§E4.14変数変換と Jacobi 行列式

最終更新

円板上の積分を極座標へ移すと、面積要素には係数rrが現れる。この係数を用いれば、二変数の積分を半径と角度の積分へ変え、Gauss 積分の値を求めることができる。しかし、極座標写像は線形写像ではなく、原点では微分が退化し、角度の両端では同じ半直線を二重に表す。前の記事で証明した線形変換公式だけでは、係数rrと必要な切断を正当化することはできない。

一階連続微分可能な写像は、小さな立方体の上では微分という線形写像に近い。そこで各小立方体の体積倍率を Jacobi 行列式で近似し、誤差を分割全体で足すと、局所的な線形公式を非線形な変数変換公式へ運ぶことができる。この議論では、領域の境界や分割面の像が体積を持たないこと、および境界まで含むコンパクトな領域でも切断後の公式から極限を取ることが必要になる。

本記事では、局所的な Jacobi 行列式を大域的な積分公式へ結び付ける仕組みを明らかにし、極座標と広義重積分への応用を通して、変数変換が成立する範囲と限界を扱う。

1 Jordan 零集合と局所体積歪曲

補題 1.1.N⊂RnN\subset\mathbb R^nを有界な Jordan 零集合とし、T:N→RnT:N\to\mathbb R^nがあるL≥0L\geq0に対して

∥T(x)−T(y)∥≤L∥x−y∥(x,y∈N)(1)\lVert T(x)-T(y)\rVert\leq L\lVert x-y\rVert \qquad(x,y\in N) \tag{1}

を満たすとする。このときT(N)T(N)は Jordan 零集合である。

さらに、U,V⊂RnU,V\subset\mathbb R^nを開集合、T:U→VT:U\to Vを局所 Lipschitz 連続な同相写像とする。E⊂UE\subset Uが有界な Jordan 可測集合であり、E‾⊂U\overline E\subset Uならば、T(E)T(E)も有界な Jordan 可測集合であり、

∂(T(E))=T(∂E)(2)\partial(T(E))=T(\partial E) \tag{2}

が成り立つ。

証明.L=0L=0の場合、T(N)T(N)は高々一点からなるため Jordan 零集合である。以下ではL>0L>0とする。

NNを有限個の開直方体RjR_jで覆う。各RjR_jの辺の長さをℓj,1,…,ℓj,n\ell_{j,1},\ldots,\ell_{j,n}とし、δj=min⁡iℓj,i\delta_j=\min_i\ell_{j,i}とおく。各座標区間を長さδj\delta_j以下の半開区間へ分けると、RjR_jは高々

∏i=1n⌈ℓj,iδj⌉≤2n∣Rj∣δjn(3)\prod_{i=1}^n\left\lceil\frac{\ell_{j,i}}{\delta_j}\right\rceil \leq 2^n\frac{|R_j|}{\delta_j^n} \tag{3}

個の、直径がn δj\sqrt n\,\delta_j以下である互いに交わらない分割片に分かれる。分割片CCがNNと交わる場合にはxC∈C∩Nx_C\in C\cap Nを一つ取る。式 (1) により、T(C∩N)T(C\cap N)は中心T(xC)T(x_C)、一辺3Ln δj3L\sqrt n\,\delta_jの開立方体に含まれる。従って、T(N∩Rj)T(N\cap R_j)を覆う立方体の総体積は

2n(3Ln)n∣Rj∣2^n(3L\sqrt n)^n|R_j|

以下である。

Cn,L=2n(3Ln)nC_{n,L}=2^n(3L\sqrt n)^nとおく。NNの最初の被覆の総体積をε/Cn,L\varepsilon/C_{n,L}未満に取れば、T(N)T(N)を総体積がε\varepsilon未満である有限個の開立方体で覆うことができる。これにより最初の主張を得る。

後半を示す。∂E\partial Eはコンパクトであり、UUに含まれる。各点の近傍でTTは Lipschitz 連続であるから、有限個の近傍を選び、それぞれと∂E\partial Eの共通部分へ前半を適用する。各共通部分は∂E\partial Eの部分集合であるから Jordan 零集合であり、Jordan 零集合の有限和に関する閉性からT(∂E)T(\partial E)は Jordan 零集合である。同相写像は相対的な閉包と内部をそれぞれ閉包と内部へ写し、E‾⊂U\overline E\subset UとT(E‾)⊂VT(\overline E)\subset Vのコンパクト性により、ここで現れる相対閉包はRn\mathbb R^nにおける閉包と一致する。U,VU,Vは開集合であるから相対内部もRn\mathbb R^nにおける内部と一致する。従って式 (2) が成り立つ。T(E)T(E)はコンパクト集合T(E‾)T(\overline E)に含まれるので有界であり、境界が Jordan 零集合であるから Jordan 可測である。▨

