§E12.6L^p 空間の双対性

最終更新

1≤p<∞1\leq p<\inftyとその共役指数qqをとる。各g∈Lqg\in L^qは、積分汎関数

f⟼∫Xfg dμf\longmapsto\int_X f g\,d\mu

を定める。Hölder の不等式によって、ggをこの汎関数へ写す対応はLqL^qから(Lp)∗(L^p)^*への等長写像になる。残る問題は、この対応が(Lp)∗(L^p)^*を汲み尽くすかどうか、すなわちLpL^p上の有界線形汎関数がすべてこの積分の形をとるかどうかである。σ-有限測度空間と1≤p<∞1\leq p<\inftyに対して汲み尽くすことを示し、その帰結として1<p<∞1<p<\inftyの回帰性を導く。p=∞p=\inftyでは同じ同定が成り立たない。数え上げ測度の場合には、標準写像ℓ1→(ℓ∞)∗\ell^1\to(\ell^\infty)^*が全射でないことを確かめる。

複素数値の場合にも上の双線形な積分を採用する。この規約ではg↦(f↦∫fg)g\mapsto(f\mapsto\int fg)は線形である。内積の共役規約とは別の双対同定なので、L2L^2の内積表示と混同してはならない。

1 双対定理

測度空間(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)と1≤p<∞1\leq p<\inftyに対し、pp乗可積分な可測関数をほとんど至る所の一致で同一視した空間をLp(μ)L^p(\mu)と書き、

∥f∥p=(∫X∣f∣p dμ)1/p\|f\|_p=\left(\int_X|f|^p\,d\mu\right)^{1/p}

と定める。L∞(μ)L^\infty(\mu)は本質的に有界な可測関数の同値類からなり、ノルムは本質的上限である。これらは§E9.12 定義 2.3の再掲である。∥⋅∥p\|\cdot\|_pが三角不等式を満たすことは§E9.12 定理 5.1による。すべての1≤p≤∞1\leq p\leq\inftyについてLp(μ)L^p(\mu)は Banach 空間である(§E9.13 定理 1.1)。

定理 1.1 (Hölder の不等式).1≤p,q≤∞1\leq p,q\leq\infty、p−1+q−1=1p^{-1}+q^{-1}=1とする。f∈Lp(μ)f\in L^p(\mu)とg∈Lq(μ)g\in L^q(\mu)に対してfg∈L1(μ)fg\in L^1(\mu)であり、

∥fg∥1≤∥f∥p∥g∥q\|fg\|_1\leq\|f\|_p\|g\|_q

が成り立つ。これは§E9.12 定理 4.2の再掲であり、同ブロックで端点を含めて証明されている。

命題 1.2.1≤p≤q≤∞1\leq p\leq q\leq\inftyならℓp⊆ℓq\ell^p\subseteq\ell^qであり、∥x∥q≤∥x∥p\|x\|_q\leq\|x\|_pが成り立つ。

証明.x=0x=0の場合は両辺が00である。x≠0x\neq0とし、y=x/∥x∥py=x/\|x\|_pと置くと、各nnについて∣yn∣≤1|y_n|\leq1である。q<∞q<\inftyなら∣yn∣q≤∣yn∣p|y_n|^q\leq|y_n|^pなので∥y∥qq≤∥y∥pp=1\|y\|_q^q\leq\|y\|_p^p=1である。q=∞q=\inftyなら∥y∥∞≤1\|y\|_\infty\leq1である。斉次性により結論を得る。▨

1≤p<∞1\leq p<\inftyに対し、共役指数qqを

1p+1q=1\frac1p+\frac1q=1

で定める。p=1p=1のときはq=∞q=\inftyとする。

補題 1.3.(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)を測度空間、1≤p<∞1\leq p<\inftyとし、F∈(Lp(μ))∗F\in(L^p(\mu))^*とする。可測集合EEがμ(E)<∞\mu(E)<\inftyを満たすなら、EE上の可積分な複素数値可測関数hhが存在して、EEに含まれるすべての可測集合AAについて

F(1A)=∫Ah dμF(\mathbf{1}_A)=\int_Ah\,d\mu

が成り立つ。

証明.A⊂EA\subset Eなる可測集合はμ(A)≤μ(E)<∞\mu(A)\leq\mu(E)<\inftyを満たすので1A∈Lp(μ)\mathbf{1}_A\in L^p(\mu)であり、

ν(A)=F(1A)\nu(A)=F(\mathbf{1}_A)

と置くことができる。A1,A2,…⊂EA_1,A_2,\ldots\subset Eが互いに交わらないとき、

∥1⋃k≥1Ak−∑k=1N1Ak∥pp=μ(⋃k>NAk)⟶0.\left\|\mathbf{1}_{\bigcup_{k\geq1}A_k} -\sum_{k=1}^N\mathbf{1}_{A_k}\right\|_p^p =\mu\left(\bigcup_{k>N}A_k\right)\longrightarrow0.

