§E4.9Lagrange 未定乗数法

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曲線や曲面上で関数の最大値や最小値を調べるとき、許される移動は制約集合に沿う方向に限られる。たとえば、単位円x2+y2=1x^2+y^2=1上でx+yx+yが極値を取る点では、目的関数の勾配(1,1)(1,1)は円の接線に直交し、制約関数x2+y2x^2+y^2の勾配と平行になる。

一つの方程式が定める曲線や曲面なら、この関係を二つの勾配の平行性として表すことができる。しかし、複数の方程式をまとめた一般の制約写像では、比較すべき一つの制約勾配を選ぶことができない。許される方向を制約写像の微分の核として捉え、その全方向で目的関数の微分が消えることを表す必要がある。

Lagrange 未定乗数法は、この消滅条件を核の零化空間と乗数による線形結合へ翻訳する、制約付き極値の最も基本的な方法である。

本記事では、正則な等式制約のもとで局所極値が満たす条件と、その条件を適用するための基本的な見方を扱う。

1 正則制約と接空間

定義 1.1.n,k∈Z≥1n,k\in\mathbb Z_{\geq1}とし、U⊂RnU\subset\mathbb R^nを開集合、F ⁣:U→RkF\colon U\to\mathbb R^kをC1C^1級の写像、c∈Rkc\in\mathbb R^kとする。制約集合を

M={x∈U:F(x)=c}M=\{x\in U:F(x)=c\}

とおく。a∈Ma\in Mにおいて

DF(a) ⁣:Rn⟶RkDF(a)\colon\mathbb R^n\longrightarrow\mathbb R^k

が全射であるとき、aaを制約F(x)=cF(x)=cの正則点 (regular point) という。MMのすべての点が正則点であるとき、制約F(x)=cF(x)=cまたは制約集合MMは正則 (regular) であるという。

定義 1.2.M⊂RnM\subset\mathbb R^nとa∈Ma\in Mを取る。あるε>0\varepsilon>0とC1C^1級曲線

γ ⁣:(−ε,ε)⟶Rn\gamma\colon(-\varepsilon,\varepsilon)\longrightarrow\mathbb R^n

が存在して

γ((−ε,ε))⊆M,γ(0)=a,γ′(0)=v\gamma((-\varepsilon,\varepsilon))\subseteq M, \qquad \gamma(0)=a, \qquad \gamma'(0)=v

を満たすとき、v∈Rnv\in\mathbb R^nをMMのaaにおける接ベクトル (tangent vector) という。接ベクトル全体をTaMT_aMと書く。

命題 1.3.定義 1.1の記号を用い、a∈Ma\in Mが正則点であると仮定する。このとき

TaM=ker⁡DF(a)T_aM=\ker DF(a)

が成り立つ。特にTaMT_aMはRn\mathbb R^nのn−kn-k次元部分空間である。

証明.A=DF(a)∈L(Rn,Rk)A=DF(a)\in\mathcal L(\mathbb R^n,\mathbb R^k)とおく。最初にTaM⊆ker⁡AT_aM\subseteq\ker Aを示す。v∈TaMv\in T_aMを取り、定義 1.2を満たす曲線をγ\gammaとする。恒等式F∘γ=cF\circ\gamma=cと連鎖律§E4.3 定理 1.1により

0=(F∘γ)′(0)=DF(a)γ′(0)=Av0=(F\circ\gamma)'(0)=DF(a)\gamma'(0)=Av

である。したがってv∈ker⁡Av\in\ker Aである。

逆包含を示す。AAは全射であるから、次元定理§D3.11 定理 2.1により

dim⁡ker⁡A=n−k\dim\ker A=n-k

であり、特にk≤nk\leq nである。k=nk=nならばker⁡A={0}\ker A=\{0\}である。定数曲線γ(t)=a\gamma(t)=aは0∈TaM0\in T_aMを与えるので、この場合には逆包含が成り立つ。

以下ではk<nk<nとする。N=ker⁡AN=\ker Aとおき、NNの基底をRn\mathbb R^nの基底へ延長して得られる補空間をWWとする。このとき

Rn=N⊕W,dim⁡N=n−k,dim⁡W=k\mathbb R^n=N\oplus W, \qquad \dim N=n-k, \qquad \dim W=k

である。制限A∣W ⁣:W→RkA|_W\colon W\to\mathbb R^kは、核がW∩N={0}W\cap N=\{0\}であるため単射であり、同じkk次元の空間の間の線形写像であるため同型である。

