§E2.28Baire の範疇定理

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位相空間の部分集合のなかには、閉包をとってもなお内部が空であるという意味で、空間のどこにも厚みをもたないものがある。実数直線における一点集合や整数全体がその例である。このような集合を可算個あわせたときに空間全体が尽くされてしまうかどうかは空間による違いであり、有理数全体は自分自身の一点集合によって尽くされてしまう。厚みをもたない集合を可算個あわせたものが空間のどの部分をも埋め尽くさないという条件は、可算個の稠密な開集合の共通部分がふたたび稠密であるという形で述べ直すことができ、これを満たす空間を Baire 空間という。コンパクトな Hausdorff 空間はこの条件を満たし、そこから、あるコンパクト化のなかで可算個の開集合の共通部分として表される空間、すなわち Čech 完備な空間がすべて Baire 空間であることが従う。完備な距離空間、局所コンパクトな Hausdorff 空間、ポーランド空間、およびσ-コンパクトな空間のコンパクト化の剰余の Baire 性は、いずれもこの一つの定理から得られる。Baire 空間であることは、直接に構成することが難しい点の存在を導く足場として広く用いられる。本記事では、この条件と、それが成り立つ空間について解説する。

1 疎集合、第一類集合、Baire 空間

定義 1.1 (疎集合、第一類集合、第二類集合).(X,O)(X,\mathcal O)を位相空間とし、A⊆XA\subseteq Xとする。内部と閉包はXXにおいてとる。

  1. int⁡(A‾)=∅\tpint{\overline A}=\emptysetが成り立つとき、AAをXXにおける 疎集合 (nowhere dense set) といい、AAはXXで疎であるという。
  2. XXで疎である集合の列(An)n≥1(A_n)_{n\geq1}が存在してA=⋃n≥1AnA=\bigcup_{n\geq1}A_nが成り立つとき、AAをXXにおける 第一類集合 (set of first category) という。
  3. AAがXXにおける第一類集合でないとき、AAをXXにおける 第二類集合 (set of second category) という。

定義 1.2 (Baire 空間). 位相空間XXが Baire 空間 (Baire space) であるとは、XXの開集合からなる任意の列(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}について、すべてのUnU_nがXXで稠密であるならば⋂n≥1Un\bigcap_{n\geq1}U_nもXXで稠密であることをいう。

命題 1.3.(X,O)(X,\mathcal O)を位相空間とする。次の三つは同値である。

  1. XXは Baire 空間である。
  2. XXにおける任意の第一類集合AAについてint⁡(A)=∅\tpint{A}=\emptysetである。
  3. XXの閉集合からなる列(Fn)n≥1(F_n)_{n\geq1}とXXの空でない開集合WWがW⊆⋃n≥1FnW\subseteq\bigcup_{n\geq1}F_nを満たすならば、int⁡(Fn)≠∅\tpint{F_n}\neq\emptysetを満たすn≥1n\geq1が存在する。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。AAをXXにおける第一類集合とし、XXで疎である集合の列(An)n≥1(A_n)_{n\geq1}でA=⋃n≥1AnA=\bigcup_{n\geq1}A_nを満たすものをとる。Un=X∖An‾U_n=X\setminus\overline{A_n}とおくと、An‾\overline{A_n}は閉集合であるからUnU_nはXXの開集合であり、int⁡(An‾)=∅\tpint{\overline{A_n}}=\emptysetと§E2.11 命題 2.9 (3)によりUnU_nはXXで稠密である。XXの Baire 性により⋂n≥1Un\bigcap_{n\geq1}U_nはXXで稠密であるから、ふたたび§E2.11 命題 2.9 (3)により

