1 局所可積分関数と Lebesgue 点
定義 1.1.I⊆Rを空でない開区間、K∈{R,C}、d∈N≥1とする。可測関数f:I→Kdが局所可積分 (locally integrable) であるとは、任意の有限閉区間[a,b]⊂Iに対して
∫ab∥f(t)∥dt<∞が成り立つことをいう。ここで∥⋅∥は Euclid ノルムであり、積分は Lebesgue 積分である。局所可積分関数をほとんど至る所の一致によって同一視した空間をLloc1(I;Kd)と書く。有限次元のベクトル値関数の積分は成分ごとに定める。
定義 1.2 (Lebesgue 点).I⊆Rを空でない開区間とし、K∈{R,C}、d∈N≥1とする。局所可積分な可測関数f:I→Kdに対して、x∈IがfのLebesgue 点 (Lebesgue point) であるとは、
r↓0lim2r1∫x−rx+r∥f(t)−f(x)∥dt=0が成り立つことをいう。半径r>0は[x−r,x+r]⊂Iを満たす範囲で取る。
例 1.3.K∈{R,C}、d∈N≥1とする。開区間I上の局所可積分関数f:I→Kdがx∈Iで連続ならば、xはfの Lebesgue 点である。実際、任意のε>0に対して、∣t−x∣<δならば∥f(t)−f(x)∥<εとなるδ>0が存在する。0<r<δならば定義中の平均もε以下である。
2 有限個の区間の選択
補題 2.1.I1,…,INをRの空でない有界開区間の有限族とする。この族から互いに素な区間J1,…,Jmを選び、
i=1⋃NIi⊆j=1⋃m3Jjを満たすようにすることができる。ここでJ=(c−r,c+r)に対して3J=(c−3r,c+3r)と書く。
証明. 残った区間のうち長さが最大のものを一つ選び、その区間と交わる区間をすべて除く操作を、区間が残らなくなるまで繰り返す。選ばれた区間を選択順にJ1,…,Jmとすると、有限回で操作が終わり、選ばれた区間は互いに素である。
選択時に除かれた区間I=(a−s,a+s)と、そのとき選ばれたJ=(c−r,c+r)を取る。最大長の選択からs≤rであり、I∩J=∅から∣a−c∣<r+sである。t∈Iに対して
∣t−c∣≤∣t−a∣+∣a−c∣<s+(r+s)≤3rなのでI⊆3Jである。選ばれた区間自身もJ⊆3Jを満たすため、主張の包含を得る。▨
3 中心極大関数の評価
定義 3.1 (中心極大関数).K∈{R,C}とし、f:R→Kを可積分関数とする。fの中心極大関数 (centered maximal function) を
Mf(x)=r>0sup2r1∫x−rx+r∣f(t)∣dt(x∈R)によって定める。Mfは+∞を値として取ることを許す。
定理 3.2.K∈{R,C}とし、f:R→Kを可積分関数とする。中心極大関数Mfは可測であり、任意のα>0に対して
λ1({x∈R:Mf(x)>α})≤α3∥f∥L1(R)が成り立つ。特に、Mf(x)<∞がほとんど至る所で成り立つ。
証明.r>0を固定し、
Ar(x)=2r1∫x−rx+r∣f(t)∣dtとおく。xn→xならば、区間(xn−r,xn+r)の指示関数は、端点x−r,x+rを除いて(x−r,x+r)の指示関数へ収束する。積分の被積分関数は∣f∣によって支配されるので、§E9.7 定理 3.2によりAr(xn)→Ar(x)である。したがってArは連続である。xを固定しrn→r>0とした場合も、端点を除く指示関数の収束と同じ支配関数を使うとArn(x)→Ar(x)を得る。従って
Mf(x)=r∈Q, r>0supAr(x)である。連続関数の可算上限であるからMfは可測である。
