§E10.13境界値問題

最終更新

微分方程式の解を選ぶための条件は、一つの点にまとめて与えられるとは限らない。区間の左端と右端でそれぞれ条件を課すとき、左端の条件を満たして出発した解が右端の条件も満たすか、さらに、そのような解が一つに定まるかが問題になる。

たとえば、L>0L>0とし、y′′+λy=0y''+\lambda y=0にy(0)=y(L)=0y(0)=y(L)=0を課すと、非零解が存在するのは特定のλ\lambdaに限られる。両端の条件は、解を選ぶだけでなく、方程式に含まれるパラメータを選び出すこともある。この現象を捉える固有値の考え方は、次の Sturm–Liouville 問題へ進むためにも重要である。

境界値問題では、両端の条件を同時に満たす斉次解の有無が、非同次問題の解の一意性と深く関わる。斉次解が自明な場合には、右辺から解を作る仕組みを Green 関数として表すことができる。

本記事では、二点境界値問題の解が境界条件によってどのように定まるかを解説する。

1 初期値問題と二点境界値問題

定義 1.1.a<ba<bとし、P,Q,f:[a,b]→RP,Q,f:[a,b]\to\Rを連続関数とする。実数αa,βa,αb,βb\alpha_a,\beta_a,\alpha_b,\beta_bに対し、

y′′+P(x)y′+Q(x)y=f(x)(1)y''+P(x)y'+Q(x)y=f(x) \tag{1}

に対して

Ba[y]=αay(a)+βay′(a)=0,Bb[y]=αby(b)+βby′(b)=0(2)\begin{aligned} B_a[y]&=\alpha_a y(a)+\beta_a y'(a)=0,\\ B_b[y]&=\alpha_b y(b)+\beta_b y'(b)=0 \end{aligned} \tag{2}

を課す。ここで

(αa,βa)≠(0,0),(αb,βb)≠(0,0)(\alpha_a,\beta_a)\ne(0,0),\qquad (\alpha_b,\beta_b)\ne(0,0)

とする。式 (1) と式 (2) を満たすy∈C2([a,b];R)y\in C^2([a,b];\R)を求める問題を斉次分離型二点境界値問題 (two-point boundary value problem with homogeneous separated boundary conditions) という。端点の導関数は片側導関数とする。境界条件が斉次であるという語は式 (2) の右辺が零であることを指し、微分方程式の右辺ffは零でなくてもよい。

初期値問題ではy(a)y(a)とy′(a)y'(a)を指定するため、初期値写像の同型§E10.7 定理 5.2を直接用いることができる。境界値問題では、左端条件を満たす一変数分の初期値から出発した解が、右端条件も満たすかを調べる必要がある。この追加条件が退化すると、解が存在しない場合または一意でない場合が生じる。

命題 1.2.a<ba<b、P,Q∈C([a,b];R)P,Q\in C([a,b];\R)とし、実境界係数の各組(αa,βa)(\alpha_a,\beta_a)、(αb,βb)(\alpha_b,\beta_b)は非零とする。C2([a,b];R)C^2([a,b];\R)上の微分作用素を

L[y]=y′′+Py′+QyL[y]=y''+Py'+Qy

とする。斉次境界値問題

L[y]=0,Ba[y]=Bb[y]=0(3)L[y]=0,\qquad B_a[y]=B_b[y]=0 \tag{3}

を満たす解の空間を境界核とする。非同次問題が一つの解ypy_pをもつならば、そのすべての解は

yp+yh,L[yh]=0,Ba[yh]=Bb[yh]=0y_p+y_h,\qquad L[y_h]=0,\qquad B_a[y_h]=B_b[y_h]=0

と一意に表される。したがって、境界核が自明ならば、任意の連続関数ffに対して式 (1)、式 (2) の解は高々一つである。境界核が非零解yhy_hをもつ場合には、yp+Cyhy_p+Cy_hも任意のC∈RC\in\mathbb Rに対して解であり、一意性は失われる。

