1 非同次解集合の構造
定理 1.1.K∈{R,C}、n∈N≥1とし、I⊆Rを内部が空でない区間、p0,…,pn−1,r∈Lloc1(I;K)とする。方程式
L[y]:=y(n)+j=0∑n−1pj(t)y(j)=r(t)ほとんど至る所(1)の解は、n≥2ではy∈Cn−1(I;K)かつy(n−1)∈ACloc(I;K)、n=1ではy∈ACloc(I;K)とする。ypを一つの解、S0(I)を同じ正則性をもつ斉次解全体とすると、式 (1) の全解集合は
yp+S0(I)={yp+yh:yh∈S0(I)}である。
また、d∈N≥1、A∈Lloc1(I;Kd×d)、b∈Lloc1(I;Kd)に対し、xpがx′=Ax+bの絶対連続解ならば、その全解集合はxp+SA(I)である。ここでSA(I)は同次系x′=Axの絶対連続解空間である。
証明.yh∈S0(I)を取る。解に課した正則性は和と差で保たれ、Lの線形性により
L[yp+yh]=L[yp]+L[yh]=rがほとんど至る所で成り立つ。逆にL[y]=rならばL[y−yp]=0であり、y−yp∈S0(I)となる。従ってy=yp+(y−yp)は表示した集合に属する。ベクトル系ではL[x]=x′−Axとおけば同じ計算が成り立つ。▨
特解の存在は§E10.7 命題 4.1と§E10.7 定理 1.1が与える。従って非同次解集合は、斉次解空間を一つの特解だけ平行移動したアフィン空間である。
連続な実係数a0,…,anが区間全体でan(t)=0を満たす場合、any(n)+⋯+a0y=gを最高階係数で割ると、pj=aj/an、r=g/anに対する式 (1) を得る。gも連続ならば、解の積分表示からy∈Cnが従い、古典解集合も特解と斉次解空間の和となる。局所可積分係数の場合に正規化するには、an=0がほとんど至る所で成り立つことに加え、係数商と外力商の局所可積分性が必要である。
2 絶対連続な基本行列による定数変化法
定理 2.1.K∈{R,C}、d∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、
A∈Lloc1(I;Kd×d),b∈Lloc1(I;Kd)とする。Φ∈ACloc(I;Kd×d)を同次系の基本行列、すなわちΦ′=AΦがほとんど至る所で成り立ち、すべてのt∈IでΦ(t)が可逆である行列とする。任意のt0∈Iとη∈Kdに対し、初期値問題
x′=Ax+bほとんど至る所,x(t0)=ηの一意な絶対連続解は、全点で
x(t)=Φ(t)[Φ(t0)−1η+∫t0tΦ(s)−1b(s)ds]と表される。被積分関数Φ−1bは局所可積分である。逆に、この表示で定める関数はI上で局所絶対連続であり、初期値問題を満たす。区間に含まれる端点も表示の対象とし、t<t0では積分を−∫tt0とする。
証明.§E10.2 系 3.2 (2)によりΦ−1は局所絶対連続であり、
(Φ−1)′=−Φ−1Φ′Φ−1=−Φ−1Aほとんど至る所となる。任意の有限閉区間J⊆Iでは、Φ−1は連続かつ有界である。従ってΦ−1bは可測であり、
∫J∥Φ(s)−1b(s)∥ds≤s∈Jmax∥Φ(s)−1∥∫J∥b(s)∥ds<∞を満たす。
初期値問題の任意の絶対連続解xに対して、c=Φ−1xとおく。§E10.2 定理 3.1 (2)によりcは局所絶対連続であり、ほとんど至る所で
c′=−Φ−1Ax+Φ−1(Ax+b)=Φ−1bとなる。§E10.2 系 2.5により、すべてのt∈Iで
c(t)=Φ(t0)−1η+∫t0tΦ(s)−1b(s)dsである。左からΦ(t)を掛けると、主張の表示式を得る。
逆に右辺の積分でcを定めると、被積分関数の局所可積分性と§E10.2 系 2.5によりcは局所絶対連続であり、c′=Φ−1bがほとんど至る所で成り立つ。積x=Φcも局所絶対連続で、
x′=AΦc+ΦΦ−1b=Ax+bほとんど至る所となる。t=t0を代入すると初期値を得る。すべての解が同じ表示をもつので一意性も従う。▨
3 連続係数の古典公式
定義 3.1.I⊆Rを内部が空でない区間、n∈N≥1とし、A:I→Rn×nを連続とする。同次系