α>0とし、Eα={x:Mf(x)>α}のコンパクト部分集合Kを取る。K=∅の場合はλ1(K)=0である。K=∅の場合、各x∈Kに対して、あるr>0が
∫x−rx+r∣f(t)∣dt>α(2r)を満たす。この不等式を満たす区間全体はKの開被覆をなすため、有限部分被覆I1,…,INが存在する。補題 2.1によって、互いに素なJ1,…,Jmを選び、K⊆⋃j=1m3Jjとする。各Jjは有限部分被覆の一員なので、
λ1(K)≤j=1∑mλ1(3Jj)=3j=1∑mλ1(Jj)<α3j=1∑m∫Jj∣f(t)∣dt≤α3∥f∥L1(R).最後の不等式は、Jjが互いに素であることによる。§E9.4 定理 7.1によってEαのコンパクト部分集合について上限を取ると、主張の測度評価を得る。
任意のn∈N≥1に対して{Mf=∞}⊆Enであり、λ1(En)≤3∥f∥L1/nである。n→∞とすればλ1({Mf=∞})=0となる。▨
4 Lebesgue の微分定理
定理 4.1 (Lebesgue の微分定理).I⊆Rを空でない開区間とし、K∈{R,C}、d∈N≥1とする。f:I→Kdが局所可積分ならば、次が成り立つ。
- ほとんどすべてのx∈Iはfの Lebesgue 点である。
- fの任意の Lebesgue 点xにおいて、
h↓0limh1∫xx+hf(t)dt=h↓0limh1∫x−hxf(t)dt=f(x)
が成り立つ。
- x0∈I、c∈Kdとし、
F(x)=c+∫x0xf(t)dt(x∈I)
と定める。x<x0では積分を−∫xx0f(t)dtとする。Fはfの任意の Lebesgue 点xで微分可能であり、F′(x)=f(x)である。従って、この等式はほとんど至る所で成り立つ。
証明.I=R、d=1、f∈L1(R;K)の場合に、各x∈Rについて
Df(x)=r↓0limsup2r1∫x−rx+r∣f(t)−f(x)∣dtとおく。g∈Cc(R;K)とすると、三角不等式から
2r1∫x−rx+r∣f(t)−f(x)∣dt≤2r1∫x−rx+r∣f(t)−g(t)∣dt+2r1∫x−rx+r∣g(t)−g(x)∣dt+∣g(x)−f(x)∣.gの連続性により右辺第二項はr↓0で零へ収束するので、
Df(x)≤M(f−g)(x)+∣f(x)−g(x)∣を得る。
α>0を固定する。直前の不等式から
{Df>α}⊆{M(f−g)>α/2}∪{∣f−g∣>α/2}.右辺第一集合の測度は定理 3.2によって6∥f−g∥L1/α以下である。第二集合については
2αλ1({∣f−g∣>α/2})≤∫{∣f−g∣>α/2}∣f−g∣≤∥f−g∥L1である。従って、Lebesgue 外測度λ1∗を用いると
λ1∗({Df>α})≤α8∥f−g∥L1.§E9.13 定理 3.3により、∥f−g∥L1は任意に小さくすることができる。よってλ1∗({Df>α})=0である。Df≥0と
{Df>0}=n=1⋃∞{Df>1/n}から、{Df>0}も外測度零である。Lebesgue 測度は完備なので、Df=0がほとんど至る所で成り立つ。非負な平均の上極限が零であることは平均そのものが零へ収束することを意味し、L1(R;K)の場合の(1)を得る。
一般の開区間I上の局所可積分関数f=(f1,…,fd)を取る。有理数a<bで[a,b]⊂Iを満たす閉区間全体は可算であり、その内部はIを覆う。各区間[a,b]と各成分fjについて、fjを[a,b]の外で零とした関数をfj,a,b:R→Kと書く。∣fj∣≤∥f∥なのでfj,a,b∈L1(R;K)である。既に証明した結論から、fj,a,bの Lebesgue 点でない点は零集合に含まれる。これらの零集合を可算個の区間と有限個の成分について合わせた零集合をNとする。