証明. 任意の非同次解yyに対して、差y−ypy-y_pは式 (3) を満たす。逆に、式 (3) を満たす任意のyhy_hに対して、線形性により

L[yp+yh]=f,Ba[yp+yh]=Bb[yp+yh]=0L[y_p+y_h]=f,\qquad B_a[y_p+y_h]=B_b[y_p+y_h]=0

である。表示の一意性は差y−ypy-y_pが一意に定まることから従う。境界核が自明ならば、二つの解の差は零である。境界核に非零解yhy_hがある場合には、任意のC∈RC\in\mathbb Rに対してCyhCy_hも境界核に属するため、yp+Cyhy_p+Cy_hはすべて非同次問題の解である。

▨

2 固有値問題

定義 2.1. 線形微分作用素LλL_\lambdaと境界形式Ba,λ,Bb,λB_{a,\lambda},B_{b,\lambda}のうち少なくとも一つがパラメータλ\lambdaに依存し、各λ\lambdaについて境界条件が斉次であるとする。このとき

Lλ[y]=0,Ba,λ[y]=Bb,λ[y]=0L_\lambda[y]=0,\qquad B_{a,\lambda}[y]=B_{b,\lambda}[y]=0

が非零解をもつとき、λ\lambdaを固有値 (eigenvalue of a boundary value problem) といい、その非零解をλ\lambdaに属する固有関数 (eigenfunction of a boundary value problem) という。

例 2.2 (Dirichlet 境界条件の固有値).L>0L>0とし、

y′′+λy=0,y(0)=y(L)=0(4)y''+\lambda y=0,\qquad y(0)=y(L)=0 \tag{4}

を考える。

λ=μ2>0\lambda=\mu^2>0のとき、一般解は

y=Acos⁡(μx)+Bsin⁡(μx)y=A\cos(\mu x)+B\sin(\mu x)

である。y(0)=0y(0)=0からA=0A=0となり、非零解が残る条件は

sin⁡(μL)=0.\sin(\mu L)=0.

したがって

λn=(nπL)2,yn(x)=sin⁡(nπxL),n=1,2,…\lambda_n=\left(\frac{n\pi}{L}\right)^2,\qquad y_n(x)=\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right), \qquad n=1,2,\ldots

が固有値と対応する固有関数である。

λ=0\lambda=0ではy=A+Bxy=A+Bxであり、二つの境界条件からA=B=0A=B=0となる。λ=−μ2<0\lambda=-\mu^2<0では

y=Acosh⁡(μx)+Bsinh⁡(μx)y=A\cosh(\mu x)+B\sinh(\mu x)

である。y(0)=0y(0)=0からA=0A=0、y(L)=0y(L)=0とsinh⁡(μL)>0\sinh(\mu L)>0からB=0B=0となる。したがって、零または負の固有値は存在しない。

固定したλ\lambdaが固有値でないとき、対応する斉次核は自明である。次節では、この場合に任意の連続な右辺に対する解を構成する。

3 Green 関数の構成

定義 3.1.a<ba<b、P,Q∈L1([a,b];R)P,Q\in L^1([a,b];\R)、f∈L1([a,b];C)f\in L^1([a,b];\C)とし、実境界係数の組(αa,βa)(\alpha_a,\beta_a)、(αb,βb)(\alpha_b,\beta_b)はいずれも(0,0)(0,0)でないとする。このとき、可積分係数の斉次分離型二点境界値問題の解とは、

y∈C1([a,b];C),y′∈AC([a,b];C)y\in C^1([a,b];\C),\qquad y'\in AC([a,b];\C)

であって、

y′′+Py′+Qy=fほとんど至る所,Ba[y]=αay(a)+βay′(a)=0,Bb[y]=αby(b)+βby′(b)=0y''+Py'+Qy=f\quad\text{ほとんど至る所},\qquad B_a[y]=\alpha_a y(a)+\beta_a y'(a)=0,\qquad B_b[y]=\alpha_b y(b)+\beta_b y'(b)=0

