概要

本単元は、大学入試の微積分で題材になりやすい数学的な話題を一つずつ取り上げ、その内容と計算の筋道を最後まで通します。放物線と直線が囲む面積の公式や積分の漸化式から始めて、円筒殻や斜めの軸による回転体の体積、和と積分の比較、多項式による近似、微分方程式と反復へ進みます。本単元は、個別の入試問題ではなく、出題の背景にある数学的な話題そのものを取り上げ、その主張と導出を扱います。

本単元は積み上げの単元ではありません。ここに並ぶ題材は互いの前提にならないので、読者はどの記事からでも読み始めることができます。積分の計算そのものは「微積分」で扱い、本単元は、その計算をまとまった一つの題材に対して最後まで実行します。

この単元のねらい

本単元は、読者が次に掲げる能力を習得することを目標とします。

  • 放物線と直線、および3次関数とその接線について、囲む部分の面積が交点のxx座標だけで定まる形の公式を導き、その公式を用いることができる条件を述べることができます。
  • 部分分数分解、半角の置換、積分区間の反転のうちから、被積分関数の形に応じた方法を選んで定積分を計算することができます。
  • 部分積分によって次数を下げる漸化式を作り、初項を計算して値を定めることができます。
  • 求めたい体積について、断面の円板、円筒の側面、斜めの軸に沿う断面のうちから立式を選び、何を細かく分けて何を足しているのかを述べることができます。
  • 媒介変数表示や極座標で与えられた曲線について、囲む面積と曲線の長さを積分によって求めることができます。
  • 単調性や凸性を用いて和を積分で挟み、和の大きさを対数や積分によって評価することができます。
  • 関数を有限項の多項式で近似し、打ち切りによって生じる誤差の範囲を不等式によって定めることができます。
  • 変数分離形の微分方程式や、接線の条件から得られる関係式を解き、得た解をもとの条件へ戻して確かめることができます。
  • 接線による反復を構成し、誤差が縮む速さと、初期値によっては収束しない場合が生じることを述べることができます。

前提知識

本単元のすべての記事は、「微積分」で扱う定積分の計算、置換積分と部分積分、区分求積法、および求積を用います。この四つを習得している読者は、本単元のどの記事からでも読み始めることができます。

記事によっては、さらに次の内容を用います。加法定理とその派生公式、点と直線、曲線の媒介変数表示、極座標と極方程式は「図形と方程式」で扱います。高次導関数と曲線の凹凸は「関数の性質」で、無限級数は「数列と極限」で、多項式の加減乗除と展開公式、二項定理、高次方程式の性質は「数と式の計算」で扱います。各記事は、その記事が用いる内容の参照先を記事の中で示します。

この単元を貫く4つの方針

本単元の各記事は、次の4点を共通の方針とします。

  1. 一つの題材を一つの記事で完結させます。 主張、導出、具体的な計算を一組にして示します。他の記事を前提とせず、必要な内容はその記事の中で参照先を示します。
  2. 立式の根拠を書いてから積分に入ります。 求積と和の評価では、何を細かく分けて何を足しているのか、積分変数と積分範囲がそれぞれ何に対応するのかを先に示します。公式の形だけを与えて当てはめる書き方はしません。
  3. 近似には誤差の範囲を添えます。 多項式による近似、級数の打ち切り、反復による解の計算では、得られた値だけでなく、その値と真の値との差を押さえる不等式を示します。
  4. 同じ量を二通りに求めて一致を確かめます。 円筒殻による立式と断面の円板による立式、パップス・ギュルダンの定理と直接の積分のように、別の方法で得た値を突き合わせる手順を、計算の一部として扱います。

難易度区分

本単元の記事は、すべて「発展」の一つの区分に属します。計算に必要な準備の量は記事ごとに異なり、定積分の計算だけで最後まで届くものから、加法定理、凹凸の判定、無限級数、極座標を要するものまであります。題材の分かりやすさと、必要な準備の量とは対応しません。主張が単純であっても、導出に多くの準備を必要とする題材があります。

本単元には必修の記事がありません。題材どうしは互いの前提にならないので、読者は関心に応じて選んで読むことができます。以下の並びは、「微積分」の学習順に対応させたものです。多項式の積分の先にある題材から始めて、置換積分と部分積分の先にある題材、区分求積法の先にある題材、求積の先にある題材、多項式による近似の先にある題材、微分方程式の先にある題材、反復による解法の先にある題材へ進みます。読者は、この並びを、その記事が「微積分」のどの内容の先にあるのかを知る目安として用いることができます。

