§E20.40実代数的数と終結式

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零でない有理係数多項式の実根は、Sturm 列による根の個数の計算と区間の二分によって分離され、各実根はその実根だけを含む有理数端点の開区間とともに得られる。分離によって得られた実根が無理数である場合にも、実根を指定する情報は、多項式と一つの区間だけである。この実根を他の数と足し合わせ、掛け合わせ、あるいは別の多項式に代入して値の符号を調べるには、多項式と区間の組そのものを一つの数として扱い、その組の上で演算と判定を行う方法が必要になる。

零でない有理係数多項式の根である実数を実代数的数という。実代数的数α\alphaは、平方自由な有理係数多項式と、端点がその多項式の根でない有理数であってα\alphaだけを実根として含む開区間との組によって表される。たとえば(x2−2,1,2)(x^2-2,1,2)は2\sqrt2を表し、(x2−3,1,2)(x^2-3,1,2)は3\sqrt3を表す。

和と積の表示には、和と積を根にもつ多項式が必要である。2+3\sqrt2+\sqrt3はx4−10x2+1x^4-10x^2+1の実根であるが、x4−10x2+1x^4-10x^2+1はx2−2x^2-2とx2−3x^2-3の係数を組み合わせる計算によって得られる。この計算に用いるのが終結式であり、次数が11以上の二つの多項式の終結式は係数を並べた Sylvester 行列の行列式として定められ、二つの多項式が次数11以上の公約元をもつときに限り零になる。

実代数的数を係数とする零でない多項式の実根は分離され、実根は再び実代数的数である。有限個の多項式が実数直線上のどこで正、負、零となるかを示す符号表も、有理数の四則演算と比較の有限回で得られる。

本記事は、多項式と分離区間による実代数的数の表示を定め、終結式を用いてその四則演算を構成し、実代数的数を係数とする多項式の根の分離と符号の判定へ進む。

1 表示と比較

定義 1.1.

  1. Q\Q上代数的な実数を 実代数的数 (real algebraic number) という。
  2. p∈Q[x]p\in\Q[x]を平方自由とし、有理数a<ba<bについて(a,b)(a,b)がppの分離区間であるとする。(a,b)(a,b)に属するppのただ一つの実根をα\alphaとするとき、三つ組(p,a,b)(p,a,b)をα\alphaの 表示 (isolating representation) といい、(p,a,b)(p,a,b)はα\alphaを表すという。
  3. (p,a,b)(p,a,b)をα\alphaの表示とする。(a0,b0):=(a,b)(a_0,b_0):=(a,b)と置き、k∈N≥1k\in\NNに対して、ppと(ak−1,bk−1)(a_{k-1},b_{k-1})とτ=2−k\tau=2^{-k}に§E20.39 定義 5.5 (3)を適用した出力を(ak,bk)(a_k,b_k)とする。§E20.39 命題 5.6 (3)により各(ak,bk)(a_k,b_k)はppの分離区間であるから、この列は帰納的に定まる。(ak,bk)k∈N≥0(a_k,b_k)_{k\in\N}を(p,a,b)(p,a,b)の 精密化列 (refinement sequence) という。

補題 1.2.KKをR\Rの部分体とする。

  1. q∈K[x]q\in K[x]が平方自由であり、次数が11以上のe∈K[x]e\in K[x]がqqを割り切るならば、eeは平方自由であり、eeの実根はすべてqqの実根である。
  2. f∈K[x]f\in K[x]の次数を11以上とし、lc⁡(f)−1f\operatorname{lc}(f)^{-1}fに§E20.39 定理 3.4 (2)を適用して得るw1w_1を考える。w1w_1は平方自由であり、任意の実数ccに対して、f(c)=0f(c)=0であることとw1(c)=0w_1(c)=0であることは同値である。

証明.(1)を示す。PPとvpv_pを§E20.39 補題 3.3のものとする。§E20.39 補題 3.3 (3)と§E20.39 定理 3.4 (1)により、任意のp∈Pp\in Pに対してvp(e)≤vp(q)≤1v_p(e)\le v_p(q)\le1であるから、§E20.39 定理 3.4 (1)によりeeは平方自由である。q=ekq=ekと書くと、e(c)=0e(c)=0を満たす実数ccについてq(c)=e(c)k(c)=0q(c)=e(c)k(c)=0である。

(2)を示す。§E20.39 定理 3.4 (4)によりw1w_1は平方自由である。§E20.39 補題 3.3 (2)によりvp(lc⁡(f)−1f)=vp(f)v_p(\operatorname{lc}(f)^{-1}f)=v_p(f)であるから、§E20.39 定理 3.4 (2)によりw1=∏p∈P, vp(f)≥1pw_1=\prod_{p\in P,\ v_p(f)\ge1}pであり、§E20.39 補題 3.3 (1)によりf=lc⁡(f)∏p∈Ppvp(f)f=\operatorname{lc}(f)\prod_{p\in P}p^{v_p(f)}である。R\Rは体であるから、実数ccについてf(c)=0f(c)=0であることと、vp(f)≥1v_p(f)\ge1を満たすあるppでp(c)=0p(c)=0であることは同値であり、後者はw1(c)=0w_1(c)=0と同値である。▨

命題 1.3.

  1. 実数α\alphaが実代数的数であることは、α\alphaの表示が存在することと同値である。
  2. (p,a,b)(p,a,b)をα\alphaの表示とし、(ak,bk)k∈N≥0(a_k,b_k)_{k\in\N}をその精密化列とする。任意のk∈N≥0k\in\Nに対して(p,ak,bk)(p,a_k,b_k)はα\alphaの表示であり、k≥1k\ge1ならば[ak,bk]⊂[ak−1,bk−1][a_k,b_k]\subset[a_{k-1},b_{k-1}]かつbk−ak≤2−kb_k-a_k\le2^{-k}である。任意の実数ε>0\varepsilon>0に対して、bk−ak<εb_k-a_k<\varepsilonを満たすkkが存在する。
  3. (p,a,b)(p,a,b)をα\alphaの表示とし、ccを有理数、VVをppの Sturm 列から定めたものとする。c≤ac\le aならばc<αc<\alphaであり、b≤cb\le cならばα<c\alpha<cである。a<c<ba<c<bかつp(c)=0p(c)=0ならばα=c\alpha=cである。a<c<ba<c<bかつp(c)≠0p(c)\ne0ならばV(a)−V(c)∈{0,1}V(a)-V(c)\in\{0,1\}であり、α<c\alpha<cであることとV(a)−V(c)=1V(a)-V(c)=1であることは同値である。

証明.(1)を示す。(p,a,b)(p,a,b)がα\alphaの表示ならば、零でないp∈Q[x]p\in\Q[x]がp(α)=0p(\alpha)=0を満たすので、α\alphaは実代数的数である。逆にα\alphaを実代数的数とし、m:=mα,Qm:=m_{\alpha,\Q}と置く。§E8.2 定理 2.1によりmmはモニック既約であるから、mm自身がmmのモニック既約分解であり、§E20.39 補題 3.3の指数はvm(m)=1v_m(m)=1、p≠mp\ne mでvp(m)=0v_p(m)=0である。§E20.39 定理 3.4 (1)によりmmは平方自由である。mmとτ=1\tau=1に§E20.39 系 6.4を適用すると、§E20.39 系 6.4 (1)と§E20.39 系 6.4 (2)により、実根α\alphaはある(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)に属し、(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)はmmの分離区間である。したがって(m,cℓ,dℓ)(m,c_\ell,d_\ell)はα\alphaの表示である。

(2)を示す。k≥1k\ge1とし、(p,ak−1,bk−1)(p,a_{k-1},b_{k-1})がα\alphaの表示であるとする。§E20.39 命題 5.6 (3)により(ak,bk)(a_k,b_k)は[ak,bk]⊂[ak−1,bk−1][a_k,b_k]\subset[a_{k-1},b_{k-1}]とbk−ak≤2−kb_k-a_k\le2^{-k}を満たすppの分離区間であり、(ak−1,bk−1)(a_{k-1},b_{k-1})に属するppの実根α\alphaを含む。kkに関する帰納法により前半が成り立つ。実数ε>0\varepsilon>0に対して、§D1.4 命題 2.1によりk>1/εk>1/\varepsilonを満たす正の整数kkが存在し、2k>k2^k>kであるからbk−ak≤2−k<1/k<εb_k-a_k\le2^{-k}<1/k<\varepsilonである。

(3)を示す。α∈(a,b)\alpha\in(a,b)であるから、c≤ac\le aならばc<αc<\alpha、b≤cb\le cならばα<c\alpha<cである。a<c<ba<c<bかつp(c)=0p(c)=0ならば、ccは(a,b)(a,b)に属するppの実根であるからc=αc=\alphaである。a<c<ba<c<bかつp(c)≠0p(c)\ne0とする。§E20.39 補題 3.2 (1)によりppはR[x]\R[x]の元として平方自由であり、p(a)p(c)≠0p(a)p(c)\ne0であるから、§E20.39 定理 4.3 (3)によりV(a)−V(c)=Np((a,c))V(a)-V(c)=N_p((a,c))である。(a,c)⊂(a,b)(a,c)\subset(a,b)に属するppの実根はα\alphaだけでありうるので、Np((a,c))∈{0,1}N_p((a,c))\in\{0,1\}であり、Np((a,c))=1N_p((a,c))=1であることはα∈(a,c)\alpha\in(a,c)、すなわちα<c\alpha<cと同値である。▨

命題 1.4.(p,a,b)(p,a,b)をα\alphaの表示、(q,c,d)(q,c,d)をβ\betaの表示とし、Q[x]\Q[x]におけるppとqqのモニック最大公約元をDDとする。

  1. e:=max⁡{a,c}e:=\max\{a,c\}、e′:=min⁡{b,d}e':=\min\{b,d\}と置く。α=β\alpha=\betaであることは、e<e′e<e'であり、DDの次数が11以上であり、DDの Sturm 列から定めたVDV_DについてVD(e)−VD(e′)=1V_D(e)-V_D(e')=1であることと同値である。
  2. α≠β\alpha\ne\betaとし、(ak,bk)k∈N≥0(a_k,b_k)_{k\in\N}と(ck,dk)k∈N≥0(c_k,d_k)_{k\in\N}をそれぞれ(p,a,b)(p,a,b)と(q,c,d)(q,c,d)の精密化列とする。[ak,bk]∩[ck,dk]=∅[a_k,b_k]\cap[c_k,d_k]=\emptysetを満たすkkが存在する。そのようなkkに対して、α<β\alpha<\betaであることとbk<ckb_k<c_kであることは同値である。

証明.(1)を示す。§E6.28 命題 3.1により、あるu,v∈Q[x]u,v\in\Q[x]が存在してD=up+vqD=up+vqとなる。DDの次数が11以上ならば、補題 1.2 (1)によりDDは平方自由であり、DDはppとqqを割り切りp(a)q(c)≠0p(a)q(c)\ne0かつp(b)q(d)≠0p(b)q(d)\ne0であるからD(e)D(e′)≠0D(e)D(e')\ne0である。このときe<e′e<e'ならば、§E20.39 補題 3.2 (1)と§E20.39 定理 4.3 (3)によりVD(e)−VD(e′)=ND((e,e′))V_D(e)-V_D(e')=N_D((e,e'))である。

α=β\alpha=\betaとする。α∈(a,b)∩(c,d)=(e,e′)\alpha\in(a,b)\cap(c,d)=(e,e')であるからe<e′e<e'である。D(α)=u(α)p(α)+v(α)q(α)=0D(\alpha)=u(\alpha)p(\alpha)+v(\alpha)q(\alpha)=0であり、DDはモニックであるから次数が11以上である。補題 1.2 (1)によりDDの実根はppの実根であるから、(e,e′)⊂(a,b)(e,e')\subset(a,b)に属するDDの実根はα\alphaだけであり、ND((e,e′))=1N_D((e,e'))=1である。

逆にe<e′e<e'、deg⁡D≥1\deg D\ge1、VD(e)−VD(e′)=1V_D(e)-V_D(e')=1とし、(e,e′)(e,e')に属するDDの実根をγ\gammaとする。DDはppを割り切るのでγ\gammaは(a,b)(a,b)に属するppの実根であり、γ=α\gamma=\alphaである。同様にγ=β\gamma=\betaであるから、α=β\alpha=\betaである。

(2)を示す。η:=∣α−β∣>0\eta:=|\alpha-\beta|>0と置く。命題 1.3 (2)により、bk−ak<η/2b_k-a_k<\eta/2かつdk−ck<η/2d_k-c_k<\eta/2を満たすkkが存在する。y∈[ak,bk]∩[ck,dk]y\in[a_k,b_k]\cap[c_k,d_k]が存在すると仮定すると、α,y∈[ak,bk]\alpha,y\in[a_k,b_k]とβ,y∈[ck,dk]\beta,y\in[c_k,d_k]からη≤∣α−y∣+∣y−β∣<η\eta\le|\alpha-y|+|y-\beta|<\etaとなり、η<η\eta<\etaは成り立たない。したがってこのkkで閉区間は交わらない。閉区間が交わらないkkではbk<ckb_k<c_kまたはdk<akd_k<a_kであり、前者ならばα<bk<ck<β\alpha<b_k<c_k<\beta、後者ならばβ<dk<ak<α\beta<d_k<a_k<\alphaである。▨

2 有限因数分解と最小多項式

定理 2.1.P∈Z[x]P\in\Z[x]を次数n≥2n\ge2の原始的多項式とする。1≤d≤⌊n/2⌋1\le d\le\lfloor n/2\rfloorを満たす整数ddに対して、PPが零にならない非負整数を小さい順にd+1d+1個取ってx0<⋯<xdx_0<\cdots<x_dとし、P(xi)P(x_i)を割り切る整数(負のものを含む)の集合をDiD_iとする。(y0,…,yd)∈D0×⋯×Dd(y_0,\ldots,y_d)\in D_0\times\cdots\times D_dに対して節点x0,…,xdx_0,\ldots,x_dの Lagrange 基底ℓ0,…,ℓd\ell_0,\ldots,\ell_dによる∑i=0dyiℓi\sum_{i=0}^dy_i\ell_iの全体をTdT_dとする。