を満たす関数をいう。端点の導関数は片側の古典導関数とする。f=0f=0の解全体を境界核という。

補題 3.2.a<ba<b、P,Q∈L1([a,b];R)P,Q\in L^1([a,b];\R)とし、実境界係数の各組(αa,βa)(\alpha_a,\beta_a)、(αb,βb)(\alpha_b,\beta_b)は非零とする。斉次方程式w′′+Pw′+Qw=0w''+Pw'+Qw=0をほとんど至る所で満たし、w∈C1([a,b];R)w\in C^1([a,b];\R)、w′∈AC([a,b];R)w'\in AC([a,b];\R)である解のうち、

u(a)=βa,u′(a)=−αa,v(b)=βb,v′(b)=−αbu(a)=\beta_a,\qquad u'(a)=-\alpha_a,\qquad v(b)=\beta_b,\qquad v'(b)=-\alpha_b

を満たすu,vu,vは一意に存在する。両者は非零解であり、Ba[u]=0B_a[u]=0、Bb[v]=0B_b[v]=0を満たす。さらに、この分離型境界値問題の境界核が自明ならば、

W(x)=u(x)v′(x)−u′(x)v(x)W(x)=u(x)v'(x)-u'(x)v(x)

は[a,b][a,b]の全点で零でない。

証明.§E10.7 命題 4.1をn=2n=2、K=R\mathbb K=\R、I=[a,b]I=[a,b]として両端の初期値に適用すると、u,vu,vの存在と一意性を得る。初期ベクトルが非零なので、両者は非零解である。また、

Ba[u]=αaβa−βaαa=0,Bb[v]=αbβb−βbαb=0B_a[u]=\alpha_a\beta_a-\beta_a\alpha_a=0,\qquad B_b[v]=\alpha_b\beta_b-\beta_b\alpha_b=0

である。ある点でW=0W=0ならば、§E10.7 命題 5.4によりu,vu,vは線形従属である。両者は非零なのでuuはvvの非零定数倍であり、両境界条件を満たす。これは境界核が自明であることに反する。従ってWWは全点で零でない。▨

補題 3.3.a<ba<b、P,Q∈C([a,b];R)P,Q\in C([a,b];\R)とし、実境界係数の各組(αa,βa)(\alpha_a,\beta_a)、(αb,βb)(\alpha_b,\beta_b)は非零とする。L[w]=w′′+Pw′+QwL[w]=w''+Pw'+Qwとおく。uuを

L[u]=0,u(a)=βa,u′(a)=−αa(5)L[u]=0,\qquad u(a)=\beta_a,\qquad u'(a)=-\alpha_a \tag{5}

の解とし、vvを

L[v]=0,v(b)=βb,v′(b)=−αb(6)L[v]=0,\qquad v(b)=\beta_b,\qquad v'(b)=-\alpha_b \tag{6}

の解とする。このときu,v∈C2([a,b];R)u,v\in C^2([a,b];\R)はそれぞれ非零解であり、

Ba[u]=0,Bb[v]=0.B_a[u]=0,\qquad B_b[v]=0.

さらに、斉次境界値問題 (3) が自明解だけをもつならば、

W(x)=u(x)v′(x)−u′(x)v(x)W(x)=u(x)v'(x)-u'(x)v(x)

は[a,b][a,b]のどの点でも零にならない。

証明.補題 3.2で構成したu,vu,vに対し、u′′=−Pu′−Quu''=-Pu'-Qu、v′′=−Pv′−Qvv''=-Pv'-Qvの右辺は連続である。§E10.2 定理 2.4によりu′,v′u',v'は連続関数の積分であるから、u,v∈C2u,v\in C^2であり、方程式は全点で成り立つ。同じ理由で可積分係数の意味の斉次解も、係数が連続ならばC2C^2級である。その実部と虚部は古典的な実斉次境界値問題の解なので、古典的な境界核が自明ならば複素数値の境界核も自明である。従って同補題の Wronskian の結論も適用される。▨

