§E12.19可換 Gelfand–Naimark の定理

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可換 C* 環AAは、その指標空間Δ(A)\Delta(A)の上で無限遠において消える連続関数の環C0(Δ(A))C_0(\Delta(A))へ、Gelfand 変換Γ\Gammaによって等長に *-同型である。Γ\Gammaが等長な *-準同型であることと、そこから従う単射性は既に得られている。残るのはΓ\Gammaが全射であること、すなわちC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))の元がすべてAAのある元の Gelfand 変換であることであり、これを本記事で証明する。AAが単位的である場合にはΔ(A)\Delta(A)はコンパクトであり、コンパクト空間の上の連続関数の環C(Δ(A))C(\Delta(A))との等長 *-同型が系として得られる。

1 主定理

補題 1.1.AAを可換 C* 環(§E12.15 定義 1.2)とし、指標空間Δ(A)\Delta(A)(§E12.14 定義 4.4)に§E12.14 定義 5.1の Gelfand 位相を入れる。Γ\Gammaを§E12.18 定義 1.1の Gelfand 変換とし、a∈Aa\in Aに対してa^=Γ(a)\hat a=\Gamma(a)と書く。

  1. Δ(A)\Delta(A)は局所コンパクト Hausdorff 空間である。AAが単位的である場合には、Δ(A)\Delta(A)はコンパクトである。
  2. Γ\GammaはAAからC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))(§E12.16 定義 1.1)への等長な *-準同型(§E12.15 定義 1.5)である。すなわちΓ\Gammaは線形かつ乗法的であり、すべてのa∈Aa\in AについてΓ(a∗)=Γ(a)‾\Gamma(a^*)=\overline{\Gamma(a)}と∥Γ(a)∥∞=∥a∥\|\Gamma(a)\|_\infty=\|a\|が成り立つ。

証明.AAが単位元11をもつとする。1∗1=1∗1^*1=1^*であるから、C* 恒等式と§E12.15 補題 1.4により∥1∥2=∥1∗1∥=∥1∗∥=∥1∥\|1\|^2=\|1^*1\|=\|1^*\|=\|1\|であり∥1∥∈{0,1}\|1\|\in\{0,1\}である。∥1∥=0\|1\|=0のとき1=01=0であるからA={0}A=\{0\}であり、§E12.14 定義 4.4によりΔ(A)=∅\Delta(A)=\emptysetである。§E2.19 定義 2.1により∅\emptysetはコンパクトであり、相異なる二点をもたないから Hausdorff 性の条件も空虚に成り立つので、§E2.24 例 5.1 (1)によりΔ(A)\Delta(A)は局所コンパクト Hausdorff 空間であり、(1)が成り立つ。Γ\Gammaは零写像でありC0(∅)={0}C_0(\emptyset)=\{0\}であるから、§E12.16 命題 1.5のX=∅X=\emptysetの規約により∥Γ(0)∥∞=0=∥0∥\|\Gamma(0)\|_\infty=0=\|0\|であり、(2)が成り立つ。∥1∥=1\|1\|=1のときAAは単位的である。§E12.14 定理 5.5によりΔ(A)\Delta(A)は Gelfand 位相についてコンパクト Hausdorff 空間である。§E2.24 例 5.1 (1)によりコンパクト空間は局所コンパクトであるから、Δ(A)\Delta(A)は局所コンパクト Hausdorff 空間であり、(1)が成り立つ。§E12.16 命題 4.1 (1)によりC0(Δ(A))=C(Δ(A))C_0(\Delta(A))=C(\Delta(A))である。§E12.18 定理 3.1によりΓ\GammaはAAからC(Δ(A))C(\Delta(A))への等長な *-準同型であるから、(2)が成り立つ。

AAが単位元をもたない(§E12.17 注意 1.2)とする。§E12.18 系 4.4によりΔ(A)\Delta(A)は局所コンパクト Hausdorff 空間であるから(1)が成り立ち、§E12.18 定理 4.7によりΓ\GammaはAAからC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))への等長な *-準同型であるから(2)が成り立つ。▨

補題 1.2.AAを可換 C* 環とし、指標空間Δ(A)\Delta(A)に Gelfand 位相を入れる。Γ\Gammaを Gelfand 変換、Γ(A)={a^∣a∈A}\Gamma(A)=\{\hat a\mid a\in A\}とする。Γ(A)\Gamma(A)はC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))に含まれる§E2.32 定義 1.1の意味の部分代数であり、次が成り立つ。

