§E18.23一次ホモロジーと基本群の可換化

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基点付きループは、端点が一致する特異一次単体であるため一次輪体を与える。基本群の積は道の連結である一方、一次ホモロジーの演算は鎖の和である。本記事では、両方の演算の差が二次鎖の境界になることを示し、一次ホモロジーが基本群の可換化に一致することを証明する。

1 道の連結を表す二次鎖

道α:[0,1]→X\alpha:[0,1]\to Xの逆道をαˉ(t):=α(1−t)\bar\alpha(t):=\alpha(1-t)と書く。α(1)=β(0)\alpha(1)=\beta(0)のとき、先にα\alphaを進み、次にβ\betaを進む道をα∗β\alpha*\betaと書く。

任意の道は一次鎖ではあるが、端点が異なる道は一次輪体ではない。そこで

C‾1(X):=C1(X)/B1(X)\overline C_1(X):=C_1(X)/B_1(X)

と置き、一次鎖ccの剰余類を⟨c⟩\langle c\rangleと書く。B1(X)⊂Z1(X)B_1(X)\subset Z_1(X)なので境界準同型は

∂‾1:C‾1(X)⟶C0(X)\overline\partial_1:\overline C_1(X)\longrightarrow C_0(X)

を誘導し、その核はH1(X;Z)=Z1(X)/B1(X)H_1(X;\mathbb Z)=Z_1(X)/B_1(X)である。したがって、一般の道についてはC‾1(X)\overline C_1(X)の等式を用い、ループまたは一次輪体についてだけH1(X;Z)H_1(X;\mathbb Z)の類を用いる。

補題 1.1. 連結することができる二つの道α,β\alpha,\betaについて

⟨α∗β⟩=⟨α⟩+⟨β⟩\langle\alpha*\beta\rangle=\langle\alpha\rangle+\langle\beta\rangle

がC‾1(X)\overline C_1(X)で成り立つ。また、任意の道α\alphaについて

⟨αˉ⟩=−⟨α⟩\langle\bar\alpha\rangle=-\langle\alpha\rangle

である。とくに、現れる鎖が一次輪体である場合には、同じ等式がH1(X;Z)H_1(X;\mathbb Z)で成り立つ。

証明.Δ2\Delta^2の頂点をv0,v1,v2v_0,v_1,v_2とする。辺[v0,v1][v_0,v_1]をα\alpha、辺[v1,v2][v_1,v_2]をβ\beta、辺[v0,v2][v_0,v_2]をα∗β\alpha*\betaで写す境界写像を考える。∂Δ2\partial\Delta^2を正向きに一周した像は

(α∗β)∗(α∗β)‾(\alpha*\beta)*\overline{(\alpha*\beta)}

の道のパラメータを変更したものであり、道と逆道の連結は定値ループへホモトピックである。したがって境界写像はΔ2\Delta^2全体へ延長する。延長を特異二単体s:Δ2→Xs:\Delta^2\to Xとすると、特異境界の符号規約から

∂s=β−(α∗β)+α\partial s=\beta-(\alpha*\beta)+\alpha

である。よってC‾1(X)\overline C_1(X)で所要の連結公式を得る。

点xxへの定値一次単体をcx1c_x^1、定値二単体をcx2c_x^2と書くと

∂cx2=cx1−cx1+cx1=cx1\partial c_x^2=c_x^1-c_x^1+c_x^1=c_x^1

である。したがって定値一次単体は境界である。β=αˉ\beta=\bar\alphaとした連結公式を使うと、α∗αˉ\alpha*\bar\alphaは定値道と同じ端点をもち、前段の三角形によって定値道との差が境界になる。ゆえに⟨αˉ⟩=−⟨α⟩\langle\bar\alpha\rangle=-\langle\alpha\rangleを得る。▨

基点を保つループのホモトピーF:[0,1]2→XF:[0,1]^2\to Xがある場合、正方形を二つの三角形へ分け、それぞれをFFと合成する。得られる二つの特異二単体の和の境界は、上辺のループから下辺のループを引き、二本の縦辺を加えたものである。縦辺は基点への定値一次単体なので境界である。したがって、基点を保ってホモトピックなループは同じ一次ホモロジー類を与える。

定義 1.2. 基点付き空間(X,x0)(X,x_0)に対して

hX:π1(X,x0)⟶H1(X;Z),hX([α]):=[α]H1h_X:\pi_1(X,x_0)\longrightarrow H_1(X;\mathbb Z), \qquad h_X([\alpha]):=[\alpha]_{H_1}

と定める。

前段落によりhXh_Xはループのホモトピー類のとり方に依存しない。補題 1.1により

hX([α][β])=hX([α])+hX([β])h_X([\alpha][\beta]) =h_X([\alpha])+h_X([\beta])

