1 解の延長と共通区間での一意性
定義 1.1.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを写像とする。開区間I,J上の絶対連続解y:I→Rd、z:J→RdがI⊆Jとz∣I=yを満たすとき、zをyの絶対連続解としての延長という。真に大きい開区間への絶対連続解としての延長をもたない解を最大絶対連続解といい、その定義区間を最大存在区間という。
定義 1.2.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを写像とする。I,Jを開区間とし、y:I→Rdとz:J→Rdを同じ方程式u′=f(t,u)の古典解とする。I⊆Jかつz∣I=yであるとき、zをyの延長 (extension of a solution) という。
yの任意の古典解としての延長zについて定義区間が元の区間と一致するとき、yを最大解 (maximal solution) といい、その定義区間を最大存在区間 (maximal interval of existence) という。
補題 1.3.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とする。写像f:Ω→Rdが Carathéodory 条件と時間について可積分な Lipschitz 係数の条件を局所的に満たすとする。開区間I,J上の絶対連続解y:I→Rd、z:J→Rdが、あるt0∈I∩Jでy(t0)=z(t0)を満たすならば、I∩Jの全体でy=zである。
証明.H=I∩Jとし、A={t∈H:y(t)=z(t)}とおく。t0∈Aであり、両解の連続性からAはHの相対位相で閉じている。任意のs∈Aに対して、(s,y(s))∈Ωの周りに、Ωに含まれる正の時間幅と球半径をもつ閉矩形を取る。局所条件により§E10.4 定理 3.3を適用することができ、同じ初期値をもつ両解はsの近傍で一致する。従ってAはHで相対的に開いている。区間Hは連結であるから、空でない開閉部分集合AはHに等しい。▨
2 最大絶対連続解の構成
定理 2.1.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdが Carathéodory 条件と時間について可積分な Lipschitz 係数の条件を局所的に満たすとする。任意の(t0,y0)∈Ωに対して、初期値問題
y′=f(t,y),y(t0)=y0は一意な最大絶対連続解をもつ。その最大存在区間はImax=(α,β)という開区間であり、−∞≤α<t0<β≤∞である。同じ初期値をもつ任意の開区間上の絶対連続解は、この最大解の制限である。
証明. 同じ初期値をもつ開区間上の絶対連続解の全体をSとする。§E10.4 定理 3.3によりSは空でない。各u∈Sの定義区間をIuと書き、
Imax=u∈S⋃Iuとおく。すべてのIuがt0を含むので、この和集合はt0を含む開区間である。補題 1.3により、各解は重なり上で一致する。従って
ymax(t)=u(t)(t∈Iu)によってymax:Imax→Rdが well-defined に定まり、そのグラフはΩに含まれる。
任意の有限閉区間[a,b]⊆Imaxを取る。a′=min{a,t0}、b′=max{b,t0}とおき、a′∈Iu、b′∈Ivを満たすu,v∈Sを取る。両区間はt0を含むので、[a′,t0]⊆Iu、[t0,b′]⊆Ivである。ymaxは前者でu、後者でvに一致し、両者はt0で同じ値をもつ。§E10.2 命題 2.6により、ymaxは[a′,b′]上で絶対連続である。長さが零の片方の区間は除けばよい。従って[a,b]上でも絶対連続である。
同じ分割の各部分で微分方程式はほとんど至る所で成り立つ。分点と各枝の例外集合の有限和は零集合なので、[a,b]上でも方程式がほとんど至る所で成り立つ。Imaxを可算個の有限閉区間で覆うと、Imax上での例外集合も零集合である。従ってymaxは初期値問題の絶対連続解である。
ymaxを開区間Jへ延長する絶対連続解zがあれば、z∈SなのでJ⊆Imaxである。延長の条件は逆の包含も与えるからJ=Imaxであり、ymaxは最大である。任意のz∈Sは構成からymaxの制限である。zも最大ならば、ymaxがその延長であることから定義区間は一致し、両解も一致する。▨
3 コンパクト集合上の可積分な支配
補題 3.1.d∈N≥1とし、Rdにノルム∥⋅∥を固定する。Ω⊆R×Rdを開集合、f:Ω→Rdを Carathéodory 条件を局所的に満たす写像とする。任意のコンパクト集合K⊆Ωに対して、非負関数mK∈L1(R)と Lebesgue 零集合NK⊆Rが存在し、すべての(t,u)∈Kでt∈/NKならば
