§E12.4Banach 空間論の基本3定理

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有限個の成分だけが零でない数列全体c00c_{00}に上限ノルムを入れ、各nnに対してTn(x)=nxnT_n(x)=nx_nと定める。各x∈c00x\in c_{00}についてTn(x)T_n(x)は有限個のnnを除いて00であるから、この作用素族は点ごとに有界であるが、∥Tn∥=n\|T_n\|=nであって作用素ノルムの全体には上界が存在しない。点ごとの有界性から一様な有界性を導くためには、ノルムの公理のほかに定義域についての仮定を置く必要がある。その仮定にあたるのが定義域の完備性である。完備距離空間が可算個の閉集合の和であるならば、そのうち少なくとも一つは空でない内部をもつ。これを Baire の範疇定理という。定義域が Banach 空間である作用素族に対する一様有界性原理、Banach 空間の間の全射有界線形作用素に対する開写像定理、および閉グラフをもつ線形作用素に対する閉グラフ定理を、この定理から証明する。

1 Baire の範疇定理

定理 1.1 (Baire の範疇定理). 従属選択公理を仮定する。完備距離空間XXにおいて、可算個の稠密開集合U1,U2,…U_1,U_2,\ldotsの共通部分⋂n=1∞Un\bigcap_{n=1}^{\infty}U_nは稠密である。さらにX≠∅X\neq\varnothingならば、同値な形として、XXが可算個の閉集合の和であるならば、そのうち少なくとも一つは空でない内部をもつ。

§E2.28 定理 4.2は、完備距離空間という仮定のもとで前掲の主張を完全に証明している。

命題 1.2.C[0,1]C[0,1]に一様ノルムを入れる。至る所で微分不可能な連続関数全体はC[0,1]C[0,1]で稠密であり、その補集合は第一類集合である。

証明.n≥1n\geq1に対してEnE_nを、あるx∈[0,1]x\in[0,1]が存在し、∣y−x∣≤1/n|y-x|\leq1/nを満たすすべてのy∈[0,1]y\in[0,1]に対して

∣f(y)−f(x)∣≤n∣y−x∣(1)|f(y)-f(x)|\leq n|y-x| \tag{1}

となる関数f∈C[0,1]f\in C[0,1]の集合とする。ある点で有限の微分係数をもつ関数は、十分大きいnnに対してEnE_nに属する。したがって、少なくとも一点で微分可能な関数全体は⋃nEn\bigcup_nE_nに含まれる。

EnE_nが閉じていることを示す。fk∈Enf_k\in E_nがffへ一様収束し、xkx_kをfkf_kに対する (1) の点とする。座標空間の次元を11とした場合として§E12.1 補題 2.1を用いると、部分列をとってxk→xx_k\to xとしてよい。∣y−x∣<1/n|y-x|<1/nを満たすyyを固定すると、十分大きいkkで∣y−xk∣<1/n|y-x_k|<1/nなので

∣fk(y)−fk(xk)∣≤n∣y−xk∣|f_k(y)-f_k(x_k)|\leq n|y-x_k|

である。一様収束とffの連続性を用いてk→∞k\to\inftyとすると (1) を得る。∣y−x∣=1/n|y-x|=1/nの場合は、線分上でyyに近づく点に同じ不等式を適用し、連続性によって極限をとる。よってf∈Enf\in E_nであり、EnE_nは閉じている。

EnE_nの内部が空であることを示す。f∈C[0,1]f\in C[0,1]とε>0\varepsilon>0をとり、δ=ε/4\delta=\varepsilon/4とする。ここでffが一様連続であることは、次の列による議論から従う。一様連続でないと仮定すると、あるη>0\eta>0と点列(sk),(tk)(s_k),(t_k)が存在し、∣sk−tk∣→0|s_k-t_k|\to0であるが∣f(sk)−f(tk)∣≥η|f(s_k)-f(t_k)|\geq\etaとなる。座標空間の次元を11とした場合として§E12.1 補題 2.1によりsks_kの収束部分列をとると、対応するtkt_kも同じ点へ収束し、ffの連続性に矛盾する。

したがって、十分細かい等分点0=t0<t1<⋯<tm=10=t_0<t_1<\cdots<t_m=1を、同じ小区間内のffの振幅がδ\delta未満であり、各区間の長さがδ/(2n)\delta/(2n)未満となるようにとる。節点で

g(tj)=f(tj)+(−1)j2δg(t_j)=f(t_j)+(-1)^j2\delta

と定め、各小区間上でggを線形にする。小区間内では、ffと端点値の線形補間との差はδ\delta未満であり、交互に加えた項の絶対値は2δ2\delta以下なので、∥g−f∥∞<3δ<ε\|g-f\|_\infty<3\delta<\varepsilonである。