線形同型

P ⁣:Rn−k⟶N,Q ⁣:Rk⟶WP\colon\mathbb R^{n-k}\longrightarrow N, \qquad Q\colon\mathbb R^k\longrightarrow W

を一つずつ取る。集合

V={(u,w)∈Rn−k×Rk:a+Pu+Qw∈U}V=\{(u,w)\in\mathbb R^{n-k}\times\mathbb R^k:a+Pu+Qw\in U\}

は(0,0)(0,0)を含む開集合である。H ⁣:V→RkH\colon V\to\mathbb R^kを

H(u,w)=F(a+Pu+Qw)−cH(u,w)=F(a+Pu+Qw)-c

によって定める。HHはC1C^1級であり、H(0,0)=0H(0,0)=0である。また

DwH(0,0)=A∘Q ⁣:Rk⟶RkD_wH(0,0)=A\circ Q\colon\mathbb R^k\longrightarrow\mathbb R^k

は、QQとA∣WA|_Wの合成であるため可逆である。

陰関数定理§E4.8 定理 2.1により、0∈Rn−k0\in\mathbb R^{n-k}の開近傍BBとC1C^1級写像g ⁣:B→Rkg\colon B\to\mathbb R^kが存在し、g(0)=0g(0)=0かつ

H(u,g(u))=0(u∈B)H(u,g(u))=0 \qquad (u\in B)

となる。同定理の微分公式とA∘P=0A\circ P=0から

Dg(0)=−(A∘Q)−1∘(A∘P)=0Dg(0) =-(A\circ Q)^{-1}\circ(A\circ P) =0

である。

v∈ker⁡A=Nv\in\ker A=Nを任意に取る。PPはRn−k\mathbb R^{n-k}からNNへの同型であるから、ただ一つのξ∈Rn−k\xi\in\mathbb R^{n-k}が存在してv=Pξv=P\xiとなる。BBは00の開近傍なので、十分小さいε>0\varepsilon>0に対してtξ∈Bt\xi\in Bが∣t∣<ε|t|<\varepsilonで成り立つ。この範囲で

γ(t)=a+P(tξ)+Qg(tξ)\gamma(t)=a+P(t\xi)+Qg(t\xi)

と定めると、H(tξ,g(tξ))=0H(t\xi,g(t\xi))=0からF(γ(t))=cF(\gamma(t))=cである。また

γ(0)=a,γ′(0)=Pξ+QDg(0)ξ=v\gamma(0)=a, \qquad \gamma'(0)=P\xi+QDg(0)\xi=v

である。したがってv∈TaMv\in T_aMであり、ker⁡A⊆TaM\ker A\subseteq T_aMを得る。▨

2 核の零化空間と乗数条件

補題 2.1.A ⁣:Rn→RkA\colon\mathbb R^n\to\mathbb R^kを全射線形写像とし、

(ker⁡A)∘={φ∈L(Rn,R):φ(v)=0 がすべての v∈ker⁡A について成り立つ}(\ker A)^\circ =\{\varphi\in\mathcal L(\mathbb R^n,\mathbb R): \varphi(v)=0\text{ がすべての }v\in\ker A\text{ について成り立つ}\}

と定める。このとき、任意のφ∈(ker⁡A)∘\varphi\in(\ker A)^\circに対して、ただ一つの線形汎関数η∈L(Rk,R)\eta\in\mathcal L(\mathbb R^k,\mathbb R)が存在して

φ=η∘A\varphi=\eta\circ A

となる。さらに、ただ一つのλ∈Rk\lambda\in\mathbb R^kが存在して

η(z)=⟨λ,z⟩(z∈Rk)\eta(z)=\langle\lambda,z\rangle \qquad (z\in\mathbb R^k)

となり、標準基底に関する転置を用いると

φ(v)=⟨ATλ,v⟩(v∈Rn)\varphi(v)=\langle A^{\mathsf T}\lambda,v\rangle \qquad (v\in\mathbb R^n)

と書くことができる。

証明.φ∈(ker⁡A)∘\varphi\in(\ker A)^\circとする。z∈Rkz\in\mathbb R^kに対して、AAの全射性によりAv=zAv=zを満たすv∈Rnv\in\mathbb R^nを取り、

η(z)=φ(v)\eta(z)=\varphi(v)

