1 一般化逆関数
定義 1.1.μをR上の Borel 確率測度とし、F(x):=μ((−∞,x])(x∈R)と置く。Fは確率空間(R,B(R),μ)上の恒等写像の分布関数であるから、§E11.3 命題 2.2 (1)により非減少であり、§E11.3 命題 2.2 (3)によりlimx→−∞F(x)=0、limx→∞F(x)=1である。0<u<1とすると、u<1であるからF(x)≥uを満たすx∈Rが存在し、u>0であるからF(x0)<uを満たすx0∈Rが存在して、x≤x0ならばF(x)≤F(x0)<uである。したがって集合{x∈R∣F(x)≥u}は空でなく、下に有界である。
QF(u):=inf{x∈R∣F(x)≥u}(0<u<1)で定まる写像QF:(0,1)→RをFの 一般化逆関数 (generalized inverse) という。
定理 1.2.μをR上の Borel 確率測度、F(x):=μ((−∞,x])(x∈R)とし、QFをFの一般化逆関数とする。
- u∈(0,1)とx∈Rに対して、QF(u)≤xであることとu≤F(x)であることは同値である。特にF(QF(u))≥uである。
- QFは非減少であり、Borel 可測である。
- (Ω,F,P)を確率空間とし、Uを(0,1)に値をとり一様分布U[0,1]に従う確率変数とする。このときX:=QF(U)は確率変数であり、Xの分布はμである。
証明.u∈(0,1)とし、Su:={x∈R∣F(x)≥u}と置く。§E11.3 命題 2.2 (1)により、x∈Suかつx≤x′ならばx′∈Suである。
(1)を示す。u≤F(x)ならばx∈Suであるから、QF(u)=infSu≤xである。各n∈N≥1に対して、下限の定義によりyn<QF(u)+1/nを満たすyn∈Suが存在するから、QF(u)+1/n∈Suである。§E11.3 命題 2.2 (2)によりF(QF(u))=limn→∞F(QF(u)+1/n)≥uである。したがって、QF(u)≤xならばF(x)≥F(QF(u))≥uである。
(2)を示す。0<u≤v<1ならばSv⊂Suであるから、QF(u)≤QF(v)である。x∈Rに対して、(1)により
QF−1((−∞,x])={u∈(0,1)∣u≤F(x)}=(0,1)∩(0,F(x)]であり、右辺は区間であるから Borel 集合である。QF−1(B)が Borel 集合となるB⊂Rの全体は、逆像が補集合と可算和を保つことからシグマ加法族をなし、すべての左半直線を含む。§E9.1 命題 3.3により、このシグマ加法族はB(R)を含む。
(3)を示す。Uは可測であり、QFは Borel 可測であるから、X=QF∘Uは確率変数である。U[0,1]の密度を積分すると、0≤t≤1に対してP(U≤t)=tである。Uは(0,1)に値をとるから、(1)により各x∈Rに対して{X≤x}={U≤F(x)}であり、0≤F(x)≤1からP(X≤x)=F(x)=μ((−∞,x])である。§E11.3 定理 2.3によりXの分布はμである。▨
例 1.3.νを一様分布U[1,2]とし、μ:=21δ0+21ν、F(x):=μ((−∞,x])と置く。
F(x)=⎩⎨⎧01/2x/21(x<0),(0≤x<1),(1≤x<2),(x≥2)であり、Fは0で跳び、[0,1)で定数である。0<u≤1/2ならば、F(0)≥uでありx<0でF(x)=0<uであるから、QF(u)=0である。1/2<u<1ならば、F(x)≥uはx≥2uと同値であるから、QF(u)=2uである。μの原子0はQFが定数となる区間(0,1/2]に対応し、Fが定数である区間[0,1)はQFのu=1/2における跳び(値0から右極限1へ)に対応する。Fは連続でも狭義単調でもないので逆写像をもたないが、定理 1.2 (3)により、(0,1)に値をとりU[0,1]に従うUに対してQF(U)の分布はμであり、P(QF(U)=0)=P(U≤1/2)=1/2である。
命題 1.4.n∈N≥1とし、実数x1<⋯<xnとp1,…,pn≥0が∑j=1npj=1を満たすとする。c0:=0、cj:=∑i=1jpi(1≤j≤n)と置き、μ:=∑j=1npjδxj、F(x):=μ((−∞,x])とする。u∈(0,1)に対してJ(u):=min{j∈{1,…,n}∣cj≥u}と置く。
- u∈(0,1)に対してJ(u)は定まり、1≤j≤nについて、J(u)=jであることとcj−1<u≤cjであることは同値である。さらにQF(u)=xJ(u)である。
- (Ω,F,P)を確率空間とし、Uを(0,1)に値をとりU[0,1]に従う確率変数とすると、xJ(U)の分布はμであり、1≤j≤nに対してP(J(U)=j)=pjである。pj=0ならば、すべてのu∈(0,1)に対してJ(u)=jである。
- c1,…,cnはc1=p1、cj=cj−1+pj(2≤j≤n)によりn−1回の加算で計算される。u∈(0,1)に対し、j=1,2,…の順にcj≥uを判定して最初に成り立ったjを出力する手続きは、J(u)回の比較の後にJ(u)を出力する。特に比較の回数はn以下である。
- u∈(0,1)に対し、ℓ0:=0、h0:=nと置く。ht−ℓt≥2であるとき、mt:=⌊(ℓt+ht)/2⌋と置いて、cmt≥uならば(ℓt+1,ht+1):=(ℓt,mt)、cmt<uならば(ℓt+1,ht+1):=(mt,ht)と定める。この手続きは、比較cmt≥uを高々⌈log2n⌉回行った後にht−ℓt=1となって終わり、そのときのhtはJ(u)に等しい。
