§E2.9コンパクト距離空間

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閉区間[0,1][0,1]上の実数値連続関数は最大値と最小値をとる。この結論を一般の距離空間へ広げるためには、閉区間のどのような性質が極値の存在を支えるかを明らかにする必要がある。任意の開被覆から有限部分被覆を選ぶことができるというコンパクト性は、このような結論の根拠となる、位相空間論の最も基本的な概念の一つである。距離空間では、コンパクト性は点列の収束や、完備性と全有界性によっても特徴づけられる。本記事では、コンパクト距離空間の基本的な特徴づけと代表的な応用を扱う。

1 コンパクト性とその保存

定義 1.1 (コンパクト距離空間). 距離空間(X,d)(X,d)の開集合の族U\mathcal UがX=⋃U∈UUX=\bigcup_{U\in\mathcal U}Uを満たすとき、U\mathcal UをXXの開被覆という。開被覆U\mathcal Uの有限な部分族であってXXを覆うものを、U\mathcal Uの有限部分被覆という。

任意の開被覆が有限部分被覆をもつ距離空間を コンパクト (compact) という。距離空間の部分集合がコンパクトであるとは、制限距離に関してコンパクトであることをいう。

定義 1.2 (点列コンパクト距離空間). 距離空間(X,d)(X,d)の任意の点列が、XXのある点へ収束する部分列をもつとき、(X,d)(X,d)を 点列コンパクト (sequentially compact) という。

定義 1.3 (可算コンパクト距離空間). 距離空間の開被覆が高々可算個の集合からなるとき、その開被覆を可算開被覆という。任意の可算開被覆が有限部分被覆をもつ距離空間を 可算コンパクト (countably compact) という。

命題 1.4. 距離空間(X,d)(X,d)と部分集合K⊆XK\subseteq Xに対して、次の二条件は同値である。

  1. KKはコンパクトである。
  2. KKを覆うXXの開集合の任意の族は、KKを覆う有限部分族をもつ。

証明.XXの開集合UUに対して、K∩UK\cap Uは制限距離に関して開である。実際、x∈K∩Ux\in K\cap UのまわりでBd(x,r)⊆UB_d(x,r)\subseteq Uとなるr>0r>0をとると、§E2.1 命題 2.2によりBdK(x,r)=K∩Bd(x,r)⊆K∩UB_{d_K}(x,r)=K\cap B_d(x,r)\subseteq K\cap Uとなる。したがって、KKがコンパクトならば、XXの開集合によるKKの被覆をKKと交わらせて得る開被覆を有限化することにより、(2)が従う。

逆に(2)を仮定し、KKの開被覆V\mathcal Vをとる。各V∈VV\in\mathcal Vに対して

UV=⋃{Bd(x,r):x∈V, r>0, K∩Bd(x,r)⊆V}U_V=\bigcup\{B_d(x,r):x\in V,\ r>0,\ K\cap B_d(x,r)\subseteq V\}

とおく。UVU_VはXXの開集合であり、K∩UV⊆VK\cap U_V\subseteq Vである。VVが制限距離に関して開であることと開球の等式により、各x∈Vx\in Vに対して上の合併に現れる球があるので、V⊆K∩UVV\subseteq K\cap U_Vでもある。ゆえにK∩UV=VK\cap U_V=Vである。族(UV)V∈V(U_V)_{V\in\mathcal V}はKKを覆うから、その有限部分族がKKを覆う。対応する有限個のVVがKKを覆い、KKはコンパクトである。▨

命題 1.5. コンパクト距離空間(X,d)(X,d)の閉部分集合FFは、制限距離に関してコンパクトである。

証明.FFを覆うXXの開集合族に開集合X∖FX\setminus Fを加えると、XXの開被覆となる。その有限部分被覆からX∖FX\setminus Fを除いてもFFは覆われる。命題 1.4によりFFはコンパクトである。▨

定理 1.6. コンパクト距離空間(X,dX)(X,d_X)から距離空間(Y,dY)(Y,d_Y)への連続写像f:X→Yf:X\to Yに対して、f(X)f(X)はコンパクトである。

証明.f(X)f(X)を覆うYYの開集合族をとる。§E2.4 定理 2.1により、それらの逆像はXXの開被覆をなす。有限個の逆像がXXを覆うので、対応する有限個の開集合がf(X)f(X)を覆う。命題 1.4によりf(X)f(X)はコンパクトである。▨

定理 1.7. 空でないコンパクト距離空間(X,d)(X,d)と連続写像f:X→Rf:X\to\Rに対して、ffはXX上で最大値と最小値をとる。

証明.定理 1.6によりK=f(X)K=f(X)は空でないコンパクト部分集合である。KKが最大元をもたないと仮定すると、各s∈Ks\in Kに対してs<ts<tとなるt∈Kt\in Kが存在するから、{(−∞,t):t∈K}\{(-\infty,t):t\in K\}はKKを覆う。命題 1.4により、有限個のt1,…,tm∈Kt_1,\ldots,t_m\in Kで

