§C4.19単振動と2階の微分方程式

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第2次導関数がもとの関数の定数倍に符号を変えて等しいという条件、すなわちx′′=−ω2xx'' = -\omega^2 xは、ばねにつながれた物体の位置や、振れ幅の小さい振り子の角のように、同じ状態へ繰り返し戻る量が満たす関係式です。この関係式にはxxとx′′x''の両方が現れるので、変数分離形のように両辺を積分して解くことはできません。

本記事は、この方程式について三つのことを扱います。第一に、三角関数を定数倍して足し合わせたものが解であることを、代入によって確かめます。第二に、速度の2乗と位置の2乗に重みを付けて足した量が、どの解についても時間によらず一定であることを示します。第三に、この一定の量を用いて、t=0t=0における位置と速度を与えると解がただ一つに定まることを導きます。導関数の計算と定積分の計算は「微積分」が、三角関数の合成は「図形と方程式」が扱い、本記事はそれらを用います。

1 方程式と、三角関数による解

定義 1.1 (単振動の方程式).ω>0\omega > 0とする。実数全体で定義され2回微分可能な関数xxについての条件

x′′(t)=−ω2x(t)(すべての実数 t について)x''(t) = -\omega^2 x(t) \qquad (\text{すべての実数 } t \text{ について})

を単振動の方程式といい、この条件を満たす関数を単振動の方程式の解という。

cos⁡\cosとsin⁡\sinは、2回微分すると符号が変わってもとの形に戻ります。この性質から、解が一つ得られます。

定理 1.2 (三角関数の重ね合わせが解であること).ω>0\omega>0とし、AA、BBを実数とする。このとき

x(t)=Acos⁡ωt+Bsin⁡ωtx(t) = A\cos\omega t + B\sin\omega t

は単振動の方程式の解である。

証明.xxは実数全体で何回でも微分することができます。合成関数の微分により

x′(t)=−Aωsin⁡ωt+Bωcos⁡ωt,x′′(t)=−Aω2cos⁡ωt−Bω2sin⁡ωtx'(t) = -A\omega\sin\omega t + B\omega\cos\omega t, \qquad x''(t) = -A\omega^2\cos\omega t - B\omega^2\sin\omega t

です。第二の式の右辺は−ω2(Acos⁡ωt+Bsin⁡ωt)=−ω2x(t)-\omega^2(A\cos\omega t + B\sin\omega t) = -\omega^2 x(t)に等しいので、xxは単振動の方程式を満たします。▨

代入によって確かめたのは、この形の関数が解であることだけです。この形以外に解がないかどうかは、まだ分かりません。それを決めるために、解が満たす別の関係式を用意します。

2 速度の2乗と位置の2乗の重みつきの和

定理 2.1 (保存される量).xxを単振動の方程式の解とし、

E(t)={x′(t)}2+ω2{x(t)}2E(t) = \{x'(t)\}^2 + \omega^2\{x(t)\}^2

と置く。このときEEは定数関数である。

証明.xxは2回微分可能なのでEEは微分可能で、積の微分と合成関数の微分により

E′(t)=2x′(t)x′′(t)+2ω2x(t)x′(t)E'(t) = 2x'(t)x''(t) + 2\omega^2 x(t)x'(t)

です。xxは解なのでx′′(t)=−ω2x(t)x''(t) = -\omega^2 x(t)であり、これを代入すると

E′(t)=2x′(t){−ω2x(t)}+2ω2x(t)x′(t)=0E'(t) = 2x'(t)\bigl\{-\omega^2 x(t)\bigr\} + 2\omega^2 x(t)x'(t) = 0

となります。導関数が実数全体で恒等的に00である関数は定数関数なので、EEは定数関数です。▨

EEは、速度にあたるx′x'の2乗と、位置にあたるxxの2乗に重みω2\omega^2を付けたものとの和です。この量が時間によらないことから、解の大きさに上からの評価が付きます。

定理 2.2 (解は有界である).xxを単振動の方程式の解とし、EEを定理 2.1の定数とする。このとき、すべての実数ttについて

∣x(t)∣≤Eω,∣x′(t)∣≤E|x(t)| \le \frac{\sqrt{E}}{\omega}, \qquad |x'(t)| \le \sqrt{E}

が成り立つ。

証明.{x′(t)}2≥0\{x'(t)\}^2 \ge 0なのでω2{x(t)}2≤E\omega^2\{x(t)\}^2 \le Eです。ω>0\omega>0なので両辺をω2\omega^2で割って平方根をとると、第一の不等式を得ます。同じくω2{x(t)}2≥0\omega^2\{x(t)\}^2 \ge 0から{x′(t)}2≤E\{x'(t)\}^2 \le Eとなり、第二の不等式を得ます。▨

