§E17.10微分形式と外積・引き戻し

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多様体の上で積分することができる量は、関数ではなく、各点で接ベクトルの組へ交代的に値を割り当てる対象である。本記事はその対象を、外冪束の切断として定義する。

定義の骨組みは二段である。第一に、有限次元線形空間VVに対して、双対空間の外冪⋀k(V∨)\bigwedge^k(V^\vee)と交代kk重線形形式の空間Alt⁡k(V)\operatorname{Alt}^k(V)が標準的に同型であることを、内積を用いずに示す。第二に、この同型を各点の接空間へ適用し、外冪束ΛkT∗M\Lambda^kT^*Mの切断を、各点で交代kk重線形形式を与える対象として読み替える。

そのうえで外積を定義し、結合性と次数付き交換性を証明する。外積の定義には係数の規約が二つ流布しており、片方を選ぶと以後の記事の符号がすべて決まる。本記事は行列式の規約を採り、その内容を明示する。最後にC∞C^\infty写像による引き戻しを定義し、外積と可換であることを証明したうえで、座標表示と座標変換に対する成分の変換則を書き下す。

外微分は本記事では扱わない。外微分の定義、存在と一意性、および不変表示は「外微分と不変表示」が扱う。

1 交代形式の空間と外冪の同一視

以下、この節ではVVをR\mathbb{R}上のnn次元線形空間とし、V∨V^\veeをその双対空間(§E3.5 定義 1.1)とする。kkは非負整数とする。

定義 1.1.k≥1k\ge 1とする。Alt⁡k(V)\operatorname{Alt}^k(V)で、kk重線形形式B:Vk→RB:V^k\to\mathbb{R}(§E3.10 定義 1.1)であって交代的であるもの(§E3.10 定義 2.2、すなわちi≠ji\ne jかつvi=vjv_i=v_jならばB(v1,…,vk)=0B(v_1,\dots,v_k)=0となるもの)の全体を表す。Alt⁡k(V)\operatorname{Alt}^k(V)は、値ごとの和とスカラー倍によってR\mathbb{R}上の線形空間になる。k=0k=0のときはAlt⁡0(V)=R\operatorname{Alt}^0(V)=\mathbb{R}と定める。

係数体がR\mathbb{R}であるから、交代性は引数の置換に対する符号の規則と同値である。実際、§E3.10 命題 2.3により交代形式は隣接する引数の交換で−1-1倍になり、任意の置換σ\sigmaについてB(vσ(1),…,vσ(k))=sgn⁡(σ)B(v1,…,vk)B(v_{\sigma(1)},\dots,v_{\sigma(k)})=\operatorname{sgn}(\sigma)B(v_1,\dots,v_k)が成り立つ。逆に、この符号の規則を満たすkk重線形形式は、二つの引数が等しいとき、その二つを入れ替える互換を取るとB=−BB=-Bとなるので2B=02B=0となり、R\mathbb{R}の上ではB=0B=0である。以下ではこの両方の形を用いる。

補題 1.2.k≥1k\ge 1とする。写像

Λ:Alt⁡k(V)⟶(⋀kV) ⁣∨,Λ(B)(v1∧⋯∧vk)=B(v1,…,vk)\Lambda:\operatorname{Alt}^k(V)\longrightarrow\Bigl(\textstyle\bigwedge^kV\Bigr)^{\!\vee}, \qquad \Lambda(B)(v_1\wedge\cdots\wedge v_k)=B(v_1,\dots,v_k)

は well-defined な線形同型である。

証明.B∈Alt⁡k(V)B\in\operatorname{Alt}^k(V)を取る。BBは交代kk重線形写像であるから、§E3.14 定理 1.3により、⋀kV\bigwedge^kV上の線形形式B~\widetilde BであってB~(v1∧⋯∧vk)=B(v1,…,vk)\widetilde B(v_1\wedge\cdots\wedge v_k)=B(v_1,\dots,v_k)を満たすものがただ一つ存在する。Λ(B):=B~\Lambda(B):=\widetilde Bと定めると、Λ\Lambdaは well-defined である。

Λ\Lambdaの線形性を見る。B,B′∈Alt⁡k(V)B,B'\in\operatorname{Alt}^k(V)、c∈Rc\in\mathbb{R}に対し、Λ(B)+cΛ(B′)\Lambda(B)+c\Lambda(B')は線形形式であり、純外積v1∧⋯∧vkv_1\wedge\cdots\wedge v_kの上でB(v1,…,vk)+cB′(v1,…,vk)B(v_1,\dots,v_k)+cB'(v_1,\dots,v_k)、すなわち(B+cB′)(v1,…,vk)(B+cB')(v_1,\dots,v_k)の値を取る。純外積は⋀kV\bigwedge^kVを生成するので、普遍性における一意性からΛ(B+cB′)=Λ(B)+cΛ(B′)\Lambda(B+cB')=\Lambda(B)+c\Lambda(B')である。

逆写像を作る。φ∈(⋀kV)∨\varphi\in(\bigwedge^kV)^\veeに対しΞ(φ)(v1,…,vk):=φ(v1∧⋯∧vk)\Xi(\varphi)(v_1,\dots,v_k):=\varphi(v_1\wedge\cdots\wedge v_k)と定める。対応(v1,…,vk)↦v1∧⋯∧vk(v_1,\dots,v_k)\mapsto v_1\wedge\cdots\wedge v_kは各変数について線形であり、二つの引数が等しいとき値が00になる(§E3.14 定義 1.1)ので、Ξ(φ)\Xi(\varphi)は交代kk重線形形式である。定義からΞ(Λ(B))=B\Xi(\Lambda(B))=Bである。またΛ(Ξ(φ))\Lambda(\Xi(\varphi))とφ\varphiは純外積の上で一致し、純外積が⋀kV\bigwedge^kVを生成するのでΛ(Ξ(φ))=φ\Lambda(\Xi(\varphi))=\varphiである。したがってΛ\Lambdaは全単射であり、線形同型である。▨

補題 1.3.k≥1k\ge 1とし、VVをnn次元とする。線形写像

Φ:⋀k(V∨)⟶(⋀kV) ⁣∨\Phi:\textstyle\bigwedge^k(V^\vee)\longrightarrow\Bigl(\bigwedge^kV\Bigr)^{\!\vee}

であって、すべてのα1,…,αk∈V∨\alpha^1,\dots,\alpha^k\in V^\veeとv1,…,vk∈Vv_1,\dots,v_k\in Vに対して

Φ(α1∧⋯∧αk)(v1∧⋯∧vk)=det⁡(αi(vj))i,j=1k\Phi(\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k)(v_1\wedge\cdots\wedge v_k) =\det\bigl(\alpha^i(v_j)\bigr)_{i,j=1}^{k}

を満たすものがただ一つ存在し、それは線形同型である。ここでdet⁡\detはkk次正方行列の行列式、すなわちdet⁡(aij)=∑σ∈Sksgn⁡(σ) a1σ(1)⋯akσ(k)\det(a_{ij})=\sum_{\sigma\in S_k}\operatorname{sgn}(\sigma)\,a_{1\sigma(1)}\cdots a_{k\sigma(k)}である。

証明. はじめに、行列式について次を確かめる。置換にわたる展開の各項sgn⁡(σ)a1σ(1)⋯akσ(k)\operatorname{sgn}(\sigma)a_{1\sigma(1)}\cdots a_{k\sigma(k)}は、各行からちょうど一つ、各列からちょうど一つの成分を含む。したがって行列式は行についても列についても多重線形である。また二つの行が等しいとき、σ\sigmaとその二つの添字の互換との合成σ′\sigma'を対応させると、σ\sigmaの項とσ′\sigma'の項は同じ積を持ち符号が反対であるから相殺する。よって行列式は行について交代的であり、列についても同様である。

まずα1,…,αk∈V∨\alpha^1,\dots,\alpha^k\in V^\veeを固定し、

Dα(v1,…,vk)=det⁡(αi(vj))i,j=1kD_{\alpha}(v_1,\dots,v_k)=\det\bigl(\alpha^i(v_j)\bigr)_{i,j=1}^{k}

と定める。vjv_jは第jj列だけに現れるので、上で確かめたことからDαD_\alphaは交代kk重線形形式である。よって補題 1.2により、線形形式Λ(Dα)∈(⋀kV)∨\Lambda(D_\alpha)\in(\bigwedge^kV)^\veeが定まる。

次に、対応(α1,…,αk)↦Λ(Dα)(\alpha^1,\dots,\alpha^k)\mapsto\Lambda(D_\alpha)を見る。行列式は行についても多重線形かつ交代的であり、αi\alpha^iは第ii行だけに現れるので、この対応は(V∨)k(V^\vee)^k上の交代kk重線形写像である。よって§E3.14 定理 1.3をV∨V^\veeに対して適用すると、線形写像Φ\PhiであってΦ(α1∧⋯∧αk)=Λ(Dα)\Phi(\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k)=\Lambda(D_\alpha)を満たすものがただ一つ存在する。これが表示した等式である。

Φ\Phiが同型であることを示す。(e1,…,en)(e_1,\dots,e_n)をVVの基底、(e1,…,en)(e^1,\dots,e^n)をその双対基底とする(§E3.5 定理 1.2)。とくにdim⁡V∨=n\dim V^\vee=nである。§E3.14 定理 2.1により、増加添字I=(i1<⋯<ik)I=(i_1<\cdots<i_k)に対するeI=ei1∧⋯∧eike_I=e_{i_1}\wedge\cdots\wedge e_{i_k}の全体が⋀kV\bigwedge^kVの基底であり、同じ定理をV∨V^\veeに適用するとeI=ei1∧⋯∧eike^I=e^{i_1}\wedge\cdots\wedge e^{i_k}の全体が⋀k(V∨)\bigwedge^k(V^\vee)の基底である。どちらの次元も(nk)\binom nkであり、§E3.5 定理 1.2により(⋀kV)∨(\bigwedge^kV)^\veeの次元も(nk)\binom nkである。