補題 1.2.U⊂RnU\subset\mathbb R^nを開集合、Φ:U→Φ(U)\Phi:U\to\Phi(U)をC1C^1級微分同相とし、K⊂UK\subset Uをコンパクト集合とする。Q⊂KQ\subset Kを一辺δ\deltaの閉立方体とし、uQ∈Qu_Q\in Qとおく。J(u)=∣det⁡DΦ(u)∣J(u)=|\det D\Phi(u)|と書くと、

∣vol⁡(Φ(Q))−J(uQ)∣Q∣∣≤ρK(δ)∣Q∣(4)\left|\operatorname{vol}(\Phi(Q))-J(u_Q)|Q|\right| \leq \rho_K(\delta)|Q| \tag{4}

を満たす関数ρK\rho_Kを選ぶことができ、δ↓0\delta\downarrow0のときρK(δ)→0\rho_K(\delta)\to0である。この評価はQQとuQu_Qの選び方について一様である。

証明.K=∅K=\emptysetならば条件を満たす立方体QQは存在せず、主張は空虚に成り立つ。以下ではK≠∅K\ne\emptysetとする。

AQ=DΦ(uQ)A_Q=D\Phi(u_Q)、CQ=Q−uQC_Q=Q-u_Qとおき、CQC_Q上の写像

HQ(z)=AQ−1(Φ(uQ+z)−Φ(uQ))=z+eQ(z)(5)H_Q(z)=A_Q^{-1}\bigl(\Phi(u_Q+z)-\Phi(u_Q)\bigr) =z+e_Q(z) \tag{5}

を考える。DΦD\PhiはKK上で一様連続であり、u↦DΦ(u)−1u\mapsto D\Phi(u)^{-1}とu↦J(u)u\mapsto J(u)はKK上で連続である。従って

MK=max⁡u∈K∥DΦ(u)−1∥op<∞,JK=max⁡u∈KJ(u)<∞(6)M_K=\max_{u\in K}\lVert D\Phi(u)^{-1}\rVert_{\mathrm{op}}<\infty, \qquad J_K=\max_{u\in K}J(u)<\infty \tag{6}

である。DΦD\PhiのKK上の連続率をωK\omega_Kとし、

qK(δ)=MKωK(n δ)q_K(\delta)=M_K\omega_K(\sqrt n\,\delta)

とおく。

z,w∈CQz,w\in C_Qを結ぶ線分はCQC_Qに含まれる。平均値不等式§E4.3 定理 2.1をeQe_Qへ適用すると

∥eQ(z)−eQ(w)∥≤qK(δ)∥z−w∥(7)\lVert e_Q(z)-e_Q(w)\rVert \leq q_K(\delta)\lVert z-w\rVert \tag{7}

を得る。0∈CQ0\in C_QかつeQ(0)=0e_Q(0)=0であるから、

∥eQ(z)∥≤tδ,tδ=qK(δ)n δ(8)\lVert e_Q(z)\rVert\leq t_\delta, \qquad t_\delta=q_K(\delta)\sqrt n\,\delta \tag{8}

である。

qK(δ)n<1/4q_K(\delta)\sqrt n<1/4となるほどδ\deltaが小さい場合を考える。式 (8) からHQ(CQ)H_Q(C_Q)はCQC_Qの閉tδt_\delta近傍に含まれる。逆の包含を得るため、y∈CQy\in C_Qがdist⁡(y,∂CQ)>tδ\operatorname{dist}(y,\partial C_Q)>t_\deltaを満たすとする。写像

Sy(z)=y−eQ(z)S_y(z)=y-e_Q(z)

は式 (8) によりCQC_Qを自身へ写し、式 (7) により縮小率qK(δ)<1q_K(\delta)<1の縮小写像である。閉立方体CQC_Qは空でない完備距離空間であるから、Banach の不動点定理§E2.7 定理 2.2によりSyS_yは不動点z∈CQz\in C_Qをもつ。この不動点はHQ(z)=yH_Q(z)=yを満たす。従って

