1 解と初期値問題
定義 1.1.D⊆R2とし、f:D→Rとする。内部が空でない区間I⊆R上の関数y:I→RがACloc(I;R)に属し、すべてのt∈Iに対して(t,y(t))∈Dであり、
y′(t)=f(t,y(t))がIの内部のほとんど至る所で成り立つとき、yを方程式y′=f(t,y)のI上の局所絶対連続解 (locally absolutely continuous solution) という。
点(t0,y0)∈Dを指定した初期値問題ではt0∈Iとy(t0)=y0も課す。局所絶対連続関数は連続な代表元として与えられているため、初期値は全点で意味をもつ。
定義 1.2.D⊆R2とし、f:D→Rとする。内部が空でない区間I⊆R上の一階連続微分可能な関数y:I→Rが
(x,y(x))∈D,y′(x)=f(x,y(x))(x∈I)を満たすとき、yを方程式y′=f(x,y)のI上の解 (solution of a first-order differential equation) という。
点(x0,y0)∈Dを指定した
y′=f(x,y),y(x0)=y0を初期値問題 (initial value problem) という。解を述べるときは、x0∈Iを含む定義区間Iも指定する。
Iが端点を含む場合、その端点における微分はIの内側からの片側微分を意味する。
初期条件を指定しない方程式の解には、通常、積分定数が現れる。ただし、一つの定数を含む式がすべての解を表すとは限らない。導出の途中で未知関数に依存する量を割った場合には、その量が零になる解を別に調べなければならない。
2 変数分離形
証明.H∈C1(J)であり、H′=1/hは零にならない。yが微分方程式を満たすとき、§E10.2 定理 3.1 (1)によりH∘yは局所絶対連続であり、ほとんど至る所で
(H∘y)′(t)=h(y(t))y′(t)=g(t)=G′(t)となる。§E10.2 系 2.5の最後の主張をH∘y−Gに適用すると、この関数はI0上で定数である。従って全点の積分表示が従う。
逆に全点の等式を仮定する。hは連続で零にならないためJ上で符号一定であり、Hは狭義単調である。また、H(J)は開区間であり、逆写像K=H−1:H(J)→JはC1級で、
K′(z)=h(K(z))を満たす。実際、逆写像の連続性はHの狭義単調性から従い、微分商に平均値の定理を用いれば表示した微分公式を得る。仮定した等式から
y=K∘(G+C)である。Gは§E10.2 系 2.5により局所絶対連続であるから、§E10.2 定理 3.1 (1)によりyも局所絶対連続であり、ほとんど至る所で
y′(t)=K′(G(t)+C)g(t)=h(y(t))g(t)が成り立つ。▨
証明.yが微分方程式を満たすならば、連鎖律により(H∘y−G)′=0であるから、H(y)−GはI0上で定数である。
逆に、H(y(x))=G(x)+Cが全点で成り立つと仮定する。H′=1/hはJ上で零にならず符号一定であるから、Hは狭義単調である。その逆写像K:H(J)→Jは連続であり、Jが端点を含む場合には相対的な片側微分を用いて
K′(z)=h(K(z))を満たす。従ってy=K∘(G+C)はI0上で一階連続微分可能であり、端点では片側微分の意味で
y′(x)=K′(G(x)+C)G′(x)=h(y(x))g(x)が成り立つ。▨
h(c)=0ならばy(x)=cは定数解である。この解は1/h(y)を用いる導出から除かれるため、最初にhの零点を調べる必要がある。非定数解についても、値域がhの零点をまたぐか否かは、一意性などの追加情報がなければ形式的な積分だけから判断することができない。したがって、積分表示はhが零にならない状態区間ごとに用いる。特にhが零点で局所 Lipschitz 連続でない場合には、非定数解と定数解が零点で接続する可能性がある。命題 2.1は零点を含まない開枝上のみを特徴づける。
例 2.3 (変数分離形の初期値問題). 初期値問題
y′=y(1−y),y(0)=21を考える。h(y)=y(1−y)の零点から、y≡0とy≡1は定数解である。初期値はこの二つと異なるので、0<y<1の範囲で
y(1−y)1=y1+1−y1を用いて分離する。積分すると
log1−yy=x+Cである。初期条件からC=0となるため、
y(x)=1+exex(x∈R)を得る。この関数の値はつねに(0,1)に属し、直接微分するとy′=y(1−y)となるため、全実数上の解である。
3 一次線形方程式
定理 3.1.I⊆Rを内部が空でない区間、t0∈Iとし、P,Q∈Lloc1(I;R)とする。