発展

各記事が扱う内容は、次のとおりです。

  • 放物線と直線が囲む面積の公式 — 放物線と直線が囲む部分の面積が、2次の係数と二つの交点のxx座標の差の3乗だけで定まることを、被積分関数を因数分解した形のまま積分して示します。3次関数のグラフが変曲点に関して点対称であることから、接線が切り取る部分の面積についても同じ形の公式を導きます。
  • 有理関数の積分と部分分数分解 — 分母を1次式と2次式の積に分けてから、各項を対数関数と逆正接関数の積分に帰着させて有理関数を積分します。分解の形が分母の因数の重なり方によって変わることを扱います。実数を係数とする多項式が1次式と2次式の積に分解することができることは「数と式の計算」で扱います。
  • 半角の置換による三角関数の積分 — 角の半分の正接を新しい変数と置くと、正弦と余弦と微分がいずれもその変数の有理式になり、三角関数の有理式の積分が有理関数の積分に帰着することを示します。個別の工夫では届かない積分を、この置き換えによって計算することができるようになります。
  • 積分区間の反転による対称化 — 積分の変数を区間の両端の和から引いた形へ置き換えると、値の等しい別の積分が得られることを示します。もとの積分と足し合わせると被積分関数が簡単になることを用いて、原始関数が求まらない定積分の値を決めます。
  • ウォリス積分と積分の漸化式 — 正弦や余弦のべきの定積分について、部分積分によって次数を2つ下げる漸化式を導き、次数の偶奇に応じて値が階乗の積の形に定まることを示します。漸化式を作ってから初項を計算するという手順を、他の形のべきの積分にも当てます。
  • 二項係数を与える積分 —00から11までの区間でxxのべきと1−x1-xのべきの積を積分すると、二項係数の逆数に対応する値になることを、部分積分による漸化式と帰納法によって示します。積分の値が階乗だけで書き表されることと、二項定理から得られる等式との対応を扱います。
  • チェビシェフ多項式 — 角をnn倍したときの余弦が、もとの角の余弦のnn次多項式で表されることを加法定理から示し、次数を1つ上げる漸化式、最高次の係数、零点を求めます。22倍の余弦を新しい変数と置く書き換えも扱い、重みをつけた積分についてこれらの多項式が直交することを置換によって確かめます。
  • 凸性による積分の不等式 — 下に凸な関数について、区間の中点における値が積分の平均以下であり、積分の平均が両端における値の平均以下であることを、接線と弦の位置関係から示します。この不等式を用いて、区分求積の和と積分の大小関係を評価します。
  • 和と積分の比較 — 単調な関数について和を積分で挟む不等式を作り、階乗の対数と調和級数の大きさを対数によって評価します。調和級数と対数の差が単調で有界であることから、差が一つの値へ収束することを示します。階乗の精密な近似は「ε-論法と基礎解析」に委ねます。
  • 円周率の値の評価 —11を1+x21+x^2で割った関数の00から11までの積分が円周率の44分の11になることを用い、被積分関数を多項式で上と下から挟んで円周率の値の範囲を定めます。得られた範囲の狭さが、挟む多項式の次数によってどう変わるかを比べます。
  • バーゼル問題 — 平方数の逆数の総和が、円周率の22乗を66で割った値に等しいことを示します。正接の逆数の22乗について有限個の値の和を与える恒等式を用意し、正弦と正接による不等式で挟んで極限を取る初等的な道筋を扱います。
  • 円筒殻による回転体の体積 —yy軸のまわりの回転体の体積が、半径xx、高さがその点における関数の値である円筒の側面積を積分した形になることを示し、断面の円板による立式と同じ値になることを具体例で確かめます。薄い殻の体積が側面積と厚さの積に近づくことの厳密な扱いは「ε-論法と基礎解析」に委ねます。
  • 斜軸回転体の体積 — 回転軸が座標軸でない場合の回転体について、軸に沿う長さと軸からの距離を三角比によって求め、軸に沿う変数で積分して体積を出します。積分の範囲が、もとの図形を軸の上へ正射影した区間になることを確かめます。
  • 断面を追う立体の体積 — 回転体でない立体について、各高さにおける断面の形を決めてその面積を積分し、体積を求めます。二つの円柱の共通部分のように、断面の形が高さによって変わる場合の場合分けを扱います。
  • パップス・ギュルダンの定理 — 平面図形を、その図形と交わらない直線のまわりに1回転させた立体の体積が、図形の面積と重心が動いた距離の積に等しいことを示します。重心を1次のモーメントによって定義し、この定理を回転体の体積の計算の検算に用います。
  • 媒介変数表示と極座標による面積と長さ — 媒介変数で表された閉曲線について、囲む面積が座標とその導関数の組み合わせの積分で与えられることを示し、サイクロイドやアステロイドの面積と長さを計算します。極座標で与えられた曲線についても、面積と長さを同じ形の積分で求めます。
  • ライプニッツ級数と打ち切りの誤差 —11を1+x21+x^2で割った関数を有限項の等比の和と剰余に分け、両辺を積分して、奇数の逆数の交代和が円周率の44分の11になることを示します。有限項で打ち切ったときの誤差が次の11項で押さえられることを、剰余の積分の評価によって確かめます。
  • テイラー多項式による数値の評価 — テイラー多項式を有限項で打ち切り、残りを不等式で押さえて、自然対数の底や22の対数の数値の範囲を定めます。剰余項の一般的な評価を用いずに、交代する和の性質と積分による評価だけで誤差を押さえる手順を扱います。
  • 単振動と2階の微分方程式 — 第2次導関数がもとの関数の定数倍に符号を変えて等しいという方程式について、三角関数の重ね合わせが解になることを確かめ、速度の22乗と位置の22乗の重みつきの和が一定であることを示します。保存される量から、初期条件によって解が定まることを導きます。一般解の構成は「常微分方程式」に委ねます。
  • ロジスティック方程式 — 変化の速さが現在の量と上限までの余地の積に比例するという方程式を、変数分離と部分分数分解によって解き、 S 字の形をした解を得ます。量が小さいうちは指数関数的に増え、上限に近づくと増加が止まることを、解の式から確かめます。
  • 接線の条件から決まる曲線 — 接線や法線が満たす図形的な条件を、導関数についての関係式へ書き直して曲線を決めます。接線が座標軸から切り取る長さや、接点と原点の位置関係を条件として与えた場合を扱い、変数分離で解いた結果をもとの条件へ戻して確かめます。
  • ニュートン法と収束の速さ — 接線がxx軸と交わる点を次の近似とする反復を作り、平方根を求める反復式がこの形になることを確かめます。誤差がほぼ22乗で縮むことを一次近似によって示し、初期値の取り方によって収束しない場合があることを扱います。誤差の一般的な評価は「数値解析 I」に委ねます。