{y∈CQ:dist⁡(y,∂CQ)>tδ}⊂HQ(CQ)⊂{y:dist⁡(y,CQ)≤tδ}.(9)\{y\in C_Q:\operatorname{dist}(y,\partial C_Q)>t_\delta\} \subset H_Q(C_Q) \subset\{y:\operatorname{dist}(y,C_Q)\leq t_\delta\}. \tag{9}

HQH_QはCQC_Qの近傍で定義された微分同相の制限であるため、補題 1.1によりHQ(CQ)H_Q(C_Q)は Jordan 可測である。式 (9) の左端は一辺δ−2tδ\delta-2t_\deltaの開立方体であり、右端は一辺δ+2tδ\delta+2t_\deltaの閉立方体に含まれる。0≤tδ≤δ/40\leq t_\delta\leq\delta/4の範囲では、二項定理から次元だけに依存する定数CnC_nを用いて

∣vol⁡(HQ(CQ))−∣Q∣∣≤Cntδδn−1=Cnn qK(δ)∣Q∣(10)\left|\operatorname{vol}(H_Q(C_Q))-|Q|\right| \leq C_n t_\delta\delta^{n-1} =C_n\sqrt n\,q_K(\delta)|Q| \tag{10}

と評価することができる。

式 (5) から

Φ(Q)=Φ(uQ)+AQHQ(CQ)\Phi(Q)=\Phi(u_Q)+A_QH_Q(C_Q)

である。線形写像の体積公式§E4.13 定理 2.1と式 (10) により

∣vol⁡(Φ(Q))−J(uQ)∣Q∣∣≤Cnn JKqK(δ)∣Q∣\left|\operatorname{vol}(\Phi(Q))-J(u_Q)|Q|\right| \leq C_n\sqrt n\,J_Kq_K(\delta)|Q|

を得る。

最後に、LK=max⁡u∈K∥DΦ(u)∥opL_K=\max_{u\in K}\lVert D\Phi(u)\rVert_{\mathrm{op}}とおく。QQ上の平均値不等式によりΦ(Q)\Phi(Q)は一辺3LKn δ3L_K\sqrt n\,\deltaの開立方体に含まれるから、

vol⁡(Φ(Q))≤(3LKn)n∣Q∣\operatorname{vol}(\Phi(Q)) \leq (3L_K\sqrt n)^n|Q|

である。従って、上の小さいδ\deltaに対する値をCnn JKqK(δ)C_n\sqrt n\,J_Kq_K(\delta)とし、残りのδ\deltaに対する値を(3LKn)n+JK(3L_K\sqrt n)^n+J_Kとする関数ρK\rho_Kを選ぶことができる。qK(δ)→0q_K(\delta)\to0であるからρK(δ)→0\rho_K(\delta)\to0が成り立つ。▨

2 変数変換公式

定理 2.1 (変数変換公式).U,V⊂RnU,V\subset\mathbb R^nを開集合、Φ:U→V\Phi:U\to VをC1C^1級微分同相とする。E⊂UE\subset Uを有界な Jordan 可測集合とし、E‾⊂U\overline E\subset Uとする。ffをΦ(E‾)\Phi(\overline E)の開近傍上の連続な実数値関数とする。このときΦ(E)\Phi(E)は Jordan 可測であり、

∫Φ(E)f(x) dx=∫Ef(Φ(u)) ∣det⁡DΦ(u)∣ du(11)\int_{\Phi(E)}f(x)\,dx =\int_E f(\Phi(u))\,|\det D\Phi(u)|\,du \tag{11}

が成り立つ。

証明.E=∅E=\emptysetの場合には両辺が零である。以下ではE≠∅E\ne\emptysetとする。

J(u)=∣det⁡DΦ(u)∣J(u)=|\det D\Phi(u)|とおく。ffの定義域をWWとする。E‾\overline EはコンパクトでU∩Φ−1(W)U\cap\Phi^{-1}(W)に含まれるから、あるd>0d>0に対して

K={u∈Rn:dist⁡(u,E‾)≤d}⊂U∩Φ−1(W)(12)K=\{u\in\mathbb R^n:\operatorname{dist}(u,\overline E)\leq d\} \subset U\cap\Phi^{-1}(W) \tag{12}