証明.(1)を示す。pj≥0であるからc0≤c1≤⋯≤cn=1であり、u<1からJ(u)は定まる。J(u)=jならば、cj≥uであり、j=1のときはc0=0<u、j≥2のときはJ(u)の最小性からcj−1<uである。逆にcj−1<u≤cjならば、i<jに対してci≤cj−1<uであるからJ(u)=jである。x∈Rに対して{i∣xi≤x}の元の個数をk(x)とすると、x1<⋯<xnからF(x)=ck(x)である。j:=J(u)とすると、F(xj)=cj≥uであるから、定理 1.2 (1)によりQF(u)≤xjである。x<xjならばk(x)≤j−1であるからF(x)≤cj−1<uであり、定理 1.2 (1)によりQF(u)>xである。したがってQF(u)=xjである。
(2)を示す。(1)によりxJ(U)=QF(U)であるから、定理 1.2 (3)によりxJ(U)の分布はμである。0≤t≤1に対してP(U≤t)=tであるから、P(J(U)=j)=P(cj−1<U≤cj)=cj−cj−1=pjである。pj=0ならばcj−1=cjであり、cj−1<u≤cjを満たすuは存在しない。
(3)を示す。加算はj=2,…,nの各段で一回ずつ行われる。(1)と列(cj)の非減少性により、j<J(u)ならばcj<uであり、cJ(u)≥uであるから、判定が最初に成り立つのはj=J(u)であり、そこまでの比較はJ(u)回である。
(4)の証明は演習とする(問題 5.2)。▨
例 1.5.n=3、(x1,x2,x3)=(0,1,2)、(p1,p2,p3)=(1/2,0,1/2)とすると、(c1,c2,c3)=(1/2,1/2,1)である。0<u≤1/2ならばJ(u)=1、1/2<u<1ならばJ(u)=3であり、Jは値2をとらない。u=1/2ではc1=c2=uであり、最小の添字1が選ばれてQF(1/2)=0=x1となる。命題 1.4 (4)の手続きではℓ0=0、h0=3、m0=1である。u≤1/2ならばc1≥uから(ℓ1,h1)=(0,1)となって1を出力し、u>1/2ならば(ℓ1,h1)=(1,3)、m1=2であり、c2=1/2<uから(ℓ2,h2)=(2,3)となって3を出力する。
2 独立な入力と棄却法
命題 2.1.(Ω,F,P)を確率空間、Iを空でない添字集合とし、部分シグマ加法族の族(Gi)i∈Iは相互独立であるとする。Sを空でない添字集合とし、(Js)s∈SをIの空でない有限部分集合からなる族であって、s=s′ならばJs∩Js′=∅を満たすものとする。
- Hs:=σ(⋃i∈JsGi)(s∈S)と置くと、(Hs)s∈Sは相互独立である。
- 各i∈Iに対してei∈N≥1と確率ベクトルWi:Ω→Reiが与えられ、Gi=σ(Wi):={Wi−1(B)∣B∈B(Rei)}であるとする。各s∈SについてJsの元をis,1,…,is,psと並べ、Es:=eis,1+⋯+eis,psと置き、ms∈N≥1と Borel 可測写像hs:REs→RmsをとってZs:=hs(Wis,1,…,Wis,ps)と置く。このとき(σ(Zs))s∈Sは相互独立である。
定理 2.2.d∈N≥1とし、f,g:Rd→[0,∞)を∫Rdf(x)dx=∫Rdg(x)dx=1を満たす Borel 可測関数、M>0を実数とし、すべてのx∈Rdに対してf(x)≤Mg(x)であるとする。g(x)>0ならばa(x):=f(x)/(Mg(x))、g(x)=0ならばa(x):=0と置く。確率空間(Ω,F,P)上の確率ベクトルYk:Ω→Rdと確率変数Vk:Ω→(0,1)(k∈N≥1)について、部分シグマ加法族の族σ(Y1),σ(V1),σ(Y2),σ(V2),…は相互独立であり、各Ykは密度gをもち、各VkはU[0,1]に従うとする。Ak:={Vk≤a(Yk)}、K(ω):={k∈N≥1∣ω∈Ak}と置く。s∈N≥1とω∈Ωに対して、K(ω)がs個以上の元をもつならば、Ts(ω)をK(ω)のs番目に小さい元とし、Xs(ω):=YTs(ω)(ω)と置く。K(ω)の元がs個未満ならば、Ts(ω):=s、Xs(ω):=0と置く。00=1と約束する。
- aは[0,1]に値をとる Borel 可測関数である。任意のk∈N≥1と Borel 集合B⊂Rdに対して
P({Yk∈B}∩Ak)=M1∫Bf(x)dx
が成り立つ。特にP(Ak)=1/Mであり、M≥1である。
- 各Tsは確率変数、各Xsは確率ベクトルである。r∈N≥1、整数1≤k1<⋯<krと Borel 集合B1,…,Br⊂Rdに対して
P(T1=k1,…,Tr=kr, X1∈B1,…,Xr∈Br)=(1−M1)kr−rM−rs=1∏r∫Bsf(x)dx
が成り立つ。K(ω)が無限集合となるωの全体は確率1の事象である。
- 各r∈N≥1に対してσ(X1),…,σ(Xr)は相互独立であり、各Xsは密度fをもつ。
- T1−1は幾何分布Geom(1/M)に従い、E[T1]=Mである。各r∈N≥1に対してE[Tr]=rMである。特に、(Yk,Vk)の生成とVk≤a(Yk)の判定からなる試行1回の費用が定数c≥0であるとき、最初のr個の出力を得るまでの費用cTrの期待値はcrMである。