K⊆⋃i=1m(−∞,ti)=(−∞,max⁡iti)K\subseteq\bigcup_{i=1}^m(-\infty,t_i)=(-\infty,\max_i t_i)

となる。K≠∅K\ne\emptysetよりm≥1m\ge1であり、max⁡iti∈K\max_i t_i\in Kがこの包含に反する。したがってKKは最大元をもつ。写像t↦−tt\mapsto-tは連続であり、§E2.4 命題 2.4により−f-fは連続である。−f-fにも同じ議論を適用すると、KKは最小元ももつ。像の最大元と最小元の逆像をとれば、ffの最大点と最小点を得る。▨

補題 1.8. 可算コンパクト距離空間(X,d)(X,d)と、空でない閉集合の減少列F1⊇F2⊇⋯F_1\supseteq F_2\supseteq\cdotsに対して、⋂n∈N≥1Fn≠∅\bigcap_{n\in\NN}F_n\ne\emptysetである。

証明. 共通部分が空であると仮定すると、{X∖Fn:n∈N≥1}\{X\setminus F_n:n\in\NN\}はXXの可算開被覆である。F1≠∅F_1\ne\emptysetよりX≠∅X\ne\emptysetなので、その有限部分被覆に現れる添字の最大値NNをとることができる。FnF_nが減少することからX=X∖FNX=X\setminus F_Nとなり、FN≠∅F_N\ne\emptysetに反する。▨

2 点列コンパクト性と Lebesgue 数

系 2.1. 点列コンパクトな距離空間(X,d)(X,d)は全有界である。

証明.XXの任意の点列は、点列コンパクト性により収束する部分列をもち、§E2.5 命題 1.2により Cauchy 部分列をもつ。したがって、§E2.8 定理 2.1が与える Cauchy 部分列による特徴づけからXXは全有界である。▨

定義 2.2 (Lebesgue 数). 距離空間(X,d)(X,d)の開被覆U\mathcal Uに対して、正の実数δ\deltaがU\mathcal Uの Lebesgue 数 (Lebesgue number) であるとは、任意のx∈Xx\in Xに対してB(x,δ)⊆UB(x,\delta)\subseteq Uを満たすU∈UU\in\mathcal Uが存在することをいう。

補題 2.3.(X,d)(X,d)を点列コンパクトな距離空間とし、U\mathcal UをXXの開被覆とする。このとき、U\mathcal Uは Lebesgue 数δ\deltaをもつ。さらに、空でない部分集合S⊆XS\subseteq Xと点y∈Sy\in SがS⊆B(y,δ)S\subseteq B(y,\delta)を満たすならば、S⊆US\subseteq Uを満たすU∈UU\in\mathcal Uが存在する。

証明.X=∅X=\emptysetならば、δ=1\delta=1に対して Lebesgue 数の条件が空虚に成り立つ。X≠∅X\ne\emptysetとし、Lebesgue 数が存在しないと仮定する。各n∈N≥1n\in\NNに対して、B(xn,1/n)B(x_n,1/n)がU\mathcal Uのどの元にも含まれないような点xn∈Xx_n\in Xをとる。点列コンパクト性により、xnk→xx_{n_k}\to xを満たす部分列と点x∈Xx\in Xが存在する。x∈U0x\in U_0を満たすU0∈UU_0\in\mathcal Uをとると、§E2.2 定義 1.1により、あるr>0r>0に対してB(x,r)⊆U0B(x,r)\subseteq U_0となる。1/nk<r/21/n_k<r/2かつd(xnk,x)<r/2d(x_{n_k},x)<r/2を満たすkkをとれば、三角不等式により

B(xnk,1/nk)⊆B(x,r)⊆U0B(x_{n_k},1/n_k)\subseteq B(x,r)\subseteq U_0

となる。これはxnkx_{n_k}の選び方に反する。したがって、U\mathcal Uは Lebesgue 数δ\deltaをもつ。S⊆B(y,δ)S\subseteq B(y,\delta)の場合には、定義 2.2からB(y,δ)⊆UB(y,\delta)\subseteq Uを満たすU∈UU\in\mathcal Uが存在するため、S⊆US\subseteq Uとなる。▨