int⁡(X∖⋂n≥1Un)=∅\tpint{X\setminus\bigcap_{n\geq1}U_n}=\emptyset

である。§E1.2 定理 3.2によりX∖⋂n≥1Un=⋃n≥1An‾X\setminus\bigcap_{n\geq1}U_n=\bigcup_{n\geq1}\overline{A_n}であり、An⊆An‾A_n\subseteq\overline{A_n}からA⊆⋃n≥1An‾A\subseteq\bigcup_{n\geq1}\overline{A_n}である。§E2.11 命題 2.5 (1)によりint⁡(A)\tpint{A}はAAに含まれる開集合であるから⋃n≥1An‾\bigcup_{n\geq1}\overline{A_n}に含まれ、同じ項によりint⁡(A)⊆int⁡(⋃n≥1An‾)=∅\tpint{A}\subseteq\tpint{\bigcup_{n\geq1}\overline{A_n}}=\emptysetである。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。(Fn)n≥1(F_n)_{n\geq1}をXXの閉集合の列、WWをXXの空でない開集合とし、W⊆⋃n≥1FnW\subseteq\bigcup_{n\geq1}F_nとする。すべてのn≥1n\geq1についてint⁡(Fn)=∅\tpint{F_n}=\emptysetであると仮定する。§E2.11 命題 2.5 (2)によりFn‾=Fn\overline{F_n}=F_nであるから、各FnF_nはXXで疎であり、⋃n≥1Fn\bigcup_{n\geq1}F_nはXXにおける第一類集合である。(2)によりint⁡(⋃n≥1Fn)=∅\tpint{\bigcup_{n\geq1}F_n}=\emptysetである。一方、WWは⋃n≥1Fn\bigcup_{n\geq1}F_nに含まれる開集合であるから、§E2.11 命題 2.5 (1)によりW⊆int⁡(⋃n≥1Fn)W\subseteq\tpint{\bigcup_{n\geq1}F_n}であり、W=∅W=\emptysetとなる。これはW≠∅W\neq\emptysetと両立しない。ゆえにint⁡(Fn)≠∅\tpint{F_n}\neq\emptysetを満たすn≥1n\geq1が存在する。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}をXXの稠密な開集合の列とし、WWをXXの空でない開集合とする。W∩⋂n≥1Un=∅W\cap\bigcap_{n\geq1}U_n=\emptysetと仮定する。Fn=X∖UnF_n=X\setminus U_nとおくとFnF_nはXXの閉集合であり、§E2.11 命題 2.9 (3)によりint⁡(Fn)=∅\tpint{F_n}=\emptysetである。仮定と§E1.2 定理 3.2により

W⊆X∖⋂n≥1Un=⋃n≥1FnW\subseteq X\setminus\bigcap_{n\geq1}U_n=\bigcup_{n\geq1}F_n

であるから、(3)によりint⁡(Fn)≠∅\tpint{F_n}\neq\emptysetを満たすnnが存在する。これはint⁡(Fn)=∅\tpint{F_n}=\emptysetと両立しない。ゆえにW∩⋂n≥1Un≠∅W\cap\bigcap_{n\geq1}U_n\neq\emptysetである。WWは任意の空でない開集合であったから、§E2.11 命題 2.9 (2)により⋂n≥1Un\bigcap_{n\geq1}U_nはXXで稠密であり、XXは Baire 空間である。▨

例 1.4.R\mathbb Rには通常の位相を入れ、Q\mathbb QにはR\mathbb Rからの部分空間位相を入れる。

  1. 任意のa∈Ra\in\mathbb Rに対して、一点集合{a}\{a\}はR\mathbb Rの閉集合であり、R\mathbb Rで疎である。
  2. Z\mathbb ZはR\mathbb Rで疎である。
  3. Q\mathbb QはR\mathbb Rにおける第一類集合であるが、R\mathbb Rで疎ではない。
  4. Q\mathbb Qの任意の一点集合はQ\mathbb Qの閉集合であってQ\mathbb Qで疎であり、Q\mathbb QはQ\mathbb Qにおける第一類集合である。とくにQ\mathbb Qは Baire 空間でない。

証明.UUをR\mathbb Rの空でない開集合とし、x∈Ux\in Uをとると、§E2.2 定義 1.1によりB(x,ε)=(x−ε,x+ε)⊆UB(x,\varepsilon)=(x-\varepsilon,x+\varepsilon)\subseteq Uを満たす実数ε>0\varepsilon>0が存在する。§D1.4 系 2.2の有理数の稠密性によりx<q<x+εx<q<x+\varepsilonを満たす有理数qqが存在し、§D1.4 補題 2.3によりx<r<x+εx<r<x+\varepsilonを満たす無理数rrが存在する。いずれもB(x,ε)⊆UB(x,\varepsilon)\subseteq Uに属するから、R\mathbb Rの空でない開集合は有理数と無理数をともに含む。

(1)を示す。y≠ay\neq aを満たすy∈Ry\in\mathbb Rに対してB(y,∣y−a∣)⊆R∖{a}B(y,\lvert y-a\rvert)\subseteq\mathbb R\setminus\{a\}であるから、§E2.2 定義 1.1によりR∖{a}\mathbb R\setminus\{a\}は開集合であり、§E2.11 命題 2.5 (2)により{a}‾={a}\overline{\{a\}}=\{a\}である。{a}\{a\}に含まれる空でない開集合は有理数と無理数をともに含むことができないから存在せず、§E2.11 命題 2.5 (1)によりint⁡({a}‾)=∅\tpint{\overline{\{a\}}}=\emptysetである。