であるから、hXh_Xは群準同型である。終域がアーベル群なので、hXh_Xは可換化を通る準同型

hˉX:π1(X,x0)ab⟶H1(X;Z)\bar h_X:\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}\longrightarrow H_1(X;\mathbb Z)

を一意に誘導する。

2 特異辺から基点付きループを作る

逆写像を作るため、XXが弧状連結であると仮定する。各点x∈Xx\in Xについて、x0x_0からxxへの道λx\lambda_xを一つ選び、λx0\lambda_{x_0}は定値道とする。

特異一次単体σ:[0,1]→X\sigma:[0,1]\to Xの始点をxx、終点をyyとする。基点付きループ

Lσ:=λx∗σ∗λˉyL_\sigma:=\lambda_x*\sigma*\bar\lambda_y

を作り、π1(X,x0)ab\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}を加法的に書いて

Φ(σ):=[Lσ]ab\Phi(\sigma):=[L_\sigma]_{\mathrm{ab}}

と置く。Φ\Phiを線形にC1(X)C_1(X)へ延長する。

補題 2.1. 任意の特異二単体τ:Δ2→X\tau:\Delta^2\to Xについて

Φ(∂τ)=0\Phi(\partial\tau)=0

である。したがってΦ\Phiは準同型

ϕX:H1(X;Z)⟶π1(X,x0)ab\phi_X:H_1(X;\mathbb Z)\longrightarrow\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}

を誘導する。

証明.pi:=τ(vi)p_i:=\tau(v_i)とし、viv_iからvjv_jへの辺の像をτij\tau_{ij}と書く。境界公式は

∂τ=τ12−τ02+τ01\partial\tau=\tau_{12}-\tau_{02}+\tau_{01}

である。可換化では積の順序を変えることができるため、Φ(∂τ)\Phi(\partial\tau)は三つの基点付きループ

Lτ01,Lτ12,Lτ02−1L_{\tau_{01}},\qquad L_{\tau_{12}},\qquad L_{\tau_{02}}^{-1}

の積の類である。隣り合うλp1−1∗λp1\lambda_{p_1}^{-1}*\lambda_{p_1}とλp2−1∗λp2\lambda_{p_2}^{-1}*\lambda_{p_2}を縮めると、この積は

λp0∗τ01∗τ12∗τˉ02∗λˉp0\lambda_{p_0}* \tau_{01}*\tau_{12}*\bar\tau_{02}* \bar\lambda_{p_0}

にホモトピックである。中央のループτ01∗τ12∗τˉ02\tau_{01}*\tau_{12}*\bar\tau_{02}はτ\tauが写す三角形の境界であり、τ\tau自身によって定値ループへ縮む。よってΦ(∂τ)=0\Phi(\partial\tau)=0である。

B1(X)B_1(X)は特異二単体の境界で生成されるため、Φ\PhiはB1(X)B_1(X)上で零である。したがってΦ\PhiのZ1(X)Z_1(X)への制限はH1(X)=Z1(X)/B1(X)H_1(X)=Z_1(X)/B_1(X)を通り、ϕX\phi_Xを誘導する。▨

3 一次 Hurewicz 同型

主定理の証明では、hˉX\bar h_XとϕX\phi_Xが互いに逆であることを一次鎖上で確かめる。

定理 3.1 (一次 Hurewicz 同型).XXを弧状連結空間、x0∈Xx_0\in Xを基点とする。一次 Hurewicz 準同型は自然な同型

hˉX:π1(X,x0)ab→≅H1(X;Z)\bar h_X: \pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}} \xrightarrow{\cong} H_1(X;\mathbb Z)

を与える。

証明. 基点付きループα\alphaでは始点と終点がともにx0x_0であり、λx0\lambda_{x_0}は定値道である。したがって

ϕX(hˉX([α]ab))=[α]ab\phi_X\bigl(\bar h_X([\alpha]_{\mathrm{ab}})\bigr) =[\alpha]_{\mathrm{ab}}

である。よってϕX∘hˉX\phi_X\circ\bar h_Xは恒等写像である。

反対の合成を調べる。一次輪体を

z=∑i=1mniσi,xi:=σi(0),yi:=σi(1)z=\sum_{i=1}^m n_i\sigma_i, \qquad x_i:=\sigma_i(0),\quad y_i:=\sigma_i(1)

と書く。補題 1.1から

hˉX(ϕX([z]))=[∑i=1mni(λxi+σi−λyi)]H1.\bar h_X\bigl(\phi_X([z])\bigr) =\left[ \sum_{i=1}^m n_i \bigl(\lambda_{x_i}+\sigma_i-\lambda_{y_i}\bigr) \right]_{H_1}.