3 コンパクト性の四つの特徴づけ

定理 3.1.(X,d)(X,d)を距離空間とする。次の四条件は同値である。

  1. XXはコンパクトである。
  2. XXは点列コンパクトである。
  3. XXは完備かつ全有界である。
  4. XXは可算コンパクトである。

証明.(1)⇒\Rightarrow(4)を示す。可算開被覆も開被覆であるから、コンパクト性の定義により有限部分被覆をもつ。

(4)⇒\Rightarrow(2)を示す。XXが可算コンパクトであると仮定し、(xn)n≥1(x_n)_{n\ge1}をXXの点列とする。各n∈N≥1n\in\NNに対して

Tn={xk∣k≥n},Fn=Tn‾T_n=\{x_k\mid k\ge n\},\qquad F_n=\overline{T_n}

とおく。xn∈Tn⊆Fnx_n\in T_n\subseteq F_nであるから各FnF_nは空でない。§E2.2 命題 2.3によりFnF_nはTnT_nを含む最小の閉集合であり、Tn+1⊆Tn⊆FnT_{n+1}\subseteq T_n\subseteq F_nであるからFn+1⊆FnF_{n+1}\subseteq F_nである。したがって(Fn)n≥1(F_n)_{n\ge1}は空でない閉集合の減少列であり、補題 1.8によりx∈⋂n≥1Fnx\in\bigcap_{n\ge1}F_nを満たす点x∈Xx\in Xが存在する。

N∈N≥1N\in\NNとε>0\varepsilon>0をとる。x∈FN=TN‾x\in F_N=\overline{T_N}であるから、§E2.2 命題 2.6によりB(x,ε)∩TN≠∅B(x,\varepsilon)\cap T_N\ne\emptysetである。すなわち、n≥Nn\ge Nかつd(xn,x)<εd(x_n,x)<\varepsilonを満たすn∈N≥1n\in\NNが存在する。そこで

n1=min⁡{n≥1∣d(xn,x)<1},nk+1=min⁡{n≥nk+1∣d(xn,x)<1/(k+1)}n_1=\min\{n\ge1\mid d(x_n,x)<1\},\qquad n_{k+1}=\min\{n\ge n_k+1\mid d(x_n,x)<1/(k+1)\}

と定める。前段をN=1N=1とε=1\varepsilon=1に適用すると第一の集合は空でなく、N=nk+1N=n_k+1とε=1/(k+1)\varepsilon=1/(k+1)に適用すると第二の集合も空でないから、これらの最小値は存在する。(nk)(n_k)は狭義単調増加であるから、§E2.3 定義 2.1により(xnk)(x_{n_k})は(xn)(x_n)の部分列である。任意のε>0\varepsilon>0に対して1/K<ε1/K<\varepsilonを満たすK∈N≥1K\in\NNをとれば、k≥Kk\ge Kのとき

d(xnk,x)<1k≤1K<εd(x_{n_k},x)<\frac1k\le\frac1K<\varepsilon

であるからxnk→xx_{n_k}\to xとなる。ゆえにXXは点列コンパクトである。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。 Cauchy 列(xn)(x_n)は、点列コンパクト性によりxnk→xx_{n_k}\to xを満たす部分列をもつ。任意のε>0\varepsilon>0に対して、Cauchy 性からm,n≥Nm,n\ge Nならばd(xm,xn)<ε/2d(x_m,x_n)<\varepsilon/2となるNNをとる。§E2.3 補題 2.2と部分列の収束により、nk≥Nn_k\ge Nかつd(xnk,x)<ε/2d(x_{n_k},x)<\varepsilon/2となるkkをとる。n≥Nn\ge Nならば

d(xn,x)≤d(xn,xnk)+d(xnk,x)<εd(x_n,x)\le d(x_n,x_{n_k})+d(x_{n_k},x)<\varepsilon

であるからxn→xx_n\to xとなる。ゆえにXXは完備である。また、系 2.1によりXXは全有界である。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。XXが完備かつ全有界であるとし、U\mathcal UをXXの開被覆とする。X=∅X=\emptysetの場合には空の部分族が有限部分被覆である。X≠∅X\ne\emptysetとする。XXの任意の点列は、§E2.8 定理 2.1により Cauchy 部分列をもち、その Cauchy 部分列はXXの完備性によりXXの点へ収束する。ゆえにXXは点列コンパクトであり、補題 2.3によりU\mathcal Uの Lebesgue 数δ>0\delta>0が存在する。XXの全有界性により

X=⋃i=1mB(xi,δ)X=\bigcup_{i=1}^m B(x_i,\delta)

を満たす有限個の点x1,…,xm∈Xx_1,\ldots,x_m\in Xが存在する。各iiについて、B(xi,δ)⊆UiB(x_i,\delta)\subseteq U_iを満たすUi∈UU_i\in\mathcal Uをとれば、U1,…,UmU_1,\ldots,U_mはXXの有限部分被覆である。