となるように選ぶことができる。KKはコンパクトであり、Φ\PhiはKKの各点の近傍で Lipschitz 連続である。補題 1.1によりΦ(E)\Phi(E)は Jordan 可測である。関数ffとF=(f∘Φ)JF=(f\circ\Phi)Jは、それぞれΦ(E)‾=Φ(E‾)\overline{\Phi(E)}=\Phi(\overline E)とE‾\overline Eの開近傍上で連続である。従って§E4.11 系 3.5により両辺の積分は定義される。また、f∣Φ(K)f|_{\Phi(K)}とF∣KF|_Kは有界かつ一様連続である。

EEを含む閉直方体RRを固定する。§E4.11 補題 1.3により、幅δm↓0\delta_m\downarrow0の立方格子で、∂E\partial Eと交わる閉格子立方体の総体積bmb_mが零へ収束するものを選ぶことができる。n δm<d\sqrt n\,\delta_m<dとしてよい。Bm\mathcal B_mを∂E\partial Eと交わる格子立方体の族、Im\mathcal I_mをEEと交わるが∂E\partial Eとは交わらない格子立方体の族とする。格子立方体どうしは境界上で重なるが、その重なりは Jordan 零集合である。Q∈ImQ\in\mathcal I_mはint⁡(E)\tpint{E}に含まれ、E‾\overline Eと交わる全ての格子立方体はKKに含まれる。

補題 1.2により、各QQから任意に選んだuQ∈Qu_Q\in Qについて

∣vol⁡(Φ(Q))−J(uQ)∣Q∣∣≤ρK(δm)∣Q∣,ρK(δm)⟶0(13)\left|\operatorname{vol}(\Phi(Q))-J(u_Q)|Q|\right| \leq\rho_K(\delta_m)|Q|, \qquad \rho_K(\delta_m)\longrightarrow0 \tag{13}

が一様に成り立つ。JJはKK上で有界であるから、式 (13) により、十分大きい全てのmmと対象となる全てのQQについて

vol⁡(Φ(Q))≤C∣Q∣(14)\operatorname{vol}(\Phi(Q))\leq C|Q| \tag{14}

となる定数CCが存在する。従って

∑Q∈Bmvol⁡(Φ(Q))≤Cbm⟶0.(15)\sum_{Q\in\mathcal B_m}\operatorname{vol}(\Phi(Q)) \leq Cb_m\longrightarrow0. \tag{15}

Em=⋃Q∈ImQE_m=\bigcup_{Q\in\mathcal I_m}Qとおく。異なる格子立方体の像の共通部分は、それらの境界の像に含まれる。格子立方体の境界とその像は Jordan 零集合であるから、有限加法性§E4.13 補題 1の仮定が{Φ(Q):Q∈Im}\{\Phi(Q):Q\in\mathcal I_m\}に対して成り立つ。M=sup⁡Φ(K)∣f∣M=\sup_{\Phi(K)}|f|とすると、Φ(E)∖Φ(Em)\Phi(E)\setminus\Phi(E_m)は境界立方体の像の和に含まれるため、式 (15)、有限加法性、および積分の絶対値評価から

∣∫Φ(E)f−∑Q∈Im∫Φ(Q)f∣≤MCbm⟶0.(16)\left| \int_{\Phi(E)}f- \sum_{Q\in\mathcal I_m}\int_{\Phi(Q)}f \right| \leq MCb_m\longrightarrow0. \tag{16}

L=max⁡u∈K∥DΦ(u)∥opL=\max_{u\in K}\lVert D\Phi(u)\rVert_{\mathrm{op}}とし、ffのΦ(K)\Phi(K)上の連続率をωf\omega_fとする。各Q∈ImQ\in\mathcal I_mに代表点uQ∈Qu_Q\in Qを取る。式 (13) と式 (14) により、

∣∫Φ(Q)f(x) dx−f(Φ(uQ))J(uQ)∣Q∣∣≤osc⁡(f;Φ(Q))vol⁡(Φ(Q))+MρK(δm)∣Q∣≤(Cωf(Ln δm)+MρK(δm))∣Q∣.(17)\begin{aligned} \left| \int_{\Phi(Q)}f(x)\,dx-f(\Phi(u_Q))J(u_Q)|Q| \right| &\leq \operatorname{osc}(f;\Phi(Q))\operatorname{vol}(\Phi(Q)) +M\rho_K(\delta_m)|Q|\\ &\leq\bigl(C\omega_f(L\sqrt n\,\delta_m)+M\rho_K(\delta_m)\bigr)|Q|. \end{aligned} \tag{17}