μ(t)=exp(∫t0tP(s)ds)とおく。任意のy0∈Rに対して、初期値問題
y′+P(t)y=Q(t)a.e.,y(t0)=y0はI上で一意な局所絶対連続解をもつ。その解はすべてのt∈Iに対して
y(t)=μ(t)1(y0+∫t0tμ(s)Q(s)ds)と表される。
証明.A(t)=∫t0tP(s)dsとおく。§E10.2 系 2.5によりAは局所絶対連続でA′=Pがほとんど至る所で成り立つ。§E10.2 定理 3.1 (1)を指数関数とAに適用すると、μは局所絶対連続であり、μ′=Pμがほとんど至る所で成り立つ。またμ>0であるから、§E10.2 系 3.2 (1)によりμ−1も局所絶対連続である。
μは各有限閉部分区間上で有界なのでμQ∈Lloc1(I;R)である。従って表示式の括弧内は§E10.2 系 2.5により局所絶対連続である。§E10.2 定理 3.1 (2)から表示式は局所絶対連続な関数yを定め、ほとんど至る所で
(μy)′=μQ,μy′+μ′y=μ(y′+Py)が成り立つ。μ>0であるからy′+Py=Qを得る。表示式へt=t0を代入すればy(t0)=y0である。
逆に、zを同じ初期値問題の局所絶対連続解とする。積の微分公式から(μz)′=μQがほとんど至る所で成り立つ。§E10.2 系 2.5を用いると、すべてのt∈Iに対して
μ(t)z(t)=z(t0)+∫t0tμ(s)Q(s)dsである。z(t0)=y0とμ(t0)=1からzは表示式に一致し、一意性が従う。▨
定理 3.2.Iを内部が空でない区間とし、P,Q:I→Rを連続関数とする。x0∈Iに対して
μ(x)=exp(∫x0xP(t)dt)と置く。このとき、方程式
y′+P(x)y=Q(x)のI上の解は、定数Cを用いて
y(x)=μ(x)1(C+∫x0xμ(t)Q(t)dt)と表される。初期条件y(x0)=y0を課すとC=y0であり、解は一意に定まる。
証明.P,Qは局所可積分であるから、定理 3.1を初期値y(x0)=Cに適用すると、表示式はI上の一意な局所絶対連続解を与える。この解は全点で
y(x)=C+∫x0x(Q(t)−P(t)y(t))dtを満たす。被積分関数は連続であるから、微積分の基本定理によりyは一階連続微分可能であり、y′+Py=Qは全点で成り立つ。逆に、古典解は局所絶対連続解でもあるため、同じ一般形の一意性と表示式が適用される。初期条件y(x0)=y0を課した場合にはC=y0である。▨
例 3.3 (一次線形方程式). 初期値問題
y′+2y=4x,y(0)=1では、積分因子はμ(x)=e2xである。したがって
(e2xy)′=4xe2x,e2xy=2xe2x−e2x+Cとなる。初期条件からC=2であるから、
y(x)=2x−1+2e−2x(x∈R)を得る。実際、
y′+2y=(2−4e−2x)+2(2x−1+2e−2x)=4xであり、y(0)=1も成り立つ。
例 3.4 (局所可積分だが非有界な係数).I=(−1,1)上で
a(t)={∣t∣−1/2,0,t=0,t=0と定め、y′=a(t)y、y(0)=1を考える。a∈Lloc1(I;R)であるが、aは0のどの近傍でも有界でない。すべてのt∈Iに対して
A(t)=∫0ta(s)ds=2sgn(t)∣t∣である。定理 3.1をP=−a、Q=0に適用すると、一意な局所絶対連続解は
y(t)=exp(A(t))=exp(2sgn(t)∣t∣)である。Aの全点積分表示と§E10.2 定理 3.1 (1)からy∈ACloc(I;R)であり、t=0では直接微分によってy′(t)=a(t)y(t)となる。従って方程式はほとんど至る所で成り立つ。
一方、t>0に対して平均値の定理を指数関数へ適用すると、あるθt∈(0,2t)が存在して
ty(t)−y(0)=eθtt2t=t2eθtとなる。右辺はt↓0のとき+∞へ発散するため、yは0で微分可能でない。したがって、a(0)=0と定めても方程式を0での点ごとの微分等式として読むことはできない。
4 ポテンシャルを直接構成する完全微分形
定義 4.1.D⊆R2を開集合とし、M,N:D→Rを連続関数とする。一階連続微分可能な関数F:D→Rが存在して
Fx=M,Fy=Nを満たすとき、
M(x,y)dx+N(x,y)dy=0をD上の完全微分形 (exact differential form) という。このFをポテンシャル (potential function) という。
曲線y=y(x)に沿っては
dxdF(x,y(x))=Fx(x,y(x))+Fy(x,y(x))y′(x)=M(x,y(x))+N(x,y(x))y′(x)
