§E4.16Beta 関数

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三角関数の冪の積分では、指数が変わるたびに積分計算をやり直す代わりに、端点での冪特異性を二つのパラメータとしてまとめることが有効である。Beta 関数はこの役割を担う広義積分であり、Gamma 関数との関係式によって、一変数の端点問題と第一象限上の積分計算を結び付ける。本記事では、Beta 関数が定義される範囲と Beta–Gamma 関係式を確立し、三角関数の冪の積分を統一的に評価する。

1 定義と収束

定義 1.1.p,q>0p,q>0に対するBeta 関数 (Beta function) を

B(p,q)=∫01tp−1(1−t)q−1 dtB(p,q)=\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}\,dt

と定める。右辺は00と11を別々に端点とする広義積分である。

命題 1.2.p,q∈Rp,q\in\mathbb Rに対して

∫01tp−1(1−t)q−1 dt(1)\int_0^1t^{p-1}(1-t)^{q-1}\,dt \tag{1}

が収束するための必要十分条件はp,q>0p,q>0である。この条件のもとで、式 (1) は絶対収束する。

証明.0<t≤1/20<t\leq1/2では(1−t)q−1(1-t)^{q-1}が正の上界と正の下界をもつ。従って、ある定数0<cq≤Cq0<c_q\leq C_qに対して

cqtp−1≤tp−1(1−t)q−1≤Cqtp−1c_qt^{p-1} \leq t^{p-1}(1-t)^{q-1} \leq C_qt^{p-1}

が成り立つ。0<ε<1/20<\varepsilon<1/2に対して

∫ε1/2tp−1 dt={2−p−εpp,p≠0,log⁡12ε,p=0\int_\varepsilon^{1/2}t^{p-1}\,dt = \begin{cases} \dfrac{2^{-p}-\varepsilon^p}{p},&p\neq0,\\[6pt] \log\dfrac1{2\varepsilon},&p=0 \end{cases}

であるから、零点側の積分が収束するための必要十分条件はp>0p>0である。

1/2≤t<11/2\leq t<1ではtp−1t^{p-1}が正の上界と正の下界をもつ。同じ比較をu=1−tu=1-tに対して行うと、11の側の積分が収束するための必要十分条件はq>0q>0である。被積分関数は非負であるため、収束する場合には絶対値を付けても積分は変わらない。▨

2 Beta–Gamma 関係式

定理 2.1 (Beta–Gamma 関係式).p,q>0p,q>0に対して

B(p,q)=Γ(p)Γ(q)Γ(p+q)(2)B(p,q)=\frac{\Gamma(p)\Gamma(q)}{\Gamma(p+q)} \tag{2}

が成り立つ。

証明.Q=(0,∞)2Q=(0,\infty)^2上で

G(x,y)=xp−1yq−1e−(x+y)G(x,y)=x^{p-1}y^{q-1}e^{-(x+y)}

とおく。GGはQQ上の非負連続関数である。

まず、この広義重積分を Gamma 積として計算する。N≥1N\geq1に対してKN=[1/N,N]2K_N=[1/N,N]^2とおく。列(KN)(K_N)はQQの任意のコンパクト部分集合を最終的に含む。閉直方体上の累次積分定理§E4.12 定理 1により

∫KNG(x,y) d(x,y)=(∫1/NNxp−1e−x dx)(∫1/NNyq−1e−y dy).(3)\int_{K_N}G(x,y)\,d(x,y) =\left(\int_{1/N}^{N}x^{p-1}e^{-x}\,dx\right) \left(\int_{1/N}^{N}y^{q-1}e^{-y}\,dy\right). \tag{3}

§E4.11 命題 4.5と Gamma 関数の定義§E4.15 定義 1.1から、N→∞N\to\inftyとすると

∫QG(x,y) d(x,y)=Γ(p)Γ(q)<∞(4)\int_QG(x,y)\,d(x,y)=\Gamma(p)\Gamma(q)<\infty \tag{4}

を得る。特に∣G∣=G|G|=Gであるから、この広義重積分は絶対収束する。

次に

U=(0,∞)×(0,1),Φ(s,t)=(st,s(1−t))U=(0,\infty)\times(0,1), \qquad \Phi(s,t)=(st,s(1-t))

とおく。Φ:U→Q\Phi:U\to QはC1C^1級微分同相であり、逆写像は

(x,y)⟼(x+y,xx+y)(x,y)\longmapsto\left(x+y,\frac{x}{x+y}\right)

