§C4.20ロジスティック方程式

最終更新

変化の速さが現在の量に比例するという条件y′=kyy' = kyからは、指数関数による増加が得られます。この解はいくらでも大きくなるので、増える量に上限がある場合を表すことはできません。上限KKを設け、変化の速さが「現在の量yy」と「上限までの余地1−yK1-\dfrac{y}{K}」の積に比例するとした条件が、ロジスティック方程式です。量が小さいうちは余地がほぼ11なのでy′=kyy'=kyに近く、量がKKに近づくと余地が00に近づくので増加が止まります。

本記事は、この方程式を変数分離と部分分数分解によって解き、得られた解がSSの字の形をしていることを、狭義単調性と凹凸によって確かめます。あわせて、両辺をyyとK−yK-yの積で割る操作が、二つの定数解を除外していることを扱います。変数分離形の微分方程式を積分によって解く手順そのものは「微積分」が扱い、部分分数分解の一般論は本単元の「有理関数の積分と部分分数分解」が扱います。

1 方程式と二つの定数解

定義 1.1 (ロジスティック方程式).k>0k>0、K>0K>0とする。区間IIで微分可能な関数yyについての条件

y′(t)=k y(t)(1−y(t)K)(I のすべての t について)y'(t) = k\,y(t)\left(1-\frac{y(t)}{K}\right) \qquad (I \text{ のすべての } t \text{ について})

をロジスティック方程式といい、この条件を満たす関数を、この方程式の解という。

右辺をkKy(K−y)\dfrac{k}{K}y(K-y)と書き直すと、右辺が00になるのはy=0y=0またはy=Ky=Kのときに限ることが読み取れます。この二つの値は、値の変わらない解を与えます。

定理 1.2 (二つの定数解). 実数全体で定義され、恒等的に00である関数と、恒等的にKKである関数は、いずれもロジスティック方程式の解である。

証明.y(t)=0y(t)=0(すべてのttについて)とするとy′(t)=0y'(t)=0であり、右辺もk⋅0⋅(1−0K)=0k\cdot 0\cdot\left(1-\dfrac{0}{K}\right) = 0なので、方程式が成り立ちます。y(t)=Ky(t)=Kとするとy′(t)=0y'(t)=0であり、右辺はk⋅K⋅(1−KK)=0k\cdot K\cdot\left(1-\dfrac{K}{K}\right) = 0なので、やはり方程式が成り立ちます。▨

注意 1.3 (定数解は割り算で消える). 次の節では、方程式の両辺をy(K−y)y(K-y)で割る。この操作は、y(t)=0y(t)=0となるttとy(t)=Ky(t)=Kとなるttを議論から除外する。したがって、割ったあとに得られる式からは二つの定数解が出てこない。定数解を落とさないためには、割る前に別に確かめておく必要がある。この事情は、変数分離形の微分方程式に共通する。

2 変数分離と部分分数分解

以下では、解の値が00とKKの間にある場合を扱います。この場合にはy(K−y)>0y(K-y)>0なので、両辺をy(K−y)y(K-y)で割ることができます。積分するために、まず1y(K−y)\dfrac{1}{y(K-y)}を二つの分数の和へ分けます。

定理 2.1 (部分分数分解).K>0K>0とする。y≠0y \ne 0かつy≠Ky \ne Kを満たすすべての実数yyについて

1y(K−y)=1K(1y+1K−y)\frac{1}{y(K-y)} = \frac{1}{K}\left(\frac1y + \frac{1}{K-y}\right)

が成り立つ。

証明. 右辺を通分すると

1K⋅(K−y)+yy(K−y)=1K⋅Ky(K−y)=1y(K−y)\frac{1}{K}\cdot\frac{(K-y)+y}{y(K-y)} = \frac{1}{K}\cdot\frac{K}{y(K-y)} = \frac{1}{y(K-y)}