と定める。Av=Av′=zAv=Av'=zならばv−v′∈ker⁡Av-v'\in\ker Aであり、φ(v−v′)=0\varphi(v-v')=0なのでφ(v)=φ(v′)\varphi(v)=\varphi(v')である。したがってη\etaはvvの選び方に依存せず定まる。

z1,z2∈Rkz_1,z_2\in\mathbb R^kとr,s∈Rr,s\in\mathbb Rを取り、Avi=ziAv_i=z_iを満たすvi∈Rnv_i\in\mathbb R^nを選ぶ。A(rv1+sv2)=rz1+sz2A(rv_1+sv_2)=rz_1+sz_2であるから、η\etaの定義とφ\varphiの線形性により

η(rz1+sz2)=φ(rv1+sv2)=rη(z1)+sη(z2)\eta(rz_1+sz_2) =\varphi(rv_1+sv_2) =r\eta(z_1)+s\eta(z_2)

となる。よってη\etaは線形である。任意のv∈Rnv\in\mathbb R^nに対して、vv自身をAvAvの原像として用いると

(η∘A)(v)=η(Av)=φ(v)(\eta\circ A)(v)=\eta(Av)=\varphi(v)

を得る。η1∘A=η2∘A\eta_1\circ A=\eta_2\circ Aならば、AAの全射性により任意のz∈Rkz\in\mathbb R^kをz=Avz=Avと書くことができ、η1(z)=η2(z)\eta_1(z)=\eta_2(z)となる。したがってη\etaは一意である。

Rk\mathbb R^kの標準基底をe1,…,eke_1,\ldots,e_kとし、

λ=∑j=1kη(ej)ej\lambda=\sum_{j=1}^k\eta(e_j)e_j

とおく。z=∑jzjejz=\sum_jz_je_jに対して線形性から

η(z)=∑j=1kzjη(ej)=⟨λ,z⟩\eta(z)=\sum_{j=1}^kz_j\eta(e_j)=\langle\lambda,z\rangle

である。この表示の一意性は、二つの表現ベクトルの差と各eje_jとの内積がすべて零になることから従う。最後に

φ(v)=η(Av)=⟨λ,Av⟩=⟨ATλ,v⟩\varphi(v)=\eta(Av)=\langle\lambda,Av\rangle =\langle A^{\mathsf T}\lambda,v\rangle

を得る。▨

定理 2.2 (Lagrange 未定乗数法).n,k∈Z≥1n,k\in\mathbb Z_{\geq1}とし、U⊂RnU\subset\mathbb R^nを開集合、F ⁣:U→RkF\colon U\to\mathbb R^kをC1C^1級の写像、c∈Rkc\in\mathbb R^kとする。M={x∈U:F(x)=c}M=\{x\in U:F(x)=c\}とおき、f ⁣:U→Rf\colon U\to\mathbb Rはa∈Ma\in Mで全微分可能であるとする。aaがf∣Mf|_Mの局所最大点または局所最小点であり、DF(a)DF(a)が全射であるならば、ただ一つのλ∈Rk\lambda\in\mathbb R^kが存在して

Df(a)v=⟨λ,DF(a)v⟩(v∈Rn)Df(a)v=\langle\lambda,DF(a)v\rangle \qquad (v\in\mathbb R^n)

となる。標準基底に関する行列と勾配を用いると、この条件は

∇f(a)=DF(a)Tλ=∑j=1kλj∇Fj(a)\nabla f(a)=DF(a)^{\mathsf T}\lambda =\sum_{j=1}^k\lambda_j\nabla F_j(a)

と同値である。

証明.v∈ker⁡DF(a)v\in\ker DF(a)を任意に取る。命題 1.3によりv∈TaMv\in T_aMであるから、あるε>0\varepsilon>0とC1C^1級曲線γ ⁣:(−ε,ε)→M\gamma\colon(-\varepsilon,\varepsilon)\to Mが存在して

γ(0)=a,γ′(0)=v\gamma(0)=a, \qquad \gamma'(0)=v

となる。aaはf∣Mf|_Mの局所極値点であるから、aaのある近傍O⊂UO\subset Uにおいてf(a)f(a)はf∣M∩Of|_{M\cap O}の最大値または最小値である。γ\gammaの00における連続性により、十分小さい∣t∣|t|に対してγ(t)∈O\gamma(t)\in Oとなる。従って00は一変数関数f∘γf\circ\gammaの局所極値点である。連鎖律により

