§D1.26パラメータを用いた広義積分の計算

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原始関数を初等的な式で書くことができない被積分関数でも、広義積分の値を求めることができる場合があります。その代表が∫0∞e−x2 dx\int_0^\infty e^{-x^2}\,dxと∫0∞sin⁡xx dx\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,dxです。どちらも、被積分関数にパラメータを一つ加えて、そのパラメータについて微分または積分すると、値を求めることができます。

この方法の要点は、計算そのものではなく、入れ替えてよい理由にあります。パラメータについての微分を積分記号の下へ入れる操作と、二つの積分の順序を入れ替える操作は、条件を確かめずに行うと誤った値を与えます。本記事は、その条件を一様収束として定め、条件を満たすことを例ごとに確かめます。

1 パラメータについての一様収束

パラメータを含む広義積分では、収束の速さがパラメータによって変わります。速さがパラメータによらないことを、次のように定めます。

定義 1.1 (広義積分のパラメータについての一様収束).IIを区間とし、f:[a,∞)×I→Rf:[a,\infty)\times I \to \mathbb{R}について、各t∈It \in Iでx↦f(x,t)x \mapsto f(x,t)が[a,∞)[a,\infty)の各有界閉部分区間で可積分であり、広義積分F(t)=∫a∞f(x,t) dxF(t)=\int_a^\infty f(x,t)\,dxが収束するとする。この広義積分のII上でのパラメータについての一様収束 (uniform convergence with respect to a parameter) を、次の条件で定める。

∀ε>0, ∃A0≥a, ∀A≥A0, ∀t∈I, ∣F(t)−∫aAf(x,t) dx∣<ε\forall\varepsilon>0,\ \exists A_0 \ge a,\ \forall A \ge A_0,\ \forall t \in I,\ \left|F(t)-\int_a^A f(x,t)\,dx\right|<\varepsilon

が成り立つことをいう。

各ttで収束することは、ε\varepsilonに対するA0A_0がttに依存してよいという主張です。一様収束は、A0A_0をttより先に一つ決めるという主張です。関数列の各点収束と一様収束の違い(§D1.22 定義 1.1)と同じ形の区別です。

もう一つ、パラメータについての連続性にも同じ形の区別が必要になります。

定義 1.2 (変数について一様な、パラメータについての連続性).JJとIIを区間とし、u:J×I→Ru:J\times I\to\mathbb{R}とする。uuが変数について一様に、パラメータについて連続 (continuous in the parameter uniformly in the variable) であるとは

∀ε>0, ∃δ>0, ∀t,t′∈I, ∀x∈J, (∣t−t′∣<δ⇒∣u(x,t)−u(x,t′)∣<ε)\forall\varepsilon>0,\ \exists\delta>0,\ \forall t,t'\in I,\ \forall x \in J,\ \bigl(|t-t'|<\delta \Rightarrow |u(x,t)-u(x,t')|<\varepsilon\bigr)

が成り立つことをいう。

δ\deltaがxxに依存しないことが、この条件の内容です。二変数の連続関数が有界閉集合の上で一様連続であることを用いれば、この条件は多くの場合に自動的に満たされますが、二変数の解析は「実解析 II」が扱うので、本記事はこの条件をそのつど仮定として置き、例では直接に確かめます。

定理 1.3 (優関数による一様収束の判定).IIを区間とし、f:[a,∞)×I→Rf:[a,\infty)\times I\to\mathbb{R}について、各t∈It\in Iでx↦f(x,t)x\mapsto f(x,t)が[a,∞)[a,\infty)上連続であるとする。さらに、[a,∞)[a,\infty)上の連続関数ggが

∣f(x,t)∣≤g(x)(x≥a, t∈I)|f(x,t)| \le g(x) \qquad (x \ge a,\ t \in I)

を満たし、広義積分∫a∞g(x) dx\int_a^\infty g(x)\,dxが収束するとする。このとき、各t∈It \in Iについて∫a∞f(x,t) dx\int_a^\infty f(x,t)\,dxは絶対収束し、その収束はII上一様である。

