§E10.14Sturm–Liouville 問題

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両端を固定した長さL>0L>0の一様な弦の振動を変数分離すると、空間方向の関数は

−y′′=λy,y(0)=y(L)=0-y''=\lambda y,\qquad y(0)=y(L)=0

を満たす。この問題から現れる正弦関数は、異なる振動数どうしで直交する。係数や端点条件を変えたとき、どのような条件のもとで固有値は実数となり、異なる固有値に属する解は直交するのだろうか。

個々の方程式を解いて固有関数を求めるだけでは、この共通した構造は見えにくい。二階微分方程式に重みと境界条件を組み込み、固有値をもつ境界値問題として捉える枠組みが Sturm–Liouville 問題である。この枠組みの重要性は、解の具体式に依存せず、微分式と境界条件がもたらす対称性から固有値と固有関数の性質を導く点にある。

本記事では、正則 Sturm–Liouville 問題において対称性が固有値の実性と固有関数の直交性をもたらす仕組みを明らかにする。

1 正則 Sturm–Liouville 問題

定義 1.1.a<ba<bとする。実数値関数p,q,wp,q,wが

p∈C1([a,b]),q,w∈C([a,b]),p(x)>0,w(x)>0(a≤x≤b)p\in C^1([a,b]),\qquad q,w\in C([a,b]),\qquad p(x)>0,\quad w(x)>0 \quad(a\le x\le b)

を満たすとする。微分式

L[y]=−(p(x)y′(x))′+q(x)y(x)(1)L[y]=-\bigl(p(x)y'(x)\bigr)'+q(x)y(x) \tag{1}

を正則 Sturm–Liouville 式 (regular Sturm–Liouville expression) という。

最高階係数ppと重みwwが閉区間全体で正であることが正則性の一部である。端点でppまたはwwが零になる問題には、本記事の定理をそのまま適用することができない。

定義 1.2. 実数αa,βa,αb,βb\alpha_a,\beta_a,\alpha_b,\beta_bが

(αa,βa)≠(0,0),(αb,βb)≠(0,0)(\alpha_a,\beta_a)\ne(0,0),\qquad (\alpha_b,\beta_b)\ne(0,0)

を満たすとする。

αay(a)+βap(a)y′(a)=0,αby(b)+βbp(b)y′(b)=0(2)\begin{aligned} \alpha_a y(a)+\beta_a p(a)y'(a)&=0,\\ \alpha_b y(b)+\beta_b p(b)y'(b)&=0 \end{aligned} \tag{2}

を実係数の斉次分離型境界条件 (real homogeneous separated boundary conditions) という。

式 (1)、式 (2) の下で

L[y]=λw(x)y(3)L[y]=\lambda w(x)y \tag{3}

を正則 Sturm–Liouville 固有値問題 (regular Sturm–Liouville eigenvalue problem) という。式 (2) を満たす非零解が存在するとき、λ\lambdaを固有値 (Sturm–Liouville eigenvalue)、その解を固有関数 (Sturm–Liouville eigenfunction) という。

Dirichlet 条件はβa=βb=0\beta_a=\beta_b=0、Neumann 条件はαa=αb=0\alpha_a=\alpha_b=0の場合である。Robin 条件では関数値と流束py′py'の線形結合を指定する。

2 Lagrange の恒等式

定理 2.1 (絶対連続関数に対する積分 Lagrange 恒等式).a<ba<bとし、実数値関数p∈C1([a,b])p\in C^1([a,b])とq∈C([a,b])q\in C([a,b])がp(x)>0p(x)>0をすべてのx∈[a,b]x\in[a,b]で満たすとする。u,v∈AC([a,b];C)u,v\in AC([a,b];\C)とし、あるU,V∈AC([a,b];C)U,V\in AC([a,b];\C)が存在して、ほとんど至る所で

u′=Up,v′=Vpu'=\frac{U}{p},\qquad v'=\frac{V}{p}

が成り立つと仮定する。このときu,v∈C1([a,b])u,v\in C^1([a,b])であり、すべてのx∈[a,b]x\in[a,b]に対してU(x)=p(x)u′(x)U(x)=p(x)u'(x)、V(x)=p(x)v′(x)V(x)=p(x)v'(x)が成り立つ。ほとんど至る所で