0=(f∘γ)′(0)=Df(a)v0=(f\circ\gamma)'(0)=Df(a)v

である。よって

Df(a)∈(ker⁡DF(a))∘Df(a)\in(\ker DF(a))^\circ

となる。

補題 2.1をA=DF(a)A=DF(a)とφ=Df(a)\varphi=Df(a)に適用すると、ただ一つのλ∈Rk\lambda\in\mathbb R^kが存在して

Df(a)v=⟨λ,DF(a)v⟩Df(a)v=\langle\lambda,DF(a)v\rangle

がすべてのv∈Rnv\in\mathbb R^nについて成り立つ。実数値関数の全微分と勾配の関係§E4.3 定理 3.2をffと各成分FjF_jへ用いると、この汎関数の等式は

⟨∇f(a),v⟩=⟨∑j=1kλj∇Fj(a),v⟩(v∈Rn)\langle\nabla f(a),v\rangle =\left\langle\sum_{j=1}^k\lambda_j\nabla F_j(a),v\right\rangle \qquad (v\in\mathbb R^n)

となる。任意のvvに対する内積が一致するため、表示した勾配の等式を得る。▨

注意 2.3 (乗数条件は必要条件である).定理 2.2は、正則な制約付き局所極値点が乗数条件を満たすことを述べる。乗数条件を満たす点が局所極値点であることは主張しない。候補点が実際に最大点または最小点であるかどうかは、制約集合上における目的関数の値または別の十分条件によって判定する必要がある。

3 乗数条件の計算

例 3.1 (直線制約).f(x,y)=x2+y2f(x,y)=x^2+y^2を制約

F(x,y)=x+y=1F(x,y)=x+y=1

のもとで最小化する。DF(x,y)=(1,1)DF(x,y)=(1,1)はすべての点で全射である。乗数条件

(2x,2y)=λ(1,1)(2x,2y)=\lambda(1,1)

と制約からx=y=1/2x=y=1/2を得る。制約へy=1−xy=1-xを代入すると

f(x,1−x)=2(x−12)2+12f(x,1-x)=2\left(x-\frac12\right)^2+\frac12

となるため、(1/2,1/2)(1/2,1/2)は制約集合全体におけるただ一つの最小点である。

例 3.2 (球面上の一次関数).R>0R>0、p∈Rn∖{0}p\in\mathbb R^n\setminus\{0\}とし、

f(x)=⟨p,x⟩,F(x)=∥x∥2f(x)=\langle p,x\rangle, \qquad F(x)=\lVert x\rVert^2

とおく。制約集合をF−1(R2)F^{-1}(R^2)とする。制約集合上ではDF(x)v=2⟨x,v⟩DF(x)v=2\langle x,v\rangleであり、x≠0x\ne0なのでDF(x)DF(x)はR\mathbb Rへの全射である。乗数条件と制約は

p=2λx,∥x∥=Rp=2\lambda x, \qquad \lVert x\rVert=R

であるから、候補点は

x=Rp∥p∥,x=−Rp∥p∥x=R\frac{p}{\lVert p\rVert}, \qquad x=-R\frac{p}{\lVert p\rVert}

である。Cauchy–Schwarz の不等式により、第一の点では最大値R∥p∥R\lVert p\rVert、第二の点では最小値−R∥p∥-R\lVert p\rVertを取る。

例 3.3 (二つの制約).F ⁣:R3→R2F\colon\mathbb R^3\to\mathbb R^2とf ⁣:R3→Rf\colon\mathbb R^3\to\mathbb Rを

F(x,y,z)=(x2+y2+z2,z),f(x,y,z)=xF(x,y,z)=(x^2+y^2+z^2,z), \qquad f(x,y,z)=x

によって定め、制約値を(1,0)(1,0)とする。制約集合はxyxy平面内の単位円である。その各点において

DF(x,y,0)=(2x2y0001)DF(x,y,0) = \begin{pmatrix} 2x&2y&0\\ 0&0&1 \end{pmatrix}

は階数22なので全射である。乗数条件は

(1,0,0)=λ1(2x,2y,0)+λ2(0,0,1)(1,0,0) =\lambda_1(2x,2y,0)+\lambda_2(0,0,1)

となる。第二成分と第三成分からλ1y=0\lambda_1y=0、λ2=0\lambda_2=0を得る。第一成分によりλ1≠0\lambda_1\ne0なのでy=0y=0であり、制約と合わせると候補点は(1,0,0)(1,0,0)と(−1,0,0)(-1,0,0)である。制約集合上では−1≤x≤1-1\leq x\leq1であるため、前者は最大点、後者は最小点である。

