§C4.14断面を追う立体の体積

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回転体の体積を求めるとき、断面の形を決める作業はほとんどありません。回転軸に垂直な平面による断面は、軸上に中心をもつ円板または円環であると決まっているからです。回転体でない立体では、この部分が計算の中心になります。どの向きに切るかを決め、その向きの各断面がどのような図形であるかを不等式から読み取り、面積を高さの式として書き表すところまでが本論であり、積分の計算はそのあとに続きます。

本記事は、二つの円柱の共通部分を主な題材として、断面の形を決める手順を扱います。この立体は、円柱の共通部分でありながら、二つの軸の両方に垂直な平面で切ると断面が正方形になります。あわせて、断面の形が高さによって変わり、範囲を分けて面積を求めることになる立体を扱います。断面積を積分して体積を求めるという立式の型そのものは「微積分」が扱い、本記事はそれを用います。

1 断面積を積分する立式

はじめに、本記事が出発点とする立式を確かめます。

公式 1.1 (断面積の積分による体積). 立体KKがa≤z≤ba \le z \le bの範囲に含まれ、a≤z≤ba \le z \le bを満たす各zzについて、その高さでzz軸に垂直な平面によってKKを切った断面の面積をS(z)S(z)とする。SSが[a,b][a,b]で連続であるとき、KKの体積VVは

V=∫abS(z) dzV = \int_a^b S(z)\,dz

である。

証明. 区間[a,b][a,b]をnn等分し、分点をa=z0<z1<⋯<zn=ba = z_0 < z_1 < \cdots < z_n = b、幅をΔz=b−an\Delta z = \dfrac{b-a}{n}とします。KKのうちzi−1≤z≤ziz_{i-1} \le z \le z_iを満たす部分の体積をViV_iとするとV=∑i=1nViV = \sum_{i=1}^n V_iです。SSは[zi−1,zi][z_{i-1},z_i]で連続なので、そこで最小値mim_iと最大値MiM_iをとります。この部分は、底面積mim_i、高さΔz\Delta zの柱体の体積以上、底面積MiM_i、高さΔz\Delta zの柱体の体積以下なので

miΔz≤Vi≤MiΔzm_i \Delta z \le V_i \le M_i \Delta z

です。iiについて足し合わせると、左辺と右辺はいずれもSSについての区分求積の和になります。SSは[a,b][a,b]で連続なので、n→∞n \to \inftyのとき両辺はともに∫abS(z) dz\displaystyle\int_a^b S(z)\,dzへ収束し、はさみうちの原理によりVVはこの値に等しくなります。▨

注意 1.2 (立体の体積についての厳密な扱い). 本記事は、立体に体積が定まることと、体積が部分の和になること、および断面の面積の大小がその部分の体積の大小を与えることを認めて計算する。これらを体積の定義にさかのぼって正当化するのは「ε-論法と基礎解析」である。

一つの立体に対して、切る向きは一通りではありません。向きを変えると断面の形が変わり、面積を式で書き表す手数も、そのあとの積分の手数も変わります。

2 二つの円柱の共通部分

半径が等しく、軸が直交して交わる二つの円柱をとります。座標を次のように定めます。

A={(x,y,z)∣y2+z2≤a2},B={(x,y,z)∣x2+z2≤a2}A = \{(x,y,z) \mid y^2+z^2 \le a^2\}, \qquad B = \{(x,y,z) \mid x^2+z^2 \le a^2\}

ここでa>0a > 0です。AAはxx軸を軸とする半径aaの円柱、BBはyy軸を軸とする半径aaの円柱で、二つの軸は原点で直交します。K=A∩BK = A \cap Bと置きます。KKは、∣x∣≤a|x| \le a、∣y∣≤a|y| \le a、∣z∣≤a|z| \le aを満たすので有界です。

KKを切る向きとして、二つの軸のどちらにも垂直な向き、すなわちzz軸に垂直な平面をとります。

定理 2.1 (二つの軸に垂直な平面による断面).∣z∣≤a|z| \le aとする。その高さでzz軸に垂直な平面によるKKの断面は、1辺の長さが2a2−z22\sqrt{a^2-z^2}の正方形である。∣z∣>a|z| > aのとき、この平面はKKと共有点をもたない。

証明. 点(x,y,z)(x,y,z)がKKに属することは、y2+z2≤a2y^2+z^2 \le a^2かつx2+z2≤a2x^2+z^2 \le a^2、すなわち

y2≤a2−z2かつx2≤a2−z2y^2 \le a^2-z^2 \quad \text{かつ} \quad x^2 \le a^2-z^2

と同値です。∣z∣>a|z| > aのときはa2−z2<0a^2-z^2 < 0となり、この二つを満たすxx、yyはありません。∣z∣≤a|z| \le aのときはa2−z2\sqrt{a^2-z^2}が定まり、上の二つは