四条件は一巡の含意で結ばれたから、互いに同値である。▨

注意 3.2.定理 3.1は四条件を一巡の含意で結ぶので、コンパクト性から全有界性を導く部分も点列コンパクト性を経由する。この向きは経路を通さずに直接示すことができる——コンパクトな距離空間(X,d)(X,d)とε>0\varepsilon>0に対して、開被覆{B(x,ε)∣x∈X}\{B(x,\varepsilon)\mid x\in X\}の有限部分被覆をとればよい。したがって、一巡の証明が通る強さは、個々の含意が要する強さの上界にすぎない。

系 3.3. 距離空間(X,d)(X,d)がコンパクトであることと、XXが完備かつ全有界であることは同値である。

証明.定理 3.1 (1)⇔\Leftrightarrow(3)より従う。▨

系 3.4. 距離空間(X,d)(X,d)とその完備化(Y,e,ι)(Y,e,\iota)に対して、XXが全有界であることとYYがコンパクトであることは同値である。

証明.YYは完備であるから、系 3.3によりYYのコンパクト性は全有界性と同値である。§E2.8 命題 3.3により、YYの全有界性はXXの全有界性と同値である。▨

4 コンパクト部分集合と Heine–Borel の定理

系 4.1.(X,d)(X,d)を距離空間とし、K⊆XK\subseteq Xをコンパクトとする。このとき、KKは有界であり、XXの閉集合である。

証明.K=∅K=\emptysetならば、KKは有界かつ閉である。K≠∅K\ne\emptysetとし、a∈Ka\in Kをとる。XXの開集合族{B(a,n)∣n∈N≥1}\{B(a,n)\mid n\in\NN\}はKKを覆うため、命題 1.4により有限部分被覆をもつ。現れる正の整数の最大値をNNとすれば、K⊆B(a,N)K\subseteq B(a,N)である。したがってKKは有界である。

x∈X∖Kx\in X\setminus Kをとる。集合族

{B(y,d(x,y)2)|y∈K}\left\{B\left(y,\frac{d(x,y)}2\right)\middle|y\in K\right\}

はKKを覆うXXの開集合族である。命題 1.4により、中心がy1,…,ymy_1,\ldots,y_mである有限部分被覆をとり、r=min⁡id(x,yi)/2>0r=\min_i d(x,y_i)/2>0とおく。任意のz∈Kz\in Kに対して、あるiiがd(z,yi)<d(x,yi)/2d(z,y_i)<d(x,y_i)/2を満たすため、

d(x,z)≥d(x,yi)−d(yi,z)>d(x,yi)2≥rd(x,z)\ge d(x,y_i)-d(y_i,z)>\frac{d(x,y_i)}2\ge r

となる。したがってB(x,r)∩K=∅B(x,r)\cap K=\emptysetである。各x∈X∖Kx\in X\setminus KのまわりにX∖KX\setminus Kに含まれる開球が存在するので、X∖KX\setminus Kは開集合であり、KKは閉集合である。▨

注意 4.2.系 4.1の閉性の証明では、コンパクト部分集合の外の点とその部分集合を、互いに交わらない開集合で分離している。距離によるこの分離は、開被覆を有限化する性質だけから従うものではない。

定理 4.3 (Heine–Borel の定理).n∈N≥1n\in\NNとし、Rn\R^nに Euclid 距離d2d_2を入れる。部分集合K⊆RnK\subseteq\R^nがコンパクトであることと、KKが有界かつ閉であることは同値である。

証明.KKがコンパクトならば、系 4.1によりKKは有界かつ閉である。KKが有界かつ閉であると仮定する。K=∅K=\emptysetならばKKはコンパクトであるため、K≠∅K\ne\emptysetとする。Rn\R^nは§E2.5 命題 4.2により完備であり、KKは閉集合であるから、§E2.5 定理 3.2によりKKは完備である。

KKは有界であるから、§E2.8 定義 1.1によりK⊆B(a,R)K\subseteq B(a,R)を満たすa∈Rna\in\R^nとR>0R>0が存在する。T=max⁡1≤i≤n∣ai∣+R>0T=\max_{1\le i\le n}|a_i|+R>0とおくと、§E2.1 公式 4.2のd∞≤d2d_\infty\le d_2により、x∈Kx\in Kと各iiに対して∣xi∣≤∣ai∣+∣xi−ai∣≤∣ai∣+d2(x,a)<T|x_i|\le|a_i|+|x_i-a_i|\le|a_i|+d_2(x,a)<Tである。ゆえにK⊆[−T,T]nK\subseteq[-T,T]^nとなる。任意のε>0\varepsilon>0に対して、2nT/m<ε2nT/m<\varepsilonを満たす正の整数mmをとる。各k=(k1,…,kn)∈{0,1,…,m−1}n\boldsymbol k=(k_1,\ldots,k_n)\in\{0,1,\ldots,m-1\}^nに対して

c(k)i=−T+2Tm(ki+12)(1≤i≤n)c(\boldsymbol k)_i=-T+\frac{2T}{m}\left(k_i+\frac12\right)\qquad(1\le i\le n)