右辺の括弧内は零へ収束し、∑Q∈Im∣Q∣≤∣R∣\sum_{Q\in\mathcal I_m}|Q|\leq|R|である。従って

∑Q∈Im∫Φ(Q)f−∑Q∈ImF(uQ)∣Q∣⟶0.(18)\sum_{Q\in\mathcal I_m}\int_{\Phi(Q)}f -\sum_{Q\in\mathcal I_m}F(u_Q)|Q| \longrightarrow0. \tag{18}

最後に右辺の和をEE上の積分と比較する。FFのKK上の連続率をωF\omega_Fとすると、内部立方体では

∣∫QF−F(uQ)∣Q∣∣≤ωF(n δm)∣Q∣\left|\int_QF-F(u_Q)|Q|\right| \leq\omega_F(\sqrt n\,\delta_m)|Q|

である。E∖EmE\setminus E_mは境界立方体の和に含まれるため、その部分の積分の絶対値はsup⁡K∣F∣ bm\sup_K|F|\,b_m以下である。有限加法性を用いて加えると

∑Q∈ImF(uQ)∣Q∣⟶∫EF.(19)\sum_{Q\in\mathcal I_m}F(u_Q)|Q|\longrightarrow\int_EF. \tag{19}

式 (16)、式 (18)、式 (19) から式 (11) を得る。▨

系 2.2.U,V⊂RnU,V\subset\mathbb R^nを開集合、Φ:U→V\Phi:U\to VをC1C^1級微分同相とする。E⊂UE\subset Uをコンパクトな Jordan 可測集合とし、g:Φ(E)→Rg:\Phi(E)\to\mathbb Rを連続関数とする。このときΦ(E)\Phi(E)はコンパクトな Jordan 可測集合であり、

∫Φ(E)g(x) dx=∫Eg(Φ(u))∣det⁡DΦ(u)∣ du(20)\int_{\Phi(E)}g(x)\,dx =\int_Eg(\Phi(u))|\det D\Phi(u)|\,du \tag{20}

が成り立つ。

証明.E=∅E=\emptysetの場合には両辺が零である。以下ではE≠∅E\ne\emptysetとする。

補題 1.1により、Φ(E)\Phi(E)はコンパクトな Jordan 可測集合である。関数g∘Φ ∣det⁡DΦ∣g\circ\Phi\,|\det D\Phi|はEE上で連続であるから、§E4.11 補題 3.4により式 (20) の両辺は定義される。

EEのコンパクト近傍K0⊂UK_0\subset Uを一つ固定する。ε>0\varepsilon>0とする。∂E\partial Eを有限個の開立方体Q1,…,QsQ_1,\ldots,Q_sで覆い、各Qj‾\overline{Q_j}がK0K_0に含まれ、

∑j=1s∣Qj∣<ε(21)\sum_{j=1}^s|Q_j|<\varepsilon \tag{21}

となるように選ぶ。Q=⋃jQjQ=\bigcup_jQ_j、E0=E∖QE_0=E\setminus Q、E1=E∩Q‾E_1=E\cap\overline Qとおく。∂E0\partial E_0と∂E1\partial E_1は∂E∪⋃j∂Qj\partial E\cup\bigcup_j\partial Q_jに含まれるため、E0,E1E_0,E_1はコンパクトな Jordan 可測集合である。また、E0⊂int⁡(E)E_0\subset\tpint{E}である。

ggのΦ(E)\Phi(E)上の絶対値、g∘Φ ∣det⁡DΦ∣g\circ\Phi\,|\det D\Phi|のEE上の絶対値、およびmax⁡u∈K0∥DΦ(u)∥op\max_{u\in K_0}\lVert D\Phi(u)\rVert_{\mathrm{op}}を一つの定数M≥1M\geq1で抑える。補題 1.1の証明における被覆評価から、次元とMMだけに依存する定数CCを用いて

vol⁡(Φ(E1))≤Cε(22)\operatorname{vol}(\Phi(E_1))\leq C\varepsilon \tag{22}

と評価することができる。従って

∣∫E1g(Φ)∣det⁡DΦ∣∣≤Mε,∣∫Φ(E1)g∣≤MCε.(23)\left|\int_{E_1}g(\Phi)|\det D\Phi|\right|\leq M\varepsilon, \qquad \left|\int_{\Phi(E_1)}g\right|\leq MC\varepsilon. \tag{23}

