§E18.14重心細分と小さい単体の定理

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切除定理では、鎖を開被覆の一要素に収まるほど細かく分割する必要がある。重心細分は、その分割を境界作用素と可換する形で実現する。

1 重心細分作用素

向きづけられたアフィン単体[v0,…,vn][v_0,\ldots,v_n]の重心をbbとする。境界の細分済み鎖ccに対し、各単体とbbを結ぶ錐をb∗cb*cと書く。向きはbbを最初の頂点に置いて定める。

定義 1.1. 標準単体上の作用素SSを帰納的に

S[v0]=[v0],S[v0,…,vn]=b∗S∂[v0,…,vn]S[v_0]=[v_0],\qquad S[v_0,\ldots,v_n]=b*S\partial[v_0,\ldots,v_n]

で定める。特異単体σ:Δn→X\sigma:\Delta^n\to Xに対しては、標準単体の細分をσ\sigmaで押し出してSσS\sigmaと定め、線形にS:Cn(X)→Cn(X)S:C_n(X)\to C_n(X)へ延長する。

細分後のnn単体は、元の単体の空でない面の真の包含列

F0⊊F1⊊⋯⊊FnF_0\subsetneq F_1\subsetneq\cdots\subsetneq F_n

に対応し、その頂点は各FiF_iの重心である。この記述から、貼り合わせ済みの面でも細分が一致する。

命題 1.2.∂S=S∂\partial S=S\partialが成り立つ。

証明. 錐の境界公式

∂(b∗c)=c−b∗(∂c)\partial(b*c)=c-b*(\partial c)

を用いる。帰納法により∂S∂σ=S∂2σ=0\partial S\partial\sigma=S\partial^2\sigma=0と仮定すると、

∂Sσ=∂(b∗S∂σ)=S∂σ−b∗S∂2σ=S∂σ\partial S\sigma =\partial(b*S\partial\sigma) =S\partial\sigma-b*S\partial^2\sigma =S\partial\sigma

である。零次元では明らかなので、すべての次数で結論が成り立つ。▨

命題 1.3. ユークリッド空間内のnn単体τ\tauの重心細分に現れる各単体τ′\tau'について

diam⁡(τ′)≤nn+1diam⁡(τ)\operatorname{diam}(\tau')\leq\frac{n}{n+1}\operatorname{diam}(\tau)

である。したがってrr回の細分後の直径は高々(n/(n+1))rdiam⁡(τ)(n/(n+1))^r\operatorname{diam}(\tau)である。

証明. 細分単体の二頂点は、面F⊂GF\subset Gの重心bF,bGb_F,b_Gとして表される。GGの頂点数をq≤n+1q\leq n+1、FFの頂点数をp≥1p\geq1とすると、bGb_GはFFの頂点の平均と残りの頂点の平均との凸結合であり、bFb_Fからの距離は高々(q−p)/q(q-p)/q倍の元の直径である。この比はp=1,q=n+1p=1,q=n+1のとき最大でn/(n+1)n/(n+1)になる。反復評価は帰納法で従う。▨

2 恒等作用素との鎖ホモトピー

標準単体ιn:Δn→Δn\iota_n:\Delta^n\to\Delta^n上で作用素TnT_nを帰納的に構成する。T0=0T_0=0とし、低次で構成済みとする。

定理 2.1. 各nnに自然な準同型Tn:Cn(X)→Cn+1(X)T_n:C_n(X)\to C_{n+1}(X)があり、

∂T+T∂=id⁡−S\partial T+T\partial=\operatorname{id}-S

を満たす。さらにT(σ)T(\sigma)の各単体の像はσ(Δn)\sigma(\Delta^n)に含まれる。

証明. 標準単体で

Dn:=ιn−Sιn−Tn−1(∂ιn)D_n:=\iota_n-S\iota_n-T_{n-1}(\partial\iota_n)