証明.(1)を示す。{g>0}上でa=f/(Mg)は Borel 可測関数の商であり、{g=0}上でa=0であるから、aは Borel 可測である。g(x)>0ならばf(x)≤Mg(x)から0≤a(x)≤1である。g(x)=0ならば0≤f(x)≤Mg(x)=0であるから、すべてのx∈Rdで
a(x)g(x)=Mf(x)が成り立つ。Borel 集合の長方形の逆像{Yk∈B}∩{Vk∈C}は事象であるから、(Yk,Vk)はB(Rd)⊗B(R)に関して可測であり、その法則νはRd×R上の確率測度である。σ(Yk)とσ(Vk)の独立性から、Borel 集合B⊂Rd、C⊂Rに対してν(B×C)=μYk(B)μVk(C)であり、§E9.10 定理 5.1の一意性によりν=μYk⊗μVkである。写像(y,v)↦a(y)−vはB(Rd)⊗B(R)に関して可測であるから、D:={(y,v)∣y∈B, v≤a(y)}は可測である。§E9.11 定理 2.3を1Dに適用すると
P({Yk∈B}∩Ak)=ν(D)=∫Rd1B(y)P(Vk≤a(y))dμYk(y)=∫Rd1B(y)a(y)dμYk(y)である。ここで0≤a(y)≤1と、0≤t≤1に対するP(Vk≤t)=tを用いた。μYkは Lebesgue 測度に関して密度gをもつから、§E9.15 命題 4.3を非負関数1Baに適用すると、右辺は∫Ba(y)g(y)dy=M−1∫Bf(y)dyに等しい。B=RdとするとP(Ak)=1/Mであり、P(Ak)≤1からM≥1である。
(2)を示す。写像h:Rd+1→Rd+1をh(y,v):=(y,1[0,∞)(a(y)−v))で定めるとhは Borel 可測であり、Zk:=h(Yk,Vk)=(Yk,1Ak)である。命題 2.1 (2)を、添字(k,1)にYk、添字(k,2)にVkを対応させ、Jk:={(k,1),(k,2)}として適用すると、σ(Z1),σ(Z2),…は相互独立である。Borel 集合B⊂Rdに対して{Yk∈B}∩Ak=Zk−1(B×{1})とΩ∖Ak=Zk−1(Rd×{0})はσ(Zk)に属する。
r∈N≥1とし、整数の組κ=(k1,…,kr)で1≤k1<⋯<krを満たすものと Borel 集合B1,…,Br⊂Rdに対して
Eκ(B1,…,Br):=s=1⋂r({Yks∈Bs}∩Aks)∩1≤k≤krk∈/{k1,…,kr}⋂(Ω∖Ak)と置く。σ(Z1),…,σ(Zkr)の相互独立性と(1)により
P(Eκ(B1,…,Br))=(1−M1)kr−rM−rs=1∏r∫Bsf(x)dx(2.2.1) である。ω∈Eκ(Rd,…,Rd)であることは、K(ω)がr個以上の元をもち、その小さい方からr個がk1,…,krであることと同値である。したがってκを動かした事象Eκ(Rd,…,Rd)は互いに交わらず、その和集合は{ω∣K(ω) は r 個以上の元をもつ}=:Ωrであり、Ωrは事象である。Ωr上ではTsとXs(s≤r)はK(ω)の小さい方からr個の元で定まるから、
{T1=k1,…,Tr=kr, X1∈B1,…,Xr∈Br}∩Ωr=Eκ(B1,…,Br)(2.2.2) である。s∈N≥1、k∈N≥1と Borel 集合B⊂Rdに対して、{Ts=k}はks=kを満たす長さsの組κにわたるEκ(Rd,…,Rd)の有限和と、k=sの場合のΩ∖Ωsとの和であり、{Xs∈B}は長さsの組κにわたるEκ(Rd,…,Rd,B)の可算和と、0∈Bの場合のΩ∖Ωsとの和である。よってTsは確率変数、Xsは確率ベクトルである。
組κにg1:=k1、gs:=ks−ks−1(2≤s≤r)を対応させる写像は、長さrの組の全体からN≥1rへの全単射であり、kr−r=∑s=1r(gs−1)である。0≤1−1/M<1であるから、§E11.5 補題 1.1により∑g∈N≥1(1−1/M)g−1=Mであり、式 (2.2.1)をκについて加えると
κ∑P(Eκ(B1,…,Br))=s=1∏r(g∈N≥1∑(1−M1)g−1M1∫Bsf(x)dx)=s=1∏r∫Bsf(x)dx(2.2.3) である。B1=⋯=Br=RdとするとP(Ωr)=1である。したがって式 (2.2.2)と式 (2.2.1)から主張の等式を得る。K(ω)が無限集合となるωの全体は⋂r∈N≥1Ωrであり、その確率は1である。
(3)を示す。r∈N≥1と Borel 集合B1,…,Br⊂Rdをとる。式 (2.2.2)により、κにわたる事象Eκ(B1,…,Br)は互いに交わらず、その和集合は{X1∈B1,…,Xr∈Br}∩Ωrである。P(Ωr)=1と式 (2.2.3)から
P(X1∈B1,…,Xr∈Br)=s=1∏r∫Bsf(x)dxである。t=sに対してBt=RdとするとP(Xs∈Bs)=∫Bsf(x)dxであるから、Xsは密度fをもつ。σ(Xs)の元はXs−1(B)の形であり、選ばれない添字にRdを置くと、相異なるs1,…,sq∈{1,…,r}とσ(Xsj)の元に対して積の公式が成り立つ。§E11.7 定義 1.1によりσ(X1),…,σ(Xr)は相互独立である。
(4)を示す。T0:=0、Gs:=Ts−Ts−1(s∈N≥1)と置く。r∈N≥1と(g1,…,gr)∈N≥1rに対して、事象{G1=g1,…,Gr=gr}はks:=g1+⋯+gsとした事象{T1=k1,…,Tr=kr}に等しいから、(2)をB1=⋯=Br=Rdとして