となります。▨

定理 2.2 (変数分離による解の形).yyを区間IIでのロジスティック方程式の解とし、IIのすべてのttについて0<y(t)<K0<y(t)<Kとする。このとき、正の定数AAが存在して、IIのすべてのttについて

y(t)=K1+Ae−kty(t) = \frac{K}{1+Ae^{-kt}}

が成り立つ。

証明. 方程式をy′(t)=kKy(t){K−y(t)}y'(t) = \dfrac{k}{K}y(t)\{K-y(t)\}と書き直します。仮定によりy(t)>0y(t)>0、K−y(t)>0K-y(t)>0なので、両辺をy(t){K−y(t)}y(t)\{K-y(t)\}で割ることができ、定理 2.1により

1K(y′(t)y(t)+y′(t)K−y(t))=kK\frac{1}{K}\left(\frac{y'(t)}{y(t)} + \frac{y'(t)}{K-y(t)}\right) = \frac{k}{K}

です。両辺にKKを掛けてttについて積分します。y(t)>0y(t)>0なのでy′(t)y(t)\dfrac{y'(t)}{y(t)}の原始関数の一つはlog⁡y(t)\log y(t)であり、K−y(t)>0K-y(t)>0なのでy′(t)K−y(t)\dfrac{y'(t)}{K-y(t)}の原始関数の一つは−log⁡{K−y(t)}-\log\{K-y(t)\}です。したがって、ある定数ccについて

log⁡y(t)−log⁡{K−y(t)}=kt+c,すなわちlog⁡y(t)K−y(t)=kt+c\log y(t) - \log\{K-y(t)\} = kt + c, \qquad \text{すなわち} \quad \log\frac{y(t)}{K-y(t)} = kt+c

です。両辺の指数をとると、B=ec>0B = e^{c} > 0と置いて

y(t)K−y(t)=Bekt\frac{y(t)}{K-y(t)} = Be^{kt}

となります。この式をy(t)y(t)について解きます。y(t)=Bekt{K−y(t)}y(t) = Be^{kt}\{K-y(t)\}からy(t){1+Bekt}=KBekty(t)\{1+Be^{kt}\} = KBe^{kt}であり、1+Bekt>01+Be^{kt}>0なので

y(t)=KBekt1+Bekt=K1+1Be−kty(t) = \frac{KBe^{kt}}{1+Be^{kt}} = \frac{K}{1+\dfrac{1}{B}e^{-kt}}

です。A=1B>0A = \dfrac1B > 0と置くと結論を得ます。▨

公式 2.3 (初期条件を満たす解).k>0k>0、K>0K>0、0<y0<K0<y_0<Kとする。実数全体で定義された関数

y(t)=Ky0y0+(K−y0)e−kty(t) = \frac{Ky_0}{y_0 + (K-y_0)e^{-kt}}

はロジスティック方程式の解であり、y(0)=y0y(0)=y_0を満たし、すべての実数ttについて0<y(t)<K0<y(t)<Kを満たす。

証明.A=K−y0y0A = \dfrac{K-y_0}{y_0}と置くとA>0A>0であり、分母と分子をy0y_0で割るとy(t)=K1+Ae−kty(t) = \dfrac{K}{1+Ae^{-kt}}です。A>0A>0、e−kt>0e^{-kt}>0なので分母は11より大きく、0<y(t)<K0<y(t)<Kが成り立ちます。とくに分母は00にならないので、この関数は実数全体で定義され、何回でも微分することができます。t=0t=0とするとy(0)=K1+A=Ky0y0+(K−y0)=y0y(0) = \dfrac{K}{1+A} = \dfrac{Ky_0}{y_0+(K-y_0)} = y_0です。

方程式を満たすことを確かめます。u(t)=1+Ae−ktu(t) = 1+Ae^{-kt}と置くとu′(t)=−kAe−ktu'(t) = -kAe^{-kt}であり、

y′(t)=−Ku′(t)u(t)2=kKAe−ktu(t)2y'(t) = -\frac{K u'(t)}{u(t)^2} = \frac{kKAe^{-kt}}{u(t)^2}

