1 必要条件と比較判定
命題 1.1.K∈{R,C}とし、an∈Kとする。∑n=1∞anが収束するならば、an→0である。
証明.SN=∑n=1Nan→Sとおく。N≥2に対してaN=SN−SN−1であるから、aN→S−S=0である。▨
定理 1.3.an,bn∈Rとし、すべてのn≥1に対して0≤an≤bnとする。∑n=1∞bnが収束するならば、∑n=1∞anも収束する。
証明.AN=∑n=1Nan、BN=∑n=1Nbnとおく。an≥0であるから{AN}は単調増加であり、AN≤BNである。収束列{BN}は上に有界であるから、{AN}も上に有界である。§D1.7 定理 1.1により{AN}は収束する。▨
定義 1.4 (絶対収束と条件収束).K∈{R,C}とし、an∈Kとする。∑n=1∞∣an∣が収束するとき、∑n=1∞anは 絶対収束 (absolute convergence) するという。∑n=1∞anが収束し、∑n=1∞∣an∣が発散するとき、∑n=1∞anは 条件収束 (conditional convergence) するという。
定理 1.5.K∈{R,C}とし、an∈Kとする。∑n=1∞∣an∣が収束するならば、∑n=1∞anも収束する。
さらに、π:Z≥1→Z≥1が全単射ならば、∑n=1∞aπ(n)は絶対収束し、その和は∑n=1∞anの和に等しい。
証明.SN=∑n=1Nanとおく。n>mに対して
∣Sn−Sm∣≤k=m+1∑n∣ak∣である。∑∣an∣の部分和は収束するため、その右辺はm,n→∞のとき0へ収束する。したがって{SN}はコーシー列である。
K=Rのとき、§D1.10 定理 1.1により{SN}は収束する。K=Cのとき、XN=ReSN、YN=ImSNとおくと、
∣Xn−Xm∣≤∣Sn−Sm∣,∣Yn−Ym∣≤∣Sn−Sm∣であるから、{XN}と{YN}は実数のコーシー列である。§D1.10 定理 1.1により、あるX,Y∈Rが存在してXN→X、YN→Yとなる。したがって
∣SN−(X+iY)∣≤∣XN−X∣+∣YN−Y∣⟶0であり、{SN}は複素数列として収束する。
π:Z≥1→Z≥1を全単射とし、P=∑n=1∞∣an∣とおく。任意のNに対して
k=1∑N∣aπ(k)∣≤Pであるから、§D1.7 定理 1.1により∑k=1∞∣aπ(k)∣は収束する。
S=∑n=1∞anとし、ε>0をとる。あるMが存在して∑n>M∣an∣<εとなる。πは全射であるから、あるN0が存在して
{1,…,M}⊆{π(1),…,π(N0)}となる。N≥N0とし、FN={π(1),…,π(N)}とおく。有限個の項を除いて元の順序で和をとると、
S−k=1∑Naπ(k)≤n∈/FN∑∣an∣≤n>M∑∣an∣<εである。ゆえに∑k=1∞aπ(k)=Sである。▨
2 比判定(ダランベール)
定理 2.1.K∈{R,C}とし、an∈Kとする。ある正整数N0が存在し、すべてのn≥N0に対してan=0であるとする。
n→∞limanan+1=rが存在するとき、r<1ならば∑n=1∞anは絶対収束し、r>1ならば発散する。
証明.r<1とし、r<s<1を満たすsをとる。あるN≥N0が存在して、n≥Nならば
anan+1<sとなる。帰納的に∣an∣≤∣aN∣sn−Nがn≥Nに対して成り立つ。§B1.9 定理 2.1により∑m=0∞smは収束するから、定理 1.3により∑n=N∞∣an∣は収束する。有限個の初項を加えても収束性は変わらないため、∑n=1∞anは絶対収束する。
r>1とし、1<s<rを満たすsをとる。あるN≥N0が存在して、n≥Nならば∣an+1∣>s∣an∣となる。帰納的に∣an∣≥∣aN∣sn−Nがn≥Nに対して成り立つ。aN=0かつs>1であるから、∣an∣→∞であり、anは0に収束しない。有限個の初項は一般項の極限に影響しないため、命題 1.1の対偶により∑n=1∞anは発散する。▨