P(G1=g1,…,Gr=gr)=s=1∏rM1(1−M1)gs−1を得る。t=sのgtについて和をとると、§E11.5 補題 1.1によりg∈N≥1に対してP(Gs=g)=M−1(1−M−1)g−1であり、これらの和は1である。したがってP(Gs−1∈N≥0)=1であり、Gs−1はGeom(1/M)に従う。∣Gs−1∣はほとんど確実にGs−1に等しく、1/M∈(0,1]であるから、§E11.5 命題 1.5によりE[∣Gs−1∣]=E[Gs−1]=(1−1/M)/(1/M)=M−1<∞である。よってGs−1は可積分であり、§E11.4 命題 1.2によりE[Gs]=Mである。G1=T1であるからT1−1はGeom(1/M)に従い、E[T1]=Mである。Tr=G1+⋯+Grであるから、§E11.4 命題 1.2によりE[Tr]=rMであり、E[cTr]=crMである。▨
例 2.3.f(x):=2/πe−x2/21[0,∞)(x)、g(x):=e−x1[0,∞)(x)と置く。§E11.5 命題 2.5により∫Re−x2/2dx=2πであり、被積分関数は偶関数であるから∫Rf=1である。gはExp(1)の密度である。x≥0に対して
g(x)f(x)=π2ex−x2/2=π2ee−(x−1)2/2≤π2eであり、等号はx=1で成り立つ。x<0ではf(x)=g(x)=0である。したがってM:=2e/π≈1.3155に対してf≤Mgが成り立ち、x≥0でa(x)=e−(x−1)2/2、x<0でa(x)=0である。0<M′<Mならばf(1)=Mg(1)>M′g(1)であるから、f≤M′gを満たす正の定数M′のうち最小のものはMであり、定理 2.2 (4)のE[T1]=MもこのMで最小になる。
U1,U2,…を(0,1)に値をとり、相互独立で、それぞれU[0,1]に従う確率変数とする。Exp(1)の分布関数Fはx<0で0、x≥0で1−e−xであり、u∈(0,1)に対してF(x)≥uはx≥−log(1−u)と同値であるから、QF(u)=−log(1−u)である。Yk:=−log(1−U2k−1)、Vk:=U2kと置くと、定理 1.2 (3)によりYkはExp(1)に従い、命題 2.1 (2)によりσ(Y1),σ(V1),σ(Y2),…は相互独立である。
fとgの役割を入れ替え、Exp(1)の密度を目標、2/πe−x2/21[0,∞)を提案の密度とすると、x≥0での比π/2ex2/2−xはx→∞で発散するので、定理 2.2の仮定を満たす実数Mは存在しない。
3 正規分布に従う標本
定理 3.1.(Ω,F,P)を確率空間とする。
- U,Vを(0,1)に値をとり、独立で、それぞれU[0,1]に従う確率変数とする。
R:=−2logU,Z=(Z1,Z2):=(Rcos2πV, Rsin2πV)
と置くと、ZはN2(0,I2)に従い、Z1とZ2は独立で、それぞれN(0,1)に従う。
- n∈N≥1とし、U1,…,U2nを(0,1)に値をとり、相互独立で、それぞれU[0,1]に従う確率変数とする。1≤j≤nに対して、(U,V)=(U2j−1,U2j)から上の式で得るZを(Z2j−1,Z2j)とする。このとき、1≤r≤2nを満たす各整数rに対して(Z1,…,Zr)はNr(0,Ir)に従う。
証明.(1)を示す。W:=R2∖{(x,0)∣x≥0}と置くと、Wは開集合である。ρ(u):=−2loguと置き、Φ:(0,1)2→R2を
Φ(u,v):=(ρ(u)cos2πv, ρ(u)sin2πv)で定めるとZ=Φ(U,V)である。ρは(0,1)上で正の値をとるC1級関数であり、ρ′(u)=−1/(uρ(u))である。sin2πv=0を満たすv∈(0,1)は1/2だけであり、そのときcos2πv=−1であるから、ΦはWに値をとる。z=(z1,z2)∈Wに対して∥z∥>0かつ∥z∥−z1>0であるから、
Ψ(z):=(e−∥z∥2/2, 2ππ−2arctanτ(z)),τ(z):=∥z∥−z1z2はWから(0,1)2へのC1級写像である。
(u,v)∈(0,1)2とし、θ:=2πv∈(0,2π)と置く。∥Φ(u,v)∥2=−2loguであり、τ(Φ(u,v))=sinθ/(1−cosθ)=tan(π/2−θ/2)とπ/2−θ/2∈(−π/2,π/2)からarctanτ(Φ(u,v))=π/2−θ/2である。したがってΨ(Φ(u,v))=(u,v)である。
z∈Wとし、ρz:=∥z∥、β:=ρz−z1>0、τ:=τ(z)、θ:=π−2arctanτ∈(0,2π)と置く。z12+z22=ρz2からβ2+z22=2ρzβ、β2−z22=−2z1βであり、1+τ2=2ρz/β、1−τ2=−2z1/βである。したがって
cosθ=−1+τ21−τ2=ρzz1,sinθ=1+τ22τ=ρzz2である。Ψ(z)の第一成分uはρ(u)=ρzを満たし、第二成分はθ/(2π)であるから、Φ(Ψ(z))=zである。よってΦは(0,1)2からWへのC1級微分同相であり、Φ−1=Ψである。偏導関数は∂uΦ=ρ′(u)(cos2πv,sin2πv)、∂vΦ=2πρ(u)(−sin2πv,cos2πv)であるから、
detDΦ(u,v)=2πρ(u)ρ′(u)=−u2πである。