3 初期条件によって解が定まる

保存される量は、二つの解の差についても定数です。この事実から、t=0t=0における位置と速度が解を決めることが従います。

定理 3.1 (初期条件による解の決定).ω>0\omega>0とし、x0x_0、v0v_0を実数とする。単振動の方程式の解でx(0)=x0x(0)=x_0かつx′(0)=v0x'(0)=v_0を満たすものは

x(t)=x0cos⁡ωt+v0ωsin⁡ωtx(t) = x_0\cos\omega t + \frac{v_0}{\omega}\sin\omega t

ただ一つである。

証明. まず、この関数が条件を満たすことを確かめます。定理 1.2でA=x0A=x_0、B=v0ωB=\dfrac{v_0}{\omega}とすると解であり、x(0)=x0x(0) = x_0、x′(0)=−x0ωsin⁡0+v0ωωcos⁡0=v0x'(0) = -x_0\omega\sin 0 + \dfrac{v_0}{\omega}\omega\cos 0 = v_0です。

次に、条件を満たす解が二つ以下であることを示します。xxとyyをともに解とし、x(0)=y(0)=x0x(0)=y(0)=x_0、x′(0)=y′(0)=v0x'(0)=y'(0)=v_0とします。u=x−yu = x-yと置くと、uuは2回微分可能で

u′′(t)=x′′(t)−y′′(t)=−ω2x(t)+ω2y(t)=−ω2u(t)u''(t) = x''(t)-y''(t) = -\omega^2 x(t) + \omega^2 y(t) = -\omega^2 u(t)

なので、uuも単振動の方程式の解です。u(0)=0u(0)=0、u′(0)=0u'(0)=0なので、uuについて定理 2.1の定数は

Eu={u′(0)}2+ω2{u(0)}2=0E_u = \{u'(0)\}^2 + \omega^2\{u(0)\}^2 = 0

です。したがってすべてのttについて{u′(t)}2+ω2{u(t)}2=0\{u'(t)\}^2 + \omega^2\{u(t)\}^2 = 0であり、左辺は00以上の二つの数の和なので、両方が00です。ω>0\omega>0からu(t)=0u(t)=0であり、x=yx=yです。▨

注意 3.2 (すべての解がこの形である).xxを単振動の方程式の任意の解とし、x0=x(0)x_0 = x(0)、v0=x′(0)v_0 = x'(0)と置くと、定理 3.1によりx(t)=x0cos⁡ωt+v0ωsin⁡ωtx(t) = x_0\cos\omega t + \dfrac{v_0}{\omega}\sin\omega tである。すなわち、単振動の方程式の解の全体は、Acos⁡ωt+Bsin⁡ωtA\cos\omega t + B\sin\omega t(AA、BBは実数)の形の関数の全体に一致する。本記事は、この事実を保存される量から導いた。線形の微分方程式について一般解を系統的に構成する方法は「常微分方程式」が扱う。

4 振幅と周期

解を一つの三角関数にまとめると、保存される量が振幅と結び付きます。

公式 4.1 (振幅と位相による表示).AA、BBを実数とし、(A,B)≠(0,0)(A,B) \ne (0,0)とする。C=A2+B2C = \sqrt{A^2+B^2}と置くと、ある実数φ\varphiが存在して、すべての実数ttについて

Acos⁡ωt+Bsin⁡ωt=Ccos⁡(ωt−φ)A\cos\omega t + B\sin\omega t = C\cos(\omega t - \varphi)

が成り立つ。CCをこの解の振幅という。

証明.C>0C>0であり、(AC)2+(BC)2=1\left(\dfrac{A}{C}\right)^2 + \left(\dfrac{B}{C}\right)^2 = 1なので、cos⁡φ=AC\cos\varphi = \dfrac{A}{C}、sin⁡φ=BC\sin\varphi = \dfrac{B}{C}を満たす実数φ\varphiが存在します。余弦の加法定理により

Ccos⁡(ωt−φ)=C(cos⁡ωtcos⁡φ+sin⁡ωtsin⁡φ)=Acos⁡ωt+Bsin⁡ωtC\cos(\omega t-\varphi) = C(\cos\omega t\cos\varphi + \sin\omega t\sin\varphi) = A\cos\omega t + B\sin\omega t