W=Φ(int⁡(E))W=\Phi(\tpint{E})とおく。WWは開集合であり、g∣Wg|_Wは連続である。E0E_0はint⁡(E)\tpint{E}に含まれるコンパクト集合であるから、その閉包はint⁡(E)\tpint{E}に含まれる。定理 2.1をΦ∣int⁡(E):int⁡(E)→W\Phi|_{\tpint{E}}:\tpint{E}\to W、E0E_0、g∣Wg|_Wへ適用して

∫Φ(E0)g=∫E0g(Φ)∣det⁡DΦ∣(24)\int_{\Phi(E_0)}g =\int_{E_0}g(\Phi)|\det D\Phi| \tag{24}

を得る。E∖E0⊂E1E\setminus E_0\subset E_1およびΦ(E)∖Φ(E0)⊂Φ(E1)\Phi(E)\setminus\Phi(E_0)\subset\Phi(E_1)である。式 (23) によって式 (20) の両辺と式 (24) の対応する辺との差を評価し、ε↓0\varepsilon\downarrow0とすれば式 (20) が従う。▨

注意 2.3 (Jacobi 行列式の絶対値).C1C^1級微分同相Φ\Phiではdet⁡DΦ\det D\Phiは零にならないが、向きを反転する連結成分では負になる。体積は向きを持たないため、式 (11) にはdet⁡DΦ\det D\Phiではなく∣det⁡DΦ∣|\det D\Phi|が現れる。

3 極座標と Gaussian 積分

命題 3.1 (円板上の極座標公式).R>0R>0とし、ffを閉円板B‾R(0)\overline B_R(0)の開近傍上の連続な実数値関数とする。このとき

∫BR(0)f(x,y) d(x,y)=∫02π∫0Rf(rcos⁡θ,rsin⁡θ)r dr dθ(25)\int_{B_R(0)}f(x,y)\,d(x,y) =\int_0^{2\pi}\int_0^R f(r\cos\theta,r\sin\theta)r\,dr\,d\theta \tag{25}

が成り立つ。

証明. 極座標写像

Ψ(r,θ)=(rcos⁡θ,rsin⁡θ)\Psi(r,\theta)=(r\cos\theta,r\sin\theta)

は(0,∞)×(0,2π)(0,\infty)\times(0,2\pi)から正のxx軸を除いた平面へのC1C^1級微分同相であり、∣det⁡DΨ(r,θ)∣=r|\det D\Psi(r,\theta)|=rである。

0<ε<R0<\varepsilon<R、0<η<π0<\eta<\piとし、

Eε,η=[ε,R]×[η,2π−η]E_{\varepsilon,\eta}=[\varepsilon,R]\times[\eta,2\pi-\eta]

とおく。Eε,ηE_{\varepsilon,\eta}は(0,∞)×(0,2π)(0,\infty)\times(0,2\pi)に含まれるコンパクトな Jordan 可測集合である。系 2.2と閉直方体上の累次積分§E4.12 定理 1により、式 (25) はEε,ηE_{\varepsilon,\eta}とその像について成り立つ。

ε↓0\varepsilon\downarrow0、η↓0\eta\downarrow0とする。円板側で欠ける集合は、半径ε\varepsilonの円板と中心角2η2\etaの扇形の和に含まれ、その面積はπε2+ηR2\pi\varepsilon^2+\eta R^2以下である。パラメータ側で欠ける部分におけるrrの積分も同じ値で評価される。ffは閉円板上で有界であるため、両側の欠けた部分の積分は零へ収束する。従って式 (25) を得る。▨

例 3.2 (Gaussian 積分).R>0R>0に対して

IR=∫−RRe−x2 dxI_R=\int_{-R}^Re^{-x^2}\,dx

とおく。閉直方体上の累次積分により

IR2=∫[−R,R]2e−(x2+y2) d(x,y)I_R^2=\int_{[-R,R]^2}e^{-(x^2+y^2)}\,d(x,y)

