§D1.12中間値の定理

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閉区間で連続な関数は、両端での値のあいだにあるすべての値をとります。本記事では、この定理を、区間を半分ずつ狭めて一点を取り出す方法と、上限を用いて一点を定める方法の両方で実数の完備性から示します。あわせて、方程式の解が存在することと、区間を自分へ写す連続関数が一次元で不動点をもつことを導きます。

1 零点版

定理 1.1 (中間値の定理・零点版).ffが[a,b][a,b]で連続でf(a)<0<f(b)f(a) < 0 < f(b)ならば、あるc∈(a,b)c \in (a,b)でf(c)=0f(c) = 0。

証明 (区間縮小法).I0=[a,b]I_0=[a,b]とし、各n≥0n\ge0についてIn=[an,bn]I_n=[a_n,b_n]が定まったと仮定する。中点mn=(an+bn)/2m_n=(a_n+b_n)/2を取る。f(mn)=0f(m_n)=0ならc=mnc=m_nと置いて証明は終わる。以下では常にf(mn)≠0f(m_n)\ne0と仮定して区間列を作る。

f(mn)<0f(m_n)<0ならIn+1=[mn,bn]I_{n+1}=[m_n,b_n]、f(mn)>0f(m_n)>0ならIn+1=[an,mn]I_{n+1}=[a_n,m_n]と置く。すると各nnについて

In+1⊂In,f(an)<0<f(bn),bn−an=2−n(b−a)I_{n+1}\subset I_n,\qquad f(a_n)<0<f(b_n),\qquad b_n-a_n=2^{-n}(b-a)

が成り立つ。実際、n=0n=0では仮定から成り立つ。nnで成り立つと仮定する。f(mn)<0f(m_n)<0のときはan+1=mna_{n+1}=m_n、bn+1=bnb_{n+1}=b_nであるから

f(an+1)=f(mn)<0<f(bn)=f(bn+1)f(a_{n+1})=f(m_n)<0<f(b_n)=f(b_{n+1})

となり、f(mn)>0f(m_n)>0のときも同様に

f(an+1)=f(an)<0<f(mn)=f(bn+1)f(a_{n+1})=f(a_n)<0<f(m_n)=f(b_{n+1})

となる。長さの式はどちらの場合も

bn+1−an+1=bn−an2b_{n+1}-a_{n+1}=\frac{b_n-a_n}{2}

から従う。

§D1.4 系 2.2により、任意のε>0\varepsilon>0に対して2−n(b−a)<ε2^{-n}(b-a)<\varepsilonとなるnnが十分大きく取れる。したがってbn−an→0b_n-a_n\to0であり、§D1.7 命題 3.2によって共通部分⋂n≥0In\bigcap_{n\ge0}I_nはただ一点{c}\{c\}からなる。

f(c)>0f(c)>0と仮定する。ffはccで連続であるから、ε=f(c)/2>0\varepsilon=f(c)/2>0に対してあるδ>0\delta>0が存在し、∣x−c∣<δ|x-c|<\deltaなら

∣f(x)−f(c)∣<f(c)2|f(x)-f(c)|<\frac{f(c)}2

が成り立つ。したがって∣x−c∣<δ|x-c|<\deltaならf(x)>f(c)/2>0f(x)>f(c)/2>0である。§D1.4 系 2.2により2−n(b−a)<δ2^{-n}(b-a)<\deltaとなるnnを取ると、c,an∈Inc,a_n\in I_nであるから

0≤c−an≤bn−an<δ0\le c-a_n\le b_n-a_n<\delta

となり、f(an)>0f(a_n)>0を得る。これは各nnで成り立つf(an)<0f(a_n)<0に反する。

f(c)<0f(c)<0と仮定する。ffのccでの連続性から、あるδ>0\delta>0が存在し、∣x−c∣<δ|x-c|<\deltaならf(x)<0f(x)<0となる。再び2−n(b−a)<δ2^{-n}(b-a)<\deltaとなるnnを取ると、c,bn∈Inc,b_n\in I_nなので