  1. x0,…,xdx_0,\ldots,x_dは{0,1,…,n+d}\{0,1,\ldots,n+d\}の中に取ることができ、TdT_dはQ[x]\Q[x]の有限部分集合である。
  2. PPがQ[x]\Q[x]で可約であることは、あるddとあるL∈TdL\in T_dが存在して、L∈Z[x]L\in\Z[x]、deg⁡L≥1\deg L\ge1であり、Q[x]\Q[x]においてLLがPPを割り切ることと同値である。
  3. 零でないf∈Q[x]f\in\Q[x]に対して、次の手続きを考える。F:=lc⁡(f)−1fF:=\operatorname{lc}(f)^{-1}fと置く。ffが定数ならばF=1F=1であり、空列を出力する。ffが定数でなければ、FFの係数の分母の積をNNとしてPf:=NF/cont⁡(NF)P_f:=NF/\operatorname{cont}(NF)と置く。deg⁡Pf=1\deg P_f=1ならば(F)(F)を出力する。deg⁡Pf≥2\deg P_f\ge2であり、(2)の条件を満たすLLが存在しなければ(F)(F)を出力する。存在すれば、その一つLLと、PfP_fのLLによる除法の商Pf/LP_f/Lのそれぞれにこの手続きを適用し、二つの出力を並べたものを出力する。この手続きは有理数の四則演算と比較の有限回で停止し、出力はモニック既約多項式の列であって、その積(空列の積は11)はFFに等しい。

証明.(1)を示す。§E20.39 命題 2.1 (1)によりPPの実根は高々nn個であるから、n+d+1n+d+1個の整数0,1,…,n+d0,1,\ldots,n+dのうち少なくともd+1d+1個でPPは零にならない。P(xi)P(x_i)は零でない整数であるから、その約数は∣P(xi)∣|P(x_i)|以下の絶対値をもち、DiD_iは有限集合である。したがってTdT_dは有限集合であり、xix_iとyiy_iは有理数であるからTd⊂Q[x]T_d\subset\Q[x]である。

(2)を示す。L∈TdL\in T_dが条件を満たしP=LHP=LHと書くとする。LLは次数がdd以下の多項式の一次結合であるからdeg⁡L≤d≤n/2<n\deg L\le d\le n/2<nであり、§E6.28 命題 1.2によりdeg⁡H=n−deg⁡L≥1\deg H=n-\deg L\ge1である。§E6.28 命題 1.3によりLLとHHは単元でないので、PPはQ[x]\Q[x]で可約である。

逆にPPがQ[x]\Q[x]で可約であるとする。§E6.28 定理 7.5により、正の次数をもつg,h∈Z[x]g,h\in\Z[x]が存在してP=ghP=ghとなる。deg⁡g≤deg⁡h\deg g\le\deg hとしてよく、§E6.28 命題 1.2によりd:=deg⁡gd:=\deg gは1≤d≤⌊n/2⌋1\le d\le\lfloor n/2\rfloorを満たす。各iiについてg(xi)h(xi)=P(xi)≠0g(x_i)h(x_i)=P(x_i)\ne0は整数の積であるから、g(xi)∈Dig(x_i)\in D_iである。ggは次数がdd以下の実係数多項式であり、節点x0,…,xdx_0,\ldots,x_dは相異なるので、§E20.12 定理 1.3によりg=∑i=0dg(xi)ℓi∈Tdg=\sum_{i=0}^dg(x_i)\ell_i\in T_dである。L:=gL:=gは条件を満たす。

(3)を示す。ffが定数ならば、空列の積11はFFに等しい。以下、定数でないffについてdeg⁡f\deg fに関する強帰納法を用いる。NNは正の整数でありNF∈Z[x]NF\in\Z[x]は零でないから、§E6.28 命題 7.2によりPfP_fは原始的であり、Pf=cFP_f=cFを満たすc∈Q×c\in\Q^\timesが存在する。§E6.28 命題 1.3によりccはQ[x]\Q[x]の単元であるから、FFが既約であることとPfP_fが既約であることは同値であり、deg⁡Pf=deg⁡F\deg P_f=\deg Fである。deg⁡F=1\deg F=1ならば、§E6.28 命題 1.2によりFFは二つの正の次数の多項式の積でないので既約であり、出力(F)(F)は主張を満たす。deg⁡F≥2\deg F\ge2であり条件を満たすLLが存在しないならば、(2)によりPfP_fは既約であり、出力(F)(F)は主張を満たす。条件を満たすLLが存在するならば、(2)の証明の前半によりLLとPf/LP_f/Lの次数は11以上deg⁡f\deg f未満である。帰納法の仮定により二つの手続きは停止し、出力の積はそれぞれlc⁡(L)−1L\operatorname{lc}(L)^{-1}Lとlc⁡(Pf/L)−1(Pf/L)\operatorname{lc}(P_f/L)^{-1}(P_f/L)に等しい。§E6.28 命題 1.2によりこの二つの積はlc⁡(Pf)−1Pf\operatorname{lc}(P_f)^{-1}P_fであり、Pf=cFP_f=cFとFFがモニックであることからlc⁡(Pf)−1Pf=F\operatorname{lc}(P_f)^{-1}P_f=Fである。各段で行う操作は、(1)の有限集合の列挙、Lagrange 基底の係数の計算、§E6.28 定理 2.1の除法であり、いずれも有理数の四則演算と比較の有限回で終わる。▨

命題 2.2.(p,a,b)(p,a,b)をα\alphaの表示とし、lc⁡(p)−1p\operatorname{lc}(p)^{-1}pに定理 2.1 (3)を適用して得るモニック既約多項式をp1,…,prp_1,\ldots,p_rとする。pjp_jの Sturm 列から定めたVjV_jについてVj(a)−Vj(b)=1V_j(a)-V_j(b)=1を満たすjjはただ一つであり、そのjjについてpj=mα,Qp_j=m_{\alpha,\Q}であって、(pj,a,b)(p_j,a,b)はα\alphaの表示である。

証明. 各pjp_jはppを割り切り次数が11以上であるから、補題 1.2 (1)により平方自由であり、その実根はppの実根である。p(a)p(b)≠0p(a)p(b)\ne0からpj(a)pj(b)≠0p_j(a)p_j(b)\ne0であり、§E20.39 補題 3.2 (1)と§E20.39 定理 4.3 (3)によりVj(a)−Vj(b)=Npj((a,b))V_j(a)-V_j(b)=N_{p_j}((a,b))である。(a,b)(a,b)に属するppの実根はα\alphaだけであるから、Npj((a,b))=1N_{p_j}((a,b))=1であることはpj(α)=0p_j(\alpha)=0と同値である。p(α)=lc⁡(p)p1(α)⋯pr(α)=0p(\alpha)=\operatorname{lc}(p)p_1(\alpha)\cdots p_r(\alpha)=0であるから、pj(α)=0p_j(\alpha)=0を満たすjjが存在する。そのようなjjについて、§E8.2 定理 2.1によりmα,Qm_{\alpha,\Q}はpjp_jを割り切り、pjp_jは既約でmα,Qm_{\alpha,\Q}は定数でないので商は零でない定数であり、両者がモニックであるからpj=mα,Qp_j=m_{\alpha,\Q}である。ppは平方自由であるから、§E20.39 定理 3.4 (1)によりmα,Qm_{\alpha,\Q}はp1,…,prp_1,\ldots,p_rに一度だけ現れ、このjjはただ一つである。pjp_jは平方自由でpj(a)pj(b)≠0p_j(a)p_j(b)\ne0であり、(a,b)(a,b)に属するpjp_jの実根はα\alphaだけであるから、(pj,a,b)(p_j,a,b)はα\alphaの表示である。▨

3 単拡大の演算と区間評価による符号

命題 3.1.α\alphaを実代数的数とし、m:=mα,Qm:=m_{\alpha,\Q}、n:=deg⁡mn:=\deg mと置く。Q[x]\Q[x]の元で、零であるか次数がnn未満であるものの全体をQ[x]<n\Q[x]_{<n}と書く。

  1. Q(α)\Q(\alpha)の任意の元γ\gammaに対して、γ=r(α)\gamma=r(\alpha)を満たすr∈Q[x]<nr\in\Q[x]_{<n}がただ一つ存在する。
  2. r,s∈Q[x]<nr,s\in\Q[x]_{<n}とする。r+s∈Q[x]<nr+s\in\Q[x]_{<n}かつr(α)+s(α)=(r+s)(α)r(\alpha)+s(\alpha)=(r+s)(\alpha)である。rsrsのmmによる除法の剰余をρ\rhoとすると、ρ∈Q[x]<n\rho\in\Q[x]_{<n}かつr(α)s(α)=ρ(α)r(\alpha)s(\alpha)=\rho(\alpha)である。
  3. r∈Q[x]<nr\in\Q[x]_{<n}について、r(α)=0r(\alpha)=0であることとr=0r=0であることは同値である。
  4. 零でないr∈Q[x]<nr\in\Q[x]_{<n}について、Q[x]\Q[x]におけるmmとrrのモニック最大公約元は11である。um+vr=1um+vr=1を満たすu,v∈Q[x]u,v\in\Q[x]を取り、vvのmmによる除法の剰余をvˉ\bar vとすると、r(α)−1=vˉ(α)r(\alpha)^{-1}=\bar v(\alpha)である。

証明.§E8.2 定理 3.1により、f+(m)↦f(α)f+(m)\mapsto f(\alpha)はQ[x]/(m)\Q[x]/(m)からQ(α)\Q(\alpha)への同型であり、1,α,…,αn−11,\alpha,\ldots,\alpha^{n-1}はQ(α)\Q(\alpha)のQ\Q上の基底である。γ∈Q(α)\gamma\in\Q(\alpha)の基底に関する座標を係数とする多項式がrrであるから、(1)が成り立ち、γ=0\gamma=0に適用すると(3)が成り立つ。r+sr+sの係数はrrとssの係数の和であるからr+s∈Q[x]<nr+s\in\Q[x]_{<n}である。rs=hm+ρrs=hm+\rhoと書くと、§E6.28 定理 2.1によりρ∈Q[x]<n\rho\in\Q[x]_{<n}であり、m(α)=0m(\alpha)=0からr(α)s(α)=ρ(α)r(\alpha)s(\alpha)=\rho(\alpha)である。

(4)を示す。mmとrrのモニック最大公約元DDは既約多項式mmを割り切るので、D=1D=1であるか、DDはmmと同伴でモニックであるからD=mD=mである。DDは零でないrrを割り切り、deg⁡r<deg⁡m\deg r<\deg mであるから、§E6.28 命題 1.2によりD=mD=mではない。したがってD=1D=1であり、§E6.28 命題 3.1によりum+vr=1um+vr=1を満たすu,vu,vが存在する。x=αx=\alphaを代入するとv(α)r(α)=1v(\alpha)r(\alpha)=1であり、v=hm+vˉv=hm+\bar vと書くとv(α)=vˉ(α)v(\alpha)=\bar v(\alpha)である。▨

補題 3.2.n∈N≥1n\in\NNとし、EEをnn変数の式、XXをE(X)E(X)が定まるRn\R^nの箱とする。ある実数L≥0L\ge0が存在して、任意の箱X′⊂XX'\subset Xに対して

w(E(X′))≤Lmax⁡1≤i≤nw(Xi′)w(E(X'))\le L\max_{1\le i\le n}w(X'_i)

が成り立つ。

証明.

主張 3.2.1.A,B∈IRA,B\in\mathbb{I}\Rに対してw(A⋅B)≤mag⁡A w(B)+mag⁡B w(A)w(A\cdot B)\le\operatorname{mag}A\,w(B)+\operatorname{mag}B\,w(A)である。またA⊂A′A\subset A'を満たすA′∈IRA'\in\mathbb{I}\Rに対してmag⁡A≤mag⁡A′\operatorname{mag}A\le\operatorname{mag}A'である。

証明.§E20.36 定理 2.3 (1)により、A⋅BA\cdot Bの端点はAAの端点とBBの端点の積であるから、あるa,a′∈Aa,a'\in Aとb,b′∈Bb,b'\in Bによってw(A⋅B)=a′b′−abw(A\cdot B)=a'b'-abと書くことができる。a′b′−ab=a′(b′−b)+b(a′−a)a'b'-ab=a'(b'-b)+b(a'-a)である。§E20.36 補題 1.2 (2)により∣b′−b∣≤w(B)|b'-b|\le w(B)かつ∣a′−a∣≤w(A)|a'-a|\le w(A)であり、Y∈IRY\in\mathbb{I}\Rの元yyは∣y∣≤mag⁡Y|y|\le\operatorname{mag}Yを満たすので、w(A⋅B)≤mag⁡A w(B)+mag⁡B w(A)w(A\cdot B)\le\operatorname{mag}A\,w(B)+\operatorname{mag}B\,w(A)である。AAの端点はA′A'に属するので、mag⁡A≤mag⁡A′\operatorname{mag}A\le\operatorname{mag}A'である。▨

X′⊂XX'\subset Xを箱とし、h:=max⁡iw(Xi′)h:=\max_iw(X'_i)と置く。§E20.36 定理 4.2 (2)により、EEの部分式GGでG(X)G(X)が定まるものについて、G(X′)G(X')も定まりG(X′)⊂G(X)G(X')\subset G(X)である。E(X)E(X)が定まる式EEに対して、X′X'によらずw(E(X′))≤LEhw(E(X'))\le L_Ehを満たす実数LE≥0L_E\ge0を、式の構成に関する帰納法で定める。E=ξiE=\xi_iならばw(E(X′))=w(Xi′)≤hw(E(X'))=w(X'_i)\le hであり、LE=1L_E=1と取る。EEが定数ならばw(E(X′))=0w(E(X'))=0であり、LE=0L_E=0と取る。