隣り合う節点におけるggの値の差の絶対値は3δ3\deltaより大きい。したがって各線分の傾きの絶対値はnnより大きい。任意のx∈[0,1]x\in[0,1]に対して、xxと同じ線分上に十分近いy≠xy\neq xをとると∣g(y)−g(x)∣>n∣y−x∣|g(y)-g(x)|>n|y-x|となる。よってg∉Eng\notin E_nである。任意の一様ノルム球がEnE_nの外の点を含むため、EnE_nの内部は空である。EnE_nは閉集合なので疎集合である。

定理 1.1により、C[0,1]C[0,1]は可算個の疎集合EnE_nの和では覆われない。さらにC[0,1]∖⋃nEnC[0,1]\setminus\bigcup_nE_nは稠密である。この補集合の各関数は、どの点でも有限の微分係数をもたない。▨

2 一様有界性原理

定理 2.1 (一様有界性原理).XXを Banach 空間、YYをノルム空間とし、(Tα)α∈A(T_\alpha)_{\alpha\in A}をB(X,Y)B(X,Y)の作用素族とする。任意のx∈Xx\in Xに対して

sup⁡α∈A∥Tαx∥Y<∞\sup_{\alpha\in A}\|T_\alpha x\|_Y<\infty

であるならば、

sup⁡α∈A∥Tα∥<∞\sup_{\alpha\in A}\|T_\alpha\|<\infty

である。終域YYの完備性は仮定しない。

証明.n≥1n\geq1に対して

En:={x∈X:sup⁡α∈A∥Tαx∥Y≤n}E_n:=\left\{x\in X:\sup_{\alpha\in A}\|T_\alpha x\|_Y\leq n\right\}

とおく。各TαT_\alphaは連続なので、En=⋂α∈A{x:∥Tαx∥Y≤n}E_n=\bigcap_{\alpha\in A}\{x:\|T_\alpha x\|_Y\leq n\}は閉集合である。各点有界性からX=⋃n=1∞EnX=\bigcup_{n=1}^{\infty}E_nである。

定理 1.1により、あるNNについてENE_Nは空でない内部をもつ。したがって、あるx0∈Xx_0\in Xとr>0r>0が存在して、閉球B‾(x0,r)\overline B(x_0,r)がENE_Nに含まれる。∥z∥X≤r\|z\|_X\leq rならばx0x_0とx0+zx_0+zはともにENE_Nに属するため、任意のα∈A\alpha\in Aに対して

∥Tαz∥Y≤∥Tα(x0+z)∥Y+∥Tαx0∥Y≤2N\|T_\alpha z\|_Y \leq\|T_\alpha(x_0+z)\|_Y+\|T_\alpha x_0\|_Y \leq2N

である。∥u∥X≤1\|u\|_X\leq1に対してz=ruz=ruとおくと∥Tαu∥Y≤2N/r\|T_\alpha u\|_Y\leq2N/rを得る。したがって、すべてのα\alphaに対して∥Tα∥≤2N/r\|T_\alpha\|\leq2N/rである。▨

定義域の完備性を外すと、点ごとの有界性から一様有界性は従わない。

例 2.2 (点ごとに有界だが一様に有界でない作用素族).c00c_{00}に上限ノルムを入れ、Tn(x)=nxnT_n(x)=n x_nと定める。各x∈c00x\in c_{00}についてTn(x)T_n(x)は有限個を除いて00なので点ごとに有界であるが、∥Tn∥=n\|T_n\|=nである。c00c_{00}は§E12.1 例 2.5で確認したとおり完備でない。

3 開写像定理と閉グラフ定理

定理 3.1 (開写像定理).X,YX,Yを Banach 空間とし、T∈B(X,Y)T\in B(X,Y)が全射であるならば、TTは開写像である。

証明.U:={x∈X:∥x∥X<1}U:=\{x\in X:\|x\|_X<1\}とおく。TTは全射なので、任意のy∈Yy\in Yはあるx∈Xx\in Xの像である。n>∥x∥Xn>\|x\|_Xをとればx∈nUx\in nUなので

Y=⋃n=1∞T(nU)⊆⋃n=1∞T(nU)‾.Y=\bigcup_{n=1}^{\infty}T(nU) \subseteq\bigcup_{n=1}^{\infty}\overline{T(nU)}.

