有限集合の要素の個数を、重複も数え落としもなく求めるには、対象をどのように分ければよいでしょうか。本記事では有限集合とその分割を最初の数学的対象とし、和の法則と積の法則を導きます。さらに、補集合による数え上げと、二つ・三つの集合に対する包除を用いて個数を求める方法まで扱います。
1 和の法則と積の法則
場合を互いに重ならない組に分けるときは、各組の個数を足します。
定理 1.1 (和の法則).とし、有限集合はどの二つも共通の要素をもたないとする。このとき
が成り立つ。
証明.を取る。集合がどの二つも共通の要素をもたないので、が属するはただ一つである。したがって、右辺は和集合の各要素をちょうど一度ずつ数えるため、左辺と等しい。▨
選択を順に行い、前の選択によって後の選択肢の個数が変わらないときは、個数を掛けます。
定理 1.2 (積の法則).とする。第1段階の選択が通りあり、どの第1段階の選択に対しても第2段階の選択が通りあるならば、順序を含めた二段階の選択結果は通りある。
証明. 第1段階の選択ごとに、その選択から始まる二段階の選択結果をまとめる。各組には個の結果があり、異なる第1段階の選択に対応する組は互いに重ならない。このような組が個あるので、和の法則により結果の総数はを回足したである。▨
例 1.3 (暗証番号の個数). 0から9までの数字を用いて3桁の列を作る。各桁には10通りの選択があり、数字の重複を許すので、積の法則により列は通りある。
2 重複を引く
二つの集合が重なる場合には、共通部分を二度数えた分を引きます。
定理 2.1 (二つの有限集合の包除). 有限集合について、
が成り立つ。
証明.を取る。ならばではを二度数え、それ以外ならば一度だけ数える。したがって、の各要素について一度ずつ引くと、の各要素をちょうど一度ずつ数える。▨
例 2.2 (倍数の個数). 1以上100以下の整数のうち、2の倍数または3の倍数であるものを数える。2の倍数は50個、 3の倍数は33個、両方の倍数である6の倍数は16個なので、
個である。
全体集合のうち条件を満たす集合をとすると、条件を満たさないものはです。
公式 2.3 (補集合による数え上げ). 有限な全体集合とその部分集合について、
が成り立つ。
はとの互いに重ならない和集合なので、定理 1.1を用いると公式が得られます。
三つの集合では、二つずつの共通部分を引いた後に、三つすべての共通部分を足し戻します。
公式 2.4 (三つの有限集合の包除). 有限集合について、
が成り立つ。
証明.を取り、がのうちちょうど個に属するとする。のとき右辺におけるの寄与はである。のときは、最初の三項で二度数え、二集合の共通部分の項で一度引くので、寄与はである。のときは、最初の三項で三度数え、二集合の共通部分の三項で三度引き、最後に一度足すので、寄与はである。したがって、右辺はの各要素をちょうど一度ずつ数える。▨
任意個の有限集合に対する一般形は「包除原理の一般形」で扱います。
3 演習
問題 3.1. 1以上200以下の整数のうち、4の倍数または6の倍数であるものの個数を求めよ。
解答.
4の倍数は50個、6の倍数は33個であり、両方の倍数である12の倍数は16個ある。二集合の包除により、求める個数は個である。▨
問題 3.2. 5種類の上着と3種類のズボンから一つずつ選ぶ組は何通りあるか。
解答.
どの上着を選んでもズボンの選択は3通りある。積の法則により、組は通りある。▨
問題 3.3. 1以上100以下の整数のうち、2、3、5のいずれでも割り切れないものの個数を、三つの集合の公式を用いて求めよ。
解答.
2、3、5の倍数はそれぞれ50個、33個、20個ある。二つの条件を同時に満たす6、10、15の倍数はそれぞれ16個、10個、6個あり、三つの条件を同時に満たす30の倍数は3個ある。したがって、 2、3、5の倍数の和集合は
個である。補集合による数え上げから、求める個数は個である。▨