E=(E′∘E′′)E=(E'\circ E'')とし、E′E'とE′′E''について主張が成り立つとする。A:=E′(X′)A:=E'(X')、B:=E′′(X′)B:=E''(X')と置くと、A⊂E′(X)A\subset E'(X)かつB⊂E′′(X)B\subset E''(X)である。∘∈{+,−}\circ\in\{+,-\}ならば、§E20.36 定理 2.3 (1)によりw(E(X′))=w(A)+w(B)≤(LE′+LE′′)hw(E(X'))=w(A)+w(B)\le(L_{E'}+L_{E''})hである。∘=⋅\circ=\cdotならば、主張 3.2.1により

w(E(X′))≤mag⁡E′(X) LE′′h+mag⁡E′′(X) LE′hw(E(X'))\le\operatorname{mag}E'(X)\,L_{E''}h+\operatorname{mag}E''(X)\,L_{E'}h

である。∘=/\circ={/}ならば、0∉E′′(X)0\notin E''(X)であるからμ:=min⁡{∣inf⁡E′′(X)∣, ∣sup⁡E′′(X)∣}>0\mu:=\min\{|\inf E''(X)|,\ |\sup E''(X)|\}>0であり、E′′(X)E''(X)の元yyはすべて同符号で∣y∣≥μ|y|\ge\muを満たす。B=[β1,β2]B=[\beta_1,\beta_2]と書くと、§E20.36 定理 2.3 (1)によりA/B=A⋅[1/β2,1/β1]A/B=A\cdot[1/\beta_2,1/\beta_1]であり、β1β2≥μ2\beta_1\beta_2\ge\mu^2から

w([1/β2,1/β1])=β2−β1β1β2≤w(B)μ2,mag⁡[1/β2,1/β1]≤1μw([1/\beta_2,1/\beta_1])=\frac{\beta_2-\beta_1}{\beta_1\beta_2}\le\frac{w(B)}{\mu^2},\qquad\operatorname{mag}[1/\beta_2,1/\beta_1]\le\frac1\mu

である。主張 3.2.1によりw(E(X′))≤(mag⁡E′(X) LE′′/μ2+LE′/μ)hw(E(X'))\le\bigl(\operatorname{mag}E'(X)\,L_{E''}/\mu^2+L_{E'}/\mu\bigr)hである。いずれの場合も係数はX′X'によらない。▨

命題 3.3.n∈N≥1n\in\NNとし、EEをnn変数の式、y∈Rny\in\R^nとする。Rn\R^nの箱の列(X(k))k∈N≥0(X^{(k)})_{k\in\N}が、任意のkkでy∈X(k)⊂X(0)y\in X^{(k)}\subset X^{(0)}を満たし、E(X(0))E(X^{(0)})が定まり、任意の実数ε>0\varepsilon>0に対してmax⁡iw(Xi(k))<ε\max_iw(X^{(k)}_i)<\varepsilonを満たすkkが存在するとする。このときy∈DEy\in D_Eである。fE(y)≠0f_E(y)\ne0ならば、0∉E(X(k))0\notin E(X^{(k)})を満たすkkが存在し、そのような任意のkkについてfE(y)f_E(y)はinf⁡E(X(k))\inf E(X^{(k)})と同符号である。EEの定数と各X(k)X^{(k)}の端点が有理数ならば、E(X(k))E(X^{(k)})の端点は有理数の四則演算と比較の有限回で得られる。

証明.§E20.36 定理 4.2 (1)と§E20.36 定理 4.2 (2)により、X(0)⊂DEX^{(0)}\subset D_Eであり、各E(X(k))E(X^{(k)})が定まってfE(y)∈E(X(k))f_E(y)\in E(X^{(k)})である。fE(y)≠0f_E(y)\ne0とし、補題 3.2のLLをX(0)X^{(0)}について取る。ε:=∣fE(y)∣/(L+1)\varepsilon:=|f_E(y)|/(L+1)に対してmax⁡iw(Xi(k))<ε\max_iw(X^{(k)}_i)<\varepsilonを満たすkkを取ると、w(E(X(k)))≤Lε<∣fE(y)∣w(E(X^{(k)}))\le L\varepsilon<|f_E(y)|である。0∈E(X(k))0\in E(X^{(k)})と仮定すると、§E20.36 補題 1.2 (2)をy^=0\hat y=0で用いて∣fE(y)∣≤w(E(X(k)))|f_E(y)|\le w(E(X^{(k)}))となり、w(E(X(k)))<∣fE(y)∣w(E(X^{(k)}))<|f_E(y)|に反する。したがって0∉E(X(k))0\notin E(X^{(k)})である。0∉E(X(k))0\notin E(X^{(k)})を満たすkkについて、§E20.36 命題 7.1をS={y}S=\{y\}に適用すると、fE(y)f_E(y)はinf⁡E(X(k))\inf E(X^{(k)})と同符号である。端点が有理数の場合の主張は、§E20.36 定理 2.3 (1)の端点の式から従う。▨

系 3.4.(p,a,b)(p,a,b)をα\alphaの表示、(ak,bk)k∈N≥0(a_k,b_k)_{k\in\N}をその精密化列とし、r=∑i=0scixi∈Q[x]r=\sum_{i=0}^sc_ix^i\in\Q[x]がr(α)≠0r(\alpha)\ne0を満たすとする。一変数の式をE(s):=csE^{(s)}:=c_s、0≤i<s0\le i<sについてE(i):=E(i+1)⋅ξ1+ciE^{(i)}:=E^{(i+1)}\cdot\xi_1+c_iで定め、Er:=E(0)E_r:=E^{(0)}と置く。0∉Er([ak,bk])0\notin E_r([a_k,b_k])を満たすkkが存在し、そのような任意のkkについてr(α)r(\alpha)はinf⁡Er([ak,bk])\inf E_r([a_k,b_k])と同符号である。p=mα,Qp=m_{\alpha,\Q}でありrrが零でなくdeg⁡r<deg⁡p\deg r<\deg pを満たすならば、命題 3.1 (3)によりr(α)≠0r(\alpha)\ne0である。

証明.ErE_rは除算を含まないので、任意の箱XXでEr(X)E_r(X)が定まり、DEr=RD_{E_r}=\Rである。iiに関する下向きの帰納法によりfE(i)(x)=∑j=iscjxj−if_{E^{(i)}}(x)=\sum_{j=i}^sc_jx^{j-i}であるから、fEr(x)=r(x)f_{E_r}(x)=r(x)である。命題 1.3 (2)により、α∈[ak,bk]⊂[a0,b0]\alpha\in[a_k,b_k]\subset[a_0,b_0]であり、任意の実数ε>0\varepsilon>0に対してbk−ak<εb_k-a_k<\varepsilonを満たすkkが存在するので、命題 3.3をy=αy=\alpha、X(k)=[ak,bk]X^{(k)}=[a_k,b_k]に適用すると主張を得る。▨

4 行列式と終結式

定義 4.1.AAを単位元をもつ可換環、n∈N≥1n\in\NNとし、M=(mij)M=(m_{ij})を成分がAAに属するnn次正方行列とする。

det⁡M:=∑σ∈Snsgn⁡(σ) m1σ(1)m2σ(2)⋯mnσ(n)\det M:=\sum_{\sigma\in S_n}\operatorname{sgn}(\sigma)\,m_{1\sigma(1)}m_{2\sigma(2)}\cdots m_{n\sigma(n)}

と定める。ここでsgn⁡(σ)∈{1,−1}\operatorname{sgn}(\sigma)\in\{1,-1\}はAAの元11または−1-1とみなす。

補題 4.2.AAを単位元をもつ可換環、M=(mij)M=(m_{ij})を成分がAAに属するnn次正方行列とする。

  1. ψ ⁣:A→A′\psi\colon A\to A'を単位元を保つ環準同型とし、ψ(M):=(ψ(mij))\psi(M):=(\psi(m_{ij}))と置くと、det⁡ψ(M)=ψ(det⁡M)\det\psi(M)=\psi(\det M)である。
  2. det⁡M⊤=det⁡M\det M^\top=\det Mである。
  3. det⁡M\det Mは各行と各列についてAA-線形である。二つの行または二つの列を入れ替えるとdet⁡M\det Mは−1-1倍になり、ある行に他の行のcc倍(c∈Ac\in A)を加えても、ある列に他の列のcc倍を加えても、det⁡M\det Mは変わらない。
  4. i>ji>jならばmij=0m_{ij}=0であるとき、det⁡M=m11m22⋯mnn\det M=m_{11}m_{22}\cdots m_{nn}である。

証明.(1)は、ψ\psiが和と積と±1\pm1を保つことから従う。(2)、(3)、(4)の証明は演習とする(問題 8.1)。▨

命題 4.3.FFを体とし、MMを成分がFFに属するnn次正方行列とする。det⁡M=0\det M=0であることと、Mx=0Mx=0を満たす零でないx∈Fnx\in F^nが存在することは同値である。

証明.M0:=MM_0:=Mと置き、1≤k≤n1\le k\le nについてMk−1M_{k-1}からMkM_kを次のように定める。Mk−1M_{k-1}の第kk列の第kk行以下の成分がすべて零ならばMk:=Mk−1M_k:=M_{k-1}とする。そうでなければ、第kk列の成分が零でない第ii行(i≥ki\ge k)を一つ取って第kk行と入れ替え、得られた行列の(k,k)(k,k)成分をπ\piとして、各i>ki>kについて第ii行に第kk行の−π−1⋅(第 i 行の第 k 成分)-\pi^{-1}\cdot(\text{第 }i\text{ 行の第 }k\text{ 成分})倍を加えた行列をMkM_kとする。第kk段の操作は、第kk行以下の二つの行の入れ替えと、第kk行より下の行に第kk行の定数倍を加える操作だけである。j<kj<kについてMk−1M_{k-1}の第jj列の第jj行より下の成分が零であるとき、第kk行以下の行の第jj成分はすべて零であるから、第kk段の操作の後も零である。第kk段の後、第kk列の第kk行より下の成分は零である。したがってkkに関する帰納法により、MkM_kの第11列から第kk列までは対角成分より下の成分が零である。U:=MnU:=M_nと置くとUUは上三角行列であり、補題 4.2 (3)によりdet⁡U=±det⁡M\det U=\pm\det Mである。行の入れ替えと、ある行に他の行の定数倍を加える操作は、それぞれ同じ入れ替えと逆符号の定数倍の加算で元に戻るので、Mx=0Mx=0の解の集合とUx=0Ux=0の解の集合は一致する。補題 4.2 (4)によりdet⁡U=u11⋯unn\det U=u_{11}\cdots u_{nn}である。

すべてのiiでuii≠0u_{ii}\ne0ならばdet⁡M≠0\det M\ne0である。このときUx=0Ux=0とすると、第nn行からunnxn=0u_{nn}x_n=0であり、iiに関する下向きの帰納法により、第ii行uiixi+∑j>iuijxj=0u_{ii}x_i+\sum_{j>i}u_{ij}x_j=0とxj=0x_j=0(j>ij>i)からxi=0x_i=0である。したがって零でない解は存在しない。

uii=0u_{ii}=0を満たすiiが存在するならばdet⁡M=0\det M=0である。そのような最小のiiをssとすると、i<si<sならばuii≠0u_{ii}\ne0である。xs:=1x_s:=1、j>sj>sについてxj:=0x_j:=0と置き、i=s−1,…,1i=s-1,\ldots,1の順にxi:=−uii−1∑j=i+1suijxjx_i:=-u_{ii}^{-1}\sum_{j=i+1}^su_{ij}x_jと定める。i<si<sならば第ii行の値はuiixi+∑j=i+1suijxj=0u_{ii}x_i+\sum_{j=i+1}^su_{ij}x_j=0であり、第ss行の値はussxs+∑j>susjxj=0u_{ss}x_s+\sum_{j>s}u_{sj}x_j=0であり、i>si>sならば第ii行の値はj≥i>sj\ge i>sのxj=0x_j=0だけを含むので00である。したがってx≠0x\ne0かつUx=0Ux=0であり、Mx=0Mx=0である。▨

定義 4.4.AAを単位元をもつ可換環とし、m,n∈N≥0m,n\in\Nがm+n≥1m+n\ge1を満たすとする。N:=m+nN:=m+nと置く。次数がN−1N-1以下のh=∑i=0N−1hixi∈A[x]h=\sum_{i=0}^{N-1}h_ix^i\in A[x]に対して、(hN−1,hN−2,…,h0)(h_{N-1},h_{N-2},\ldots,h_0)をhhの係数ベクトルという。

  1. f=∑i=0maixif=\sum_{i=0}^ma_ix^iとg=∑j=0nbjxjg=\sum_{j=0}^nb_jx^jをA[x]A[x]の元とする。1≤j≤n1\le j\le nに対して第jj列がxn−jfx^{n-j}fの係数ベクトルであり、1≤j≤m1\le j\le mに対して第n+jn+j列がxm−jgx^{m-j}gの係数ベクトルであるNN次正方行列をSm,n(f,g)S_{m,n}(f,g)と書き、f,gf,gの Sylvester 行列 (Sylvester matrix) という。
  2. FFを体とし、零でないf,g∈F[x]f,g\in F[x]がdeg⁡f+deg⁡g≥1\deg f+\deg g\ge1を満たすとする。Res⁡(f,g):=det⁡Sdeg⁡f,deg⁡g(f,g)\operatorname{Res}(f,g):=\det S_{\deg f,\deg g}(f,g)をffとggの 終結式 (resultant) という。ffまたはggが零である場合と、f,gf,gがともに定数である場合には、終結式を定めない。