増加添字I=(i1<⋯<ik)I=(i_1<\cdots<i_k)とJ=(j1<⋯<jk)J=(j_1<\cdots<j_k)に対し

Φ(eI)(eJ)=det⁡(eia(ejb))a,b=1k=det⁡(δiajb)a,b=1k\Phi(e^I)(e_J)=\det\bigl(e^{i_a}(e_{j_b})\bigr)_{a,b=1}^{k} =\det\bigl(\delta_{i_a j_b}\bigr)_{a,b=1}^{k}

である。I=JI=Jならばこの行列は単位行列であり、値は11である。I≠JI\ne Jならば、IIに属してJJに属さない添字iai_aが存在するので第aa行が零ベクトルであり、値は00である。したがってΦ\Phiは基底{eI}\{e^I\}を、基底{eJ}\{e_J\}の双対基底へ写す。基底を基底へ写す線形写像は同型であるから、Φ\Phiは同型である。▨

定理 1.4.k≥1k\ge 1とし、VVをnn次元とする。線形同型

ΨV:⋀k(V∨)⟶Alt⁡k(V)\Psi_V:\textstyle\bigwedge^k(V^\vee)\longrightarrow\operatorname{Alt}^k(V)

であって、すべてのα1,…,αk∈V∨\alpha^1,\dots,\alpha^k\in V^\veeとv1,…,vk∈Vv_1,\dots,v_k\in Vに対して

ΨV(α1∧⋯∧αk)(v1,…,vk)=det⁡(αi(vj))i,j=1k\Psi_V(\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k)(v_1,\dots,v_k)=\det\bigl(\alpha^i(v_j)\bigr)_{i,j=1}^{k}

を満たすものがただ一つ存在する。k=1k=1のときΨV\Psi_VはV∨=Alt⁡1(V)V^\vee=\operatorname{Alt}^1(V)の恒等写像である。

証明.ΨV=Λ−1∘Φ\Psi_V=\Lambda^{-1}\circ\Phiと定める。補題 1.2と補題 1.3により、これは線形同型である。表示した等式はΛ\LambdaとΦ\Phiの定義から従う。一意性は、純外積α1∧⋯∧αk\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^kが⋀k(V∨)\bigwedge^k(V^\vee)を生成することによる。k=1k=1のときはdet⁡\detが11次行列の唯一の成分であるから、ΨV(α)(v)=α(v)\Psi_V(\alpha)(v)=\alpha(v)である。▨

注意 1.5 (同一視に内積を用いていないこと).定理 1.4の構成に用いたのは、外冪の普遍性、外冪の基底、双対基底の三つだけである。VV上の内積も、基底の特別な選び方も用いていない。多様体の各点の接空間へこの同型を適用するとき、点について滑らかに変化する内積を選ぶ必要が生じないのはこのためである。本単元は多様体に Riemann 計量を導入しないので、内積を用いる同一視に依拠することができない。

2 微分形式

以下、MMを境界を持たないnn次元C∞C^\infty多様体とする(§E17.1 定義 2.2)。p∈Mp\in Mに対しTpMT_pMを接空間、Tp∗M=(TpM)∨T^*_pM=(T_pM)^\veeを余接空間とし、ΛkT∗M\Lambda^kT^*Mを外冪束とする(§E17.4 定理 4.4)。ΛkT∗M\Lambda^kT^*Mの点ppの上のファイバーは⋀k(Tp∗M)\bigwedge^k(T^*_pM)であり、その次元は(nk)\binom nkである。

チャート(U,φ=(x1,…,xn))(U,\varphi=(x^1,\dots,x^n))を取る。§E17.3 定理 3.3により{∂/∂xi∣p}i=1n\{\partial/\partial x^i|_p\}_{i=1}^nはTpMT_pMの基底である。その双対基底(§E3.5 定理 1.2)を{dxi∣p}i=1n\{dx^i|_p\}_{i=1}^nと書く。すなわちdxi∣pdx^i|_pは

dxi∣p(∂∂xj∣p)=δjidx^i|_p\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^j}\Big|_p\Bigr)=\delta^i_j

で定まるTp∗MT^*_pMの元であり、接ベクトルを導分として見るとdxi∣p(v)=v(xi)dx^i|_p(v)=v(x^i)である。増加添字I=(i1<⋯<ik)I=(i_1<\cdots<i_k)に対し、外積代数⋀(Tp∗M)\bigwedge(T^*_pM)(§E3.14 定義 3.1)の積によってdxI∣p=dxi1∣p∧⋯∧dxik∣pdx^I|_p=dx^{i_1}|_p\wedge\cdots\wedge dx^{i_k}|_pと定める。この積の値が⋀k(Tp∗M)\bigwedge^k(T^*_pM)に属することは、外積代数の次数rrの部分が⋀r(Tp∗M)\bigwedge^r(T^*_pM)に一致すること(§E3.14 命題 3.2)による。以後、外冪⋀r\bigwedge^rを外積代数の次数rrの部分と、この一致によって同一視する。§E3.14 定理 2.1により、{dxI∣p}I\{dx^I|_p\}_{I}は⋀k(Tp∗M)\bigwedge^k(T^*_pM)の基底である。

定義 2.1.kkを非負整数とする。MM上の kk次微分形式 (kk-form) とは、外冪束ΛkT∗M\Lambda^kT^*MのC∞C^\infty切断ω\omega、すなわち各ppでω(p)∈⋀k(Tp∗M)\omega(p)\in\bigwedge^k(T^*_pM)を満たすC∞C^\infty写像ω:M→ΛkT∗M\omega:M\to\Lambda^kT^*Mのことをいう。kk次微分形式の全体をΩk(M)\Omega^k(M)と書く。

Ωk(M)\Omega^k(M)には、各点ごとの和(ω+η)(p)=ω(p)+η(p)(\omega+\eta)(p)=\omega(p)+\eta(p)、実数倍(cω)(p)=c ω(p)(c\omega)(p)=c\,\omega(p)、およびf∈C∞(M)f\in C^\infty(M)による積(fω)(p)=f(p) ω(p)(f\omega)(p)=f(p)\,\omega(p)を考える。

命題 2.2.k≥1k\ge 1とする。ΛkT∗M\Lambda^kT^*Mの切断ω\omega(滑らかさを仮定しない)に対し、次の三つは同値である。

  1. ω\omegaはC∞C^\infty切断である。
  2. MMの任意のチャート(U,φ=(x1,…,xn))(U,\varphi=(x^1,\dots,x^n))について、ω(p)=∑IωI(p) dxI∣p\omega(p)=\sum_I\omega_I(p)\,dx^I|_p(IIは増加添字にわたる)で定まるUU上の関数ωI\omega_IがすべてC∞C^\inftyである。
  3. MMの各点は、条件 (b)を満たすチャートの定義域に含まれる。

証明.§E17.4 定理 4.4は、MMのチャート(U,φ)(U,\varphi)と各ファイバーの基底{dxI∣p}\{dx^I|_p\}から、ΛkT∗M\Lambda^kT^*Mのチャート

η⟼(φ(π(η)), (ηI)I)∈φ(U)×R(nk)\eta\longmapsto\bigl(\varphi(\pi(\eta)),\ (\eta_I)_{I}\bigr)\in\varphi(U)\times\mathbb{R}^{\binom nk}

を作ってC∞C^\infty構造を与える。ここでπ:ΛkT∗M→M\pi:\Lambda^kT^*M\to Mは射影であり、(ηI)(\eta_I)はη\etaの基底{dxI}\{dx^I\}に関する成分である。

このチャートで切断ω\omegaを表示すると、φ(U)\varphi(U)からφ(U)×R(nk)\varphi(U)\times\mathbb{R}^{\binom nk}への写像x↦(x, ((ωI∘φ−1)(x))I)x\mapsto\bigl(x,\ ((\omega_I\circ\varphi^{-1})(x))_I\bigr)になる。この写像がC∞C^\inftyであることと、各ωI∘φ−1\omega_I\circ\varphi^{-1}がC∞C^\inftyであることは同値である。よって条件 (a)⇔\Leftrightarrow(b)が成り立つ。滑らかさが局所的な性質であり、極大アトラスの任意の二つのチャートの座標変換がC∞C^\inftyであること(§E17.1 定義 2.2)から、条件 (c)⇒\Rightarrow(b)が従う。条件 (b)⇒\Rightarrow(c)は自明である。▨

命題 2.3.MMをnn次元C∞C^\infty多様体、kkを非負整数とする。

  1. 定義 2.1が定めた各点ごとの和・実数倍・C∞(M)C^\infty(M)の元による積によって、Ωk(M)\Omega^k(M)はC∞(M)C^\infty(M)加群であり、とくにR\mathbb{R}上の線形空間である。
  2. Ω0(M)=C∞(M)\Omega^0(M)=C^\infty(M)である。
  3. k>nk>nならばΩk(M)={0}\Omega^k(M)=\{0\}である。

証明.(1)を示す。各ファイバー⋀k(Tp∗M)\bigwedge^k(T^*_pM)はR\mathbb{R}上の線形空間であるから、三つの演算は各点で定まる。k≥1k\ge 1のとき、結果がふたたびC∞C^\infty切断であることは命題 2.2の成分による判定から従う。実際、チャートを取るとω+η\omega+\eta、cωc\omega、fωf\omegaの成分はそれぞれωI+ηI\omega_I+\eta_I、c ωIc\,\omega_I、f ωIf\,\omega_Iであり、C∞C^\infty関数の和・実数倍・積としてC∞C^\inftyである。k=0k=0のときは、(2)によりΩ0(M)=C∞(M)\Omega^0(M)=C^\infty(M)であり、三つの演算は関数の和・実数倍・積であるから結果はふたたびC∞C^\infty関数である。加群の公理は各点で確かめることができる。

