§E4.22Green の定理

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一変数の微積分学の基本定理は、区間の内部での微分の積分を端点での値の差へ変換する。平面では、Green の定理が領域内部の偏導関数と正の向きをもつ境界上の線積分を結ぶ。

本記事では、有限個の穴と角点を許す正則領域について Green の定理を証明し、保存場の判定、面積公式、および二次元の発散定理を導く。

1 正則領域と境界の向き

定義 1.1.§E4.18 定義 1.1の意味で区分的に一階連続微分可能な曲線γ:[a,b]→R2\gamma:[a,b]\to\mathbb{R}^2が次の条件を満たすとき、γ\gammaを区分的に一階連続微分可能な正則単純閉曲線 (piecewiseC1C^1regular simple closed curve) という。

  1. γ(a)=γ(b)\gamma(a)=\gamma(b)であり、γ∣[a,b)\gamma|_{[a,b)}は単射である。
  2. ある分割a=t0<t1<⋯<tN=ba=t_0<t_1<\cdots<t_N=bが存在し、各開区間(tj−1,tj)(t_{j-1},t_j)でγ\gammaは一階連続微分可能かつγ′(t)≠0\gamma'(t)\neq 0である。
  3. 各分点では片側微分が存在し、その片側微分は零ベクトルではない。

選んだ分割に現れる有限個の点γ(tj)\gamma(t_j)を角点 (corner point) と呼ぶ。不要な分点を加えても以下の議論は変わらない。

定義 1.2. 有界連結開集合Ω⊂R2\Omega\subset\mathbb{R}^2の閉包をD=Ω‾D=\overline\Omegaとする。次の条件を満たすとき、DDを区分的に一階連続微分可能な正則領域 (piecewiseC1C^1regular domain) という。

  1. 境界∂D\partial Dは、有限個の互いに交わらない区分的に一階連続微分可能な正則単純閉曲線Γ0,Γ1,…,Γm\Gamma_0,\Gamma_1,\ldots,\Gamma_mの和である。
  2. Γ0\Gamma_0はR2∖D\mathbb{R}^2\setminus Dの非有界成分に接し、各Γj (j≥1)\Gamma_j\ (j\geq 1)は有界成分に接する。有界成分をDDの穴 (hole) と呼ぶ。
  3. 各p∈∂Dp\in\partial Dに対し、ある開球B(p,r)B(p,r)が存在し、B(p,r)∖∂DB(p,r)\setminus\partial Dはちょうど二つの連結成分をもち、一方はΩ\Omegaに含まれ、他方はR2∖D\mathbb{R}^2\setminus Dに含まれる。
  4. 各境界成分は、正則な弧に沿って進むときΩ\Omegaが左側にある向きをもつ。

条件 (d)の向きを∂D\partial Dの正の向き (positive orientation) と呼ぶ。したがって、外周Γ0\Gamma_0は反時計回りであり、穴を囲む内周Γj\Gamma_jは時計回りである。

注意 1.3 (Jordan 曲線定理との関係). 単純閉曲線が平面を内側と外側に分けるという Jordan 曲線定理は、境界成分の幾何を理解する背景になる。しかし、局所的な片側性は Jordan 曲線定理だけからは得られない。本記事では片側性を正則領域の定義に含め、Green の定理の証明で Jordan 曲線定理を未証明の補題として用いない。

命題 1.4. 区分的に一階連続微分可能な正則領域DDは Jordan 可測である。

証明. 境界∂D\partial Dは有限個の区分的に一階連続微分可能な曲線像の和である。§E4.11 補題 1.4により各曲線像は Jordan 零集合であるから、有限和∂D\partial Dも Jordan 零集合である。DDは有界閉集合なので、Jordan 可測性の境界判定から主張を得る。▨

2 座標方向に単純な領域

定義 2.1. 閉領域D⊂R2D\subset\mathbb{R}^2が

D={(x,y):a≤x≤b, α(x)≤y≤β(x)}D=\{(x,y):a\leq x\leq b,\ \alpha(x)\leq y\leq\beta(x)\}