最後の収束はμ(E)<∞\mu(E)<\inftyと測度の下からの連続性による。FFの連続性からν(⋃kAk)=∑kν(Ak)\nu(\bigcup_kA_k)=\sum_k\nu(A_k)であり、ν\nuは有限値の複素測度である。またμ(A)=0\mu(A)=0なら1A\mathbf{1}_AはLpL^pの零元なので、ν≪μ∣E\nu\ll\mu|_Eである。

Re⁡ν\operatorname{Re}\nuとIm⁡ν\operatorname{Im}\nuは有限符号付き測度である。Jordan 分解§E9.14 定理 4.2によって

Re⁡ν=ν1−ν2,Im⁡ν=ν3−ν4\operatorname{Re}\nu=\nu_1-\nu_2,\qquad \operatorname{Im}\nu=\nu_3-\nu_4

と有限正測度の差に書く。μ(A)=0\mu(A)=0ならAAのすべての可測部分集合BBについてν(B)=0\nu(B)=0である。Jordan 分解の公式ν+(A)=sup⁡B⊂Aν(B)\nu^+(A)=\sup_{B\subset A}\nu(B)を実部と虚部に適用すると、各νj\nu_jもμ∣E\mu|_Eに関して絶対連続である。正測度版 Radon–Nikodym の定理§E9.15 定理 3.3により、非負可積分関数hjh_jが存在して

νj(A)=∫Ahj dμ\nu_j(A)=\int_Ah_j\,d\mu

となる。したがって

h=h1−h2+i(h3−h4)∈L1(E)h=h_1-h_2+i(h_3-h_4)\in L^1(E)

と置けば、すべての可測集合A⊂EA\subset EについてF(1A)=∫Ah dμF(\mathbf{1}_A)=\int_Ah\,d\muが成り立つ。▨

補題 1.4.(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)を測度空間、1≤p<∞1\leq p<\inftyとし、F∈(Lp(μ))∗F\in(L^p(\mu))^*とする。可測集合の増大列E1⊂E2⊂⋯E_1\subset E_2\subset\cdotsが⋃m≥1Em=X\bigcup_{m\geq1}E_m=Xとすべてのmmに対するμ(Em)<∞\mu(E_m)<\inftyを満たすとする。このとき可測関数ggが存在して、各mmについてg1Emg\mathbf{1}_{E_m}は可積分であり、いずれかのEmE_mに台をもつ有界可測関数uuについて

F(u)=∫Xug dμF(u)=\int_Xug\,d\mu

が成り立つ。

証明. 各mmに補題 1.3を適用し、EmE_m上の可積分関数hmh_mで、EmE_mに含まれるすべての可測集合AAについて

F(1A)=∫Ahm dμ(1)F(\mathbf{1}_A)=\int_Ah_m\,d\mu \tag{1}

を満たすものを取る。

m<nm<nならhmh_mとhn∣Emh_n|_{E_m}は同じ複素測度を表す。可積分な複素関数uuがすべての可測集合AAについて∫Au dμ=0\int_Au\,d\mu=0を満たすなら、Re⁡u\operatorname{Re}uとIm⁡u\operatorname{Im}uの正の部分が正である集合および負である集合へ順に適用してu=0u=0がほとんど至る所で成り立つ。したがってhn=hmh_n=h_mがEmE_m上のほとんど至る所で成り立つ。可算個の零集合上で代表元を修正し、hm+1=hmh_{m+1}=h_mがEmE_m上で成り立つとしてよい。E0=∅E_0=\emptysetとし、

g=hmEm∖Em−1 上でg=h_m\quad\text{$E_m\setminus E_{m-1}$ 上で}

と置く。このときg=hmg=h_mがEmE_m上のほとんど至る所で成り立ち、g1Emg\mathbf{1}_{E_m}は可積分である。

式 (1) の線形性により、EmE_mに台をもつ単関数ssについて

F(s)=∫Emsg dμ.(2)F(s)=\int_{E_m}sg\,d\mu. \tag{2}

さらに、EmE_mに台をもつ有界可測関数は一様に単関数で近似することができる。μ(Em)<∞\mu(E_m)<\inftyなので近似はLpL^pでも収束し、g∣Em∈L1g|_{E_m}\in L^1なので積分側も収束する。したがって (2) はEmE_mに台をもつ有界可測関数についても成り立つ。▨