∥f(t,u)∥≤mK(t)が成り立つ。
証明. 各p∈Kの周りに、pが内部に属し、Ωに含まれる閉矩形Rp=Jp×Bpを取る。Kのコンパクト性により、これらの内部から有限部分被覆を選び、対応する矩形をR1,…,Rnと書く。各矩形上の Carathéodory 条件から非負可積分な支配関数mj∈L1(Jj)と共通零集合Nj⊆Jjを取る。
mjをJjの外で零に延長した関数をmjとし、
mK(t)=j=1∑nmj(t),NK=j=1⋃nNjとおく。有限和なのでmK∈L1(R)であり、NKは零集合である。(t,u)∈Kならば、あるjに対して(t,u)∈Rjとなる。t∈/NKならばt∈/Njであり、∥f(t,u)∥≤mj(t)≤mK(t)を得る。K=∅の場合は空の和mK=0とNK=∅を取る。▨
この支配は時間の零集合を除いて成り立ち、f自身がK上で有界であることを要求しない。
4 有限端点での絶対連続解の延長
定理 4.1.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdが Carathéodory 条件と時間について可積分な Lipschitz 係数の条件を局所的に満たすとする。y:(α,β)→Rdを絶対連続解とする。
β<∞であり、あるt1∈(α,β)とコンパクト集合K⊆Ωが存在して
(t,y(t))∈K(t1≤t<β)を満たすならば、yはβを越えて絶対連続解として延長することができる。
α>−∞であり、あるt1∈(α,β)とコンパクト集合K⊆Ωが存在して(t,y(t))∈Kがα<t≤t1で成り立つならば、yはαを越えて絶対連続解として延長することができる。
証明. 右端点についての仮定を満たすt1,Kに補題 3.1を適用し、非負可積分関数mKを取る。絶対連続解の導関数は局所可積分であり、g(t)=f(t,y(t))とほとんど至る所で一致する。従って Lebesgue 測度の完備性によりgは可測であり、∥g(t)∥≤mK(t)が[t1,β)のほとんど至る所で成り立つ。特にg∈L1([t1,β);Rd)である。
§E10.2 系 2.5と§E10.4 補題 3.1により、t1≤s<t<βならば
∥y(t)−y(s)∥≤∫st∥g(r)∥dr≤∫stmK(r)drである。§E10.2 補題 1.3 (1)により、右辺はs,t↑βのとき零へ収束する。従ってy(t)は端点で Cauchy 条件を満たし、有限次元空間の完備性により
yβ=t↑βlimy(t)が存在する。Kは閉じているので、(β,yβ)∈K⊆Ωである。
y(β)=yβと定め、g(β)=0とする。t<βの積分表示でt↑βとすると、積分の残りの部分のノルムは∫tβmK(r)dr以下で零へ収束する。従って
y(t)=y(t1)+∫t1tg(r)dr(t1≤t≤β)が全点で成り立つ。§E10.2 補題 1.3 (3)により、端点値を加えたyは[t1,β]上で絶対連続である。
(β,yβ)∈Ωに§E10.4 定理 3.3を適用すると、あるδ>0と、z(β)=yβを満たす(β−δ,β+δ)上の絶対連続解zが存在する。そこで
y(t)={y(t),z(t),α<t<β,β≤t<β+δとおく。βをまたぐ任意の有限閉区間を、必要ならt1とβで分割すると、各部分上の関数は絶対連続であり、分点で値が一致する。§E10.2 命題 2.6によりyは局所絶対連続である。そのグラフはΩに含まれ、t=βではもとの二つの解の方程式がほとんど至る所で成り立つ。一点{β}は零集合なので、yは(α,β+δ)上の絶対連続解であり、求める延長である。
左端点についての仮定を満たすt1,Kに対しても、同補題からmKを取る。α<s<t≤t1に対する
∥y(t)−y(s)∥≤∫stmK(r)drと積分の小集合評価により、yα=limt↓αy(t)が存在し、(α,yα)∈K⊆Ωとなる。g(t)=f(t,y(t))は(α,t1]上で可積分である。積分表示の下端をαへ近づけると
y(t)=yα+∫αtg(r)dr(α≤t≤t1)を得る。従って端点を加えた関数は[α,t1]上で絶対連続である。初期値(α,yα)から得た局所解をαの左側に置き、右側にyを置く。端点値の一致と§E10.2 命題 2.6により局所絶対連続となり、分点以外のa.e.方程式とグラフ条件を保つので、αを越える延長を得る。▨
系 4.2.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdが Carathéodory 条件と時間について可積分な Lipschitz 係数の条件を局所的に満たすとする。y:(α,β)→Rdを最大絶対連続解とする。
