§E18.30二次元の Poincaré 双対と交叉形式

最終更新

向きづけられた閉曲面では、胞体分解の各pp胞体を、それと一度だけ横切る(2−p)(2-p)次元の双対胞体へ対応させることができる。この対応は余境界を双対胞体の境界へ移し、一次コホモロジーを一次ホモロジーへ同型に写す。カップ積を基本類へ評価した整数は、この双対サイクルの交わりを数える量になる。

1 双対胞体分解

MMを向きづけられた連結閉曲面とする。§E18.24 定理 1.1により、MMの有限三角形分割KKを一つ固定する。必要なら重心細分を施し、各単体の重心を頂点とする。

定義 1.1.KKの単体σ\sigmaに対し、σ\sigmaから始まる包含鎖

σ=σ0<σ1<⋯<σr\sigma=\sigma_0<\sigma_1<\cdots<\sigma_r

に対応する重心細分の単体

[b(σ0),b(σ1),…,b(σr)][b(\sigma_0),b(\sigma_1),\ldots,b(\sigma_r)]

をすべて合わせた閉集合をD(σ)D(\sigma)と書く。D(σ)D(\sigma)をσ\sigmaの双対胞体 (dual cell) という。

二単体の双対胞体はその重心であり、辺の双対胞体はその辺の中点を通って両側の二単体の重心を結ぶ閉区間である。頂点の双対胞体は、その頂点を囲む多角形状の閉円板である。

命題 1.2.pp単体σ\sigmaの双対胞体D(σ)D(\sigma)は閉(2−p)(2-p)次元胞体である。これらの内部は互いに交わらず、全体でMMを覆う。さらに、D(τ)D(\tau)がD(σ)D(\sigma)の境界に現れることと、σ\sigmaがτ\tauの面であることは同値である。

証明. 二次元では局所的に三通りだけを確かめればよい。二単体の内部では双対胞体は重心一点である。内点をもつ辺には二枚の二単体が接するため、その辺の双対胞体は、辺の重心を中点として両二単体の重心を結ぶ二本の線分の和であり、閉区間になる。頂点vvの閉星は円板であり、v<e<Tv<e<Tという鎖に対応する小三角形をすべて合わせると、その円板の内部にある多角形状の閉円板D(v)D(v)を得る。

重心細分の各小二単体は、ただ一つの鎖v<e<Tv<e<Tに対応するため、双対胞体の内部は重ならず、全小単体はどれかの双対胞体に属する。したがって双対胞体はMMを覆う。包含鎖の先頭から単体を一つ落とす操作が双対胞体の境界面を与えるので、最後の主張も従う。▨

KKの頂点に全順序を一つ入れ、辺と二単体には頂点の昇順による向きを入れる。二単体T=[v0,v1,v2]T=[v_0,v_1,v_2]に対し、この向きがMMの向きと一致するならεT=1\varepsilon_T=1、反対ならεT=−1\varepsilon_T=-1とする。また、向きづけられた単体ρ\rhoが向きづけられた単体τ\tauの余次元一の面であるとき、接続係数を[τ:ρ]∈{1,−1}[\tau:\rho]\in\{1,-1\}と書く。

pp単体σ\sigmaとD(σ)D(\sigma)は、b(σ)b(\sigma)だけを共有する。σ\sigmaの向きに続けてD(σ)D(\sigma)の向きを並べたときにMMの向きになるように、双対胞体へ向きを入れる。p=2p=2では、この規約は点D(T)={b(T)}D(T)=\{b(T)\}に符号εT\varepsilon_Tを入れることを意味する。単体σ\sigmaの双対余鎖σ∗\sigma^*を、この向きづけられた双対胞体へ送る写像

Dp:Cp(K;Z)⟶C2−p(K∗;Z)\mathcal D_p:C^p(K;\mathbb Z)\longrightarrow C_{2-p}(K^*;\mathbb Z)

