1 双対定理
測度空間(X,F,μ)と1≤p<∞に対し、p乗可積分な可測関数をほとんど至る所の一致で同一視した空間をLp(μ)と書き、
∥f∥p=(∫X∣f∣pdμ)1/p
と定める。L∞(μ)は本質的に有界な可測関数の同値類からなり、ノルムは本質的上限である。これらは§E9.12 定義 2.3の再掲である。∥⋅∥pが三角不等式を満たすことは§E9.12 定理 5.1による。すべての1≤p≤∞についてLp(μ)は
Banach 空間である(§E9.13 定理 1.1)。
定理 1.1 (Hölder の不等式).1≤p,q≤∞、p−1+q−1=1とする。f∈Lp(μ)とg∈Lq(μ)に対してfg∈L1(μ)であり、
∥fg∥1≤∥f∥p∥g∥qが成り立つ。これは§E9.12 定理 4.2の再掲であり、同ブロックで端点を含めて証明されている。
命題 1.2.1≤p≤q≤∞ならℓp⊆ℓqであり、∥x∥q≤∥x∥pが成り立つ。
証明.x=0の場合は両辺が0である。x=0とし、y=x/∥x∥pと置くと、各nについて∣yn∣≤1である。q<∞なら∣yn∣q≤∣yn∣pなので∥y∥qq≤∥y∥pp=1である。q=∞なら∥y∥∞≤1である。斉次性により結論を得る。▨
1≤p<∞に対し、共役指数qを
p1+q1=1
で定める。p=1のときはq=∞とする。
補題 1.3.(X,F,μ)を測度空間、1≤p<∞とし、F∈(Lp(μ))∗とする。可測集合Eがμ(E)<∞を満たすなら、E上の可積分な複素数値可測関数hが存在して、Eに含まれるすべての可測集合Aについて
F(1A)=∫Ahdμが成り立つ。
証明.A⊂Eなる可測集合はμ(A)≤μ(E)<∞を満たすので1A∈Lp(μ)であり、
ν(A)=F(1A)と置くことができる。A1,A2,…⊂Eが互いに交わらないとき、
1⋃k≥1Ak−k=1∑N1Akpp=μ(k>N⋃Ak)⟶0.最後の収束はμ(E)<∞と測度の下からの連続性による。Fの連続性からν(⋃kAk)=∑kν(Ak)であり、νは有限値の複素測度である。またμ(A)=0なら1AはLpの零元なので、ν≪μ∣Eである。
ReνとImνは有限符号付き測度である。Jordan 分解§E9.14 定理 4.2によって
Reν=ν1−ν2,Imν=ν3−ν4と有限正測度の差に書く。μ(A)=0ならAのすべての可測部分集合Bについてν(B)=0である。Jordan 分解の公式ν+(A)=supB⊂Aν(B)を実部と虚部に適用すると、各νjもμ∣Eに関して絶対連続である。正測度版 Radon–Nikodym の定理§E9.15 定理 3.3により、非負可積分関数hjが存在して
νj(A)=∫Ahjdμとなる。したがって
h=h1−h2+i(h3−h4)∈L1(E)と置けば、すべての可測集合A⊂EについてF(1A)=∫Ahdμが成り立つ。▨
補題 1.4.(X,F,μ)を測度空間、1≤p<∞とし、F∈(Lp(μ))∗とする。可測集合の増大列E1⊂E2⊂⋯が⋃m≥1Em=Xとすべてのmに対するμ(Em)<∞を満たすとする。このとき可測関数gが存在して、各mについてg1Emは可積分であり、いずれかのEmに台をもつ有界可測関数uについて
F(u)=∫Xugdμが成り立つ。
証明. 各mに補題 1.3を適用し、Em上の可積分関数hmで、Emに含まれるすべての可測集合Aについて
F(1A)=∫Ahmdμ(1)を満たすものを取る。