UとVは独立であるから、§E11.7 定理 2.1により(U,V)の法則はμU⊗μVであり、§E9.11 定理 2.3により(U,V)はR2上の密度1[0,1]2をもつ。P((U,V)∈(0,1)2)=1であるから、§E11.8 定理 5.1によりZは密度
1W(z)∣detDΦ(Ψ(z))∣1[0,1]2(Ψ(z))=1W(z)2πe−∥z∥2/2をもつ。R2∖WはR×{0}に含まれ、§E9.11 定理 2.3によりR×{0}の Lebesgue 測度は0であるから、Zは密度φ2(z)=(2π)−1e−∥z∥2/2をもち、§E11.10 定義 3.1によりN2(0,I2)に従う。Borel 集合B1,B2⊂Rに対して、§E9.11 定理 2.3によりP(Z1∈B1,Z2∈B2)=∫B1φ1∫B2φ1である。B2=RまたはB1=RとするとZ1とZ2はそれぞれN(0,1)に従い、§E11.7 命題 1.2によりZ1とZ2は独立である。
(2)を示す。Φを(0,1)2の外で0と置いて延長した写像Φˉ:R2→R2は Borel 可測であり、(Z2j−1,Z2j)=Φˉ(U2j−1,U2j)である。命題 2.1 (2)をJj:={2j−1,2j}(1≤j≤n)に適用すると、σ((Z1,Z2)),…,σ((Z2n−1,Z2n))は相互独立である。Borel 集合B1,…,B2n⊂Rに対して、この独立性と(1)から
P(Z1∈B1,…,Z2n∈B2n)=j=1∏nP(Z2j−1∈B2j−1, Z2j∈B2j)=i=1∏2n∫Biφ1である。1≤r≤2nとし、i>rに対してBi=Rと置くと、§E9.11 定理 2.3により右辺は∫B1×⋯×Brφrに等しい。P((Z1,…,Zr)∈C)=∫Cφrを満たす Borel 集合C⊂Rrの全体は、両辺がCについて確率測度であるから Dynkin 系をなし、空集合とRrの半開直方体をすべて含む。空集合と半開直方体の全体は π 系であり、その有限非交和の全体Rrはこの π 系を含み、この π 系が生成するシグマ加法族に含まれる。§E9.4 定理 3.3によりσ(Rr)=B(Rr)であるから、この π 系はB(Rr)を生成する。§E9.1 定理 4.8により(Z1,…,Zr)は密度φrをもち、Nr(0,Ir)に従う。▨
命題 3.2.(Ω,F,P)を確率空間とし、d∈N≥1、m∈Rd、Σをd次実対称半正定値行列とする。
- r∈N≥1とA∈Rd×rがAAT=Σを満たし、確率ベクトルZ:Ω→RrがNr(0,Ir)に従うならば、m+AZはNd(m,Σ)に従い、すべてのω∈Ωでm+AZ(ω)∈m+RanΣである。rankΣ<dならば、m+AZはd次元 Lebesgue 測度に関する密度をもたない。
- Σが正定値ならば、Σの Cholesky 因子CとNd(0,Id)に従うZに対して、m+CZはNd(m,Σ)に従う。Cは§E20.5 定理 5.2 (5)の式によりd3/3+d2/2−5d/6回の四則演算とd回の平方根で計算され、Cとz∈Rdからm+Czを得る計算はd2+d回の四則演算で行われる。したがって、n∈N≥1個の標本を作るとき、Cを一度計算すれば、四則演算はd3/3+d2/2−5d/6+n(d2+d)回、平方根はd回、N(0,1)に従う標本はnd個である。
- ΣをRdの標準内積に関する線形写像とみなすと正作用素であり、その正の平方根B:=Σ1/2はBBT=Σを満たす。k:=rankΣ≥1ならば、Σの固有ベクトルからなる正規直交基底q1,…,qdと対応する固有値λ1,…,λdであってλ1,…,λk>0、λk+1=⋯=λd=0を満たすものが存在し、Ak:=(λ1q1,…,λkqk)∈Rd×kはAkAkT=Σを満たす。Akとz∈Rkからm+Akzを得る計算は2dk回の四則演算で行われる。k=0ならばΣ=0であり、A:=0∈Rd×1はAAT=Σを満たし、m+AZ=mである。
証明.(1)を示す。§E11.10 定理 4.2によりm+AZは Gaussian 確率ベクトルであり、平均はm、共分散はAAT=Σであるから、Nd(m,Σ)に従う。x∈RdがΣx=0を満たすならば∥ATx∥2=xTAATx=0であるから、kerΣ=kerATである。したがってrankΣ=d−dimkerAT=rankAT=rankAであり、RanΣ=RanAAT⊂RanAと合わせてRanΣ=RanAである。よってすべてのωでm+AZ(ω)∈m+RanΣである。rankΣ<dの場合の主張は§E11.10 定理 6.1である。
(2)を示す。§E20.5 定理 5.2 (3)によりΣは Cholesky 因子Cをもち、CCT=Σであるから、(1)をr=d、A=Cとして適用する。Cの計算の回数は§E20.5 定理 5.2 (5)による。Cは下三角行列であるから、m+Czの第i成分mi+∑j=1icijzjはi回の乗算とi回の加算で計算され、合計は∑i=1d2i=d2+d回である。
(3)を示す。ΣT=Σであり、すべてのx∈Rdで⟨Σx,x⟩=xTΣx≥0であるから、Σは正作用素である。§E3.38 定理 1.1により、正作用素BでB2=Σを満たすものがただ一つ存在する。Bは自己随伴であるからBT=Bであり、BBT=B2=Σである。§E3.37 定理 3.1により、Σの固有ベクトルからなる正規直交基底q1,…,qdが存在する。Σqi=λiqiとするとλi=qiTΣqi≥0であり、番号を付け替えて正の固有値を前に並べる。x=∑i=1d(qiTx)qiから