を定める。ここでK∗K^*は双対胞体分解である。

補題 1.3. 向きを上の規約で選ぶと、p=0,1p=0,1について

∂Dp=(−1)p+1Dp+1δ\partial\mathcal D_p=(-1)^{p+1}\mathcal D_{p+1}\delta

となる。従ってDp\mathcal D_pは、余輪体を双対輪体へ送り、余境界を符号を除いて双対境界へ送る。

証明. まずp=1p=1を計算する。向きづけられた辺eeの内点の局所円板で、eeが左から右へ進み、円板の向きが紙面の反時計回りになる座標を取る。D(e)D(e)の向きは下から上である。一時的に二単体をMMの向きで向きづける。eeの左側にある二単体T+T_+では、eeの向きはT+T_+の境界向きと一致し、D(e)D(e)はb(e)b(e)からb(T+)b(T_+)へ進む。従って両方の係数は11である。右側の二単体T−T_-では、境界向きはeeと反対であり、D(e)D(e)はb(T−)b(T_-)からb(e)b(e)へ進む。従って両方の係数は−1-1である。頂点順序によるTTの向きがMMの向きと反対なら、[T:e][T:e]と点D(T)D(T)の向きが同時に反転するため、同じ式が成り立つ。よって

∂D(e)=∑T⊃e[T:e]D(T).\partial D(e)=\sum_{T\supset e}[T:e]D(T).

ここで各D(T)D(T)は点の符号εT\varepsilon_Tを含む。この式は

∂D1(e∗)=D2(δe∗)\partial\mathcal D_1(e^*)=\mathcal D_2(\delta e^*)

を与える。

次にp=0p=0を計算する。向きづけられた辺eeが頂点vvから出る場合は[e:v]=−1[e:v]=-1である。D(v)D(v)の境界は、vvの左側を保ってD(e)D(e)と同じ向きに進むため、∂D(v)\partial D(v)におけるD(e)D(e)の係数は1=−[e:v]1=-[e:v]である。eeがvvへ入る場合は両方の向きが反転し、その係数は−1=−[e:v]-1=-[e:v]になる。従って

∂D(v)=−∑e∋v[e:v]D(e),\partial D(v)=-\sum_{e\ni v}[e:v]D(e),

すなわち

∂D0(v∗)=−D1(δv∗)\partial\mathcal D_0(v^*)=-\mathcal D_1(\delta v^*)

である。

同じ計算を順序付き旗ごとに書くと、符号をさらに検算することができる。旗F=(v<e<T)F=(v<e<T)に対応する重心細分の二単体を

ΔF=[b(v),b(e),b(T)]\Delta_F=[b(v),b(e),b(T)]

とすると、向きづけられた双対胞体は

D(T)=εT[b(T)],D(e)=∑T⊃eεT[T:e][b(e),b(T)],D(v)=∑v<e<T−εT[e:v][T:e]ΔF.\begin{aligned} D(T)&=\varepsilon_T[b(T)],\\ D(e)&=\sum_{T\supset e}\varepsilon_T[T:e][b(e),b(T)],\\ D(v)&=\sum_{v<e<T}-\varepsilon_T[e:v][T:e]\Delta_F. \end{aligned}

第一式は点の向き、第二式は直前の左右の計算、第三式はD(v)D(v)の境界向きの計算である。第三式の境界を取ると、[b(v),b(T)][b(v),b(T)]と[b(v),b(e)][b(v),b(e)]は隣接する旗どうしで相殺し、残る[b(e),b(T)][b(e),b(T)]の係数は−εT[e:v][T:e]-\varepsilon_T[e:v][T:e]になる。従って上の二つの境界公式が旗ごとにも成立する。基底余鎖を線形に延長すれば主張を得る。▨