x∈I∖Nに対し、a<x<bを満たす上記の区間を一つ取る。0<r<min{x−a,b−x}ならば、中心平均に現れるfj,a,bはfjに一致する。従って、各jについて∣fj(t)−fj(x)∣の中心平均は零へ収束する。不等式
∥f(t)−f(x)∥≤j=1∑d∣fj(t)−fj(x)∣からxはfの Lebesgue 点である。(1)が従う。
x∈Iをfの Lebesgue 点とする。十分小さいh>0に対して
h1∫xx+h∥f(t)−f(x)∥dt≤22h1∫x−hx+h∥f(t)−f(x)∥dt⟶0.左側区間[x−h,x]の平均にも同じ上界が成り立つ。各成分について§E9.7 補題 3.1を適用すると、左右の平均の第j成分とfj(x)との差の絶対値は、それぞれ対応する上のノルム平均以下である。成分数は有限なので、ベクトルとしての左右の平均もf(x)へ収束する。(2)を得る。
x0∈I、c∈Kdを固定し、主張のFを取る。積分の加法性と§E9.6 定理 3.2から、x,x+h∈Iかつh=0のとき
hF(x+h)−F(x)=h1∫xx+hf(t)dt.h>0の場合の右辺は右側平均であり、h<0の場合はk=−h>0としてk−1∫x−kxf(t)dtである。(2)により、xが Lebesgue 点ならば両方ともf(x)へ収束する。従ってF′(x)=f(x)であり、(1)から(3)が従う。▨
系 4.3.I⊆Rを空でない開区間、K∈{R,C}、d∈N≥1とする。局所可積分関数f,g:I→Kdが、任意のa<b、[a,b]⊂Iに対して
∫abf(t)dt=∫abg(t)dtを満たすならば、f=gがほとんど至る所で成り立つ。
5 具体例と演習
例 5.1 (段差関数).f(t)=1(0,∞)(t)とする。x=0ではfは近傍で定数なので、xは Lebesgue 点である。x=0ではf(0)=0であり、任意のr>0について
2r1∫−rr∣f(t)−f(0)∣dt=21であるから、0は Lebesgue 点ではない。不定積分は
F(x)=∫0xf(t)dt=max{x,0}であり、x=0ではF′(x)=f(x)、x=0では左微分係数が0、右微分係数が1である。中心平均2r1∫−rrf(t)dtは1/2に等しいが、その収束だけからFの微分可能性は従わない。
問題 5.2.0<β<1とし、f:R→Rをf(0)=0、f(t)=∣t∣−β(t=0)によって定める。fが局所可積分であることを示し、Lebesgue 点の全体と、F(x)=∫0xf(t)dtが微分可能である点の全体を求めよ。
解答.
R>0に対して
∫−RR∣f(t)∣dt=1−β2R1−β<∞なのでfは局所可積分である。x=0ではfが連続なのでxは Lebesgue 点である。原点での中心平均は
2r1∫−rr∣f(t)−f(0)∣dt=1−βr−β⟶∞であるから、Lebesgue 点の全体はR∖{0}である。積分を計算すると
F(x)=⎩⎨⎧x1−β/(1−β),0,−(−x)1−β/(1−β),x>0,x=0,x<0.x=0ではF′(x)=∣x∣−βである。h=0に対してF(h)/h=∣h∣−β/(1−β)→∞なので、Fは原点では微分可能でない。従って、Fが微分可能である点の全体もR∖{0}である。▨
解答.
x0∈Iを固定し、H(x)=∫x0x(f(t)−g(t))dtとおく。仮定と積分の線形性から、x≥x0とx<x0のどちらの場合もH(x)=0である。定理 4.1 (3)により、H′=f−gがほとんど至る所で成り立つ。一方、Hは恒等的に零なのでH′=0がすべての点で成り立ち、f=gがほとんど至る所で従う。▨