Σx=i=1∑dλi(qiTx)qi=λi>0∑λiqiqiTxである。λi>0ならばqi=Σ(λi−1qi)であるから、RanΣは{qi∣λi>0}で張られ、正の固有値の個数はkに等しい。上の式からΣ=∑i=1kλiqiqiT=AkAkTである。m+Akzの各成分はk回の乗算とk回の加算で計算されるから、合計は2dk回である。k=0ならばRanΣ={0}であるからΣ=0である。▨
例 3.3.m∈R2とし、Z=(Z1,Z2)を定理 3.1 (1)で作ったN2(0,I2)に従う確率ベクトルとする。
- Σ1:=(4222)とC:=(2101)についてCCT=Σ1であり、Cは対角成分が正の下三角行列であるから、§E20.5 定理 5.2 (4)によりΣ1は正定値であり、CはΣ1の Cholesky 因子である。命題 3.2 (2)によりm+(2Z1, Z1+Z2)はN2(m,Σ1)に従う。
- Σ2:=(1111)はq1=(1,1)/2に対する固有値2とq2=(1,−1)/2に対する固有値0をもち、rankΣ2=1である。A1=2q1=(1,1)Tであり、m+(Z1,Z1)はN2(m,Σ2)に従い、すべての標本が直線m+{(t,t)∣t∈R}上にある。Σ2/2は対称でありxT(Σ2/2)x=(x1+x2)2/2≥0、(Σ2/2)2=Σ2であるから、§E3.38 定理 1.1の一意性によりΣ21/2=Σ2/2である。m+Σ21/2Z=m+2Z1+Z2(1,1)は同じ法則に従うが、二つのN(0,1)標本を用いる。detΣ2=0であるからΣ2は正定値でなく、§E20.5 定理 5.2 (4)により Cholesky 因子をもたない。
- Σ3:=diag(0,1)に§E20.5 定理 5.2 (5)の式を形式的に適用するとc11=0となり、c21=a21/c11は定義されない。一方、q1=(0,1)、λ1=1からA1=(0,1)Tであり、m+(0,Z1)はN2(m,Σ3)に従う。
4 格子と求根の誤差
命題 4.1.μをR上の Borel 確率測度、F(x):=μ((−∞,x])(x∈R)とし、(Ω,F,P)を確率空間とする。
- U^を(0,1)に値をとる確率変数とし、δ:=sup0≤t≤1∣P(U^≤t)−t∣と置く。このときX^:=QF(U^)は確率変数であり、すべてのx∈Rに対して∣P(X^≤x)−F(x)∣≤δである。
- M∈N≥1とし、確率変数U^がHM:={(2k+1)/(2M)∣k∈Z, 0≤k≤M−1}上の一様分布に従うならば、sup0≤t≤1∣P(U^≤t)−t∣=1/(2M)である。
証明.(1)を示す。定理 1.2 (2)によりX^は確率変数である。x∈Rに対して、定理 1.2 (1)により{X^≤x}={U^≤F(x)}であり、0≤F(x)≤1であるから、∣P(X^≤x)−F(x)∣=∣P(U^≤F(x))−F(x)∣≤δである。
(2)を示す。t∈[0,1]とし、ξ:=Mtと置く。(2k+1)/(2M)≤tはk≤ξ−1/2と同値であり、0≤ξ+1/2<M+1であるから、0≤k≤M−1とk≤ξ−1/2を満たす整数kの個数は⌊ξ+1/2⌋である。したがってP(U^≤t)=⌊ξ+1/2⌋/Mであり、ξ−1/2<⌊ξ+1/2⌋≤ξ+1/2から∣P(U^≤t)−t∣≤1/(2M)である。t=1/(2M)ではP(U^≤t)=1/Mであり、差は1/(2M)に等しい。▨
命題 4.3.μをR上の Borel 確率測度、F(x):=μ((−∞,x])(x∈R)とする。実数a<bについてFは[a,b]上で連続かつ狭義単調増加であるとし、u∈(0,1)はF(a)<u≤F(b)を満たすとする。
- QF(u)∈(a,b]であり、QF(u)はF(x)=uを満たすx∈[a,b]のただ一つである。u=F(b)ならばQF(u)=bである。u<F(b)ならば、§E20.4 定義 2.2の二分法を[a,b]上の関数x↦F(x)−uに適用すると、ある段nで停止してmn=QF(u)を出力するか、どの段でも停止せず、すべてのn∈N≥0に対して∣mn−QF(u)∣≤2−(n+1)(b−a)が成り立つ。
- u<F(b)とし、さらにFは(a,b)で微分可能であり、ある実数m>0についてすべてのt∈(a,b)でF′(t)≥mであるとする。x^∈[a,b]とε≥0が∣F(x^)−u∣≤εを満たすならば、∣x^−QF(u)∣≤ε/mである。
証明.q:=QF(u)と置く。
(1)を示す。F(a)<uであるから、定理 1.2 (1)によりq≤aは成り立たず、q>aである。u≤F(b)であるから、同じくq≤bである。定理 1.2 (1)によりF(q)≥uであり、a<x<qならばq≤xが成り立たないのでF(x)<uである。Fはq∈(a,b]で左から連続であるから、F(q)=limx↑qF(x)≤uであり、F(q)=uである。Fは[a,b]上で狭義単調増加であるから、F(x)=uを満たすx∈[a,b]はqだけである。u=F(b)ならばbがそのxであるからq=bである。u<F(b)とし、ϕ(x):=F(x)−u(x∈[a,b])と置くと、ϕは連続でありϕ(a)ϕ(b)<0であるから、§E20.4 定義 2.2の二分法が定まる。段nで停止するならばϕ(mn)=0であるからmn=qである。どの段でも停止しないならば、§E20.4 定理 2.3 (3)によりϕの零点rで、すべてのn∈N≥0に対して∣mn−r∣≤2−(n+1)(b−a)を満たすものが存在し、零点の一意性によりr=qである。
