§E12.7Banach–Alaoglu の定理

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前の記事では、連続双対X∗X^*の元を各x∈Xx\in Xにおける値によって観測する弱星位相を始位相として構成し、ネットの収束がすべての評価写像における収束と同値であることを示した。しかし、位相を粗くしただけでは、X∗X^*の有界な族から収束する部分ネットを取り出す根拠は得られない。取り出しを保証するのはコンパクト性であり、弱星位相のもとでコンパクトになる集合が連続双対の閉単位球BX∗B_{X^*}である。x∗∈BX∗x^*\in B_{X^*}を値の族(x∗(x))x∈X(x^*(x))_{x\in X}とみなすと、各座標は∣x∗(x)∣≤∥x∥|x^*(x)|\leq\|x\|によって半径∥x∥\|x\|の閉円板に収まる。したがってBX∗B_{X^*}は、コンパクトな集合の積の内側にある部分集合として記述され、積の側で成り立つコンパクト性を受け取る候補になる。BX∗B_{X^*}の弱星コンパクト性と、その帰結を点列の言葉で述べることができる範囲を解説する。

1 弱星コンパクト性

係数体K\mathbb KはR\mathbb RまたはC\mathbb Cとする。BX∗={x∗∈X∗:∥x∗∥≤1}B_{X^*}=\{x^*\in X^*:\|x^*\|\leq1\}と書き、各x∈Xx\in Xに対してDx={z∈K:∣z∣≤∥x∥}D_x=\{z\in\mathbb K:|z|\leq\|x\|\}と置く。DxD_xはR\mathbb Rの閉区間またはC\mathbb Cの閉円板なのでコンパクトである。

補題 1.1. 積空間

P=∏x∈XDxP=\prod_{x\in X}D_x

と写像

ι:BX∗⟶P,ι(x∗)=(x∗(x))x∈X\iota:B_{X^*}\longrightarrow P,\qquad \iota(x^*)=(x^*(x))_{x\in X}

を考える。ι\iotaは単射であり、その像は

C=⋂x,y∈X ⋂a,b∈K{z∈P:zax+by=azx+bzy}C=\bigcap_{x,y\in X}\ \bigcap_{a,b\in\mathbb K} \{z\in P:z_{ax+by}=az_x+bz_y\}

に一致する。特に、ι(BX∗)\iota(B_{X^*})はPPの閉集合である。

証明.x∗∈BX∗x^*\in B_{X^*}なら∣x∗(x)∣≤∥x∥|x^*(x)|\leq\|x\|なので、ι(x∗)∈P\iota(x^*)\in Pである。すべての座標が等しい二つの線形汎関数は各x∈Xx\in Xで同じ値を取るから、ι\iotaは単射である。線形性によりι(BX∗)⊂C\iota(B_{X^*})\subset Cである。

逆にz∈Cz\in Cを取る。xz∗(x)=zxx^*_z(x)=z_xと定めると、CCの定義からxz∗x^*_zは線形である。z∈Pz\in Pなので

∣xz∗(x)∣=∣zx∣≤∥x∥(x∈X)|x^*_z(x)|=|z_x|\leq\|x\|\qquad(x\in X)

であり、xz∗x^*_zは有界で∥xz∗∥≤1\|x^*_z\|\leq1を満たす。したがってz=ι(xz∗)∈ι(BX∗)z=\iota(x^*_z)\in\iota(B_{X^*})であり、C⊂ι(BX∗)C\subset\iota(B_{X^*})である。

固定したx,y,a,bx,y,a,bに対して、座標射影の連続性により

z⟼zax+by−azx−bzyz\longmapsto z_{ax+by}-az_x-bz_y

はPP上で連続である。その零点集合は閉集合であり、CCはこれらの閉集合の共通部分なので閉集合である。▨

補題 1.2.BX∗B_{X^*}に弱星位相σ(X∗,X)\sigma(X^*,X)の相対位相を入れると、ι:BX∗→ι(BX∗)\iota:B_{X^*}\to\iota(B_{X^*})は積位相の相対位相に関する同相写像である。

証明. 積位相は各座標射影πx:P→Dx\pi_x:P\to D_xを連続にする最も粗い位相である。一方、

(πx∘ι)(x∗)=x∗(x)(\pi_x\circ\iota)(x^*)=x^*(x)

であり、弱星位相はすべての評価写像x∗↦x∗(x)x^*\mapsto x^*(x)を連続にする最も粗い位相である。したがって、ι\iotaによってBX∗B_{X^*}へ引き戻される積位相は弱星位相の相対位相に一致する。ι\iotaは像への全単射なので、同相写像である。▨

定理 1.3 (Banach–Alaoglu の定理). ノルム空間XXの連続双対X∗X^*の閉単位球BX∗B_{X^*}は、弱星位相σ(X∗,X)\sigma(X^*,X)に関してコンパクトである。