各T(nU)‾\overline{T(nU)}はYYの部分集合なので逆の包含も成り立ち、等号を得る。YYは Banach 空間であり、T(nU)‾\overline{T(nU)}は閉集合なので、定理 1.1により、あるnnについてT(nU)‾\overline{T(nU)}は空でない内部をもつ。スカラー倍によって、A:=T(U)‾A:=\overline{T(U)}も空でない内部をもつ。

T(U)T(U)は凸かつ平衡であるため、その閉包AAも凸かつ平衡である。あるy0∈Yy_0\in Yとρ>0\rho>0が存在してB(y0,ρ)⊆AB(y_0,\rho)\subseteq Aとなる。∥y∥Y<ρ\|y\|_Y<\rhoならばy0+y∈Ay_0+y\in Aかつ−y0∈A-y_0\in Aであるため、y=(y0+y)+(−y0)∈A+A⊆2Ay=(y_0+y)+(-y_0)\in A+A\subseteq2Aである。したがってy/2∈Ay/2\in Aであり、

B(0,r)⊆T(U)‾,r:=ρ/2(2)B(0,r)\subseteq\overline{T(U)},\qquad r:=\rho/2 \tag{2}

を得る。

次に閉包を外す。∥y∥Y<r/2\|y\|_Y<r/2とする。(2) を1/21/2倍するとB(0,r/2)⊆T(U/2)‾B(0,r/2)\subseteq\overline{T(U/2)}であるため、x1∈U/2x_1\in U/2を∥y−Tx1∥Y<r/4\|y-Tx_1\|_Y<r/4となるようにとることができる。帰納的に、n−1n-1段目の残差のノルムがr/2nr/2^n未満ならば、(2) を2−n2^{-n}倍した包含をその残差へ適用する。この操作により、n≥1n\geq1に対して

∥xn∥X<2−n,∥y−T∑k=1nxk∥Y<r2n+1(3)\|x_n\|_X<2^{-n}, \qquad \left\|y-T\sum_{k=1}^n x_k\right\|_Y<\frac{r}{2^{n+1}} \tag{3}

を満たす列(xn)(x_n)を構成することができる。

∑n∥xn∥X<1\sum_n\|x_n\|_X<1であり、XXは Banach 空間なので、級数∑nxn\sum_nx_nはあるx∈Xx\in Xに収束する。∥x∥X<1\|x\|_X<1である。TTは有界なので極限と交換することができ、(3) からTx=yTx=yを得る。よって

B(0,r/2)⊆T(U).(4)B(0,r/2)\subseteq T(U). \tag{4}

O⊆XO\subseteq Xを開集合、x0∈Ox_0\in Oとする。あるδ>0\delta>0が存在してx0+δU⊆Ox_0+\delta U\subseteq Oとなる。(4) から

Tx0+B(0,δr/2)⊆T(O)Tx_0+B(0,\delta r/2)\subseteq T(O)

である。したがってT(O)T(O)は開集合であり、TTは開写像である。▨

定理 3.2 (有界逆写像定理).X,YX,Yを Banach 空間とし、T∈B(X,Y)T\in B(X,Y)が全単射であるならば、T−1:Y→XT^{-1}:Y\to Xは有界である。

証明.TTは全射なので、定理 3.1によりTTは開写像である。U={x∈X:∥x∥X<1}U=\{x\in X:\|x\|_X<1\}は開集合であるから、T(U)T(U)は00の近傍である。したがってT−1T^{-1}は00で連続である。§E12.2 定理 1.4により、線形写像T−1T^{-1}は有界である。▨

定理 3.3 (閉グラフ定理).X,YX,Yを Banach 空間とし、線形写像T:X→YT:X\to YのグラフG(T)={(x,Tx):x∈X}G(T)=\{(x,Tx):x\in X\}がX×YX\times Yで閉じているならば、TTは有界である。

証明.X×YX\times Yに∥(x,y)∥:=∥x∥X+∥y∥Y\|(x,y)\|:=\|x\|_X+\|y\|_Yを入れる。((xn,yn))((x_n,y_n))がこのノルムについて Cauchy 列ならば、(xn)(x_n)と(yn)(y_n)はそれぞれXXとYYの Cauchy 列である。完備性によりxn→xx_n\to x、yn→yy_n\to yとなり、∥(xn,yn)−(x,y)∥=∥xn−x∥X+∥yn−y∥Y→0\|(x_n,y_n)-(x,y)\|=\|x_n-x\|_X+\|y_n-y\|_Y\to0である。したがってX×YX\times Yは Banach 空間である。G(T)G(T)は閉部分空間なので、§E12.1 命題 1.4によって Banach 空間である。第1座標への射影