(2)を示す。§E3.14 定義 1.1により⋀0(Tp∗M)=R\bigwedge^0(T^*_pM)=\mathbb{R}であるから、Λ0T∗M\Lambda^0T^*Mの切断はMM上の実数値関数と同一視され、C∞C^\infty切断はC∞C^\infty関数に対応する。

(3)を示す。dim⁡Tp∗M=n\dim T^*_pM=nであるから、k>nk>nのとき§E3.14 定理 2.1により⋀k(Tp∗M)={0}\bigwedge^k(T^*_pM)=\{0\}である。よって切断は零切断だけである。▨

命題 2.4.k≥1k\ge 1とし、ω∈Ωk(M)\omega\in\Omega^k(M)とする。各点ppで定理 1.4の同型ΨTpM\Psi_{T_pM}を適用して

ωp:=ΨTpM(ω(p))∈Alt⁡k(TpM)\omega_p:=\Psi_{T_pM}\bigl(\omega(p)\bigr)\in\operatorname{Alt}^k(T_pM)

と定めると、ω\omegaは各点でTpMT_pM上の交代kk重線形形式を与える対応、すなわち交代的な(0,k)(0,k)型テンソル場を定める。ΨTpM\Psi_{T_pM}は各点で線形同型であるから、この対応はΛkT∗M\Lambda^kT^*Mの切断の全体と、各点で交代kk重線形形式を与える対応の全体との間の全単射であり、C∞C^\infty切断はそのうち命題 2.2の命題 2.2 条件 (b)を満たすものに対応する。

以後、ω∈Ωk(M)\omega\in\Omega^k(M)と接ベクトルv1,…,vk∈TpMv_1,\dots,v_k\in T_pMに対してωp(v1,…,vk)∈R\omega_p(v_1,\dots,v_k)\in\mathbb{R}と書き、X1,…,XkX_1,\dots,X_kをMM上のC∞C^\inftyベクトル場とするとき、ω(X1,…,Xk)\omega(X_1,\dots,X_k)でp↦ωp(X1∣p,…,Xk∣p)p\mapsto\omega_p(X_1|_p,\dots,X_k|_p)が定めるMM上の関数を表す。

証明. 各点でΨTpM\Psi_{T_pM}が線形同型であることから、対応ω(p)↦ωp\omega(p)\mapsto\omega_pは各ファイバーで全単射である。切断の水準では、これは各点ごとに全単射を適用することであるから、ふたたび全単射である。▨

この読み替えを座標で書き下すと、ωp\omega_pの座標基底における値が命題 2.2の成分ωI\omega_Iに一致する。その確認には外積の行列式表示を要するので、外積を定義したあとの命題 4.1で行う。

3 外積

外積の定義には二つの規約が流布している。一方は本記事が採る行列式の規約であり、他方は(k+l)!k! l!\frac{(k+l)!}{k!\,l!}を交代化作用素に掛ける規約である。両者は11形式どうしの外積でα∧β\alpha\wedge\betaと12(α∧β)\frac12(\alpha\wedge\beta)の差を生み、外微分の不変表示に付く因子を変える。本単元は次の規約に固定する。

定義 3.1.k,lk,lを非負整数とする。α∈Alt⁡k(V)\alpha\in\operatorname{Alt}^k(V)、β∈Alt⁡l(V)\beta\in\operatorname{Alt}^l(V)に対し、(k+l)(k+l)重線形形式α∧β\alpha\wedge\betaを

(α∧β)(v1,…,vk+l)=1k! l!∑σ∈Sk+lsgn⁡(σ) α(vσ(1),…,vσ(k)) β(vσ(k+1),…,vσ(k+l))(\alpha\wedge\beta)(v_1,\dots,v_{k+l}) =\frac{1}{k!\,l!}\sum_{\sigma\in S_{k+l}}\operatorname{sgn}(\sigma)\, \alpha\bigl(v_{\sigma(1)},\dots,v_{\sigma(k)}\bigr)\, \beta\bigl(v_{\sigma(k+1)},\dots,v_{\sigma(k+l)}\bigr)

で定める。k=0k=0のときα∈R\alpha\in\mathbb{R}であり、この式はα∧β=αβ\alpha\wedge\beta=\alpha\beta(スカラー倍)を与える。l=0l=0のときも同様である。とくにk=l=1k=l=1では

(α∧β)(v1,v2)=α(v1)β(v2)−α(v2)β(v1)(\alpha\wedge\beta)(v_1,v_2)=\alpha(v_1)\beta(v_2)-\alpha(v_2)\beta(v_1)

である。この規約を行列式の規約という。

MM上の微分形式に対しては、この式を各点で適用して外積を定める。すなわちα∈Ωk(M)\alpha\in\Omega^k(M)、β∈Ωl(M)\beta\in\Omega^l(M)に対し、命題 2.4の読み替えのもとで

(α∧β)p=αp∧βp(p∈M)(\alpha\wedge\beta)_p=\alpha_p\wedge\beta_p\qquad(p\in M)

と定める。α∧β\alpha\wedge\betaがふたたびΩk+l(M)\Omega^{k+l}(M)に属することは命題 3.7の直後で確かめる。

k=0k=0の場合を確かめる。α∈Alt⁡0(V)=R\alpha\in\operatorname{Alt}^0(V)=\mathbb{R}を定数と読むと、SlS_lにわたる和の各項はsgn⁡(σ) α β(vσ(1),…,vσ(l))\operatorname{sgn}(\sigma)\,\alpha\,\beta(v_{\sigma(1)},\dots,v_{\sigma(l)})であり、β\betaの交代性からこれはα β(v1,…,vl)\alpha\,\beta(v_1,\dots,v_l)に等しい。項数はl!l!であり、1/(0! l!)1/(0!\,l!)を掛けるとα β(v1,…,vl)\alpha\,\beta(v_1,\dots,v_l)を得る。

命題 3.2.α∈Alt⁡k(V)\alpha\in\operatorname{Alt}^k(V)、β∈Alt⁡l(V)\beta\in\operatorname{Alt}^l(V)とする。α∧β\alpha\wedge\betaは(k+l)(k+l)重線形形式であり、任意のπ∈Sk+l\pi\in S_{k+l}に対して

(α∧β)(vπ(1),…,vπ(k+l))=sgn⁡(π) (α∧β)(v1,…,vk+l)(\alpha\wedge\beta)(v_{\pi(1)},\dots,v_{\pi(k+l)})=\operatorname{sgn}(\pi)\,(\alpha\wedge\beta)(v_1,\dots,v_{k+l})

を満たす。とくにα∧β∈Alt⁡k+l(V)\alpha\wedge\beta\in\operatorname{Alt}^{k+l}(V)である。また対応(α,β)↦α∧β(\alpha,\beta)\mapsto\alpha\wedge\betaは双線形である。

証明. 多重線形性は、定義式の各項が各vmv_mについて線形であることから従う。双線形性も、定義式がα\alphaとβ\betaのそれぞれについて線形であることから従う。

置換に対する符号を見る。π∈Sk+l\pi\in S_{k+l}を固定し、wm=vπ(m)w_m=v_{\pi(m)}と置く。定義式でα\alphaの引数はwσ(1),…,wσ(k)w_{\sigma(1)},\dots,w_{\sigma(k)}、すなわちvπσ(1),…,vπσ(k)v_{\pi\sigma(1)},\dots,v_{\pi\sigma(k)}である。β\betaについても同様である。そこでσ′=πσ\sigma'=\pi\sigmaと置くと、σ\sigmaがSk+lS_{k+l}を一巡するときσ′\sigma'もSk+lS_{k+l}を一巡し、sgn⁡(σ)=sgn⁡(π−1σ′)=sgn⁡(π)sgn⁡(σ′)\operatorname{sgn}(\sigma)=\operatorname{sgn}(\pi^{-1}\sigma')=\operatorname{sgn}(\pi)\operatorname{sgn}(\sigma')である。よって

(α∧β)(w1,…,wk+l)=sgn⁡(π)⋅1k! l!∑σ′∈Sk+lsgn⁡(σ′) α(vσ′(1),… ) β(vσ′(k+1),… )(\alpha\wedge\beta)(w_1,\dots,w_{k+l}) =\operatorname{sgn}(\pi)\cdot\frac{1}{k!\,l!}\sum_{\sigma'\in S_{k+l}}\operatorname{sgn}(\sigma')\, \alpha(v_{\sigma'(1)},\dots)\,\beta(v_{\sigma'(k+1)},\dots)

となり、表示した等式を得る。二つの引数va,vbv_a,v_b(a≠ba\ne b)が等しいときは、π\piとして互換(a b)(a\ b)を取ると左辺が元の値に等しく右辺が−1-1倍であるから、値は00である。よってα∧β\alpha\wedge\betaは交代的である。▨

定義式の和は(k+l)!(k+l)!項からなるが、α\alphaとβ\betaが交代的であることから、実際に異なる値を与える項は(k+lk)\binom{k+l}{k}通りしかない。次の形は以後の計算で繰り返し用いる。

命題 3.3.k,l≥1k,l\ge 1とする。Sk+lS_{k+l}の元σ\sigmaが (k,l)(k,l)シャッフルであるとは、σ(1)<⋯<σ(k)\sigma(1)<\cdots<\sigma(k)かつσ(k+1)<⋯<σ(k+l)\sigma(k+1)<\cdots<\sigma(k+l)が成り立つことをいう。(k,l)(k,l)シャッフルの全体をSh⁡(k,l)\operatorname{Sh}(k,l)と書く。α∈Alt⁡k(V)\alpha\in\operatorname{Alt}^k(V)、β∈Alt⁡l(V)\beta\in\operatorname{Alt}^l(V)に対し