証明.t∈It \in Iを固定する。0≤∣f(x,t)∣≤g(x)0 \le |f(x,t)| \le g(x)と§D1.20 定理 3.1により∫a∞∣f(x,t)∣ dx\int_a^\infty |f(x,t)|\,dxは収束する。f+=max⁡(f,0)f^{+}=\max(f,0)、f−=max⁡(−f,0)f^{-}=\max(-f,0)とおくと、どちらもxxについて連続で0≤f±(x,t)≤g(x)0 \le f^{\pm}(x,t) \le g(x)であるから、同じ比較判定により∫a∞f±(x,t) dx\int_a^\infty f^{\pm}(x,t)\,dxはともに収束する。f=f+−f−f=f^{+}-f^{-}と§D1.17 系 3.3により、∫aAf(x,t) dx\int_a^A f(x,t)\,dxは二つの収束する量の差としてA→∞A\to\inftyで極限をもつ。したがってF(t)=∫a∞f(x,t) dxF(t)=\int_a^\infty f(x,t)\,dxは収束する。

次に一様性を示す。G(A)=∫aAg(x) dxG(A)=\int_a^A g(x)\,dxとおくと、g≥0g \ge 0よりGGは単調非減少で、A→∞A\to\inftyで∫a∞g\int_a^\infty gへ収束する。ρ(A)=∫a∞g−G(A)\rho(A)=\int_a^\infty g-G(A)とおくとρ(A)→0\rho(A) \to 0であり、ρ\rhoはttに依存しない。A<BA<Bに対して、§D1.17 定理 3.6、§D1.17 定理 3.5および§D1.17 命題 3.4により

∣∫aBf(x,t) dx−∫aAf(x,t) dx∣=∣∫ABf(x,t) dx∣≤∫ABg(x) dx=G(B)−G(A)≤ρ(A)\left|\int_a^B f(x,t)\,dx-\int_a^A f(x,t)\,dx\right| =\left|\int_A^B f(x,t)\,dx\right| \le \int_A^B g(x)\,dx=G(B)-G(A) \le \rho(A)

が成り立つ。B→∞B\to\inftyの極限を取ると、極限は不等式の向きを保つので∣F(t)−∫aAf(x,t) dx∣≤ρ(A)\left|F(t)-\int_a^A f(x,t)\,dx\right| \le \rho(A)である。右辺はttに依存せず00へ収束するから、収束はII上一様である。▨

定理 1.4 (一様収束するときのパラメータについての連続性).IIを区間とし、f:[a,∞)×I→Rf:[a,\infty)\times I\to\mathbb{R}について次の三つを仮定する。

  1. 各t∈It \in Iについて、x↦f(x,t)x\mapsto f(x,t)は[a,∞)[a,\infty)上連続である。
  2. 各A>aA>aについて、ffの[a,A]×I[a,A]\times Iへの制限は、変数について一様にパラメータについて連続である(定義 1.2)。
  3. 広義積分F(t)=∫a∞f(x,t) dxF(t)=\int_a^\infty f(x,t)\,dxはII上一様に収束する。

このときFFはII上連続である。

証明.Fn(t)=∫aa+nf(x,t) dxF_n(t)=\int_a^{a+n}f(x,t)\,dx(n=1,2,…n=1,2,\dots)とおく。

ε>0\varepsilon>0を与える。条件 (b)をA=a+nA=a+nとε2n\frac{\varepsilon}{2n}に対して用いてδ>0\delta>0を取ると、∣t−t′∣<δ|t-t'|<\deltaを満たすt,t′∈It,t'\in Iとすべてのx∈[a,a+n]x \in [a,a+n]について∣f(x,t)−f(x,t′)∣<ε2n|f(x,t)-f(x,t')|<\frac{\varepsilon}{2n}である。§D1.17 系 3.3と§D1.17 命題 3.9により

∣Fn(t)−Fn(t′)∣=∣∫aa+n(f(x,t)−f(x,t′))dx∣≤n⋅ε2n<ε|F_n(t)-F_n(t')|=\left|\int_a^{a+n}\bigl(f(x,t)-f(x,t')\bigr)dx\right| \le n\cdot\frac{\varepsilon}{2n}<\varepsilon

となる。したがってFnF_nはII上連続である。

条件 (c)の定義でε\varepsilonに対するA0A_0を取り、a+n≥A0a+n \ge A_0を満たす番号から先を考えると、すべてのt∈It \in Iについて∣F(t)−Fn(t)∣<ε|F(t)-F_n(t)|<\varepsilonである。

以上と§D1.22 定理 2.1により、FFはII上連続である。▨

2 積分記号の下での微分

まず、積分区間が有界閉区間である場合を扱います。ここが本記事の中心の補題です。

補題 2.1 (有界閉区間の上での、パラメータについての微分).a<Aa<Aとし、IIを開区間とする。f:[a,A]×I→Rf:[a,A]\times I\to\Rについて次の四つを仮定する。