である。したがって、N(x,y(x))=0の範囲では、微分方程式
M(x,y)+N(x,y)y′=0
の解曲線はF(x,y)=Cを満たす。逆に、F(x,y(x))=Cを微分すれば同じ方程式を得る。
ポテンシャルを構成するときは、例えばFx=Mをxについて積分して
F(x,y)=∫x∗xM(s,y)ds+c(y)
と置き、Fy=Nが定めるc′(y)を求める。得られたFについて二つの偏導関数を直接検算する。三次元の星型開集合上のC1級ベクトル場について、回転が零ならばポテンシャルが存在することは、「曲線と線積分」の§E4.18 定理 6.2が扱う。
例 4.2 (完全微分形). 方程式
(2xy+1)+(x2+2y)y′=0を考える。M(x,y)=2xy+1をxについて積分すると
F(x,y)=x2y+x+c(y)である。Fy=x2+c′(y)=N(x,y)=x2+2yからc(y)=y2と取ることができる。したがって
F(x,y)=x2y+x+y2であり、解曲線は
x2y+x+y2=Cを満たす。Fx=2xy+1とFy=x2+2yを直接計算すれば、構成したポテンシャルを検算することができる。Fy=0の点の近くでは、この関係はyをxの関数として定め、元の方程式を満たす。
5 Bernoulli 方程式
命題 5.1.I⊆Rを内部が空でない区間とし、P,Q∈Lloc1(I;R)、n∈R∖{0,1}とする。J⊆R∖{0}を開区間とし、J上で実数値の冪写像
pn(u)=un,ϕ(u)=u1−nがC1級であり、pn′(u)=nun−1、ϕ′(u)=(1−n)u−nを満たすと仮定する。さらに、ϕは開区間ϕ(J)の上へのC1級微分同相写像であるとする。
内部が空でない区間I0⊆Iと局所絶対連続関数y:I0→Jに対して、yが
y′+P(t)y=Q(t)ynをI0の内部のほとんど至る所で満たすことと、v=ϕ∘yが局所絶対連続で
v′+(1−n)P(t)v=(1−n)Q(t)をほとんど至る所で満たすことは同値である。従って、後者の解v:I0→ϕ(J)から前者の解はy=ϕ−1∘vによって回収される。
証明.yが Bernoulli 方程式を満たすと仮定する。§E10.2 定理 3.1 (1)によりv=ϕ∘yは局所絶対連続であり、ほとんど至る所で
v′=(1−n)y−ny′が成り立つ。yは零にならないから、Bernoulli 方程式をynで割ることができる。得られた等式を1−n倍し、v=y1−nと上の微分公式を代入すれば
v′+(1−n)Pv=(1−n)Qを得る。
逆に、v:I0→ϕ(J)が表示した一次線形方程式の局所絶対連続解であるとする。ψ=ϕ−1とおくと、§E10.2 定理 3.1 (1)によりy=ψ∘vは局所絶対連続で、y(I0)⊆Jである。等式v=ϕ(y)=y1−nに連鎖律を用いると、ほとんど至る所で
(1−n)y−ny′=v′=(1−n)Q−(1−n)Py1−nとなる。1−n=0で割り、ynを掛けるとy′+Py=Qynを得る。▨
命題 5.2.Iを内部が空でない区間とし、P,Q:I→Rを連続関数、n∈R∖{0,1}とする。内部が空でない区間I0⊆Iを取り、一階連続微分可能な関数y:I0→Rは零にならず、u↦unとu↦u1−nがy(I0)を含む開区間上で実数値の微分可能関数として定義されるとする。このyが
y′+P(x)y=Q(x)ynを満たすならば、v=y1−nは一次線形方程式
v′+(1−n)P(x)v=(1−n)Q(x)を満たす。
逆に、J⊆R∖{0}を開区間とし、u↦unとϕ(u)=u1−nがJ上で実数値の微分可能関数として定義されるとする。さらに、ϕが単射で、その像ϕ(J)上に微分可能な逆写像ψ:ϕ(J)→Jをもつとする。この一次線形方程式の解v:I0→Rがv(I0)⊆ϕ(J)を満たすならば、y=ψ∘vは元の Bernoulli 方程式を満たす。
証明.y(I0)は零を含まない一つの符号の枝に含まれる。その枝ではϕ′(u)=(1−n)u−nが連続かつ零にならないため、ϕは像の上へのC1級微分同相写像である。従って命題 5.1の順方向から、v=y1−nは表示した一次線形方程式をほとんど至る所で満たす。vは冪写像とyの合成として一階連続微分可能であり、方程式の両辺も連続であるから、等式は全点で成り立つ。
逆向きの仮定の下でも、J上でϕ′は連続かつ零にならない。仮定した単射性と逆関数の微分公式からψはC1級であるため、命題 5.1を同じ枝に適用することができる。従ってy=ψ∘vは局所絶対連続であり、元の Bernoulli 方程式をほとんど至る所で満たす。右辺Qyn−Pyは連続であり、§E10.2 系 2.5の全点積分表示と微積分の基本定理からyは一階連続微分可能で、方程式は全点で成り立つ。▨