∣x∣≤a2−z2かつ∣y∣≤a2−z2|x| \le \sqrt{a^2-z^2} \quad \text{かつ} \quad |y| \le \sqrt{a^2-z^2}

と書き直されます。これは、xyxy平面上で中心が(0,0)(0,0)、辺が座標軸に平行な、1辺の長さ2a2−z22\sqrt{a^2-z^2}の正方形です。▨

二つの円柱の共通部分でありながら、この向きの断面は円板ではなく正方形です。KKは回転体ではありません。断面が正方形であることは、xxについての条件とyyについての条件がどちらもzzだけで定まり、互いに独立であることから出ています。

例 2.2 (二つの円柱の共通部分の体積).定理 2.1により、∣z∣≤a|z| \le aにおける断面積は

S(z)=(2a2−z2)2=4(a2−z2)S(z) = \left(2\sqrt{a^2-z^2}\right)^2 = 4(a^2-z^2)

です。SSは[−a,a][-a,a]で連続なので公式 1.1を用いることができ、

V=∫−aa4(a2−z2) dz=4[a2z−z33]−aa=4(2a3−2a33)=163a3V = \int_{-a}^{a} 4(a^2-z^2)\,dz = 4\left[a^2 z - \frac{z^3}{3}\right]_{-a}^{a} = 4\left(2a^3 - \frac{2a^3}{3}\right) = \frac{16}{3}a^3

となります。半径aaの球の体積43πa3\dfrac{4}{3}\pi a^3と比べると、KKは球を含み、その体積は球の体積の4π\dfrac{4}{\pi}倍です。

同じ立体でも、切る向きを変えると断面の形が変わります。

注意 2.3 (円柱の軸に垂直な平面で切った場合). 同じKKをxx軸に垂直な平面で切ると、∣x∣≤a|x| \le aのとき断面は

{(y,z)∣y2+z2≤a2, ∣z∣≤a2−x2}\{(y,z) \mid y^2+z^2 \le a^2,\ |z| \le \sqrt{a^2-x^2}\}

であり、半径aaの円板から二つの弓形を除いた図形になる。この図形の面積をxxの式として書き表すには逆三角関数が要り、そのあとの積分にも部分積分が要る。得られる体積は同じ163a3\dfrac{16}{3}a^3であるが、zz軸に垂直な平面をとるほうが手数が少ない。切る向きは、断面の面積を式で書き表す手数が少なくなるように選ぶ。

3 断面の形が高さによって変わる場合

上の例では、断面の形は正方形のまま変わらず、1辺の長さだけがzzによって変わりました。次の例では、zzの範囲によって、どちらの条件が断面を決めるかが入れ替わります。

半径22の円柱と、断面が正方形である角柱の共通部分をとります。

C={(x,y,z)∣x2+z2≤4},P={(x,y,z)∣∣x∣≤1, ∣y∣≤1}C = \{(x,y,z) \mid x^2+z^2 \le 4\}, \qquad P = \{(x,y,z) \mid |x| \le 1,\ |y| \le 1\}

CCはyy軸を軸とする半径22の円柱、PPはzz軸を軸とし、1辺の長さが22の正方形を断面とする角柱です。L=C∩PL = C \cap Pと置くと、LLは∣x∣≤1|x| \le 1、∣y∣≤1|y| \le 1、∣z∣≤2|z| \le 2を満たすので有界です。

定理 3.1 (断面の形の場合分け).∣z∣≤2|z| \le 2とする。その高さでzz軸に垂直な平面によるLLの断面は、xyxy平面上の長方形

∣x∣≤min⁡(1, 4−z2),∣y∣≤1|x| \le \min\left(1,\ \sqrt{4-z^2}\right), \qquad |y| \le 1

である。したがって、その面積S(z)S(z)は

S(z)={4(∣z∣≤3)44−z2(3<∣z∣≤2)S(z) = \begin{cases} 4 & (|z| \le \sqrt3) \\[2pt] 4\sqrt{4-z^2} & (\sqrt3 < |z| \le 2) \end{cases}