0≤bn−c≤bn−an<δ0\le b_n-c\le b_n-a_n<\delta

であり、f(bn)<0f(b_n)<0を得る。これは各nnで成り立つf(bn)>0f(b_n)>0に反する。

したがってf(c)=0f(c)=0である。さらにf(a)<0<f(b)f(a)<0<f(b)であるからc≠a,bc\ne a,bであり、c∈(a,b)c\in(a,b)が従う。▨

証明 (上限法).S={x∈[a,b]∣f(x)≤0}S=\{x\in[a,b]\mid f(x)\le0\}とおき、c=sup⁡Sc=\sup Sとする。f(a)<0f(a)<0であるからa∈Sa\in S、したがってSSは空でない。S⊂[a,b]S\subset[a,b]であるからbbは上界であり、上限公理によってccが存在する。

f(c)<0f(c)<0と仮定する。ffのccでの連続性から、あるδ>0\delta>0が存在し、∣x−c∣<δ|x-c|<\deltaならf(x)<0f(x)<0となる。f(b)>0f(b)>0であるからc≠bc\ne bであり、c<bc<bである。x=min⁡(c+δ/2,b)x=\min(c+\delta/2,b)と置くとx>cx>cかつ∣x−c∣<δ|x-c|<\deltaであるからf(x)<0f(x)<0、したがってx∈Sx\in Sである。これはx>cx>cがccの上界性に反する。

f(c)>0f(c)>0と仮定する。ffのccでの連続性から、あるδ>0\delta>0が存在し、∣x−c∣<δ|x-c|<\deltaならf(x)>0f(x)>0となる。§D1.4 命題 1.6をM=cM=c、ε=δ\varepsilon=\deltaに対して用いると、c−δ<sc-\delta<sを満たすs∈Ss\in Sが存在する。s≤cs\le cでもあるので∣s−c∣<δ|s-c|<\deltaであり、したがってf(s)>0f(s)>0となる。一方、s∈Ss\in Sの定義からf(s)≤0f(s)\le0である。これは矛盾である。

ゆえにf(c)=0f(c)=0である。f(a)<0<f(b)f(a)<0<f(b)なのでc≠a,bc\ne a,bであり、c∈(a,b)c\in(a,b)が従う。▨

実数の完備性は、区間を一点へ縮める形でも、上限を一点として取り出す形でも現れます。

系 1.2 (中間値の定理・一般形).ffが[a,b][a,b]で連続でyyがf(a)f(a)とf(b)f(b)の間の値なら、あるc∈[a,b]c\in[a,b]でf(c)=yf(c)=y。

証明.y=f(a)y=f(a)ならc=ac=a、y=f(b)y=f(b)ならc=bc=bと取ればよい。

f(a)<y<f(b)f(a)<y<f(b)のときはg(x)=f(x)−yg(x)=f(x)-yと置くとggは[a,b][a,b]で連続であり、

g(a)=f(a)−y<0<f(b)−y=g(b)g(a)=f(a)-y<0< f(b)-y=g(b)

である。したがって定理 1.1により、あるc∈(a,b)c\in(a,b)が存在してg(c)=0g(c)=0、すなわちf(c)=yf(c)=yとなる。

f(b)<y<f(a)f(b)<y<f(a)のときはh(x)=y−f(x)h(x)=y-f(x)と置くとhhは[a,b][a,b]で連続であり、

h(a)=y−f(a)<0<y−f(b)=h(b)h(a)=y-f(a)<0<y-f(b)=h(b)

である。再び定理 1.1により、あるc∈(a,b)c\in(a,b)が存在してh(c)=0h(c)=0、すなわちf(c)=yf(c)=yとなる。▨

有理数の範囲では上限や区間の共通点が系の中に残るとは限らないので、この定理は実数の完備性を実際に用いています。

2 応用

例 2.1 (方程式の解の存在).f(x)=x5−x−1f(x)=x^5-x-1とおく。多項式は連続であり、

f(1)=1−1−1=−1<0,f(2)=32−2−1=29>0f(1)=1-1-1=-1<0,\qquad f(2)=32-2-1=29>0

である。したがって定理 1.1により、あるc∈(1,2)c\in(1,2)が存在してf(c)=0f(c)=0となる。数値計算の二分法は、この存在を保ったまま区間を狭める手続きである。