(α∧β)(v1,…,vk+l)=∑σ∈Sh⁡(k,l)sgn⁡(σ) α(vσ(1),…,vσ(k)) β(vσ(k+1),…,vσ(k+l))(\alpha\wedge\beta)(v_1,\dots,v_{k+l}) =\sum_{\sigma\in\operatorname{Sh}(k,l)}\operatorname{sgn}(\sigma)\, \alpha\bigl(v_{\sigma(1)},\dots,v_{\sigma(k)}\bigr)\, \beta\bigl(v_{\sigma(k+1)},\dots,v_{\sigma(k+l)}\bigr)

が成り立つ。

証明.τ∈Sk\tau\in S_kとρ∈Sl\rho\in S_lに対し、τ⊕ρ∈Sk+l\tau\oplus\rho\in S_{k+l}を、{1,…,k}\{1,\dots,k\}の上でτ\tau、{k+1,…,k+l}\{k+1,\dots,k+l\}の上でm↦k+ρ(m−k)m\mapsto k+\rho(m-k)として定める。H={τ⊕ρ:τ∈Sk, ρ∈Sl}H=\{\tau\oplus\rho:\tau\in S_k,\ \rho\in S_l\}はSk+lS_{k+l}の部分群であり、位数はk! l!k!\,l!である。

定義式の被加数をF(σ)F(\sigma)と書く。σ\sigmaをσ∘(τ⊕ρ)\sigma\circ(\tau\oplus\rho)へ取り替えると、α\alphaの引数はτ\tauによって、β\betaの引数はρ\rhoによって置換される。α\alphaとβ\betaが交代的であるから、その効果はsgn⁡(τ)sgn⁡(ρ)\operatorname{sgn}(\tau)\operatorname{sgn}(\rho)倍である。一方sgn⁡(σ∘(τ⊕ρ))=sgn⁡(σ)sgn⁡(τ)sgn⁡(ρ)\operatorname{sgn}(\sigma\circ(\tau\oplus\rho))=\operatorname{sgn}(\sigma)\operatorname{sgn}(\tau)\operatorname{sgn}(\rho)であるから、F(σ∘(τ⊕ρ))=F(σ)F(\sigma\circ(\tau\oplus\rho))=F(\sigma)である。すなわちFFは右剰余類σH\sigma Hの上で定数である。

各右剰余類σH\sigma Hは、集合{σ(1),…,σ(k)}\{\sigma(1),\dots,\sigma(k)\}を定める。逆に{1,…,k+l}\{1,\dots,k+l\}のkk元部分集合SSを与えると、σ(1)<⋯<σ(k)\sigma(1)<\cdots<\sigma(k)がSSの元を昇順に並べ、σ(k+1)<⋯<σ(k+l)\sigma(k+1)<\cdots<\sigma(k+l)が補集合の元を昇順に並べるようなσ\sigmaがただ一つ定まる。これがSh⁡(k,l)\operatorname{Sh}(k,l)の元であり、対応する剰余類にちょうど一つ属する。剰余類の元の個数は∣H∣=k! l!|H|=k!\,l!であるから、定義式の和は

1k! l!∑σ∈Sh⁡(k,l)k! l!  F(σ)=∑σ∈Sh⁡(k,l)F(σ)\frac{1}{k!\,l!}\sum_{\sigma\in\operatorname{Sh}(k,l)}k!\,l!\;F(\sigma) =\sum_{\sigma\in\operatorname{Sh}(k,l)}F(\sigma)

に等しい。▨

命題 3.4.r≥1r\ge 1、k1,…,krk_1,\dots,k_rを正の整数、N=k1+⋯+krN=k_1+\cdots+k_rとする。αs∈Alt⁡ks(V)\alpha_s\in\operatorname{Alt}^{k_s}(V)(s=1,…,rs=1,\dots,r)に対し、NN重線形形式Pr(α1,…,αr)P_r(\alpha_1,\dots,\alpha_r)を

Pr(α1,…,αr)(v1,…,vN)=1k1!⋯kr!∑σ∈SNsgn⁡(σ)∏s=1rαs(vσ(Ks))P_r(\alpha_1,\dots,\alpha_r)(v_1,\dots,v_N) =\frac{1}{k_1!\cdots k_r!}\sum_{\sigma\in S_N}\operatorname{sgn}(\sigma)\prod_{s=1}^{r} \alpha_s\bigl(v_{\sigma(K_s)}\bigr)

で定める。ここでKs={k1+⋯+ks−1+1,…,k1+⋯+ks}K_s=\{k_1+\cdots+k_{s-1}+1,\dots,k_1+\cdots+k_s\}は{1,…,N}\{1,\dots,N\}を順に区切った第ss区画であり、αs(vσ(Ks))\alpha_s(v_{\sigma(K_s)})はKsK_sの元を昇順に並べたm1<⋯<mksm_1<\cdots<m_{k_s}に対するαs(vσ(m1),…,vσ(mks))\alpha_s(v_{\sigma(m_1)},\dots,v_{\sigma(m_{k_s})})を表す。このときPr(α1,…,αr)∈Alt⁡N(V)P_r(\alpha_1,\dots,\alpha_r)\in\operatorname{Alt}^N(V)であり、P1(α1)=α1P_1(\alpha_1)=\alpha_1である。さらにr≥2r\ge 2に対して

Pr(α1,…,αr)=Pr−1(α1,…,αr−1)∧αr,Pr(α1,…,αr)=α1∧Pr−1(α2,…,αr)P_r(\alpha_1,\dots,\alpha_r)=P_{r-1}(\alpha_1,\dots,\alpha_{r-1})\wedge\alpha_r, \qquad P_r(\alpha_1,\dots,\alpha_r)=\alpha_1\wedge P_{r-1}(\alpha_2,\dots,\alpha_r)

が成り立つ。

証明.P1(α1)=α1P_1(\alpha_1)=\alpha_1は定義から直ちに従う。PrP_rが引数の置換に対して符号だけ変わることは、命題 3.2の証明と同じ置き換えσ′=πσ\sigma'=\pi\sigmaによって従い、そこから交代性が従う。

第一の等式を示す。p=k1+⋯+kr−1p=k_1+\cdots+k_{r-1}、m=krm=k_r、N=p+mN=p+mと置く。γ=Pr−1(α1,…,αr−1)\gamma=P_{r-1}(\alpha_1,\dots,\alpha_{r-1})はAlt⁡p(V)\operatorname{Alt}^p(V)の元であるから、定義 3.1により

(γ∧αr)(v1,…,vN)=1p! m!∑σ∈SNsgn⁡(σ) γ(vσ(1),…,vσ(p)) αr(vσ(p+1),…,vσ(N))(\gamma\wedge\alpha_r)(v_1,\dots,v_N) =\frac{1}{p!\,m!}\sum_{\sigma\in S_N}\operatorname{sgn}(\sigma)\, \gamma\bigl(v_{\sigma(1)},\dots,v_{\sigma(p)}\bigr)\, \alpha_r\bigl(v_{\sigma(p+1)},\dots,v_{\sigma(N)}\bigr)

である。ここへγ\gammaの定義を代入する。wj=vσ(j)w_j=v_{\sigma(j)}(j=1,…,pj=1,\dots,p)と置くと

γ(w1,…,wp)=1k1!⋯kr−1!∑τ∈Spsgn⁡(τ)∏s=1r−1αs(wτ(Ks))\gamma(w_1,\dots,w_p)=\frac{1}{k_1!\cdots k_{r-1}!}\sum_{\tau\in S_p}\operatorname{sgn}(\tau)\prod_{s=1}^{r-1}\alpha_s\bigl(w_{\tau(K_s)}\bigr)

であり、wτ(j)=vσ(τ(j))w_{\tau(j)}=v_{\sigma(\tau(j))}である。τ∈Sp\tau\in S_pを、{p+1,…,N}\{p+1,\dots,N\}の上で恒等写像としてSNS_Nの元τ~\widetilde\tauへ延長し、μ=σ∘τ~\mu=\sigma\circ\widetilde\tauと置く。τ~\widetilde\tauは{p+1,…,N}\{p+1,\dots,N\}を動かさないのでμ(p+j)=σ(p+j)\mu(p+j)=\sigma(p+j)であり、sgn⁡(μ)=sgn⁡(σ)sgn⁡(τ)\operatorname{sgn}(\mu)=\operatorname{sgn}(\sigma)\operatorname{sgn}(\tau)である。τ\tauを固定するごとにσ↦μ\sigma\mapsto\muはSNS_Nの全単射であるから、二重和は

1p! m! k1!⋯kr−1!∑τ∈Sp ∑μ∈SNsgn⁡(μ)∏s=1rαs(vμ(Ks))\frac{1}{p!\,m!\,k_1!\cdots k_{r-1}!}\sum_{\tau\in S_p}\ \sum_{\mu\in S_N}\operatorname{sgn}(\mu)\prod_{s=1}^{r}\alpha_s\bigl(v_{\mu(K_s)}\bigr)

になる。内側の和はτ\tauに依らないので、τ\tauにわたる和はp!p!倍を与える。よって値は

1k1!⋯kr−1! kr!∑μ∈SNsgn⁡(μ)∏s=1rαs(vμ(Ks))=Pr(α1,…,αr)(v1,…,vN)\frac{1}{k_1!\cdots k_{r-1}!\,k_r!}\sum_{\mu\in S_N}\operatorname{sgn}(\mu)\prod_{s=1}^{r}\alpha_s\bigl(v_{\mu(K_s)}\bigr) =P_r(\alpha_1,\dots,\alpha_r)(v_1,\dots,v_N)

である。

第二の等式も同じ手順で従う。q=k2+⋯+krq=k_2+\cdots+k_rと置き、δ=Pr−1(α2,…,αr)∈Alt⁡q(V)\delta=P_{r-1}(\alpha_2,\dots,\alpha_r)\in\operatorname{Alt}^q(V)とする。α1∧δ\alpha_1\wedge\deltaの定義式へδ\deltaの展開を代入し、{k1+1,…,N}\{k_1+1,\dots,N\}の上の置換τ\tauを{1,…,k1}\{1,\dots,k_1\}の上で恒等写像としてSNS_Nへ延長してμ=σ∘τ~\mu=\sigma\circ\widetilde\tauと置くと、同じ計算によってPr(α1,…,αr)P_r(\alpha_1,\dots,\alpha_r)を得る。▨