(2)を示す。x∈R∖Zx\in\mathbb R\setminus\mathbb Zとする。x>0x>0の場合、§E2.5 補題 6.1によりk≤x<k+1k\leq x<k+1を満たす非負整数kkがただ一つ存在し、x∉Zx\notin\mathbb Zからk<x<k+1k<x<k+1である。x<0x<0の場合、−x>0-x>0かつ−x∉Z-x\notin\mathbb Zであるから同じ補題によりk<−x<k+1k<-x<k+1を満たす非負整数kkが存在し、−(k+1)<x<−k-(k+1)<x<-kである。いずれの場合も、m<x<m+1m<x<m+1を満たす整数mmが存在する。m<j<m+1m<j<m+1を満たす整数jjは存在しないから(m,m+1)∩Z=∅(m,m+1)\cap\mathbb Z=\emptysetであり、ε=min⁡{x−m,m+1−x}>0\varepsilon=\min\{x-m,m+1-x\}>0とおけばB(x,ε)⊆(m,m+1)⊆R∖ZB(x,\varepsilon)\subseteq(m,m+1)\subseteq\mathbb R\setminus\mathbb Zである。ゆえに§E2.2 定義 1.1によりR∖Z\mathbb R\setminus\mathbb Zは開集合であり、§E2.11 命題 2.5 (2)によりZ‾=Z\overline{\mathbb Z}=\mathbb Zである。Z\mathbb Zは無理数を含まないから、Z\mathbb Zに含まれる空でない開集合は存在せず、§E2.11 命題 2.5 (1)によりint⁡(Z‾)=∅\tpint{\overline{\mathbb Z}}=\emptysetである。

(3)を示す。§E1.18 定理 4.1によりQ={q1,q2,…}\mathbb Q=\{q_1,q_2,\ldots\}と番号づけるとQ=⋃n≥1{qn}\mathbb Q=\bigcup_{n\geq1}\{q_n\}であり、(1)により各{qn}\{q_n\}はR\mathbb Rで疎であるから、Q\mathbb QはR\mathbb Rにおける第一類集合である。一方、R\mathbb Rの空でない開集合は有理数を含むから、§E2.11 命題 2.9 (2)によりQ\mathbb QはR\mathbb Rで稠密であり、Q‾=R\overline{\mathbb Q}=\mathbb Rである。ゆえにint⁡(Q‾)=R≠∅\tpint{\overline{\mathbb Q}}=\mathbb R\neq\emptysetであり、Q\mathbb QはR\mathbb Rで疎でない。

(4)を示す。q∈Qq\in\mathbb Qとする。(1)により{q}\{q\}はR\mathbb Rの閉集合であるから、§E2.12 命題 4.6により{q}={q}∩Q\{q\}=\{q\}\cap\mathbb QはQ\mathbb Qの閉集合であり、§E2.11 命題 2.5 (2)によりQ\mathbb Qにおける閉包は{q}\{q\}である。{q}\{q\}に含まれるQ\mathbb Qの空でない開集合をVVとするとV={q}V=\{q\}であり、§E2.12 定義 4.1によりV=V~∩QV=\widetilde V\cap\mathbb Qを満たすR\mathbb Rの開集合V~\widetilde Vが存在するから、§E2.2 定義 1.1によりB(q,ε)⊆V~B(q,\varepsilon)\subseteq\widetilde Vを満たす実数ε>0\varepsilon>0が存在する。§D1.4 系 2.2の有理数の稠密性によりq<q′<q+εq<q'<q+\varepsilonを満たす有理数q′q'が存在し、q′∈V~∩Q={q}q'\in\widetilde V\cap\mathbb Q=\{q\}かつq′≠qq'\neq qとなって両立しない。ゆえに{q}\{q\}のQ\mathbb Qにおける内部は空であり、{q}\{q\}はQ\mathbb Qで疎である。したがってQ=⋃n≥1{qn}\mathbb Q=\bigcup_{n\geq1}\{q_n\}はQ\mathbb Qにおける第一類集合である。Q\mathbb QはQ\mathbb Qの開集合であるから§E2.11 命題 2.5 (2)によりQ\mathbb Qにおける内部はQ\mathbb Q自身であり、Q≠∅\mathbb Q\neq\emptysetである。ゆえに命題 1.3 (2)は成り立たず、Q\mathbb Qは Baire 空間でない。▨

2 部分空間

定理 2.1.XXを Baire 空間、UUをXXの開集合とする。部分空間位相を入れたUUは Baire 空間である。

証明.(Wk)k≥1(W_k)_{k\geq1}をUUの開集合からなる列とし、各WkW_kはUUで稠密であるとする。UUはXXの開集合であるから、§E2.12 命題 5.16 (1)により包含写像ιU\iota_Uは開写像であり、各WkW_kはXXの開集合でもある。