です。一方

k y(t)(1−y(t)K)=k⋅Ku(t)⋅(1−1u(t))=k⋅Ku(t)⋅u(t)−1u(t)=kK{u(t)−1}u(t)2k\,y(t)\left(1-\frac{y(t)}{K}\right) = k\cdot\frac{K}{u(t)}\cdot\left(1-\frac{1}{u(t)}\right) = k\cdot\frac{K}{u(t)}\cdot\frac{u(t)-1}{u(t)} = \frac{kK\{u(t)-1\}}{u(t)^2}

であり、u(t)−1=Ae−ktu(t)-1 = Ae^{-kt}なので、二つは一致します。▨

注意 2.4 (定数解も同じ式に含まれる).公式 2.3の式で、形式的にy0=0y_0=0とすると分子が00になってyyは恒等的に00、y0=Ky_0=Kとすると分母がKKになってyyは恒等的にKKである。二つの定数解が同じ式に含まれることは結果としてそうなるだけであり、注意 1.3の確認を省いてよい理由にはならない。定理 2.2は0<y(t)<K0<y(t)<Kを仮定して導いたので、その導出はy0=0y_0=0とy0=Ky_0=Kの場合を含んでいない。

3 解の形

定理 3.1 (狭義単調性、極限、凹凸).0<y0<K0<y_0<Kとし、yyを公式 2.3の解、A=K−y0y0A = \dfrac{K-y_0}{y_0}とする。このとき次が成り立つ。

  1. yyは実数全体で狭義単調増加であり、lim⁡t→−∞y(t)=0\displaystyle\lim_{t\to-\infty}y(t)=0、lim⁡t→∞y(t)=K\displaystyle\lim_{t\to\infty}y(t)=Kである。
  2. t1=1klog⁡At_1 = \dfrac{1}{k}\log Aと置くと、y(t1)=K2y(t_1) = \dfrac{K}{2}であり、t<t1t<t_1でy′′(t)>0y''(t)>0、t>t1t>t_1でy′′(t)<0y''(t)<0である。すなわち点(t1,K2)\left(t_1, \dfrac{K}{2}\right)は変曲点である。
  3. y′y'はt=t1t=t_1で最大値kK4\dfrac{kK}{4}をとる。

証明. 1を示します。公式 2.3により0<y(t)<K0<y(t)<Kなのでy′(t)=kKy(t){K−y(t)}>0y'(t) = \dfrac{k}{K}y(t)\{K-y(t)\} > 0であり、yyは狭義単調増加です。y(t)=K1+Ae−kty(t) = \dfrac{K}{1+Ae^{-kt}}において、t→−∞t\to-\inftyのときe−kt→∞e^{-kt}\to\inftyなので分母は∞\inftyへ向かいy(t)→0y(t)\to0、t→∞t\to\inftyのときe−kt→0e^{-kt}\to0なので分母は11へ向かいy(t)→Ky(t)\to Kです。

2を示します。y′=ky−kKy2y' = ky-\dfrac{k}{K}y^2の両辺をttで微分すると

y′′=ky′−2kKyy′=ky′(1−2yK)y'' = ky' - \frac{2k}{K}yy' = ky'\left(1-\frac{2y}{K}\right)

です。y′>0y'>0、k>0k>0なのでy′′y''の符号は1−2yK1-\dfrac{2y}{K}の符号、すなわちyyとK2\dfrac{K}{2}の大小で決まります。y(t)=K2y(t)=\dfrac{K}{2}は1+Ae−kt=21+Ae^{-kt}=2、すなわちAe−kt=1Ae^{-kt}=1と同値であり、これを満たすttはt1=1klog⁡At_1 = \dfrac1k\log Aただ一つです。yyは狭義単調増加なので、t<t1t<t_1ではy(t)<K2y(t)<\dfrac{K}{2}でy′′(t)>0y''(t)>0、t>t1t>t_1ではy(t)>K2y(t)>\dfrac{K}{2}でy′′(t)<0y''(t)<0です。

3を示します。2によりy′y'はt<t1t<t_1で増加しt>t1t>t_1で減少するので、t=t1t=t_1で最大値をとります。その値はy(t1)=K2y(t_1)=\dfrac{K}{2}をy′=kKy(K−y)y'=\dfrac{k}{K}y(K-y)へ代入してkK⋅K2⋅K2=kK4\dfrac{k}{K}\cdot\dfrac{K}{2}\cdot\dfrac{K}{2} = \dfrac{kK}{4}です。▨