定理 3.5.α∈Alt⁡k(V)\alpha\in\operatorname{Alt}^k(V)、β∈Alt⁡l(V)\beta\in\operatorname{Alt}^l(V)、γ∈Alt⁡m(V)\gamma\in\operatorname{Alt}^m(V)とする。このとき

(α∧β)∧γ=α∧(β∧γ),α∧β=(−1)kl β∧α(\alpha\wedge\beta)\wedge\gamma=\alpha\wedge(\beta\wedge\gamma), \qquad \alpha\wedge\beta=(-1)^{kl}\,\beta\wedge\alpha

が成り立つ。

同じ二つの等式は、MM上の微分形式α∈Ωk(M)\alpha\in\Omega^k(M)、β∈Ωl(M)\beta\in\Omega^l(M)、γ∈Ωm(M)\gamma\in\Omega^m(M)に対しても、定義 3.1の各点ごとの外積について成り立つ。さらにこの外積はC∞(M)C^\infty(M)双線形である。すなわちf,g∈C∞(M)f,g\in C^\infty(M)に対して(fα+gα′)∧β=f(α∧β)+g(α′∧β)(f\alpha+g\alpha')\wedge\beta=f(\alpha\wedge\beta)+g(\alpha'\wedge\beta)であり、第二変数についても同様である。

証明.k,l,mk,l,mのいずれかが00の場合は、外積がスカラー倍になるので両方の等式は直ちに従う。以下、k,l,m≥1k,l,m\ge 1とする。

結合性は命題 3.4をr=3r=3に適用すると得られる。実際、同命題の第一の等式はP3(α,β,γ)=P2(α,β)∧γ=(α∧β)∧γP_3(\alpha,\beta,\gamma)=P_2(\alpha,\beta)\wedge\gamma=(\alpha\wedge\beta)\wedge\gammaを、第二の等式はP3(α,β,γ)=α∧P2(β,γ)=α∧(β∧γ)P_3(\alpha,\beta,\gamma)=\alpha\wedge P_2(\beta,\gamma)=\alpha\wedge(\beta\wedge\gamma)を与える。

次数付き交換性を示す。N=k+lN=k+lとし、θ∈SN\theta\in S_Nを

θ(i)=k+i(1≤i≤l),θ(l+j)=j(1≤j≤k)\theta(i)=k+i\quad(1\le i\le l),\qquad \theta(l+j)=j\quad(1\le j\le k)

で定める。列θ(1),…,θ(N)\theta(1),\dots,\theta(N)はk+1,k+2,…,k+l,1,2,…,kk+1,k+2,\dots,k+l,1,2,\dots,kであり、前半どうし、後半どうしはいずれも増加している。前半の元はすべてkkより大きく、後半の元はすべてkk以下であるから、転倒(i<ji<jかつθ(i)>θ(j)\theta(i)>\theta(j)となる対)の個数はちょうどklklである。したがってsgn⁡(θ)=(−1)kl\operatorname{sgn}(\theta)=(-1)^{kl}である。

定義から

(β∧α)(v1,…,vN)=1l! k!∑σ∈SNsgn⁡(σ) β(vσ(1),…,vσ(l)) α(vσ(l+1),…,vσ(N))(\beta\wedge\alpha)(v_1,\dots,v_N) =\frac{1}{l!\,k!}\sum_{\sigma\in S_N}\operatorname{sgn}(\sigma)\, \beta\bigl(v_{\sigma(1)},\dots,v_{\sigma(l)}\bigr)\, \alpha\bigl(v_{\sigma(l+1)},\dots,v_{\sigma(N)}\bigr)

である。σ=μ∘θ\sigma=\mu\circ\thetaと置くと、σ\sigmaがSNS_Nを一巡するときμ\muも一巡する。1≤i≤l1\le i\le lに対しσ(i)=μ(θ(i))=μ(k+i)\sigma(i)=\mu(\theta(i))=\mu(k+i)、1≤j≤k1\le j\le kに対しσ(l+j)=μ(j)\sigma(l+j)=\mu(j)であるから、被加数は

sgn⁡(μ)sgn⁡(θ) β(vμ(k+1),…,vμ(N)) α(vμ(1),…,vμ(k))\operatorname{sgn}(\mu)\operatorname{sgn}(\theta)\, \beta\bigl(v_{\mu(k+1)},\dots,v_{\mu(N)}\bigr)\, \alpha\bigl(v_{\mu(1)},\dots,v_{\mu(k)}\bigr)

になる。α\alphaとβ\betaの値は実数であるから積の順序を入れ替えることができ、μ\muにわたる和と係数1/(k! l!)1/(k!\,l!)を合わせるとsgn⁡(θ) (α∧β)(v1,…,vN)\operatorname{sgn}(\theta)\,(\alpha\wedge\beta)(v_1,\dots,v_N)を得る。したがってβ∧α=(−1)klα∧β\beta\wedge\alpha=(-1)^{kl}\alpha\wedge\betaであり、両辺に(−1)kl(-1)^{kl}を掛けると表示した等式になる。

微分形式についての主張は、外積が各点ごとに定まっていることから従う。p∈Mp\in Mごとにαp∈Alt⁡k(TpM)\alpha_p\in\operatorname{Alt}^k(T_pM)、βp∈Alt⁡l(TpM)\beta_p\in\operatorname{Alt}^l(T_pM)、γp∈Alt⁡m(TpM)\gamma_p\in\operatorname{Alt}^m(T_pM)へ上の二つの等式を適用すればよい。C∞(M)C^\infty(M)双線形性についても、(fα)p=f(p) αp(f\alpha)_p=f(p)\,\alpha_pであることと命題 3.2の双線形性を各点で用いればよい。▨

系 3.6.k≥1k\ge 1とし、α1,…,αk∈V∨=Alt⁡1(V)\alpha^1,\dots,\alpha^k\in V^\vee=\operatorname{Alt}^1(V)とする。kk個の因子の外積は括弧の付け方に依らず定まり、

(α1∧⋯∧αk)(v1,…,vk)=∑σ∈Sksgn⁡(σ)∏i=1kαi(vσ(i))=det⁡(αi(vj))i,j=1k(\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k)(v_1,\dots,v_k) =\sum_{\sigma\in S_k}\operatorname{sgn}(\sigma)\prod_{i=1}^{k}\alpha^i\bigl(v_{\sigma(i)}\bigr) =\det\bigl(\alpha^i(v_j)\bigr)_{i,j=1}^{k}

が成り立つ。とくにα1,…,αk\alpha^1,\dots,\alpha^kの順序を入れ替えると符号が変わり、二つが等しければ外積は00である。

証明.定理 3.5の結合性により、kk個の因子の外積は括弧の付け方に依らない。命題 3.4をr=kr=k、k1=⋯=kk=1k_1=\cdots=k_k=1に適用すると、Pk(α1,…,αk)P_k(\alpha^1,\dots,\alpha^k)は左から順に括弧を付けた外積に等しく、その表示式の係数は1/(1!⋯1!)=11/(1!\cdots 1!)=1である。区画KsK_sは一点集合{s}\{s\}であるから、被加数はsgn⁡(σ)∏iαi(vσ(i))\operatorname{sgn}(\sigma)\prod_i\alpha^i(v_{\sigma(i)})である。これは行列(αi(vj))(\alpha^i(v_j))の行列式の、置換にわたる展開そのものである。

順序の入れ替えについては、行列の行を入れ替えると行列式の符号が変わることから従う。二つの因子が等しければ二つの行が等しく、行列式は00である。▨

命題 3.7.k,l≥1k,l\ge 1とし、VVをnn次元とする。ξ∈⋀k(V∨)\xi\in\bigwedge^k(V^\vee)、η∈⋀l(V∨)\eta\in\bigwedge^l(V^\vee)に対し

ΨV(ξ∧η)=ΨV(ξ)∧ΨV(η)\Psi_V(\xi\wedge\eta)=\Psi_V(\xi)\wedge\Psi_V(\eta)

が成り立つ。左辺の∧\wedgeは外積代数⋀(V∨)\bigwedge(V^\vee)の積(§E3.14 定義 3.1)であり、右辺の∧\wedgeは定義 3.1の外積である。ここで⋀k(V∨)\bigwedge^k(V^\vee)を外積代数⋀(V∨)\bigwedge(V^\vee)の次数kkの部分と同一視している。この同一視は§E3.14 命題 3.2による。

証明.§E3.14 命題 3.2により、外積代数⋀(V∨)\bigwedge(V^\vee)の次数kkの部分は§E3.14 定義 1.1の⋀k(V∨)\bigwedge^k(V^\vee)に一致し、外積代数の積は純外積を純外積へ写す。以下ではこの一致のもとで両者を同じ記号で書く。

両辺はξ\xiとη\etaのそれぞれについて線形であり、§E3.14 定理 2.1により⋀k(V∨)\bigwedge^k(V^\vee)は純外積α1∧⋯∧αk\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k(αi∈V∨\alpha^i\in V^\vee)が生成するから、ξ=α1∧⋯∧αk\xi=\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k、η=αk+1∧⋯∧αk+l\eta=\alpha^{k+1}\wedge\cdots\wedge\alpha^{k+l}の場合を確かめれば足りる。

外積代数の積ではξ∧η=α1∧⋯∧αk+l\xi\wedge\eta=\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^{k+l}である。定理 1.4により

ΨV(ξ∧η)(v1,…,vk+l)=det⁡(αi(vj))i,j=1k+l\Psi_V(\xi\wedge\eta)(v_1,\dots,v_{k+l})=\det\bigl(\alpha^i(v_j)\bigr)_{i,j=1}^{k+l}

である。一方、k=1k=1の場合のΨV\Psi_Vは恒等写像であるからΨV(αi)=αi\Psi_V(\alpha^i)=\alpha^iであり、定理 1.4と系 3.6を比べると

