§D1.13最大値・最小値の定理

最終更新

最大値の定理とは、有界閉区間で連続な関数は、その区間上で最大値と最小値を必ずとる、という定理です。

1 なぜ「有界閉区間」なのか

3つの条件——有界・閉・連続——がすべて必要です。1つでも欠けると成り立ちません。

  • 開区間(0,1)(0,1)上のf(x)=xf(x)=x:上限11に近づくが到達せず、最大値なし。
  • 有界でない[0,∞)[0,\infty)上のf(x)=xf(x)=x:いくらでも大きく、最大値なし。
  • 不連続な関数:ジャンプで最大値を飛ばすことがある。

2 定理と証明

定理 2.1 (最大値の定理).ffが有界閉区間[a,b][a,b]で連続ならば、ffは[a,b][a,b]上で最大値と最小値をとる。すなわちあるxmax⁡,xmin⁡∈[a,b]x_{\max}, x_{\min} \in [a,b]で、すべてのxxに対しf(xmin⁡)≤f(x)≤f(xmax⁡)f(x_{\min}) \le f(x) \le f(x_{\max})。

補題 2.2.[a,b][a,b]で連続なffは有界。

証明. 有界でないと仮定すると、各nnに対し∣f(xn)∣>n|f(x_n)| > nとなるxn∈[a,b]x_n \in [a,b]がとれる。[a,b][a,b]は有界だから§D1.8 定理 2.2 (ボルツァーノ・ワイエルシュトラス)で収束部分列xnk→x∗∈[a,b]x_{n_k} \to x^* \in [a,b](閉区間なので極限も区間内)。連続性よりf(xnk)→f(x∗)f(x_{n_k}) \to f(x^*)は有限値に収束するはずだが、∣f(xnk)∣>nk→∞|f(x_{n_k})| > n_k \to \inftyで発散——矛盾。ゆえにffは有界。▨

証明 (定理 2.1).補題 2.2よりffは有界で、M=sup⁡x∈[a,b]f(x)M = \sup_{x\in[a,b]} f(x)が存在する(上限公理)。上限のε\varepsilon-特徴づけ(§D1.4 命題 1.6)より、各nnでf(xn)>M−1nf(x_n) > M - \frac1nとなるxn∈[a,b]x_n \in [a,b]がとれ、f(xn)→Mf(x_n) \to M。B-W で収束部分列xnk→xmax⁡∈[a,b]x_{n_k} \to x_{\max}\in[a,b]をとると、連続性よりf(xmax⁡)=lim⁡f(xnk)=Mf(x_{\max}) = \lim f(x_{n_k}) = M。よって最大値MMがxmax⁡x_{\max}で達成される。最小値は−f-fに同じ議論を適用すればよい。▨

「収束部分列を取り出す」B-W が、最大点の存在を生む足場です。これは位相空間論 I で「コンパクト集合上の連続関数は最大値をとる」と一般化されます。

3 帰結:正の連続関数は正の下限をもつ

最大値・最小値が「達成される」ことは、不等式の議論で地味に効きます。

系 3.1.ffが[a,b][a, b]で連続かつ、すべてのxxでf(x)>0f(x) > 0ならば、ある定数m>0m > 0が存在してf(x)≥mf(x) \ge m(すべてのx∈[a,b]x \in [a, b])。

証明.定理 2.1よりffは最小値m=f(xmin⁡)m = f(x_{\min})をとる。仮定よりm=f(xmin⁡)>0m = f(x_{\min}) > 0。すべてのxxでf(x)≥m>0f(x) \ge m > 0。▨

「つねに正」から「一律にmm以上」へ格上げできるのは、最小値が達成されるからです。もしinf⁡f=0\inf f = 0が達成されないと(開区間(0,1)(0, 1)上のf(x)=xf(x) = xのように)、正の下界はとれません。この系は、たとえば∫ab1f(x) dx\int_a^b \frac{1}{f(x)}\,dxの有界性や、連続関数の逆数の連続性を示すときに使われます。

前提記事