例 2.3 (等比級数を比判定で見る).∑n=0∞(1/3)nでは隣り合う項の比が常に1/3であるから、定理 2.1により絶対収束する。さらに§B1.9 定理 2.1により、その和は
1−1/31=23である。比判定が与えるのは収束性であり、和の値は等比級数の公式によって求めている。
3 累乗根判定
定理 3.1.K∈{R,C}とし、an∈Kとする。
r=n→∞limn∣an∣が存在するとき、r<1ならば∑n=1∞anは絶対収束し、r>1ならば発散する。
証明.r<1とし、r<s<1を満たすsをとる。あるNが存在して、n≥Nならばn∣an∣<sとなる。an=0ならば∣an∣<snである。an=0ならば、§B3.1 定理 2.1の順序保存性により
∣an∣=(n∣an∣)n<snである。したがって、すべてのn≥Nに対して∣an∣<snが成り立つ。§B1.9 定理 2.1と定理 1.3により∑n=N∞∣an∣は収束するから、∑n=1∞anは絶対収束する。
r>1とし、1<s<rを満たすsをとる。あるNが存在して、n≥Nならばn∣an∣>sとなる。このときan=0であり、§B3.1 定理 2.1の順序保存性により∣an∣>sn>1である。ゆえにanは0に収束せず、命題 1.1により∑n=1∞anは発散する。▨
例 3.2. 正の数列{an}を
an={2−n21−n(n が偶数),(n が奇数)と定める。nが偶数ならばnan=1/2であり、nが奇数ならばnan=21/n/2である。任意のε>0に対し、十分大きなnでは(1+ε)n≥1+nε>2となる。§B3.1 定理 2.1の順序保存性により1<21/n<1+εであるから、21/n→1である。したがってnan→1/2であり、定理 3.1により∑n=1∞anは絶対収束する。定理 1.5により、この級数は収束する。
一方、an+1/anはnが偶数ならば1、nが奇数ならば1/4であるから極限をもたない。この級数には比判定を適用することができない。
4 積分判定
非負項級数の部分和と積分を同じ不等式で挟むことにより、級数の収束を広義積分へ移すことができます。
定理 4.1.f:[1,∞)→Rを正の単調減少関数とし、an=f(n)とする。このとき、∑n=1∞anが収束することと、広義積分∫1∞f(x)dxが収束することは同値である。
証明. 任意の実数1≤u<vをとる。fの[u,v]への制限は単調減少であるから、§D1.18 定理 2.1によりリーマン可積分である。
n≥1とする。定数関数cの[n,n+1]上の任意の分割に対する上 Darboux 和と下 Darboux 和はともにc((n+1)−n)=cであるから、この定数関数の積分値はcである。x∈[n,n+1]に対してf(n+1)≤f(x)≤f(n)であるから、§D1.17 命題 3.4により
f(n+1)≤∫nn+1f(x)dx≤f(n)である。N≥2とする。N=2では次の等式はそのまま成り立つ。N≥3では§D1.17 定理 3.6を真の内点2,…,N−1で繰り返し適用すると
∫1Nf(x)dx=n=1∑N−1∫nn+1f(x)dxとなる。したがって、上の不等式をn=1,…,N−1について加えると、
n=2∑Nan≤∫1Nf(x)dx≤n=1∑N−1anを得る。
IN=∫1Nf(x)dxとおく。N≥2に対して、§D1.17 定理 3.6と§D1.17 命題 3.4により
IN+1=IN+∫NN+1f(x)dx≥INである。ここで、最後の不等式には、定数関数0の積分値が0であるという上の Darboux 和の計算と、0≤f(x)を用いた。したがって{IN}N≥2は単調増加である。