Y′=A(t)Y(2)のC1級の実数値解を列にもつ行列値関数Φ:I→Rn×nが、すべてのt∈Iで可逆であるとき、Φを式 (2) の基本行列 (fundamental matrix) という。すなわち
Φ′=AΦ,detΦ(t)=0(t∈I)を満たすC1級の行列値関数である。含まれる端点での微分は片側微分とする。
連続実係数の古典基本行列は局所絶対連続であり、§E10.7 定義 2.1の条件を満たす。逆に連続な実行列Aに対する実数値の絶対連続な基本行列では、AΦが連続なので、全点積分表示を微分するとΦ∈C1と全点の等式Φ′=AΦを得る。含まれる端点では片側微分となる。また、ある一点で列が線形独立な古典同次解を並べれば、§E10.7 定理 2.2により区間全体で可逆になる。
系 3.2 (線形連立系の定数変化公式).I⊆Rを内部が空でない区間、n∈N≥1とし、A:I→Rn×nとb:I→Rnを連続とする。Φを式 (2) の古典基本行列とする。t0∈Iとη∈Rnに対して、初期値問題
Y′=A(t)Y+b(t),Y(t0)=η(3)の一意なC1級の解は
Y(t)=Φ(t)[Φ(t0)−1η+∫t0tΦ(s)−1b(s)ds](4)である。
証明.定理 2.1を実数値のA,b,Φ,ηに適用する。表示式は実数値を取り、得られた絶対連続解YについてAY+bは連続である。全点積分表示を通常の微積分の基本定理で微分すると、Y∈C1かつ式 (3) は全点で成立する。逆に古典解は絶対連続解であるから、同じ表示式を満たす。▨
4 高階方程式の定数変化法
系 4.1.K∈{R,C}、n∈N≥1、I⊆Rを内部が空でない区間とし、p0,…,pn−1,r∈Lloc1(I;K)とする。y1,…,ynを対応する斉次n階方程式の基本解系とし、
Φ(t)=(yj(i−1)(t))1≤i,j≤nとおく。任意のt0∈Iと初期値η=(η0,…,ηn−1)T∈Knに対し、
y(n)+j=0∑n−1pjy(j)=rほとんど至る所,y(j)(t0)=ηj(0≤j<n)の一意な解は
y(t)=j=1∑nyj(t)[(Φ(t0)−1η)j+∫t0t(Φ(s)−1)jnr(s)ds]である。解の正則性はn≥2でCn−1かつ最上の導関数y(n−1)が局所絶対連続、n=1で局所絶対連続とする。係数と外力が連続ならば、解はCn級であり、方程式は全点で成立する。
証明.§E10.7 命題 4.1により、各列(yj,yj′,…,yj(n−1))Tは同じ伴随系の絶対連続解である。§E10.7 命題 5.4によりdetΦは全点で零でない。従ってΦは伴随系の基本行列である。この系の外力はb=(0,…,0,r)Tなので、Φ−1bの第j成分は(Φ−1)jnrである。定理 2.1の第一成分を取ると、表示式を得る。正則性と高階方程式への双方向の対応も§E10.7 命題 4.1から従う。
係数と外力が連続ならば、最後の伴随成分の積分表示の被積分関数r−∑j=0n−1pjy(j)は連続である。従ってy(n−1)はC1級となり、含まれる端点での片側微分も含めてy∈Cnと全点の方程式を得る。▨
5 二階方程式の公式
系 5.1 (二階方程式の定数変化公式).K∈{R,C}、I⊆Rを内部が空でない区間とし、P,Q,R∈Lloc1(I;K)とする。方程式
y′′+P(t)y′+Q(t)y=R(t)ほとんど至る所(5)に対応する斉次方程式の基本解系をy1,y2とし、W=y1y2′−y1′y2とおく。t0∈Iに対して
u1(t)u2(t)=−∫t0tW(s)y2(s)R(s)ds,=−∫t0tW(s)y1(s)R(s)dsとおけば、
yp(t)=u1(t)y1(t)+u2(t)y2(t)(6)はyp(t0)=yp′(t0)=0を満たす式 (5) の特解である。yp∈C1(I;K)、yp′∈ACloc(I;K)であり、P,Q,Rが連続ならばyp∈C2で方程式は全点で成立する。
証明. 同次解の導関数行列と、伴随系の外力の積は