  1. 各t∈It\in Iについて、x↦f(x,t)x\mapsto f(x,t)は[a,A][a,A]上連続である。
  2. 各x∈[a,A]x\in[a,A]について、t↦f(x,t)t\mapsto f(x,t)はII上微分可能である。その導関数をft(x,t)f_t(x,t)と書く。
  3. 各t∈It\in Iについて、x↦ft(x,t)x\mapsto f_t(x,t)は[a,A][a,A]上連続である。
  4. ftf_tは[a,A]×I[a,A]\times Iの上で、変数について一様にパラメータについて連続である(定義 1.2)。

このときΦ(t)=∫aAf(x,t) dx\Phi(t)=\int_a^A f(x,t)\,dxはII上微分可能で、

Φ′(t)=∫aAft(x,t) dx\Phi'(t)=\int_a^A f_t(x,t)\,dx

が成り立つ。

証明.t∈It \in Iを固定し、ε>0\varepsilon>0を与える。条件 (d)によりδ>0\delta>0を取る。0<∣h∣<δ0<|h|<\deltaかつt+h∈It+h \in Iとする。

各x∈[a,A]x \in [a,A]について、条件 (b)によりs↦f(x,s)s \mapsto f(x,s)はttとt+ht+hを含む区間で微分可能であるから、平均値の定理(§D1.14 定理 3.1)により、ttとt+ht+hの間のあるθx\theta_xについて

f(x,t+h)−f(x,t)h=ft(x,θx)\frac{f(x,t+h)-f(x,t)}{h}=f_t(x,\theta_x)

が成り立つ。∣θx−t∣≤∣h∣<δ|\theta_x-t| \le |h|<\deltaであるから、条件 (d)により、すべてのx∈[a,A]x \in [a,A]について∣ft(x,θx)−ft(x,t)∣<ε|f_t(x,\theta_x)-f_t(x,t)|<\varepsilonである。

uh(x)=f(x,t+h)−f(x,t)h−ft(x,t)u_h(x)=\dfrac{f(x,t+h)-f(x,t)}{h}-f_t(x,t)とおくと、条件 (a)と条件 (c)によりuhu_hは[a,A][a,A]上連続で、したがって可積分である(§D1.17 定理 2.5)。上で示したことから、すべてのx∈[a,A]x \in [a,A]で∣uh(x)∣<ε|u_h(x)|<\varepsilonであるから、§D1.17 命題 3.9により∣∫aAuh(x) dx∣≤ε(A−a)\left|\int_a^A u_h(x)\,dx\right| \le \varepsilon(A-a)である。

§D1.17 系 3.3により

∫aAuh(x) dx=Φ(t+h)−Φ(t)h−∫aAft(x,t) dx\int_a^A u_h(x)\,dx=\frac{\Phi(t+h)-\Phi(t)}{h}-\int_a^A f_t(x,t)\,dx

であるから、0<∣h∣<δ0<|h|<\deltaを満たすすべてのhhについて、この量の絶対値はε(A−a)\varepsilon(A-a)以下である。ε\varepsilonは任意であるから、h→0h\to0の極限として主張が従う。▨

積分区間を無限へ広げるときに追加で要るのが、導関数の側の広義積分が一様収束することです。

定理 2.2 (積分記号の下での微分).IIを開区間とし、f:[a,∞)×I→Rf:[a,\infty)\times I\to\Rについて次の五つを仮定する。

  1. 各t∈It\in Iについて、x↦f(x,t)x\mapsto f(x,t)は[a,∞)[a,\infty)上連続であり、F(t)=∫a∞f(x,t) dxF(t)=\int_a^\infty f(x,t)\,dxは収束する。
  2. 各x≥ax \ge aについて、t↦f(x,t)t\mapsto f(x,t)はII上微分可能である。その導関数をft(x,t)f_t(x,t)と書く。
  3. 各t∈It\in Iについて、x↦ft(x,t)x\mapsto f_t(x,t)は[a,∞)[a,\infty)上連続である。
  4. 各A>aA>aについて、ftf_tの[a,A]×I[a,A]\times Iへの制限は、変数について一様にパラメータについて連続である。
  5. 広義積分G(t)=∫a∞ft(x,t) dxG(t)=\int_a^\infty f_t(x,t)\,dxはII上一様に収束する。

このときFFはII上微分可能で、F′=GF'=Gが成り立つ。

証明.Fn(t)=∫aa+nf(x,t) dxF_n(t)=\int_a^{a+n}f(x,t)\,dx、Gn(t)=∫aa+nft(x,t) dxG_n(t)=\int_a^{a+n}f_t(x,t)\,dxとおく。