定理 4.5.FFを体とし、零でないf,g∈F[x]f,g\in F[x]がm:=deg⁡fm:=\deg f、n:=deg⁡gn:=\deg gについてm+n≥1m+n\ge1を満たすとする。次の四条件は同値である。

  1. Res⁡(f,g)=0\operatorname{Res}(f,g)=0である。
  2. u=0u=0またはdeg⁡u<n\deg u<nを満たすu∈F[x]u\in F[x]と、v=0v=0またはdeg⁡v<m\deg v<mを満たすv∈F[x]v\in F[x]が存在して、(u,v)≠(0,0)(u,v)\ne(0,0)かつuf+vg=0uf+vg=0である。
  3. F[x]F[x]におけるffとggのモニック最大公約元の次数は11以上である。
  4. 体LLと、FFを部分体とするLLの元γ\gammaが存在して、f(γ)=g(γ)=0f(\gamma)=g(\gamma)=0である。

証明.(1)⇔\Leftrightarrow(2)を示す。c∈Fm+nc\in F^{m+n}に対してuc:=∑j=1ncjxn−ju_c:=\sum_{j=1}^nc_jx^{n-j}、vc:=∑j=1mcn+jxm−jv_c:=\sum_{j=1}^mc_{n+j}x^{m-j}と置くと、c↦(uc,vc)c\mapsto(u_c,v_c)はFm+nF^{m+n}から(2)の次数条件を満たす組(u,v)(u,v)の全体への全単射である。定義 4.4 (1)によりSm,n(f,g)cS_{m,n}(f,g)cはucf+vcgu_cf+v_cgの係数ベクトルであるから、Sm,n(f,g)c=0S_{m,n}(f,g)c=0であることとucf+vcg=0u_cf+v_cg=0であることは同値である。命題 4.3により主張が成り立つ。

(3)⇒\Rightarrow(2)を示す。モニック最大公約元DDの次数が11以上であるとし、f=Df1f=Df_1、g=Dg1g=Dg_1と書く。§E6.28 命題 1.2によりdeg⁡g1=n−deg⁡D<n\deg g_1=n-\deg D<n、deg⁡f1<m\deg f_1<mであり、g1≠0g_1\ne0である。(u,v):=(g1,−f1)(u,v):=(g_1,-f_1)はuf+vg=g1Df1−f1Dg1=0uf+vg=g_1Df_1-f_1Dg_1=0を満たす。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。(2)の(u,v)(u,v)を取り、モニック最大公約元が11であると仮定する。§E6.28 命題 3.1によりaf+bg=1af+bg=1を満たすa,b∈F[x]a,b\in F[x]が存在し、uf=−vguf=-vgからu=u(af+bg)=g(bu−av)u=u(af+bg)=g(bu-av)である。u≠0u\ne0ならば§E6.28 命題 1.2によりdeg⁡u≥n\deg u\ge nとなり、uuの次数条件に反する。したがってu=0u=0であり、vg=0vg=0とg≠0g\ne0から§E6.28 命題 1.2によりv=0v=0となって、(u,v)≠(0,0)(u,v)\ne(0,0)に反する。したがってモニック最大公約元の次数は11以上である。

(3)⇒\Rightarrow(4)を示す。モニック最大公約元DDのモニック既約因子ppを§E6.28 定理 5.1により取る。§E6.28 定理 6.1によりL:=F[x]/(p)L:=F[x]/(p)は体であり、ppは定数でないのでc↦c+(p)c\mapsto c+(p)はFFからLLへの単射な環準同型である。これによりFFをLLの部分体とみなし、γ:=x+(p)\gamma:=x+(p)と置くと、h∈F[x]h\in F[x]に対してh(γ)=h+(p)h(\gamma)=h+(p)である。ppはDDを割り切り、DDはffとggを割り切るので、f(γ)=g(γ)=0f(\gamma)=g(\gamma)=0である。

(4)⇒\Rightarrow(1)を示す。§E6.28 定理 4.2をL[x]L[x]で適用すると、x−γx-\gammaはL[x]L[x]においてffとggを割り切るので、L[x]L[x]におけるffとggのモニック最大公約元の次数は11以上である。f,gf,gのL[x]L[x]における次数はm,nm,nであるから、(3)⇒\Rightarrow(2)と(1)⇔\Leftrightarrow(2)をLLで適用するとdet⁡Sm,n(f,g)=0\det S_{m,n}(f,g)=0である。この行列の成分はFFに属するのでRes⁡(f,g)=0\operatorname{Res}(f,g)=0である。▨

定義 4.6.FFを、任意の正の整数kkに対してk⋅1≠0k\cdot1\ne0を満たす体とする。f=∑i=0maixi∈F[x]f=\sum_{i=0}^ma_ix^i\in F[x]に対してf′:=∑i=1miaixi−1f':=\sum_{i=1}^mia_ix^{i-1}と置く。deg⁡f=m≥1\deg f=m\ge1ならば、f′f'のxm−1x^{m-1}の係数mamma_mは零でないのでdeg⁡f′=m−1\deg f'=m-1であり、

disc⁡(f):=(−1)m(m−1)/2lc⁡(f)−1Res⁡(f,f′)\operatorname{disc}(f):=(-1)^{m(m-1)/2}\operatorname{lc}(f)^{-1}\operatorname{Res}(f,f')

をffの 判別式 (discriminant) という。

命題 4.7.FFを定義 4.6の体とし、f∈F[x]f\in F[x]の次数を11以上とする。disc⁡(f)=0\operatorname{disc}(f)=0であることは、F[x]F[x]におけるffとf′f'のモニック最大公約元の次数が11以上であることと同値であり、FFを部分体とするある体LLのある元γ\gammaでf(γ)=f′(γ)=0f(\gamma)=f'(\gamma)=0となることとも同値である。FFがR\Rの部分体ならば、これらはffが平方自由でないことと同値である。

証明.deg⁡f+deg⁡f′≥1\deg f+\deg f'\ge1でありlc⁡(f)≠0\operatorname{lc}(f)\ne0であるから、前半は定理 4.5による。FFがR\Rの部分体ならばf′f'は§E20.39 補題 1.2の導関数に等しく、§E20.39 定義 3.1によりffが平方自由であることはffとf′f'のモニック最大公約元が11であることである。▨

例 4.8.

  1. 体FFの元α,β\alpha,\betaについて、S1,1(x−α,x−β)S_{1,1}(x-\alpha,x-\beta)の第11列は(1,−α)(1,-\alpha)、第22列は(1,−β)(1,-\beta)であり、Res⁡(x−α,x−β)=−β+α=α−β\operatorname{Res}(x-\alpha,x-\beta)=-\beta+\alpha=\alpha-\betaである。
  2. deg⁡f=m≥1\deg f=m\ge1、c∈Fc\in Fが零でないとき、Sm,0(f,c)S_{m,0}(f,c)の第jj列はcxm−jcx^{m-j}の係数ベクトルであるからSm,0(f,c)=cImS_{m,0}(f,c)=cI_mであり、補題 4.2 (4)によりRes⁡(f,c)=cm\operatorname{Res}(f,c)=c^mである。
  3. 定義 4.6の体FFの元b,cb,cについてf=x2+bx+cf=x^2+bx+cとするとf′=2x+bf'=2x+bであり、 S2,1(f,f′)=(120bb2c0b),Res⁡(f,f′)=b2−2b2+4c=4c−b2S_{2,1}(f,f')=\begin{pmatrix}1&2&0\\b&b&2\\c&0&b\end{pmatrix},\qquad\operatorname{Res}(f,f')=b^2-2b^2+4c=4c-b^2 であるから、disc⁡(f)=−(4c−b2)=b2−4c\operatorname{disc}(f)=-(4c-b^2)=b^2-4cである。

命題 4.9.AAを単位元をもつ可換環、FFを体、ψ ⁣:A→F\psi\colon A\to Fを単位元を保つ環準同型とする。m,n∈N≥0m,n\in\Nがm+n≥1m+n\ge1を満たし、f=∑i=0maixif=\sum_{i=0}^ma_ix^i、g=∑j=0nbjxj∈A[x]g=\sum_{j=0}^nb_jx^j\in A[x]とし、ψf:=∑iψ(ai)xi\psi f:=\sum_i\psi(a_i)x^i、ψg:=∑jψ(bj)xj\psi g:=\sum_j\psi(b_j)x^jと置く。

  1. ψ(det⁡Sm,n(f,g))=det⁡Sm,n(ψf,ψg)\psi(\det S_{m,n}(f,g))=\det S_{m,n}(\psi f,\psi g)である。
  2. ψ(am)≠0\psi(a_m)\ne0かつψ(bn)≠0\psi(b_n)\ne0ならば、ψ(det⁡Sm,n(f,g))=Res⁡(ψf,ψg)\psi(\det S_{m,n}(f,g))=\operatorname{Res}(\psi f,\psi g)である。

証明.Sm,n(f,g)S_{m,n}(f,g)の成分はf,gf,gの係数または00であるから、ψ\psiを成分ごとに施した行列はSm,n(ψf,ψg)S_{m,n}(\psi f,\psi g)であり、補題 4.2 (1)により(1)が成り立つ。(2)の仮定の下ではdeg⁡ψf=m\deg\psi f=m、deg⁡ψg=n\deg\psi g=nであるから、右辺は定義 4.4 (2)によりRes⁡(ψf,ψg)\operatorname{Res}(\psi f,\psi g)である。▨

例 4.10.A=Q[t]A=\Q[t]、f=tx+1f=tx+1、g=xg=xとするとS1,1(f,g)=(t110)S_{1,1}(f,g)=\begin{pmatrix}t&1\\1&0\end{pmatrix}であり、det⁡S1,1(f,g)=−1\det S_{1,1}(f,g)=-1である。ψ ⁣:Q[t]→Q\psi\colon\Q[t]\to\Qをt↦0t\mapsto0の代入とするとψf=1\psi f=1の次数は00であり、S0,1(1,x)S_{0,1}(1,x)は第11列が11の係数ベクトル(1)(1)である11次正方行列であるから、Res⁡(1,x)=1≠−1\operatorname{Res}(1,x)=1\ne-1である。したがってψ(am)=0\psi(a_m)=0の場合には、ψ(det⁡Sm,n(f,g))\psi(\det S_{m,n}(f,g))はRes⁡(ψf,ψg)\operatorname{Res}(\psi f,\psi g)に等しいとは限らない。f=tf=tのようにψf=0\psi f=0となる場合には、終結式は定まらない。

5 四則演算

命題 5.1.p,q∈Q[x]p,q\in\Q[x]の次数をm:=deg⁡p≥1m:=\deg p\ge1、n:=deg⁡q≥1n:=\deg q\ge1とし、q=∑j=0nqjxjq=\sum_{j=0}^nq_jx^jと書く。Q[t][x]\Q[t][x]の元

g+:=∑j=0nqj(t−x)j,g×:=∑j=0nqjtjxn−jg_+:=\sum_{j=0}^nq_j(t-x)^j,\qquad g_\times:=\sum_{j=0}^nq_jt^jx^{n-j}

に対して、R+:=det⁡Sm,n(p,g+)R_+:=\det S_{m,n}(p,g_+)、R×:=det⁡Sm,n(p,g×)R_\times:=\det S_{m,n}(p,g_\times)と置く。これらはQ[t]\Q[t]の元である。

  1. R+R_+は次数mnmnの多項式であり、ppの任意の実根α\alphaとqqの任意の実根β\betaに対してR+(α+β)=0R_+(\alpha+\beta)=0である。
  2. q(0)≠0q(0)\ne0ならば、R×R_\timesは次数mnmnの多項式であり、ppの任意の実根α\alphaとqqの任意の実根β\betaに対してR×(αβ)=0R_\times(\alpha\beta)=0である。

証明.

主張 5.1.1.g∈Q[t][x]g\in\Q[t][x]のxxについての次数がnn以下であり、各xix^iの係数のttについての次数がnn以下であり、tnx0t^nx^0の係数が零でない有理数cc、i≥1i\ge1に対するtnxit^nx^iの係数が00であるとする。このときdet⁡Sm,n(p,g)\det S_{m,n}(p,g)はttについて次数mnmnの多項式である。

証明.定義 4.1の和の各項は、各列からちょうど一つずつ成分を取った積である。第11列から第nn列の成分はppの係数または00であり、第n+jn+j列(1≤j≤m1\le j\le m)の成分はxm−jgx^{m-j}gの係数であってttについて次数がnn以下である。したがって各項の次数はmnmn以下であり、そのtmnt^{mn}の係数は、第11列から第nn列の成分と、第n+jn+j列の成分のtnt^nの係数との積である。第n+jn+j列の成分のtnt^nの係数を並べたものはcxm−jcx^{m-j}の係数ベクトルであるから、det⁡Sm,n(p,g)\det S_{m,n}(p,g)のtmnt^{mn}の係数は、Sm,n(p,g)S_{m,n}(p,g)の第n+jn+j列をcxm−jcx^{m-j}の係数ベクトルに取り替えた行列HHの行列式である。c′∈Qm+nc'\in\Q^{m+n}に対してu:=∑j=1ncj′xn−ju:=\sum_{j=1}^nc'_jx^{n-j}、v:=∑j=1mcn+j′xm−jv:=\sum_{j=1}^mc'_{n+j}x^{m-j}と置くと、Hc′Hc'はup+cvup+cvの係数ベクトルである。up+cv=0up+cv=0かつu≠0u\ne0ならば、§E6.28 命題 1.2によりdeg⁡(up)≥m\deg(up)\ge mであり、cvcvは零であるか次数がmm未満であるから両立しない。したがってu=0u=0であり、cv=0cv=0からv=0v=0であるのでc′=0c'=0である。命題 4.3によりdet⁡H≠0\det H\ne0である。▨