Vk=Wk∪(X∖U‾)V_k=W_k\cup(X\setminus\overline U)とおく。U‾\overline Uは閉集合であるからVkV_kはXXの開集合である。OOをXXの空でない開集合とする。O∩U≠∅O\cap U\neq\emptysetの場合、O∩UO\cap UはUUの空でない開集合であるから、WkW_kのUUにおける稠密性と§E2.11 命題 2.9 (2)によりO∩U∩Wk≠∅O\cap U\cap W_k\neq\emptysetであり、とくにO∩Vk≠∅O\cap V_k\neq\emptysetである。O∩U=∅O\cap U=\emptysetの場合、U⊆X∖OU\subseteq X\setminus OであってX∖OX\setminus Oは閉集合であるから、§E2.11 命題 2.5 (1)によりU‾⊆X∖O\overline U\subseteq X\setminus Oであり、O⊆X∖U‾⊆VkO\subseteq X\setminus\overline U\subseteq V_kとなってO∩Vk=O≠∅O\cap V_k=O\neq\emptysetである。いずれの場合もO∩Vk≠∅O\cap V_k\neq\emptysetであるから、§E2.11 命題 2.9 (2)によりVkV_kはXXで稠密である。

XXは Baire 空間であるから⋂k≥1Vk\bigcap_{k\geq1}V_kはXXで稠密である。Wk⊆UW_k\subseteq UかつU∩(X∖U‾)=∅U\cap(X\setminus\overline U)=\emptysetであるからVk∩U=WkV_k\cap U=W_kであり、したがって

U∩⋂k≥1Vk=⋂k≥1(Vk∩U)=⋂k≥1WkU\cap\bigcap_{k\geq1}V_k=\bigcap_{k\geq1}(V_k\cap U)=\bigcap_{k\geq1}W_k

である。O′O'をUUの空でない開集合とすると、ιU\iota_Uが開写像であることからO′O'はXXの開集合でもあるからO′∩⋂k≥1Vk≠∅O'\cap\bigcap_{k\geq1}V_k\neq\emptysetであり、O′⊆UO'\subseteq UとあわせてO′∩⋂k≥1Wk≠∅O'\cap\bigcap_{k\geq1}W_k\neq\emptysetである。ゆえに§E2.11 命題 2.9 (2)により⋂k≥1Wk\bigcap_{k\geq1}W_kはUUで稠密であり、UUは Baire 空間である。▨

定理 2.2.XXを Baire 空間とし、(Gn)n≥1(G_n)_{n\geq1}をXXの開集合からなる列とする。A=⋂n≥1GnA=\bigcap_{n\geq1}G_nがXXで稠密であるならば、部分空間位相を入れたAAは Baire 空間である。

証明. 各n≥1n\geq1についてA⊆GnA\subseteq G_nであるから、§E2.11 命題 2.5 (1)によりX=A‾⊆Gn‾X=\overline A\subseteq\overline{G_n}であり、GnG_nはXXで稠密な開集合である。

(Uk)k≥1(U_k)_{k\geq1}をAAの開集合からなる列とし、各UkU_kはAAで稠密であるとする。§E2.12 定義 4.1により、Uk=Vk∩AU_k=V_k\cap Aを満たすXXの開集合VkV_kが存在する。§E2.12 命題 4.7 (1)によりcl⁡A(Uk)=cl⁡X(Uk)∩A\tpcl[A]{U_k}=\tpcl[X]{U_k}\cap Aであり、UkU_kのAAにおける稠密性からcl⁡A(Uk)=A\tpcl[A]{U_k}=AであるからA⊆cl⁡X(Uk)A\subseteq\tpcl[X]{U_k}である。cl⁡X(Uk)\tpcl[X]{U_k}は閉集合であるから、§E2.11 命題 2.5 (1)によりX=cl⁡X(A)⊆cl⁡X(Uk)X=\tpcl[X]{A}\subseteq\tpcl[X]{U_k}となり、UkU_kはXXで稠密である。Uk⊆VkU_k\subseteq V_kであるから、同じ議論によりVkV_kもXXで稠密である。

XXの開集合からなる列(Hm)m≥1(H_m)_{m\geq1}をH2k−1=VkH_{2k-1}=V_k、H2k=GkH_{2k}=G_kによって定めると、各HmH_mはXXで稠密であり、