β<∞ならば、任意のコンパクト集合K⊆Ωと任意のt1∈(α,β)に対して、(t,y(t))∈/Kを満たすt∈[t1,β)が存在する。特に、tn↑βかつ(tn,y(tn))∈/Kを満たす列を取ることができる。
α>−∞ならば、任意のコンパクト集合K⊆Ωと任意のt1∈(α,β)に対して、(t,y(t))∈/Kを満たすt∈(α,t1]が存在する。
証明. あるK,t1について右端点の結論が成り立たないと仮定する。このとき[t1,β)上のグラフはKに含まれるので、定理 4.1によりβを越える延長が存在する。これは最大性と両立しない。左端点の結論が成り立たない場合も、(α,t1]上のグラフがKに含まれるため、同定理の左端点での延長が最大性に反する。
右端点への列は、t1∈(α,β)をグラフがKの外にある点として選んだ後、各n∈N≥1に対して
max{tn,β−1/n}<sn<βとなるsnを取り、前半の結論をsnへ適用してtn+1∈[sn,β)を選べばよい。tn+1>tn、tn+1>β−1/nであるから、tn↑βである。▨
系 4.3.d∈N≥1、J⊆Rを開区間とし、Ω=J×Rd上のfが Carathéodory 条件と時間について可積分な Lipschitz 係数の条件を局所的に満たすとする。y:(α,β)→Rdを最大絶対連続解とする。有限端点βがJに属するならば、任意のt1∈(α,β)に対して
t1≤t<βsup∥y(t)∥=∞である。有限端点αがJに属するならば、任意のt1∈(α,β)に対してsupα<t≤t1∥y(t)∥=∞である。
証明. 右端点側の上限があるR≥0以下であると仮定する。[t1,β]⊆Jなので、
K=[t1,β]×{u:∥u∥≤R}はΩのコンパクト部分集合であり、[t1,β)上の解のグラフを含む。これは系 4.2に反する。左端点側で上限が有限ならば、[α,t1]⊆Jと同じ閉球の直積がグラフを含み、同じ系の左端点の結論に反する。▨
時間定義域の端点β∈/Jでは、[t1,β]×{u:∥u∥≤R}はΩに含まれない。従って、この非有界性の結論は時間定義域の外へは適用しない。
5 連続なベクトル場の最大解と延長
補題 5.1.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdを連続で、状態変数について局所 Lipschitz 連続な写像とする。このときfは Carathéodory 条件と時間について可積分な Lipschitz 係数の条件を局所的に満たす。また、このfに対する絶対連続解は古典解である。従って古典解と絶対連続解の最大性は一致する。
証明.Ωに含まれる閉矩形R=J×Bを取る。連続性とコンパクト性から、R上の大きさは有限な定数Mで支配される。時間可測性と状態連続性は全点で成り立つ。
R×Rdに距離max{∣t−s∣,∥u−v∥}を入れる。各p∈Rについて、局所 Lipschitz 定数Lpをもつ近傍Upと、pを中心とする半径2rp>0の球がUpに含まれるようなrpを取る。半径rpの球からRの有限部分被覆を選び、その半径の最小値をρ>0、定数の最大値をLとする。R内の二点の距離がρ未満ならば、一方を含む選択された半径rpの球に対し、両点は半径2rpの球に含まれる。
t∈Jとu,v∈Bを取る。Bは凸なので、状態の線分を各小線分の長さがρ未満となるように等分すると、各隣接対は同じUpに属する。各対の Lipschitz 評価を足すと
∥f(t,u)−f(t,v)∥≤L∥u−v∥を得る。従ってm=M、ℓ=Lと空の零集合が矩形上の条件を満たす。
絶対連続解は連続であり、f(t,y(t))も連続である。§E10.4 補題 2.4により積分方程式を満たし、§E10.4 補題 2.5により古典解である。逆に古典解は絶対連続解でもある。従って延長として許される関数の集合が一致し、最大性も一致する。▨
補題 5.2.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdは連続で、状態変数について局所 Lipschitz 連続であるとする。開区間I,J上の古典解y:I→Rd、z:J→Rdが、あるt0∈I∩Jでy(t0)=z(t0)を満たすならば、I∩Jの全体でy=zである。
証明.補題 5.1によりfは局所的な可積分支配条件を満たし、古典解は絶対連続解である。補題 1.3を適用して結論を得る。▨