グラフは、下に凸な部分から上に凸な部分へ変曲点で移り、二つの水平な直線y=0y=0とy=Ky=Kにはさまれた形になります。これがSSの字の形と呼ばれる形です。

定理 3.2 (量が小さいうちの増え方と、上限への近づき方).定理 3.1と同じ設定のもとで

lim⁡t→−∞y(t)e−kt=KA=Ky0K−y0,lim⁡t→∞{K−y(t)}ekt=KA=K(K−y0)y0\lim_{t\to-\infty} y(t)e^{-kt} = \frac{K}{A} = \frac{Ky_0}{K-y_0}, \qquad \lim_{t\to\infty} \{K-y(t)\}e^{kt} = KA = \frac{K(K-y_0)}{y_0}

が成り立つ。

証明. 第一の等式について、

y(t)e−kt=K1+Ae−kt⋅e−kt=Kekt+Ay(t)e^{-kt} = \frac{K}{1+Ae^{-kt}}\cdot e^{-kt} = \frac{K}{e^{kt}+A}

です。t→−∞t\to-\inftyのときekt→0e^{kt}\to0なので、この値はKA\dfrac{K}{A}へ収束します。

第二の等式について、

K−y(t)=K−K1+Ae−kt=KAe−kt1+Ae−ktK-y(t) = K - \frac{K}{1+Ae^{-kt}} = \frac{KAe^{-kt}}{1+Ae^{-kt}}

なので

{K−y(t)}ekt=KA1+Ae−kt\{K-y(t)\}e^{kt} = \frac{KA}{1+Ae^{-kt}}

です。t→∞t\to\inftyのときe−kt→0e^{-kt}\to0なので、この値はKAKAへ収束します。▨

第一の等式は、ttが十分小さいところでy(t)y(t)がKAekt\dfrac{K}{A}e^{kt}に近いこと、すなわち量が小さいうちは指数関数的に増えることを述べています。第二の等式は、上限との差が指数関数的に小さくなることを述べています。y(t)→Ky(t)\to Kからy′(t)=ky(t)(1−y(t)K)→0y'(t) = ky(t)\left(1-\dfrac{y(t)}{K}\right)\to0となるので、増加そのものは止まります。

4 初期値が00とKKの間にない場合

注意 4.1 (y0>Ky_0>Kまたはy0<0y_0<0の場合).公式 2.3の式は、y0>Ky_0>Kまたはy0<0y_0<0の場合にも方程式を満たすが、実数全体では定義されない。分母y0+(K−y0)e−kty_0+(K-y_0)e^{-kt}が00になるttが現れるからである。

y0>Ky_0>Kのとき、分母が00になるのはe−kt=y0y0−Ke^{-kt} = \dfrac{y_0}{y_0-K}のときであり、右辺は11より大きいので、これを満たすttは負である。その値をt∗t_*とすると、解はt>t∗t>t_*でのみ定義され、ttがt∗t_*に近づくとy(t)y(t)はいくらでも大きくなる。t>t∗t>t_*ではy(t)>Ky(t)>Kであり、yyは狭義単調減少であり、KKへ近づく。

y0<0y_0<0のとき、分母が00になるttは正であり、解はその値より前でのみ定義される。この場合、y(t)y(t)は負の値をとり、その絶対値はいくらでも大きくなる。

いずれの場合も、方程式そのものは実数全体で意味をもつのに、解の定義域は実数全体にならない。解を書き下したあとで、分母が00にならない範囲を確かめる必要がある。

注意 4.2 (本記事が扱う範囲). 本記事は、ロジスティック方程式について、定数解を確かめ、00とKKの間の値をとる解を書き下し、その形を調べるところを扱う。公式 2.3の関数以外にy(0)=y0y(0)=y_0を満たす解がないこと、すなわち解の一意性は「常微分方程式」が扱う。変数分離形の解法そのものと、y′=kyy'=kyから指数関数による増加を導く手順は「微積分」が扱う。

前提記事