⋂m≥1Hm=(⋂k≥1Vk)∩(⋂n≥1Gn)=(⋂k≥1Vk)∩A=⋂k≥1(Vk∩A)=⋂k≥1Uk\bigcap_{m\geq1}H_m=\Bigl(\bigcap_{k\geq1}V_k\Bigr)\cap\Bigl(\bigcap_{n\geq1}G_n\Bigr) =\Bigl(\bigcap_{k\geq1}V_k\Bigr)\cap A=\bigcap_{k\geq1}(V_k\cap A)=\bigcap_{k\geq1}U_k

である。XXは Baire 空間であるから⋂k≥1Uk\bigcap_{k\geq1}U_kはXXで稠密であり、cl⁡X(⋂k≥1Uk)=X\tpcl[X]{\bigcap_{k\geq1}U_k}=Xである。ふたたび§E2.12 命題 4.7 (1)により

cl⁡A(⋂k≥1Uk)=cl⁡X(⋂k≥1Uk)∩A=X∩A=A\tpcl[A]{\bigcap_{k\geq1}U_k} =\tpcl[X]{\bigcap_{k\geq1}U_k}\cap A=X\cap A=A

であるから、⋂k≥1Uk\bigcap_{k\geq1}U_kはAAで稠密である。ゆえにAAは Baire 空間である。▨

命題 2.3.XXを Baire 空間とし、AAとBBをともにXXで稠密であり、かつともにXXの可算個の開集合の共通部分として表されるXXの部分集合とする。

  1. A∩BA\cap BはXXの可算個の開集合の共通部分として表される。
  2. A∩BA\cap BはXXで稠密である。

証明は演習とする(問題 6.3)。

補題 2.4.XXを位相空間、DDをXXの開集合とし、DDには部分空間位相を入れる。DDがXXで稠密であって Baire 空間であるならば、XXは Baire 空間である。

証明.(Wm)m≥1(W_m)_{m\geq1}をXXの開集合からなる列とし、各WmW_mはXXで稠密であるとする。§E2.12 定義 4.1によりWm∩DW_m\cap DはDDの開集合である。OOをDDの空でない開集合とすると、DDはXXの開集合であるから§E2.12 命題 5.16 (1)によりOOはXXの開集合でもあり、WmW_mの稠密性と§E2.11 命題 2.9 (2)によりO∩Wm≠∅O\cap W_m\neq\emptysetである。O⊆DO\subseteq DであるからO∩(Wm∩D)≠∅O\cap(W_m\cap D)\neq\emptysetであり、§E2.11 命題 2.9 (2)によりWm∩DW_m\cap DはDDで稠密である。DDは Baire 空間であるから

⋂m≥1(Wm∩D)=D∩⋂m≥1Wm\bigcap_{m\geq1}(W_m\cap D)=D\cap\bigcap_{m\geq1}W_m

はDDで稠密である。O′O'をXXの空でない開集合とすると、DDのXXにおける稠密性と§E2.11 命題 2.9 (2)によりO′∩D≠∅O'\cap D\neq\emptysetであり、O′∩DO'\cap DはDDの空でない開集合であるから、いま示した稠密性と§E2.11 命題 2.9 (2)によりO′∩D∩⋂m≥1Wm≠∅O'\cap D\cap\bigcap_{m\geq1}W_m\neq\emptysetである。とくにO′∩⋂m≥1Wm≠∅O'\cap\bigcap_{m\geq1}W_m\neq\emptysetであるから、§E2.11 命題 2.9 (2)により⋂m≥1Wm\bigcap_{m\geq1}W_mはXXで稠密であり、XXは Baire 空間である。▨

3 コンパクト空間の Baire 性

補題 3.1.XXを§E2.15 定義 1.7に従って正則な位相空間、(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}をXXの開集合からなる列とし、各UnU_nはXXで稠密であるとする。WWをXXの空でない開集合とすると、XXの空でない開集合からなる列(Vn)n≥0(V_n)_{n\geq0}で、V0⊆WV_0\subseteq Wかつ、すべてのn≥0n\geq0についてVn+1‾⊆Vn∩Un+1\overline{V_{n+1}}\subseteq V_n\cap U_{n+1}を満たすものが存在する。

証明.O∗\mathcal O^{*}をXXの空でない開集合の全体とし、S=Z≥0×O∗S=\mathbb Z_{\geq0}\times\mathcal O^{*}とおく。SS上の関係RRを

((n,V),(n′,V′))∈R⟺n′=n+1 かつ V′‾⊆V∩Un+1\bigl((n,V),(n',V')\bigr)\in R \quad\Longleftrightarrow\quad n'=n+1\ \text{かつ}\ \overline{V'}\subseteq V\cap U_{n+1}