証明. 各DxD_xはコンパクトであるから、Tychonoff の定理§E2.19 定理 8.2によりP=∏x∈XDxP=\prod_{x\in X}D_xはコンパクトである。補題 1.1によりι(BX∗)\iota(B_{X^*})はPPの閉集合なのでコンパクトである。補題 1.2によりBX∗B_{X^*}とι(BX∗)\iota(B_{X^*})は同相であるから、BX∗B_{X^*}は弱星コンパクトである。▨

定理の結論は位相的コンパクト性である。一般のXXについて、弱星コンパクト性を「任意の点列が弱星収束部分列をもつ」と読み替えることはできない。積空間は非可算個の座標をもち得るため、点列だけでは積位相のコンパクト性を検出することができない場合がある。コンパクト性から収束部分ネットを得ることはできるが、収束部分列を得るには追加条件が必要である。

2 可分な場合の距離化

定理 2.1.XXが可分なノルム空間であるとする。XXの閉単位球に稠密な点列(xn)n≥1(x_n)_{n\geq1}を取り、f,g∈BX∗f,g\in B_{X^*}に対して

d(f,g)=∑n=1∞2−n∣(f−g)(xn)∣1+∣(f−g)(xn)∣d(f,g)=\sum_{n=1}^\infty2^{-n} \frac{|(f-g)(x_n)|}{1+|(f-g)(x_n)|}

と定める。このときddはBX∗B_{X^*}上の距離であり、ddが定める位相は弱星位相の相対位相に一致する。

証明. 各項は非負で2−n2^{-n}以下なので級数は収束する。対称性は∣(f−g)(xn)∣=∣(g−f)(xn)∣|(f-g)(x_n)|=|(g-f)(x_n)|から従い、d(f,f)=0d(f,f)=0は各項の分子が00になることから従う。t↦t/(1+t)t\mapsto t/(1+t)は[0,∞)[0,\infty)上で劣加法的であるため、各項に三角不等式を適用するとddの三角不等式を得る。d(f,g)=0d(f,g)=0なら(f−g)(xn)=0(f-g)(x_n)=0がすべてのnnについて成り立つ。閉単位球の稠密性とf−gf-gの連続性によりf−gf-gはXX上で00なので、f=gf=gである。したがってddは距離である。

弱星収束するネットfα⇀∗ff_\alpha\overset{*}{\rightharpoonup}fをBX∗B_{X^*}に取る。ε>0\varepsilon>0に対して、まず∑n>N2−n<ε/2\sum_{n>N}2^{-n}<\varepsilon/2となるNNを選ぶ。各1≤n≤N1\leq n\leq Nについて(fα−f)(xn)→0(f_\alpha-f)(x_n)\to0なので、有向性により、ある添字以後は最初のNN項の和がε/2\varepsilon/2未満になる。したがってd(fα,f)→0d(f_\alpha,f)\to0である。

逆にd(fα,f)→0d(f_\alpha,f)\to0と仮定する。固定したnnについて、級数の第nn項も00に収束するから(fα−f)(xn)→0(f_\alpha-f)(x_n)\to0である。任意のx∈Xx\in Xを取る。x=0x=0の場合は(fα−f)(0)=0(f_\alpha-f)(0)=0である。x≠0x\neq0とし、R=max⁡{1,∥x∥}R=\max\{1,\|x\|\}、u=x/Ru=x/Rと置く。∥u∥≤1\|u\|\leq1である。任意のε>0\varepsilon>0に対して、2R∥u−xn∥<ε/22R\|u-x_n\|<\varepsilon/2となるnnを選ぶ。∥fα∥,∥f∥≤1\|f_\alpha\|,\|f\|\leq1なので

∣(fα−f)(x)∣≤R∣(fα−f)(u−xn)∣+R∣(fα−f)(xn)∣≤2R∥u−xn∥+R∣(fα−f)(xn)∣.|(f_\alpha-f)(x)| \leq R|(f_\alpha-f)(u-x_n)|+R|(f_\alpha-f)(x_n)| \leq2R\|u-x_n\|+R|(f_\alpha-f)(x_n)|.

十分大きいα\alphaでは第二項もε/2\varepsilon/2未満になる。したがって(fα−f)(x)→0(f_\alpha-f)(x)\to0であり、§E12.5 命題 2.2によりfα⇀∗ff_\alpha\overset{*}{\rightharpoonup}fである。二つの位相におけるネット収束が一致するので、二つの位相は一致する。▨

系 2.2.XXが可分なら、BX∗B_{X^*}の任意の点列は弱星収束部分列をもつ。

証明.定理 1.3と定理 2.1により、BX∗B_{X^*}はコンパクト距離空間である。コンパクト距離空間の点列(fn)(f_n)に対し、FN={fn:n≥N}‾F_N=\overline{\{f_n:n\geq N\}}と置くと、(FN)(F_N)は空でない閉集合の減少列である。コンパクト性により⋂NFN\bigcap_NF_Nは空でない。f∈⋂NFNf\in\bigcap_NF_Nを取ると、各kkについて、既に選んだ添字より大きいnkn_kでd(fnk,f)<1/kd(f_{n_k},f)<1/kを満たすものを選ぶことができる。したがってfnk→ff_{n_k}\to fであり、距離位相と弱星位相の一致により弱星収束する。▨

3 演習

問題 3.1 (積表示にノルム条件が現れない理由).補題 1.1の集合CCで、ノルム条件を別の閉条件として追加する必要がない理由を説明せよ。

解答.

