§D1.8ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理

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ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理とは、有界な数列は必ず収束する部分列を持つ、という定理です。 数列全体は収束しなくても(振動していても)、そこからうまく項を拾えば収束する列が取り出せる、という主張です。

1 部分列

定義 1.1 (部分列). 数列{an}\{a_n\}と、狭義増加する正の整数の列n1<n2<⋯n_1 < n_2 < \cdotsに対し、{ank}k\{a_{n_k}\}_kを{an}\{a_n\}の部分列 (subsequence) という。

たとえばan=(−1)na_n=(-1)^nは振動して収束しませんが、偶数番だけ拾えば1,1,1,…1,1,1,\dotsで収束します。

2 定理と証明

補題 2.1. 任意の実数列は単調な部分列をもつ。

証明. 正の整数nnが、すべてのm>nm>nに対してan≥ama_n\geq a_mを満たすとき、nnを峰の添字と呼ぶ。峰の添字が無限個存在するならば、それらをn1<n2<⋯n_1<n_2<\cdotsと並べることにより

an1≥an2≥⋯a_{n_1}\geq a_{n_2}\geq\cdots

を満たす単調非増加部分列を得る。

峰の添字が有限個しか存在しないならば、すべての峰の添字より大きい正の整数n1n_1をとる。峰の添字が存在しない場合は任意の正の整数をn1n_1とする。n1n_1は峰の添字でないので、n2>n1n_2>n_1かつan2>an1a_{n_2}>a_{n_1}を満たすn2n_2が存在する。同じ理由により、この選択を帰納的に繰り返すことができる。したがって

an1<an2<⋯a_{n_1}<a_{n_2}<\cdots

を満たす単調増加部分列を得る。いずれの場合にも、もとの数列は単調な部分列をもつ。▨

定理 2.2 (ボルツァーノ・ワイエルシュトラス). 有界な実数列{an}\{a_n\}は、収束する部分列を持つ。

証明 (二分法). 有界性より全項が閉区間I0=[A,B]I_0 = [A, B]に入る。I0I_0を中点で2等分すると、少なくとも一方の半区間は{an}\{a_n\}の項を無限個含む。それをI1I_1とする。同様にIkI_kを2等分し、項を無限個含む側をIk+1I_{k+1}とすると、閉区間の列

I0⊇I1⊇I2⊇⋯ ,∣Ik∣=B−A2kI_0 \supseteq I_1 \supseteq I_2 \supseteq \cdots, \qquad |I_k| = \frac{B-A}{2^k}

が得られ、各IkI_kは無限個の項を含む。

an1∈I1a_{n_1} \in I_1となるn1n_1をとる。I2I_2は無限個の項を含むので、n2>n1n_2 > n_1かつan2∈I2a_{n_2} \in I_2をとることができる。以下同様に、IkI_{k}が無限個の項を含むことからnk>nk−1n_k > n_{k-1}かつank∈Ika_{n_k} \in I_kを順に選ぶことができる。これで狭義増加列n1<n2<⋯n_1 < n_2 < \cdotsと部分列{ank}\{a_{n_k}\}が定まる。

左端点{Ak}\{A_k\}(Ik=[Ak,Bk]I_k = [A_k, B_k])は単調増加かつ上に有界だから、§D1.7 定理 1.1 (単調収束定理)よりAk→cA_k \to c(c=sup⁡Akc = \sup A_k)。Bk=Ak+∣Ik∣→cB_k = A_k + |I_k| \to cでもある。ank∈Ika_{n_k} \in I_kよりAk≤ank≤BkA_k \le a_{n_k} \le B_k、§D1.6 定理 3.1 (はさみうちの原理)でank→ca_{n_k} \to c。▨

証明 (単調部分列).補題 2.1により、{an}\{a_n\}は単調な部分列{ank}\{a_{n_k}\}をもつ。この部分列は{an}\{a_n\}の有界性を受け継ぐ。{ank}\{a_{n_k}\}が単調増加ならば、§D1.7 定理 1.1により収束する。{ank}\{a_{n_k}\}が単調非増加ならば、{−ank}\{-a_{n_k}\}は単調増加かつ上に有界なので同じ定理により収束し、したがって{ank}\{a_{n_k}\}も収束する。▨