2 二次元の Poincaré 双対

定理 2.1 (二次元の Poincaré 双対).MMを向きづけられた連結閉曲面とする。各p=0,1,2p=0,1,2について、双対胞体分解は同型

PD⁡M:Hp(M;Z)→≅H2−p(M;Z)\operatorname{PD}_M:H^p(M;\mathbb Z)\xrightarrow{\cong}H_{2-p}(M;\mathbb Z)

を与える。

証明.補題 1.3により、pp次余輪体は双対(2−p)(2-p)次輪体へ写り、余境界は双対境界へ写る。各pp単体とその双対(2−p)(2-p)胞体は一対一に対応するため、Dp\mathcal D_pは各次数で自由アーベル群の同型である。したがってDp\mathcal D_pは

Hcellp(K;Z)→≅H2−pcell(K∗;Z)H^p_{\mathrm{cell}}(K;\mathbb Z)\xrightarrow{\cong} H_{2-p}^{\mathrm{cell}}(K^*;\mathbb Z)

を誘導する。§E18.27 定理 2.4と§E18.21 定理 2.1によって両辺を特異コホモロジーと特異ホモロジーへ移せば、表示した同型を得る。

p=0p=0で定数余鎖11を双対化すると、向きづけられた双対二胞体の総和になる。この輪体は各点で指定された局所向きを表すため、§E18.25 定義 3.2の基本類[M][M]である。従って、この双対同型は選んだ三角形分割ではなくMMの向きによって定まり、PD⁡M(1)=[M]\operatorname{PD}_M(1)=[M]を満たす。▨

次の等式が、双対胞体による同型とカップ積を結ぶ。

命題 2.2.u∈Hp(M;Z)u\in H^p(M;\mathbb Z)、v∈H2−p(M;Z)v\in H^{2-p}(M;\mathbb Z)に対して

⟨u⌣v,[M]⟩=⟨v,PD⁡M(u)⟩\langle u\smile v,[M]\rangle =\langle v,\operatorname{PD}_M(u)\rangle

である。右辺はコホモロジー類とホモロジー類の評価である。

証明.KKの重心細分からKKへの最終頂点写像

λ:sd⁡K⟶K,λ(b(σ))=max⁡σ\lambda:\operatorname{sd}K\longrightarrow K, \qquad \lambda(b(\sigma))=\max\sigma

を用いる。b(σ)b(\sigma)とmax⁡σ\max\sigmaは同じ単体σ\sigmaに属するため、単体内の線分で結ぶとλ\lambdaは恒等写像とホモトピックである。従って、双対胞体鎖をKKの単体鎖として評価するときはλ∗\lambda_*を用いることができる。

二単体TTの頂点をv0<v1<v2v_0<v_1<v_2と書く。順序付き旗に対する直前の三式をλ∗\lambda_*で送る。p=0p=0では旗

v0<[v0,v1]<Tv_0<[v_0,v_1]<T

だけが非退化な二単体[v0,v1,v2][v_0,v_1,v_2]へ写り、その係数は

−εT[[v0,v1]:v0][T:[v0,v1]]=εT-\varepsilon_T[[v_0,v_1]:v_0][T:[v_0,v_1]] =\varepsilon_T

である。p=1p=1では[v0,v1]<T[v_0,v_1]<Tだけが非退化な辺[v1,v2][v_1,v_2]へ写り、その係数はεT[T:[v0,v1]]=εT\varepsilon_T[T:[v_0,v_1]]=\varepsilon_Tである。p=2p=2ではD(T)=εT[b(T)]D(T)=\varepsilon_T[b(T)]がεT[v2]\varepsilon_T[v_2]へ写る。これ以外の旗では二つの最終頂点が一致するため、像は退化して零になる。

従って、u∈Cp(K;Z)u\in C^p(K;\mathbb Z)とv∈C2−p(K;Z)v\in C^{2-p}(K;\mathbb Z)について、三つの次数のいずれでも