と定める。中心c(k)c(\boldsymbol k)は有限個である。任意のx∈[−T,T]nx\in[-T,T]^nと各iiに対して、

−T+2Tkim≤xi≤−T+2T(ki+1)m-T+\frac{2Tk_i}{m}\le x_i\le -T+\frac{2T(k_i+1)}m

を満たすki∈{0,1,…,m−1}k_i\in\{0,1,\ldots,m-1\}を選ぶことができる。このとき、∣xi−c(k)i∣≤T/m|x_i-c(\boldsymbol k)_i|\le T/mであるから、§E2.1 公式 4.2のd2≤d1d_2\le d_1により

d2(x,c(k))≤∑i=1n∣xi−c(k)i∣≤nTm<εd_2(x,c(\boldsymbol k))\le\sum_{i=1}^n|x_i-c(\boldsymbol k)_i|\le\frac{nT}{m}<\varepsilon

となる。したがって[−T,T]n[-T,T]^nは全有界であり、§E2.8 命題 3.1によりKKも全有界である。系 3.3によりKKはコンパクトである。▨

注意 4.4.定理 4.3は定理 1.7に入力を与える。空でない有界かつ閉な部分集合K⊆RnK\subseteq\R^nはコンパクトであるから、KK上の実数値連続写像は最大値と最小値をとる。本記事は、この組み合わせが与える閉円板上の最小値を代数学の基本定理の証明に用いる。

5 コンパクト距離空間上の一様連続性

定理 5.1 (Heine–Cantor の定理).(X,dX)(X,d_X)と(Y,dY)(Y,d_Y)を距離空間とし、XXがコンパクトであるとする。連続写像f:X→Yf:X\to Yは一様連続である。

証明.X=∅X=\emptysetならば、任意のε>0\varepsilon>0に対してδ=1\delta=1とすれば一様連続性の条件が空虚に成り立つ。X≠∅X\ne\emptysetとし、ε>0\varepsilon>0をとる。各a∈Xa\in Xに対して§E2.2 補題 1.2によりB(f(a),ε/2)B(f(a),\varepsilon/2)はYYの開集合であり、§E2.4 定理 2.1によりf−1(B(f(a),ε/2))f^{-1}(B(f(a),\varepsilon/2))はXXの開集合である。aaはこの集合に属するから、

U={f−1(B(f(a),ε/2))  |  a∈X}\mathcal U=\left\{f^{-1}\bigl(B(f(a),\varepsilon/2)\bigr)\;\middle|\;a\in X\right\}

はXXの開被覆である。

XXはコンパクトであるから、定理 3.1により点列コンパクトであり、補題 2.3によりU\mathcal Uの Lebesgue 数δ>0\delta>0が存在する。x,x′∈Xx,x'\in XがdX(x,x′)<δd_X(x,x')<\deltaを満たすとし、S={x,x′}S=\{x,x'\}とおく。x∈Sx\in SでありS⊆B(x,δ)S\subseteq B(x,\delta)であるから、補題 2.3によりS⊆US\subseteq Uを満たすU∈UU\in\mathcal Uが存在する。U=f−1(B(f(a),ε/2))U=f^{-1}(B(f(a),\varepsilon/2))となるa∈Xa\in Xをとればf(x),f(x′)∈B(f(a),ε/2)f(x),f(x')\in B(f(a),\varepsilon/2)であるから、三角不等式により

dY(f(x),f(x′))≤dY(f(x),f(a))+dY(f(a),f(x′))<εd_Y(f(x),f(x'))\le d_Y(f(x),f(a))+d_Y(f(a),f(x'))<\varepsilon

となる。したがって§E2.4 定義 3.1に従ってffは一様連続である。▨

注意 5.2.§E2.4 例 3.6の写像f:R→Rf:\R\to\R、f(x)=x2f(x)=x^2は連続であるが一様連続でない。定義域R\Rは有界でないから系 4.1によりコンパクトでなく、定義域のコンパクト性を外すと定理 5.1の結論は成り立たない。一方、任意の距離空間の恒等写像は一様連続であるため、個々の写像が一様連続であるために定義域のコンパクト性は必要でない。

注意 5.3. 距離空間(X,dX)(X,d_X)に対して、δ>0\delta>0ごとに定まるX×XX\times Xの部分集合{(x,x′)∣dX(x,x′)<δ}\{(x,x')\mid d_X(x,x')<\delta\}の族を構造として与え、距離を用いずに一様連続性を述べる一般の一様空間は、後続の単元で扱う。