区間が1点ccに定まる保証は、実数の連続性(上限公理を使う単調収束定理)です。

定義 2.3 (部分列極限). 実数列{an}\{a_n\}と実数ccに対し、ank→ca_{n_k}\to cを満たす{an}\{a_n\}の部分列{ank}\{a_{n_k}\}が存在するとき、ccを{an}\{a_n\}の部分列極限 (subsequential limit) という。

定理 2.4. 有界な実数列{an}\{a_n\}の部分列極限全体の集合をCCとする。このときCCは空でなく、最大元と最小元をもつ。

証明.定理 2.2により、{an}\{a_n\}は収束する部分列をもつのでCCは空でない。各正の整数nnに対して

sn=sup⁡k≥nak,in=inf⁡k≥naks_n=\sup_{k\geq n}a_k,\qquad i_n=\inf_{k\geq n}a_k

とおく。{an}\{a_n\}は有界であるからsns_nとini_nは実数である。{sn}\{s_n\}は単調非増加で下に有界であるから、{−sn}\{-s_n\}は単調増加かつ上に有界である。{in}\{i_n\}は単調非減少で上に有界である。§D1.7 定理 1.1により、ある実数α,β\alpha,\betaが存在してsn→αs_n\to\alpha、in→βi_n\to\betaとなる。

k0=0k_0=0とおく。正の整数jjに対しNj=max⁡{j,kj−1+1}N_j=\max\{j,k_{j-1}+1\}とおき、上限の定義により

kj≥Nj,sNj−1j<akj≤sNjk_j\geq N_j,\qquad s_{N_j}-\frac1j<a_{k_j}\leq s_{N_j}

を満たすkjk_jをとる。{kj}\{k_j\}は狭義増加し、Nj≥jN_j\geq jであるからsNj→αs_{N_j}\to\alphaとなる。したがって§D1.6 定理 3.1によりakj→αa_{k_j}\to\alphaであり、α∈C\alpha\in Cである。同様に、ℓ0=0\ell_0=0とおき、Mj=max⁡{j,ℓj−1+1}M_j=\max\{j,\ell_{j-1}+1\}に対して

ℓj≥Mj,iMj≤aℓj<iMj+1j\ell_j\geq M_j,\qquad i_{M_j}\leq a_{\ell_j}<i_{M_j}+\frac1j

を満たすℓj\ell_jをとると、aℓj→βa_{\ell_j}\to\betaとなる。ゆえにβ∈C\beta\in Cである。

c∈Cc\in Cとし、anj→ca_{n_j}\to cを満たす部分列をとる。狭義増加する正の整数列はnj≥jn_j\geq jを満たすので

ij≤anj≤sji_j\leq a_{n_j}\leq s_j

がすべてのjjについて成り立つ。極限をとるとβ≤c≤α\beta\leq c\leq\alphaを得る。α,β∈C\alpha,\beta\in Cであるから、α\alphaはCCの最大元であり、β\betaはCCの最小元である。▨

定義 2.5 (上極限). 有界な実数列{cn}\{c_n\}の部分列極限全体の集合の最大元を、{cn}\{c_n\}の上極限 (limit superior) といい、lim sup⁡n→∞cn\displaystyle\limsup_{n\to\infty}c_nと書く。下に有界であるが上に有界でない実数列については、lim sup⁡n→∞cn=+∞\displaystyle\limsup_{n\to\infty}c_n=+\inftyと定める。

定義 2.6 (下極限). 有界な実数列{cn}\{c_n\}の部分列極限全体の集合の最小元を、{cn}\{c_n\}の下極限 (limit inferior) といい、lim inf⁡n→∞cn\displaystyle\liminf_{n\to\infty}c_nと書く。上に有界であるが下に有界でない実数列については、lim inf⁡n→∞cn=−∞\displaystyle\liminf_{n\to\infty}c_n=-\inftyと定める。