定義 3.4. 実連続係数P,QP,Qと非零の実境界係数の組による[a,b][a,b]上の斉次境界値問題 (3) の核が自明であるとする。補題 3.3のu,v,Wu,v,Wを用いて

G(x,s)={u(x)v(s)W(s),a≤x≤s≤b,u(s)v(x)W(s),a≤s≤x≤b(7)G(x,s)= \begin{cases} \dfrac{u(x)v(s)}{W(s)},&a\le x\le s\le b,\\[3mm] \dfrac{u(s)v(x)}{W(s)},&a\le s\le x\le b \end{cases} \tag{7}

と定める。このGGを問題のGreen 関数 (Green's function) という。

x=sx=sでは二つの式が同じ値u(s)v(s)/W(s)u(s)v(s)/W(s)を与えるため、GGは正方形[a,b]2[a,b]^2上で連続である。a<s<ba<s<bを満たすssを固定すると、xxについての片側微分は

∂xG(s+0,s)=u(s)v′(s)W(s),∂xG(s−0,s)=u′(s)v(s)W(s)\begin{aligned} \partial_xG(s+0,s)&=\frac{u(s)v'(s)}{W(s)},\\ \partial_xG(s-0,s)&=\frac{u'(s)v(s)}{W(s)} \end{aligned}

であり、

∂xG(s+0,s)−∂xG(s−0,s)=1(8)\partial_xG(s+0,s)-\partial_xG(s-0,s)=1 \tag{8}

を満たす。この微分の跳躍が、積分表示を二回微分したときに右辺f(x)f(x)を生じさせる。

固定したssがa<s<ba<s<bを満たすとき、x=ax=aの近傍ではG(x,s)G(x,s)はu(x)u(x)の定数倍であり、x=bx=bの近傍ではv(x)v(x)の定数倍である。したがって

Ba[G( ⋅ ,s)]=0,Bb[G( ⋅ ,s)]=0B_a[G(\,\cdot\,,s)]=0,\qquad B_b[G(\,\cdot\,,s)]=0

が成り立つ。ここで境界形式はGGの第一変数に作用する。

定理 3.5.a<ba<b、P,Q∈L1([a,b];R)P,Q\in L^1([a,b];\R)とし、実境界係数の各組(αa,βa)(\alpha_a,\beta_a)、(αb,βb)(\alpha_b,\beta_b)は非零とする。この分離型境界値問題のC1C^1かつ導関数が絶対連続である複素数値解の境界核が自明であると仮定する。補題 3.2の左右境界解u,vu,vとW=uv′−u′vW=uv'-u'vを用いて、

G(x,s)={u(x)v(s)W(s),a≤x≤s≤b,u(s)v(x)W(s),a≤s≤x≤bG(x,s)= \begin{cases} \dfrac{u(x)v(s)}{W(s)},&a\leq x\leq s\leq b,\\[3mm] \dfrac{u(s)v(x)}{W(s)},&a\leq s\leq x\leq b \end{cases}

と定めると、GGは[a,b]2[a,b]^2上で連続である。任意のs∈(a,b)s\in(a,b)に対して、

∂xG(s+0,s)−∂xG(s−0,s)=1,Ba[G( ⋅ ,s)]=Bb[G( ⋅ ,s)]=0\partial_xG(s+0,s)-\partial_xG(s-0,s)=1,\qquad B_a[G(\,\cdot\,,s)]=B_b[G(\,\cdot\,,s)]=0

が成り立つ。

任意のf∈L1([a,b];C)f\in L^1([a,b];\C)に対して、

y′′+Py′+Qy=fほとんど至る所,Ba[y]=Bb[y]=0y''+Py'+Qy=f\quad\text{ほとんど至る所},\qquad B_a[y]=B_b[y]=0

