1 部分列
定義 1.1 (部分列). 数列{an}と、狭義増加する正の整数の列n1<n2<⋯に対し、{ank}kを{an}の部分列 (subsequence) という。
たとえばan=(−1)nは振動して収束しませんが、偶数番だけ拾えば1,1,1,…で収束します。
2 定理と証明
補題 2.1. 任意の実数列は単調な部分列をもつ。
証明. 正の整数nが、すべてのm>nに対してan≥amを満たすとき、nを峰の添字と呼ぶ。峰の添字が無限個存在するならば、それらをn1<n2<⋯と並べることにより
an1≥an2≥⋯を満たす単調非増加部分列を得る。
峰の添字が有限個しか存在しないならば、すべての峰の添字より大きい正の整数n1をとる。峰の添字が存在しない場合は任意の正の整数をn1とする。n1は峰の添字でないので、n2>n1かつan2>an1を満たすn2が存在する。同じ理由により、この選択を帰納的に繰り返すことができる。したがって
an1<an2<⋯を満たす単調増加部分列を得る。いずれの場合にも、もとの数列は単調な部分列をもつ。▨
定理 2.2 (ボルツァーノ・ワイエルシュトラス). 有界な実数列{an}は、収束する部分列を持つ。
証明 (二分法). 有界性より全項が閉区間I0=[A,B]に入る。I0を中点で2等分すると、少なくとも一方の半区間は{an}の項を無限個含む。それをI1とする。同様にIkを2等分し、項を無限個含む側をIk+1とすると、閉区間の列
I0⊇I1⊇I2⊇⋯,∣Ik∣=2kB−A
が得られ、各Ikは無限個の項を含む。
an1∈I1となるn1をとる。I2は無限個の項を含むので、n2>n1かつan2∈I2をとることができる。以下同様に、Ikが無限個の項を含むことからnk>nk−1かつank∈Ikを順に選ぶことができる。これで狭義増加列n1<n2<⋯と部分列{ank}が定まる。
左端点{Ak}(Ik=[Ak,Bk])は単調増加かつ上に有界だから、§D1.7 定理 1.1 (単調収束定理)よりAk→c(c=supAk)。Bk=Ak+∣Ik∣→cでもある。ank∈IkよりAk≤ank≤Bk、§D1.6 定理 3.1 (はさみうちの原理)でank→c。▨
証明 (単調部分列).補題 2.1により、{an}は単調な部分列{ank}をもつ。この部分列は{an}の有界性を受け継ぐ。{ank}が単調増加ならば、§D1.7 定理 1.1により収束する。{ank}が単調非増加ならば、{−ank}は単調増加かつ上に有界なので同じ定理により収束し、したがって{ank}も収束する。▨
区間が1点cに定まる保証は、実数の連続性(上限公理を使う単調収束定理)です。
定義 2.3 (部分列極限). 実数列{an}と実数cに対し、ank→cを満たす{an}の部分列{ank}が存在するとき、cを{an}の部分列極限 (subsequential limit) という。
定理 2.4. 有界な実数列{an}の部分列極限全体の集合をCとする。このときCは空でなく、最大元と最小元をもつ。
証明.定理 2.2により、{an}は収束する部分列をもつのでCは空でない。各正の整数nに対して
sn=k≥nsupak,in=k≥ninfakとおく。{an}は有界であるからsnとinは実数である。{sn}は単調非増加で下に有界であるから、{−sn}は単調増加かつ上に有界である。{in}は単調非減少で上に有界である。§D1.7 定理 1.1により、ある実数α,βが存在してsn→α、in→βとなる。
k0=0とおく。正の整数jに対しNj=max{j,kj−1+1}とおき、上限の定義により
kj≥Nj,sNj−j1<akj≤sNjを満たすkjをとる。{kj}は狭義増加し、Nj≥jであるからsNj→αとなる。したがって§D1.6 定理 3.1によりakj→αであり、α∈Cである。同様に、ℓ0=0とおき、Mj=max{j,ℓj−1+1}に対して
ℓj≥Mj,iMj≤aℓj<iMj+j1を満たすℓjをとると、aℓj→βとなる。ゆえにβ∈Cである。
c∈Cとし、anj→cを満たす部分列をとる。狭義増加する正の整数列はnj≥jを満たすので