補題 1.5.(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)を測度空間、1≤p<∞1\leq p<\inftyとし、qqをppの共役指数、F∈(Lp(μ))∗F\in(L^p(\mu))^*とする。可測集合の増大列E1⊂E2⊂⋯E_1\subset E_2\subset\cdotsが⋃m≥1Em=X\bigcup_{m\geq1}E_m=Xとすべてのmmに対するμ(Em)<∞\mu(E_m)<\inftyを満たすとする。可測関数ggが、いずれかのEmE_mに台をもつ有界可測関数uuについて

F(u)=∫Xug dμF(u)=\int_Xug\,d\mu

を満たすなら、g∈Lq(μ)g\in L^q(\mu)であり∥g∥q≤∥F∥\|g\|_q\leq\|F\|が成り立つ。

証明. まず1<p<∞1<p<\inftyとする。g(x)≠0g(x)\neq0のときsgn⁡g(x)=g(x)/∣g(x)∣\operatorname{sgn}g(x)=g(x)/|g(x)|とし、g(x)=0g(x)=0のとき00とする。各m,km,kに対して

um,k=1Em∩{∣g∣≤k}sgn⁡g‾ ∣g∣q−1u_{m,k}=\mathbf{1}_{E_m\cap\{|g|\leq k\}} \overline{\operatorname{sgn}g}\,|g|^{q-1}

はEmE_mに台をもつ有界関数である。仮定した表示と(q−1)p=q(q-1)p=qにより、

Am,k:=∫Em∩{∣g∣≤k}∣g∣q dμ=F(um,k)≤∥F∥Am,k1/p.A_{m,k}:=\int_{E_m\cap\{|g|\leq k\}}|g|^q\,d\mu =F(u_{m,k}) \leq\|F\|A_{m,k}^{1/p}.

Am,k=0A_{m,k}=0の場合も含めてAm,k1/q≤∥F∥A_{m,k}^{1/q}\leq\|F\|である。k→∞k\to\infty、次にm→∞m\to\inftyとし、単調収束定理を用いると、g∈Lq(μ)g\in L^q(\mu)であり∥g∥q≤∥F∥\|g\|_q\leq\|F\|である。

次にp=1p=1とする。あるε>0\varepsilon>0に対してA=Em∩{∣g∣>∥F∥+ε}A=E_m\cap\{|g|>\|F\|+\varepsilon\}が正の測度をもつと仮定する。u=1Asgn⁡g‾u=\mathbf{1}_A\overline{\operatorname{sgn}g}を仮定した表示に代入すると

(∥F∥+ε)μ(A)<∫A∣g∣ dμ=F(u)≤∥F∥∥u∥1=∥F∥μ(A),(\|F\|+\varepsilon)\mu(A) <\int_A|g|\,d\mu=F(u) \leq\|F\|\|u\|_1=\|F\|\mu(A),

となり矛盾する。したがって、すべてのmmについて∣g∣≤∥F∥|g|\leq\|F\|がEmE_m上のほとんど至る所で成り立ち、g∈L∞(μ)g\in L^\infty(\mu)であり∥g∥∞≤∥F∥\|g\|_\infty\leq\|F\|である。p=1p=1の共役指数はq=∞q=\inftyなので、いずれの場合もg∈Lq(μ)g\in L^q(\mu)と∥g∥q≤∥F∥\|g\|_q\leq\|F\|を得る。▨

定理 1.6.(X,F,μ)(X,\mathcal F,\mu)を σ-有限測度空間とし、1≤p<∞1\leq p<\inftyとする。各g∈Lq(μ)g\in L^q(\mu)に対して

Φg(f)=∫Xfg dμ(f∈Lp(μ))\Phi_g(f)=\int_X f g\,d\mu\qquad(f\in L^p(\mu))