によって定める。(n,V)∈S(n,V)\in Sをとる。Un+1U_{n+1}はXXで稠密であるから、§E2.11 命題 2.9 (2)によりV∩Un+1≠∅V\cap U_{n+1}\neq\emptysetであり、これは開集合である。x∈V∩Un+1x\in V\cap U_{n+1}をとると、§E2.15 補題 2.6によりx∈V′x\in V'かつV′‾⊆V∩Un+1\overline{V'}\subseteq V\cap U_{n+1}を満たす開集合V′V'が存在する。x∈V′x\in V'であるからV′∈O∗V'\in\mathcal O^{*}であり、((n,V),(n+1,V′))∈R((n,V),(n+1,V'))\in Rである。ゆえにSSの任意の元はRRに関する後続元をもつ。

W∈O∗W\in\mathcal O^{*}であるからS≠∅S\neq\emptysetであり、初期項を(0,W)(0,W)として、SSの元の列((n,Vn))n≥0((n,V_n))_{n\geq0}でV0=WV_0=Wかつ、すべてのn≥0n\geq0についてVn+1‾⊆Vn∩Un+1\overline{V_{n+1}}\subseteq V_n\cap U_{n+1}を満たすものが得られる。各VnV_nはXXの空でない開集合でありV0=WV_0=Wであるから、列(Vn)n≥0(V_n)_{n\geq0}が求めるものである。▨

定理 3.2. コンパクトかつ Hausdorff である位相空間は Baire 空間である。

証明.XXをコンパクト Hausdorff 空間、(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}をXXの稠密な開集合の列とし、WWをXXの空でない開集合とする。§E2.19 命題 6.10によりXXは正則であるから、補題 3.1により、XXの空でない開集合の列(Vn)n≥0(V_n)_{n\geq0}でV0⊆WV_0\subseteq WかつVn+1‾⊆Vn∩Un+1\overline{V_{n+1}}\subseteq V_n\cap U_{n+1}を満たすものが存在する。

§E2.11 命題 2.5 (1)によりVn⊆Vn‾V_n\subseteq\overline{V_n}であるから、Vn+1‾⊆Vn⊆Vn‾\overline{V_{n+1}}\subseteq V_n\subseteq\overline{V_n}であり、閉集合の族(Vn‾)n≥0(\overline{V_n})_{n\geq0}は包含関係について減少する。各Vn‾\overline{V_n}は空でない集合VnV_nを含むから空でなく、有限個の添字n1,…,nkn_1,\ldots,n_kに対してVn1‾∩⋯∩Vnk‾=VN‾≠∅\overline{V_{n_1}}\cap\cdots\cap\overline{V_{n_k}}=\overline{V_{N}}\neq\emptyset(N=max⁡{n1,…,nk}N=\max\{n_1,\ldots,n_k\})である。ゆえにこの族は§E2.19 定義 3.1に従って有限交差性をもち、XXのコンパクト性と§E2.19 定理 3.2 (2)により⋂n≥0Vn‾≠∅\bigcap_{n\geq0}\overline{V_n}\neq\emptysetである。

y∈⋂n≥0Vn‾y\in\bigcap_{n\geq0}\overline{V_n}をとる。V1‾⊆V0⊆W\overline{V_1}\subseteq V_0\subseteq Wであるからy∈Wy\in Wである。またn≥1n\geq1についてVn‾⊆Vn−1∩Un⊆Un\overline{V_n}\subseteq V_{n-1}\cap U_n\subseteq U_nであるからy∈⋂n≥1Uny\in\bigcap_{n\geq1}U_nである。ゆえにW∩⋂n≥1Un≠∅W\cap\bigcap_{n\geq1}U_n\neq\emptysetであり、WWは任意の空でない開集合であったから、§E2.11 命題 2.9 (2)により⋂n≥1Un\bigcap_{n\geq1}U_nはXXで稠密である。したがってXXは Baire 空間である。▨

4 Čech 完備な空間の Baire 性

定理 4.1. Čech 完備な位相空間は Baire 空間である。

証明.XXを Čech 完備とし、§E2.26 定義 2.1により、XXのコンパクト化cXcXとcXcXの開集合からなる列(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}でX=⋂n≥1UnX=\bigcap_{n\geq1}U_nを満たすものをとる。cXcXはコンパクト Hausdorff 空間であるから、定理 3.2により Baire 空間である。XXはcXcXの稠密なGδG_\delta部分空間であるから、定理 2.2により Baire 空間である。▨

定理 4.2 (Baire の範疇定理).(X,d)(X,d)を完備な距離空間とする。このときXXは Baire 空間である。すなわち、XXの開集合からなる列(Un)n≥1(U_n)_{n\geq1}のすべての項がXXで稠密であるならば、⋂n≥1Un\bigcap_{n\geq1}U_nはXXで稠密である。