ij≤anj≤sjがすべてのjについて成り立つ。極限をとるとβ≤c≤αを得る。α,β∈Cであるから、αはCの最大元であり、βはCの最小元である。▨
定義 2.5 (上極限). 有界な実数列{cn}の部分列極限全体の集合の最大元を、{cn}の上極限 (limit superior) といい、n→∞limsupcnと書く。下に有界であるが上に有界でない実数列については、n→∞limsupcn=+∞と定める。
定義 2.6 (下極限). 有界な実数列{cn}の部分列極限全体の集合の最小元を、{cn}の下極限 (limit inferior) といい、n→∞liminfcnと書く。上に有界であるが下に有界でない実数列については、n→∞liminfcn=−∞と定める。
定理 2.7. 実数列{cn}に対して次が成り立つ。
- {cn}が有界であるか、下に有界であるが上に有界でないならば、拡大実数の範囲で
n→∞limsupcn=n→∞limk≥nsupck
が成り立つ。
- {cn}が有界であるか、上に有界であるが下に有界でないならば、拡大実数の範囲で
n→∞liminfcn=n→∞limk≥ninfck
が成り立つ。
- L=limsupn→∞cnとする。Lが有限ならば、任意のθ>Lに対して、ある正の整数Nが存在し、すべてのn≥Nについてcn<θとなる。また、任意のθ<Lと任意の正の整数Nに対して、あるn≥Nが存在してcn>θとなる。L=+∞ならば、任意の実数θと任意の正の整数Nに対して、あるn≥Nが存在してcn>θとなる。
証明.(1)を示す。{cn}が有界ならば、定理 2.4の証明で、sn=supk≥nckの極限が部分列極限全体の最大元に等しいことを示した。したがって上極限の定義により主張が成り立つ。{cn}が下に有界であるが上に有界でないならば、有限個の項を除いても上に有界にはならないので、すべてのnについてsupk≥nck=+∞である。この場合も上極限の定義により主張が成り立つ。
(2)を示す。有界な場合は、同じ証明でin=infk≥nckの極限が部分列極限全体の最小元に等しいことを示した。上に有界であるが下に有界でない場合は、すべてのnについてinfk≥nck=−∞である。したがって下極限の定義により主張が成り立つ。
(3)を示す。Lが有限でθ>Lならば、(1)により、ある正の整数Nが存在してsN=supk≥Nck<θとなる。したがって、すべてのn≥Nについてcn<θである。θ<Lとし、ある正の整数Nより後にcn>θを満たす項が存在しないと仮定すると、sN≤θ<Lとなる。一方、{sn}はLへ単調非増加に収束するのでsN≥Lであり、両者は両立しない。ゆえに任意の正の整数Nより後にcn>θを満たす項が存在する。L=+∞の場合は、各尾部が上に有界でないので、任意の実数θと正の整数Nに対してn≥Nかつcn>θを満たすnが存在する。▨
3 点集合版と収束先の豊かさ
数列版から、集合についての形も出ます。点cが集合Sの集積点とは、cのどんな近傍にもc以外のSの点があることをいいます。
系 3.1. 有界な無限集合S⊆Rは、少なくとも1つの集積点をもつ。
証明.Sは無限なので相異なる点a1,a2,⋯∈Sを選ぶことができる。これは有界列だから定理 2.2より収束部分列ank→cをもつ。点が相異なるので、cの任意の近傍にはcと異なるankが無限個入り、cはSの集積点である。▨
例 3.2. 区間[0,1]の有理数を一列に並べた数列{an}(Q∩[0,1]の数え上げ、集合論入門/濃度)を考えると、[0,1]の任意の点xに収束する部分列を取り出すことができる。xのどんな近傍にも有理数が無限個あるから(Qの稠密性)、∣ank−x∣<1/kを満たすankを順に拾えるためである。有界列一つから、これほど多様な収束先を取り出すことができる。ボルツァーノ・ワイエルシュトラスが保証するのは「少なくとも一つ」だが、実際にはずっと豊かな構造が潜んでいることがある。
4 なぜ重要か
「収束部分列の存在」は、解析のあちこちで存在証明の足場になります。最大値の定理・一様連続性・コンパクト性(位相空間論 I)など、「有界なら何か収束するものが取り出せる」という形で繰り返し使われます。単独の計算道具というより、より深い定理を証明するための土台です。