m<nならhmとhn∣Emは同じ複素測度を表す。可積分な複素関数uがすべての可測集合Aについて∫Audμ=0を満たすなら、ReuとImuの正の部分が正である集合および負である集合へ順に適用してu=0がほとんど至る所で成り立つ。したがってhn=hmがEm上のほとんど至る所で成り立つ。可算個の零集合上で代表元を修正し、hm+1=hmがEm上で成り立つとしてよい。E0=∅とし、
g=hmEm∖Em−1 上でと置く。このときg=hmがEm上のほとんど至る所で成り立ち、g1Emは可積分である。
式 (1) の線形性により、Emに台をもつ単関数sについて
F(s)=∫Emsgdμ.(2)さらに、Emに台をもつ有界可測関数は一様に単関数で近似することができる。μ(Em)<∞なので近似はLpでも収束し、g∣Em∈L1なので積分側も収束する。したがって (2) はEmに台をもつ有界可測関数についても成り立つ。▨
補題 1.5.(X,F,μ)を測度空間、1≤p<∞とし、qをpの共役指数、F∈(Lp(μ))∗とする。可測集合の増大列E1⊂E2⊂⋯が⋃m≥1Em=Xとすべてのmに対するμ(Em)<∞を満たすとする。可測関数gが、いずれかのEmに台をもつ有界可測関数uについて
F(u)=∫Xugdμを満たすなら、g∈Lq(μ)であり∥g∥q≤∥F∥が成り立つ。
証明. まず1<p<∞とする。g(x)=0のときsgng(x)=g(x)/∣g(x)∣とし、g(x)=0のとき0とする。各m,kに対して
um,k=1Em∩{∣g∣≤k}sgng∣g∣q−1はEmに台をもつ有界関数である。仮定した表示と(q−1)p=qにより、
Am,k:=∫Em∩{∣g∣≤k}∣g∣qdμ=F(um,k)≤∥F∥Am,k1/p.Am,k=0の場合も含めてAm,k1/q≤∥F∥である。k→∞、次にm→∞とし、単調収束定理を用いると、g∈Lq(μ)であり∥g∥q≤∥F∥である。
次にp=1とする。あるε>0に対してA=Em∩{∣g∣>∥F∥+ε}が正の測度をもつと仮定する。u=1Asgngを仮定した表示に代入すると
(∥F∥+ε)μ(A)<∫A∣g∣dμ=F(u)≤∥F∥∥u∥1=∥F∥μ(A),となり矛盾する。したがって、すべてのmについて∣g∣≤∥F∥がEm上のほとんど至る所で成り立ち、g∈L∞(μ)であり∥g∥∞≤∥F∥である。p=1の共役指数はq=∞なので、いずれの場合もg∈Lq(μ)と∥g∥q≤∥F∥を得る。▨
定理 1.6.(X,F,μ)を σ-有限測度空間とし、1≤p<∞とする。各g∈Lq(μ)に対して
Φg(f)=∫Xfgdμ(f∈Lp(μ))と定めると、g↦ΦgはLq(μ)から(Lp(μ))∗への線形等長全単射である。
証明.g∈Lq(μ)とする。定理 1.1により
∣Φg(f)∣≤∥f∥p∥g∥qなので、Φg∈(Lp)∗かつ∥Φg∥≤∥g∥qである。
F∈(Lp)∗を固定する。σ-有限性により、Em↑X、μ(Em)<∞を満たす可測集合の増大列を選ぶことができる。補題 1.4により、いずれかのEmに台をもつ有界可測関数uについて
F(u)=∫Xugdμを満たす可測関数gを取ることができる。このgに補題 1.5を適用すると、g∈Lq(μ)であり∥g∥q≤∥F∥である。
f∈Lpを任意に取る。§E9.13 定理 2.2と切断f1Emにより、有限測度集合に台をもつLp単関数列snでsn→fがLpノルムについて成り立つものを取ることができる。補題 1.4の表示、Fの連続性、および
Hölder の不等式から
F(f)=nlimF(sn)=nlim∫Xsngdμ=∫Xfgdμ.よってF=Φgであり、全射性が示された。補題 1.5の評価と最初の有界性を組み合わせると
∥F∥=∥Φg∥=∥g∥qである。特にΦg=0ならgはLqの零元なので単射でもある。線形性は積分の線形性から従う。▨