である。円板の包含

BR(0)⊂[−R,R]2⊂B2R(0)B_R(0)\subset[-R,R]^2\subset B_{\sqrt2R}(0)

と非負性、および命題 3.1により

π(1−e−R2)≤IR2≤π(1−e−2R2)\pi(1-e^{-R^2}) \leq I_R^2 \leq\pi(1-e^{-2R^2})

を得る。両端はR→∞R\to\inftyでπ\piへ収束するため、IR2→πI_R^2\to\piである。IR>0I_R>0であるからIR→πI_R\to\sqrt\piとなる。被積分関数の偶性により正と負の半直線上の広義積分も収束し、

∫−∞∞e−x2 dx=π\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx=\sqrt\pi

を得る。ここで左辺は対称区間の極限だけで定めたのではない。非負性から∫0Re−x2 dx=IR/2\int_0^Re^{-x^2}\,dx=I_R/2が有限極限π/2\sqrt\pi/2をもち、偶性によって負の半直線上の広義積分も同じ値をもつため、両者の和として全実数上の広義積分が収束する。この計算では、非有界な平面へ式 (11) を直接適用せず、有界な正方形と円板を増大させた。

4 広義重積分

系 4.1.U,V⊂RnU,V\subset\mathbb R^nを開集合、Φ:U→V\Phi:U\to VをC1C^1級微分同相、f:V→[0,∞)f:V\to[0,\infty)を連続関数とする。このとき

∫Vf=∫U(f∘Φ)∣det⁡DΦ∣(26)\int_Vf =\int_U(f\circ\Phi)|\det D\Phi| \tag{26}

が[0,∞][0,\infty]で成り立つ。

証明.K⊂UK\subset Uをコンパクトな Jordan 可測集合とする。系 2.2により

∫Φ(K)f=∫K(f∘Φ)∣det⁡DΦ∣(27)\int_{\Phi(K)}f =\int_K(f\circ\Phi)|\det D\Phi| \tag{27}

である。K↦Φ(K)K\mapsto\Phi(K)は、UUに含まれるコンパクトな Jordan 可測集合の族から、VVに含まれる同じ型の集合の族への全単射である。実際、像の性質は補題 1.1から従う。逆に、L⊂VL\subset Vがコンパクトな Jordan 可測集合ならば、Φ−1(L)\Phi^{-1}(L)はUUに含まれるコンパクトな Jordan 可測集合であり、Φ(Φ−1(L))=L\Phi(\Phi^{-1}(L))=Lである。従って式 (27) の左辺と右辺は同じ添字族をそれぞれΦ\PhiとΦ−1\Phi^{-1}で書いたものである。全てのKKについて上限を取れば、非負広義重積分の定義§E4.11 定義 4.1により式 (26) を得る。▨

系 4.2.系 4.1と同じU,V,ΦU,V,\Phiを取り、f:V→Rf:V\to\mathbb Rを連続関数とする。∣f∣|f|のVV上の広義重積分が有限ならば、(∣f∣∘Φ)∣det⁡DΦ∣(|f|\circ\Phi)|\det D\Phi|のUU上の広義重積分も有限であり、

∫Vf=∫U(f∘Φ)∣det⁡DΦ∣(28)\int_Vf =\int_U(f\circ\Phi)|\det D\Phi| \tag{28}

が成り立つ。

証明.系 4.1をf+f^+とf−f^-へ適用する。絶対収束の仮定により二つの非負広義重積分は有限である。§E4.11 定義 4.6の定義に従って二つの等式の差を取ると式 (28) を得る。同じ公式を∣f∣|f|へ適用すると、右辺の絶対値の広義重積分も有限である。▨

例 4.3 (取り尽くし方によって値が変わる例).f(x,y)=sin⁡(x2+y2)f(x,y)=\sin(x^2+y^2)とする。各R>0R>0について命題 3.1を適用すると

∫BR(0)f(x,y) dx dy=2π∫0Rsin⁡(r2)r dr=π(1−cos⁡(R2))(29)\int_{B_R(0)}f(x,y)\,dx\,dy =2\pi\int_0^R\sin(r^2)r\,dr =\pi(1-\cos(R^2)) \tag{29}