L[u]=−U′+qu,L[v]=−V′+qvL[u]=-U'+qu,\qquad L[v]=-V'+qv

と定めると、L[u],L[v]∈L1([a,b];C)L[u],L[v]\in L^1([a,b];\C)であり、次が成り立つ。

  1. 積分恒等式 ∫ab(L[u] v‾−u L[v]‾)dx=[uV‾−Uv‾]ab=[p(uv′‾−u′v‾)]ab\int_a^b\left(L[u]\,\overline v-u\,\overline{L[v]}\right)dx =\left[u\overline V-U\overline v\right]_a^b =\left[p\bigl(u\overline{v'}-u'\overline v\bigr)\right]_a^b が成り立つ。
  2. 実数αa,βa,αb,βb\alpha_a,\beta_a,\alpha_b,\beta_bが(αa,βa)≠(0,0)(\alpha_a,\beta_a)\ne(0,0)、(αb,βb)≠(0,0)(\alpha_b,\beta_b)\ne(0,0)を満たすとする。uuとvvがともに αay(a)+βap(a)y′(a)=0,αby(b)+βbp(b)y′(b)=0\begin{aligned} \alpha_a y(a)+\beta_a p(a)y'(a)&=0,\\ \alpha_b y(b)+\beta_b p(b)y'(b)&=0 \end{aligned} を満たすならば、 [p(uv′‾−u′v‾)]ab=0\left[p\bigl(u\overline{v'}-u'\overline v\bigr)\right]_a^b=0 であり、(1)の積分は零である。

証明.ppは正の連続関数であり、UUとVVは連続であるから、U/pU/pとV/pV/pは連続である。§E10.2 定理 2.4と仮定した微分の等式により、すべてのx∈[a,b]x\in[a,b]に対して

u(x)=u(a)+∫axU(t)p(t) dt,v(x)=v(a)+∫axV(t)p(t) dtu(x)=u(a)+\int_a^x\frac{U(t)}{p(t)}\,dt, \qquad v(x)=v(a)+\int_a^x\frac{V(t)}{p(t)}\,dt

が成り立つ。したがってu,v∈C1([a,b])u,v\in C^1([a,b])であり、U=pu′U=pu'、V=pv′V=pv'は全点で成り立つ。また、U′,V′∈L1([a,b];C)U',V'\in L^1([a,b];\C)であり、q,u,vq,u,vは有界であるから、L[u]L[u]とL[v]L[v]は可積分である。

複素共役は実線形写像であるから、§E10.2 定理 3.1 (1)によりv‾\overline vとV‾\overline Vは絶対連続である。§E10.2 定理 3.1 (2)を二つの積に適用すると、ほとんど至る所で

ddx(uV‾−Uv‾)=u′V‾+uV′‾−U′v‾−Uv′‾=uV′‾−U′v‾=L[u] v‾−u L[v]‾\begin{aligned} \frac{d}{dx}\left(u\overline V-U\overline v\right) &=u'\overline V+u\overline{V'}-U'\overline v-U\overline{v'}\\ &=u\overline{V'}-U'\overline v\\ &=L[u]\,\overline v-u\,\overline{L[v]} \end{aligned}

となる。第二の等号では仮定した微分の等式とppが実数値であることを用いた。二つの積は絶対連続であるから、§E10.2 定理 2.4を適用すると(1)を得る。

次に、c∈{a,b}c\in\{a,b\}を一つの端点とし、その端点の境界係数を(αc,βc)(\alpha_c,\beta_c)と書く。uuとvvが式 (2) を満たすならば、

(u(c),U(c)),(v(c)‾,V(c)‾)\bigl(u(c),U(c)\bigr),\qquad \bigl(\overline{v(c)},\overline{V(c)}\bigr)