∑n=1∞anが収束するとする。上の不等式によりIN≤∑n=1N−1anであり、右辺は上に有界である。§D1.7 定理 1.1により、あるL∈Rに対してIN→Lである。
任意の実数t≥2に対してm=⌊t⌋とおく。t=mならば∫1tf(x)dx=Imである。m<t<m+1ならば、§D1.17 定理 3.6により
∫1tf(x)dx=Im+∫mtf(x)dx,Im+1=∫1tf(x)dx+∫tm+1f(x)dxである。二つの右端の積分は、定数関数0との点ごとの比較と§D1.17 命題 3.4により非負である。t=mの場合には左の不等式が等号であるから、すべてのt≥2に対して
Im≤∫1tf(x)dx≤Im+1である。t→∞ならばm→∞であり、両端はともにLに収束する。したがって∫1tf(x)dx→Lであり、広義積分は収束する。
広義積分が収束するとき、{IN}N≥2は上に有界である。左辺の不等式により∑n=2Nanも上に有界である。この部分和は単調増加であるから、§D1.7 定理 1.1により収束する。初項a1を加えると∑n=1∞anも収束する。▨
例 4.2 (p級数).p>0とする。f(x)=x−pは[1,∞)上で正かつ単調減少である。§D1.20 命題 2.1と定理 4.1により、
n=1∑∞np1はp>1ならば収束し、0<p≤1ならば発散する。
p≤0ならば、すべてのn≥1に対してn−p≥1であるため、一般項は0に収束しない。命題 1.1の対偶により、この場合にも級数は発散する。したがって、∑n=1∞1/npはp>1のとき、かつそのときに限って収束する。特に、p=1の調和級数は発散する。
5 交代級数と絶対収束
定理 5.1 (ライプニッツ).bn≥0が単調減少であり、bn→0を満たすならば、交代級数
n=1∑∞(−1)n−1bnは収束する。
証明.SN=∑k=1N(−1)k−1bkとおく。b2n+1≥b2n+2であるから、
S2n+2−S2n=b2n+1−b2n+2≥0であり、{S2n}は単調増加である。また、
S2n=b1−(b2−b3)−⋯−(b2n−2−b2n−1)−b2n≤b1である。§D1.7 定理 1.1により、あるS∈Rに対してS2n→Sとなる。S2n+1=S2n+b2n+1とb2n+1→0からS2n+1→Sである。偶数番目と奇数番目の部分列がともにSへ収束するから、SN→Sである。▨
例 5.2.bn=1/nは非負で単調減少し、0に収束する。したがって、定理 5.1により交代調和級数
n=1∑∞n(−1)n−1は収束する。一方、その絶対値級数∑n=1∞1/nは、例 4.2のp=1の場合として発散する。ゆえに交代調和級数は条件収束する。
定理 5.3 (コーシー積).K∈{R,C}とし、an,bn∈Kとする。∑n=0∞anと∑n=0∞bnが絶対収束し、その和をそれぞれA,Bとする。
ck=j=0∑kajbk−jとおくと、∑k=0∞∣ck∣<∞であり、∑k=0∞ck=ABである。
証明.P=∑n=0∞∣an∣、Q=∑n=0∞∣bn∣とおく。有限和について項を並べ替えると、
k=0∑N∣ck∣≤i,j≥0i+j≤N∑∣ai∣∣bj∣≤PQである。左辺はNについて単調に増加して上に有界であるから、§D1.7 定理 1.1により∑∣ck∣は収束する。
AN=∑i=0Nai、BN=∑j=0Nbj、CN=∑k=0Nckとおく。二重和のうちi+j>Nを満たす項では、i>N/2またはj>N/2が成り立つので、
i+j>N∑∣ai∣∣bj∣≤Qi>N/2∑∣ai∣+Pj>N/2∑∣bj∣⟶0である。特に、正方形領域の和ANBNと三角形領域の和CNの差について