と置く。帰納法の恒等式と∂S=S∂\partial S=S\partialから

∂Dn=∂ιn−S∂ιn−(id⁡−S−T∂)(∂ιn)=0\partial D_n =\partial\iota_n-S\partial\iota_n -(\operatorname{id}-S-T\partial)(\partial\iota_n)=0

である。DnD_nは標準単体内の輪体なので、重心bbからの錐を取りTn(ιn):=b∗DnT_n(\iota_n):=b*D_nと定める。錐の境界公式と∂Dn=0\partial D_n=0により∂Tn(ιn)=Dn\partial T_n(\iota_n)=D_nであり、目的の恒等式を得る。

一般の特異単体σ\sigmaでは、この標準単体上の鎖をσ\sigmaで押し出してTn(σ)T_n(\sigma)と定める。この構成は面への制限と可換するため、同じ恒等式が成立する。錐を含む全単体は標準単体内にあるので、押し出した像はσ(Δn)\sigma(\Delta^n)に含まれる。▨

3 小単体定理

U\mathcal UをXXの開被覆とする。像があるU∈UU\in\mathcal Uに含まれる特異単体が生成する部分鎖複体をC∗U(X)C_*^{\mathcal U}(X)と書く。面の像も同じUUに含まれるため、これは鎖複体である。

定理 3.1 (小単体定理). 包含

C∗U(X)↪C∗(X)C_*^{\mathcal U}(X)\hookrightarrow C_*(X)

はすべての次数でホモロジー同型を誘導する。

証明. 特異単体σ:Δn→X\sigma:\Delta^n\to Xごとに、{σ−1(U)∣U∈U}\{\sigma^{-1}(U)\mid U\in\mathcal U\}はコンパクト距離空間Δn\Delta^nの開被覆である。Lebesgue 数を一つ取り、命題 1.3を用いると、十分大きいrrについてSrσS^r\sigmaの各単体の像はあるUUに含まれる。一つの鎖に現れる特異単体は有限個なので、共通のrrを選ぶことができる。

zzが輪体なら、鎖ホモトピー恒等式を反復して

z−Srz=∂(∑j=0r−1SjTz)z-S^rz =\partial\left(\sum_{j=0}^{r-1}S^jTz\right)

となる。SrzS^rzは小鎖なので、包含がホモロジー上で全射である。

次に、小輪体zzがC∗(X)C_*(X)でz=∂cz=\partial cと境界になったとする。SrcS^rcが小鎖になるようrrを取ると、∂Src=Srz\partial S^rc=S^rzである。zzを構成する各単体は初めから一つの被覆要素に含まれ、SSとTTはその像の内部だけで鎖を作る。したがって

z−Srz=∂(∑j=0r−1SjTz)z-S^rz=\partial\left(\sum_{j=0}^{r-1}S^jTz\right)

の右辺の括弧内も小鎖である。これとSrcS^rcを合わせるとzzは小鎖複体内で境界になる。ゆえに包含は単射でもある。▨

4 演習

問題 4.1.

  1. 一次元単体を一回重心細分した鎖を書き、境界が元の単体の境界と等しいことを確かめよ。
  2. 小単体定理の単射性の証明で、元の輪体zzが小鎖であるという仮定を使用した箇所を示せ。

解答。 第一問では辺[v0,v1][v_0,v_1]の重心をbbとすると、細分鎖は[v0,b]+[b,v1][v_0,b]+[b,v_1]である。その境界は(b−v0)+(v1−b)=v1−v0(b-v_0)+(v_1-b)=v_1-v_0となる。第二問では、z−Srzz-S^rzを埋める鎖∑SjTz\sum S^jTzが小鎖であることを示す箇所で用いる。TTは各特異単体の像の内部だけで構成されるため、元の各単体が一つの被覆要素に含まれていれば、補間鎖も同じ要素に含まれる。

参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.重心細分作用素、鎖ホモトピーおよび小単体定理の証明を参考にした。

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