を満たすy∈C1([a,b];C)y\in C^1([a,b];\C)、y′∈AC([a,b];C)y'\in AC([a,b];\C)が一意に存在し、全点で

y(x)=∫abG(x,s)f(s) dsy(x)=\int_a^bG(x,s)f(s)\,ds

と表される。端点導関数は片側導関数である。ffをほとんど至る所で一致する関数に替えても、全点の解は変わらない。ffがほとんど至る所で実数値ならばyyは実数値である。P,Q,fP,Q,fが連続ならばy∈C2y\in C^2であり、微分方程式は全点で成り立つ。

証明.補題 3.2によりWWは全点で零でない。u,v,u′,v′,Wu,v,u',v',Wは連続なので、1/W1/W、u/Wu/W、v/Wv/Wは有界であり、uf/Wuf/Wとvf/Wvf/Wは可積分である。GGの二つの枝は対角線上で一致するので、GGは正方形上で連続である。内点ssでの微分の跳躍は

u(s)v′(s)−u′(s)v(s)W(s)=1\frac{u(s)v'(s)-u'(s)v(s)}{W(s)}=1

である。s∈(a,b)s\in(a,b)を固定すると、G( ⋅ ,s)G(\,\cdot\,,s)は左端近傍でuuの定数倍、右端近傍でvvの定数倍なので、両境界形式は零になる。

§E10.7 命題 5.4によりu,vu,vは複素数体上でも基本解系である。§E10.9 系 4.1をn=2n=2、基点aa、零初期値に適用すると、

yp(x)=−u(x)∫axv(s)f(s)W(s) ds+v(x)∫axu(s)f(s)W(s) dsy_p(x) =-u(x)\int_a^x\frac{v(s)f(s)}{W(s)}\,ds +v(x)\int_a^x\frac{u(s)f(s)}{W(s)}\,ds

はyp′′+Pyp′+Qyp=fy_p''+Py_p'+Qy_p=fをほとんど至る所で満たし、yp(a)=yp′(a)=0y_p(a)=y_p'(a)=0である。さらに

J=∫abv(s)f(s)W(s) ds,K=∫abu(s)f(s)W(s) dsJ=\int_a^b\frac{v(s)f(s)}{W(s)}\,ds,\qquad K=\int_a^b\frac{u(s)f(s)}{W(s)}\,ds

とおく。§E10.9 定理 2.1を伴随系へ適用した式の第二成分から、

yp(b)=−u(b)J+v(b)K,yp′(b)=−u′(b)J+v′(b)Ky_p(b)=-u(b)J+v(b)K,\qquad y_p'(b)=-u'(b)J+v'(b)K

を得る。Bb[v]=0B_b[v]=0なのでBb[yp]=−JBb[u]B_b[y_p]=-J B_b[u]である。Bb[u]=0B_b[u]=0ならば非零解uuが両境界条件を満たし、境界核が自明であることに反する。従ってBb[u]≠0B_b[u]\ne0であり、c∈Cc\in\Cに対して

Bb[yp+cu]=0⟺c=−Bb[yp]Bb[u]=JB_b[y_p+cu]=0\quad\Longleftrightarrow\quad c=-\frac{B_b[y_p]}{B_b[u]}=J

である。y=yp+Juy=y_p+Juは左境界条件も満たす。この解は

y(x)=v(x)I1(x)+u(x)I2(x),I1(x)=∫axu(s)f(s)W(s) ds,I2(x)=∫xbv(s)f(s)W(s) ds(10)y(x)=v(x)I_1(x)+u(x)I_2(x),\qquad I_1(x)=\int_a^x\frac{u(s)f(s)}{W(s)}\,ds,\qquad I_2(x)=\int_x^b\frac{v(s)f(s)}{W(s)}\,ds \tag{10}