である。また

det⁡DΦ(s,t)=∣ts1−t−s∣=−s\det D\Phi(s,t) =\begin{vmatrix}t&s\\1-t&-s\end{vmatrix} =-s

である。非負広義重積分の変数変換公式§E4.14 系 4.1をGGへ適用すると

∫QG(x,y) d(x,y)=∫Usp+q−1e−stp−1(1−t)q−1 d(s,t)(5)\int_QG(x,y)\,d(x,y) =\int_U s^{p+q-1}e^{-s}t^{p-1}(1-t)^{q-1}\,d(s,t) \tag{5}

が成り立つ。

式 (5) の右辺を一変数積分の積へ分離する。N≥3N\geq3に対して

DN=[1/N,N]×[1/N,1−1/N]D_N=[1/N,N]\times[1/N,1-1/N]

とおく。列(DN)(D_N)はUUの任意のコンパクト部分集合を最終的に含む。閉直方体上の累次積分定理から

∫DNsp+q−1e−stp−1(1−t)q−1 d(s,t)=(∫1/NNsp+q−1e−s ds)(∫1/N1−1/Ntp−1(1−t)q−1 dt).(6)\begin{aligned} &\int_{D_N}s^{p+q-1}e^{-s}t^{p-1}(1-t)^{q-1}\,d(s,t)\\ &\qquad= \left(\int_{1/N}^{N}s^{p+q-1}e^{-s}\,ds\right) \left(\int_{1/N}^{1-1/N}t^{p-1}(1-t)^{q-1}\,dt\right). \end{aligned} \tag{6}

再び§E4.11 命題 4.5を用い、式 (6) でN→∞N\to\inftyとすると

∫Usp+q−1e−stp−1(1−t)q−1 d(s,t)=Γ(p+q)B(p,q)(7)\int_U s^{p+q-1}e^{-s}t^{p-1}(1-t)^{q-1}\,d(s,t) =\Gamma(p+q)B(p,q) \tag{7}

を得る。式 (4)、式 (5)、式 (7) を合わせると

Γ(p)Γ(q)=Γ(p+q)B(p,q)\Gamma(p)\Gamma(q)=\Gamma(p+q)B(p,q)

である。Γ(p+q)\Gamma(p+q)は正であるから、両辺をΓ(p+q)\Gamma(p+q)で割ると式 (2) を得る。▨

例 2.2 (整数引数の検算). 直接積分すると

B(2,3)=∫01t(1−t)2 dt=112B(2,3)=\int_0^1t(1-t)^2\,dt=\frac1{12}

である。一方、定理 2.1と Gamma 関数の関数方程式§E4.15 命題 3.1から

B(2,3)=Γ(2)Γ(3)Γ(5)=1! 2!4!=112B(2,3)=\frac{\Gamma(2)\Gamma(3)}{\Gamma(5)} =\frac{1!\,2!}{4!} =\frac1{12}

を得る。

3 三角関数の冪の積分

命題 3.1.m,n>−1m,n>-1に対して

∫0π/2sin⁡mθcos⁡nθ dθ=12B(m+12,n+12)=Γ((m+1)/2)Γ((n+1)/2)2Γ((m+n+2)/2).(8)\begin{aligned} \int_0^{\pi/2}\sin^m\theta\cos^n\theta\,d\theta &=\frac12B\left(\frac{m+1}{2},\frac{n+1}{2}\right)\\ &=\frac{\Gamma((m+1)/2)\Gamma((n+1)/2)} {2\Gamma((m+n+2)/2)}. \end{aligned} \tag{8}

証明.ε,δ>0\varepsilon,\delta>0かつε+δ<π/2\varepsilon+\delta<\pi/2とし、切断区間[ε,π/2−δ][\varepsilon,\pi/2-\delta]上でu=sin⁡2θu=\sin^2\thetaとおく。このとき

du=2sin⁡θcos⁡θ dθdu=2\sin\theta\cos\theta\,d\theta

であるから

∫επ/2−δsin⁡mθcos⁡nθ dθ=12∫sin⁡2εcos⁡2δu(m+1)/2−1(1−u)(n+1)/2−1 du.(9)\int_\varepsilon^{\pi/2-\delta}\sin^m\theta\cos^n\theta\,d\theta =\frac12\int_{\sin^2\varepsilon}^{\cos^2\delta} u^{(m+1)/2-1}(1-u)^{(n+1)/2-1}\,du. \tag{9}

m,n>−1m,n>-1なので Beta 積分の二つの引数は正である。命題 1.2により式 (9) の右辺は両端で絶対収束する。従ってε,δ↓0\varepsilon,\delta\downarrow0とすると式 (8) の第一の等式を得る。第二の等式は定理 2.1から従う。▨