と定めると、g↦Φgg\mapsto\Phi_gはLq(μ)L^q(\mu)から(Lp(μ))∗(L^p(\mu))^*への線形等長全単射である。

証明.g∈Lq(μ)g\in L^q(\mu)とする。定理 1.1により

∣Φg(f)∣≤∥f∥p∥g∥q|\Phi_g(f)|\leq\|f\|_p\|g\|_q

なので、Φg∈(Lp)∗\Phi_g\in(L^p)^*かつ∥Φg∥≤∥g∥q\|\Phi_g\|\leq\|g\|_qである。

F∈(Lp)∗F\in(L^p)^*を固定する。σ-有限性により、Em↑XE_m\uparrow X、μ(Em)<∞\mu(E_m)<\inftyを満たす可測集合の増大列を選ぶことができる。補題 1.4により、いずれかのEmE_mに台をもつ有界可測関数uuについて

F(u)=∫Xug dμF(u)=\int_Xug\,d\mu

を満たす可測関数ggを取ることができる。このggに補題 1.5を適用すると、g∈Lq(μ)g\in L^q(\mu)であり∥g∥q≤∥F∥\|g\|_q\leq\|F\|である。

f∈Lpf\in L^pを任意に取る。§E9.13 定理 2.2と切断f1Emf\mathbf{1}_{E_m}により、有限測度集合に台をもつLpL^p単関数列sns_nでsn→fs_n\to fがLpL^pノルムについて成り立つものを取ることができる。補題 1.4の表示、FFの連続性、および Hölder の不等式から

F(f)=lim⁡nF(sn)=lim⁡n∫Xsng dμ=∫Xfg dμ.F(f)=\lim_nF(s_n)=\lim_n\int_Xs_ng\,d\mu=\int_Xfg\,d\mu.

よってF=ΦgF=\Phi_gであり、全射性が示された。補題 1.5の評価と最初の有界性を組み合わせると

∥F∥=∥Φg∥=∥g∥q\|F\|=\|\Phi_g\|=\|g\|_q

である。特にΦg=0\Phi_g=0ならggはLqL^qの零元なので単射でもある。線形性は積分の線形性から従う。▨

系 1.7. σ-有限測度空間上で1<p<∞1<p<\inftyなら、Lp(μ)L^p(\mu)は回帰的である。

証明.q=p/(p−1)q=p/(p-1)とする。定理 1.6の等長全単射をDp:Lq→(Lp)∗D_p:L^q\to(L^p)^*、Dpg=ΦgD_pg=\Phi_gと書く。Λ∈(Lp)∗∗\Lambda\in(L^p)^{**}に対し

H(g)=Λ(Dpg)(g∈Lq)H(g)=\Lambda(D_pg)\qquad(g\in L^q)

と置くと、H∈(Lq)∗H\in(L^q)^*である。同じ双対定理を指数qqに適用すると、あるh∈Lph\in L^pが存在して

H(g)=∫Xgh dμ=(Dpg)(h)H(g)=\int_Xgh\,d\mu=(D_pg)(h)

となる。したがって、すべてのg∈Lqg\in L^qについてΛ(Dpg)=(JLph)(Dpg)\Lambda(D_pg)=(J_{L^p}h)(D_pg)である。DpD_pは全射なのでΛ=JLph\Lambda=J_{L^p}hであり、標準埋め込みは全射である。▨

2 L∞L^\inftyと Banach limit

数え上げ測度上のL∞=ℓ∞L^\infty=\ell^\inftyに対して、標準写像を

I:ℓ1⟶(ℓ∞)∗,I(a)(x)=∑n=1∞anxnI:\ell^1\longrightarrow(\ell^\infty)^*,\qquad I(a)(x)=\sum_{n=1}^\infty a_nx_n

と定める。

定理 2.1. 実数列の空間ℓ∞(R)\ell^\infty(\mathbb R)上に、有界線形汎関数LLで次を満たすものが存在する。

  1. すべてのnnについてxn≥0x_n\geq0ならL(x)≥0L(x)\geq0である。
  2. 1=(1,1,…)\mathbf{1}=(1,1,\ldots)に対してL(1)=1L(\mathbf{1})=1である。
  3. 左シフトSx=(x2,x3,…)Sx=(x_2,x_3,\ldots)に対してL(Sx)=L(x)L(Sx)=L(x)である。
  4. xn→ax_n\to aならL(x)=aL(x)=aである。