はいずれも非零線形形式(ξ,η)↦αcξ+βcη(\xi,\eta)\mapsto\alpha_c\xi+\beta_c\etaの複素数上の核に属する。この核は一次元であるから、二つのベクトルの行列式は零であり、

u(c)V(c)‾−U(c)v(c)‾=0u(c)\overline{V(c)}-U(c)\overline{v(c)}=0

となる。両端で同じ結論が成り立つので(2)を得る。

▨

定理 2.2 (Lagrange の恒等式).u,v∈C2([a,b])u,v\in C^2([a,b])とする。このとき

uL[v]−vL[u]=ddx[p(x)(u′(x)v(x)−u(x)v′(x))].(4)uL[v]-vL[u] =\frac{d}{dx} \left[ p(x)\bigl(u'(x)v(x)-u(x)v'(x)\bigr) \right]. \tag{4}

したがって

∫ab(uL[v]−vL[u]) dx=[p(u′v−uv′)]ab.(5)\int_a^b\bigl(uL[v]-vL[u]\bigr)\,dx = \left[ p(u'v-uv') \right]_a^b. \tag{5}

証明.C2C^2級関数u,vu,vに対してU=pu′U=pu'、V=pv′V=pv'と置くと、U,V∈C1([a,b])U,V\in C^1([a,b])である。定理 2.1 (1)の第二の関数をv‾\overline vとし、等式の両辺に−1-1を掛けると、ほとんど至る所で

uL[v]−vL[u]=ddx[p(u′v−uv′)]uL[v]-vL[u] =\frac{d}{dx}\bigl[p(u'v-uv')\bigr]

を得る。両辺は連続であるから、この等式はすべてのx∈[a,b]x\in[a,b]で成り立つ。区間上で積分すれば式 (5) を得る。

▨

複素数値関数については、vvをv‾\overline vに置き換える。係数が実数値であるためL[v‾]=L[v]‾L[\overline v]=\overline{L[v]}であり、

∫ab(L[u] v‾−u L[v]‾)dx=[p(uv′‾−u′v‾)]ab(6)\int_a^b \left( L[u]\,\overline v-u\,\overline{L[v]} \right)dx = \left[ p\bigl(u\overline{v'}-u'\overline v\bigr) \right]_a^b \tag{6}

を得る。

3 境界形式の消滅と対称性

補題 3.1.u,v∈C2([a,b])u,v\in C^2([a,b])がともに式 (2) を満たすならば、

[p(uv′‾−u′v‾)]ab=0.(7)\left[ p\bigl(u\overline{v'}-u'\overline v\bigr) \right]_a^b=0. \tag{7}

証明.u,v∈C2([a,b])u,v\in C^2([a,b])であるから、u,vu,vは絶対連続である。また、p∈C1([a,b])p\in C^1([a,b])であるから、U=pu′U=pu'とV=pv′V=pv'はC1C^1級であり、特に絶対連続である。等式u′=U/pu'=U/pとv′=V/pv'=V/pは区間全体で成り立ち、uuとvvはともに式 (2) を満たすから、定理 2.1 (2)を適用すると式 (7) を得る。

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重み付き内積を

⟨u,v⟩w=∫abu(x)v(x)‾w(x) dx(8)\langle u,v\rangle_w =\int_a^b u(x)\overline{v(x)}w(x)\,dx \tag{8}

と定める。w>0w>0であるから、これは正定値な内積である。

定理 3.2. 式 (2) を満たす二つのC2C^2級関数u,vu,vに対して

⟨w−1L[u],v⟩w=⟨u,w−1L[v]⟩w(9)\left\langle w^{-1}L[u],v\right\rangle_w = \left\langle u,w^{-1}L[v]\right\rangle_w \tag{9}

が成り立つ。

証明. 式 (8) の定義から

⟨w−1L[u],v⟩w−⟨u,w−1L[v]⟩w=∫ab(L[u]v‾−uL[v]‾)dx.\left\langle w^{-1}L[u],v\right\rangle_w -\left\langle u,w^{-1}L[v]\right\rangle_w = \int_a^b \left( L[u]\overline v-u\overline{L[v]} \right)dx.