条件 (a)、条件 (b)、条件 (c)および条件 (d)により、補題 2.1を区間[a,a+n][a,a+n]へ適用することができ、FnF_nはII上微分可能でFn′=GnF_n'=G_nである。また条件 (c)と条件 (d)により、定理 1.4の証明の前半と同じ議論によって、各GnG_nはII上連続である。

t0∈It_0\in Iを任意に取る。IIは開区間であるから、c<t0<dc<t_0<dかつ[c,d]⊆I[c,d]\subseteq Iを満たすc,dc,dを取ることができる。条件 (e)により{Gn}\{G_n\}は[c,d][c,d]上でGGへ一様収束し、条件 (a)により、たとえばt=ct=cにおいて数列{Fn(c)}\{F_n(c)\}はF(c)F(c)へ収束する。したがって§D1.22 定理 4.2の仮定が満たされ、{Fn}\{F_n\}は[c,d][c,d]上のある関数へ一様収束して、その関数は微分可能で導関数がGGに等しくなる。条件 (a)により{Fn}\{F_n\}の各点での極限はFFであるから、その関数はFFである。よってFFは(c,d)(c,d)上微分可能でF′=GF'=Gである。

t0∈(c,d)t_0\in(c,d)であるから、FFはt0t_0で微分可能でF′(t0)=G(t0)F'(t_0)=G(t_0)である。t0t_0は任意であるから、FFはII上微分可能でF′=GF'=Gである。▨

3 二つの積分の順序を入れ替える

定理 3.1 (パラメータについての積分との順序交換).c<dc<dとし、f:[a,∞)×[c,d]→Rf:[a,\infty)\times[c,d]\to\mathbb{R}について次の四つを仮定する。

  1. 各t∈[c,d]t\in[c,d]について、x↦f(x,t)x\mapsto f(x,t)は[a,∞)[a,\infty)上連続である。
  2. 各A>aA>aについて、ffの[a,A]×[c,d][a,A]\times[c,d]への制限は、変数について一様にパラメータについて連続である。
  3. 各A>aA>aについて、(t,x)↦f(x,t)(t,x)\mapsto f(x,t)の[c,d]×[a,A][c,d]\times[a,A]への制限は、変数について一様にパラメータについて連続である。すなわち、xxについての連続性がttについて一様である。
  4. 広義積分F(t)=∫a∞f(x,t) dxF(t)=\int_a^\infty f(x,t)\,dxは[c,d][c,d]上一様に収束する。

このとき、h(x)=∫cdf(x,t) dth(x)=\int_c^d f(x,t)\,dtとおくと広義積分∫a∞h(x) dx\int_a^\infty h(x)\,dxは収束し、

∫cdF(t) dt=∫a∞(∫cdf(x,t) dt)dx\int_c^d F(t)\,dt=\int_a^\infty\left(\int_c^d f(x,t)\,dt\right)dx

が成り立つ。

証明.

Θ(A,t)=∫aAf(x,t) dx,Φ(A)=∫cdΘ(A,t) dt,Ψ(A)=∫aAh(x) dx\Theta(A,t)=\int_a^A f(x,t)\,dx,\qquad \Phi(A)=\int_c^d \Theta(A,t)\,dt,\qquad \Psi(A)=\int_a^A h(x)\,dx

とおく。条件 (c)によりhhは[a,∞)[a,\infty)上連続である(定理 1.4の証明の前半と同じ議論による)。また条件 (b)により、各AAについてt↦Θ(A,t)t\mapsto\Theta(A,t)は[c,d][c,d]上連続である(同じ議論による)。

hhは連続であるから、§D1.19 定理 1.1によりΨ′(A)=h(A)\Psi'(A)=h(A)である。一方Φ\Phiについては、積分変数をtt、パラメータをAAとみなして補題 2.1を適用する。A1>aA_1>aを固定し、パラメータAAの範囲を開区間(a,A1+1)(a,A_1+1)とする。適用に要る四つの仮定は次のように満たされる。各AAについてt↦Θ(A,t)t\mapsto\Theta(A,t)が連続であることは上で述べた。各ttについてA↦Θ(A,t)A\mapsto\Theta(A,t)が微分可能で導関数がf(A,t)f(A,t)であることは、条件 (a)と§D1.19 定理 1.1による。各AAについてt↦f(A,t)t\mapsto f(A,t)が連続であることは条件 (b)から従う。A↦f(A,t)A\mapsto f(A,t)の連続性がt∈[c,d]t\in[c,d]について一様であることは条件 (c)である。したがってa<A≤A1a<A\le A_1で