となります。▨

定理 4.2 (保存される量と振幅・周期の関係).xxを単振動の方程式の解とし、x(0)=x0x(0)=x_0、x′(0)=v0x'(0)=v_0、(x0,v0)≠(0,0)(x_0,v_0)\ne(0,0)とする。このとき定理 2.1の定数はE=v02+ω2x02E = v_0^2 + \omega^2 x_0^2であり、この解の振幅CCは

C=EωC = \frac{\sqrt{E}}{\omega}

である。またxxは周期2πω\dfrac{2\pi}{\omega}をもつ。

証明.EEの値はt=0t=0における値{x′(0)}2+ω2{x(0)}2=v02+ω2x02\{x'(0)\}^2+\omega^2\{x(0)\}^2 = v_0^2+\omega^2 x_0^2です。定理 3.1によりA=x0A = x_0、B=v0ωB = \dfrac{v_0}{\omega}なので公式 4.1のCCは

C=x02+v02ω2=ω2x02+v02ω=EωC = \sqrt{x_0^2 + \frac{v_0^2}{\omega^2}} = \frac{\sqrt{\omega^2 x_0^2 + v_0^2}}{\omega} = \frac{\sqrt{E}}{\omega}

です。周期については、T=2πωT = \dfrac{2\pi}{\omega}と置くとω(t+T)−φ=(ωt−φ)+2π\omega(t+T)-\varphi = (\omega t-\varphi)+2\piであり、cos⁡\cosは周期2π2\piをもつのでx(t+T)=x(t)x(t+T) = x(t)となります。▨

定理 2.2が与えた上からの評価Eω\dfrac{\sqrt{E}}{\omega}は、振幅そのものです。すなわち、この評価には改善の余地がありません。

例 4.3 (初期条件から解を定める).ω=2\omega = 2、x(0)=1x(0)=1、x′(0)=−4x'(0)=-4とします。定理 3.1により

x(t)=cos⁡2t+−42sin⁡2t=cos⁡2t−2sin⁡2tx(t) = \cos 2t + \frac{-4}{2}\sin 2t = \cos 2t - 2\sin 2t

です。保存される量はE=(−4)2+22⋅12=20E = (-4)^2 + 2^2\cdot 1^2 = 20であり、振幅は202=5\dfrac{\sqrt{20}}{2} = \sqrt5、周期は2π2=π\dfrac{2\pi}{2} = \piです。

検算として、EEを任意のttで計算します。x′(t)=−2sin⁡2t−4cos⁡2tx'(t) = -2\sin 2t - 4\cos 2tなので

{x′(t)}2+4{x(t)}2=(2sin⁡2t+4cos⁡2t)2+4(cos⁡2t−2sin⁡2t)2\{x'(t)\}^2 + 4\{x(t)\}^2 = (2\sin 2t + 4\cos 2t)^2 + 4(\cos 2t - 2\sin 2t)^2

です。展開するとsin⁡2tcos⁡2t\sin 2t\cos 2tを含む項が打ち消し合い、(4+16)sin⁡22t+(16+4)cos⁡22t=20(4+16)\sin^2 2t + (16+4)\cos^2 2t = 20となります。

5 符号が逆である場合

注意 5.1 (x′′=k2xx'' = k^2 xとの違い).k>0k>0とし、条件x′′(t)=k2x(t)x''(t) = k^2 x(t)を考える。この場合もF(t)={x′(t)}2−k2{x(t)}2F(t) = \{x'(t)\}^2 - k^2\{x(t)\}^2が定数であることが、定理 2.1と同じ計算で分かる。しかしFFは二つの2乗の差なので、FFが一定であっても∣x(t)∣|x(t)|に上からの評価は付かない。実際、x(t)=ektx(t) = e^{kt}はこの条件を満たし、F(t)=k2e2kt−k2e2kt=0F(t) = k^2e^{2kt} - k^2e^{2kt} = 0で一定であるが、x(t)x(t)はいくらでも大きくなる。

定理 2.2と定理 3.1の証明が用いたのは、EEが00以上の二つの量の和であることである。方程式の右辺の符号が逆になると、この性質が失われ、結論も変わる。

注意 5.2 (本記事が扱う範囲). 本記事は、x′′=−ω2xx''=-\omega^2 xという一つの方程式について、解の形を定め、保存される量から初期条件が解を決めることを示すところを扱う。線形の微分方程式の一般解の構成、解の存在と一意性の一般論、および解の安定性は「常微分方程式」が扱う。変数分離形の微分方程式を積分によって解く手順は「微積分」が扱い、本単元では「ロジスティック方程式」と「接線の条件から決まる曲線」がそれを用いる。

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