π:G(T)→X,π(x,Tx)=x\pi:G(T)\to X,\qquad \pi(x,Tx)=x

は線形、全単射かつ有界である。定理 3.2により、π−1:x↦(x,Tx)\pi^{-1}:x\mapsto(x,Tx)は有界である。したがって、あるC>0C>0が存在して

∥x∥X+∥Tx∥Y=∥π−1x∥≤C∥x∥X\|x\|_X+\|Tx\|_Y=\|\pi^{-1}x\|\leq C\|x\|_X

となる。よって∥Tx∥Y≤C∥x∥X\|Tx\|_Y\leq C\|x\|_Xであり、TTは有界である。▨

閉グラフ定理では、線形作用素TTの定義域が Banach 空間XXの全体である。稠密な真部分空間だけを定義域とする非有界作用素には、閉グラフ定理をそのまま適用することができない。

有界逆写像定理では、終域の完備性を外すと結論は保証されない。

例 3.4 (有界な全単射の終域が不完備である反例).E=C1[0,1]E=C^1[0,1]とし、

∥f∥C1:=∥f∥∞+∥f′∥∞\|f\|_{C^1}:=\|f\|_\infty+\|f'\|_\infty

とおく。X=(E,∥⋅∥C1)X=(E,\|\cdot\|_{C^1})は Banach 空間である。実際、(fn)(f_n)がC1C^1ノルムで Cauchy ならば、fn→ff_n\to fとfn′→gf_n'\to gがともに一様収束する。恒等式

fn(x)−fn(0)=∫0xfn′(t) dtf_n(x)-f_n(0)=\int_0^x f_n'(t)\,dt

で極限をとるとf(x)−f(0)=∫0xg(t) dtf(x)-f(0)=\int_0^x g(t)\,dtとなるため、f∈C1[0,1]f\in C^1[0,1]かつf′=gf'=gである。

一方、Y=(E,∥⋅∥∞)Y=(E,\|\cdot\|_\infty)は完備でない。関数

gn(x)=(x−1/2)2+1/ng_n(x)=\sqrt{(x-1/2)^2+1/n}

はC1[0,1]C^1[0,1]に属し、∣x−1/2∣|x-1/2|へ一様収束するが、極限はx=1/2x=1/2で微分可能でない。

恒等写像I:X→YI:X\to Yは∥f∥∞≤∥f∥C1\|f\|_\infty\leq\|f\|_{C^1}により有界な全単射である。しかしfn(x)=xn/nf_n(x)=x^n/nとすると

∥fn∥∞=1n,∥fn∥C1=1n+1,\|f_n\|_\infty=\frac1n, \qquad \|f_n\|_{C^1}=\frac1n+1,

なので、I−1:Y→XI^{-1}:Y\to Xの作用素ノルムを有限の定数で抑えることはできない。有界な全単射I:X→YI:X\to Yの終域YYが不完備である場合に、有界逆写像定理の結論が成り立たないことが分かる。

4 演習

問題 4.1 (閉集合への分解と終域の完備性). 一様有界性原理の証明でEnE_nが閉じている理由と、終域YYの完備性が不要である理由を説明せよ。

問題 4.2 (開写像定理における二つの完備性の役割). 開写像定理の証明で、Baire の範疇定理を用いる箇所と、定義域XXの完備性を用いる箇所を分けて示せ。

問題 4.3 (閉グラフ定理の各段の不等式). 閉グラフ定理の証明で、G(T)G(T)が Banach 空間であること、射影π\piが有界であること、およびπ−1\pi^{-1}の有界性からTTの有界性が従うことを、それぞれ不等式で確認せよ。

問題 4.4 (c00c_{00}上の点ごとに有界な作用素族).c00c_{00}上のTn(x)=nxnT_n(x)=nx_nについて、各TnT_nが有界で∥Tn∥=n\|T_n\|=nであること、および各固定x∈c00x\in c_{00}に対してsup⁡n∣Tnx∣<∞\sup_n|T_nx|<\inftyであることを証明せよ。

参考文献

  1. Walter Rudin, Functional Analysis, 2nd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1991.一様有界性原理、開写像定理および閉グラフ定理を参考にした。
  2. John B. Conway, A Course in Functional Analysis, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1990.Banach 空間論の基本定理を参考にした。
  3. Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, New York, 2011.Baire の範疇定理に基づく基本定理群を参考にした。
  4. John C. Oxtoby, Measure and Category, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1980.Baire の範疇定理による典型的な連続関数の議論を参考にした。

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