∣ANBN−CN∣≤0≤i,j≤Ni+j>N∑∣ai∣∣bj∣⟶0である。また、収束列{AN}は有界であるから、実数または複素数の絶対値について
∣ANBN−AB∣≤∣AN∣∣BN−B∣+∣B∣∣AN−A∣⟶0である。したがってCN→ABであり、∑ck=ABである。▨
6 条件収束と再配列
補題 6.1.∑n=1∞anを条件収束する実数級数とし、
an+=max{an,0},an−=max{−an,0}とおく。このとき、
n=1∑∞an+=+∞,n=1∑∞an−=+∞である。
証明.PN=∑n=1Nan+、QN=∑n=1Nan−、SN=∑n=1Nan、TN=∑n=1N∣an∣とおく。an=an+−an−と∣an∣=an++an−から、
PN=2TN+SN,QN=2TN−SNである。
∑anは条件収束するから、{SN}は収束し、{TN}は収束しない。{TN}は非負項級数の部分和として単調増加である。{TN}が上に有界ならば§D1.7 定理 1.1により収束するため、{TN}は上に有界でない。したがってTN→+∞である。{SN}は有界であるから、上の二つの等式によりPN→+∞かつQN→+∞である。▨
定理 6.2 (リーマンの再配列定理).∑n=1∞anを条件収束する実数級数とし、L∈Rとする。このとき、ある全単射π:Z≥1→Z≥1が存在して、
n=1∑∞aπ(n)=Lとなる。
証明.I+={n≥1∣an>0}、I−={n≥1∣an<0}、I0={n≥1∣an=0}とおく。補題 6.1により、I+とI−は無限集合であり、正項の和と負項の絶対値の和はともに+∞へ発散する。各集合の元を元の添字順に
I+={p1<p2<⋯},I−={q1<q2<⋯}と並べる。I0が無限集合ならばI0={z1<z2<⋯}と並べ、有限集合ならばその全要素を昇順に並べる。また、命題 1.1によりan→0である。
未使用の正項を元の添字順に少なくとも一つ加え、部分和がLを越えるまで正項を加える。正項の和が+∞へ発散するため、この操作は有限回で終了する。未使用の零項があれば、そのうち添字が最小のものを一つ加える。未使用の負項を元の添字順に少なくとも一つ加え、部分和がLを下回るまで負項を加える。負項の絶対値の和が+∞へ発散するため、この操作も有限回で終了する。未使用の零項があれば、そのうち添字が最小のものを一つ加える。以上の二つの操作を繰り返す。
第k正項ブロックの終了時の部分和をUk、第k負項ブロックの終了時の部分和をVkとする。零項を加えても部分和は変わらないため、零項を加えた直後にも同じ記号を用いる。第2正項ブロック以降は直前の部分和がLより小さい。第k正項ブロックで最後に加えた項をaprkとすれば、k≥2に対して
0<Uk−L≤aprkである。第k負項ブロックで最後に加えた項をaqskとすれば、
0<L−Vk≤−aqskである。各ブロックで少なくとも一つの正項と一つの負項を使うため、prk→∞かつqsk→∞である。an→0と二つの不等式から、Uk→LかつVk→Lとなる。
k≥2において、第k正項ブロック内の各部分和はVk−1とUkの間にあり、第k負項ブロック内の各部分和はVkとUkの間にある。挿入した零項の直後の部分和は対応する端点に等しい。Vk−1→L、Uk→L、Vk→Lであるから、ブロック内の部分和も含め、構成した級数のすべての部分和はLへ収束する。
各段階では各符号の未使用項のうち添字が最小のものから使い、各正項ブロックと各負項ブロックは少なくとも一つの項を含む。したがって、すべての正項と負項は有限の段階でちょうど一度使われる。各半ブロックの後に未使用の零項を一つずつ使うため、零項が有限個の場合にも無限個の場合にも、すべての零項が有限の段階でちょうど一度使われる。ゆえに、構成した項の列は元の添字集合の置換π:Z≥1→Z≥1を定め、その部分和はLへ収束する。▨