さらに∥L∥=1\|L\|=1である。

証明.x∈ℓ∞(R)x\in\ell^\infty(\mathbb R)に対して

P(x)=lim sup⁡N→∞1N∑n=1NxnP(x)=\limsup_{N\to\infty}\frac1N\sum_{n=1}^Nx_n

と置く。上極限の性質により、P(x+y)≤P(x)+P(y)P(x+y)\leq P(x)+P(y)かつt≥0t\geq0に対してP(tx)=tP(x)P(tx)=tP(x)なので、PPは実線形空間上の劣線形汎関数である。収束数列の部分空間cc上でL0(x)=lim⁡nxnL_0(x)=\lim_nx_nと置くと、L0(x)=P(x)L_0(x)=P(x)である。劣線形汎関数による Hahn–Banach の定理§E12.3 定理 1.2により、L0L_0はL:ℓ∞(R)→RL:\ell^\infty(\mathbb R)\to\mathbb Rへ延長され、L(x)≤P(x)L(x)\leq P(x)を満たす。

(3)を示す。P(Sx−x)=P(x−Sx)=0P(Sx-x)=P(x-Sx)=0である。実際、最初のNN項の平均はそれぞれ(xN+1−x1)/N(x_{N+1}-x_1)/Nと(x1−xN+1)/N(x_1-x_{N+1})/Nであり、00に収束する。したがってL(Sx−x)≤0L(Sx-x)\leq0とL(x−Sx)≤0L(x-Sx)\leq0からL(Sx)=L(x)L(Sx)=L(x)を得る。

(1)を示す。x≥0x\geq0ならP(−x)≤0P(-x)\leq0なので−L(x)=L(−x)≤0-L(x)=L(-x)\leq0、すなわちL(x)≥0L(x)\geq0である。

(4)を示す。LLはL0L_0を延長するので、収束数列上では通常の極限に一致する。

(2)を示す。L(1)=1L(\mathbf{1})=1である。

任意の実数列xxについて−∥x∥∞1≤x≤∥x∥∞1-\|x\|_\infty\mathbf{1}\leq x\leq\|x\|_\infty\mathbf{1}である。正値性と線形性から∣L(x)∣≤∥x∥∞|L(x)|\leq\|x\|_\inftyなので∥L∥≤1\|L\|\leq1であり、L(1)=1L(\mathbf{1})=1から∥L∥=1\|L\|=1である。▨

複素数列に対して

LC(z)=L(Re⁡z)+iL(Im⁡z)L_{\mathbb C}(z)=L(\operatorname{Re}z)+iL(\operatorname{Im}z)

と置くと、LCL_{\mathbb C}は複素線形であり、定数とシフトを保つ。∣α∣=1|\alpha|=1をαLC(z)=∣LC(z)∣\alpha L_{\mathbb C}(z)=|L_{\mathbb C}(z)|となるように取れば

∣LC(z)∣=L(Re⁡(αz))≤∥Re⁡(αz)∥∞≤∥z∥∞.|L_{\mathbb C}(z)| =L(\operatorname{Re}(\alpha z)) \leq\|\operatorname{Re}(\alpha z)\|_\infty \leq\|z\|_\infty.

定数列で等号になるため、∥LC∥=1\|L_{\mathbb C}\|=1である。

命題 2.2. 標準写像I:ℓ1→(ℓ∞)∗I:\ell^1\to(\ell^\infty)^*は全射でない。

証明.LC=I(a)L_{\mathbb C}=I(a)となるa∈ℓ1a\in\ell^1が存在したと仮定する。標準基底ene_nに対し、左シフトはSe1=0Se_1=0、Sen+1=enSe_{n+1}=e_nを満たす。シフト不変性からLC(e1)=0L_{\mathbb C}(e_1)=0であり、帰納的にすべてのnnについてLC(en)=0L_{\mathbb C}(e_n)=0である。一方、I(a)(en)=anI(a)(e_n)=a_nなのでa=0a=0となる。しかしI(0)(1)=0I(0)(\mathbf{1})=0はLC(1)=1L_{\mathbb C}(\mathbf{1})=1に矛盾する。▨

注意 2.3 (有界数列空間の双対と有限加法的測度).ba(N)ba(\mathbb N)を、P(N)\mathcal P(\mathbb N)上の実数値または複素数値有限加法的測度ν\nuで