6 代数学の基本定理

補題 6.1.z,w∈Cz,w\in\Cとする。

  1. ∣zw∣=∣z∣∣w∣|zw|=|z||w|が成り立ち、w≠0w\ne0ならば∣z/w∣=∣z∣/∣w∣|z/w|=|z|/|w|が成り立つ。
  2. ∣z+w∣≤∣z∣+∣w∣|z+w|\le|z|+|w|および∣∣z∣−∣w∣∣≤∣z−w∣\bigl||z|-|w|\bigr|\le|z-w|が成り立つ。
  3. m∈N≥1m\in\NNとし、∣ξ∣=1|\xi|=1とする。このとき、∣u∣=1|u|=1かつum=ξu^m=\xiを満たすu∈Cu\in\Cが存在する。

証明.(1)を示す。§E1.14 定義 4.1に従ってz=x+iyz=x+iy、w=s+itw=s+itと書くと、実数の計算により

∣zw∣2=(xs−yt)2+(xt+ys)2=(x2+y2)(s2+t2)=∣z∣2∣w∣2|zw|^2=(xs-yt)^2+(xt+ys)^2=(x^2+y^2)(s^2+t^2)=|z|^2|w|^2

である。両辺は非負であるから∣zw∣=∣z∣∣w∣|zw|=|z||w|となる。§E1.14 命題 4.2によりC\Cは体であるから、w≠0w\ne0は逆元w−1w^{-1}をもつ。§E1.14 定義 4.1の商の定義式はzw−1zw^{-1}の成分表示に一致するのでw⋅(z/w)=zw\cdot(z/w)=zであり、∣w∣∣z/w∣=∣z∣|w||z/w|=|z|より∣z/w∣=∣z∣/∣w∣|z/w|=|z|/|w|を得る。

(2)を示す。§E1.14 定義 4.1に従ってz=x+iyz=x+iy、w=s+itw=s+itと書くと、成分表示から

∣z+w∣=(x+s)2+(y+t)2=d2(z,−w),d2(z,0)=x2+y2=∣z∣,d2(0,−w)=s2+t2=∣w∣,∣z−w∣=(x−s)2+(y−t)2=d2(z,w)\begin{aligned} |z+w|&=\sqrt{(x+s)^2+(y+t)^2}=d_2(z,-w),\\ d_2(z,0)&=\sqrt{x^2+y^2}=|z|,\\ d_2(0,-w)&=\sqrt{s^2+t^2}=|w|,\\ |z-w|&=\sqrt{(x-s)^2+(y-t)^2}=d_2(z,w) \end{aligned}

が成り立つ。複素数をR2\R^2の点とみなすと、Euclid 距離の三角不等式により

∣z+w∣=d2(z,−w)≤d2(z,0)+d2(0,−w)=∣z∣+∣w∣|z+w|=d_2(z,-w)\le d_2(z,0)+d_2(0,-w)=|z|+|w|

となる。z=(z−w)+wz=(z-w)+wにこの不等式を適用すると∣z∣−∣w∣≤∣z−w∣|z|-|w|\le|z-w|を得る。zzとwwを交換した不等式と合わせれば、逆三角不等式が従う。

(3)を示す。任意の実数φ\varphiと非負整数kkに対して

(cos⁡φ+isin⁡φ)k=cos⁡(kφ)+isin⁡(kφ)(\cos\varphi+i\sin\varphi)^k=\cos(k\varphi)+i\sin(k\varphi)

が成り立つ。k=0k=0の場合は直接に従い、kkからk+1k+1への移行は§D1.24 定理 2.1が与える加法定理から従うため、数学的帰納法を適用することができる。ξ=a+ib\xi=a+ibと書き、§D1.24 定義 4.4によりθ0=arccos⁡a∈[0,π]\theta_0=\arccos a\in[0,\pi]とおく。§D1.24 系 2.2とa2+b2=1a^2+b^2=1により、sin⁡θ0=b\sin\theta_0=bまたはsin⁡θ0=−b\sin\theta_0=-bである。前者ではθ=θ0\theta=\theta_0、後者ではθ=−θ0\theta=-\theta_0とおけば、ξ=cos⁡θ+isin⁡θ\xi=\cos\theta+i\sin\thetaとなる。u=cos⁡(θ/m)+isin⁡(θ/m)u=\cos(\theta/m)+i\sin(\theta/m)とおくと、∣u∣=1|u|=1であり、上の等式によりum=ξu^m=\xiとなる。▨