(2)を示す。ϕ(x):=F(x)−u(x∈[a,b])は[a,b]上で連続、(a,b)で微分可能であり、ϕ(a)ϕ(b)<0、すべてのt∈(a,b)で∣ϕ′(t)∣≥mを満たす。点列xk:=x^(k∈N≥0)はk=0で残差判定∣ϕ(x0)∣≤εを満たすから、§E20.4 命題 6.2 (3)をτf:=εとして適用すると、∣x^−r∣≤ε/mを満たすϕの零点r∈[a,b]が存在する。(1)によりr=qである。▨
例 4.4.λ>0とし、FをExp(λ)の分布関数とする。Fはx<0で0、x≥0で1−e−λxであり、u∈(0,1)に対してF(x)≥uはx≥−λ−1log(1−u)と同値であるから、QF(u)=−λ−1log(1−u)である。b>QF(u)とすると、Fは[0,b]上で連続かつ狭義単調増加であり、F(0)=0<u<F(b)であって、t∈(0,b)でF′(t)=λe−λt≥λe−λbである。命題 4.3 (2)により、x^∈[0,b]と∣F(x^)−u∣≤εから∣x^−QF(u)∣≤εeλb/λを得る。b>QF(u)からeλb>1/(1−u)であり、ε>0ならばこの上界はε/(λ(1−u))より大きい。
この増大は評価の粗さによるものではない。QF(u)≤x^ならば
F(x^)−u=∫QF(u)x^λe−λtdt≤λe−λQF(u)(x^−QF(u))=λ(1−u)(x^−QF(u))であるから、x^−QF(u)≥(F(x^)−u)/(λ(1−u))である。λ=1、u=1−10−6とするとQF(u)=6log10≈13.8155であり、F(x^)−u=10−12を満たすx^≥QF(u)はx^−QF(u)≥10−6を満たす。b=14とするとF(14)=1−e−14>uであり、命題 4.3 (2)の上界は10−12e14≈1.2026×10−6である。命題 4.3 (1)の二分法の誤差の上界2−(n+1)bはF′を含まない。
命題 4.5.μをR上の Borel 確率測度、F(x):=μ((−∞,x])(x∈R)とし、(Ω,F,P)を確率空間とする。U^を(0,1)に値をとる確率変数、δ:=sup0≤t≤1∣P(U^≤t)−t∣、X^:=QF(U^)とする。η≥0とし、確率変数X~はほとんど確実に∣X~−X^∣≤ηを満たすとする。
- すべてのx∈Rに対してF(x−η)−δ≤P(X~≤x)≤F(x+η)+δである。
- μが密度fをもち、ある実数L≥0についてすべてのx∈Rでf(x)≤Lであるならば、すべてのx∈Rに対して∣P(X~≤x)−F(x)∣≤δ+Lηである。
証明.(1)を示す。E:={∣X~−X^∣≤η}と置くとP(E)=1である。E上では、X^≤x−ηならばX~≤xであり、X~≤xならばX^≤x+ηである。したがってP(X^≤x−η)≤P(X~≤x)≤P(X^≤x+η)である。命題 4.1 (1)によりP(X^≤x−η)≥F(x−η)−δかつP(X^≤x+η)≤F(x+η)+δである。
(2)を示す。F(x+η)−F(x)=μ((x,x+η])=∫(x,x+η]f≤Lηであり、同様にF(x)−F(x−η)≤Lηである。(1)と合わせてF(x)−Lη−δ≤P(X~≤x)≤F(x)+Lη+δを得る。▨
例 4.6.μ:=δ0とするとF=1[0,∞)であり、すべてのu∈(0,1)でQF(u)=0である。η>0とし、U^を(0,1)に値をとりU[0,1]に従う確率変数とすると、命題 4.5のδは0である。X~:=ηと置くと∣X~−QF(U^)∣=ηである。0≤x<ηではP(X~≤x)=0、F(x)=1であるから、supx∈R∣P(X~≤x)−F(x)∣=1であり、この値はηによらない。命題 4.5 (1)の両端はx=0でF(−η)=0とF(η)=1である。μは Lebesgue 密度をもたないので、命題 4.5 (2)は適用されない。
例 4.7.FをExp(1)の分布関数とし、M:=232とし、U^をHMに値をとりHM上の一様分布に従う確率変数とする。命題 4.1 (2)により、命題 4.5のδは2−33である。HMの最大元は1−2−33であり、e−24≈3.78×10−11<2−33≈1.16×10−10から、すべてのu∈HMでF(0)=0<u<F(24)である。Fは[0,24]上で連続かつ狭義単調増加である。各u∈HMに対して、命題 4.3 (1)の二分法を[0,24]上で厳密算術により実行し、段40までに停止すればその出力を、停止しなければm40をβ(u)とする。U^は有限集合HMに値をとるので、X~:=β(U^)はすべてのω∈Ωで定まる確率変数であり、命題 4.3 (1)によりすべてのω∈Ωで∣X~−QF(U^)∣≤2−41⋅24=3⋅2−38である。Exp(1)の密度は1以下であるから、命題 4.5 (2)により
x∈Rsup∣P(X~≤x)−F(x)∣≤2−33+3⋅2−38=35⋅2−38≈1.27×10−10である。
5 演習
解答.