系 2.2 (奇数次の実多項式は実根をもつ). 実係数の奇数次多項式p(x)p(x)は少なくとも1つの実根をもつ。

証明. 最高次係数をAAとする。A<0A<0なら−p-pに置き換えてよいので、A>0A>0と仮定する。奇数次多項式の最高次項は無限遠で符号を支配するから、ある実数R>0R>0が存在して

x≥R⇒p(x)>0,x≤−R⇒p(x)<0x\ge R \Rightarrow p(x)>0,\qquad x\le -R \Rightarrow p(x)<0

が成り立つ。したがってa=−Ra=-R、b=Rb=Rと置けばp(a)<0<p(b)p(a)<0<p(b)である。多項式は[a,b][a,b]で連続であるから、定理 1.1により(a,b)(a,b)に零点をもつ。▨

系 2.3 (1次元の不動点定理). 連続関数f:[0,1]→[0,1]f : [0, 1] \to [0, 1]は不動点をもつ。すなわちf(c)=cf(c) = cとなるc∈[0,1]c \in [0, 1]が存在する。

証明.g(x)=f(x)−xg(x)=f(x)-xとおく。ffと恒等関数の差であるからggは[0,1][0,1]で連続である。またf([0,1])⊂[0,1]f([0,1])\subset[0,1]であるから

g(0)=f(0)≥0,g(1)=f(1)−1≤0g(0)=f(0)\ge0,\qquad g(1)=f(1)-1\le0

が成り立つ。g(0)=0g(0)=0またはg(1)=0g(1)=0なら、その端点が不動点である。そうでなければg(1)<0<g(0)g(1)<0<g(0)であり、00はg(0)g(0)とg(1)g(1)の間の値である。したがって系 1.2により、あるc∈[0,1]c\in[0,1]が存在してg(c)=0g(c)=0、すなわちf(c)=cf(c)=cとなる。▨

系 2.3は、区間を自分自身へ連続に写すと必ず「動かない点」がある、というブラウワーの不動点定理の最も簡単な場合で、高次元(円板を自分へ写す)では代数的位相の道具を要する深い定理になります。

3 演習

問題 3.1.S⊂RS\subset\mathbb Rが空でなく上に有界であり、c=sup⁡Sc=\sup Sとする。任意のε>0\varepsilon>0に対して

S∩(c−ε,c]≠∅S\cap(c-\varepsilon,c]\ne\varnothing

が成り立つことを証明せよ。さらに、この事実が上限法の証明のどこで使われているかを一文で説明せよ。

問題 3.2.f:[a,b]→Rf:[a,b]\to\mathbb Rが連続でf(a)<r<f(b)f(a)<r<f(b)とする。g(x)=f(x)−rg(x)=f(x)-rを導入し、定理 1.1だけを用いて、あるc∈(a,b)c\in(a,b)が存在してf(c)=rf(c)=rとなることを証明せよ。ggが満たす仮定を省略せずに書け。

問題 3.3.f:[a,b]→Rf:[a,b]\to\mathbb Rが連続でf(a)>0>f(b)f(a)>0>f(b)とする。集合

T={x∈[a,b]∣f(x)≥0}T=\{x\in[a,b]\mid f(x)\ge0\}

とd=sup⁡Td=\sup Tを用いて零点の存在を証明せよ。f(d)<0f(d)<0とf(d)>0f(d)>0のどちらが、上限法の証明のどの矛盾に対応するかを明記せよ。

参考文献

  1. Walter Rudin, Principles of Mathematical Analysis, 3rd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1976.
  2. Tom M. Apostol, Calculus, 2nd ed., vol. I, Wiley, New York, 1967.

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