と表され、α,β\alpha,\betaが区分的に一階連続微分可能であるとき、DDを xx方向に単純 (simple in the x-direction) という。同様に、

D={(x,y):c≤y≤d, γ(y)≤x≤δ(y)}D=\{(x,y):c\leq y\leq d,\ \gamma(y)\leq x\leq\delta(y)\}

と表されるとき、DDを yy方向に単純 (simple in the y-direction) という。境界には常に領域を左側に見る向きを入れる。この向きでは、xx方向に単純な表示の下側グラフは左から右へ、上側グラフは右から左へ進む。yy方向に単純な表示の右側グラフは下から上へ、左側グラフは上から下へ進む。

定理 2.2.DDがxx方向にもyy方向にも単純な正則領域であり、P,QP,QがDDを含む開集合上で一階連続微分可能であるとする。このとき

∫∂DP dx+Q dy=∬D(∂Q∂x−∂P∂y)dx dy\int_{\partial D}P\,dx+Q\,dy =\iint_D\left(\frac{\partial Q}{\partial x}-\frac{\partial P}{\partial y}\right)dx\,dy

が成り立つ。

証明.xx方向に単純な表示を用いる。正の向きに注意すると、垂直な境界部分ではdx=0dx=0であり、

∫∂DP dx=∫abP(x,α(x)) dx−∫abP(x,β(x)) dx.\int_{\partial D}P\,dx =\int_a^bP(x,\alpha(x))\,dx-\int_a^bP(x,\beta(x))\,dx.

一変数の微積分学の基本定理と累次積分の公式から

∫∂DP dx=−∫ab∫α(x)β(x)Py(x,y) dy dx=−∬DPy dx dy\int_{\partial D}P\,dx =-\int_a^b\int_{\alpha(x)}^{\beta(x)}P_y(x,y)\,dy\,dx =-\iint_D P_y\,dx\,dy

を得る。同様に、yy方向に単純な表示を用いると

∫∂DQ dy=∫cd∫γ(y)δ(y)Qx(x,y) dx dy=∬DQx dx dy\int_{\partial D}Q\,dy =\int_c^d\int_{\gamma(y)}^{\delta(y)}Q_x(x,y)\,dx\,dy =\iint_D Q_x\,dx\,dy

となる。二式を加えれば主張を得る。▨

命題 2.3. Green の公式は、平行移動と行列式が11である直交変換による座標変更に対して不変である。

証明. 座標変更をz=Rξ+az=R\xi+aとし、det⁡R=1\det R=1とする。一形式P dx+Q dyP\,dx+Q\,dyを新座標でP~ dξ1+Q~ dξ2\widetilde P\,d\xi_1+\widetilde Q\,d\xi_2と書けば、線積分の置換公式により境界積分は一致する。さらに連鎖律から

Q~ξ1−P~ξ2=Qx−Py\widetilde Q_{\xi_1}-\widetilde P_{\xi_2}=Q_x-P_y

であり、面積要素もdξ1dξ2=dxdyd\xi_1d\xi_2=dxdyである。したがって公式の両辺は同時に保たれる。▨

3 角点を除く局所化

補題 3.1.p∈∂Dp\in\partial Dが角点でないとする。このとき、ppの近傍で向きを保つ直交座標を選び、境界を

t=f(s)t=f(s)

と表すことができる。座標軸は、近傍をさらに小さくすればf′≠0f'\neq0となるように選ぶことができ、この近傍とDDとの交わりは両座標方向に単純である。

証明. 境界の正則な局所パラメータ表示をγ\gammaとする。γ′(p)≠0\gamma'(p)\neq0なので、ss軸を接線と平行にも垂直にもならない向きに選べる。このときss成分とtt成分の微分はいずれも零ではない。逆関数定理によりssを局所パラメータとして境界をt=f(s)t=f(s)と表せ、f′≠0f'\neq0である。正則領域の局所的な片側性により、領域はこのグラフの一方の側にある。ffの単調性を用いて近傍を長方形に縮めれば、交わりは両座標方向に単純となる。▨