例 3.2 (偶数冪の三角積分).m=4m=4、n=2n=2とすると

∫0π/2sin⁡4θcos⁡2θ dθ=12Γ(5/2)Γ(3/2)Γ(4)=12(3π/4)(π/2)3!=π32.\begin{aligned} \int_0^{\pi/2}\sin^4\theta\cos^2\theta\,d\theta &=\frac12\frac{\Gamma(5/2)\Gamma(3/2)}{\Gamma(4)}\\ &=\frac12\frac{(3\sqrt\pi/4)(\sqrt\pi/2)}{3!} =\frac\pi{32}. \end{aligned}

最後の計算には§E4.15 命題 4.1と§E4.15 命題 3.1を用いた。

4 演習

問題 4.1 (広義重積分の変数変換と切断). Beta–Gamma 関係式の証明について、次の問いに答えよ。

  1. KN=[1/N,N]2K_N=[1/N,N]^2がQ=(0,∞)2Q=(0,\infty)^2を取り尽くし、DN=[1/N,N]×[1/N,1−1/N]D_N=[1/N,N]\times[1/N,1-1/N]がU=(0,∞)×(0,1)U=(0,\infty)\times(0,1)を取り尽くすことを示せ。
  2. 式 (5) と式 (3)、式 (6) では、それぞれどの変数変換公式または累次積分定理を用いているかを区別せよ。
  3. この証明で、条件収束する符号付き広義重積分の積分順序を交換していない理由を説明せよ。
解答.
  1. C⊂QC\subset Qをコンパクトとする。座標関数x,yx,yはCC上で正の最小値と有限の最大値をもつため、十分大きい全てのNNについてC⊂KNC\subset K_Nである。C⊂UC\subset Uがコンパクトである場合には、ssは正の最小値と有限の最大値をもち、ttと1−t1-tは正の最小値をもつ。従って十分大きい全てのNNについてC⊂DNC\subset D_Nである。
  2. 式 (5) は開集合間の微分同相に対する非負広義重積分の変数変換公式§E4.14 系 4.1である。式 (3) と式 (6) は、それぞれ有限な閉長方形上の連続関数に対する累次積分定理§E4.12 定理 1である。非有界領域へ累次積分定理を直接適用してはいない。
  3. 全ての被積分関数は非負である。切断集合上では通常の Riemann 積分だけを用い、非有界領域への移行には非負広義重積分の上限による定義と取り尽くす列の定理を用いている。さらに式 (4) によって積分値が有限であり、∣G∣=G|G|=GなのでGGは絶対収束する。従って、条件収束する符号付き積分に固有の順序依存は生じない。

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問題 4.2 (三角積分の漸化式).r>−1r>-1に対して

Ir=∫0π/2sin⁡rθ dθI_r=\int_0^{\pi/2}\sin^r\theta\,d\theta

とおく。r>1r>1のとき

Ir=r−1rIr−2(10)I_r=\frac{r-1}{r}I_{r-2} \tag{10}

が成り立つことを Beta–Gamma 関係式と Gamma 関数の関数方程式から導き、I6I_6を求めよ。

解答.

命題 3.1でm=rm=r、n=0n=0とすると

Ir=Γ((r+1)/2)Γ(1/2)2Γ((r+2)/2).I_r=\frac{\Gamma((r+1)/2)\Gamma(1/2)}{2\Gamma((r+2)/2)}.

r>1r>1ならば§E4.15 命題 3.1により

Γ(r+12)=r−12Γ(r−12),Γ(r+22)=r2Γ(r2).\Gamma\left(\frac{r+1}{2}\right) =\frac{r-1}{2}\Gamma\left(\frac{r-1}{2}\right), \qquad \Gamma\left(\frac{r+2}{2}\right) =\frac r2\Gamma\left(\frac r2\right).

この二式を代入すると式 (10) を得る。I0=π/2I_0=\pi/2であるから

I6=56I4=5634I2=563412I0=5π32.I_6=\frac56I_4 =\frac56\frac34I_2 =\frac56\frac34\frac12I_0 =\frac{5\pi}{32}.

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参考文献

  1. Emil Artin, The Gamma Function, translated by Michael Butler, Dover Publications, 2015, originally published 1964.Beta 関数の収束と Beta–Gamma 関係式を参考にした。
  2. Tom M. Apostol, Mathematical Analysis, 2nd ed., Addison-Wesley, 1974.広義 Riemann 積分による関係式の導出を参考にした。

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