式 (6) と補題 3.1により、右辺は零である。

▨

ここで証明したのは、指定した境界条件を満たす二階連続微分可能な関数についての積分恒等式である。この恒等式から、作用素の自己共役性までは結論していない。

4 固有値の実性と固有関数の直交性

系 4.1. 正則 Sturm–Liouville 問題 (3) の固有値は実数である。

証明.yyを固有値λ\lambdaに属する非零固有関数とする。式 (3) は

w−1L[y]=λyw^{-1}L[y]=\lambda y

と書くことができる。定理 3.2でu=v=yu=v=yと置くと

⟨λy,y⟩w=⟨y,λy⟩w.\langle\lambda y,y\rangle_w =\langle y,\lambda y\rangle_w.

本記事の内積は第一変数について線形であるから、

λ⟨y,y⟩w=λ‾⟨y,y⟩w.\lambda\langle y,y\rangle_w =\overline\lambda\langle y,y\rangle_w.

w>0w>0かつy≠0y\ne0により⟨y,y⟩w>0\langle y,y\rangle_w>0である。したがってλ=λ‾\lambda=\overline\lambdaであり、λ\lambdaは実数である。

▨

系 4.2.ym,yny_m,y_nを、それぞれ異なる固有値λm≠λn\lambda_m\ne\lambda_nに属する固有関数とする。このとき

∫abym(x)yn(x)‾w(x) dx=0.(10)\int_a^b y_m(x)\overline{y_n(x)}w(x)\,dx =0. \tag{10}

証明. 固有値は実数である。対称性から

λm⟨ym,yn⟩w=⟨w−1L[ym],yn⟩w=⟨ym,w−1L[yn]⟩w=λn⟨ym,yn⟩w.\lambda_m\langle y_m,y_n\rangle_w = \left\langle w^{-1}L[y_m],y_n\right\rangle_w = \left\langle y_m,w^{-1}L[y_n]\right\rangle_w = \lambda_n\langle y_m,y_n\rangle_w.

したがって

(λm−λn)⟨ym,yn⟩w=0.(\lambda_m-\lambda_n) \langle y_m,y_n\rangle_w=0.

固有値が異なるため、内積は零である。

▨

例 4.3 (Dirichlet 問題の直交性).

L[y]=−y′′,w=1,y(0)=y(L)=0L[y]=-y'',\qquad w=1,\qquad y(0)=y(L)=0

はp=1p=1、q=0q=0の正則 Sturm–Liouville 問題である。§E10.13 例 2.2で得た

λn=(nπL)2,yn(x)=sin⁡(nπxL)\lambda_n=\left(\frac{n\pi}{L}\right)^2,\qquad y_n(x)=\sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)

は異なる固有値に属するため、

∫0Lsin⁡(mπxL)sin⁡(nπxL) dx=0(m≠n)\int_0^L \sin\left(\frac{m\pi x}{L}\right) \sin\left(\frac{n\pi x}{L}\right)\,dx=0 \qquad(m\ne n)

が系 4.2から従う。

注意 4.4. 直前の Dirichlet 問題には具体的な固有値と固有関数が存在する。一方、本記事は、一般の正則 Sturm–Liouville 問題に対する固有値列の存在を証明していない。固有値列の無限遠への発散、固有関数系の完備性、および関数の固有関数展開には、作用素論を含む追加の解析が必要である。完全系から得られる二乗平均収束の固有関数展開と、それを用いた境界値問題の解表示は、「応用:正則 Sturm–Liouville 問題」で扱う。

次の記事で扱う Legendre 方程式は Sturm–Liouville 形に書くことができるが、最高階係数p(x)=1−x2p(x)=1-x^2が端点x=±1x=\pm1で零になる。したがって、Legendre 多項式の直交性に本記事の正則問題の定理を直接適用せず、Rodrigues の公式から別に証明する。

5 演習

問題 5.1 (Lagrange の恒等式と境界形式).p∈C1([a,b])p\in C^1([a,b])とq,w∈C([a,b])q,w\in C([a,b])を実数値関数とし、p>0p>0、w>0w>0とする。微分作用素

L[y]=−(py′)′+qyL[y]=-(py')'+qy

を考える。実係数の分離境界条件

α1y(a)+α2p(a)y′(a)=0,β1y(b)+β2p(b)y′(b)=0\alpha_1y(a)+\alpha_2p(a)y'(a)=0,\qquad \beta_1y(b)+\beta_2p(b)y'(b)=0

を満たすC2C^2級関数u,vu,vに対して、Lagrange の恒等式を導き、境界形式が消滅することを示せ。さらに、w−1Lw^{-1}Lが重み付き内積に関して対称であることを証明せよ。ただし、各端点の二つの境界係数は同時には零でないとする。

解答.

