§C4.21接線の条件から決まる曲線

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「曲線上のどの点においても、そこでの接線が座標軸から切り取る線分を接点が二等分する」「曲線上のどの点においても、そこでの法線が原点を通る」といった条件は、曲線の形を直接には与えません。しかし、接線と法線の方程式は接点の座標と導関数の値だけで書き表されるので、この種の条件はxx、yy、y′y'の間の関係式へ書き直されます。書き直したものが変数分離形であれば、積分によって曲線が定まります。

本記事は、この書き直しと、書き直したあとの扱いを二つの条件について実行します。手順で注意を要するのは、書き直しと解法のそれぞれが、ある種の点や解を除外することです。書き直すときにはy′≠0y' \ne 0のような条件を使うことがあり、変数分離で両辺を割るときには定数解が消えます。そのため、得られた曲線をもとの図形的な条件へ戻して確かめる作業が要ります。接線と法線の方程式、および直線が座標軸から切り取る長さの計算は「図形と方程式」が、変数分離形の微分方程式を解く手順は「微積分」が扱い、本記事はそれらを用います。

1 接線・法線と、座標軸との交点

はじめに、条件を書き直すときに用いる式を並べます。

公式 1.1 (接線・法線と座標軸との交点).ffを微分可能な関数とし、曲線y=f(x)y=f(x)上の点P(x,y)\mathrm{P}(x,y)(y=f(x)y=f(x))をとる。y′=f′(x)y'=f'(x)と書くと、P\mathrm{P}における接線は、動点の座標を(X,Y)(X,Y)として

Y−y=y′(X−x)Y - y = y'(X-x)

である。この接線とyy軸の交点のYY座標はy−xy′y-xy'である。y′≠0y'\ne0のとき、この接線とxx軸の交点のXX座標はx−yy′x-\dfrac{y}{y'}である。また、y′≠0y'\ne0のときP\mathrm{P}における法線は

Y−y=−1y′(X−x)Y-y = -\frac{1}{y'}(X-x)

である。

証明. 接線の方程式は、点P\mathrm{P}を通り傾きがf′(x)f'(x)である直線の方程式です。X=0X=0を代入するとY=y−xy′Y = y - xy'が得られます。y′≠0y'\ne0のとき、Y=0Y=0を代入すると−y=y′(X−x)-y = y'(X-x)からX=x−yy′X = x-\dfrac{y}{y'}が得られます。法線はP\mathrm{P}を通り接線に垂直な直線なので、y′≠0y'\ne0のとき、その傾きは−1y′-\dfrac{1}{y'}です。▨

y′=0y'=0のとき、接線はxx軸に平行なので、xx軸との交点はありません(接線がxx軸そのものである場合を除きます)。このとき法線はyy軸に平行な直線X=xX=xです。

2 接線が座標軸から切り取る線分を接点が二等分する曲線

定理 2.1 (条件の書き直し).ffを微分可能な関数とし、x>0x>0の範囲でf(x)>0f(x)>0、f′(x)≠0f'(x)\ne0とする。曲線y=f(x)y=f(x)上の点P(x,y)\mathrm{P}(x,y)における接線がxx軸と交わる点をQ\mathrm{Q}、yy軸と交わる点をR\mathrm{R}とする。x>0x>0のすべてのxxについてP\mathrm{P}が線分QR\mathrm{QR}の中点であることは、x>0x>0のすべてのxxについて

y′=−yxy' = -\frac{y}{x}

が成り立つことと同値である。

証明.公式 1.1によりQ(x−yy′, 0)\mathrm{Q}\left(x-\dfrac{y}{y'},\ 0\right)、R(0, y−xy′)\mathrm{R}(0,\ y-xy')です。線分QR\mathrm{QR}の中点は(12(x−yy′), 12(y−xy′))\left(\dfrac12\left(x-\dfrac{y}{y'}\right),\ \dfrac12(y-xy')\right)なので、これがP(x,y)\mathrm{P}(x,y)に等しいことは

x−yy′=2xかつy−xy′=2yx-\frac{y}{y'} = 2x \quad \text{かつ} \quad y-xy' = 2y

と同値です。第一の等式は−yy′=x-\dfrac{y}{y'} = x、すなわちxy′=−yxy' = -yと同値であり、第二の等式は−xy′=y-xy' = y、すなわちxy′=−yxy' = -yと同値です。二つは同じ条件です。x>0x>0なので、これはy′=−yxy' = -\dfrac{y}{x}と同値です。▨