補題 6.2.p(z)=anzn+⋯+a1z+a0p(z)=a_nz^n+\cdots+a_1z+a_0を複素係数多項式とする。

  1. 写像p:C→Cp:\C\to\Cとz↦∣p(z)∣z\mapsto|p(z)|は連続である。
  2. n≥1n\ge1かつan≠0a_n\ne0ならば、任意のM>0M>0に対して、あるR>0R>0が存在し、∣z∣≥R|z|\ge Rならば∣p(z)∣>M|p(z)|>Mとなる。

証明.(1)を示す。写像ppは、定数写像と恒等写像から複素数の和と積を有限回合成して得られるから連続である。さらに、補題 6.1 (2)が与える逆三角不等式からz↦∣p(z)∣z\mapsto|p(z)|も連続である。

(2)を示す。n≥1n\ge1かつan≠0a_n\ne0とし、C=∑k=0n−1∣ak∣C=\sum_{k=0}^{n-1}|a_k|とおく。R≥1R\ge1、C/R<∣an∣/2C/R<|a_n|/2、および(∣an∣/2)Rn>M(|a_n|/2)R^n>Mを同時に満たすRRをとる。∣z∣≥R|z|\ge Rならば

∣p(z)∣≥∣an∣∣z∣n−∑k=0n−1∣ak∣∣z∣k=∣z∣n(∣an∣−∑k=0n−1∣ak∣∣z∣n−k)≥∣z∣n(∣an∣−CR)>∣an∣2∣z∣n≥∣an∣2Rn>M.\begin{aligned} |p(z)| &\ge |a_n||z|^n-\sum_{k=0}^{n-1}|a_k||z|^k\\ &=|z|^n\left(|a_n|-\sum_{k=0}^{n-1}\frac{|a_k|}{|z|^{n-k}}\right)\\ &\ge |z|^n\left(|a_n|-\frac CR\right) >\frac{|a_n|}{2}|z|^n\ge\frac{|a_n|}{2}R^n>M. \end{aligned}

▨

定理 6.3 (代数学の基本定理). 次数が11以上の任意の複素係数多項式は、複素数の範囲に少なくとも一つの根をもつ。

証明.p(z)=anzn+⋯+a0p(z)=a_nz^n+\cdots+a_0とし、n≥1n\ge1、an≠0a_n\ne0とする。補題 6.2をM=∣p(0)∣+1M=|p(0)|+1に適用し、∣z∣≥R|z|\ge Rならば∣p(z)∣>∣p(0)∣+1|p(z)|>|p(0)|+1となるR>0R>0をとる。閉円板

DR={z∈C∣∣z∣≤R}D_R=\{z\in\C\mid |z|\le R\}

は有界である。また、DRD_RはR2\R^2の Euclid 距離についての閉球であり、§E2.2 補題 2.5により閉集合である。したがって、定理 4.3によりDRD_Rはコンパクトである。補題 6.2と定理 1.7により、∣p∣|p|はDRD_R上で最小値をとる。その最小点をzcz_cとする。0∈DR0\in D_Rである一方、DRD_Rの外では∣p(z)∣>∣p(0)∣|p(z)|>|p(0)|であるから、zcz_cはC\C全体における∣p∣|p|の最小点である。

p(zc)≠0p(z_c)\ne0と仮定する。w=z−zcw=z-z_cとおいて

p(zc+w)=b0+b1w+⋯+bnwnp(z_c+w)=b_0+b_1w+\cdots+b_nw^n

と展開する。§E1.14 命題 4.2によりC\Cは体であるから、各ak(zc+w)ka_k(z_c+w)^kをwwの冪について整理することができ、w=0w=0を代入してb0=p(zc)≠0b_0=p(z_c)\ne0、最高次の項を比べてbn=an≠0b_n=a_n\ne0である。bm≠0b_m\ne0を満たす最小のm∈{1,…,n}m\in\{1,\ldots,n\}をとり、

ξ=−b0∣b0∣∣bm∣bm\xi=-\frac{b_0}{|b_0|}\frac{|b_m|}{b_m}

とおく。補題 6.1により∣ξ∣=1|\xi|=1であり、∣u∣=1|u|=1かつum=ξu^m=\xiを満たすu∈Cu\in\Cが存在する。したがってbmum=−(b0/∣b0∣)∣bm∣b_mu^m=-(b_0/|b_0|)|b_m|となる。

C=∑j=m+1n∣bj∣C=\sum_{j=m+1}^n|b_j|とおき、

0<r≤1,∣bm∣rm<∣b0∣,Cr<∣bm∣20<r\le1,\qquad |b_m|r^m<|b_0|,\qquad Cr<\frac{|b_m|}{2}

