1 有限項の等比の和と剰余に分ける
無限級数へ移る前に、有限項の和と剰余に分けます。剰余を捨てずに残すことが、後で誤差を押さえるための準備になります。
定理 1.1 (有限項の等比の和と剰余).Nを正の整数とする。すべての実数xについて
1+x21=j=0∑N−1(−1)jx2j+1+x2(−1)Nx2Nが成り立つ。
証明.j=0∑N−1(−1)jx2j=j=0∑N−1(−x2)jは、初項1、公比−x2、項数Nの等比数列の和です。すべての実数xについて−x2≤0<1なので公比は1と異なり、和の公式を用いることができて
j=0∑N−1(−x2)j=1−(−x2)1−(−x2)N=1+x21−(−1)Nx2Nです。したがって
1+x21−j=0∑N−1(−1)jx2j=1+x21−(1−(−1)Nx2N)=1+x2(−1)Nx2Nとなり、移項して結論を得ます。▨
2 両辺を積分する
分けた等式を0から1まで積分します。左辺の積分が4πになります。
定理 2.1 (円周率を与える定積分).
∫011+x2dx=4πが成り立つ。
証明.x=tanθと置きます。0≤θ≤4πの範囲ではtanθは単調増加でcosθ=0であり、θ=0のときx=0、θ=4πのときx=1です。dθdx=cos2θ1と1+x2=cos2θ1から
∫011+x2dx=∫0π/4cos2θ⋅cos2θ1dθ=∫0π/41dθ=4πです。▨
右辺の等比の和の部分は、1項ずつ積分することができます。残る剰余の積分に記号を与えます。
定義 2.2 (部分和と剰余の積分).Nを正の整数とし
SN=j=0∑N−12j+1(−1)j=1−31+51−⋯+2N−1(−1)N−1,RN=∫011+x2x2Ndxと置く。SNを第N項までの部分和、RNを剰余の積分という。SNの項数はNであり、最後の項の分母は2N−1である。
定理 2.3 (部分和と剰余による表示).Nを正の整数とする。このとき
4π=SN+(−1)NRNが成り立つ。
証明.定理 1.1の両辺は[0,1]で連続なので、0から1まで積分することができます。左辺の積分は定理 2.1により4πです。右辺の第1項は有限個の項の和なので、項ごとに積分することができて
∫01j=0∑N−1(−1)jx2jdx=j=0∑N−1(−1)j⋅2j+11=SNです。右辺の第2項の積分は(−1)NRNです。▨
3 打ち切りの誤差
定理 2.3は、4πと部分和SNの差が(−1)NRNであることを述べています。誤差の大きさはRN、符号は(−1)Nです。RNの被積分関数は分母が1以上2以下なので、分子だけの積分と、その半分とで挟まれます。
定理 3.1 (剰余の積分の評価).Nを正の整数とする。このとき
2(2N+1)1 < RN < 2N+11が成り立つ。
証明.0<x<1では0<x2<1なので1<1+x2<2であり、x2N>0から
2x2N < 1+x2x2N < x2Nです。三つはいずれも[0,1]で連続であり、区間の内部にあたる0<x<1の全体で真の大小があるので、0から1まで積分した値にも真の大小があります。∫01x2Ndx=2N+11なので、結論を得ます。▨
証明.定理 2.3により4π−SN=(−1)NRNです。RNは正の関数の定積分なのでRN>0であり、4π−SN=RNです。大きさの評価は定理 3.1そのものです。符号については、RN>0なので(−1)NRNの符号は(−1)Nと同じです。▨
証明.公式 3.2により4π−SN<2N+11です。Nを限りなく大きくすると2N+11は0へ近づくので、4π−SNも0へ近づきます。したがって部分和の数列{SN}は4πへ収束します。級数の和は部分和の数列の極限として定めるので、結論を得ます。▨
例 3.4 (項数を変えたときの誤差).4π=0.78539…です。
N=1のときS1=1で、誤差は0.21460…です。公式 3.2の評価は61=0.1666…と31=0.3333…であり、その間に収まっています。N=1は奇数なのでS1>4πです。
N=5のときS5=1−31+51−71+91=0.83492…で、誤差は0.04952…です。評価は221=0.04545…と111=0.09090…です。
N=6のときS6=S5−111=0.74401…で、誤差は0.04138…です。N=6は偶数なのでS6<4πであり、S6<4π<S5となって、連続する二つの部分和が4πを挟みます。