命題 3.2.DDを区分的に一階連続微分可能な正則領域とし、A⊂∂DA\subset\partial Dを一つの区分表示から得る有限角点集合とする。P,QP,QがDDの近傍で一階連続微分可能であり、AAのある近傍でともに零であるならば、Green の公式が成り立つ。

証明. まず、DDの近傍で11となる一つの切断関数を掛け、P,QP,Qを平面全体の一階連続微分可能なコンパクト支持関数へ延長する。K=D∩(supp⁡P∪supp⁡Q)K=D\cap(\operatorname{supp}P\cup\operatorname{supp}Q)と置く。K=∅K=\varnothingならばDDの近傍でP=Q=0P=Q=0であり、公式の両辺は零である。

以下、K≠∅K\neq\varnothingとする。内部点には小長方形を取り、境界点には補題 3.1の二方向に単純な近傍を取る。P,QP,Qは角点の近傍で零なので、この操作でKKの有限開被覆を得る。§E4.19 定義 1.2をKKとこの被覆に適用し、被覆要素に従属する有限個の一階連続微分可能な関数θ1,…,θN\theta_1,\ldots,\theta_Nで、KKの近傍において∑νθν=1\sum_\nu\theta_\nu=1となるものを取る。

Pν=θνPP_\nu=\theta_\nu P、Qν=θνQQ_\nu=\theta_\nu Qと置く。内部の長方形に支持される項には座標単純版を適用し、境界近傍の項には命題 2.3で座標を変えた後に定理 2.2を適用する。各項について

∫∂DPν dx+Qν dy=∬D((Qν)x−(Pν)y) dx dy\int_{\partial D}P_\nu\,dx+Q_\nu\,dy =\iint_D\bigl((Q_\nu)_x-(P_\nu)_y\bigr)\,dx\,dy

を得る。KKの外ではP,QP,Qが近傍ごと零であるから、有限和を取ると左辺はP,QP,Qの境界積分に、右辺はQx−PyQ_x-P_yの面積積分になる。▨

補題 3.3. 各角点aaに対し、ある定数Ca>0C_a>0とra>0r_a>0が存在し、0<r<ra0<r<r_aならば

length⁡(∂D∩B(a,r))≤Car\operatorname{length}(\partial D\cap B(a,r))\leq C_a r

が成り立つ。

証明. 角点の両側の境界弧は片側微分が零でない一階連続微分可能な正則弧である。各弧を接線方向へ射影すると、逆関数定理により角点の近傍で一階連続微分可能なグラフになる。その導関数は有界であり、球B(a,r)B(a,r)に入る射影区間の長さは2r2r以下である。グラフの長さの評価を両側の有限個の弧について加えれば主張を得る。▨

4 Green の定理

定理 4.1 (Green の定理).DDを区分的に一階連続微分可能な正則領域とし、∂D\partial Dに正の向きを入れる。P,QP,QがDDを含む開集合上で一階連続微分可能であるならば、

∫∂DP dx+Q dy=∬D(∂Q∂x−∂P∂y)dx dy\boxed{\int_{\partial D}P\,dx+Q\,dy =\iint_D\left(\frac{\partial Q}{\partial x}-\frac{\partial P}{\partial y}\right)dx\,dy}

が成り立つ。穴がある場合、外周は反時計回り、各内周は時計回りに積分する。

証明. 一つの区分表示から得る角点集合をA={a1,…,aL}A=\{a_1,\ldots,a_L\}とする。A=∅A=\varnothingならば命題 3.2を直接適用できる。以下、L≥1L\geq1とする。

滑らかな関数ρ:[0,∞)→[0,1]\rho:[0,\infty)\to[0,1]で、0≤t≤10\leq t\leq1では00、t≥2t\geq2では11となるものを取る。十分小さいr>0r>0に対し