Φ′(A)=∫cdf(A,t) dt=h(A)=Ψ′(A)\Phi'(A)=\int_c^d f(A,t)\,dt=h(A)=\Psi'(A)

である。A1A_1は任意であるから、この等式はA>aA>aで成り立つ。

Φ−Ψ\Phi-\Psiの導関数は(a,∞)(a,\infty)上で恒等的に00であるから、§D1.14 系 4.1によりΦ−Ψ\Phi-\Psiは(a,∞)(a,\infty)上で定数である。Φ\PhiとΨ\Psiはaaで右連続であり、Φ(a)=Ψ(a)=0\Phi(a)=\Psi(a)=0であるから、この定数は00である。

条件 (d)により、ε>0\varepsilon>0に対してA0A_0を取ると、A≥A0A \ge A_0とすべてのt∈[c,d]t\in[c,d]について∣F(t)−Θ(A,t)∣<ε\left|F(t)-\Theta(A,t)\right|<\varepsilonである。よって§D1.17 系 3.3と§D1.17 命題 3.9により

∣∫cdF(t) dt−Φ(A)∣≤(d−c) ε\left|\int_c^d F(t)\,dt-\Phi(A)\right| \le (d-c)\,\varepsilon

となり、Φ(A)→∫cdF(t) dt\Phi(A) \to \int_c^d F(t)\,dtが従う(FFは定理 1.4により連続であるから、左辺の積分は定まる)。Ψ(A)=Φ(A)\Psi(A)=\Phi(A)であるからΨ(A)\Psi(A)も同じ値へ収束し、広義積分∫a∞h(x) dx\int_a^\infty h(x)\,dxが収束してその値が∫cdF(t) dt\int_c^d F(t)\,dtに等しいことが分かる。▨

例 3.2 (順序交換による計算).0<a<b0<a<bとするとき

∫0∞e−ax−e−bxx dx=log⁡ba\int_0^\infty \frac{e^{-ax}-e^{-bx}}{x}\,dx=\log\frac ba

が成り立つ。ただし被積分関数のx=0x=0での値はb−ab-aと定める。

f(x,t)=e−txf(x,t)=e^{-tx}(x≥0x \ge 0、t∈[a,b]t \in [a,b])とおく。∫0∞e−txdx=1t\int_0^\infty e^{-tx}dx=\dfrac1tである。仮定を確かめる。x↦e−txx\mapsto e^{-tx}は連続である。A1>0A_1>0を固定すると、平均値の定理によりx∈[0,A1]x\in[0,A_1]とt,t′∈[a,b]t,t'\in[a,b]について∣e−tx−e−t′x∣≤x∣t−t′∣≤A1∣t−t′∣|e^{-tx}-e^{-t'x}| \le x|t-t'| \le A_1|t-t'|であり、右辺はxxに依らない。また∣e−tx−e−tx′∣≤t∣x−x′∣≤b∣x−x′∣|e^{-tx}-e^{-tx'}| \le t|x-x'| \le b|x-x'|であり、右辺はttに依らない。一様収束については、A>0A>0とt∈[a,b]t\in[a,b]に対して

∣1t−∫0Ae−txdx∣=e−tAt≤e−aAa\left|\frac1t-\int_0^A e^{-tx}dx\right|=\frac{e^{-tA}}{t} \le \frac{e^{-aA}}{a}

であり、右辺はttに依らずA→∞A\to\inftyで00へ収束する。

したがって定理 3.1を適用することができ、

∫abdtt=∫0∞(∫abe−tx dt)dx=∫0∞e−ax−e−bxx dx\int_a^b\frac{dt}{t}=\int_0^\infty\left(\int_a^b e^{-tx}\,dt\right)dx =\int_0^\infty\frac{e^{-ax}-e^{-bx}}{x}\,dx

となる。左辺はlog⁡b−log⁡a\log b-\log aである。内側の積分は、x>0x>0では∫abe−txdt=e−ax−e−bxx\int_a^b e^{-tx}dt=\frac{e^{-ax}-e^{-bx}}{x}、x=0x=0ではb−ab-aである。

4 ガウス積分

例 4.1 (ガウス積分).

∫0∞e−x2 dx=π2.\int_0^\infty e^{-x^2}\,dx=\frac{\sqrt\pi}{2}.