である。∣z∣>2|z| > 2のとき、この平面はLLと共有点をもたない。

証明. 点(x,y,z)(x,y,z)がLLに属することは、x2≤4−z2x^2 \le 4-z^2かつ∣x∣≤1|x| \le 1かつ∣y∣≤1|y| \le 1と同値です。∣z∣>2|z| > 2のときは4−z2<04-z^2 < 0となり、これを満たすxxはありません。∣z∣≤2|z| \le 2のとき、xxについての二つの条件は∣x∣≤min⁡(1,4−z2)|x| \le \min\left(1, \sqrt{4-z^2}\right)とまとめられ、yyについての条件はこれと独立なので、断面は結論に書いた長方形です。

どちらが小さいかはzzで決まります。4−z2≥1\sqrt{4-z^2} \ge 1は4−z2≥14-z^2 \ge 1、すなわちz2≤3z^2 \le 3と同値です。したがって∣z∣≤3|z| \le \sqrt3のときmin⁡\minの値は11であり、断面は1辺の長さ22の正方形でS(z)=4S(z) = 4です。3<∣z∣≤2\sqrt3 < |z| \le 2のときmin⁡\minの値は4−z2\sqrt{4-z^2}であり、断面は24−z22\sqrt{4-z^2}と22を辺の長さとする長方形でS(z)=44−z2S(z) = 4\sqrt{4-z^2}です。▨

注意 3.2 (場合分けの境目で断面積は連続である).公式 1.1はSSが連続であることを仮定しているので、場合分けの境目で二つの式が同じ値を与えることを確かめる。∣z∣=3|z| = \sqrt3では44−3=44\sqrt{4-3} = 4となり、上の式と下の式は一致する。断面の形は∣z∣=3|z| = \sqrt3を境に正方形から長方形へ変わるが、面積はつながっている。

例 3.3 (円柱と角柱の共通部分の体積).SSは偶関数なので

V=∫−22S(z) dz=2∫02S(z) dz=2(∫034 dz+∫3244−z2 dz)V = \int_{-2}^{2} S(z)\,dz = 2\int_0^2 S(z)\,dz = 2\left(\int_0^{\sqrt3} 4\,dz + \int_{\sqrt3}^{2} 4\sqrt{4-z^2}\,dz\right)

です。第一の積分は434\sqrt3です。第二の積分に現れる∫324−z2 dz\displaystyle\int_{\sqrt3}^{2}\sqrt{4-z^2}\,dzを、z=2sin⁡ϑz = 2\sin\varthetaと置換して計算します。zzが3\sqrt3から22まで動くときϑ\varthetaはπ3\dfrac{\pi}{3}からπ2\dfrac{\pi}{2}まで動き、この範囲でcos⁡ϑ≥0\cos\vartheta \ge 0なので4−z2=2cos⁡ϑ\sqrt{4-z^2} = 2\cos\vartheta、dz=2cos⁡ϑ dϑdz = 2\cos\vartheta\,d\varthetaです。したがって

∫324−z2 dz=∫π/3π/24cos⁡2ϑ dϑ=2∫π/3π/2(1+cos⁡2ϑ) dϑ=2[ϑ+sin⁡2ϑ2]π/3π/2\int_{\sqrt3}^{2}\sqrt{4-z^2}\,dz = \int_{\pi/3}^{\pi/2} 4\cos^2\vartheta\,d\vartheta = 2\int_{\pi/3}^{\pi/2}(1+\cos 2\vartheta)\,d\vartheta = 2\left[\vartheta + \frac{\sin 2\vartheta}{2}\right]_{\pi/3}^{\pi/2}

であり、その値は

2{π2−(π3+34)}=π3−322\left\{\frac{\pi}{2} - \left(\frac{\pi}{3} + \frac{\sqrt3}{4}\right)\right\} = \frac{\pi}{3} - \frac{\sqrt3}{2}

です。以上より

V=2{43+4(π3−32)}=43+83πV = 2\left\{4\sqrt3 + 4\left(\frac{\pi}{3}-\frac{\sqrt3}{2}\right)\right\} = 4\sqrt3 + \frac{8}{3}\pi

となります。

得られた値は約15.3115.31です。LLを含む最小の直方体は∣x∣≤1|x|\le1、∣y∣≤1|y|\le1、∣z∣≤2|z|\le2で定まる体積1616の直方体なので、この値は1616より小さくなければなりません。実際に小さくなっており、桁の取り違えがないことを確かめることができます。

注意 3.4 (本記事が扱う範囲). 本記事は、回転体でない立体について、断面の形を決めて面積を積分するところを扱う。回転軸がyy軸またはそれに平行な直線である回転体を、円筒の側面を積分して求めるのは「円筒殻による回転体の体積」である。回転軸が座標軸に平行でない場合は「斜軸回転体の体積」が扱い、回転体の体積を図形の面積と重心が動いた距離の積として表すのは「パップス・ギュルダンの定理」である。

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