ΨV(ξ)=α1∧⋯∧αk,ΨV(η)=αk+1∧⋯∧αk+l\Psi_V(\xi)=\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^k,\qquad \Psi_V(\eta)=\alpha^{k+1}\wedge\cdots\wedge\alpha^{k+l}

である(右辺は定義 3.1の外積)。結合性からこの二つの外積はα1∧⋯∧αk+l\alpha^1\wedge\cdots\wedge\alpha^{k+l}に等しく、ふたたび系 3.6により、その値はdet⁡(αi(vj))i,j=1k+l\det(\alpha^i(v_j))_{i,j=1}^{k+l}である。両辺が一致する。▨

命題 3.7によって、ΛkT∗M\Lambda^kT^*Mの切断としての読み方と交代テンソル場としての読み方とで、外積が同じ対象を与える。したがって定義 3.1が微分形式に対して定めた各点ごとの外積は、外冪束のファイバーの外積代数の積と一致し、

(α∧β)(p)=α(p)∧β(p)∈⋀k+l(Tp∗M)(\alpha\wedge\beta)(p)=\alpha(p)\wedge\beta(p)\in\textstyle\bigwedge^{k+l}(T^*_pM)

と書くことができる。α∧β\alpha\wedge\betaがC∞C^\infty切断であることを確かめる。チャート上でα=∑IαI dxI\alpha=\sum_I\alpha_I\,dx^I、β=∑JβJ dxJ\beta=\sum_J\beta_J\,dx^Jと表すと、α∧β=∑I,JαIβJ dxI∧dxJ\alpha\wedge\beta=\sum_{I,J}\alpha_I\beta_J\,dx^I\wedge dx^Jであり、系 3.6によりdxI∧dxJdx^I\wedge dx^JはIIとJJが共通の添字を持てば00、持たなければ符号を付けた基底元である。したがってα∧β\alpha\wedge\betaの成分はαI\alpha_IとβJ\beta_Jの有限個の積の和であり、命題 2.2によりα∧β∈Ωk+l(M)\alpha\wedge\beta\in\Omega^{k+l}(M)である。結合性、次数付き交換性、およびC∞(M)C^\infty(M)双線形性は定理 3.5が述べている。

例 3.8 (偶数次の形式は自分自身との外積が消えるとは限らない).V=R4V=\mathbb{R}^4の標準基底の双対基底をe1,e2,e3,e4e^1,e^2,e^3,e^4とし、α=e1∧e2+e3∧e4∈Alt⁡2(V)\alpha=e^1\wedge e^2+e^3\wedge e^4\in\operatorname{Alt}^2(V)と置く。双線形性から

α∧α=e1∧e2∧e1∧e2+e1∧e2∧e3∧e4+e3∧e4∧e1∧e2+e3∧e4∧e3∧e4\alpha\wedge\alpha=e^1\wedge e^2\wedge e^1\wedge e^2+e^1\wedge e^2\wedge e^3\wedge e^4 +e^3\wedge e^4\wedge e^1\wedge e^2+e^3\wedge e^4\wedge e^3\wedge e^4

である。第一項と第四項は同じ因子を二つ含むので系 3.6により00である。第三項は次数付き交換性から(−1)2⋅2e1∧e2∧e3∧e4=e1∧e2∧e3∧e4(-1)^{2\cdot 2}e^1\wedge e^2\wedge e^3\wedge e^4=e^1\wedge e^2\wedge e^3\wedge e^4に等しい。したがって

α∧α=2 e1∧e2∧e3∧e4≠0\alpha\wedge\alpha=2\,e^1\wedge e^2\wedge e^3\wedge e^4\ne 0

である。次数付き交換性はα∧α=(−1)2⋅2α∧α\alpha\wedge\alpha=(-1)^{2\cdot 2}\alpha\wedge\alphaを与えるだけであり、次数が偶数のときは何も帰結しない。次数kkが奇数の場合にはα∧α=−α∧α\alpha\wedge\alpha=-\alpha\wedge\alphaとなるのでα∧α=0\alpha\wedge\alpha=0である。

4 座標表示と成分の変換則

命題 4.1.k≥1k\ge 1とし、(U,φ=(x1,…,xn))(U,\varphi=(x^1,\dots,x^n))をMMのチャートとする。増加添字I=(i1<⋯<ik)I=(i_1<\cdots<i_k)とJ=(j1<⋯<jk)J=(j_1<\cdots<j_k)に対して

dxI(∂∂xj1,…,∂∂xjk)={1(I=J),0(I≠J)dx^I\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{j_1}},\dots,\frac{\partial}{\partial x^{j_k}}\Bigr) =\begin{cases}1&(I=J),\\ 0&(I\ne J)\end{cases}

が成り立つ。したがってω∈Ωk(M)\omega\in\Omega^k(M)のUUへの制限は

ω∣U=∑1≤i1<⋯<ik≤nωi1⋯ik dxi1∧⋯∧dxik,ωi1⋯ik=ω(∂∂xi1,…,∂∂xik)\omega|_U=\sum_{1\le i_1<\cdots<i_k\le n}\omega_{i_1\cdots i_k}\,dx^{i_1}\wedge\cdots\wedge dx^{i_k}, \qquad \omega_{i_1\cdots i_k}=\omega\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{i_1}},\dots,\frac{\partial}{\partial x^{i_k}}\Bigr)

と一意に表される。ここで左辺の係数は命題 2.2の成分であり、右辺の等式はその成分が座標基底におけるωp\omega_pの値に一致することを述べている。各ωi1⋯ik\omega_{i_1\cdots i_k}はUU上のC∞C^\infty関数である。

証明.命題 3.7により、交代形式として読んだdxIdx^Iは11形式dxi1,…,dxikdx^{i_1},\dots,dx^{i_k}の定義 3.1の意味の外積に等しい。よって系 3.6により

dxI(∂∂xj1,…,∂∂xjk)=det⁡(δjbia)a,b=1kdx^I\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{j_1}},\dots,\frac{\partial}{\partial x^{j_k}}\Bigr) =\det\bigl(\delta^{i_a}_{j_b}\bigr)_{a,b=1}^{k}

である。I=JI=Jならばこの行列は単位行列であり値は11である。I≠JI\ne JならばIIに属してJJに属さない添字iai_aがあり、第aa行が零ベクトルなので値は00である。

{dxI∣p}\{dx^I|_p\}は⋀k(Tp∗M)\bigwedge^k(T^*_pM)の基底であるから、ω(p)\omega(p)はその一次結合として一意に表される。その係数をωI(p)\omega_I(p)と書くと、上の直交性から

ωp(∂∂xi1∣p,…,∂∂xik∣p)=∑JωJ(p) dxJ∣p(∂∂xi1∣p,… )=ωI(p)\omega_p\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{i_1}}\Big|_p,\dots,\frac{\partial}{\partial x^{i_k}}\Big|_p\Bigr) =\sum_{J}\omega_J(p)\,dx^J|_p\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{i_1}}\Big|_p,\dots\Bigr)=\omega_I(p)

である。係数がC∞C^\inftyであることは命題 2.2による。▨

命題 4.2.(U,φ=(x1,…,xn))(U,\varphi=(x^1,\dots,x^n))と(V,ψ=(y1,…,yn))(V,\psi=(y^1,\dots,y^n))をMMの二つのチャートとし、U∩V≠∅U\cap V\ne\varnothingとする。k≥1k\ge 1とし、ω∈Ωk(M)\omega\in\Omega^k(M)のU∩VU\cap V上の二通りの座標表示を

ω=∑1≤i1<⋯<ik≤nωi1⋯ik dxi1∧⋯∧dxik=∑1≤a1<⋯<ak≤nω~a1⋯ak dya1∧⋯∧dyak\omega=\sum_{1\le i_1<\cdots<i_k\le n}\omega_{i_1\cdots i_k}\,dx^{i_1}\wedge\cdots\wedge dx^{i_k} =\sum_{1\le a_1<\cdots<a_k\le n}\widetilde\omega_{a_1\cdots a_k}\,dy^{a_1}\wedge\cdots\wedge dy^{a_k}

とする。このときU∩VU\cap Vの上で

ωi1⋯ik=∑1≤a1<⋯<ak≤nω~a1⋯ak det⁡ ⁣(∂yar∂xis)r,s=1k\omega_{i_1\cdots i_k} =\sum_{1\le a_1<\cdots<a_k\le n}\widetilde\omega_{a_1\cdots a_k}\, \det\!\left(\frac{\partial y^{a_r}}{\partial x^{i_s}}\right)_{r,s=1}^{k}

が成り立つ。ここで∂ya/∂xi\partial y^a/\partial x^iは座標変換ψ∘φ−1\psi\circ\varphi^{-1}の Jacobi 行列の成分である。

証明.11形式については、dyady^aを座標基底へ適用すると

dya(∂∂xi)=∂∂xi(ya)=∂ya∂xidy^a\Bigl(\frac{\partial}{\partial x^i}\Bigr)=\frac{\partial}{\partial x^i}(y^a)=\frac{\partial y^a}{\partial x^i}

である。第一の等号はdya(v)=v(ya)dy^a(v)=v(y^a)という表示、第二の等号は座標基底の定義(§E17.3 定理 3.3)による。

第二の表示を(∂/∂xi1,…,∂/∂xik)(\partial/\partial x^{i_1},\dots,\partial/\partial x^{i_k})へ適用する。系 3.6により

(dya1∧⋯∧dyak)(∂∂xi1,…,∂∂xik)=det⁡ ⁣(∂yar∂xis)r,s=1k\bigl(dy^{a_1}\wedge\cdots\wedge dy^{a_k}\bigr) \Bigl(\frac{\partial}{\partial x^{i_1}},\dots,\frac{\partial}{\partial x^{i_k}}\Bigr) =\det\!\left(\frac{\partial y^{a_r}}{\partial x^{i_s}}\right)_{r,s=1}^{k}