直接計算すると、

(L[u])v‾−uL[v]‾=(−(pu′)′+qu)v‾−u(−(pv′‾)′+qv‾)=ddx[p(uv′‾−u′v‾)].\begin{aligned} (L[u])\overline v-u\overline{L[v]} &=\bigl(-(pu')'+qu\bigr)\overline v -u\bigl(-(p\overline{v'})'+q\overline v\bigr)\\ &=\frac{d}{dx}\left[p\bigl(u\overline{v'}-u'\overline v\bigr)\right]. \end{aligned}

これを[a,b][a,b]上で積分すれば、

∫ab((L[u])v‾−uL[v]‾) dx=[p(uv′‾−u′v‾)]ab\int_a^b\bigl((L[u])\overline v-u\overline{L[v]}\bigr)\,dx =\left[p\bigl(u\overline{v'}-u'\overline v\bigr)\right]_a^b

を得る。

端点aaでは、ベクトル

(u(a),p(a)u′(a)),(v(a)‾,p(a)v′(a)‾)\bigl(u(a),p(a)u'(a)\bigr),\qquad \bigl(\overline{v(a)},p(a)\overline{v'(a)}\bigr)

はいずれも実係数行ベクトル(α1,α2)(\alpha_1,\alpha_2)の核に属する。この核は複素数上で一次元であるから、二つのベクトルの行列式は00であり、

p(a)(u(a)v′(a)‾−u′(a)v(a)‾)=0p(a)\bigl(u(a)\overline{v'(a)}-u'(a)\overline{v(a)}\bigr)=0

となる。端点bbでも同じ議論が成り立つため、境界形式は消滅する。重み付き内積

⟨f,g⟩w=∫abfg‾ w dx\langle f,g\rangle_w=\int_a^bf\overline g\,w\,dx

について、

⟨w−1L[u],v⟩w=∫ab(L[u])v‾ dx=∫abuL[v]‾ dx=⟨u,w−1L[v]⟩w\begin{aligned} \langle w^{-1}L[u],v\rangle_w &=\int_a^b(L[u])\overline v\,dx\\ &=\int_a^bu\overline{L[v]}\,dx =\langle u,w^{-1}L[v]\rangle_w \end{aligned}

である。したがって、w−1Lw^{-1}Lはこの内積に関して対称である。▨

問題 5.2 (非一定の重みをもつ固有関数). 区間[0,π][0,\pi]上で

p(x)=w(x)=e2x,q(x)=0p(x)=w(x)=e^{2x},\qquad q(x)=0

とし、Dirichlet 条件y(0)=y(π)=0y(0)=y(\pi)=0を課す。各n∈N≥1n\in\NNに対して

yn(x)=e−xsin⁡(nx),λn=n2+1y_n(x)=e^{-x}\sin(nx),\qquad \lambda_n=n^2+1

と置く。yny_nが固有値λn\lambda_nに属する非零固有関数であることを直接計算によって示せ。さらに、m≠nm\ne nならばλm≠λn\lambda_m\ne\lambda_nであり、ymy_mとyny_nが重みwwに関して直交することを示せ。

解答.

n∈N≥1n\in\NNに対してx=π/(2n)x=\pi/(2n)と置くと

yn(π2n)=e−π/(2n)≠0y_n\left(\frac{\pi}{2n}\right) =e^{-\pi/(2n)}\ne0

であるから、yny_nは零関数ではない。また、

yn′(x)=e−x(ncos⁡(nx)−sin⁡(nx))y_n'(x)=e^{-x}\bigl(n\cos(nx)-\sin(nx)\bigr)

であり、

(p(x)yn′(x))′=ddx[ex(ncos⁡(nx)−sin⁡(nx))]=−(n2+1)exsin⁡(nx).\begin{aligned} \bigl(p(x)y_n'(x)\bigr)' &=\frac{d}{dx}\left[e^x\bigl(n\cos(nx)-\sin(nx)\bigr)\right]\\ &=-(n^2+1)e^x\sin(nx). \end{aligned}

したがって

L[yn]=−(pyn′)′=(n2+1)exsin⁡(nx)=λne2xe−xsin⁡(nx)=λnwyn.L[y_n]=-(py_n')' =(n^2+1)e^x\sin(nx) =\lambda_n e^{2x}e^{-x}\sin(nx) =\lambda_n w y_n.