χr(z)=∏j=1Lρ ⁣(∣z−aj∣r),Pr=χrP,Qr=χrQ\chi_r(z)=\prod_{j=1}^{L}\rho\!\left(\frac{|z-a_j|}{r}\right), \qquad P_r=\chi_rP,\qquad Q_r=\chi_rQ

と置く。Pr,QrP_r,Q_rは角点の近傍で零なので、命題 3.2から

∫∂DPr dx+Qr dy=∬D((Qr)x−(Pr)y) dx dy.(1)\int_{\partial D}P_r\,dx+Q_r\,dy =\iint_D\bigl((Q_r)_x-(P_r)_y\bigr)\,dx\,dy. \tag{1}

P,Q,Py,QxP,Q,P_y,Q_xはDDの近傍で有界である。また、あるC>0C>0に対して∣∇χr∣≤C/r|\nabla\chi_r|\leq C/rであり、1−χr1-\chi_rと∇χr\nabla\chi_rの支持は⋃jB(aj,2r)\bigcup_jB(a_j,2r)に含まれる。この和集合の面積はO(r2)O(r^2)である。したがって

∬D(1−χr)(Qx−Py) dx dy=O(r2)\iint_D(1-\chi_r)(Q_x-P_y)\,dx\,dy=O(r^2)

であり、積の微分で生じる項についても

∬D(P(χr)y−Q(χr)x) dx dy=O(r)\iint_D\bigl(P(\chi_r)_y-Q(\chi_r)_x\bigr)\,dx\,dy=O(r)

である。ゆえに (1) の右辺はr↓0r\downarrow0で∬D(Qx−Py)\iint_D(Q_x-P_y)に収束する。

一方、補題 3.3により∂D∩⋃jB(aj,2r)\partial D\cap\bigcup_jB(a_j,2r)の長さはO(r)O(r)である。P,QP,Qの有界性から

∣∫∂D(1−χr)(P dx+Q dy)∣=O(r).\left|\int_{\partial D}(1-\chi_r)(P\,dx+Q\,dy)\right|=O(r).

したがって (1) の左辺は∫∂DP dx+Q dy\int_{\partial D}P\,dx+Q\,dyに収束する。r↓0r\downarrow0として結論を得る。▨

命題 4.2. 正則領域DDが有限個の正則領域D1,…,DND_1,\ldots,D_Nに分割され、各DjD_jが両座標方向に単純であり、異なるDi,DjD_i,D_jの内部が交わらないとする。このとき、各DjD_jの座標単純版を加えることでもDD上の Green の公式を得る。

証明. 面積積分は有限加法性により各DjD_j上の積分の和になる。内部の共有境界は、一方の領域では一つの向き、他方では逆向きに現れるため、線積分の和で相殺する。残る境界は∂D\partial Dだけであり、その向きは正の向きと一致する。▨

注意 4.3 (二つの一般化経路の役割).命題 4.2は具体的な有限分割が既に与えられている場合に便利である。しかし、一般の正則領域が有限個の両方向に単純な領域へ分割できることは自明ではない。定理 4.1の証明は、その分割定理を仮定せず、非角点の有限局所化と角点切断によって貼り合わせを行う。

5 保存場・面積・発散への適用

系 5.1.U⊂R2U\subset\mathbb{R}^2を開かつ区分的に一階連続微分可能な弧状連結集合とし、F=(P,Q)∈C1(U;R2)F=(P,Q)\in C^1(U;\mathbb{R}^2)とする。UU内の任意の区分的に一階連続微分可能な正則単純閉曲線CCに対し、CCが囲む有界領域の閉包を、互いに内部が交わらない有限個の正則領域Dj⊂UD_j\subset Uの和として表せると仮定する。このとき、次の条件は同値である。

  1. FFは保存場である。
  2. UU内の任意の区分的に一階連続微分可能な閉曲線γ\gammaに対し∫γP dx+Q dy=0\int_\gamma P\,dx+Q\,dy=0である。
  3. Qx−Py=0Q_x-P_y=0がUU上で成り立つ。