整数n>0の場合にはy≡0も Bernoulli 方程式の解であるが、v=y1−nでは表されない。整数指数では負の値からなる区間もJに選ぶことができる。u↦u1−nが正負の値を同じ値へ移す場合には、Jを正の区間または負の区間に限って逆写像の枝を選ぶ必要がある。非整数の冪についても、実数値の冪写像が定義される区間と、その同じ写像の逆枝を用いなければならない。
例 5.3 (Bernoulli 方程式).x>0で
y′+xy=x2y2を考える。y=0の解についてv=y−1と置くと
v′−xv=−x2となる。積分因子1/xを掛けると
(xv)′=−xであるから、v=Cx−x3/2を得る。したがって
y(x)=Cx−x3/21である。この式は、分母が零にならないx>0の各区間で解を定める。さらに、変換で除外したy≡0も解である。非零解を直接微分すると
y′=−(Cx−x3/2)2C−3x2/2,−xy+x2y2=−(Cx−x3/2)2C−x2/2+(Cx−x3/2)2x2となり、右辺はy′に一致する。
6 解法を適用するときの確認
一階方程式を計算によって解くときは、次の順序で確認する。
- 方程式の型を判定し、係数と右辺が定義される領域を定める。
- 未知関数に依存する量で割る場合には、その量が零になる解を先に調べる。
- 原始関数、積分因子、ポテンシャル、または変数変換を、その適用条件とともに用いる。
- 初期条件から積分定数を決める。
- 得た関数を元の微分方程式へ代入し、初期条件と定義区間を確認する。
これらの計算は解の候補を構成する。一方、一般の初期値問題に解が存在して一意に定まる条件は、次の記事で扱う。
7 演習
問題 7.1 (変数分離法における解の回収と検算). 微分方程式
y′=y2について、次を実行せよ。
- y2で割ることができる区間に限定して非零解を求め、割り算によって除外される解を別に求めよ。
- 初期条件y(0)=1を満たす解と、その解が定義される0を含む最大の区間を求めよ。
- 得た解を元の微分方程式と初期条件へ代入して検算せよ。
解答.
y=0である区間では
y2y′=1であるから、積分によって
−y1=t+Cを得る。したがって、非零解は定数cを用いて
y(t)=c−t1と表される。y2で割る操作はy=0の場合には許されないため、定数解y≡0を別に回収する必要がある。
初期条件y(0)=1からc=1となる。したがって、初期値問題の解は
y(t)=1−t1であり、0を含む最大の定義区間は(−∞,1)である。実際、
y′(t)=(1−t)21=y(t)2,y(0)=1が成り立つ。定数解y≡0は微分方程式を満たすが、初期条件を満たさない。▨
問題 7.2 (Bernoulli 変換と最大解). 微分方程式
y′=y3の実数値解をすべて求め、それぞれの最大の定義区間を定めよ。非零解については、変換v=y−2の値域、解の符号、および有限時刻で零解へ接続することができないことを確認せよ。
解答.
yが零にならない区間では、v=y−2と置くことができる。vの値域は正の実数に含まれ、
v′=−2y−3y′=−2であるから、ある定数C∈Rが存在して
v(t)=C−2t>0となる。したがってt<C/2であり、yの符号は区間上で一定なので、非零解は
y(t)=C−2t1またはy(t)=−C−2t1と表される。
非零解を有限時刻で零解へ接続することはできない。実際、解y:I→Rの非零集合の連結成分をKとすると、K上では上の表示が成り立つ。Kの有限端点aがIの内点であると仮定する。a<C/2ならば、Kからaへ近づけたときのyの極限は符号に応じて±1/C−2aとなり、y(a)=0と両立しない。a=C/2ならば∣y(t)∣はKからaへ近づくと非有界になり、yのaにおける連続性と両立しない。a>C/2はC−2t>0と両立しない。したがって非零集合はIの内部に境界点をもたず、区間上の解は恒等的に零であるか、区間全体で上のいずれか一方の符号をもつ。
二つの非零解はともに(−∞,C/2)上で定義され、
y′(t)=±(C−2t)−3/2=y(t)3を満たす。t↑C/2のとき∣y(t)∣→∞であるから、有限な実数値をもつ解としてC/2を越えて延長することはできない。したがって各非零解の最大の定義区間は(−∞,C/2)である。零解y≡0はR全体で定義され、その最大の定義区間はRである。任意の区間上の解は、以上の最大解のいずれかをその区間へ制限したものである。▨