系 1.7. σ-有限測度空間上で1<p<∞なら、Lp(μ)は回帰的である。
証明.q=p/(p−1)とする。定理 1.6の等長全単射をDp:Lq→(Lp)∗、Dpg=Φgと書く。Λ∈(Lp)∗∗に対し
H(g)=Λ(Dpg)(g∈Lq)と置くと、H∈(Lq)∗である。同じ双対定理を指数qに適用すると、あるh∈Lpが存在して
H(g)=∫Xghdμ=(Dpg)(h)となる。したがって、すべてのg∈LqについてΛ(Dpg)=(JLph)(Dpg)である。Dpは全射なのでΛ=JLphであり、標準埋め込みは全射である。▨
2 L∞と Banach limit
数え上げ測度上のL∞=ℓ∞に対して、標準写像を
I:ℓ1⟶(ℓ∞)∗,I(a)(x)=n=1∑∞anxn
と定める。
定理 2.1. 実数列の空間ℓ∞(R)上に、有界線形汎関数Lで次を満たすものが存在する。
- すべてのnについてxn≥0ならL(x)≥0である。
- 1=(1,1,…)に対してL(1)=1である。
- 左シフトSx=(x2,x3,…)に対してL(Sx)=L(x)である。
- xn→aならL(x)=aである。
さらに∥L∥=1である。
証明.x∈ℓ∞(R)に対して
P(x)=N→∞limsupN1n=1∑Nxnと置く。上極限の性質により、P(x+y)≤P(x)+P(y)かつt≥0に対してP(tx)=tP(x)なので、Pは実線形空間上の劣線形汎関数である。収束数列の部分空間c上でL0(x)=limnxnと置くと、L0(x)=P(x)である。劣線形汎関数による Hahn–Banach の定理§E12.3 定理 1.2により、L0はL:ℓ∞(R)→Rへ延長され、L(x)≤P(x)を満たす。
(3)を示す。P(Sx−x)=P(x−Sx)=0である。実際、最初のN項の平均はそれぞれ(xN+1−x1)/Nと(x1−xN+1)/Nであり、0に収束する。したがってL(Sx−x)≤0とL(x−Sx)≤0からL(Sx)=L(x)を得る。
(1)を示す。x≥0ならP(−x)≤0なので−L(x)=L(−x)≤0、すなわちL(x)≥0である。
(4)を示す。LはL0を延長するので、収束数列上では通常の極限に一致する。
(2)を示す。L(1)=1である。
任意の実数列xについて−∥x∥∞1≤x≤∥x∥∞1である。正値性と線形性から∣L(x)∣≤∥x∥∞なので∥L∥≤1であり、L(1)=1から∥L∥=1である。▨
複素数列に対して
LC(z)=L(Rez)+iL(Imz)
と置くと、LCは複素線形であり、定数とシフトを保つ。∣α∣=1をαLC(z)=∣LC(z)∣となるように取れば
∣LC(z)∣=L(Re(αz))≤∥Re(αz)∥∞≤∥z∥∞.
定数列で等号になるため、∥LC∥=1である。
命題 2.2. 標準写像I:ℓ1→(ℓ∞)∗は全射でない。
証明.LC=I(a)となるa∈ℓ1が存在したと仮定する。標準基底enに対し、左シフトはSe1=0、Sen+1=enを満たす。シフト不変性からLC(e1)=0であり、帰納的にすべてのnについてLC(en)=0である。一方、I(a)(en)=anなのでa=0となる。しかしI(0)(1)=0はLC(1)=1に矛盾する。▨
3 演習
問題 3.1 (所属するLpの判定). 数え上げ測度上の(1/n)n≥1と定数列(1,1,…)、および Lebesgue 測度を入れた(0,1)上のx−1/2について、それぞれがどの空間に属しどの空間に属さないかを判定し、有限測度空間と数え上げ測度空間で包含関係が逆向きになることを示せ。
解答.
