1 Legendre 方程式の級数解
定義 1.1.ν∈Rに対する
(1−x2)y′′−2xy′+ν(ν+1)y=0(1)を Legendre 方程式 (Legendre equation) という。
ν=nを非負整数とする。式 (1) の次数nの多項式解で
Pn(1)=1を満たすものを Legendre 多項式 (Legendre polynomial) といい、Pnと書く。
y=∑k=0∞akxkを式 (1) へ代入する。xkの係数を比較すると
(k+2)(k+1)ak+2+(ν(ν+1)−k(k+1))ak=0
である。したがって
ak+2=(k+2)(k+1)(k−ν)(k+ν+1)ak(k≥0)(2)
を得る。偶数次係数はa0から、奇数次係数はa1から、それぞれ独立に決まる。
命題 1.2.ν=nを非負整数とする。nと同じ偶奇性をもつ係数列を選ぶと、式 (2) のk=nにおいてan+2=0となり、それ以後の同じ偶奇性の係数もすべて零になる。したがって、次数nの非零多項式解が存在する。この多項式解の空間は一次元である。
証明.nが偶数ならばa0=0,a1=0、nが奇数ならばa0=0,a1=0とする。式 (2) を同じ偶奇性について繰り返すと、k=nで分子の因子k−nが零になるためan+2=0である。その後は漸化式によりan+4,an+6,…も零になる。
k<nではk−n=0かつk+n+1=0であるから、選んだ最初の非零係数からan=0が得られる。したがって次数はちょうどnである。
逆に次数n以下の非零多項式解があれば、その最高次係数の次数をmとする。式 (1) のxmの係数は
(n(n+1)−m(m+1))amであるからm=nでなければならない。式 (2) を最高次から下向きに読むと、anを指定すれば同じ偶奇性の全係数が一意に定まり、反対の偶奇性の有限解は存在しない。したがって多項式解の空間は一次元である。
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式 (2) から得られるもう一方の偶奇性の級数は、一般には打ち切られない。級数解法の定理§E10.12 定理 2.1は少なくとも∣x∣<1における収束を保証するが、本記事では多項式になる一方の解だけを扱う。
2 Rodrigues の公式
定理 2.1 (Rodrigues の公式). 非負整数nに対して
Pn(x)=2nn!1dxndn(x2−1)n(3)である。右辺は次数nの多項式であり、Legendre 方程式
(1−x2)Pn′′−2xPn′+n(n+1)Pn=0(4)と正規化Pn(1)=1を満たす。
証明.F(x)=(x2−1)nと置く。直接微分すると
(x2−1)F′=2nxF(5)である。式 (5) の両辺をn+1回微分する。x2−1の三階以上の導関数が零であることと Leibniz の公式から
dxn+1dn+1((x2−1)F′)=(x2−1)F(n+2)+2(n+1)xF(n+1)+n(n+1)F(n)である。一方、
dxn+1dn+1(2nxF)=2n(xF(n+1)+(n+1)F(n)).両者を等しいと置いて整理すると
(x2−1)F(n+2)+2xF(n+1)−n(n+1)F(n)=0.F(n)を2nn!で割り、全体の符号を反転すれば式 (4) を得る。
Fは次数2nであるからF(n)は次数nである。さらに
F(x)=(x−1)n(x+1)nへ Leibniz の公式を適用してx=1と置く。n回の微分をすべて(x−1)nへ作用させる項だけが残り、
F(n)(1)=n!2n.したがって式 (3) の右辺は1で正規化される。命題 1.2の一次元性により、これは定義 1.1で定義したPnである。
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最初の数個は
P0(x)=1,P1(x)=x,P2(x)=21(3x2−1),P3(x)=21(5x3−3x)
である。
Rodrigues の公式から二つの補助的な性質が従う。(x2−1)nは偶関数であるため
Pn(−x)=(−1)nPn(x).(6)
また、(x2−1)nの最高次項x2nをn回微分すると
Pn(x)=cnxn+低次項,cn=2n(n!)2(2n)!.(7)