さらに、sin⁡(0)=sin⁡(nπ)=0\sin(0)=\sin(n\pi)=0であるから、yn(0)=yn(π)=0y_n(0)=y_n(\pi)=0である。以上により、yny_nはλn\lambda_nに属する非零固有関数である。

m,n∈N≥1m,n\in\NNかつm≠nm\ne nならばm2≠n2m^2\ne n^2であるから、λm≠λn\lambda_m\ne\lambda_nである。重み付き内積では指数関数が相殺され、

⟨ym,yn⟩w=∫0πe−xsin⁡(mx)e−xsin⁡(nx)e2x dx=∫0πsin⁡(mx)sin⁡(nx) dx=12[sin⁡((m−n)x)m−n−sin⁡((m+n)x)m+n]0π=0\begin{aligned} \langle y_m,y_n\rangle_w &=\int_0^\pi e^{-x}\sin(mx)e^{-x}\sin(nx)e^{2x}\,dx\\ &=\int_0^\pi\sin(mx)\sin(nx)\,dx\\ &=\frac12\left[ \frac{\sin((m-n)x)}{m-n} -\frac{\sin((m+n)x)}{m+n} \right]_{0}^{\pi}\\ &=0 \end{aligned}

となる。したがって、ymy_mとyny_nは重みwwに関して直交する。▨

問題 5.3 (複素境界条件による対称性の破れ). 区間[0,1][0,1]上でp=w=1p=w=1、q=0q=0とし、

L[y]=−y′′,y′(0)−(1+i)y(0)=0,y′(1)−(1+i)y(1)=0L[y]=-y'',\qquad y'(0)-(1+i)y(0)=0,\qquad y'(1)-(1+i)y(1)=0

とする。境界条件の係数を実数とする仮定を外すと、境界形式の消滅と固有値の実数性が失われることを、一つの固有関数を用いて示せ。

解答.

y(x)=e(1+i)xy(x)=e^{(1+i)x}と置くと、両端で

y′(x)−(1+i)y(x)=0y'(x)-(1+i)y(x)=0

である。また、

L[y]=−(1+i)2y=−2iyL[y]=-(1+i)^2y=-2iy

であるから、yyは非実固有値λ=−2i\lambda=-2iに属する固有関数である。

さらに、u=v=yu=v=yとして境界形式を計算すると、

yy′‾−y′y‾=∣y∣2((1−i)−(1+i))=−2i∣y∣2y\overline{y'}-y'\overline y =|y|^2\bigl((1-i)-(1+i)\bigr) =-2i|y|^2

である。したがって、

[yy′‾−y′y‾]01=−2i(e2−1)≠0.\left[y\overline{y'}-y'\overline y\right]_0^1 =-2i(e^2-1)\ne0.

複素共役を取った境界値ベクトルは元の複素係数境界条件の同じ核に属さないため、実係数の場合に用いた一次元部分空間の議論を適用することができない。その結果、境界形式は消滅せず、作用素の対称性と固有値の実数性も保証されない。▨

参考文献

  1. Anton Zettl, Sturm-Liouville Theory, Mathematical Surveys and Monographs 121, American Mathematical Society, 2005.正則問題の定義、Lagrange の恒等式、分離型自己共役境界条件を参考にした。
  2. E. C. Titchmarsh, Eigenfunction Expansions Associated with Second-Order Differential Equations, 2nd ed., vol. I, Oxford University Press, Oxford, 1962.正則 Sturm–Liouville 問題における固有値の実性と固有関数の直交性を参考にした。

前提記事