と書き直され、GGの積分表示に等しい。

§E10.2 定理 2.4によりI1,I2I_1,I_2は絶対連続である。§E10.2 定理 3.1 (2)を分割表示へ適用すると、yyは絶対連続であり、ほとんど至る所で

y′=v′I1+u′I2+vufW−uvfW=v′I1+u′I2y'=v'I_1+u'I_2+v\frac{uf}{W}-u\frac{vf}{W} =v'I_1+u'I_2

となる。右辺は連続であり、AC の積分表示によりyyはC1C^1級で、この導関数の等式は端点の片側微分も含めて全点で成り立つ。u′,v′,I1,I2u',v',I_1,I_2は絶対連続なので、積則によりy′y'も絶対連続である。従って、ほとんど至る所で

y′′=v′′I1+u′′I2+(v′u−u′v)fW=v′′I1+u′′I2+f,y''=v''I_1+u''I_2+\frac{(v'u-u'v)f}{W} =v''I_1+u''I_2+f,

すなわちy′′+Py′+Qy=fy''+Py'+Qy=fである。I1(a)=I2(b)=0I_1(a)=I_2(b)=0から、

y(a)=u(a)I2(a),y′(a)=u′(a)I2(a),y(b)=v(b)I1(b),y′(b)=v′(b)I1(b)\begin{aligned} y(a)&=u(a)I_2(a),&y'(a)&=u'(a)I_2(a),\\ y(b)&=v(b)I_1(b),&y'(b)&=v'(b)I_1(b) \end{aligned}

となり、分割表示からも両境界条件を得る。

二つの解の差は同じ正則性をもち、斉次方程式と両境界条件を満たすので、境界核が自明であることから零である。ffのほとんど至る所の変更は各xxにおける積分値を変えない。u,v,Wu,v,Wは実数値なので、ffがほとんど至る所で実数値ならば積分表示も実数値である。P,Q,fP,Q,fが連続ならばy′′=f−Py′−Qyy''=f-Py'-Qyの右辺は連続であり、AC 関数y′y'の積分表示からy∈C2y\in C^2と全点の方程式を得る。▨

系 3.6.a<ba<b、P,Q∈C([a,b];R)P,Q\in C([a,b];\R)とし、実境界係数の各組(αa,βa)(\alpha_a,\beta_a)、(αb,βb)(\alpha_b,\beta_b)は非零とする。斉次境界値問題 (3) が自明解だけをもつならば、任意の連続関数f:[a,b]→Rf:[a,b]\to\Rに対して、式 (1)、式 (2) は一意なC2([a,b];R)C^2([a,b];\R)解をもち、その解は式 (7) の Green 関数を用いて

y(x)=∫abG(x,s)f(s) ds(9)y(x)=\int_a^bG(x,s)f(s)\,ds \tag{9}

で与えられる。

証明.補題 3.3の証明により、連続係数では複素数値の境界核も自明である。定理 3.5を適用すると、実数値性、C2C^2正則性と全点の方程式をもつ一意解を得る。▨

例 3.7 (不連続な外力).[0,1][0,1]上でf(x)=1f(x)=1(1/2<x<11/2<x<1)、f(x)=0f(x)=0(それ以外)とする。y′′=fy''=f、y(0)=y(1)=0y(0)=y(1)=0の Green 関数は、u(x)=−xu(x)=-x、v(x)=1−xv(x)=1-x、W=1W=1から得られる。定理 3.5により、一意解は

y(x)=∫1/21G(x,s) ds={−x/8,0≤x≤1/2,−x/8+(x−1/2)2/2,1/2≤x≤1y(x)=\int_{1/2}^1G(x,s)\,ds =\begin{cases} -x/8,&0\leq x\leq1/2,\\[1mm] -x/8+(x-1/2)^2/2,&1/2\leq x\leq1 \end{cases}