Φ=(y1y1′y2y2′),Φ−1(0R)=W1(y2′−y1′−y2y1)(0R)=(−y2R/Wy1R/W)である。系 4.1をn=2、初期ベクトルη=0として適用すると、表示式、初期値、正則性を得る。被積分関数の局所可積分性は、基本行列の逆行列が各有限閉区間で有界であることによる。▨
例 5.2 (定数変化法). 方程式
y′′+y=etを考える。斉次方程式の基本解系としてy1=cost、y2=sintを取るとW=1である。定数変化公式は
u1′=−etsint,u2′=etcostを与える。積分定数は斉次解へ吸収することができるので零とし、
u1=−2et(sint−cost),u2=2et(sint+cost)と取る。したがって
yp=u1cost+u2sint=2et.実際、yp′′+yp=etである。一般解は
y=C1cost+C2sint+2etとなる。
6 未定係数法と共鳴
未定係数法は、右辺と同じ型の有限次元関数空間が定係数微分作用素で保たれることを用いる。次の定理は、試行関数の形と共鳴補正を同時に与える。
定理 6.1.Pを複素係数多項式とし、
P(D)y=eλtq(t)(9)を考える。ここでλ∈C、qは次数d以下の多項式とする。λがPの重複度m≥0の根であるとする。m=0はP(λ)=0を意味する。
このとき、次数がd以下の多項式sが存在して
yp(t)=eλttms(t)(10)が式 (9) の特解になる。
証明.
P(z)=(z−λ)mR(z),R(λ)=0と書く。移動公式§E10.8 補題 1.1により
P(D)(eλtu(t))=eλtDmR(D+λ)u(t).§E10.8 補題 1.2を多項式Rに適用すると、R(λ)=0であることから、R(D+λ)は次数がd以下の複素係数多項式全体がなす空間上で可逆である。したがって
R(D+λ)v=qを満たす次数d以下の多項式vが存在する。
m=0ならばu=vと置く。m≥1ならば、v(t)=∑k=0daktkと書き、各項をm回積分して各積分定数を零と取ると、対応する項は
(k+m)!akk!tk+mとなる。したがって、いずれの場合にもDmu=vを満たす多項式u=tmsが得られ、degs≤dである。定数係数微分作用素DmとR(D+λ)は可換であるから、このuについて
DmR(D+λ)u=R(D+λ)Dmu=R(D+λ)v=qであるから、式 (10) は特解である。
▨
右辺が
eαt(q1(t)cos(βt)+q2(t)sin(βt))
である実方程式では、λ=α+iβとして複素指数多項式を用い、得た複素特解の実部を取る。共鳴次数mは、複素数α+iβが特性多項式の根としてもつ重複度である。
例 6.2 (共鳴しない場合の未定係数法). 方程式
y′′−y=e2tの特性多項式はP(λ)=λ2−1であり、2は特性根でない。そこでyp=Ae2tと置くと
yp′′−yp=(4A−A)e2t=3Ae2tである。A=1/3とすれば特解
yp=31e2tを得る。一般解は
y=C1et+C2e−t+31e2tである。
例 6.3 (共鳴する場合の補正). 方程式
y′′−3y′+2y=etでは、特性多項式
P(λ)=(λ−1)(λ−2)が右辺の指数λ=1を単根にもつ。etは斉次解であるため、Aetを代入しても左辺は零になる。重複度m=1に従ってyp=Atetと置く。移動公式により
P(D)(Atet)=AetP(D+1)t=AetD(D−1)t=−Aet.したがってA=−1と取れば
yp=−tetが特解になる。直接代入してもyp′′−3yp′+2yp=etを確認することができる。
定数変化法は局所可積分係数と外力をもつ線形方程式へ適用することができ、基本行列と積分によって絶対連続解を与える。未定係数法は右辺の型が限られる一方、有限個の係数を決める計算へ帰着する。次の記事では、定係数連立系の基本行列を行列指数関数として構成する。
7 演習
問題 7.1 (定数変化法の転用). 方程式
y′′+y=tに対して、斉次方程式の基本解系y1=cost、y2=sintと基点t0=0を用い、定数変化法で特解を求めよ。得られた特解を直接代入して検算し、一般解を記せ。
解答.