収束すること.x≥1x \ge 1ではx2≥xx^2 \ge xよりe−x2≤e−xe^{-x^2} \le e^{-x}であり、∫1∞e−xdx=e−1\int_1^\infty e^{-x}dx=e^{-1}は収束するから、§D1.20 定理 3.1により∫1∞e−x2dx\int_1^\infty e^{-x^2}dxは収束する。[0,1][0,1]では被積分関数が連続であるから積分は定まる。求める値をJ=∫0∞e−x2dx>0J=\int_0^\infty e^{-x^2}dx>0と書く。

二つの関数を作る.t≥0t \ge 0に対して

F(t)=(∫0te−x2dx)2,G(t)=∫01e−t2(1+u2)1+u2 duF(t)=\left(\int_0^t e^{-x^2}dx\right)^{2},\qquad G(t)=\int_0^1 \frac{e^{-t^2(1+u^2)}}{1+u^2}\,du

とおく。

FFの微分.∫0te−x2dx\int_0^t e^{-x^2}dxは§D1.19 定理 1.1により微分可能で導関数はe−t2e^{-t^2}であるから、積の微分によりF′(t)=2e−t2∫0te−x2dxF'(t)=2e^{-t^2}\int_0^t e^{-x^2}dxである。

GGの微分.φ(u,t)=e−t2(1+u2)1+u2\varphi(u,t)=\dfrac{e^{-t^2(1+u^2)}}{1+u^2}とおき、T>0T>0を任意に固定して、パラメータttの範囲を開区間(0,T+1)(0,T+1)として補題 2.1を適用する。仮定を確かめる。各ttについてu↦φ(u,t)u\mapsto\varphi(u,t)は[0,1][0,1]上連続である。各uuについてt↦φ(u,t)t\mapsto\varphi(u,t)は微分可能でφt(u,t)=−2t e−t2(1+u2)\varphi_t(u,t)=-2t\,e^{-t^2(1+u^2)}であり、これは各ttについてuuの連続関数である。最後に、φt\varphi_tをさらにttで微分すると

∂∂tφt(u,t)=−2e−t2(1+u2)+4t2(1+u2)e−t2(1+u2)\frac{\partial}{\partial t}\varphi_t(u,t)=-2e^{-t^2(1+u^2)}+4t^2(1+u^2)e^{-t^2(1+u^2)}

であり、u∈[0,1]u\in[0,1]とt∈(0,T+1)t\in(0,T+1)では1+u2≤21+u^2 \le 2、e−t2(1+u2)≤1e^{-t^2(1+u^2)} \le 1であるから、その絶対値は2+8(T+1)22+8(T+1)^2以下である。したがって平均値の定理により∣φt(u,t)−φt(u,t′)∣≤(2+8(T+1)2)∣t−t′∣|\varphi_t(u,t)-\varphi_t(u,t')| \le \bigl(2+8(T+1)^2\bigr)|t-t'|となり、右辺はuuに依らない。これは定義 1.2の条件である。

よって

G′(t)=∫01(−2t e−t2(1+u2))du=−2t e−t2∫01e−t2u2 duG'(t)=\int_0^1 \bigl(-2t\,e^{-t^2(1+u^2)}\bigr)du=-2t\,e^{-t^2}\int_0^1 e^{-t^2u^2}\,du

である。t>0t>0のときx=tux=tuと置換すると∫01e−t2u2du=1t∫0te−x2dx\int_0^1 e^{-t^2u^2}du=\frac1t\int_0^t e^{-x^2}dxであるから、

G′(t)=−2e−t2∫0te−x2dx=−F′(t)(t>0)G'(t)=-2e^{-t^2}\int_0^t e^{-x^2}dx=-F'(t) \qquad (t>0)

である。したがって(F+G)′=0(F+G)'=0は(0,∞)(0,\infty)上で成り立つ。

定数を決める.§D1.14 系 4.1によりF+GF+Gは(0,∞)(0,\infty)上で定数である。FFとGGは[0,∞)[0,\infty)上で連続であるから、t→0+t\to0+とすると、この定数値は

F(0)+G(0)=0+∫01du1+u2=arctan⁡1=π4F(0)+G(0)=0+\int_0^1\frac{du}{1+u^2}=\arctan 1=\frac\pi4

である。一方t→∞t\to\inftyとすると、e−t2(1+u2)≤e−t2e^{-t^2(1+u^2)} \le e^{-t^2}より0≤G(t)≤e−t2⋅π4→00 \le G(t) \le e^{-t^2}\cdot\frac\pi4 \to 0であり、F(t)→J2F(t) \to J^2である。したがってJ2=π4J^2=\frac\pi4であり、J>0J>0よりJ=π2J=\frac{\sqrt\pi}{2}である。