3 区間上の直交性
正則 Sturm–Liouville 問題では、最高階係数は閉区間全体で正でなければならない。Legendre 方程式を
−((1−x2)y′)′=n(n+1)y
と書くとp(x)=1−x2はx=±1で零になる。したがって§E10.14 系 4.2を直接適用せず、Rodrigues の公式から直交性を証明する。
定理 3.1. 相異なる非負整数m,nに対して
∫−11Pm(x)Pn(x)dx=0.(8)より一般に、次数がn未満の任意の多項式qに対して
∫−11q(x)Pn(x)dx=0.(9)
証明. Rodrigues の公式を用いると
∫−11q(x)Pn(x)dx=2nn!1∫−11q(x)dxndn(x2−1)ndx.(x2−1)n=(x−1)n(x+1)nは両端でn位の零点をもつ。したがって、その0階からn−1階までの導関数はx=±1で零である。部分積分をn回行うと、各段階の境界項は零になり、
∫−11qPndx=2nn!(−1)n∫−11q(n)(x)(x2−1)ndx.degq<nならばq(n)=0であるから式 (9) を得る。m<nならばq=Pmと置くことができる。n<mの場合はm,nを交換すれば式 (8) が従う。
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式 (9) は、次節で有限次元の多項式空間におけるxPnの展開を隣接する次数の項へ絞るために用いる。この有限次元の直交性は、多項式列が関数空間で完備であることや、任意の関数を Legendre 級数へ展開したときの収束を含意しない。
4 三項間漸化式
定理 4.1.n≥1に対して
(n+1)Pn+1(x)=(2n+1)xPn(x)−nPn−1(x)(10)が成り立つ。
証明.xPnは次数n+1の多項式である。次数がn−2以下の任意の多項式qに対して、xqの次数はn−1以下であるから
∫−11xPn(x)q(x)dx=∫−11Pn(x)xq(x)dx=0である。P0,…,Pn+1は次数が互いに異なるため、次数n+1以下の多項式空間の基底である。直交性から、xPnのこの基底による展開にはPn−1,Pn,Pn+1以外の項が現れない。偶奇性 (6) によりxPnとPnの偶奇性は反対であるから、Pnの係数も零である。したがって
xPn=AnPn+1+BnPn−1(11)と書くことができる。
最高次係数 (7) を比較すると
An=cn+1cn=2n+1n+1.x=1を式 (11) へ代入し、Pk(1)=1を用いると
1=An+Bnであるから
Bn=2n+1n.式 (11) に2n+1を掛けて整理すれば式 (10) を得る。
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三項間漸化式は、P0=1とP1=xから高次の Legendre 多項式を順に計算する方法を与える。
命題 4.2. 非負整数nに対して
∫−11Pn(x)2dx=2n+12が成り立つ。
証明は演習とする。
5 演習
問題 5.1 (四次の Legendre 多項式). 三項間漸化式
(n+1)Pn+1(x)=(2n+1)xPn(x)−nPn−1(x)を用いてP4を求めよ。また、P4(1)=1と Legendre 方程式を満たすことを確かめよ。
解答.
n=3とし、
P2(x)=23x2−1,P3(x)=25x3−3xを代入すると、
4P4(x)=7xP3(x)−3P2(x)=235x4−30x2+3.したがって、
P4(x)=835x4−30x2+3.この式からP4(1)=1を得る。また、
P4′(x)=235x3−15x,P4′′(x)=2105x2−15であるから、代入により
(1−x2)P4′′−2xP4′+20P4=0を得る。したがって、P4はλ=4⋅5=20に対する Legendre 方程式を満たす。▨
問題 5.2 (Rodrigues の公式による直交性).n≥1とし、qを次数がn未満の多項式とする。Rodrigues の公式を用いて
∫−11q(x)Pn(x)dx=0を証明せよ。また、この証明で通常の正則 Sturm–Liouville 理論を直接に用いない理由を述べよ。
解答.