  1. φ≠ψ\varphi\neq\psiを満たすφ,ψ∈Δ(A)\varphi,\psi\in\Delta(A)に対して、a^(φ)≠a^(ψ)\hat a(\varphi)\neq\hat a(\psi)を満たすa∈Aa\in Aが存在する。
  2. すべてのa∈Aa\in AについてΓ(a)‾=Γ(a∗)\overline{\Gamma(a)}=\Gamma(a^*)であり、とくにΓ(a)‾∈Γ(A)\overline{\Gamma(a)}\in\Gamma(A)である。
  3. 各φ∈Δ(A)\varphi\in\Delta(A)に対して、a^(φ)≠0\hat a(\varphi)\neq0を満たすa∈Aa\in Aが存在する。

証明.補題 1.1 (2)によりΓ\Gammaは線形かつ乗法的であるから、a,b∈Aa,b\in Aとλ∈C\lambda\in\mathbb Cに対してa^+b^=a+b^\hat a+\hat b=\widehat{a+b}、a^b^=ab^\hat a\hat b=\widehat{ab}、λa^=λa^\lambda\hat a=\widehat{\lambda a}が成り立ち、これらはいずれもΓ(A)\Gamma(A)に属する。また0^=Γ(0)=0\hat0=\Gamma(0)=0であるからΓ(A)\Gamma(A)は空でない。§E12.16 定義 1.1によりC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))の元はΔ(A)\Delta(A)上の複素数値連続関数であるからΓ(A)⊆C0(Δ(A))⊆C(Δ(A),C)\Gamma(A)\subseteq C_0(\Delta(A))\subseteq C(\Delta(A),\mathbb C)であり、§E2.32 定義 1.1によりΓ(A)\Gamma(A)は部分代数である。

(1)を示す。φ≠ψ\varphi\neq\psiを満たすφ,ψ∈Δ(A)\varphi,\psi\in\Delta(A)をとる。φ\varphiとψ\psiはともにAA上で定義された写像であって相異なるから、φ(a)≠ψ(a)\varphi(a)\neq\psi(a)を満たすa∈Aa\in Aが存在する。§E12.18 定義 1.1によりa^(φ)=φ(a)\hat a(\varphi)=\varphi(a)かつa^(ψ)=ψ(a)\hat a(\psi)=\psi(a)であるからa^(φ)≠a^(ψ)\hat a(\varphi)\neq\hat a(\psi)である。

(2)を示す。a∈Aa\in Aをとる。§E12.16 定理 2.1によりC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))の対合は複素共役をとる操作f∗=f‾f^*=\overline fである。補題 1.1 (2)によりΓ(a)‾=Γ(a∗)\overline{\Gamma(a)}=\Gamma(a^*)であり、右辺はΓ(A)\Gamma(A)に属する。

(3)を示す。φ∈Δ(A)\varphi\in\Delta(A)をとる。§E12.14 定義 4.4によりφ\varphiは零写像でないから、φ(a)≠0\varphi(a)\neq0を満たすa∈Aa\in Aが存在する。§E12.18 定義 1.1によりa^(φ)=φ(a)≠0\hat a(\varphi)=\varphi(a)\neq0である。▨

定理 1.3 (可換 Gelfand–Naimark の定理).AAを可換 C* 環とし、指標空間Δ(A)\Delta(A)に Gelfand 位相を入れる。Gelfand 変換Γ:A→C0(Δ(A))\Gamma:A\to C_0(\Delta(A))は全単射であり、線形かつ乗法的で、すべてのa∈Aa\in Aについて

Γ(a∗)=Γ(a)‾,∥Γ(a)∥∞=∥a∥\Gamma(a^*)=\overline{\Gamma(a)}, \qquad \|\Gamma(a)\|_\infty=\|a\|

を満たす。すなわちΓ\GammaはAAからC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))への等長な *-同型である。

証明.補題 1.1によりΔ(A)\Delta(A)は局所コンパクト Hausdorff 空間であり、Γ\GammaはAAからC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))への等長な *-準同型である。a∈Aa\in AがΓ(a)=0\Gamma(a)=0を満たすとすると∥a∥=∥Γ(a)∥∞=0\|a\|=\|\Gamma(a)\|_\infty=0であるからa=0a=0である。Γ\Gammaは線形であるから、核が{0}\{0\}であることによりΓ\Gammaは単射である。