定理 5.3.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdは連続で、状態変数について局所 Lipschitz 連続であるとする。任意の(t0,y0)∈Ωに対して、初期値問題y′=f(t,y)、y(t0)=y0は一意な古典的最大解をもつ。その最大存在区間はImax=(α,β)であり、−∞≤α<t0<β≤∞である。
証明.補題 5.1により局所条件を満たすfへ定理 2.1を適用する。得られた最大絶対連続解は古典解であり、二つの意味の最大性も一致するので、古典的最大解の存在と一意性を得る。▨
定理 5.4.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdは連続で、状態変数について局所 Lipschitz 連続であるとする。y:(α,β)→Rdを古典解とする。
β<∞であり、あるt1∈(α,β)とコンパクト集合K⊆Ωが存在して(t,y(t))∈Kがt1≤t<βで成り立つならば、yはβを越えて古典解として延長することができる。
α>−∞であり、あるt1∈(α,β)とコンパクト集合K⊆Ωが存在して(t,y(t))∈Kがα<t≤t1で成り立つならば、yはαを越えて古典解として延長することができる。
証明.補題 5.1と定理 4.1により絶対連続な延長が存在し、その延長は古典解である。
連続なfに対しては、右端点での積分評価を一定値の評価にすることができる。実際、M=max(t,u)∈K∥f(t,u)∥<∞とすると、t1≤s<t<βに対して
∥y(t)−y(s)∥≤∫st∥f(r,y(r))∥dr≤M(t−s)となる。従って端点極限を与える Cauchy 評価は、一般形の可積分支配を定数Mへ特殊化した評価である。▨
閉区間[a,b]上の古典解が与えられ、そのグラフがΩに含まれるならば、そのグラフ全体はΩのコンパクト部分集合である。解を(a,b)に制限して定理 5.4を両端で順に適用すると、[a,b]を含む開区間上の古典解へ延長することができる。端点での値は連続性により元の値に一致する。
系 5.5.d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdは連続で、状態変数について局所 Lipschitz 連続であるとする。y:(α,β)→Rdを古典的最大解とする。β<∞ならば、任意のコンパクト集合K⊆Ωと任意のt1∈(α,β)に対して、(t,y(t))∈/Kを満たすt∈[t1,β)が存在する。従ってtn↑βかつ(tn,y(tn))∈/Kを満たす列を取ることができる。
証明.補題 5.1により、yは最大絶対連続解でもある。系 4.2を適用すると、各区間の離脱点とその列を得る。▨
系 5.6.d∈N≥1、Ω=R×Rdとし、f:Ω→Rdは連続で、状態変数について局所 Lipschitz 連続であるとする。古典的最大解y:(α,β)→Rdがβ<∞を満たすならば、任意のt1∈(α,β)に対して
t1≤t<βsup∥y(t)∥=∞である。
証明.補題 5.1により古典的最大解は最大絶対連続解である。系 4.3にJ=Rを適用する。有限端点βはJに属するので、主張の非有界性を得る。▨
定義域Ωが全空間でない場合には、状態が有界でも、解のグラフがΩの境界へ近づくことで延長不能になることがある。延長不能性は、状態の発散だけでなく、時刻と状態の組が定義域内のコンパクト集合から離脱することとして述べる必要がある。
6 有限時間爆発と状態領域の境界
例 6.1 (有限時間爆発). 初期値問題
y′=y2,y(0)=1は、変数分離により
y(t)=1−t1を解としてもつ。実際、y′(t)=1/(1−t)2=y(t)2、y(0)=1なので、この関数は(−∞,1)上で方程式と初期条件を満たす。
この解の最大存在区間は(−∞,1)である。実際、t↑1のときy(t)→+∞であるから、t=1において有限な値をもつ連続な延長は存在しない。一方、f(t,y)=y2はR2上で連続であり、状態変数について局所 Lipschitz 連続である。したがって、有限端点の原因はベクトル場の特異点ではなく、解自身が有限時間で非有界になることである。
有限端点における延長定理は、解の存在区間を定性的に決める。次の記事では Grönwall の不等式を用い、同じ時間区間上の二つの解の差を定量的に評価する。
7 演習
問題 7.1 (状態領域の境界による延長不能).Ω=R×(−1,1)上の初期値問題
y′=1,y(0)=0を考える。この初期値問題の最大解と最大存在区間を求めよ。また、最大解が有界であるにもかかわらず、最大存在区間の有限端点を越えて延長することができない理由を示せ。
解答.