⟨v,λ∗Dpu⟩=∑T=[v0,v1,v2]εTu([v0,…,vp])v([vp,…,v2])=⟨u⌣v,cM⟩\begin{aligned} \langle v,\lambda_*\mathcal D_pu\rangle &=\sum_{T=[v_0,v_1,v_2]} \varepsilon_T u([v_0,\ldots,v_p]) v([v_p,\ldots,v_2])\\ &=\langle u\smile v,c_M\rangle \end{aligned}

となる。第二の等号は§E18.29 定義 1.1の Alexander–Whitney 公式そのものである。u,vu,vが余輪体なら、補題 1.3によりDpu\mathcal D_puはPD⁡M(u)\operatorname{PD}_M(u)を表し、cMc_Mは[M][M]を表す。従って表示した等式がコホモロジー類について成り立つ。▨

3 交叉形式

定義 3.1.MMの交叉形式 (intersection form) を

QM:H1(M;Z)×H1(M;Z)⟶Z,QM(u,v)=⟨u⌣v,[M]⟩Q_M:H^1(M;\mathbb Z)\times H^1(M;\mathbb Z)\longrightarrow\mathbb Z, \qquad Q_M(u,v)=\langle u\smile v,[M]\rangle

によって定める。

定理 3.2.QMQ_Mはユニモジュラーな交代双線形形式である。すなわち、準同型

H1(M;Z)⟶Hom⁡(H1(M;Z),Z),u⟼QM(u,−)H^1(M;\mathbb Z)\longrightarrow \operatorname{Hom}(H^1(M;\mathbb Z),\mathbb Z), \qquad u\longmapsto Q_M(u,-)

は同型であり、すべてのuuについてQM(u,u)=0Q_M(u,u)=0である。

証明. まずユニモジュラー性を示す。命題 2.2により、上の準同型は Poincaré 双対

H1(M;Z)→PD⁡MH1(M;Z)H^1(M;\mathbb Z)\xrightarrow{\operatorname{PD}_M}H_1(M;\mathbb Z)

の後に評価写像z↦(v↦⟨v,z⟩)z\mapsto(v\mapsto\langle v,z\rangle)を続けたものである。

§E18.24 定理 4.2によりMMはあるΣg\Sigma_gと同相である。標準胞体分解では一頂点、2g2g本の一胞体、一枚の二胞体をもち、二胞体の接着語は交換子の積である。従って胞体境界∂2\partial_2は可換化すると零であり、∂1\partial_1も零である。このため

H1(M;Z)=Z2g,H1(M;Z)=Hom⁡(Z2g,Z),H_1(M;\mathbb Z)=\mathbb Z^{2g}, \qquad H^1(M;\mathbb Z)=\operatorname{Hom}(\mathbb Z^{2g},\mathbb Z),

となり、評価写像は標準双対基底を通じた同型である。Poincaré 双対も同型なので、両者の合成は同型である。従ってQMQ_Mはユニモジュラーである。

次に交代性を示す。カップ積の次数付き交換律により、u∈H1(M;Z)u\in H^1(M;\mathbb Z)について

u⌣u=−u⌣u,u\smile u=-u\smile u,

従って2(u⌣u)=02(u\smile u)=0である。Poincaré 双対から

H2(M;Z)≅H0(M;Z)≅ZH^2(M;\mathbb Z)\cong H_0(M;\mathbb Z)\cong\mathbb Z

であり、この群には捩れがない。よってu⌣u=0u\smile u=0、すなわちQM(u,u)=0Q_M(u,u)=0である。双線形性から

0=QM(u+v,u+v)=QM(u,v)+QM(v,u)0=Q_M(u+v,u+v)=Q_M(u,v)+Q_M(v,u)

も従う。▨

4 交代形式の標準形

補題 4.1.LLを有限階数自由アーベル群とし、Q:L×L→ZQ:L\times L\to\mathbb Zをユニモジュラーな交代形式とする。このときLLの階数は偶数であり、ある基底

x1,y1,…,xg,ygx_1,y_1,\ldots,x_g,y_g

に関するQQの行列は

Jg=⨁i=1g(01−10)J_g=\bigoplus_{i=1}^g \begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}