(t−x)j(t-x)^jのttについての次数はjjであり、tnt^nの項をもつのはj=nj=nの場合だけで、その係数は11である。したがってg+g_+はc=qnc=q_nとして主張 5.1.1の仮定を満たす。g×g_\timesのxn−jx^{n-j}の係数はqjtjq_jt^jであるから、g×g_\timesもc=qnc=q_nとして仮定を満たす。よってR+R_+とR×R_\timesの次数はmnmnである。

実数t0t_0に対して、t↦t0t\mapsto t_0の代入ev⁡t0 ⁣:Q[t]→R\ev_{t_0}\colon\Q[t]\to\Rを考える。ppの係数は有理数であるからev⁡t0\ev_{t_0}で変わらず、ev⁡t0g+=q(t0−x)\ev_{t_0}g_+=q(t_0-x)のxnx^nの係数は(−1)nqn≠0(-1)^nq_n\ne0であるから、命題 4.9 (2)によりR+(t0)=Res⁡(p,q(t0−x))R_+(t_0)=\operatorname{Res}(p,q(t_0-x))である。t0=α+βt_0=\alpha+\betaならば、p(α)=0p(\alpha)=0かつq(t0−α)=q(β)=0q(t_0-\alpha)=q(\beta)=0であるから、定理 4.5 (4)⇒\Rightarrow(1)をF=L=RF=L=\Rで適用してR+(α+β)=0R_+(\alpha+\beta)=0である。q(0)≠0q(0)\ne0ならばev⁡t0g×\ev_{t_0}g_\timesのxnx^nの係数はq0≠0q_0\ne0であり、同様にR×(t0)=Res⁡(p,∑jqjt0jxn−j)R_\times(t_0)=\operatorname{Res}\bigl(p,\sum_jq_jt_0^jx^{n-j}\bigr)である。t0=αβt_0=\alpha\betaならば∑jqj(αβ)jαn−j=αnq(β)=0\sum_jq_j(\alpha\beta)^j\alpha^{n-j}=\alpha^nq(\beta)=0であるから、x=αx=\alphaは共通根でありR×(αβ)=0R_\times(\alpha\beta)=0である。▨

補題 5.2.γ\gammaを実数、P∈Q[x]P\in\Q[x]をP(γ)=0P(\gamma)=0を満たす零でない多項式とする。有理数を端点とする閉区間の列(Jk)k∈N≥0(J_k)_{k\in\N}が、任意のkkでγ∈Jk\gamma\in J_kを満たし、任意の実数ε>0\varepsilon>0に対してw(Jk)<εw(J_k)<\varepsilonを満たすkkをもつとする。有理数cℓ<dℓc_\ell<d_\ell(1≤ℓ≤t1\le\ell\le t)が、P(cℓ)P(dℓ)≠0P(c_\ell)P(d_\ell)\ne0を満たし、各(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)がPPの実根をちょうど一つ含み、PPの実根がすべていずれかの(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)に属するとする。lc⁡(P)−1P\operatorname{lc}(P)^{-1}Pに§E20.39 定理 3.4 (2)を適用して得るw1w_1を考える。このときJk⊂(cℓ,dℓ)J_k\subset(c_\ell,d_\ell)を満たすkkとℓ\ellが存在し、そのような任意のk,ℓk,\ellについて(w1,cℓ,dℓ)(w_1,c_\ell,d_\ell)はγ\gammaの表示である。

証明.PPは零でなく実根γ\gammaをもつので次数が11以上である。仮定によりγ∈(cℓ,dℓ)\gamma\in(c_\ell,d_\ell)を満たすℓ\ellがあり、η:=min⁡{γ−cℓ, dℓ−γ}>0\eta:=\min\{\gamma-c_\ell,\ d_\ell-\gamma\}>0と置く。w(Jk)<ηw(J_k)<\etaを満たすkkを取ると、y∈Jky\in J_kは§E20.36 補題 1.2 (2)により∣y−γ∣≤w(Jk)<η|y-\gamma|\le w(J_k)<\etaを満たすので、Jk⊂(cℓ,dℓ)J_k\subset(c_\ell,d_\ell)である。逆にJk⊂(cℓ,dℓ)J_k\subset(c_\ell,d_\ell)ならばγ∈(cℓ,dℓ)\gamma\in(c_\ell,d_\ell)である。補題 1.2 (2)によりw1w_1は平方自由であり、w1w_1とPPの実根は一致するので、w1(cℓ)w1(dℓ)≠0w_1(c_\ell)w_1(d_\ell)\ne0であり、(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)に属するw1w_1の実根はγ\gammaだけである。したがって(w1,cℓ,dℓ)(w_1,c_\ell,d_\ell)はγ\gammaの表示である。▨

定理 5.3.(p,a,b)(p,a,b)をα\alphaの表示、(q,c,d)(q,c,d)をβ\betaの表示とし、(ak,bk)k∈N≥0(a_k,b_k)_{k\in\N}と(ck,dk)k∈N≥0(c_k,d_k)_{k\in\N}をそれぞれの精密化列、m:=deg⁡pm:=\deg p、p=∑i=0mpixip=\sum_{i=0}^mp_ix^iとする。次の各項のPPは零でないQ[x]\Q[x]の元であって、各項の実数γ\gammaについてP(γ)=0P(\gamma)=0を満たし、(Jk)k∈N≥0(J_k)_{k\in\N}はγ\gammaについて補題 5.2の仮定を満たす。

  1. γ=−α\gamma=-\alpha、P:=p(−x)P:=p(-x)、Jk:=[−bk,−ak]J_k:=[-b_k,-a_k]である。
  2. γ=α+β\gamma=\alpha+\beta、PPは命題 5.1のR+R_+の変数をxxに替えたもの、Jk:=[ak,bk]+[ck,dk]J_k:=[a_k,b_k]+[c_k,d_k]である。
  3. α≠0\alpha\ne0かつβ≠0\beta\ne0とする。q(0)=0q(0)=0ならばq~:=q/x\tilde q:=q/x、q(0)≠0q(0)\ne0ならばq~:=q\tilde q:=qと置く。γ=αβ\gamma=\alpha\beta、PPはppとq~\tilde qから命題 5.1のR×R_\timesの変数をxxに替えたもの、Jk:=[ak,bk]⋅[ck,dk]J_k:=[a_k,b_k]\cdot[c_k,d_k]である。
  4. α≠0\alpha\ne0とする。0∉[ak0,bk0]0\notin[a_{k_0},b_{k_0}]を満たすk0k_0が存在する。γ=1/α\gamma=1/\alpha、P:=∑i=0mpixm−iP:=\sum_{i=0}^mp_ix^{m-i}、Jk:=[1,1]/[ak0+k,bk0+k]J_k:=[1,1]/[a_{k_0+k},b_{k_0+k}]である。

α=0\alpha=0であるかどうかは、命題 1.3 (3)によりα\alphaを有理数00と比較して判定され、α=0\alpha=0またはβ=0\beta=0ならばαβ=0\alpha\beta=0は(x,−1,1)(x,-1,1)で表される。したがって−α-\alpha、α+β\alpha+\beta、αβ\alpha\beta、α≠0\alpha\ne0の場合の1/α1/\alphaの表示は、§E20.39 系 6.4をPPとτ=1\tau=1に適用した出力と補題 5.2により、有理数の四則演算と比較の有限回で得られる。

証明.命題 1.3 (2)により、α∈[ak,bk]⊂[a0,b0]\alpha\in[a_k,b_k]\subset[a_0,b_0]、β∈[ck,dk]⊂[c0,d0]\beta\in[c_k,d_k]\subset[c_0,d_0]であり、bk−akb_k-a_kとdk−ckd_k-c_kはk≥1k\ge1で2−k2^{-k}以下であるから、任意の実数ε>0\varepsilon>0に対して、bk−ak<εb_k-a_k<\varepsilonかつdk−ck<εd_k-c_k<\varepsilonを満たすkkが存在する。

(1)を示す。PPの係数はppの係数に±1\pm1を掛けたものであるからP≠0P\ne0であり、P(−α)=p(α)=0P(-\alpha)=p(\alpha)=0である。−α∈[−bk,−ak]-\alpha\in[-b_k,-a_k]であり、w(Jk)=bk−akw(J_k)=b_k-a_kである。

(2)を示す。命題 5.1 (1)によりP≠0P\ne0かつP(α+β)=0P(\alpha+\beta)=0である。§E20.36 定理 2.3 (2)によりα+β∈Jk\alpha+\beta\in J_kであり、§E20.36 定理 2.3 (1)によりw(Jk)=(bk−ak)+(dk−ck)w(J_k)=(b_k-a_k)+(d_k-c_k)である。

(3)を示す。q(0)=0q(0)=0ならば§E6.28 定理 4.2によりxxはqqを割り切り、§E20.39 補題 3.2 (2)によりmult⁡0(q)=1\operatorname{mult}_0(q)=1であるからx2x^2はqqを割り切らず、§E6.28 定理 4.2によりq~(0)≠0\tilde q(0)\ne0である。どちらの場合もq~(0)≠0\tilde q(0)\ne0である。q~=q/x\tilde q=q/xの場合はβq~(β)=q(β)=0\beta\tilde q(\beta)=q(\beta)=0とβ≠0\beta\ne0から、q~=q\tilde q=qの場合はq(β)=0q(\beta)=0から、q~(β)=0\tilde q(\beta)=0であるので、q~\tilde qの次数は11以上である。命題 5.1 (2)によりP≠0P\ne0かつP(αβ)=0P(\alpha\beta)=0である。§E20.36 定理 2.3 (2)によりαβ∈Jk\alpha\beta\in J_kである。二変数の式ξ1⋅ξ2\xi_1\cdot\xi_2と箱[a0,b0]×[c0,d0][a_0,b_0]\times[c_0,d_0]に補題 3.2を適用して得るLLについて、w(Jk)≤Lmax⁡{bk−ak, dk−ck}w(J_k)\le L\max\{b_k-a_k,\ d_k-c_k\}である。

(4)を示す。∣α∣>0|\alpha|>0であるから、bk0−ak0<∣α∣b_{k_0}-a_{k_0}<|\alpha|を満たすk0k_0が存在する。0∈[ak0,bk0]0\in[a_{k_0},b_{k_0}]ならば、§E20.36 補題 1.2 (2)により∣α∣≤bk0−ak0|\alpha|\le b_{k_0}-a_{k_0}となってbk0−ak0<∣α∣b_{k_0}-a_{k_0}<|\alpha|に反するので、0∉[ak0,bk0]0\notin[a_{k_0},b_{k_0}]である。k≥0k\ge0について[ak0+k,bk0+k]⊂[ak0,bk0][a_{k_0+k},b_{k_0+k}]\subset[a_{k_0},b_{k_0}]であるからJkJ_kは定まる。PPの定数項はpm≠0p_m\ne0であるからP≠0P\ne0であり、P(1/α)=α−m∑ipiαi=α−mp(α)=0P(1/\alpha)=\alpha^{-m}\sum_ip_i\alpha^i=\alpha^{-m}p(\alpha)=0である。§E20.36 定理 2.3 (2)により1/α∈Jk1/\alpha\in J_kである。一変数の式1/ξ11/\xi_1と箱[ak0,bk0][a_{k_0},b_{k_0}]に補題 3.2を適用して得るLLについて、w(Jk)≤L(bk0+k−ak0+k)w(J_k)\le L(b_{k_0+k}-a_{k_0+k})である。

最後の主張は、§E20.39 系 6.4 (1)と§E20.39 系 6.4 (2)により§E20.39 系 6.4の出力が補題 5.2の区間の仮定を満たすこと、JkJ_kの端点が有理数の四則演算で得られること、補題 5.2のkkとℓ\ellをk=0,1,2,…k=0,1,2,\ldotsの順に有理数の比較で探す手続きが停止することから従う。▨

例 5.4.x2−2x^2-2と2x2xのモニック最大公約元は2x2xを割り切るので11またはxxであり、xxはx2−2x^2-2を割り切らないので11である。したがってx2−2x^2-2は平方自由であり、その実根±2\pm\sqrt2のうち(1,2)(1,2)に属するのは2\sqrt2だけであるから、(x2−2,1,2)(x^2-2,1,2)は2\sqrt2の表示である。同様に(x2−3,1,2)(x^2-3,1,2)は3\sqrt3の表示である。g+=(t−x)2−3=x2−2tx+t2−3g_+=(t-x)^2-3=x^2-2tx+t^2-3であり、s:=t2−3s:=t^2-3と置くと

S2,2(x2−2,g+)=(101001−2t1−20s−2t0−20s)S_{2,2}(x^2-2,g_+)=\begin{pmatrix}1&0&1&0\\0&1&-2t&1\\-2&0&s&-2t\\0&-2&0&s\end{pmatrix}

である。第33列から第11列を、第44列から第22列を引くと、補題 4.2 (3)により行列式は変わらず、第11行は(1,0,0,0)(1,0,0,0)になる。定義 4.1の和でσ(1)=1\sigma(1)=1の項だけが残るので、

R+=det⁡(1−2t00s+2−2t−20s+2)=(s+2)2−8t2=t4−10t2+1R_+=\det\begin{pmatrix}1&-2t&0\\0&s+2&-2t\\-2&0&s+2\end{pmatrix}=(s+2)^2-8t^2=t^4-10t^2+1