命題 2.1 (1)を示す。(Gi)i∈Iの相互独立性は、相異なる有限個の添字と各Giの事象に対する積の公式であり、§E11.13 補題 4.1が仮定する独立性と同じ条件である。q≥1とし、相異なるs1,…,sq∈Sをとる。Js1,…,Jsqは二つずつ交わらないIの空でない有限部分集合であるから、§E11.13 補題 4.1により、Et∈Hst(1≤t≤q)に対してP(⋂t=1qEt)=∏t=1qP(Et)である。相異なるs1,…,sqは任意であるから、§E11.7 定義 1.1により(Hs)s∈Sは相互独立である。
命題 2.1 (2)を示す。s∈Sとし、WJs:=(Wis,1,…,Wis,ps):Ω→REsと置く。Borel 集合Cl⊂Reis,l(1≤l≤ps)に対してWJs−1(C1×⋯×Cps)=⋂lWis,l−1(Cl)∈Hsである。WJs−1(C)∈Hsを満たす Borel 集合C⊂REsの全体はシグマ加法族をなし、このような直積をすべて含む。REsの半開直方体は、各lについてReis,lの半開直方体Clをとった直積C1×⋯×Cpsであり、各Clは Borel 集合であるから、このシグマ加法族は半開直方体の有限非交和の全体REsを含む。§E9.4 定理 3.3によりσ(REs)=B(REs)であるから、このシグマ加法族はB(REs)に等しい。したがって、Borel 集合B⊂Rmsに対してZs−1(B)=WJs−1(hs−1(B))∈Hsであり、σ(Zs)⊂Hsである。相異なるs1,…,sqとFt∈σ(Zst)に対してFt∈Hstであるから、命題 2.1 (1)により積の公式が成り立つ。▨
解答.
c0=0<uとcn=1≥uから、t=0でℓt<htかつcℓt<u≤chtである。ht−ℓt≥2でこの二条件が成り立つとすると、ℓt+1≤mt≤(ℓt+ht)/2<htであり、cmt≥uならば(ℓt+1,ht+1)=(ℓt,mt)、cmt<uならば(ℓt+1,ht+1)=(mt,ht)であるから、二条件はt+1でも成り立つ。wt:=ht−ℓtと置くと、mt−ℓt=⌊wt/2⌋、ht−mt=⌈wt/2⌉であるからwt+1≤⌈wt/2⌉である。wt≥2ならば⌈wt/2⌉<wtであり、wt≥1がつねに成り立つから、手続きは有限回でwt=1となって終わる。
N:=⌈log2n⌉と置くとw0=n≤2Nである。wt≤2jかつj≥1ならばwt+1≤⌈2j/2⌉=2j−1であるから、比較をt回行った後も続くならば2≤wt≤2N−tであり、t≤N−1である。比較の回数をTとすると、T≥1のときT−1回の比較の後に手続きは続いているからT−1≤N−1であり、T≤Nである。終わったときht=ℓt+1かつcht−1<u≤chtであるから、命題 1.4 (1)によりht=J(u)である。▨
問題 5.3.M∈N≥1とし、U^を(0,1)に値をとる確率変数で、その値の集合が高々M個の元からなるものとする。δ:=sup0≤t≤1∣P(U^≤t)−t∣に対してδ≥1/(2M)であることを示せ。
解答.
U^の値の集合を{v1,…,vk}、0<v1<⋯<vk<1、1≤k≤Mとし、G(t):=P(U^≤t)と置く。Gは[0,v1)で0、[vk,1]で1であり、1≤i≤k−1に対して[vi,vi+1)上で定数γiである。t∈[0,v1)ではt=∣G(t)−t∣≤δであるからv1≤δである。t=vkでは1−vk≤δである。t∈[vi,vi+1)ではγi−δ≤t≤γi+δであるから、vi+1−vi≤2δである。したがって
1=v1+i=1∑k−1(vi+1−vi)+(1−vk)≤δ+2(k−1)δ+δ=2kδ≤2Mδであり、δ≥1/(2M)である。命題 4.1 (2)により、HM上の一様分布はこの下界に等しいδを与える。▨