∥ν∥ba=sup⁡{∑j=1m∣ν(Aj)∣:N=⨆j=1mAj}<∞\|\nu\|_{ba} =\sup\left\{ \sum_{j=1}^m|\nu(A_j)|: \mathbb N=\bigsqcup_{j=1}^m A_j \right\}<\infty

を満たすものの空間とする。標準的な表示定理によれば、

(ℓ∞)∗⟶ba(N),F⟼νFνF(A)=F(1A)(\ell^\infty)^*\longrightarrow ba(\mathbb N),\qquad F\longmapsto\nu_F\qquad \nu_F(A)=F(\mathbf{1}_A)

は線形等長全単射であり、∥F∥=∥νF∥ba\|F\|=\|\nu_F\|_{ba}が成り立つ。逆対応は、有限値単関数s=∑j=1mcj1Ajs=\sum_{j=1}^m c_j\mathbf{1}_{A_j}に対して

∫s dν:=∑j=1mcjν(Aj)\int s\,d\nu:=\sum_{j=1}^m c_j\nu(A_j)

と定めた有限加法積分を、一様ノルムによる近似でℓ∞\ell^\infty全体へ延長して得られる。

Banach limit の場合、有限集合AAではνF(A)=0\nu_F(A)=0である一方、νF(N)=1\nu_F(\mathbb N)=1である。 Yosida–Hewitt 分解の証明、および有限加法的測度の一般論は本記事では扱わない。

3 演習

問題 3.1 (所属するLpL^pの判定). 数え上げ測度上の(1/n)n≥1(1/n)_{n\geq1}と定数列(1,1,…)(1,1,\ldots)、および Lebesgue 測度を入れた(0,1)(0,1)上のx−1/2x^{-1/2}について、それぞれがどの空間に属しどの空間に属さないかを判定し、有限測度空間と数え上げ測度空間で包含関係が逆向きになることを示せ。

解答.

∑n≥11/n\sum_{n\geq1}1/nは発散し∑n≥11/n2\sum_{n\geq1}1/n^2は収束するので、(1/n)n≥1(1/n)_{n\geq1}はℓ2\ell^2に属するがℓ1\ell^1には属さない。定数列(1,1,…)(1,1,\ldots)はℓ∞\ell^\inftyに属し、有限のppに対しては∑n≥11\sum_{n\geq1}1が発散するのでℓp\ell^pには属さない。(0,1)(0,1)上では∫01x−1/2 dx\int_0^1x^{-1/2}\,dxが有限であり∫01x−1 dx\int_0^1x^{-1}\,dxが発散するので、x−1/2x^{-1/2}はL1L^1に属するがL2L^2には属さない。数え上げ測度上では命題 1.2のとおり指数の小さい側が大きい側に含まれるのに対し、(0,1)(0,1)の例では指数の大きい側が小さい側に含まれる。したがって、有限測度空間と数え上げ測度空間では包含関係を同一視することができない。▨

問題 3.2 (有限測度の使いどころ).補題 1.3と補題 1.4の証明で、台となる集合の測度が有限であることを可算加法性の確認と有界関数の近似のそれぞれのどこで用いたかを示せ。

解答.

可算加法性の確認では、互いに交わらないA1,A2,…⊂EA_1,A_2,\ldots\subset Eに対する∥1⋃k≥1Ak−∑k=1N1Ak∥pp=μ(⋃k>NAk)\|\mathbf{1}_{\bigcup_{k\geq1}A_k}-\sum_{k=1}^N\mathbf{1}_{A_k}\|_p^p=\mu(\bigcup_{k>N}A_k)が00へ収束することに用いる。この収束はμ(E)<∞\mu(E)<\inftyと測度の下からの連続性から従い、μ(E)=∞\mu(E)=\inftyでは尾の測度が00へ向かうとは限らない。有界関数の近似では、単関数による一様近似がLpL^pノルムの収束を与えることに用いる。一様な差ε\varepsilonはLpL^pノルムではεμ(Em)1/p\varepsilon\mu(E_m)^{1/p}で抑えられ、この評価が有限であることにμ(Em)<∞\mu(E_m)<\inftyが要る。▨