である。P:=x4−10x2+1=(x2−5)2−24P:=x^4-10x^2+1=(x^2-5)^2-24と置くとP′=4x(x2−5)P'=4x(x^2-5)である。PPとP′P'のモニック既約な公約元π\piはxxであるかx2−5x^2-5を割り切るが、P(0)=1P(0)=1であるからπ≠x\pi\ne xであり、π\piがx2−5x^2-5を割り切るならばπ\piは24=(x2−5)2−P24=(x^2-5)^2-Pを割り切るので、π\piは存在しない。したがってPPとP′P'のモニック最大公約元は11であり、PPは平方自由であって、補題 5.2のw1w_1はPPである。PPの実根はx2=5±26x^2=5\pm2\sqrt6を満たす。19/4<26<79/1619/4<2\sqrt6<79/16から5−26∈(1/16,1/4)5-2\sqrt6\in(1/16,1/4)であり、4<26<114<2\sqrt6<11から5+26∈(9,16)5+2\sqrt6\in(9,16)であるので、(−4,−3)(-4,-3)、(−1/2,−1/4)(-1/2,-1/4)、(1/4,1/2)(1/4,1/2)、(3,4)(3,4)はそれぞれPPの実根をちょうど一つ含み、PPの実根はすべてこれらに属する。P(±3)=−8P(\pm3)=-8、P(±4)=97P(\pm4)=97、P(±1/4)=97/256P(\pm1/4)=97/256、P(±1/2)=−23/16P(\pm1/2)=-23/16であるから、端点でPPは零にならない。2\sqrt2と3\sqrt3の精密化列の第44項は(11/8,23/16)(11/8,23/16)と(27/16,7/4)(27/16,7/4)であり、J4=[49/16,51/16]⊂(3,4)J_4=[49/16,51/16]\subset(3,4)である。したがって(x4−10x2+1,3,4)(x^4-10x^2+1,3,4)は2+3\sqrt2+\sqrt3の表示である。J0,…,J3J_0,\ldots,J_3は[2,4][2,4]、[5/2,7/2][5/2,7/2]、[11/4,13/4][11/4,13/4]、[3,13/4][3,13/4]であり、いずれも四つの開区間のどれにも含まれない。

6 実代数的係数の多項式

命題 6.1.s∈N≥0s\in\Nとし、実代数的数γ1,…,γs\gamma_1,\ldots,\gamma_sの表示が与えられているとする。K:=Q(γ1,…,γs)⊂RK:=\Q(\gamma_1,\ldots,\gamma_s)\subset\Rと置き、K[x]K[x]の元は、各係数の表示を並べた有限列によって与えられるとする。

  1. KKの元はすべて実代数的数である。
  2. h,g∈K[x]h,g\in K[x]とする。g≠0g\ne0ならば、ggの次数と最高次係数、hhのggによる除法の商と剰余が得られる。h≠0h\ne0かつg≠0g\ne0ならば、hhとggのモニック最大公約元DDと、D=uh+vgD=uh+vgを満たすu,v∈K[x]u,v\in K[x]が得られる。hhの次数が11以上ならば、lc⁡(h)−1h\operatorname{lc}(h)^{-1}hに§E20.39 定理 3.4 (2)を適用して得るwi,fiw_i,f_iが得られる。hhが平方自由ならば、hhの Sturm 列と、有理数ccに対するV(c)V(c)とχh(c)\chi_h(c)が得られる。いずれも、定理 5.3と命題 1.3 (3)の有限回の適用で得られ、得られる多項式はK[x]K[x]に属する。
  3. q∈K[x]q\in K[x]を平方自由とし、VVをqqの Sturm 列から定めたものとする。有理数a<ba<bがq(a)q(b)≠0q(a)q(b)\ne0を満たすならば、Nq((a,b))=V(a)−V(b)N_q((a,b))=V(a)-V(b)である。

証明.(1)を示す。各γi\gamma_iはQ\Q上代数的であるから、§E8.2 定理 4.2により[K:Q][K:\Q]は有限であり、§E8.2 命題 4.1によりKKの元はすべてQ\Q上代数的である。

(2)を示す。KKの元の和、差、積、零でない元の逆元はKKに属し、定理 5.3によりそれらの表示が得られる。KKの元が零であるかどうかは、命題 1.3 (3)によりその元を有理数00と比較して判定される。したがって、係数を上から順に零と比較して次数と最高次係数が得られる。h=0h=0またはdeg⁡h<deg⁡g\deg h<\deg gならば、商は00、剰余はhhである。h≠0h\ne0かつdeg⁡h≥deg⁡g\deg h\ge\deg gならば、§E6.28 定理 2.1の存在の証明は最高次項の消去を高々deg⁡h−deg⁡g+1\deg h-\deg g+1回繰り返すものであり、各回はKKの四則演算と零の判定からなる。§E6.28 命題 3.1の Euclid アルゴリズムは余りの次数が真に減る有限回の除法であり、Bézout 等式の係数は各除法の商から得られる。§E20.39 定理 3.4 (2)により平方因子分解の反復は有限回の最大公約元と剰余が零の除法で停止する。Sturm 列は§E20.39 定義 4.1により有限回の除法で得られ、§E20.39 補題 4.2 (2)によりK[x]K[x]に属する。有理数ccに対して各qi(c)q_i(c)はKKの四則演算で得られ、その符号は命題 1.3 (3)により判定されるので、V(c)V(c)とχh(c)\chi_h(c)が得られる。

(3)は、§E20.39 補題 3.2 (1)と§E20.39 定理 4.3 (3)から従う。▨

命題 6.2.KKを命題 6.1の体とし、h=∑i=0ncixi∈K[x]h=\sum_{i=0}^nc_ix^i\in K[x]がn≥1n\ge1とcn≠0c_n\ne0を満たすとする。0≤i<n0\le i<nについて∣ci/cn∣|c_i/c_n|の表示を(pi,ai,bi)(p_i,a_i,b_i)とし、B:=1+max⁡{0,b0,…,bn−1}B:=1+\max\{0,b_0,\ldots,b_{n-1}\}と置く。BBは有理数であり、hhの実根はすべて(−B,B)(-B,B)に属し、∣x∣≥B|x|\ge Bを満たす任意の実数xxに対してh(x)≠0h(x)\ne0かつsgn⁡h(x)=sgn⁡(cnxn)\operatorname{sgn}h(x)=\operatorname{sgn}(c_nx^n)である。

証明.∣ci/cn∣|c_i/c_n|はci/cnc_i/c_nまたは−ci/cn-c_i/c_nであり、命題 6.1 (2)と命題 1.3 (3)によりその表示が得られる。∣ci/cn∣∈(ai,bi)|c_i/c_n|\in(a_i,b_i)であるから、§E20.39 命題 2.1 (2)のM=max⁡i<n∣ci/cn∣M=\max_{i<n}|c_i/c_n|はM<B−1M<B-1を満たし、B≥1+MB\ge1+Mである。∣x∣≥B|x|\ge Bを満たす実数xxに§E20.39 命題 2.1 (2)を適用すると、h(x)≠0h(x)\ne0かつsgn⁡h(x)=sgn⁡(cnxn)\operatorname{sgn}h(x)=\operatorname{sgn}(c_nx^n)である。▨

定義 6.3.KKを命題 6.1の体とし、q∈K[x]q\in K[x]を平方自由、d:=deg⁡qd:=\deg q、VVをqqの Sturm 列から定めたものとする。

  1. 有理数a<ba<bに対して、0≤j≤d0\le j\le dについてsj:=a+(b−a)(1/2+j/(4(d+1)))s_j:=a+(b-a)\bigl(1/2+j/(4(d+1))\bigr)と置く。§E20.39 命題 2.1 (1)によりqqの実根は高々dd個であるから、q(sj)≠0q(s_j)\ne0を満たすjjが存在する。そのような最小のjjに対するsjs_jをσq(a,b)\sigma_q(a,b)と書く。
  2. h=qh=qについて命題 6.2のBBを取る。有理数を端点とする開区間の有限列LL、CCを次のように更新する。初めにL:=((−B,B))L:=\bigl((-B,B)\bigr)とし、CCを空列とする。LLが空でない間、LLの項(a,b)(a,b)を一つ選んでLLから除き、ν:=V(a)−V(b)\nu:=V(a)-V(b)を計算する。ν=0\nu=0ならば何も加えず、ν=1\nu=1ならば(a,b)(a,b)をCCに加え、ν≥2\nu\ge2ならばs:=σq(a,b)s:=\sigma_q(a,b)として(a,s)(a,s)と(s,b)(s,b)をLLに加える。LLが空になった時点で停止する。
  3. 有理数a<ba<bがq(a)q(b)≠0q(a)q(b)\ne0とV(a)−V(b)=1V(a)-V(b)=1を満たすとする。(a0,b0):=(a,b)(a_0,b_0):=(a,b)と置き、(ak,bk)(a_k,b_k)が定まったときs:=σq(ak,bk)s:=\sigma_q(a_k,b_k)として、V(ak)−V(s)=1V(a_k)-V(s)=1ならば(ak+1,bk+1):=(ak,s)(a_{k+1},b_{k+1}):=(a_k,s)、そうでなければ(ak+1,bk+1):=(s,bk)(a_{k+1},b_{k+1}):=(s,b_k)と置く。(ak,bk)k∈N≥0(a_k,b_k)_{k\in\N}をqqによる(a,b)(a,b)の 縮小列 (shrinking sequence) という。有理数τ>0\tau>0に対して、a<aka<a_k、bk<bb_k<b、bk−ak≤τb_k-a_k\le\tauを満たす最初の(ak,bk)(a_k,b_k)を、幅τ\tauの出力という。

定理 6.4.定義 6.3の記号の下で、qqの実根の集合をZZとする。

  1. 有理数a<ba<bに対して、s:=σq(a,b)s:=\sigma_q(a,b)はq(s)≠0q(s)\ne0とa<s<ba<s<bを満たし、s−as-aとb−sb-sはいずれも3(b−a)/43(b-a)/4以下である。
  2. 定義 6.3 (2)は有限回の更新で停止する。停止したとき、CCの区間は互いに交わらず、端点はqqの根でない有理数であり、各区間はqqの実根をちょうど一つ含み、ZZの各元はCCのある区間に属する。
  3. 定義 6.3 (3)の縮小列について、(a,b)(a,b)に属するqqの実根をξ\xiとする。任意のkkについて、q(ak)q(bk)≠0q(a_k)q(b_k)\ne0であり、(ak,bk)(a_k,b_k)に属するqqの実根はξ\xiだけであり、[ak+1,bk+1]⊂[ak,bk][a_{k+1},b_{k+1}]\subset[a_k,b_k]かつbk−ak≤(3/4)k(b−a)b_k-a_k\le(3/4)^k(b-a)であり、任意の実数ε>0\varepsilon>0に対してbk−ak<εb_k-a_k<\varepsilonを満たすkkが存在する。任意の有理数τ>0\tau>0に対して幅τ\tauの出力(c′,d′)(c',d')が存在し、[c′,d′]⊂(a,b)[c',d']\subset(a,b)である。
  4. τ>0\tau>0を有理数とし、(2)のCCの各区間に対する幅τ\tauの出力を(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)(1≤ℓ≤t1\le\ell\le t)とする。閉区間[cℓ,dℓ][c_\ell,d_\ell]は互いに交わらず、q(cℓ)q(dℓ)≠0q(c_\ell)q(d_\ell)\ne0かつdℓ−cℓ≤τd_\ell-c_\ell\le\tauであり、各(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)はqqの実根をちょうど一つ含み、ZZの各元はある(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)に属する。

これらの手続きは命題 6.1 (2)の計算の有限回で終わる。

証明.

主張 6.4.1. 任意の実数ε>0\varepsilon>0に対して、(3/4)k<ε(3/4)^k<\varepsilonを満たすk∈N≥0k\in\Nが存在する。

証明.§D1.4 命題 2.1によりj>1/εj>1/\varepsilonを満たす正の整数jjが存在する。(3/4)2=9/16<1/2(3/4)^2=9/16<1/2であり2j>j2^j>jであるから、(3/4)2j<2−j<1/j<ε(3/4)^{2j}<2^{-j}<1/j<\varepsilonである。▨

(1)を示す。0≤j≤d0\le j\le dに対して0≤j/(4(d+1))<1/40\le j/(4(d+1))<1/4であるから、a+(b−a)/2≤s<a+3(b−a)/4a+(b-a)/2\le s<a+3(b-a)/4である。したがってs−a<3(b−a)/4s-a<3(b-a)/4かつb−s≤(b−a)/2b-s\le(b-a)/2である。q(s)≠0q(s)\ne0はσq\sigma_qの定義による。

(2)を示す。

主張 6.4.2. 初めの状態と各更新の後で、LLとCCに現れる区間は(−B,B)(-B,B)に含まれ、互いに交わらず、端点はqqの根でない有理数である。CCの各区間はqqの実根をちょうど一つ含む。ZZはLLとCCの区間の和集合に含まれる。

証明. 初めの状態では命題 6.2により主張が成り立つ。更新の前に主張が成り立つとし、LLから除いた区間を(a,b)(a,b)とすると、命題 6.1 (3)によりν=Nq((a,b))\nu=N_q((a,b))である。ν=0\nu=0ならばZ∩(a,b)=∅Z\cap(a,b)=\emptysetであり、ν=1\nu=1ならばCCに加えた区間は実根をちょうど一つ含む。ν≥2\nu\ge2ならば、(1)によりssはqqの根でない(a,b)(a,b)の点であるから、Z∩(a,b)⊂(a,s)∪(s,b)Z\cap(a,b)\subset(a,s)\cup(s,b)であり、(a,s)(a,s)と(s,b)(s,b)は互いに交わらず(a,b)(a,b)に含まれる。いずれの場合も主張は更新の後で成り立つ。▨

(−B,B)(-B,B)の深さを00とし、(a,b)(a,b)を分けて加える二つの区間の深さを(a,b)(a,b)の深さに11を加えたものとする。(1)により、深さkkの区間の幅は(3/4)k⋅2B(3/4)^k\cdot2B以下である。ZZの元が高々一つならば、最初の更新でν≤1\nu\le1となり手続きは停止する。ZZの元が二つ以上ならば、§E20.39 命題 2.1 (1)によりZZは有限であるから、相異なる二元の距離の最小値η>0\eta>0が存在する。主張 6.4.1により(3/4)k0⋅2B<η(3/4)^{k_0}\cdot2B<\etaを満たすk0k_0が存在し、深さがk0k_0以上の区間はZZの元を二つ含まないので分けられない。したがってLLに加えられる区間の深さはk0k_0以下であり、深さk+1k+1の区間は深さkkの区間を分けるごとに二つ加えられ、各区間はLLから一度だけ除かれるので、更新の回数は2k0+1−12^{k_0+1}-1以下である。停止したときLLは空であるから、主張 6.4.2により(2)の停止時の性質が成り立つ。