4 正則性を欠く場合

例 4.1 (正則性を欠く反例).f ⁣:R2→Rf\colon\mathbb R^2\to\mathbb RとF ⁣:R2→RF\colon\mathbb R^2\to\mathbb Rを

f(x,y)=x,F(x,y)=x2+y2f(x,y)=x, \qquad F(x,y)=x^2+y^2

によって定め、制約値を00とする。制約集合F−1(0)F^{-1}(0)は{(0,0)}\{(0,0)\}なので、原点はffの制約付き局所最大点かつ局所最小点である。一方、

DF(0,0)=0DF(0,0)=0

は全射でなく、∇F(0,0)=(0,0)\nabla F(0,0)=(0,0)である。したがって

∇f(0,0)=(1,0)=λ∇F(0,0)\nabla f(0,0)=(1,0)=\lambda\nabla F(0,0)

を満たすλ∈R\lambda\in\mathbb Rは存在しない。正則性を欠く制約付き局所極値点では、乗数条件が成立しない場合がある。

5 演習

問題 5.1 (二つの線形制約のもとでの最小化).f ⁣:R3→Rf\colon\mathbb R^3\to\mathbb RとF ⁣:R3→R2F\colon\mathbb R^3\to\mathbb R^2を

f(x,y,z)=x2+y2+z2,F(x,y,z)=(x+y+z,x−y)f(x,y,z)=x^2+y^2+z^2, \qquad F(x,y,z)=(x+y+z,x-y)

によって定める。制約値を(1,0)(1,0)とする。次を示せ。

  1. 制約は正則であり、制約集合の各点における接空間を求めよ。
  2. Lagrange 未定乗数法を用いて、制約集合上の局所極値点の候補を求めよ。
  3. 得られた候補が制約集合全体におけるただ一つの最小点であることを、乗数条件とは別に確かめよ。
解答.

DFDFは定数行列

DF=(1111−10)DF= \begin{pmatrix} 1&1&1\\ 1&-1&0 \end{pmatrix}

である。二つの行は一次独立なのでDF ⁣:R3→R2DF\colon\mathbb R^3\to\mathbb R^2は全射であり、制約は正則である。命題 1.3により、制約集合の任意の点aaにおいて

TaM=ker⁡DF={(u,v,w)∈R3:u+v+w=0, u−v=0}=span⁡{(1,1,−2)}T_aM =\ker DF =\{(u,v,w)\in\mathbb R^3:u+v+w=0,\ u-v=0\} =\operatorname{span}\{(1,1,-2)\}

となる。

乗数をλ1,λ2\lambda_1,\lambda_2とすると、乗数条件は

(2x,2y,2z)=λ1(1,1,1)+λ2(1,−1,0)(2x,2y,2z) =\lambda_1(1,1,1)+\lambda_2(1,-1,0)

である。制約x−y=0x-y=0によりx=yx=yであり、乗数条件の第一成分と第二成分の差からλ2=0\lambda_2=0を得る。したがって2x=2y=2z=λ12x=2y=2z=\lambda_1である。制約x+y+z=1x+y+z=1と合わせると

(x,y,z)=(13,13,13)(x,y,z)=\left(\frac13,\frac13,\frac13\right)

だけが候補になる。

任意の(x,y,z)(x,y,z)について

x2+y2+z2−(x+y+z)23=(x−y)2+(y−z)2+(z−x)23≥0x^2+y^2+z^2 -\frac{(x+y+z)^2}{3} =\frac{(x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2}{3} \geq0

である。制約x+y+z=1x+y+z=1のもとではf(x,y,z)≥1/3f(x,y,z)\geq1/3であり、等号が成り立つための必要十分条件はx=y=zx=y=zである。従って(1/3,1/3,1/3)(1/3,1/3,1/3)は二つの制約を満たす点の中でただ一つの最小点である。制約集合は直線であり、ffはその上で上に有界でないため最大点をもたない。▨

参考文献

  1. Michael Spivak, Calculus on Manifolds: A Modern Approach to Classical Theorems of Advanced Calculus, CRC Press, 2018, originally published 1965.正則値における接空間と Lagrange 未定乗数法の証明を参考にした。
  2. Tom M. Apostol, Mathematical Analysis, 2nd ed., Addison-Wesley, 1974.複数の等式制約をもつ未定乗数法を参考にした。

前提記事