を満たすrrをとる。C=0C=0の場合には第三の条件は自動的に成り立つ。w=ruw=ruとすれば、

∣b0+bmwm∣=∣b0∣−∣bm∣rm|b_0+b_mw^m|=|b_0|-|b_m|r^m

であり、

∣∑j=m+1nbjwj∣≤Crm+1<∣bm∣2rm\left|\sum_{j=m+1}^n b_jw^j\right|\le Cr^{m+1}<\frac{|b_m|}{2}r^m

となる。ゆえに

∣p(zc+w)∣<∣b0∣−∣bm∣2rm<∣b0∣=∣p(zc)∣|p(z_c+w)|<|b_0|-\frac{|b_m|}{2}r^m<|b_0|=|p(z_c)|

を得る。これはzcz_cの最小性に反するため、p(zc)=0p(z_c)=0である。▨

注意 6.4.定理 6.3は Heine–Borel の定理と極値の存在を中心に据える。「最大値原理」は Liouville の定理から、「偏角の原理と Rouché の定理」は Rouché の定理から同じ結論を再導出し、零点の個数と重複度を複素積分によって調べる。

7 演習

問題 7.1 (全有界だがコンパクトでない部分空間).Q\QにR\Rからの制限距離を入れる。[0,1]∩Q[0,1]\cap\Qが全有界であるがコンパクトでないことを証明せよ。

解答.

定理 4.3により[0,1][0,1]はコンパクトであり、系 3.3により全有界である。したがって、§E2.8 命題 3.1により[0,1]∩Q[0,1]\cap\Qは全有界である。

§E2.5 例 6.2で用いた有理数列(qn)(q_n)は0≤2−qn<10−n0\le\sqrt2-q_n<10^{-n}とqn→2q_n\to\sqrt2を満たすから、0≤qn≤2<20\le q_n\le\sqrt2<2である。したがってrn=qn/2r_n=q_n/2は[0,1]∩Q[0,1]\cap\Qの点である。点列(rn)(r_n)は[0,1]∩Q[0,1]\cap\Qの Cauchy 列であるが、R\Rでは2/2∉Q\sqrt2/2\notin\Qへ収束するため、[0,1]∩Q[0,1]\cap\Qの点には収束しない。ゆえに[0,1]∩Q[0,1]\cap\Qは完備でなく、系 3.3によりコンパクトでない。▨

問題 7.2 (Heine–Borel の定理における Euclid 空間の役割). 有界かつ閉である部分集合がコンパクトであるという主張は、一般の距離空間では成り立たないことを証明せよ。

解答.

XXを無限集合とし、XXに離散距離を入れる。§E2.8 例 1.4によりXXは有界であるが全有界でなく、距離空間XX自身の閉集合である。XXがコンパクトならば系 3.3により全有界となるため、矛盾する。したがって、XXは有界かつ閉であるがコンパクトでない部分集合の例である。▨

問題 7.3 (零点をもたない連続関数).(X,d)(X,d)を空でないコンパクト距離空間とし、f:X→Rf:X\to\Rを零点をもたない連続写像とする。あるc>0c>0が存在し、すべてのx∈Xx\in Xに対して∣f(x)∣≥c|f(x)|\ge cとなることを示せ。さらに、g(x)=1/f(x)g(x)=1/f(x)によって定めた写像g:X→Rg:X\to\Rが一様連続であることを証明せよ。

解答.

逆三角不等式によりx↦∣f(x)∣x\mapsto|f(x)|は連続である。定理 1.7により∣f∣|f|はXX上で最小値ccをとる。ffは零点をもたないためc>0c>0であり、すべてのx∈Xx\in Xに対して∣f(x)∣≥c|f(x)|\ge cとなる。

定理 5.1によりffは一様連続である。任意のε>0\varepsilon>0に対して、∣f(x)−f(y)∣<c2ε|f(x)-f(y)|<c^2\varepsilonを保証するδ>0\delta>0をとる。d(x,y)<δd(x,y)<\deltaならば

∣g(x)−g(y)∣=∣f(x)−f(y)∣∣f(x)f(y)∣≤∣f(x)−f(y)∣c2<ε|g(x)-g(y)|=\frac{|f(x)-f(y)|}{|f(x)f(y)|}\le\frac{|f(x)-f(y)|}{c^2}<\varepsilon

となる。したがってggは一様連続である。▨

参考文献

  1. 松坂和夫『集合・位相入門』新装版, 岩波書店, 2018.全有界性の有限被覆による定義と、距離空間のコンパクト性、点列コンパクト性および全有界性の関係を参考にした。
  2. James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000.コンパクト距離空間の特徴づけ、全有界性と点列の部分列条件との関係、および連続写像の一様連続性を参考にした。
  3. Stephen Willard, General Topology, Dover Publications, 2004, originally published 1970.コンパクト性に関する一般位相的な結果と距離空間に固有の結果の境界、全有界性の保存性、および完備化を参考にした。

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