(3)を示す。(ak,bk)(a_k,b_k)がq(ak)q(bk)≠0q(a_k)q(b_k)\ne0を満たし実根ξ\xiだけを含むとし、s:=σq(ak,bk)s:=\sigma_q(a_k,b_k)と置く。q(s)≠0q(s)\ne0であるから(ak,s)(a_k,s)と(s,bk)(s,b_k)の一方だけがξ\xiを含み、命題 6.1 (3)によりV(ak)−V(s)=Nq((ak,s))∈{0,1}V(a_k)-V(s)=N_q((a_k,s))\in\{0,1\}である。したがって(ak+1,bk+1)(a_{k+1},b_{k+1})はξ\xiだけを含み、端点でqqは零にならず、[ak+1,bk+1]⊂[ak,bk][a_{k+1},b_{k+1}]\subset[a_k,b_k]であり、(1)によりbk+1−ak+1≤34(bk−ak)b_{k+1}-a_{k+1}\le\frac34(b_k-a_k)である。kkに関する帰納法により前半の四つの性質が成り立ち、主張 6.4.1によりbk−akb_k-a_kはε\varepsilonより小さくなる。η:=min⁡{ξ−a, b−ξ}>0\eta:=\min\{\xi-a,\ b-\xi\}>0と置き、主張 6.4.1により(3/4)k(b−a)<min⁡{η,τ}(3/4)^k(b-a)<\min\{\eta,\tau\}を満たすkkを取る。ξ∈(ak,bk)\xi\in(a_k,b_k)とbk−ak<ηb_k-a_k<\etaからak>ξ−η≥aa_k>\xi-\eta\ge aかつbk<ξ+η≤bb_k<\xi+\eta\le bであり、bk−ak<τb_k-a_k<\tauであるから、このkkで幅τ\tauの出力の条件が満たされる。出力(c′,d′)(c',d')はa<c′a<c'とd′<bd'<bを満たすので、[c′,d′]⊂(a,b)[c',d']\subset(a,b)である。

(4)を示す。(3)により、各[cℓ,dℓ][c_\ell,d_\ell]はCCの対応する区間に含まれ、その区間の実根だけを含む。(2)によりCCの区間は互いに交わらずZZを覆うので、主張が成り立つ。

各段の計算は、有理数におけるVVとqqの値と有理数の比較であり、命題 6.1 (2)により得られる。▨

定義 6.5.KKを命題 6.1の体とする。h∈K[x]h\in K[x]が平方自由であり、有理数c<dc<dがh(c)h(d)≠0h(c)h(d)\ne0を満たし、(c,d)(c,d)がhhの実根をちょうど一つ含むとき、その実根をβ\betaとして、(h,c,d)(h,c,d)をβ\betaの KK上の表示 (representation over K) という。

命題 6.6.KKを命題 6.1の体とし、h∈K[x]h\in K[x]を零でない多項式とする。hhの任意の実根β\betaは実代数的数である。hhが平方自由ならば、定理 6.4 (4)の各(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)について(h,cℓ,dℓ)(h,c_\ell,d_\ell)はKK上の表示であり、hhの各実根はそのいずれかによって表される。

証明.β\betaは零でないh∈K[x]h\in K[x]の根であるからKK上代数的であり、§E8.2 定理 3.1により[K(β):K][K(\beta):K]は有限であるので、§E8.2 命題 4.1によりK(β)/KK(\beta)/Kは代数拡大である。命題 6.1 (1)によりK/QK/\Qは代数拡大であるから、§E8.2 定理 5.1をQ⊆K⊆K(β)\Q\subseteq K\subseteq K(\beta)に適用して、β\betaはQ\Q上代数的である。後半は定理 6.4 (4)による。▨

例 6.7.K:=Q(2)K:=\Q(\sqrt2)とし、例 5.4の表示(x2−2,1,2)(x^2-2,1,2)で2\sqrt2を与える。h:=x2−2∈K[x]h:=x^2-\sqrt2\in K[x]と置くとh′=2xh'=2xであり、hhとh′h'のモニック最大公約元は2x2xを割り切るので11またはxxであって、h(0)=−2≠0h(0)=-\sqrt2\ne0から11である。したがってhhは平方自由である。命題 1.3 (3)により1<2<41<\sqrt2<4であるからh(1)=1−2<0<4−2=h(2)h(1)=1-\sqrt2<0<4-\sqrt2=h(2)であり、§E20.39 補題 1.4によりhhは(1,2)(1,2)に実根β\betaをもつ。hhの実根はx2=2x^2=\sqrt2の解であり±β\pm\betaに限られるので、(h,1,2)(h,1,2)はβ\betaのKK上の表示である。

β\betaはKKに属さない。実際、2=r/s\sqrt2=r/sを満たす互いに素な整数r,sr,sがあればr2=2s2r^2=2s^2からrrは偶数であり、r=2r′r=2r'と書くとs2=2r′2s^2=2r'^2からssも偶数となって、r,sr,sが互いに素であることに反するので、2\sqrt2は有理数でない。次数22の可約多項式は一次因子をもつのでx2−2x^2-2はQ\Q上既約であり、§E8.2 定理 3.1によりKKの元は有理数u,vu,vによりu+v2u+v\sqrt2と書くことができる。β=u+v2\beta=u+v\sqrt2ならば2=β2=u2+2v2+2uv2\sqrt2=\beta^2=u^2+2v^2+2uv\sqrt2であり、2\sqrt2が有理数でないことから2uv=12uv=1かつu2+2v2=0u^2+2v^2=0である。後者からu=v=0u=v=0となり、2uv=12uv=1に反する。したがってβ\betaは命題 6.1の係数として扱われるKKの元ではなく、KK上の表示(h,1,2)(h,1,2)によって与えられる。

7 根における符号と符号表

命題 7.1.KKを命題 6.1の体、(h,c,d)(h,c,d)をβ\betaのKK上の表示とし、g∈K[x]g\in K[x]とする。

  1. g=0g=0ならばg(β)=0g(\beta)=0である。g≠0g\ne0とし、hhとggのモニック最大公約元をDDとする。g(β)=0g(\beta)=0であることは、DDの次数が11以上であり、DDの Sturm 列から定めたVDV_DについてVD(c)−VD(d)=1V_D(c)-V_D(d)=1であることと同値である。
  2. g(β)≠0g(\beta)\ne0とし、g=∑i=0rgixig=\sum_{i=0}^rg_ix^iと書く。各iiについて、gig_iが有理数として与えられているならば[ai,k,bi,k]:=[gi,gi][a_{i,k},b_{i,k}]:=[g_i,g_i]と置き、そうでなければgig_iの表示の精密化列を(ai,k,bi,k)k∈N≥0(a_{i,k},b_{i,k})_{k\in\N}とする。(ck,dk)k∈N≥0(c_k,d_k)_{k\in\N}をhhによる(c,d)(c,d)の縮小列とする。r+2r+2変数の式をE(r):=ξr+2E^{(r)}:=\xi_{r+2}、0≤i<r0\le i<rについてE(i):=E(i+1)⋅ξ1+ξi+2E^{(i)}:=E^{(i+1)}\cdot\xi_1+\xi_{i+2}で定めてEg:=E(0)E_g:=E^{(0)}と置き、X(k):=[ck,dk]×∏i=0r[ai,k,bi,k]X^{(k)}:=[c_k,d_k]\times\prod_{i=0}^r[a_{i,k},b_{i,k}]と置く。0∉Eg(X(k))0\notin E_g(X^{(k)})を満たすkkが存在し、そのような任意のkkについてg(β)g(\beta)はinf⁡Eg(X(k))\inf E_g(X^{(k)})と同符号である。

証明.(1)を示す。零多項式の値は00であるから、g=0g=0ならばg(β)=0g(\beta)=0である。g≠0g\ne0とする。命題 6.1 (2)によりD=uh+vgD=uh+vgを満たすu,v∈K[x]u,v\in K[x]が存在する。g(β)=0g(\beta)=0ならばD(β)=u(β)h(β)+v(β)g(β)=0D(\beta)=u(\beta)h(\beta)+v(\beta)g(\beta)=0であり、DDはモニックであるから次数が11以上である。DDの次数が11以上ならば、補題 1.2 (1)によりDDは平方自由でその実根はhhの実根であり、h(c)h(d)≠0h(c)h(d)\ne0からD(c)D(d)≠0D(c)D(d)\ne0であるので、命題 6.1 (3)によりVD(c)−VD(d)=ND((c,d))V_D(c)-V_D(d)=N_D((c,d))である。(c,d)(c,d)に属するhhの実根はβ\betaだけであるから、ND((c,d))=1N_D((c,d))=1であることはD(β)=0D(\beta)=0と同値である。D(β)=0D(\beta)=0ならば、DDはggを割り切るのでg(β)=0g(\beta)=0である。したがってg(β)=0g(\beta)=0であることはD(β)=0D(\beta)=0であることと同値であり、後者はdeg⁡D≥1\deg D\ge1かつVD(c)−VD(d)=1V_D(c)-V_D(d)=1であることと同値である。

(2)を示す。y:=(β,g0,…,gr)y:=(\beta,g_0,\ldots,g_r)と置くと、y1=βy_1=\beta、yi+2=giy_{i+2}=g_iであるからfE(r)(y)=grf_{E^{(r)}}(y)=g_rであり、0≤i<r0\le i<rについてfE(i)(y)=fE(i+1)(y)β+gif_{E^{(i)}}(y)=f_{E^{(i+1)}}(y)\beta+g_iである。iiに関する下向きの帰納法によりfE(i)(y)=∑j=irgjβj−if_{E^{(i)}}(y)=\sum_{j=i}^rg_j\beta^{j-i}であるから、fEg(y)=g(β)≠0f_{E_g}(y)=g(\beta)\ne0である。定理 6.4 (3)と命題 1.3 (2)により、y∈X(k)⊂X(0)y\in X^{(k)}\subset X^{(0)}であり、任意の実数ε>0\varepsilon>0に対してX(k)X^{(k)}の各辺の幅がε\varepsilonより小さくなるkkが存在する。EgE_gは除算を含まないのでEg(X(0))E_g(X^{(0)})は定まり、命題 3.3により主張が成り立つ。▨

例 7.2.例 6.7のK=Q(2)K=\Q(\sqrt2)、h=x2−2h=x^2-\sqrt2とβ\betaのKK上の表示(h,1,2)(h,1,2)を用いる。g=hg=hならばD=hD=hであり、(1,2)(1,2)に属するhhの実根はβ\betaだけであるからVD(1)−VD(2)=1V_D(1)-V_D(2)=1であり、命題 7.1 (1)によりg(β)=0g(\beta)=0である。g=1g=1ならばD=1D=1でありg(β)≠0g(\beta)\ne0であって、Eg=ξ2E_g=\xi_2に対してEg(X(0))=[1,1]E_g(X^{(0)})=[1,1]であるからg(β)>0g(\beta)>0である。

g=x−1g=x-1とする。h(1)=1−2≠0h(1)=1-\sqrt2\ne0であるから§E6.28 定理 4.2によりx−1x-1はhhを割り切らず、D=1D=1であるのでg(β)≠0g(\beta)\ne0である。hhによる(1,2)(1,2)の縮小列は、d=2d=2としてσh(1,2)=3/2\sigma_h(1,2)=3/2、σh(1,3/2)=5/4\sigma_h(1,3/2)=5/4、σh(1,5/4)=9/8\sigma_h(1,5/4)=9/8であり、2<25/16\sqrt2<25/16と81/64<281/64<\sqrt2からβ∈(1,3/2)\beta\in(1,3/2)、β∈(1,5/4)\beta\in(1,5/4)、β∈(9/8,5/4)\beta\in(9/8,5/4)となるので、(c1,d1)=(1,3/2)(c_1,d_1)=(1,3/2)、(c2,d2)=(1,5/4)(c_2,d_2)=(1,5/4)、(c3,d3)=(9/8,5/4)(c_3,d_3)=(9/8,5/4)である。係数g1=1g_1=1、g0=−1g_0=-1は有理数として与えられ、Eg=ξ3⋅ξ1+ξ2E_g=\xi_3\cdot\xi_1+\xi_2についてEg(X(k))=[ck−1,dk−1]E_g(X^{(k)})=[c_k-1,d_k-1]である。これはk=0,1,2k=0,1,2で00を含み、k=3k=3で[1/8,1/4][1/8,1/4]となるので、g(β)=β−1>0g(\beta)=\beta-1>0である。