問題 3.3 (試験関数の指数).補題 1.5の1<p<∞1<p<\inftyの場合で、試験関数sgn⁡g‾ ∣g∣q−1\overline{\operatorname{sgn}g}\,|g|^{q-1}の指数が(q−1)p=q(q-1)p=qを満たすことを計算せよ。

解答.

p−1+q−1=1p^{-1}+q^{-1}=1からq=p/(p−1)q=p/(p-1)である。したがってq−1=1/(p−1)q-1=1/(p-1)であり、(q−1)p=p/(p−1)=q(q-1)p=p/(p-1)=qとなる。試験関数の絶対値は∣g∣q−1|g|^{q-1}であり、そのpp乗は(∣g∣q−1)p=∣g∣(q−1)p=∣g∣q(|g|^{q-1})^p=|g|^{(q-1)p}=|g|^qである。したがって試験関数のLpL^pノルムのpp乗は∣g∣q|g|^qの積分に一致する。▨

問題 3.4 (等長性の下からの評価).g∈Lq(μ)g\in L^q(\mu)に対して∥Φg∥≥∥g∥q\|\Phi_g\|\geq\|g\|_qを、定理 1.6の全射性を用いずに直接示せ。

解答.

ggがLqL^qの零元である場合は両辺が00になるので、∥g∥q>0\|g\|_q>0とする。

1<p<∞1<p<\inftyとする。uk=1{∣g∣≤k}sgn⁡g‾ ∣g∣q−1u_k=\mathbf{1}_{\{|g|\leq k\}}\overline{\operatorname{sgn}g}\,|g|^{q-1}と置くと、(q−1)p=q(q-1)p=qにより

∥uk∥pp=∫{∣g∣≤k}∣g∣q dμ=Φg(uk)\|u_k\|_p^p=\int_{\{|g|\leq k\}}|g|^q\,d\mu=\Phi_g(u_k)

である。この量をAkA_kと書く。Ak>0A_k>0となるkkに対してuk/∥uk∥pu_k/\|u_k\|_pを代入するとAk1−1/p=Ak1/q≤∥Φg∥A_k^{1-1/p}=A_k^{1/q}\leq\|\Phi_g\|を得る。k→∞k\to\inftyとして単調収束定理を用いると∥g∥q≤∥Φg∥\|g\|_q\leq\|\Phi_g\|である。

p=1p=1とする。0<ε<∥g∥∞0<\varepsilon<\|g\|_\inftyを取ると、{∣g∣>∥g∥∞−ε}\{|g|>\|g\|_\infty-\varepsilon\}は正の測度をもつ。σ-有限性により、その部分集合AAで0<μ(A)<∞0<\mu(A)<\inftyを満たすものを選ぶことができる。u=1Asgn⁡g‾u=\mathbf{1}_A\overline{\operatorname{sgn}g}は∥u∥1=μ(A)\|u\|_1=\mu(A)を満たし、

Φg(u)=∫A∣g∣ dμ≥(∥g∥∞−ε)μ(A)\Phi_g(u)=\int_A|g|\,d\mu\geq(\|g\|_\infty-\varepsilon)\mu(A)

である。したがって∥Φg∥≥∥g∥∞−ε\|\Phi_g\|\geq\|g\|_\infty-\varepsilonであり、ε\varepsilonを00へ近づけると∥g∥∞≤∥Φg∥\|g\|_\infty\leq\|\Phi_g\|を得る。▨

問題 3.5 (Banach limit による非全射性).定理 2.1が標準基底をすべて00に写す一方、定数列を11に写すことから、命題 2.2を再証明せよ。

解答.

I(a)(en)=anI(a)(e_n)=a_nである。左シフト不変性から、すべてのnnについてLC(en)=0L_{\mathbb C}(e_n)=0が成り立つ。したがってLC=I(a)L_{\mathbb C}=I(a)となるa∈ℓ1a\in\ell^1があればa=0a=0である。しかしI(0)I(0)は定数列を00へ写すので、LC(1)=1L_{\mathbb C}(\mathbf{1})=1に矛盾する。▨

参考文献

  1. Gerald B. Folland, Real Analysis, 2nd ed., Wiley, 1999.
  2. Walter Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw Hill, 1987.
  3. John B. Conway, A Course in Functional Analysis, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1990.
  4. Kôsaku Yosida and Edwin Hewitt, Finitely additive measures, Transactions of the American Mathematical Society 72 (1952), 46–66.

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