1 線分への制限
定理 1.1 (多変数 Taylor の定理).n∈N≥1、r∈N≥0とし、U⊂Rnを開集合、f:U→RをCr+1級関数とする。a∈Uとh∈Rnが
{a+th:0≤t≤1}⊂U(3)を満たすとき、
f(a+h)=j=0∑rj!1Djf(a)[h,…,h]+Rr(a,h),(4)ただし
Rr(a,h)=r!1∫01(1−t)rDr+1f(a+th)[h,…,h]dt(5)が成り立つ。j=0の項はD0f(a)=f(a)と読む。
証明. アフィン写像ℓ(t)=a+thと
I={t∈R:ℓ(t)∈U}を考える。Uは開集合でℓは連続であるからIは開集合であり、式 (3) により[0,1]⊂Iである。[0,1]は連結なので、Iの[0,1]を含む連結成分は[0,1]を含む開区間である。その区間上で
φ(t)=f(a+th)とおく。
1≤j≤r+1に対して
φ(j)(t)=Djf(a+th)[h,…,h](6)を示す。D0f=fとし、j=0の評価写像をR上の恒等写像とする。j≥1では、固定したhをj個のスロットへ代入する評価写像は、多重線形写像の作用素ノルム§E4.4 定義 1.2が与える評価から連続線形である。j=0ではφ=f∘ℓである。0≤j≤rとし、j階まで式 (6) が成り立つと仮定する。Djfの全微分可能性と高階全微分のスロット規約§E4.4 定義 1.4により、s→0のとき
sDjf(a+(t+s)h)[h,…,h]−Djf(a+th)[h,…,h]⟶Dj+1f(a+th)[h,…,h].従って式 (6) はj+1でも成り立つ。
補題 2をφへ適用し、式 (6) を代入すると式 (4) と式 (5) を得る。▨
系 1.2.n∈N≥1、r∈N≥0とし、U⊂Rnを開集合、f:U→RをCr+1級関数とする。a∈Uとh∈Rnが
{a+th:0≤t≤1}⊂Uを満たすとする。さらに、あるM≥0が存在して
∥Dr+1f(a+th)∥op≤M(0≤t≤1)を満たすならば、定理 1.1の積分剰余について
∣Rr(a,h)∣≤(r+1)!M∥h∥r+1(7)が成り立つ。
証明.§E4.4 定義 1.2の積評価を式 (5) へ適用すると
∣Rr(a,h)∣≤r!M∥h∥r+1∫01(1−t)rdt=(r+1)!M∥h∥r+1を得る。▨
2 Hessian による二次近似
系 2.1.n∈N≥1とし、U⊂Rnを開集合、f:U→RをC2級関数、a∈Uとする。このときh→0かつa+h∈Uのとき
f(a+h)=f(a)+⟨∇f(a),h⟩+21hTHf(a)h+o(∥h∥2)(8)が成り立つ。
証明.Uは開集合であるから、あるρ>0が存在してB(a,ρ)⊂Uとなる。∥h∥<ρならば、0≤t≤1に対してa+th∈B(a,ρ)である。定理 1.1をr=1として適用し、積分項からD2f(a)[h,h]を分離すると
f(a+h)=f(a)+Df(a)h+21D2f(a)[h,h]+∫01(1−t)(D2f(a+th)−D2f(a))[h,h]dt(9)を得る。最後の積分の絶対値は
210≤t≤1sup∥D2f(a+th)−D2f(a)∥op∥h∥2(10)以下である。D2fはaで連続であり、∥a+th−a∥≤∥h∥であるから、式 (10) の上限はh→0で零へ収束する。従って最後の積分はo(∥h∥2)である。
§E4.3 定理 3.2によりDf(a)h=⟨∇f(a),h⟩である。また、Hessian の定義§E4.4 定義 3.3によりD2f(a)[h,h]=hTHf(a)hである。これらを式 (9) へ代入すると式 (8) が従う。▨
例 2.2 (三次多項式の積分形剰余項).f(x,y)=x2yをa=(0,0)で二次まで展開する。f(a)=0、Df(a)=0、D2f(a)=0であるから、二次までの多項式部分は零である。h=(u,v)とすると
f(th)=t3u2v,D3f(th)[h,h,h]=dt3d3f(th)=6u2v.従って式 (5) のr=2における剰余項は
21∫01(1−t)26u2vdt=u2v=f(h)となる。三次多項式の三次項は積分剰余によって正確に回収される。
3 演習
問題 3.1 (線分の適合と二次近似). 開集合
U={(x,y)∈R2:x+y>−1}上の関数f(x,y)=log(1+x+y)を考える。h=(u,v)とs=u+vが∣s∣≤1/2を満たすとする。
- 原点とhを結ぶ線分がUに含まれることを示し、原点における二次 Taylor 多項式を求めよ。
- 積分形剰余項を用いて
f(h)−s+2s2≤38∣s∣3
を証明せよ。
解答.
0≤t≤1に対して1+t(u+v)=1+ts≥1−∣s∣≥1/2>0であるから、th∈Uである。∇f(0,0)=(1,1)であり、
Hf(0,0)=−(1111)である。従って二次 Taylor 多項式は
s−2s2である。
線分への制限をφ(t)=f(th)=log(1+ts)とすると
φ′′′(t)=(1+ts)32s3.∣s∣≤1/2から1+ts≥1/2であるため、∣φ′′′(t)∣≤16∣s∣3となる。式 (1) をr=2として適用すると
f(h)−s+2s2≤21∫01(1−t)216∣s∣3dt=38∣s∣3.▨