定理 2.2 (条件を満たす曲線).ffをx>0x>0で微分可能とし、x>0x>0でf(x)>0f(x)>0とする。x>0x>0のすべてのxxについてf′(x)=−f(x)xf'(x) = -\dfrac{f(x)}{x}が成り立つことは、正の定数ccが存在してx>0x>0のすべてのxxについてxf(x)=cxf(x)=cが成り立つことと同値である。

証明.f′(x)=−f(x)xf'(x) = -\dfrac{f(x)}{x}とします。f(x)>0f(x)>0なので両辺をf(x)f(x)で割ることができ、

f′(x)f(x)=−1x\frac{f'(x)}{f(x)} = -\frac1x

です。x>0x>0、f(x)>0f(x)>0なので、両辺をxxについて積分すると、ある定数CCについてlog⁡f(x)=−log⁡x+C\log f(x) = -\log x + Cです。両辺の指数をとるとf(x)=eCxf(x) = \dfrac{e^{C}}{x}であり、c=eC>0c = e^{C}>0と置くとxf(x)=cxf(x)=cです。

逆にxf(x)=cxf(x)=c(c>0c>0)とするとf(x)=cxf(x)=\dfrac{c}{x}であり、f′(x)=−cx2=−f(x)xf'(x) = -\dfrac{c}{x^2} = -\dfrac{f(x)}{x}です。▨

得られた曲線をもとの図形的な条件へ戻して確かめます。

例 2.3 (双曲線がもとの条件を満たすこと).c>0c>0とし、x>0x>0でy=cxy=\dfrac{c}{x}とします。y′=−cx2y'=-\dfrac{c}{x^2}であり、x>0x>0ではy>0y>0、y′≠0y'\ne0なので定理 2.1の仮定が満たされます。公式 1.1により、接線とxx軸の交点のXX座標は

x−yy′=x−c/x−c/x2=x+x=2xx - \frac{y}{y'} = x - \frac{c/x}{-c/x^2} = x + x = 2x

であり、接線とyy軸の交点のYY座標は

y−xy′=cx+cx=2yy - xy' = \frac{c}{x} + \frac{c}{x} = 2y

です。Q(2x,0)\mathrm{Q}(2x,0)、R(0,2y)\mathrm{R}(0,2y)の中点は(x,y)(x,y)であり、接点に一致します。

注意 2.4 (微分方程式の解のうち、条件を満たさないもの).定理 2.2の証明では、両辺をf(x)f(x)で割った。この操作はf(x)=0f(x)=0となるxxを除外している。実際、恒等的に00である関数はf′(x)=−f(x)xf'(x) = -\dfrac{f(x)}{x}を満たすので、微分方程式の解である。しかし、この関数のグラフはxx軸そのものであり、各点における接線もxx軸である。この接線はxx軸と交わる1点をもたず、yy軸とは原点で交わるだけなので、線分QR\mathrm{QR}が定まらない。したがって、この解はもとの図形的な条件を満たさない。

微分方程式の解であることと、もとの図形的な条件を満たすことは、同じではない。書き直しの段階でf(x)>0f(x)>0とf′(x)≠0f'(x)\ne0を仮定しているので、その仮定を満たさない解については、もとの条件に戻って判定する。

3 法線が原点を通る曲線

定理 3.1 (条件の書き直し).ffを区間IIで微分可能とし、IIのすべてのxxについてf′(x)≠0f'(x)\ne0とする。曲線y=f(x)y=f(x)上の点P(x,y)\mathrm{P}(x,y)における法線が原点を通ることがIIのすべてのxxについて成り立つことは、IIのすべてのxxについて

y y′=−xy\,y' = -x

が成り立つことと同値である。

証明.公式 1.1により、P\mathrm{P}における法線はY−y=−1y′(X−x)Y-y = -\dfrac{1}{y'}(X-x)です。(X,Y)=(0,0)(X,Y)=(0,0)を代入すると

−y=−1y′(−x)=xy′-y = -\frac{1}{y'}(-x) = \frac{x}{y'}

です。y′≠0y'\ne0なので両辺にy′y'を掛けて−yy′=x-yy' = x、すなわちyy′=−xyy'=-xを得ます。逆にyy′=−xyy'=-xが成り立てば、この計算を逆にたどって、原点が法線上にあることが分かります。▨