この計算で入れ替えたのは、パラメータttについての微分と、uuについての積分です。積分区間が有界閉区間[0,1][0,1]でしたから、必要だったのは補題 2.1の四つの仮定だけです。次の例では積分区間が無限になり、一様収束が要ります。

5 正弦を変数で割った関数の広義積分

被積分関数sin⁡xx\dfrac{\sin x}{x}は絶対値の積分が発散します(§D1.20 例 4.1)。したがって、この積分について優関数(定理 1.3)を用いることはできません。一様収束を、部分積分による評価から直接に示します。

例 5.1 (正弦を変数で割った関数の広義積分).

∫0∞sin⁡xx dx=π2.\int_0^\infty \frac{\sin x}{x}\,dx=\frac\pi2.

被積分関数はx=0x=0で定義されないが、lim⁡x→0sin⁡xx=1\lim_{x\to0}\frac{\sin x}{x}=1であるから、x=0x=0での値を11と定めると[0,∞)[0,\infty)上の連続関数になる。積分が収束することは§D1.20 例 4.1による。

t≥0t \ge 0に対して

F(t)=∫0∞e−tx sin⁡xx dxF(t)=\int_0^\infty e^{-tx}\,\frac{\sin x}{x}\,dx

とおく(x=0x=0での被積分関数の値は11と定める)。

各ttで収束すること.t>0t>0では∣e−txsin⁡xx∣≤e−tx\left|e^{-tx}\frac{\sin x}{x}\right| \le e^{-tx}であり、∫0∞e−txdx=1t\int_0^\infty e^{-tx}dx=\frac1tが収束するので、§D1.20 定理 3.1により絶対収束する。t=0t=0では上に述べたとおり収束する。

収束が[0,∞)[0,\infty)上一様であること.1≤A<B1 \le A<Bとし、S(x)=∫Axsin⁡u du=cos⁡A−cos⁡xS(x)=\int_A^x\sin u\,du=\cos A-\cos xとおく。S(A)=0S(A)=0かつ∣S(x)∣≤2|S(x)| \le 2である。ddx(e−txx)=−e−tx(tx+1x2)\frac{d}{dx}\left(\frac{e^{-tx}}{x}\right) =-e^{-tx}\left(\frac tx+\frac1{x^2}\right)であるから、部分積分により

∫ABe−txsin⁡xx dx=[e−txS(x)x]AB+∫ABS(x) e−tx(tx+1x2)dx\int_A^B e^{-tx}\frac{\sin x}{x}\,dx =\left[\frac{e^{-tx}S(x)}{x}\right]_A^B+\int_A^B S(x)\,e^{-tx}\left(\frac tx+\frac1{x^2}\right)dx

である。第一項はS(A)=0S(A)=0よりe−tBS(B)B\frac{e^{-tB}S(B)}{B}に等しく、その絶対値は2B≤2A\frac2B \le \frac2A以下である。第二項は

∣∫ABS(x)e−tx(tx+1x2)dx∣≤2A∫ABt e−txdx+2∫ABdxx2≤2A+2A=4A\left|\int_A^B S(x)e^{-tx}\left(\frac tx+\frac1{x^2}\right)dx\right| \le \frac2A\int_A^B t\,e^{-tx}dx+2\int_A^B\frac{dx}{x^2} \le \frac2A+\frac2A=\frac4A

と評価される(∫ABte−txdx=e−tA−e−tB≤1\int_A^B t e^{-tx}dx=e^{-tA}-e^{-tB} \le 1、∫ABx−2dx≤1A\int_A^B x^{-2}dx \le \frac1A、いずれもt≥0t \ge 0で成り立つ)。したがってA≥1A \ge 1とB>AB>Aとt≥0t \ge 0について

∣∫ABe−txsin⁡xxdx∣≤6A\left|\int_A^B e^{-tx}\frac{\sin x}{x}dx\right| \le \frac6A

である。B→∞B\to\inftyの極限を取ると∣F(t)−∫0Ae−txsin⁡xxdx∣≤6A\left|F(t)-\int_0^A e^{-tx}\frac{\sin x}{x}dx\right| \le \frac6Aとなり、右辺はttに依らず00へ収束する。よって収束は[0,∞)[0,\infty)上一様である。