解yの定義区間に属する任意のtに対して、微分方程式と初期条件から
y(t)=y(0)+∫0t1ds=tを得る。したがって、y(t)=tが初期値問題の解となるためには(t,y(t))=(t,t)∈Ω、すなわち−1<t<1でなければならない。実際、y(t)=tは(−1,1)上で方程式と初期条件を満たす。
この解が1を含む開区間へ延長されたと仮定すると、延長も初期条件を満たす解であるから、その区間上でy(t)=tとなる。しかし、t≥1では(t,y(t))=(t,t)∈/Ωであり、解のグラフがΩに含まれない。左端点−1についても同じ理由で延長することができない。ゆえに最大解はy(t)=t、最大存在区間は(−1,1)である。
この最大解は∣y(t)∣<1を満たすので有界である。一方、t↑1のとき(t,y(t))→(1,1)∈/Ωとなり、t↓−1のときも(t,y(t))→(−1,−1)∈/Ωとなる。したがって、延長を妨げるのは状態の非有界性ではなく、解のグラフがベクトル場の定義域の境界へ達することである。▨
問題 7.2 (有限端点における延長証明の再構成).d∈N≥1、Ω⊆R×Rdを開集合とし、f:Ω→Rdは連続で、状態変数について局所 Lipschitz 連続であるとする。古典的最大解y:(α,β)→Rdがβ<∞を満たすとする。あるt1∈(α,β)とコンパクト集合K⊆Ωが存在し、(t,y(t))∈Kがt1≤t<βで成り立つと仮定する。この仮定から最大性との矛盾を導く証明を、次の五段階に分けて再構成せよ。
- fの有界性からy(t)の Cauchy 性を示す。
- 端点値yβを定め、(β,yβ)∈Ωを示す。
- 端点値から局所解zを構成する。
- yとzがβの左側で一致することを、積分方程式と
Lipschitz 評価から示す。
- 二つの解を貼り合わせて最大性に反する延長を得る。
さらに、Ω=R×Rdの場合に、有限な右端点をもつ最大解の状態が非有界になることを導け。
解答.
コンパクト集合K上で
M=(t,u)∈Kmax∥f(t,u)∥と置く。t1≤s<t<βに対して
∥y(t)−y(s)∥≤M(t−s)であるから、y(t)はt↑βで Cauchy 条件を満たす。したがって、yβ=limt↑βy(t)が存在する。Kは閉集合であるから(β,yβ)∈K⊆Ωである。Picard–Lindelöf の定理により、初期値z(β)=yβをもつ局所解zが存在する。
βの近くで二つのグラフを含む閉管状領域を取り、状態変数に関する Lipschitz 定数をLとする。t<τ<βに対する積分方程式の差から
∥y(t)−z(t)∥≤∥y(τ)−z(τ)∥+L∫tτ∥y(r)−z(r)∥drを得る。両解の端点値はyβに一致するので、τ↑βとすると
∥y(t)−z(t)∥≤L∫tβ∥y(r)−z(r)∥drとなる。σ<βを、[σ,β]上で両グラフが閉管状領域に含まれ、L(β−σ)<1となるように取る。y(β)=yβと補った両関数はこの閉区間上で連続なので、
D=σ≤r≤βmax∥y(r)−z(r)∥<∞である。先の積分評価はすべてのt∈[σ,β]に対して∥y(t)−z(t)∥≤L(β−σ)Dを与える。最大値を取るとD≤L(β−σ)Dとなり、L(β−σ)<1とD≥0からD=0を得る。従って二つの解は[σ,β]上で一致する。t<βではy、t≥βではzを用いて貼り合わせれば、βの近傍ではzに一致する古典解を得る。この延長の定義区間は元の区間を真に含むため、最大性に反する。
最後にΩ=R×Rdとする。あるt1以後で∥y(t)∥≤Rならば、解のグラフはコンパクト集合[t1,β]×B(0,R)に含まれる。前段の延長定理に反するため、任意のt1∈(α,β)に対してsupt1≤t<β∥y(t)∥=∞である。▨