定理 7.3.KKを命題 6.1の体とし、g1,…,gr∈K[x]g_1,\ldots,g_r\in K[x](r≥1r\ge1)とする。gj=0g_j=0を満たすjjの集合をJ0J_0、gjg_jが零でない定数であるjjの集合をJcJ_c、deg⁡gj≥1\deg g_j\ge1を満たすjjの集合をJ+J_+とする。J+=∅J_+=\emptysetならばt:=0t:=0と置く。J+≠∅J_+\ne\emptysetならば、∏j∈J+gj\prod_{j\in J_+}g_jに補題 1.2 (2)を適用して得る平方自由なHHを取り、t∈N≥0t\in\Nと有理数cℓ<dℓc_\ell<d_\ell(1≤ℓ≤t1\le\ell\le t)がH(cℓ)H(dℓ)≠0H(c_\ell)H(d_\ell)\ne0を満たし、閉区間[cℓ,dℓ][c_\ell,d_\ell]は互いに交わらず、各(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)はHHの実根をちょうど一つ含み、HHの実根はすべていずれかの(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)に属し、c1<⋯<ctc_1<\cdots<c_tであるとする(定理 6.4 (4)の出力を並べ替えたものはこれを満たす)。(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)に属するHHの実根をβℓ\beta_\ellとする。t=0t=0ならばR\Rを唯一の区画とし、その標本点を00とする。t≥1t\ge1ならば、開区間I0:=(−∞,β1)I_0:=(-\infty,\beta_1)、Iℓ:=(βℓ,βℓ+1)I_\ell:=(\beta_\ell,\beta_{\ell+1})(1≤ℓ<t1\le\ell<t)、It:=(βt,∞)I_t:=(\beta_t,\infty)と一点集合{βℓ}\{\beta_\ell\}(1≤ℓ≤t1\le\ell\le t)を区画とし、I0I_0の標本点をc1c_1、IℓI_\ell(1≤ℓ≤t1\le\ell\le t)の標本点をdℓd_\ellとする。

  1. t≥1t\ge1ならばβℓ<dℓ<cℓ+1<βℓ+1\beta_\ell<d_\ell<c_{\ell+1}<\beta_{\ell+1}(1≤ℓ<t1\le\ell<t)であり、区画はR\Rの分割をなし、各標本点はその区画に属する。⋃j∈J+{x∈R∣gj(x)=0}={β1,…,βt}\bigcup_{j\in J_+}\{x\in\R\mid g_j(x)=0\}=\{\beta_1,\ldots,\beta_t\}である。すなわち、各j∈J+j\in J_+についてgjg_jの実根はいずれかのβℓ\beta_\ellに等しく、各βℓ\beta_\ellはあるj∈J+j\in J_+についてgjg_jの実根である。
  2. j∈J0j\in J_0ならばgjg_jはR\R上で00であり、j∈Jcj\in J_cならばgjg_jはR\R上でその定数の符号をとる。j∈J+j\in J_+とし、IIを{βℓ}\{\beta_\ell\}でない区画、ssをその標本点とすると、任意のx∈Ix\in Iに対してsgn⁡gj(x)=sgn⁡gj(s)\operatorname{sgn}g_j(x)=\operatorname{sgn}g_j(s)である。
  3. 1≤ℓ≤t1\le\ell\le tに対して(H,cℓ,dℓ)(H,c_\ell,d_\ell)はβℓ\beta_\ellのKK上の表示であり、各gj(βℓ)g_j(\beta_\ell)の符号は命題 7.1により定まる。

区画、標本点、各区画におけるg1,…,grg_1,\ldots,g_rの符号は、命題 6.1 (2)、定理 6.4、命題 7.1の計算の有限回で得られる。

証明.(1)を示す。ℓ<ℓ′\ell<\ell'ならばcℓ<cℓ′c_\ell<c_{\ell'}であり、[cℓ,dℓ][c_\ell,d_\ell]と[cℓ′,dℓ′][c_{\ell'},d_{\ell'}]は交わらないのでdℓ<cℓ′d_\ell<c_{\ell'}である。したがってβℓ<dℓ<cℓ+1<βℓ+1\beta_\ell<d_\ell<c_{\ell+1}<\beta_{\ell+1}であり、β1<⋯<βt\beta_1<\cdots<\beta_tであるから区画はR\Rの分割をなし、c1<β1c_1<\beta_1とβt<dt\beta_t<d_tから各標本点はその区画に属する。補題 1.2 (2)により、実数xxについてH(x)=0H(x)=0であることは∏j∈J+gj(x)=0\prod_{j\in J_+}g_j(x)=0であること、すなわちあるj∈J+j\in J_+でgj(x)=0g_j(x)=0であることと同値である。HHの実根の全体は{β1,…,βt}\{\beta_1,\ldots,\beta_t\}であるから、⋃j∈J+{x∈R∣gj(x)=0}={β1,…,βt}\bigcup_{j\in J_+}\{x\in\R\mid g_j(x)=0\}=\{\beta_1,\ldots,\beta_t\}である。J+=∅J_+=\emptysetならばこの和集合は空でありt=0t=0である。t=0t=0ならば区画はR\Rだけであり、標本点00はこれに属する。

(2)を示す。j∈J0∪Jcj\in J_0\cup J_cならば、gjg_jは定数多項式であるからR\Rの各点でその定数に等しい。j∈J+j\in J_+とし、IIを{βℓ}\{\beta_\ell\}でない区画とする。(1)によりIIはgjg_jの実根を含まないので、§E20.39 補題 1.4を連続関数gjg_jのIIへの制限に適用すると、任意のx∈Ix\in Iに対してgj(x)gj(s)>0g_j(x)g_j(s)>0である。

(3)は、HHが平方自由であることと(cℓ,dℓ)(c_\ell,d_\ell)の仮定から従う。最後の主張の標本点での符号は、gj(s)∈Kg_j(s)\in Kと命題 1.3 (3)により得られる。▨

例 7.4.K=QK=\Q、g1=0g_1=0、g2=−3g_2=-3、g3=(x−1)2g_3=(x-1)^2、g4=x2−1g_4=x^2-1とする。J0={1}J_0=\{1\}、Jc={2}J_c=\{2\}、J+={3,4}J_+=\{3,4\}であり、g3g4=(x−1)3(x+1)g_3g_4=(x-1)^3(x+1)の平方自由部分はH=(x−1)(x+1)=x2−1H=(x-1)(x+1)=x^2-1である。(c1,d1)=(−3/2,−1/2)(c_1,d_1)=(-3/2,-1/2)、(c2,d2)=(1/2,3/2)(c_2,d_2)=(1/2,3/2)は定理 7.3の条件を満たし、β1=−1\beta_1=-1、β2=1\beta_2=1である。標本点−3/2-3/2、−1/2-1/2、3/23/2における(g3,g4)(g_3,g_4)の値は(25/4,5/4)(25/4,5/4)、(9/4,−3/4)(9/4,-3/4)、(1/4,5/4)(1/4,5/4)である。HHとg4g_4のモニック最大公約元はHHであり、(−3/2,−1/2)(-3/2,-1/2)と(1/2,3/2)(1/2,3/2)はそれぞれHHの実根を一つ含むので、g4(β1)=g4(β2)=0g_4(\beta_1)=g_4(\beta_2)=0である。HHとg3g_3のモニック最大公約元はx−1x-1であり、その実根11は(1/2,3/2)(1/2,3/2)に属し(−3/2,−1/2)(-3/2,-1/2)に属さないので、g3(β2)=0g_3(\beta_2)=0、g3(β1)≠0g_3(\beta_1)\ne0である。Eg3=(ξ4⋅ξ1+ξ3)⋅ξ1+ξ2E_{g_3}=(\xi_4\cdot\xi_1+\xi_3)\cdot\xi_1+\xi_2のξ1,ξ2,ξ3,ξ4\xi_1,\xi_2,\xi_3,\xi_4に[−3/2,−1/2][-3/2,-1/2]、[1,1][1,1]、[−2,−2][-2,-2]、[1,1][1,1]を入れると[9/4,25/4][9/4,25/4]を得るので、命題 7.1 (2)によりg3(β1)>0g_3(\beta_1)>0である。したがって、区画(−∞,−1)(-\infty,-1)、{−1}\{-1\}、(−1,1)(-1,1)、{1}\{1\}、(1,∞)(1,\infty)の順に、g1g_1の符号はすべて00、g2g_2の符号はすべて負、g3g_3の符号は正、正、正、00、正、g4g_4の符号は正、00、負、00、正である。g3g_3の重根11はg4g_4との共有根でもあり、HHの単根β2\beta_2として一つの区画を与える。

命題 7.5.p∈Q[t]p\in\Q[t]を平方自由とし、有理数a<ba<bについて(a,b)(a,b)をppの分離区間、α\alphaを(a,b)(a,b)に属するppの実根とする。任意の実数ttに対して次が成り立つ。

t=α  ⟺  a<t<b ∧ p(t)=0,t<α  ⟺  t≤a ∨ (a<t<b ∧ p(t)p(a)>0).\begin{aligned} t=\alpha&\iff a<t<b\ \wedge\ p(t)=0,\\ t<\alpha&\iff t\le a\ \vee\ \bigl(a<t<b\ \wedge\ p(t)p(a)>0\bigr). \end{aligned}

したがって、t>αt>\alpha、t≤αt\le\alpha、t≥αt\ge\alphaは、この二つの右辺の否定と選言によって有理係数多項式の符号条件で表される。

証明.§E20.39 補題 5.4によりp(a)p(b)<0p(a)p(b)<0である。α\alphaは(a,b)(a,b)に属するppの唯一の実根でありp(a)p(b)≠0p(a)p(b)\ne0であるから、ppは[a,α)[a,\alpha)上と(α,b](\alpha,b]上に零点をもたない。§E20.39 補題 1.4により、a<t<αa<t<\alphaならばp(t)p(a)>0p(t)p(a)>0であり、α<t<b\alpha<t<bならばp(t)p(b)>0p(t)p(b)>0であるから、p(t)p(a)⋅p(b)2=p(t)p(b)⋅p(a)p(b)<0p(t)p(a)\cdot p(b)^2=p(t)p(b)\cdot p(a)p(b)<0よりp(t)p(a)<0p(t)p(a)<0である。

t=αt=\alphaならばa<t<ba<t<bかつp(t)=0p(t)=0であり、逆にa<t<ba<t<bかつp(t)=0p(t)=0ならばttは(a,b)(a,b)に属するppの実根であるからt=αt=\alphaである。t<αt<\alphaならば、t≤at\le aであるか、a<t<αa<t<\alphaであってp(t)p(a)>0p(t)p(a)>0である。逆にt≤at\le aならばt<αt<\alphaである。a<t<ba<t<bかつp(t)p(a)>0p(t)p(a)>0ならば、p(α)=0p(\alpha)=0からt≠αt\ne\alphaであり、α<t<b\alpha<t<bではp(t)p(a)<0p(t)p(a)<0であるから、t<αt<\alphaである。t>αt>\alphaはt=αt=\alphaでもt<αt<\alphaでもないことと、t≤αt\le\alphaはt=αt=\alphaまたはt<αt<\alphaであることと、t≥αt\ge\alphaはt<αt<\alphaでないことと同値である。▨

8 演習

問題 8.1.補題 4.2の証明を完成させよ。

解答.

補題 4.2 (2)を示す。M⊤M^\topの(i,j)(i,j)成分はmjim_{ji}であるから、det⁡M⊤=∑σsgn⁡(σ)∏imσ(i)i\det M^\top=\sum_\sigma\operatorname{sgn}(\sigma)\prod_im_{\sigma(i)i}である。AAは可換であるから、各項でk=σ(i)k=\sigma(i)と置き換えると∏imσ(i)i=∏kmkσ−1(k)\prod_im_{\sigma(i)i}=\prod_km_{k\sigma^{-1}(k)}である。§D3.4 命題 3.3 (2)によりsgn⁡(σ−1)=sgn⁡(σ)\operatorname{sgn}(\sigma^{-1})=\operatorname{sgn}(\sigma)であり、σ↦σ−1\sigma\mapsto\sigma^{-1}はSnS_nの全単射であるから、det⁡M⊤=det⁡M\det M^\top=\det Mである。

補題 4.2 (3)を示す。det⁡M\det Mの各項は第pp行の成分をちょうど一つ因子にもつので、det⁡M\det Mは第pp行についてAA-線形である。p≠qp\ne qとし、τ:=(p  q)\tau:=(p\;q)と置く。第pp行と第qq行を入れ替えた行列をM′M'とすると、det⁡M′=∑σsgn⁡(σ)∏imτ(i)σ(i)=∑σsgn⁡(σ)∏jmj στ(j)\det M'=\sum_\sigma\operatorname{sgn}(\sigma)\prod_im_{\tau(i)\sigma(i)}=\sum_\sigma\operatorname{sgn}(\sigma)\prod_jm_{j\,\sigma\tau(j)}である。ρ:=στ\rho:=\sigma\tauと置くと、σ↦ρ\sigma\mapsto\rhoはSnS_nの全単射であり、§D3.4 命題 3.3 (2)と§D3.4 命題 3.3 (3)によりsgn⁡(σ)=sgn⁡(ρτ)=−sgn⁡(ρ)\operatorname{sgn}(\sigma)=\operatorname{sgn}(\rho\tau)=-\operatorname{sgn}(\rho)であるから、det⁡M′=−det⁡M\det M'=-\det Mである。第pp行と第qq行が等しいとき、σ\sigmaとστ\sigma\tauは相異なり、∏imi στ(i)=∏imiσ(i)\prod_im_{i\,\sigma\tau(i)}=\prod_im_{i\sigma(i)}かつsgn⁡(στ)=−sgn⁡(σ)\operatorname{sgn}(\sigma\tau)=-\operatorname{sgn}(\sigma)であるから、SnS_nを対{σ,στ}\{\sigma,\sigma\tau\}に分けると各対の寄与の和は00であり、det⁡M=0\det M=0である。第pp行に第qq行のcc倍を加えた行列の行列式は、第pp行についての線形性により、det⁡M\det Mと、第pp行と第qq行がともに第qq行である行列の行列式のcc倍との和であり、後者は00である。列についての主張は、補題 4.2 (2)により転置した行列の行についての主張に帰着する。

補題 4.2 (4)を示す。σ≠id⁡\sigma\ne\idならば、∑iσ(i)=∑ii\sum_i\sigma(i)=\sum_iiであるからσ(i)<i\sigma(i)<iを満たすiiが存在し、その項は因子miσ(i)=0m_{i\sigma(i)}=0をもつ。したがってdet⁡M\det Mはσ=id⁡\sigma=\idの項m11⋯mnnm_{11}\cdots m_{nn}に等しい。▨

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