Rodrigues の公式により、
∫−11q(x)Pn(x)dx=2nn!1∫−11q(x)dxndn(x2−1)ndx.ここで(x2−1)nはx=±1においてそれぞれn位の零点をもつ。そのため、0≤k<nに対して
dxkdk(x2−1)nx=±1=0であり、n回の部分積分で現れる境界項はすべて消滅する。したがって、
∫−11q(x)Pn(x)dx=2nn!(−1)n∫−11q(n)(x)(x2−1)ndx=0となる。最後の等号はdegq<nからq(n)=0となることによる。
Legendre 方程式を Sturm–Liouville 形に書くと係数はp(x)=1−x2であり、p(±1)=0である。したがって、両端でp>0を仮定する通常の正則 Sturm–Liouville 理論をそのまま適用することができない。本問では、Rodrigues の公式と端点での零点の位数を用いる方法によって、任意の低次数多項式との直交性を証明した。▨
問題 5.3 (Lagrange の恒等式による直交性). 相異なる非負整数m,nに対して、Lagrange の恒等式を区間[−1+ε,1−ε]に適用せよ。Pm,Pnとそれぞれの導関数の有界性、および1−x2の端点における消滅を用いてε↓0とし、
∫−11Pm(x)Pn(x)dx=0を証明せよ。
解答.
p(x)=1−x2とし、L[y]=−(p(x)y′(x))′と置く。Legendre 方程式により
L[Pk]=λkPk,λk=k(k+1)である。0<ε<1とする。Pm,Pnは区間[−1+ε,1−ε]上で二階連続微分可能であるから、§E10.14 定理 2.2をu=Pm、v=Pnに適用して
dxd[p(x)(Pm′(x)Pn(x)−Pm(x)Pn′(x))]=(λn−λm)Pm(x)Pn(x)を得る。したがって、
(λn−λm)∫−1+ε1−εPm(x)Pn(x)dx=[(1−x2)(Pm′(x)Pn(x)−Pm(x)Pn′(x))]−1+ε1−ε.Pm,Pnとそれぞれの導関数は閉区間[−1,1]上で有界であり、1−x2はx=±1で零になる。よって右辺はε↓0のとき零へ収束する。左辺の被積分関数は連続であるから、同じ極限を取ると
(λn−λm)∫−11Pm(x)Pn(x)dx=0を得る。非負整数上でk(k+1)は狭義単調増加するため、m=nならばλm=λnである。したがって、求める直交性が従う。▨
問題 5.4 (Legendre 多項式の平方ノルム).命題 4.2の証明を完成させよ。
hn=∫−11Pn(x)2dxと置く。三項間漸化式と直交性を用いて
hn=2n+12(n≥0)を証明せよ。n≥2では隣接する二つの漸化式を用い、n=1はxP0=P1を用いて別に扱え。
解答.
n≥1に対して
In=∫−11xPn(x)Pn−1(x)dxと置く。次数nの三項間漸化式を
(2n+1)xPn=(n+1)Pn+1+nPn−1と書き、Pn−1を掛けて積分する。Pn+1とPn−1は直交するから、
In=2n+1nhn−1(n≥1)である。
n≥2では、次数n−1の漸化式
nPn=(2n−1)xPn−1−(n−1)Pn−2にPnを掛けて積分する。PnとPn−2は直交するため、
In=2n−1nhn(n≥2)を得る。得られた二つのInの表示を比較すると
hn−1hn=2n+12n−1(n≥2)である。
n=1では、三項間漸化式へn=0を代入しない。xP0=P1から
I1=∫−11P1(x)2dx=h1であり、最初に得たInの表示へn=1を代入するとI1=h0/3である。したがってn≥2の場合と同じ形の比
h0h1=31を得る。P0=1であるからh0=2であり、有限積を取ると
hn=2k=1∏n2k+12k−1=2n+12となる。n=0の場合もh0=2により同じ公式を満たす。▨