である。実際、x≤1/2x\leq1/2では積分は−x∫1/21(1−s) ds=−x/8-x\int_{1/2}^1(1-s)\,ds=-x/8であり、x≥1/2x\geq1/2では−(1−x)∫1/2xs ds−x∫x1(1−s) ds=−x/8+(x−1/2)2/2-(1-x)\int_{1/2}^x s\,ds-x\int_x^1(1-s)\,ds=-x/8+(x-1/2)^2/2となる。導関数は左側で−1/8-1/8、右側で−1/8+x−1/2-1/8+x-1/2であるから、y∈C1y\in C^1かつy′∈ACy'\in ACである。一方、y′y'の左右の微分はx=1/2x=1/2でそれぞれ00と11なので、yyはその点で二回微分可能でない。

Green 関数の分母W(s)W(s)が零にならないことは、斉次境界値問題の核が自明であることと対応する。パラメータが固有値へ近づいて核が非自明になると、この構成はそのままでは使うことができない。次の記事では、正則 Sturm–Liouville 問題に対象を限定し、微分作用素の対称性と固有関数の直交性を証明する。

4 演習

問題 4.1 (Green 関数の構成と検算). 境界値問題

y′′=1,y(0)=y(1)=0y''=1,\qquad y(0)=y(1)=0

について、Green 関数を構成し、積分表示から解を求めよ。また、境界条件と微分方程式を直接に確かめよ。

解答.

左端境界条件を満たす斉次方程式の解としてu(x)=−xu(x)=-xを、右端境界条件を満たす解としてv(x)=1−xv(x)=1-xを取る。このとき

W(u,v)=uv′−u′v=1W(u,v)=uv'-u'v=1

であるから、Green 関数は

G(x,s)={−x(1−s),x≤s,−s(1−x),s≤xG(x,s)= \begin{cases} -x(1-s),&x\leq s,\\ -s(1-x),&s\leq x \end{cases}

となる。したがって、

y(x)=∫01G(x,s) ds=−∫0xs(1−x) ds−∫x1x(1−s) ds=x(x−1)2.\begin{aligned} y(x) &=\int_0^1G(x,s)\,ds\\ &=-\int_0^x s(1-x)\,ds-\int_x^1x(1-s)\,ds =\frac{x(x-1)}2. \end{aligned}

実際にy(0)=y(1)=0y(0)=y(1)=0であり、y′′=1y''=1である。また、

∂xG(s+0,s)−∂xG(s−0,s)=1\partial_xG(s+0,s)-\partial_xG(s-0,s)=1

であるため、積分表示を二回微分したときに右辺の11が生じる。斉次方程式の解A+BxA+Bxが両端で00となるのはA=B=0A=B=0の場合だけであるから、この解は一意である。▨

問題 4.2 (固有値における可解性). 区間[0,π][0,\pi]上の境界値問題

y′′+y=sin⁡x,y(0)=y(π)=0y''+y=\sin x,\qquad y(0)=y(\pi)=0

が解をもたないことを示せ。また、右辺を零に置き換えた斉次境界値問題のすべての解を求めよ。

解答.

非同次方程式の一般解は

y(x)=Acos⁡x+Bsin⁡x−xcos⁡x2y(x)=A\cos x+B\sin x-\frac{x\cos x}{2}

である。実際、−xcos⁡x/2-x\cos x/2を二回微分して元の式へ代入すると、右辺としてsin⁡x\sin xを得る。左端条件からA=0A=0となるが、このとき

y(π)=π2≠0y(\pi)=\frac{\pi}{2}\ne0

である。したがって、二つの境界条件を同時に満たす解は存在しない。

斉次方程式y′′+y=0y''+y=0の一般解はy=Acos⁡x+Bsin⁡xy=A\cos x+B\sin xである。左端条件からA=0A=0となり、Bsin⁡π=0B\sin\pi=0であるため右端条件は任意のB∈RB\in\mathbb Rに対して成り立つ。ゆえに斉次境界値問題のすべての解は