である。Rk=2kπR_k=\sqrt{2k\pi}とする円板の増大列では式 (29) は常に00であり、Sk=(2k+1)πS_k=\sqrt{(2k+1)\pi}とする円板の増大列では常に2π2\piである。どちらの列も全てのコンパクト部分集合を最終的に含むが、積分値の極限は一致しない。

また、∣f∣|f|の広義重積分は無限大である。非負整数kkに対して

Ak={(x,y):kπ+π6≤x2+y2≤kπ+5π6}A_k=\left\{(x,y):k\pi+\frac\pi6\leq x^2+y^2\leq k\pi+\frac{5\pi}6\right\}

とおく。AkA_k上で∣f∣≥1/2|f|\geq1/2であり、AkA_kの面積は2π2/32\pi^2/3であるから

∫Ak∣f∣≥π23.\int_{A_k}|f|\geq\frac{\pi^2}{3}.

輪帯AkA_kは、半径の二乗に関する区間の間に幅π/3\pi/3の隙間があるため互いに交わらず、その有限和はコンパクトな Jordan 可測集合である。従って有限和上の∣f∣|f|の積分は輪帯の個数とともに無限大へ発散する。

式 (29) は、絶対収束しない符号付き関数に対して、内側から領域を取り尽くすという条件だけでは積分値が定まらないことを示す。

5 演習

問題 5.1 (交差項をもつ異方的 Gaussian 積分).α,β>0\alpha,\beta>0、γ∈R\gamma\in\mathbb Rがαβ−γ2>0\alpha\beta-\gamma^2>0を満たすとする。線形変換と極座標を用いて

∫R2e−(αx2+2γxy+βy2) d(x,y)=παβ−γ2\int_{\mathbb R^2} e^{-(\alpha x^2+2\gamma xy+\beta y^2)}\,d(x,y) =\frac{\pi}{\sqrt{\alpha\beta-\gamma^2}}

を示せ。積分は非負広義重積分として解釈する。

解答.

線形変換T ⁣:R2→R2T\colon\mathbb R^2\to\mathbb R^2を

T(x,y)=(α x+γαy,β−γ2α y)T(x,y) =\left(\sqrt\alpha\,x+\frac{\gamma}{\sqrt\alpha}y, \sqrt{\beta-\frac{\gamma^2}{\alpha}}\,y\right)

によって定める。仮定から第二成分の係数は正であり、TTは可逆である。T(x,y)=(u,v)T(x,y)=(u,v)と書くと

u2+v2=αx2+2γxy+βy2u^2+v^2 =\alpha x^2+2\gamma xy+\beta y^2

であり、

det⁡T=αβ−γ2α=αβ−γ2\det T =\sqrt\alpha\sqrt{\beta-\frac{\gamma^2}{\alpha}} =\sqrt{\alpha\beta-\gamma^2}

となる。非負広義重積分の変数変換公式系 4.1をTTへ適用すると

∫R2e−(αx2+2γxy+βy2) d(x,y)=1αβ−γ2∫R2e−(u2+v2) d(u,v)\int_{\mathbb R^2}e^{-(\alpha x^2+2\gamma xy+\beta y^2)}\,d(x,y) =\frac{1}{\sqrt{\alpha\beta-\gamma^2}} \int_{\mathbb R^2}e^{-(u^2+v^2)}\,d(u,v)

を得る。

最後の積分を半径RRの円板上で極座標により計算すると

∫BR(0)e−(u2+v2) d(u,v)=2π∫0Re−r2r dr=π(1−e−R2)\int_{B_R(0)}e^{-(u^2+v^2)}\,d(u,v) =2\pi\int_0^Re^{-r^2}r\,dr =\pi(1-e^{-R^2})

である。R→∞R\to\inftyとすれば非負広義重積分の定義から値はπ\piとなる。従って求める積分は

παβ−γ2\frac{\pi}{\sqrt{\alpha\beta-\gamma^2}}

である。▨

参考文献

  1. Tom M. Apostol, Mathematical Analysis, 2nd ed., Addison-Wesley, 1974.Riemann 重積分に対する多変数変数変換公式を参考にした。
  2. Michael Spivak, Calculus on Manifolds: A Modern Approach to Classical Theorems of Advanced Calculus, CRC Press, 2018, originally published 1965.局所線形近似と Jacobi 行列式による体積歪曲の証明を参考にした。

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