Wronskian はW=1である。定数変化公式から
u1(t)u2(t)=−∫0tssinsds=tcost−sint,=∫0tscossds=tsint+cost−1を得る。したがって、
yp(t)=u1(t)cost+u2(t)sint=t−sintである。実際、yp′′+yp=tとなる。−sintは斉次解であるため、この特解はより簡単な特解tと斉次解だけ異なる。よって一般解は
y(t)=C1cost+C2sint+tである。▨
問題 7.2 (重複度二の共鳴補正). 方程式
(D−1)2y=etに未定係数法を適用し、一般解を求めよ。試行関数Aetが特解を与えない理由と、必要な共鳴補正の次数を説明し、得られた特解を移動公式により検算せよ。
解答.
1は特性多項式(λ−1)2の重複度二の根であり、etとtetはともに斉次解である。したがってAetを代入すると左辺は零になり、特解を得ることができない。共鳴補正としてyp=At2etと置く。移動公式から
(D−1)2(At2et)=etD2(At2)=2Aetであるため、A=1/2と定めればよい。特解はyp=t2et/2であり、一般解は
y(t)=(C1+C2t+21t2)etである。▨
問題 7.3 (余弦外力との共鳴). 方程式
y′′+y=costに未定係数法を適用して一般解を求めよ。得られた特解について、t≥0における振幅の包絡線と特解の絶対値の単調性を区別して述べよ。
解答.
特性多項式はP(λ)=λ2+1であり、iは単根である。右辺costはeitの実部であり、costとsintは斉次解であるため、共鳴補正を一回施して
yp=Atsintと置く。微分すると
yp′=Asint+Atcost,yp′′=2Acost−Atsintであるから、
yp′′+yp=2Acostとなる。したがってA=1/2であり、一般解は
y(t)=C1cost+C2sint+2tsintである。
t≥0では特解の絶対値は
∣yp(t)∣=2t∣sint∣≤2tを満たすので、振幅の包絡線はt/2とともに増大する。一方、∣yp(π/2)∣=π/4であるが∣yp(π)∣=0であるから、∣yp(t)∣自身は[0,∞)上で単調増加ではない。▨
問題 7.4 (正割外力と定数変化法). 区間I=(−π/2,π/2)上の方程式
y′′+y=sectに定数変化法を適用して一般解を求めよ。また、未定係数法をこの外力へ適用することができない理由を、有限個の指数関数、多項式、正弦関数および余弦関数から作られる外力との比較によって説明せよ。
解答.
斉次方程式の基本解系としてy1=cost、y2=sintを取り、基点を0とする。Wronskian はW=1である。定数変化公式から
u1(t)u2(t)=−∫0tsinssecsds=−∫0ttansds=log(cost),=∫0tcosssecsds=∫0t1ds=tを得る。I上ではcost>0であるため、log(cost)は実数として定義される。したがって
yp(t)=costlog(cost)+tsintは特解である。実際、二回微分して整理すると
yp′′+yp=costsin2t+cost=sectとなる。よって一般解は
y(t)=C1cost+C2sint+costlog(cost)+tsintである。
未定係数法が扱う外力の有限和は、指数関数、多項式、正弦関数および余弦関数の積からなり、有限な点t=±π/2を越えて連続に延長される。これに対してsectはIの両端へ近づくと発散するため、そのような有限和ではない。したがって未定係数法の試行関数は適用することができないが、I上でsectは連続であるため定数変化法は適用することができる。▨