∑n≥11/nは発散し∑n≥11/n2は収束するので、(1/n)n≥1はℓ2に属するがℓ1には属さない。定数列(1,1,…)はℓ∞に属し、有限のpに対しては∑n≥11が発散するのでℓpには属さない。(0,1)上では∫01x−1/2dxが有限であり∫01x−1dxが発散するので、x−1/2はL1に属するがL2には属さない。数え上げ測度上では命題 1.2のとおり指数の小さい側が大きい側に含まれるのに対し、(0,1)の例では指数の大きい側が小さい側に含まれる。したがって、有限測度空間と数え上げ測度空間では包含関係を同一視することができない。▨
問題 3.2 (有限測度の使いどころ).補題 1.3と補題 1.4の証明で、台となる集合の測度が有限であることを可算加法性の確認と有界関数の近似のそれぞれのどこで用いたかを示せ。
解答.
可算加法性の確認では、互いに交わらないA1,A2,…⊂Eに対する∥1⋃k≥1Ak−∑k=1N1Ak∥pp=μ(⋃k>NAk)が0へ収束することに用いる。この収束はμ(E)<∞と測度の下からの連続性から従い、μ(E)=∞では尾の測度が0へ向かうとは限らない。有界関数の近似では、単関数による一様近似がLpノルムの収束を与えることに用いる。一様な差εはLpノルムではεμ(Em)1/pで抑えられ、この評価が有限であることにμ(Em)<∞が要る。▨
問題 3.3 (試験関数の指数).補題 1.5の1<p<∞の場合で、試験関数sgng∣g∣q−1の指数が(q−1)p=qを満たすことを計算せよ。
解答.
p−1+q−1=1からq=p/(p−1)である。したがってq−1=1/(p−1)であり、(q−1)p=p/(p−1)=qとなる。試験関数の絶対値は∣g∣q−1であり、そのp乗は(∣g∣q−1)p=∣g∣(q−1)p=∣g∣qである。したがって試験関数のLpノルムのp乗は∣g∣qの積分に一致する。▨
問題 3.4 (等長性の下からの評価).g∈Lq(μ)に対して∥Φg∥≥∥g∥qを、定理 1.6の全射性を用いずに直接示せ。
解答.
gがLqの零元である場合は両辺が0になるので、∥g∥q>0とする。
1<p<∞とする。uk=1{∣g∣≤k}sgng∣g∣q−1と置くと、(q−1)p=qにより
∥uk∥pp=∫{∣g∣≤k}∣g∣qdμ=Φg(uk)である。この量をAkと書く。Ak>0となるkに対してuk/∥uk∥pを代入するとAk1−1/p=Ak1/q≤∥Φg∥を得る。k→∞として単調収束定理を用いると∥g∥q≤∥Φg∥である。
p=1とする。0<ε<∥g∥∞を取ると、{∣g∣>∥g∥∞−ε}は正の測度をもつ。σ-有限性により、その部分集合Aで0<μ(A)<∞を満たすものを選ぶことができる。u=1Asgngは∥u∥1=μ(A)を満たし、
Φg(u)=∫A∣g∣dμ≥(∥g∥∞−ε)μ(A)である。したがって∥Φg∥≥∥g∥∞−εであり、εを0へ近づけると∥g∥∞≤∥Φg∥を得る。▨
問題 3.5 (Banach limit による非全射性).定理 2.1が標準基底をすべて0に写す一方、定数列を1に写すことから、命題 2.2を再証明せよ。
解答.
I(a)(en)=anである。左シフト不変性から、すべてのnについてLC(en)=0が成り立つ。したがってLC=I(a)となるa∈ℓ1があればa=0である。しかしI(0)は定数列を0へ写すので、LC(1)=1に矛盾する。▨