角括弧の内部全体は基点付きループの和なので一次輪体である。この式では、個々のλx\lambda_xをホモロジー類とみなしていない。点x∈Xx\in Xに対応する一次鎖λx\lambda_xの係数は、xxを始点とする辺の係数の和から、xxを終点とする辺の係数の和を引いた整数である。一方、

∂z=∑ini(yi−xi)=0\partial z=\sum_i n_i(y_i-x_i)=0

なので、この整数はすべてのxxで零である。したがってλx\lambda_xを含む項はすべて相殺し、

hˉX(ϕX([z]))=[∑iniσi]H1=[z]\bar h_X\bigl(\phi_X([z])\bigr) =\left[\sum_i n_i\sigma_i\right]_{H_1}=[z]

を得る。ゆえにhˉX∘ϕX\bar h_X\circ\phi_Xも恒等写像であり、hˉX\bar h_Xは同型である。

連続な基点付き写像f:(X,x0)→(Y,y0)f:(X,x_0)\to(Y,y_0)は、ループα\alphaをf∘αf\circ\alphaへ送り、特異一次鎖にも同じ合成で作用する。したがってhY∘f∗=f∗∘hXh_Y\circ f_*=f_*\circ h_Xであり、同型hˉX\bar h_Xは自然である。▨

この証明は、特異一次輪体をループへ分解することができると述べるだけではなく、分解に用いた基点への道λx\lambda_xが輪体条件によって相殺することを示している。また、二つの分解の差を別に比較する代わりに、補題 2.1がすべての二次境界を一度に処理している。

4 基本群の表示から一次ホモロジーを計算する

例 4.1 (円周と円周の楔和).§E18.6 系 1.5と主定理から

H1(S1;Z)≅ZH_1(S^1;\mathbb Z)\cong\mathbb Z

を得る。rr個の円周の楔和⋁i=1rS1\bigvee_{i=1}^rS^1の基本群は自由群FrF_rである。自由群の可換化は自由生成元の指数和を記録するZr\mathbb Z^rなので

H1(⋁i=1rS1;Z)≅ZrH_1\left(\bigvee_{i=1}^rS^1;\mathbb Z\right)\cong\mathbb Z^r

である。基本群がr≥2r\geq2で非可換であっても、一次ホモロジーは交換子をすべて零へ送る。

例 4.2 (閉曲面).§E18.7 命題 4.4の表示を可換化すると、すべての交換子が零になるため

H1(Σg;Z)≅Z2gH_1(\Sigma_g;\mathbb Z)\cong\mathbb Z^{2g}

を得る。§E18.7 命題 4.5の表示

⟨c1,…,ck∣c12⋯ck2⟩\left\langle c_1,\ldots,c_k \mathrel{\Bigm|}c_1^2\cdots c_k^2\right\rangle

を可換化すると、唯一の関係は2(e1+⋯+ek)=02(e_1+\cdots+e_k)=0となる。ベクトルe1+⋯+eke_1+\cdots+e_kはZk\mathbb Z^kの原始元であり、整数基底の一つへ延長することができる。したがって

H1(Nk;Z)≅Zk/⟨2(e1+⋯+ek)⟩≅Zk−1⊕Z/2ZH_1(N_k;\mathbb Z) \cong\mathbb Z^k/\langle2(e_1+\cdots+e_k)\rangle \cong\mathbb Z^{k-1}\oplus\mathbb Z/2\mathbb Z

である。

高次の Hurewicz の定理は、高次ホモトピー群と連結性の仮定を必要とする。本記事の証明は一次特異鎖と二次特異鎖だけを用いており、高次の主張を含まない。

5 演習

問題 5.1.

  1. 点xxへの定値一次単体が特異一次鎖複体では零でないにもかかわらず、H1(X;Z)H_1(X;\mathbb Z)では零になることを示せ。
  2. 補題 2.1の証明で可換化が必要な箇所を特定せよ。
  3. Klein の壺の基本群の表示 ⟨a,b∣aba−1b⟩\langle a,b\mid aba^{-1}b\rangle を可換化し、H1H_1を求めよ。
解答.

(1)では、点xxへの定値二単体cx2c_x^2が∂cx2=cx1\partial c_x^2=c_x^1を満たすため、定値一次単体は境界である。(2)では、∂τ\partial\tauの三辺から作った基点付きループをLτ01Lτ12Lτ02−1L_{\tau_{01}}L_{\tau_{12}}L_{\tau_{02}}^{-1}の順へ並べ替える箇所で可換化を用いる。並べ替えた後の積は三角形の境界に沿うループの共役となり、零である。(3)では関係語の指数和がaaについて零、bbについて22なので、可換化はZ2/⟨(0,2)⟩≅Z⊕Z/2Z\mathbb Z^2/\langle(0,2)\rangle\cong\mathbb Z\oplus\mathbb Z/2\mathbb Zである。主定理により、これが Klein の壺の一次ホモロジー群である。▨

参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.一次 Hurewicz 準同型の特異一次鎖と二次鎖による証明を参考にした。

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