸と回転群の幾何学的記述を参考にした。

前提記事