定理 2.7. 実数列{cn}\{c_n\}に対して次が成り立つ。

  1. {cn}\{c_n\}が有界であるか、下に有界であるが上に有界でないならば、拡大実数の範囲で lim sup⁡n→∞cn=lim⁡n→∞sup⁡k≥nck\limsup_{n\to\infty}c_n=\lim_{n\to\infty}\sup_{k\geq n}c_k が成り立つ。
  2. {cn}\{c_n\}が有界であるか、上に有界であるが下に有界でないならば、拡大実数の範囲で lim inf⁡n→∞cn=lim⁡n→∞inf⁡k≥nck\liminf_{n\to\infty}c_n=\lim_{n\to\infty}\inf_{k\geq n}c_k が成り立つ。
  3. L=lim sup⁡n→∞cnL=\limsup_{n\to\infty}c_nとする。LLが有限ならば、任意のθ>L\theta>Lに対して、ある正の整数NNが存在し、すべてのn≥Nn\geq Nについてcn<θc_n<\thetaとなる。また、任意のθ<L\theta<Lと任意の正の整数NNに対して、あるn≥Nn\geq Nが存在してcn>θc_n>\thetaとなる。L=+∞L=+\inftyならば、任意の実数θ\thetaと任意の正の整数NNに対して、あるn≥Nn\geq Nが存在してcn>θc_n>\thetaとなる。

証明.(1)を示す。{cn}\{c_n\}が有界ならば、定理 2.4の証明で、sn=sup⁡k≥ncks_n=\sup_{k\geq n}c_kの極限が部分列極限全体の最大元に等しいことを示した。したがって上極限の定義により主張が成り立つ。{cn}\{c_n\}が下に有界であるが上に有界でないならば、有限個の項を除いても上に有界にはならないので、すべてのnnについてsup⁡k≥nck=+∞\sup_{k\geq n}c_k=+\inftyである。この場合も上極限の定義により主張が成り立つ。

(2)を示す。有界な場合は、同じ証明でin=inf⁡k≥ncki_n=\inf_{k\geq n}c_kの極限が部分列極限全体の最小元に等しいことを示した。上に有界であるが下に有界でない場合は、すべてのnnについてinf⁡k≥nck=−∞\inf_{k\geq n}c_k=-\inftyである。したがって下極限の定義により主張が成り立つ。

(3)を示す。LLが有限でθ>L\theta>Lならば、(1)により、ある正の整数NNが存在してsN=sup⁡k≥Nck<θs_N=\sup_{k\geq N}c_k<\thetaとなる。したがって、すべてのn≥Nn\geq Nについてcn<θc_n<\thetaである。θ<L\theta<Lとし、ある正の整数NNより後にcn>θc_n>\thetaを満たす項が存在しないと仮定すると、sN≤θ<Ls_N\leq\theta<Lとなる。一方、{sn}\{s_n\}はLLへ単調非増加に収束するのでsN≥Ls_N\geq Lであり、両者は両立しない。ゆえに任意の正の整数NNより後にcn>θc_n>\thetaを満たす項が存在する。L=+∞L=+\inftyの場合は、各尾部が上に有界でないので、任意の実数θ\thetaと正の整数NNに対してn≥Nn\geq Nかつcn>θc_n>\thetaを満たすnnが存在する。▨

3 点集合版と収束先の豊かさ

数列版から、集合についての形も出ます。点ccが集合SSの集積点とは、ccのどんな近傍にもcc以外のSSの点があることをいいます。

系 3.1. 有界な無限集合S⊆RS \subseteq \mathbb{R}は、少なくとも1つの集積点をもつ。

証明.SSは無限なので相異なる点a1,a2,⋯∈Sa_1, a_2, \dots \in Sを選ぶことができる。これは有界列だから定理 2.2より収束部分列ank→ca_{n_k} \to cをもつ。点が相異なるので、ccの任意の近傍にはccと異なるanka_{n_k}が無限個入り、ccはSSの集積点である。▨

例 3.2. 区間[0,1][0, 1]の有理数を一列に並べた数列{an}\{a_n\}(Q∩[0,1]\mathbb Q \cap [0,1]の数え上げ、集合論入門/濃度)を考えると、[0,1][0, 1]の任意の点xxに収束する部分列を取り出すことができる。xxのどんな近傍にも有理数が無限個あるから(Q\mathbb Qの稠密性)、∣ank−x∣<1/k|a_{n_k} - x| < 1/kを満たすanka_{n_k}を順に拾えるためである。有界列一つから、これほど多様な収束先を取り出すことができる。ボルツァーノ・ワイエルシュトラスが保証するのは「少なくとも一つ」だが、実際にはずっと豊かな構造が潜んでいることがある。

4 なぜ重要か

「収束部分列の存在」は、解析のあちこちで存在証明の足場になります。最大値の定理・一様連続性・コンパクト性(位相空間論 I)など、「有界なら何か収束するものが取り出せる」という形で繰り返し使われます。単独の計算道具というより、より深い定理を証明するための土台です。

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