であるから、値は表示した和になる。一方、第一の表示を同じ引数へ適用すると命題 4.1によりωi1⋯ik\omega_{i_1\cdots i_k}を得る。両者は同じ形式の同じ点における同じ引数での値であるから一致する。▨

系 4.3.k=nk=nとすると、増加添字は(1,2,…,n)(1,2,\dots,n)ただ一つである。ω=ω1⋯n dx1∧⋯∧dxn=ω~1⋯n dy1∧⋯∧dyn\omega=\omega_{1\cdots n}\,dx^1\wedge\cdots\wedge dx^n=\widetilde\omega_{1\cdots n}\,dy^1\wedge\cdots\wedge dy^nと表すとき、U∩VU\cap Vの上で

ω1⋯n=ω~1⋯n det⁡ ⁣(∂ya∂xi)a,i=1n\omega_{1\cdots n}=\widetilde\omega_{1\cdots n}\,\det\!\left(\frac{\partial y^{a}}{\partial x^{i}}\right)_{a,i=1}^{n}

が成り立つ。すなわち最高次形式の成分は、座標変換の Jacobi 行列式の倍になる。

証明.命題 4.2でk=nk=nと置くと和が一項になる。▨

例 4.4 (平面の極座標型の座標変換における成分).W={(u,v)∈R2:u>0, 0<v<2π}W=\{(u,v)\in\mathbb{R}^2:u>0,\ 0<v<2\pi\}の上でx=ucos⁡vx=u\cos v、y=usin⁡vy=u\sin vと置くと、(u,v)↦(x,y)(u,v)\mapsto(x,y)はWWからR2∖{(s,0):s≥0}\mathbb{R}^2\setminus\{(s,0):s\ge 0\}へのC∞C^\infty微分同相であり、(u,v)(u,v)と(x,y)(x,y)はこの開集合上の二つの座標である。Jacobi 行列は

(∂x∂u∂x∂v∂y∂u∂y∂v)=(cos⁡v−usin⁡vsin⁡vucos⁡v)\begin{pmatrix}\dfrac{\partial x}{\partial u}&\dfrac{\partial x}{\partial v}\\[6pt] \dfrac{\partial y}{\partial u}&\dfrac{\partial y}{\partial v}\end{pmatrix} =\begin{pmatrix}\cos v&-u\sin v\\ \sin v&u\cos v\end{pmatrix}

である。ω=dx∧dy\omega=dx\wedge dyを(u,v)(u,v)座標で表すと、系 4.3により成分は

det⁡(cos⁡v−usin⁡vsin⁡vucos⁡v)=ucos⁡2v+usin⁡2v=u\det\begin{pmatrix}\cos v&-u\sin v\\ \sin v&u\cos v\end{pmatrix} =u\cos^2v+u\sin^2v=u

であり、dx∧dy=u du∧dvdx\wedge dy=u\,du\wedge dvを得る。同じ結果はdx=cos⁡v du−usin⁡v dvdx=\cos v\,du-u\sin v\,dv、dy=sin⁡v du+ucos⁡v dvdy=\sin v\,du+u\cos v\,dvを代入して外積を展開しても得られる。実際、du∧du=dv∧dv=0du\wedge du=dv\wedge dv=0とdv∧du=−du∧dvdv\wedge du=-du\wedge dvから

dx∧dy=(cos⁡v)(ucos⁡v) du∧dv+(−usin⁡v)(sin⁡v) dv∧du=u du∧dvdx\wedge dy=(\cos v)(u\cos v)\,du\wedge dv+(-u\sin v)(\sin v)\,dv\wedge du =u\,du\wedge dv

である。

5 引き戻し

定義 5.1.F:M→NF:M\to NをC∞C^\infty写像、k≥1k\ge 1、ω∈Ωk(N)\omega\in\Omega^k(N)とする。p∈Mp\in Mとv1,…,vk∈TpMv_1,\dots,v_k\in T_pMに対して

(F∗ω)p(v1,…,vk)=ωF(p)(dFp(v1),…,dFp(vk))(F^*\omega)_p(v_1,\dots,v_k)=\omega_{F(p)}\bigl(dF_p(v_1),\dots,dF_p(v_k)\bigr)

と定める。ここでdFp:TpM→TF(p)NdF_p:T_pM\to T_{F(p)}NはFFのppにおける微分であり、接ベクトルを導分として見るとdFp(v)(g)=v(g∘F)dF_p(v)(g)=v(g\circ F)で定まる線形写像である(§E17.3 定理 5.3)。k=0k=0、すなわちg∈Ω0(N)=C∞(N)g\in\Omega^0(N)=C^\infty(N)に対してはF∗g=g∘FF^*g=g\circ Fと定める。

命題 5.2. 上のF∗ωF^*\omegaはMM上のkk次微分形式である。またF∗:Ωk(N)→Ωk(M)F^*:\Omega^k(N)\to\Omega^k(M)はR\mathbb{R}線形であり、g∈C∞(N)g\in C^\infty(N)に対してF∗(gω)=(g∘F) F∗ωF^*(g\omega)=(g\circ F)\,F^*\omegaを満たす。さらにC∞C^\infty写像F:M→NF:M\to N、G:N→PG:N\to Pに対して

(G∘F)∗=F∗∘G∗,(id⁡M)∗=id⁡Ωk(M)(G\circ F)^*=F^*\circ G^*,\qquad (\operatorname{id}_M)^*=\operatorname{id}_{\Omega^k(M)}

が成り立つ。

証明. 各点で(F∗ω)p(F^*\omega)_pがkk重線形であることはdFpdF_pの線形性から、交代的であることはωF(p)\omega_{F(p)}の交代性から従う。滑らかさは、共変テンソル場の引き戻しに関する§E17.4 定理 6.1の (i) による。R\mathbb{R}線形性と関数倍に関する等式は、定義式がω\omegaについて線形であり、ωF(p)\omega_{F(p)}の係数g(F(p))g(F(p))が定義式の外へ出ることから従う。

合成については、§E17.3 定理 5.3によりd(G∘F)p=dGF(p)∘dFpd(G\circ F)_p=dG_{F(p)}\circ dF_pであるから

((G∘F)∗ω)p(v1,…,vk)=ωG(F(p))(dGF(p)dFp(v1),… )=(G∗ω)F(p)(dFp(v1),… )\bigl((G\circ F)^*\omega\bigr)_p(v_1,\dots,v_k) =\omega_{G(F(p))}\bigl(dG_{F(p)}dF_p(v_1),\dots\bigr) =(G^*\omega)_{F(p)}\bigl(dF_p(v_1),\dots\bigr)

であり、最後の式は(F∗(G∗ω))p(v1,…,vk)\bigl(F^*(G^*\omega)\bigr)_p(v_1,\dots,v_k)である。d(id⁡M)p=id⁡TpMd(\operatorname{id}_M)_p=\operatorname{id}_{T_pM}(§E17.3 定理 5.3)から恒等写像の場合が従う。k=0k=0の場合はいずれも関数の合成の結合性である。▨

定理 5.3.F:M→NF:M\to NをC∞C^\infty写像、α∈Ωk(N)\alpha\in\Omega^k(N)、β∈Ωl(N)\beta\in\Omega^l(N)とする。このとき

F∗(α∧β)=F∗α∧F∗βF^*(\alpha\wedge\beta)=F^*\alpha\wedge F^*\beta

が成り立つ。

証明.k=0k=0またはl=0l=0のときは外積が関数倍であり、主張は命題 5.2のF∗(gω)=(g∘F)F∗ωF^*(g\omega)=(g\circ F)F^*\omegaである。以下k,l≥1k,l\ge 1とする。

p∈Mp\in Mとv1,…,vk+l∈TpMv_1,\dots,v_{k+l}\in T_pMを取る。定義 5.1と定義 3.1から

(F∗(α∧β))p(v1,…,vk+l)=(α∧β)F(p)(dFpv1,…,dFpvk+l)\bigl(F^*(\alpha\wedge\beta)\bigr)_p(v_1,\dots,v_{k+l}) =(\alpha\wedge\beta)_{F(p)}\bigl(dF_p v_1,\dots,dF_p v_{k+l}\bigr)

であり、右辺は

1k! l!∑σ∈Sk+lsgn⁡(σ) αF(p)(dFpvσ(1),…,dFpvσ(k)) βF(p)(dFpvσ(k+1),…,dFpvσ(k+l))\frac{1}{k!\,l!}\sum_{\sigma\in S_{k+l}}\operatorname{sgn}(\sigma)\, \alpha_{F(p)}\bigl(dF_pv_{\sigma(1)},\dots,dF_pv_{\sigma(k)}\bigr)\, \beta_{F(p)}\bigl(dF_pv_{\sigma(k+1)},\dots,dF_pv_{\sigma(k+l)}\bigr)

に等しい。各因子はふたたび定義 5.1により

αF(p)(dFpvσ(1),…,dFpvσ(k))=(F∗α)p(vσ(1),…,vσ(k))\alpha_{F(p)}\bigl(dF_pv_{\sigma(1)},\dots,dF_pv_{\sigma(k)}\bigr)=(F^*\alpha)_p\bigl(v_{\sigma(1)},\dots,v_{\sigma(k)}\bigr)

と書き直され、β\betaについても同様である。したがって上の和は

1k! l!∑σ∈Sk+lsgn⁡(σ) (F∗α)p(vσ(1),…,vσ(k)) (F∗β)p(vσ(k+1),…,vσ(k+l))\frac{1}{k!\,l!}\sum_{\sigma\in S_{k+l}}\operatorname{sgn}(\sigma)\, (F^*\alpha)_p\bigl(v_{\sigma(1)},\dots,v_{\sigma(k)}\bigr)\, (F^*\beta)_p\bigl(v_{\sigma(k+1)},\dots,v_{\sigma(k+l)}\bigr)