FFが[0,∞)[0,\infty)上連続であること. 各ttについてx↦e−txsin⁡xxx\mapsto e^{-tx}\frac{\sin x}{x}は連続である。A>0A>0を固定すると、x∈[0,A]x\in[0,A]とt,t′≥0t,t'\ge0について、平均値の定理により∣e−tx−e−t′x∣≤x∣t−t′∣≤A∣t−t′∣|e^{-tx}-e^{-t'x}| \le x|t-t'| \le A|t-t'|であり、∣sin⁡xx∣≤1\left|\frac{\sin x}{x}\right| \le 1であるから∣e−txsin⁡xx−e−t′xsin⁡xx∣≤A∣t−t′∣\left|e^{-tx}\frac{\sin x}{x}-e^{-t'x}\frac{\sin x}{x}\right| \le A|t-t'|となって、右辺はxxに依らない。一様収束は上で示した。したがって定理 1.4によりFFは[0,∞)[0,\infty)上連続である。

t>0t>0での微分.δ>0\delta>0を固定し、開区間I=(δ,∞)I=(\delta,\infty)の上で定理 2.2を適用する。f(x,t)=e−txsin⁡xxf(x,t)=e^{-tx}\frac{\sin x}{x}とおくとft(x,t)=−e−txsin⁡xf_t(x,t)=-e^{-tx}\sin xである。各ttについてx↦ft(x,t)x\mapsto f_t(x,t)は連続である。A>0A>0について、x∈[0,A]x\in[0,A]とt,t′∈It,t'\in Iで∣ft(x,t)−ft(x,t′)∣≤x∣t−t′∣≤A∣t−t′∣|f_t(x,t)-f_t(x,t')| \le x|t-t'| \le A|t-t'|であるから、変数について一様な連続性が成り立つ。また∣ft(x,t)∣≤e−δx|f_t(x,t)| \le e^{-\delta x}であり∫0∞e−δxdx\int_0^\infty e^{-\delta x}dxは収束するから、定理 1.3により∫0∞ft(x,t)dx\int_0^\infty f_t(x,t)dxはII上一様に収束する。よって

F′(t)=−∫0∞e−txsin⁡x dx(t>δ)F'(t)=-\int_0^\infty e^{-tx}\sin x\,dx \qquad (t>\delta)

である。右辺を計算する。−e−tx(tsin⁡x+cos⁡x)1+t2-\dfrac{e^{-tx}(t\sin x+\cos x)}{1+t^2}はe−txsin⁡xe^{-tx}\sin xの原始関数であるから、§D1.19 定理 2.1により

∫0Re−txsin⁡x dx=1−e−tR(tsin⁡R+cos⁡R)1+t2⟶11+t2(R→∞)\int_0^R e^{-tx}\sin x\,dx=\frac{1-e^{-tR}(t\sin R+\cos R)}{1+t^2} \longrightarrow \frac{1}{1+t^2} \qquad (R\to\infty)

である。δ>0\delta>0は任意であるから、t>0t>0でF′(t)=−11+t2F'(t)=-\dfrac1{1+t^2}が成り立つ。

定数を決める.arctan⁡\arctanの導関数は11+t2\frac1{1+t^2}であるから、F(t)+arctan⁡tF(t)+\arctan tの導関数はt>0t>0で00であり、§D1.14 系 4.1により定数である。この定数をCCとする。t>0t>0では∣sin⁡xx∣≤1\left|\frac{\sin x}{x}\right| \le 1より∣F(t)∣≤∫0∞e−txdx=1t|F(t)| \le \int_0^\infty e^{-tx}dx=\frac1tであるから、t→∞t\to\inftyでF(t)→0F(t)\to0である。またarctan⁡t→π2\arctan t \to \frac\pi2であるからC=π2C=\frac\pi2、すなわち

F(t)=π2−arctan⁡t(t>0)F(t)=\frac\pi2-\arctan t \qquad (t>0)

である。

t=0t=0へ戻る.FFは[0,∞)[0,\infty)上連続であったから、t→0+t\to0+の極限を取ることができ、

∫0∞sin⁡xx dx=F(0)=lim⁡t→0+(π2−arctan⁡t)=π2\int_0^\infty\frac{\sin x}{x}\,dx=F(0)=\lim_{t\to0+}\left(\frac\pi2-\arctan t\right)=\frac\pi2

となる。

この例でt=0t=0へ戻る段階が、一様収束を要した箇所です。各t>0t>0での値だけからはt=0t=0での値を決めることができません。FFがt=0t=0で連続であることの根拠が、部分積分によって示した一様収束です。

参考文献

  1. 杉浦光夫『解析入門 I』基礎数学 2, 東京大学出版会, 1980.
  2. Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1976.

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