証明.(1)⇔\Leftrightarrow(2)を示す。§E4.18 定理 5.3により両条件は同値である。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。(2)を仮定し、任意の点の周りに十分小さい長方形を取って Green の定理を適用すれば、連続関数Qx−PyQ_x-P_yの長方形上の積分は常に零である。したがって(3)が成り立つ。

(3)⇒\Rightarrow(2)を示す。(3)を仮定し、UU内の区分的に一階連続微分可能な閉曲線γ:[a,b]→U\gamma:[a,b]\to Uを取る。像がコンパクトであることとUUが開集合であることから、γ([a,b])\gamma([a,b])のある閉近傍はUUに含まれる。γ\gammaの一階連続微分可能な区分点をすべて含み、各区間の幅が零へ収束する分割を取り、分点におけるγ\gammaの値を線分で結ぶ閉多角形曲線をγk\gamma_kとする。十分大きいkkではγk\gamma_kの像はUUに含まれ、各滑らかな区分上の平均値表示とγ′\gamma'の一様連続性から

∥γk−γ∥∞⟶0,∫ab∣γk′(t)−γ′(t)∣ dt⟶0\|\gamma_k-\gamma\|_\infty\longrightarrow0, \qquad \int_a^b|\gamma_k'(t)-\gamma'(t)|\,dt\longrightarrow0

となる。FFは像の共通なコンパクト近傍で一様連続かつ有界なので、

∣∫γkF⋅dr−∫γF⋅dr∣≤∥F∘γk−F∘γ∥∞∫ab∣γk′∣ dt+∥F∘γ∥∞∫ab∣γk′−γ′∣ dt⟶0.(2)\left|\int_{\gamma_k}F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r- \int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r\right| \leq \|F\circ\gamma_k-F\circ\gamma\|_\infty \int_a^b|\gamma_k'|\,dt+\|F\circ\gamma\|_\infty \int_a^b|\gamma_k'-\gamma'|\,dt \longrightarrow0. \tag{2}

各γk\gamma_kの有限個の辺を、交点と重なる区間の端点ですべて分割する。この分割で得る有限平面グラフ上では、γk\gamma_kは向き付き閉歩道である。閉歩道を最初に再訪する頂点で順次切れば、有限個の単純閉歩道と、同じ辺を逆向きに進む往復に分解できる。往復の線積分は零であり、残る各単純閉歩道はUU内の正則単純閉多角形CνC_\nuである。仮定にある有限分割を各CνC_\nuに取り、各正則領域に Green の定理を適用して加えると、内部境界は逆向きに相殺するため、

∫CνP dx+Q dy=∑j∬Dν,j(Qx−Py) dx dy=0\int_{C_\nu}P\,dx+Q\,dy =\sum_j\iint_{D_{\nu,j}}(Q_x-P_y)\,dx\,dy=0

となる。従って∫γkF⋅dr=0\int_{\gamma_k}F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r=0であり、(2) の極限から∫γF⋅dr=0\int_\gamma F\mathbin{\cdot}d\boldsymbol r=0を得る。ゆえに(2)が成り立つ。▨

注意 5.2 (穴がある領域での注意). 仮定した有限正則充填可能性は、閉曲線の内側全体がUUに収まることを保証する。穴のある開集合ではQx−Py=0Q_x-P_y=0だけから保存場であるとは限らない。典型例は§E4.18 例 6.4であり、穴を一周する線積分が障害を検出する。

例 5.3 (Green の定理による面積公式). 正則領域DDに対し、P=−y/2P=-y/2、Q=x/2Q=x/2と置くとQx−Py=1Q_x-P_y=1である。したがって

area⁡(D)=12∫∂D(x dy−y dx)\operatorname{area}(D) =\frac12\int_{\partial D}(x\,dy-y\,dx)

を得る。同様に(P,Q)=(−y,0)(P,Q)=(-y,0)または(0,x)(0,x)を用いれば

area⁡(D)=−∫∂Dy dx=∫∂Dx dy\operatorname{area}(D)=-\int_{\partial D}y\,dx =\int_{\partial D}x\,dy

となる。

例 5.4 (穴のある領域の面積).0<r<R0<r<Rとし、D={(x,y):r2≤x2+y2≤R2}D=\{(x,y):r^2\leq x^2+y^2\leq R^2\}とする。外周を反時計回り、内周を時計回りに取ると、例 5.3から

area⁡(D)=12∫∂D(x dy−y dx)=πR2−πr2.\operatorname{area}(D) =\frac12\int_{\partial D}(x\,dy-y\,dx) =\pi R^2-\pi r^2.