に等しく、これは(F∗α∧F∗β)p(v1,…,vk+l)(F^*\alpha\wedge F^*\beta)_p(v_1,\dots,v_{k+l})の定義式である。ppとv1,…,vk+lv_1,\dots,v_{k+l}は任意であったから、二つの形式は一致する。▨

この証明が用いたのは、外積の定義式の各引数へ同じ線形写像dFpdF_pを代入したことだけである。したがって外積の規約を取り替えても同じ証明が通る。

命題 5.4.F:M→NF:M\to NをC∞C^\infty写像とし、(V,ψ=(y1,…,ym))(V,\psi=(y^1,\dots,y^m))をNNのチャート、(U,φ=(x1,…,xn))(U,\varphi=(x^1,\dots,x^n))をMMのチャートでF(U)⊆VF(U)\subseteq Vを満たすものとする。Fa=ya∘FF^a=y^a\circ Fと置くと、UUの上で

F∗(dya)=∑i=1n∂Fa∂xi dxiF^*(dy^a)=\sum_{i=1}^{n}\frac{\partial F^a}{\partial x^i}\,dx^i

であり、ω∣V=∑1≤a1<⋯<ak≤mωa1⋯ak dya1∧⋯∧dyak\omega|_V=\sum_{1\le a_1<\cdots<a_k\le m}\omega_{a_1\cdots a_k}\,dy^{a_1}\wedge\cdots\wedge dy^{a_k}に対して

(F∗ω)∣U=∑1≤a1<⋯<ak≤m(ωa1⋯ak∘F)  F∗(dya1)∧⋯∧F∗(dyak)(F^*\omega)|_U=\sum_{1\le a_1<\cdots<a_k\le m}(\omega_{a_1\cdots a_k}\circ F)\; F^*(dy^{a_1})\wedge\cdots\wedge F^*(dy^{a_k})

が成り立つ。

証明.p∈Up\in Uとv∈TpMv\in T_pMに対して

F∗(dya)p(v)=dya∣F(p)(dFp(v))=dFp(v)(ya)=v(ya∘F)=v(Fa)F^*(dy^a)_p(v)=dy^a|_{F(p)}\bigl(dF_p(v)\bigr)=dF_p(v)(y^a)=v(y^a\circ F)=v(F^a)

である。第二の等号はdya(w)=w(ya)dy^a(w)=w(y^a)という表示、第三の等号は微分の定義による。v=∂/∂xi∣pv=\partial/\partial x^i|_pと置くと右辺は(∂Fa/∂xi)(p)(\partial F^a/\partial x^i)(p)であり、{dxi∣p}\{dx^i|_p\}が双対基底であることから第一の等式を得る。

第二の等式は、F∗F^*がR\mathbb{R}線形であり関数倍と可換であること(命題 5.2)と、定理 5.3をkk個の因子へ繰り返し適用することから従う。▨

例 5.5 (引き戻しが外積と可換であることの検算).M={(u,v)∈R2:u>0}M=\{(u,v)\in\mathbb{R}^2:u>0\}、N=R2N=\mathbb{R}^2、F(u,v)=(ucos⁡v, usin⁡v)F(u,v)=(u\cos v,\ u\sin v)とする。NNの座標を(x,y)(x,y)とする。命題 5.4により

F∗(dx)=cos⁡v du−usin⁡v dv,F∗(dy)=sin⁡v du+ucos⁡v dvF^*(dx)=\cos v\,du-u\sin v\,dv,\qquad F^*(dy)=\sin v\,du+u\cos v\,dv

である。この二つの外積を定義 3.1のk=l=1k=l=1の場合として計算すると

F∗(dx)∧F∗(dy)=((cos⁡v)(ucos⁡v)−(−usin⁡v)(sin⁡v)) du∧dv=u du∧dvF^*(dx)\wedge F^*(dy) =\bigl((\cos v)(u\cos v)-(-u\sin v)(\sin v)\bigr)\,du\wedge dv =u\,du\wedge dv

である。一方F∗(dx∧dy)F^*(dx\wedge dy)を定義から計算する。dF(u,v)dF_{(u,v)}は座標基底を

dF(∂∂u)=cos⁡v∂∂x+sin⁡v∂∂y,dF(∂∂v)=−usin⁡v∂∂x+ucos⁡v∂∂ydF\Bigl(\frac{\partial}{\partial u}\Bigr)=\cos v\frac{\partial}{\partial x}+\sin v\frac{\partial}{\partial y}, \qquad dF\Bigl(\frac{\partial}{\partial v}\Bigr)=-u\sin v\frac{\partial}{\partial x}+u\cos v\frac{\partial}{\partial y}

へ写すので

F∗(dx∧dy)(∂∂u,∂∂v)=(cos⁡v)(ucos⁡v)−(sin⁡v)(−usin⁡v)=uF^*(dx\wedge dy)\Bigl(\frac{\partial}{\partial u},\frac{\partial}{\partial v}\Bigr) =(\cos v)(u\cos v)-(\sin v)(-u\sin v)=u

である。したがってF∗(dx∧dy)=u du∧dvF^*(dx\wedge dy)=u\,du\wedge dvであり、両者は一致する。

例 5.6 (階数が下がる写像による引き戻し).F:R2→R2F:\mathbb{R}^2\to\mathbb{R}^2、F(u,v)=(u,u)F(u,v)=(u,u)とする。F∗(dx)=duF^*(dx)=du、F∗(dy)=duF^*(dy)=duであるから

F∗(dx∧dy)=F∗(dx)∧F∗(dy)=du∧du=0F^*(dx\wedge dy)=F^*(dx)\wedge F^*(dy)=du\wedge du=0

である。引き戻しは単射とは限らず、この例では22次形式の全体が00へ写る。引き戻しの定義はFFが微分同相であることを要求しないので、このような退化が起こる。反変の成分を含むテンソル場については、そもそも微分同相でなければ移すことができない(§E17.4 定理 6.1)。

6 演習

問題 6.1.

  1. 補題 1.3の証明で、Φ\Phiが同型であることを言うために有限次元性をどこで用いたのかを特定する。次元を数えずに全射性を直接示そうとすると、どの段階で議論が止まるのかを述べる。
  2. 命題 3.3の証明では、被加数FFが右剰余類の上で定数であることにα\alphaとβ\betaの交代性を用いた。交代性を仮定しない多重線形形式に対して同じ定義式を書いたとき、この議論のどの段階が成り立たなくなるのかを述べる。
  3. 命題 3.4の第一の等式の証明では、τ\tauをSpS_pからSNS_Nへ延長したときにαr\alpha_rの引数が変わらないことを用いた。この事実がどこで効いているのかを、μ=σ∘τ~\mu=\sigma\circ\widetilde\tauと置いた箇所に即して説明する。
  4. 定理 3.5の次数付き交換性の証明では、sgn⁡(θ)=(−1)kl\operatorname{sgn}(\theta)=(-1)^{kl}を転倒の個数から求めた。k=2k=2、l=3l=3の場合にθ(1),…,θ(5)\theta(1),\dots,\theta(5)を書き下し、転倒の個数が66であることを数え上げて確かめる。
  5. 命題 3.7を用いずにdx1∧dx2dx^1\wedge dx^2と書くと、外積代数の積と定義 3.1の外積のどちらを指すのかが定まらない。この二つが一致することを示す議論の骨格を、純外積が生成することと系 3.6の二点から再構成する。
  6. 命題 4.2をk=1k=1の場合に書き下し、11形式の成分が Jacobi 行列によってどのように変換されるかを述べる。接ベクトルの成分の変換則と比べ、Jacobi 行列とその逆行列のどちらが現れるかを対比する。
  7. 定理 5.3の証明が外積の規約に依存しないことを確かめる。定義式の係数を1/(k! l!)1/(k!\,l!)から別の定数へ取り替えたとき、証明のどの等号も変わらない理由を述べる。

7 境界と次

外積の規約は、以後のすべての記事で本記事のものに固定する。別の規約を採ると、11形式どうしの外積が12\frac12倍になり、外微分の不変表示に1/(k+1)1/(k+1)の因子が現れる。規約を混ぜて用いてはならない。

定理 1.4はVVが有限次元であることを本質的に用いている。無限次元の線形空間に対してはΦ\Phiの全射性が保証されず、交代形式の空間が双対空間の外冪より真に大きくなることがある。本単元は有限次元の多様体だけを扱う。

本記事は微分形式の代数だけを扱い、微分を扱っていない。kk次形式から(k+1)(k+1)次形式を作る外微分は、次数付き Leibniz 則と二回合成すると消えることによって特徴づけられる。その存在と一意性、引き戻しとの可換性、および括弧積による不変表示は「外微分と不変表示」が扱う。

微分形式の積分は最高次形式に対して定義され、そのためには向きが必要である。系 4.3が示す Jacobi 行列式の倍という変換則は、重積分が Jacobi 行列式の絶対値の倍になることと比べたとき、向きを保つ座標変換に限って両者が一致することを意味する。この比較は「向きと多様体上の積分」が扱う。

参考文献

  1. John M. Lee, Introduction to Smooth Manifolds, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics 218, Springer, New York, 2013.交代テンソルと微分形式、および外積の行列式による規約と交代化作用素による規約の比較を参考にした。
  2. Frank W. Warner, Foundations of Differentiable Manifolds and Lie Groups, Graduate Texts in Mathematics 94, Springer, 1983, originally published 1971.交代形式の空間と外冪の同一視、および外積の代数的性質の扱いを参考にした。
  3. Loring W. Tu, An Introduction to Manifolds, 2nd ed., Universitext, Springer, New York, 2011.多重線形代数から微分形式へ移る際の、増加添字による座標表示の書き方を参考にした。
  4. Michael Spivak, Calculus on Manifolds: A Modern Approach to Classical Theorems of Advanced Calculus, CRC Press, 2018, originally published 1965.外積の行列式による規約と交代化作用素による規約の係数の差を参考にした。

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