CCは積空間P=∏x∈XDxP=\prod_{x\in X}D_xの部分集合として定めてあり、z∈Pz\in Pであること自体が各x∈Xx\in Xについて∣zx∣≤∥x∥|z_x|\leq\|x\|を意味する。したがってz∈Cz\in Cから定まる線形汎関数xz∗(x)=zxx^*_z(x)=z_xは∣xz∗(x)∣≤∥x∥|x^*_z(x)|\leq\|x\|を満たし、∥xz∗∥≤1\|x^*_z\|\leq1が従う。ノルム条件は積の因子DxD_xの取り方に組み込まれているので、閉条件として重ねて課す必要はない。▨

問題 3.2 (稠密な点列を閉単位球で取ることの十分性). 可分性から選んだ点列(xn)(x_n)がXX全体ではなく閉単位球で稠密であれば十分である理由を説明せよ。

解答.

任意のx∈Xx\in Xに対してR=max⁡{1,∥x∥}R=\max\{1,\|x\|\}と置くと、u=x/Ru=x/RはXXの閉単位球に属し、f,g∈BX∗f,g\in B_{X^*}の線形性により(f−g)(x)=R (f−g)(u)(f-g)(x)=R\,(f-g)(u)が成り立つ。したがって閉単位球の上でf−gf-gの値を制御すれば、そのRR倍としてXX全体での値が制御される。定理 2.1の証明はこの縮小を用いて、∥u−xn∥\|u-x_n\|が小さくなるnnを閉単位球の中の稠密な点列から選んでいる。XX全体で稠密な点列を要求しても、得られる評価は同じである。▨

問題 3.3 (Banach–Alaoglu の定理の証明の再構成).定理 1.3の証明で、積空間のコンパクト性、像の閉性、および位相の一致をそれぞれどこで用いたかを再構成せよ。

解答.

積空間のコンパクト性は、各DxD_xがコンパクトであることから Tychonoff の定理§E2.19 定理 8.2を通じてP=∏x∈XDxP=\prod_{x\in X}D_xについて用い、以後の議論の舞台を与える。像の閉性は補題 1.1が与えるものであり、コンパクト空間の閉部分集合がコンパクトであること(§E2.19 命題 4.1)と組み合わせて、ι(BX∗)\iota(B_{X^*})がコンパクトであることを得る段で用いる。位相の一致は補題 1.2が与えるものであり、ι\iotaがBX∗B_{X^*}からι(BX∗)\iota(B_{X^*})への同相写像であることを通じて、ι(BX∗)\iota(B_{X^*})のコンパクト性をBX∗B_{X^*}の弱星コンパクト性へ移す段で用いる。▨

問題 3.4 (半径rrの球の弱星コンパクト性).r>0r>0に対してrBX∗rB_{X^*}も弱星コンパクトであることを証明せよ。

解答.

mr:X∗→X∗m_r:X^*\to X^*をmr(f)=rfm_r(f)=rfで定める。各x∈Xx\in Xについて(mr(f))(x)=r f(x)(m_r(f))(x)=r\,f(x)であるから、写像f↦(mr(f))(x)f\mapsto(m_r(f))(x)は評価写像f↦f(x)f\mapsto f(x)のrr倍であり、弱星位相について連続である。弱星位相はすべての評価写像を連続にする最も粗い位相であるから、mrm_rは弱星位相について連続である。r>0r>0なのでm1/rm_{1/r}も同じ理由で連続であり、m1/rm_{1/r}はmrm_rの逆写像である。したがってmrm_rはX∗X^*の弱星同相写像である。定理 1.3によりBX∗B_{X^*}は弱星コンパクトであり、連続写像によるコンパクト集合の像はコンパクトである(§E2.19 定理 4.2)から、rBX∗=mr(BX∗)rB_{X^*}=m_r(B_{X^*})も弱星コンパクトである。なおr=0r=0の場合、rBX∗={0}rB_{X^*}=\{0\}は一点集合であり、有限集合はコンパクトである。▨

参考文献

  1. John B. Conway, A Course in Functional Analysis, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1990.
  2. Walter Rudin, Functional Analysis, 2nd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1991.
  3. Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, New York, 2011.

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