学習到達点の確認方法

本単元は、記事ごとに次の三点を確かめます。

  • 読者が題材の主張を、仮定と結論に分けて正確に述べることができるかを確かめます。
  • 読者が導出を自分で再構成し、用いた計算の方法と各段階の根拠を示すことができるかを確かめます。
  • 読者が近似と評価を扱う記事について、求めた値がどの範囲にあるのかを不等式によって述べることができるかを確かめます。

本単元は、演習に、積分の値、面積、体積、長さのように答えが一意に定まる計算問題と、立式の根拠を述べる問題を用います。立式を伴う解答については、積分変数、積分範囲、および微小部分が表す量を評価の対象とします。読者が具体例によって確かめた内容は、一般の場合についての証明とは区別して扱います。

確認は記事ごとに完結します。読者は、関心のある記事だけを選んで読むことができ、どの記事から読み始めるかも自分で決めることができます。

前後の単元との関係

  • 微積分 — 同単元は、微積分学の基本定理から求積、多項式による近似、反復による解法までを、互いに積み上がる形で扱います。本単元の記事は互いの前提にならず、同単元で身につけた計算を、独立した一つ一つの題材に対して最後まで実行します。
  • 関数の性質 — 同単元は、微分、増減、高次導関数と曲線の凹凸を扱います。本単元の凸性による積分の不等式は、同単元で定める凹凸の判定を、不等式の仮定を確かめるために用います。
  • 図形と方程式 — 同単元は、加法定理、点と直線、曲線の媒介変数表示、極座標と極方程式を扱います。本単元は、それらの表示で与えられた曲線の面積と長さを求め、加法定理をチェビシェフ多項式と半角の置換に用います。
  • 数列と極限 — 同単元は、無限級数と、部分和の極限として級数の和を定める枠組みを扱います。本単元のバーゼル問題とライプニッツ級数は、その枠組みのもとで級数の値を定めます。
  • 数と式の計算 — 同単元は、多項式の演算、二項定理、高次方程式の性質を扱います。本単元は、部分分数分解の出発点と、積分の値と二項係数との対応にこれらを用います。
  • ε-論法と基礎解析 — 同単元は、リーマン積分の定義と、極限操作の正当化を扱います。本単元が計算として扱った立式と評価を、同単元は定義に基づいて正当化します。階乗の精密な近似も同単元で扱います。
  • 常微分方程式 — 同単元は、微分方程式の解法と、解の存在と一意性を体系的に扱います。本単元は、単振動とロジスティック方程式について、個別の方程式を解いて解の形を確かめるところまでを扱います。
  • 数値解析 I — 同単元は、反復法の収束の速さと誤差の評価を一般の形で扱います。本単元のニュートン法は、平方根を求める場合を具体的に扱います。
  • Fourier 解析と調和解析 — 同単元は、周期関数を三角関数の級数として表す方法を扱います。読者は、本単元で初等的に求めた平方数の逆数の総和を、その級数から従う等式として読み直すことができます。

教育課程上の位置づけと参考年次

本単元の参考年次は高等学校3年です。読者は、「微積分」で積分の計算を習得した時点で、本単元のうち関心のある記事へ進むことができます。

本単元が扱う題材のうち、有理関数の積分、回転体と断面による立体の体積、曲線の長さ、媒介変数表示と極座標による面積は、日本の高等学校学習指導要領(平成30年告示)の「数学III 積分法」で扱う内容から到達することができます。

その他の題材は、各国の課程では扱われません。パップス・ギュルダンの定理、チェビシェフ多項式、バーゼル問題、ライプニッツ級数がこれにあたり、発展的な課外教材、または大学の微積分に関する講義で扱われる場合が多くあります。このため、他の単元と同様の対応表は作りません。

本単元の位置づけは、課程上の要件を満たすことではなく、「微積分」で身につけた積分の計算が、まとまった一つの題材に対して何を導くのかを示すことにあります。