内周の時計回りの向きが、穴の面積を減じる符号を与える。

系 5.5.F=(F1,F2)∈C1(U;R2)F=(F_1,F_2)\in C^1(U;\mathbb{R}^2)とし、D⊂UD\subset Uを正則領域とする。nnを有限個の角点を除く∂D\partial Dの各正則弧上の外向き単位法線、dsdsを弧長要素とすると、

∫∂DF⋅n ds=∬Ddiv⁡F dx dy\int_{\partial D}F\cdot n\,ds =\iint_D\operatorname{div}F\,dx\,dy

が成り立つ。

証明. 各正則弧上で正の向きの単位接ベクトルをT=(dx/ds,dy/ds)T=(dx/ds,dy/ds)とすると、領域が左側にあるため外向き法線はn=(dy/ds,−dx/ds)n=(dy/ds,-dx/ds)である。したがって

F⋅n ds=F1 dy−F2 dx.F\cdot n\,ds=F_1\,dy-F_2\,dx.

Green の定理にP=−F2P=-F_2、Q=F1Q=F_1を代入すれば、右辺の被積分関数は(F1)x+(F2)y=div⁡F(F_1)_x+(F_2)_y=\operatorname{div}Fとなる。▨

問題 5.6 (角点切断における二つの誤差). Green の定理の証明で用いたχr\chi_rについて、P,QP,Qとその一階偏導関数がDD上で絶対値MM以下であり、∣∇χr∣≤C/r|\nabla\chi_r|\leq C/r、supp⁡(1−χr)⊂⋃j=1LB(aj,2r)\operatorname{supp}(1-\chi_r)\subset\bigcup_{j=1}^L B(a_j,2r)とする。面積積分で生じる切断誤差がO(r)O(r)、境界積分で生じる切断誤差がO(r)O(r)であることを示せ。

解答.

球の和の面積は高々4πLr24\pi Lr^2である。積の微分で生じる項の絶対値は高々2MC/r2MC/rなので、その面積積分は高々

2MCr 4πLr2=8πLMC r\frac{2MC}{r}\,4\pi Lr^2=8\pi LMC\,r

である。また、(1−χr)(Qx−Py)(1-\chi_r)(Q_x-P_y)の積分は高々8πLMr28\pi LMr^2である。したがって面積側の全誤差はO(r)O(r)である。

補題 3.3により、十分小さいrrに対して

length⁡ ⁣(∂D∩⋃j=1LB(aj,2r))≤2r∑j=1LCaj.\operatorname{length}\!\left(\partial D\cap\bigcup_{j=1}^LB(a_j,2r)\right) \leq 2r\sum_{j=1}^LC_{a_j}.

さらに∣P dx+Q dy∣≤2M ds|P\,dx+Q\,dy|\leq\sqrt2M\,dsなので、境界側の誤差は高々

22M(∑j=1LCaj)r2\sqrt2M\left(\sum_{j=1}^LC_{a_j}\right)r

であり、O(r)O(r)である。▨

参考文献

  1. Michael Spivak, Calculus on Manifolds: A Modern Approach to Classical Theorems of Advanced Calculus, CRC Press, 2018, originally published 1965.微分形式と境界積分の原型としての Green の定理を参考にした。
  2. James R. Munkres, Analysis on Manifolds, CRC Press, 2018, originally published 1991.平面領域の分割による Green の定理の古典的な証明を参考にした。

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