y(x)=Bsin⁡x,B∈Ry(x)=B\sin x,\qquad B\in\mathbb R

である。特に境界核は自明でなく、非同次問題には解が存在しない。▨

問題 4.3 (Green 表示の証明再構成).a<ba<b、P,Q,f∈C([a,b];R)P,Q,f\in C([a,b];\R)とし、非零の実境界係数の組による斉次境界値問題の核が自明であるとする。式 (7) の Green 関数G(x,s)G(x,s)に対して

y(x)=∫abG(x,s)f(s) dsy(x)=\int_a^bG(x,s)f(s)\,ds

が非同次境界値問題

y′′+P(x)y′+Q(x)y=fy''+P(x)y'+Q(x)y=f

の一意な解になることを証明せよ。

解答.

式 (7) をs=xs=xで分けると

y(x)=v(x)∫axu(s)f(s)W(s) ds+u(x)∫xbv(s)f(s)W(s) ds.y(x) =v(x)\int_a^x\frac{u(s)f(s)}{W(s)}\,ds +u(x)\int_x^b\frac{v(s)f(s)}{W(s)}\,ds.

ここで

I1(x)=∫axu(s)f(s)W(s) ds,I2(x)=∫xbv(s)f(s)W(s) dsI_1(x)=\int_a^x\frac{u(s)f(s)}{W(s)}\,ds,\qquad I_2(x)=\int_x^b\frac{v(s)f(s)}{W(s)}\,ds

とおく。y=vI1+uI2y=vI_1+uI_2であり、微積分の基本定理から

I1′=ufW,I2′=−vfWI_1'=\frac{uf}{W},\qquad I_2'=-\frac{vf}{W}

を得る。vI1′+uI2′=0vI_1'+uI_2'=0であるから、

y′=v′I1+u′I2.y'=v'I_1+u'I_2.

I1(a)=0I_1(a)=0とI2(b)=0I_2(b)=0を用いると

y(a)=u(a)I2(a),y′(a)=u′(a)I2(a),y(b)=v(b)I1(b),y′(b)=v′(b)I1(b)\begin{aligned} y(a)&=u(a)I_2(a),& y'(a)&=u'(a)I_2(a),\\ y(b)&=v(b)I_1(b),& y'(b)&=v'(b)I_1(b) \end{aligned}

となる。Ba[u]=0B_a[u]=0およびBb[v]=0B_b[v]=0により、Ba[y]=Bb[y]=0B_a[y]=B_b[y]=0である。

さらに一回微分すると

y′′=v′′I1+u′′I2+(v′u−u′v)fW=v′′I1+u′′I2+f.y''=v''I_1+u''I_2+\frac{(v'u-u'v)f}{W} =v''I_1+u''I_2+f.

最後の等号ではv′u−u′v=Wv'u-u'v=Wを用いた。u,vu,vはL[u]=L[v]=0L[u]=L[v]=0を満たすため、

y′′+Py′+Qy=fy''+Py'+Qy=f

である。このffの項は、核のxx微分の跳躍

∂xG(s+0,s)−∂xG(s−0,s)=1\partial_xG(s+0,s)-\partial_xG(s-0,s)=1

に対応している。

二つの解が存在すると仮定すると、その差は斉次方程式と斉次境界条件を満たす。核が自明であるという仮定により差は00であるから、積分表示で得た解は一意である。▨

参考文献

  1. Earl A. Coddington, An Introduction to Ordinary Differential Equations, Dover Publications, 1989, originally published 1961.二点境界値問題、固有値問題、基本解を用いる Green 関数の構成を参考にした。
  2. William E. Boyce, Richard C. DiPrima, and Douglas B. Meade, Elementary Differential Equations and Boundary Value Problems, 12th ed., Wiley, 2021.Dirichlet 固有値問題と二階境界値問題の解の存在一意性を参考にした。

前提記事