証明.(X,d)(X,d)は完備距離化可能であるから、§E2.26 系 3.3によりXXは Čech 完備であり、定理 4.1によりXXは Baire 空間である。▨

系 4.3. 空でない完備距離空間(X,d)(X,d)は、XXにおける第二類集合である。

証明.XXがXXにおける第一類集合であると仮定する。定理 4.2によりXXは Baire 空間であるから、命題 1.3 (2)によりint⁡(X)=∅\tpint{X}=\emptysetである。一方、XXはXXの開集合であるから§E2.11 命題 2.5 (2)によりint⁡(X)=X\tpint{X}=Xであり、X≠∅X\neq\emptysetである。この二つは両立しない。ゆえにXXはXXにおける第二類集合である。▨

系 4.4. 局所コンパクト性をもち、かつ Hausdorff である位相空間は Baire 空間である。

証明.XXを局所コンパクト Hausdorff 空間とする。§E2.26 補題 2.2 (3)によりXXは Čech 完備であるから、定理 4.1によりXXは Baire 空間である。▨

系 4.5. ポーランド空間は Baire 空間である。

証明.§E2.27 系 1.3と定理 4.1により、ポーランド空間は Baire 空間である。▨

系 4.6.XXをσ-コンパクトな T3½ 空間、cXcXをXXのコンパクト化とすると、剰余cX∖XcX\setminus Xは Baire 空間である。

証明.§E2.26 系 4.3によりcX∖XcX\setminus Xは Čech 完備であり、定理 4.1により Baire 空間である。▨

5 例

系 5.1.Q\mathbb QにR\mathbb Rからの制限距離を入れると、Q\mathbb Qは完備距離化可能でない。

証明.Q\Qの制限距離と同じ位相を定める完備な距離が存在すると仮定する。定理 4.2によりQ\Qは Baire 空間となり、例 1.4 (4)に反する。したがってQ\Qは完備距離化可能でない。▨

系 5.2.Q\mathbb QにR\mathbb Rの通常の距離の制限を入れ、Q\mathbb Qにはこの距離が定める位相を入れる。このときQ\mathbb Qは Čech 完備でない。

証明.系 5.1によりQ\mathbb Qは完備距離化可能でない。ゆえに§E2.26 系 3.3によりQ\mathbb Qは Čech 完備でない。▨

例 5.3.R2\R^2に Euclid 距離d2d_2を入れ、

H=R×(0,∞),Q=Q×{0},X=H∪QH=\R\times(0,\infty),\qquad Q=\Q\times\{0\},\qquad X=H\cup Q

とおく。すべてR2\R^2の相対位相で考える。

  1. HHは Baire 空間R2\R^2の開部分集合なので Baire 空間である。
  2. H⊂XH\subset Xは稠密開集合であるから補題 2.4より、XXも Baire 空間である。
  3. QQは距離空間XXの閉集合なのでGδG_{\delta}閉集合であるが、H=X∖QH = X\setminus Qが空でない開集合であるため、Q⊂XQ\subset Xは稠密でない。
  4. QQはQ\Qと同相であるため、Baire 空間でない。とくに定理 2.2の稠密性の仮定を落とすことはできない。
  5. 定理 4.1よりQQは Čech 完備でもない。閉部分空間Q⊂XQ\subset Xが Čech 完備でないことから、§E2.26 系 2.7 (1)よりXXも Čech 完備でない。

6 演習

問題 6.1.R∖Q\mathbb R\setminus\mathbb QをR\mathbb Rの可算個の稠密な開集合の共通部分として表し、その共通部分がR\mathbb Rで稠密であることを示せ。

解答.

§E1.18 定理 4.1によりQ={q1,q2,…}\mathbb Q=\{q_1,q_2,\ldots\}と番号づけ、Un=R∖{qn}U_n=\mathbb R\setminus\{q_n\}とおく。例 1.4 (1)により{qn}\{q_n\}はR\mathbb Rの閉集合であってR\mathbb Rで疎であるから、{qn}‾={qn}\overline{\{q_n\}}=\{q_n\}かつint⁡({qn})=int⁡({qn}‾)=∅\tpint{\{q_n\}}=\tpint{\overline{\{q_n\}}}=\emptysetであり、UnU_nは開集合であって、§E2.11 命題 2.9 (3)によりR\mathbb Rで稠密である。§E1.2 定理 3.2により

⋂n≥1Un=R∖⋃n≥1{qn}=R∖Q\bigcap_{n\geq1}U_n=\mathbb R\setminus\bigcup_{n\geq1}\{q_n\}=\mathbb R\setminus\mathbb Q

である。§E2.5 例 4.1によりR\mathbb Rは完備であるから、定理 4.2により⋂n≥1Un\bigcap_{n\geq1}U_nはR\mathbb Rで稠密である。したがってR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb QはR\mathbb Rで稠密である。▨

問題 6.2.R∖Q\mathbb R\setminus\mathbb QにR\mathbb Rからの制限距離を入れる。この距離空間は完備でないが Baire 空間であることを示し、定理 4.2の逆が成り立たないことを結論せよ。

解答.