§E12.16 定義 1.1と§E2.32 定義 4.1は、局所コンパクト Hausdorff 空間の上の複素数値連続関数に対して同じ条件を課すから、集合としてC0(Δ(A))=C0(Δ(A),C)C_0(\Delta(A))=C_0(\Delta(A),\mathbb C)である。また§E2.32 補題 4.2の距離はd∞(f,g)=sup⁡φ∈Δ(A)∣f(φ)−g(φ)∣d_\infty(f,g)=\sup_{\varphi\in\Delta(A)}|f(\varphi)-g(\varphi)|であり、§E12.16 命題 1.5の上限ノルムを用いてd∞(f,g)=∥f−g∥∞d_\infty(f,g)=\|f-g\|_\inftyと書くことができる(Δ(A)=∅\Delta(A)=\emptysetのときは両者いずれも00である)から、この距離が定める位相は上限ノルムが定める位相に一致する。補題 1.2によりΓ(A)\Gamma(A)はC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))に含まれる部分代数であり、補題 1.2 (1)によりΔ(A)\Delta(A)の点を分離し、補題 1.2 (2)により複素共役について閉じており、補題 1.2 (3)により各φ∈Δ(A)\varphi\in\Delta(A)に対してφ\varphiで00にならない元をもつ。したがって§E2.32 定理 4.5をX=Δ(A)X=\Delta(A)とA=Γ(A)\mathcal A=\Gamma(A)に適用することができ、Γ(A)\Gamma(A)はC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))で稠密である。

補題 1.2によりΓ(A)\Gamma(A)は部分代数であるから、和とスカラー倍について閉じており、C0(Δ(A))C_0(\Delta(A))の線形部分空間である。(fn)n≥1(f_n)_{n\geq1}をΓ(A)\Gamma(A)の∥⋅∥∞\|\cdot\|_\inftyに関する Cauchy 列とする。Γ\Gammaは単射であるから、各nnに対してfn=Γ(an)f_n=\Gamma(a_n)を満たすan∈Aa_n\in Aがただ一つ定まる。Γ\Gammaの線形性と等長性により

∥an−am∥=∥Γ(an−am)∥∞=∥fn−fm∥∞\|a_n-a_m\|=\|\Gamma(a_n-a_m)\|_\infty=\|f_n-f_m\|_\infty

であるから(an)n≥1(a_n)_{n\geq1}はAAの Cauchy 列である。§E12.15 定義 1.2によりAAは対合を備えた複素 Banach 環であり、§E12.14 定義 1.1により Banach 空間であるから、極限a=lim⁡nan∈Aa=\lim_na_n\in Aが存在する。同じ等式により∥fn−Γ(a)∥∞=∥an−a∥→0\|f_n-\Gamma(a)\|_\infty=\|a_n-a\|\to0でありΓ(a)∈Γ(A)\Gamma(a)\in\Gamma(A)であるから、Γ(A)\Gamma(A)は完備である。§E12.1 命題 1.4 (2)によりΓ(A)\Gamma(A)はC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))の閉部分集合である。

§E2.11 命題 2.5 (2)によりΓ(A)‾=Γ(A)\overline{\Gamma(A)}=\Gamma(A)であり、§E2.11 定義 2.7によりΓ(A)‾=C0(Δ(A))\overline{\Gamma(A)}=C_0(\Delta(A))であるからΓ(A)=C0(Δ(A))\Gamma(A)=C_0(\Delta(A))である。よってΓ\Gammaは全射であり、単射性とあわせて全単射である。線形性、乗法性、Γ(a∗)=Γ(a)‾\Gamma(a^*)=\overline{\Gamma(a)}および∥Γ(a)∥∞=∥a∥\|\Gamma(a)\|_\infty=\|a\|は補題 1.1 (2)が与える。▨

2 単位的な場合

系 2.1.AAを単位的可換 C* 環とする。Δ(A)\Delta(A)は Gelfand 位相についてコンパクト Hausdorff 空間であり、C0(Δ(A))=C(Δ(A))C_0(\Delta(A))=C(\Delta(A))である。Gelfand 変換Γ:A→C(Δ(A))\Gamma:A\to C(\Delta(A))は等長な *-同型である。

証明.補題 1.1 (1)によりΔ(A)\Delta(A)は局所コンパクト Hausdorff 空間であり、AAが単位的であるからコンパクトである。§E12.16 命題 4.1 (1)によりC0(Δ(A))=C(Δ(A))C_0(\Delta(A))=C(\Delta(A))である。定理 1.3によりΓ\GammaはAAからC0(Δ(A))C_0(\Delta(A))への等長な *-同型であり、この終域はC(Δ(A))C(\Delta(A))に等しい。▨

