1 図形の重心を1次のモーメントで定める
図形を、x軸に垂直な細い短冊に分けて考えます。位置xにある幅dxの短冊は、下端がg(x)、上端がf(x)の線分を幅dxに広げたもので、その面積は{f(x)−g(x)}dx、その中点の座標は(x, 2f(x)+g(x))です。短冊の面積と、その中点の座標との積を足し合わせた量を、図形のモーメントと呼びます。y軸に関するモーメントは∫abx{f(x)−g(x)}dx、x軸に関するモーメントは
∫ab2f(x)+g(x){f(x)−g(x)}dx=∫ab2{f(x)}2−{g(x)}2dx
です。この量を面積で割ると、座標の平均にあたる点が定まります。
定義 1.1 (上下を二つのグラフではさまれた図形の重心).a<bとし、fとgは[a,b]で連続で、[a,b]のすべてのxについてg(x)≤f(x)とする。
D={(x,y)∣a≤x≤b, g(x)≤y≤f(x)}と置き、Dの面積をS=∫ab{f(x)−g(x)}dxとする。S>0であるとき、
xˉ=S1∫abx{f(x)−g(x)}dx,yˉ=S1∫ab2{f(x)}2−{g(x)}2dxで定まる点(xˉ,yˉ)をDの重心という。SxˉをDのy軸に関する
1次のモーメント、SyˉをDのx軸に関する1次のモーメントという。
この定義が、図形の中心と呼ぶにふさわしい点を与えることを、二つの例で確かめます。
例 1.2 (長方形と直角三角形の重心).p>0、q>0とします。長方形D1={0≤x≤p, 0≤y≤q}についてはf(x)=q、g(x)=0、S=pqなので
xˉ=pq1∫0pxqdx=2p,yˉ=pq1∫0p2q2dx=2qとなり、重心は長方形の中心です。
3点(0,0)、(p,0)、(p,q)を頂点とする直角三角形D2についてはf(x)=pqx、g(x)=0、S=2pqなので
xˉ=pq2∫0px⋅pqxdx=p22⋅3p3=32p,yˉ=pq2∫0p21(pqx)2dx=p3q⋅3p3=3qとなります。これは、3頂点のx座標の平均30+p+pと、y座標の平均30+0+qに一致します。
2 定理と証明
重心を定めると、回転体の体積が面積と重心の位置だけで書き表されます。
定理 2.1 (パップス・ギュルダンの定理).D、S、xˉ、yˉを定義 1.1のとおりとする。
- [a,b]のすべてのxについて0≤g(x)であるとする。このとき、Dをx軸のまわりに
1回転させてできる立体の体積VはV=2πyˉSである。
- 0≤aであるとする。このとき、Dをy軸のまわりに1回転させてできる立体の体積VはV=2πxˉSである。
いずれの仮定も、回転軸がDを横切らないこと、すなわちDが回転軸によって定まる二つの半平面の一方に含まれることを述べている。
証明. 1を示します。仮定0≤g(x)≤f(x)により、xを固定したときにDに属する点のx軸からの距離はg(x)からf(x)まで動くので、x軸に垂直な平面による回転体の断面は、内半径g(x)、外半径f(x)の円環です。したがって
V=π∫ab[{f(x)}2−{g(x)}2]dx=2π∫ab2{f(x)}2−{g(x)}2dxです。右端の積分は定義 1.1によりSyˉに等しいので、V=2πyˉSです。
2を示します。「円筒殻による回転体の体積」の§C4.12 公式 2.1はg=0の場合にあたります。その証明において、各小区間の上にある部分の高さをfの最小値・最大値ではなくf−gの最小値・最大値にとると、同じ議論によって
V=2π∫abx{f(x)−g(x)}dxを得ます。ここで0≤aという仮定は、xがy軸から点までの距離であることを保証するために用いています。右辺の積分は定義 1.1によりSxˉに等しいので、V=2πxˉSです。▨
2πyˉは、重心がx軸のまわりの1回転で描く円の周の長さです。2πxˉについても同様です。したがって定理は、回転体の体積が「図形の面積」と「重心が動いた距離」の積であることを述べています。
3 回転軸が図形を横切ってはならない
仮定を外すと結論は成り立ちません。
4 検算と、重心を求めることへの利用
定理は、体積と重心のうち一方が分かっているときに、もう一方を与えます。二つの向きの使い方を一つずつ示します。
例 4.1 (円環体の体積).0<r<Rとし、Dを円(x−R)2+y2=r2の周と内部とします。f(x)=r2−(x−R)2、g(x)=−f(x)、a=R−r、b=R+rであり、S=πr2です。0<R−r=aなので定理 2.1の2の仮定が成り立ちます。
重心を求めます。u=x−Rと置換すると
Sxˉ=∫R−rR+r2xr2−(x−R)2dx=2R∫−rrr2−u2du+2∫−rrur2−u2duです。第一の積分は半径rの半円板の面積2πr2です。第二の被積分関数は奇関数であり、積分区間が原点について対称なので、その積分は0です。したがってSxˉ=πr2Rであり、xˉ=Rです。円の中心が重心であることが確かめられました。定理により
V=2πR⋅πr2=2π2Rr2です。
この値を、別の立式で検算します。y軸に垂直な平面で切ると、∣y∣≤rのとき断面は外半径R+r2−y2、内半径R−r2−y2の円環です。w=r2−y2と置くと断面積はπ{(R+w)2−(R−w)2}=4πRwなので
V=∫−rr4πRr2−y2dy=4πR⋅2πr2=2π2Rr2となり、同じ値が得られます。
例 4.2 (半円板の重心).a>0とし、D={(x,y)∣x2+y2≤a2, y≥0}とします。f(x)=a2−x2、g(x)=0であり、0≤g(x)なので定理 2.1の1の仮定が成り立ちます(注意 3.2)。S=2πa2です。
Dをx軸のまわりに1回転させてできる立体は半径aの球であり、その体積は34πa3です。定理により34πa3=2πyˉ⋅2πa2なので
yˉ=π2a24πa3/3=3π4aです。定義から直接計算しても
yˉ=πa22∫−aa2a2−x2dx=πa21⋅34a3=3π4aとなり、同じ値が得られます。