定理 3.2 (条件を満たす曲線).ffを区間IIで微分可能とする。IIのすべてのxxについてf(x)f′(x)=−xf(x)f'(x) = -xが成り立つことは、定数ccが存在してIIのすべてのxxについてx2+{f(x)}2=cx^2+\{f(x)\}^2 = cが成り立つことと同値である。

証明.g(x)=x2+{f(x)}2g(x) = x^2+\{f(x)\}^2と置くと、ggは微分可能で

g′(x)=2x+2f(x)f′(x)g'(x) = 2x + 2f(x)f'(x)

です。したがって、IIのすべてのxxについてf(x)f′(x)=−xf(x)f'(x)=-xであることは、IIのすべてのxxについてg′(x)=0g'(x)=0であることと同値です。IIは区間なので、これはggがIIで定数関数であることと同値です。▨

この計算では両辺を割っていないので、割り算によって解が失われることはありません。代わりに、得られた式が曲線を表す条件を確かめる必要があります。

例 3.3 (原点を中心とする円).c>0c>0とし、y=c−x2y = \sqrt{c-x^2}(−c<x<c-\sqrt c < x < \sqrt c)とします。この範囲でy>0y>0であり、

y′=−xc−x2=−xyy' = \frac{-x}{\sqrt{c-x^2}} = -\frac{x}{y}

なのでyy′=−xyy'=-xが成り立ちます。x≠0x\ne0のときy′≠0y'\ne0であり、法線の方程式Y−y=−1y′(X−x)=yx(X−x)Y-y = -\dfrac{1}{y'}(X-x) = \dfrac{y}{x}(X-x)に(X,Y)=(0,0)(X,Y)=(0,0)を代入すると−y=−y-y = -yとなるので、法線は原点を通ります。

x=0x=0のときはy′=0y'=0なので、法線はyy軸に平行な直線X=0X=0、すなわちyy軸そのものであり、やはり原点を通ります。したがって、この曲線は−c<x<c-\sqrt c<x<\sqrt cのすべての点で条件を満たします。

注意 3.4 (曲線がグラフで表されない点).定理 3.1と定理 3.2は、曲線がy=f(x)y=f(x)の形で表され、ffが微分可能であることを仮定している。円x2+y2=cx^2+y^2=cの全体はこの形ではなく、上半分y=c−x2y=\sqrt{c-x^2}と下半分y=−c−x2y=-\sqrt{c-x^2}に分けて扱っている。

x=±cx=\pm\sqrt cの2点では、この二つがつながっており、接線はyy軸に平行でy′y'が定まらない。この2点については、条件をもとの図形の形で確かめる。接線がyy軸に平行なので法線はxx軸であり、原点を通る。したがって、円x2+y2=cx^2+y^2=cはすべての点で条件を満たす。

なお、定理 3.2のccについてはc>0c>0が要る。c=0c=0のときx2+y2=0x^2+y^2=0を満たす点は原点だけであり、c<0c<0のときは満たす点がないので、いずれの場合も曲線を与えない。

4 手順の整理

注意 4.1 (三つの段と、それぞれが除外するもの). 本記事の二つの例に共通する手順は、次の三段である。

  1. 図形的な条件をxx、yy、y′y'の関係式へ書き直す。このとき、接線や法線の式を用いるためにy′≠0y'\ne0などの条件を使うことがある。使った条件を記録しておく。
  2. 関係式を解く。変数分離で両辺を割る操作は、割った式が00になる場合、すなわち定数解を除外する。除外した解を別に確かめる。
  3. 得られた曲線をもとの図形的な条件へ戻して確かめる。段1で除外した点と、段2で除外した解について、条件を満たすかどうかを判定する。

段3を省くと、二種類の誤りが残る。一つは、微分方程式の解でありながら図形的な条件を満たさない曲線を答えに含める誤り(注意 2.4)である。もう一つは、条件を満たすのに書き直しの仮定から外れた点を落とす誤り(注意 3.4)である。

注意 4.2 (本記事が扱う範囲). 本記事は、図形的な条件が変数分離形の微分方程式へ書き直される場合を扱う。書き直した結果が変数分離形にならない場合の解法と、初期条件に対する解の一意性は「常微分方程式」が扱う。本単元で変数分離を用いるもう一つの記事は「ロジスティック方程式」である。

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