3 素スペクトルとの相違

注意 3.1.AAを単位的可換 C* 環とすると、§E12.14 定理 4.6によりφ↦ker⁡φ\varphi\mapsto\ker\varphiはΔ(A)\Delta(A)からAAの極大イデアル全体への全単射であり、§E12.14 補題 4.1によりAAの極大イデアルはすべて閉である。したがって、系 2.1がAAを復元する空間Δ(A)\Delta(A)の点はAAの閉極大イデアルにほかならない。一方、「素スペクトルと Zariski 位相」が可換環に対して定める素スペクトルは、極大イデアルに限らないすべての素イデアルを点とし、位相として Zariski 位相を入れたものである。したがって、指標空間と素スペクトルは、点として何をとるかにおいても位相の定め方においても異なる対象である。

4 演習

問題 4.1.AAを可換 C* 環とし、a∈Aa\in Aがa3=a2a^3=a^2を満たすとする。a2=aa^2=aであることを証明せよ。

解答.

定理 1.3によりΓ\Gammaは単射かつ乗法的である。乗法性から、各φ∈Δ(A)\varphi\in\Delta(A)について

a^(φ)3=a3^(φ)=a2^(φ)=a^(φ)2\hat a(\varphi)^3=\widehat{a^3}(\varphi)=\widehat{a^2}(\varphi)=\hat a(\varphi)^2

である。t=a^(φ)t=\hat a(\varphi)とおくとt2(t−1)=0t^2(t-1)=0であるからt=0t=0またはt=1t=1であり、いずれの場合もt2=tt^2=tである。φ∈Δ(A)\varphi\in\Delta(A)は任意であったからa2^=a^2=a^\widehat{a^2}=\hat a^2=\hat aである。Γ\Gammaは単射であるからa2=aa^2=aである。▨

問題 4.2.AAを可換 C* 環とし、Δ(A)\Delta(A)がちょうど一つの元φ\varphiからなるとする。複素数体C\mathbb Cに、複素共役を対合、絶対値をノルムとする可換 C* 環の構造を入れる。AAからC\mathbb Cへの等長な *-同型が存在することを証明せよ。

解答.

§E2.19 例 2.9 (1)により、有限集合であるΔ(A)\Delta(A)はコンパクトである。補題 1.1 (1)によりΔ(A)\Delta(A)は局所コンパクト Hausdorff 空間であるから、§E12.16 命題 4.1 (1)によりC0(Δ(A))=C(Δ(A))C_0(\Delta(A))=C(\Delta(A))である。

E:C(Δ(A))→CE:C(\Delta(A))\to\mathbb CをE(f)=f(φ)E(f)=f(\varphi)で定める。Δ(A)={φ}\Delta(A)=\{\varphi\}であるから、ffは値f(φ)f(\varphi)によって定まり、逆に任意のλ∈C\lambda\in\mathbb Cに対して値λ\lambdaをとる定数関数は連続であるから、EEは全単射である。C(Δ(A))C(\Delta(A))の和、スカラー倍、積および対合はいずれも各点ごとに定めるから、EEは線形かつ乗法的でありE(f‾)=E(f)‾E(\overline f)=\overline{E(f)}を満たす。また∥f∥∞=sup⁡ψ∈Δ(A)∣f(ψ)∣=∣f(φ)∣=∣E(f)∣\|f\|_\infty=\sup_{\psi\in\Delta(A)}|f(\psi)|=|f(\varphi)|=|E(f)|であるからEEは等長である。

定理 1.3によりΓ:A→C0(Δ(A))=C(Δ(A))\Gamma:A\to C_0(\Delta(A))=C(\Delta(A))は等長な *-同型である。等長な *-同型の合成は等長な *-同型であるから、E∘Γ:A→CE\circ\Gamma:A\to\mathbb Cは等長な *-同型である。▨

参考文献

  1. Gerard J. Murphy, C*-Algebras and Operator Theory, Academic Press, 1990.可換 Gelfand–Naimark の定理と単位的な場合の系の標準的な扱いを参考にした。
  2. Walter Rudin, Functional Analysis, 2nd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1991.像が稠密であることと閉であることから全射性を得る議論の型を参考にした。
  3. Ronald G. Douglas, Banach Algebra Techniques in Operator Theory, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1998.可換 C\* 環と連続関数の環との同型の記述を参考にした。

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