問題 6.1により、R∖Q\mathbb R\setminus\mathbb QはR\mathbb Rの可算個の開集合の共通部分として表され、R\mathbb Rで稠密である。

R∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qが制限距離について完備であるとすると、§E2.5 例 4.1によりR\mathbb Rは完備であるから、§E2.5 系 3.4によりR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb QはR\mathbb Rの閉集合であり、§E2.11 命題 2.5 (2)によりR∖Q‾=R∖Q\overline{\mathbb R\setminus\mathbb Q}=\mathbb R\setminus\mathbb Qである。一方、稠密性と§E2.11 定義 2.7によりR∖Q‾=R\overline{\mathbb R\setminus\mathbb Q}=\mathbb Rであり、0∈Q0\in\mathbb QであるからR≠R∖Q\mathbb R\neq\mathbb R\setminus\mathbb Qである。これは両立しないから、R∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qは制限距離について完備でない。

§E2.5 例 4.1と定理 4.2によりR\mathbb Rは Baire 空間である。R∖Q\mathbb R\setminus\mathbb QはR\mathbb Rの可算個の開集合の共通部分であってR\mathbb Rで稠密であるから、定理 2.2により部分空間位相を入れたR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qは Baire 空間である。§E2.12 命題 4.8によりこの部分空間位相は制限距離が定める位相であるから、制限距離を入れたR∖Q\mathbb R\setminus\mathbb Qは Baire 空間である。

ゆえに、完備であることは Baire 空間であるための必要条件ではなく、定理 4.2の逆は成り立たない。▨

問題 6.3.命題 2.3の証明を完成させよ。

解答.

XXの開集合からなる列(Gn)n≥1(G_n)_{n\geq1}と(Gn′)n≥1(G'_n)_{n\geq1}でA=⋂n≥1GnA=\bigcap_{n\geq1}G_nかつB=⋂n≥1Gn′B=\bigcap_{n\geq1}G'_nを満たすものをとる。A⊆GnA\subseteq G_nでありAAはXXで稠密であるから、§E2.11 命題 2.5 (1)によりX=A‾⊆Gn‾X=\overline A\subseteq\overline{G_n}であり、GnG_nはXXで稠密な開集合である。同じ議論により各Gn′G'_nもXXで稠密な開集合である。

命題 2.3 (1)を示す。XXの開集合からなる列(Hm)m≥1(H_m)_{m\geq1}をH2n−1=GnH_{2n-1}=G_n、H2n=Gn′H_{2n}=G'_nによって定めると、各HmH_mはXXで稠密であり、

⋂m≥1Hm=(⋂n≥1Gn)∩(⋂n≥1Gn′)=A∩B\bigcap_{m\geq1}H_m=\Bigl(\bigcap_{n\geq1}G_n\Bigr)\cap\Bigl(\bigcap_{n\geq1}G'_n\Bigr)=A\cap B

である。したがってA∩BA\cap BはXXの可算個の開集合の共通部分として表される。

命題 2.3 (2)を示す。各HmH_mはXXで稠密なXXの開集合でありXXは Baire 空間であるから、定義 1.2により⋂m≥1Hm=A∩B\bigcap_{m\geq1}H_m=A\cap BはXXで稠密である。▨

参考文献

  1. René Baire, Sur les fonctions de variables réelles, Annali di Matematica Pura ed Applicata 3 (1899), 1–123.完備距離空間に対する範疇定理を参考にした。
  2. James R. Munkres, Topology, 2nd ed., Prentice Hall, 2000.疎集合と第一類集合の標準的な定式化、および完備距離空間とコンパクト Hausdorff 空間に対する範疇定理を参考にした。
  3. Stephen Willard, General Topology, Dover Publications, 2004, originally published 1970.Baire 空間の定義、同値な言い換え、および部分空間への遺伝を参考にした。
  4. Ryszard Engelking, General Topology, revised and completed ed., Sigma Series in Pure Mathematics 6, Heldermann Verlag, Berlin, 1989.Čech 完備な空間が Baire 空間であること、および稠密性を落とすと遺伝が破れる反例を参考にした。

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