である。

証明.L=0L=0なら明らかである。L≠0L\ne0とし、原始元x1x_1を一つ取る。ユニモジュラー性によりQ(x1,−)Q(x_1,-)はLLの原始な整数値準同型であるから、Q(x1,y1)=1Q(x_1,y_1)=1を満たすy1∈Ly_1\in Lが存在する。

任意のz∈Lz\in Lに対し

z′=z−Q(z,y1)x1+Q(z,x1)y1z'=z-Q(z,y_1)x_1+Q(z,x_1)y_1

とおくと、Q(z′,x1)=Q(z′,y1)=0Q(z',x_1)=Q(z',y_1)=0である。従って

L=Zx1⊕Zy1⊕⟨x1,y1⟩⊥L=\mathbb Zx_1\oplus\mathbb Zy_1\oplus \langle x_1,y_1\rangle^\perp

である。直交補空間への制限もユニモジュラーな交代形式である。同じ操作を有限回繰り返せば、表示した基底を得る。各段階で二つずつ基底元を取り出すので、階数は偶数である。▨

定理 4.2. 種数ggの向きづけられた閉曲面Σg\Sigma_gでは

H1(Σg;Z)≅Z2gH^1(\Sigma_g;\mathbb Z)\cong\mathbb Z^{2g}

であり、交叉形式の行列をJgJ_gにする基底が存在する。標準多角形の生成元に双対な基底αi,βi\alpha_i,\beta_iは

QΣg(αi,βj)=δij,QΣg(βi,αj)=−δijQ_{\Sigma_g}(\alpha_i,\beta_j)=\delta_{ij}, \qquad Q_{\Sigma_g}(\beta_i,\alpha_j)=-\delta_{ij}

を満たし、同種の二基底元の組では値が零になる。

証明.§E18.24 定理 5.1によりH1(Σg;Z)≅Z2gH_1(\Sigma_g;\mathbb Z)\cong\mathbb Z^{2g}であり、直前の定理と補題 4.1から、交叉形式はgg個の標準ブロックへ変形される。

標準多角形を三角形分割し、各ハンドルに向きづけられた PL 一輪体AiA_iを一骨格上に、BiB_iを双対一骨格上に取る。AiA_iとBiB_iは一つの辺の重心だけを共有し、その局所円板における端点順が正になるように向きを選ぶ。異なるハンドルに属する一輪体の台は交わらない。これらに対応する単体的余輪体をαi,βi\alpha_i,\beta_iとすると、§E18.29 命題 2.1の明示的な Alexander–Whitney 計算は

αi⌣βj=δijω,βi⌣αj=−δijω\alpha_i\smile\beta_j=\delta_{ij}\omega, \qquad \beta_i\smile\alpha_j=-\delta_{ij}\omega

を与える。ここで⟨ω,[Σg]⟩=1\langle\omega,[\Sigma_g]\rangle=1である。同じ種類の PL 一輪体は台を共有しないため、その積は零である。基本類へ評価すれば表示した行列を得る。▨

5 PL 一輪体の交点と形式の値

以下では対象を、固定した重心細分上の組合せ論的な位置にある PL 一輪体へ限定する。KKの向きづけられた一辺の整数係数和

C=∑emee∈Z1(K;Z)C=\sum_e m_e e\in Z_1(K;\mathbb Z)

と、双対一骨格の向きづけられた双対辺の整数係数和

D=∑eneD(e)∈Z1(K∗;Z)D=\sum_e n_eD(e)\in Z_1(K^*;\mathbb Z)

を取る。両者の台は、係数がともに非零である辺eeの重心b(e)b(e)だけで交わる。

定義 5.1.x=b(e)x=b(e)の周りに、他の辺または双対辺の頂点を含まない小さい向きづけられた閉円板BxB_xを取る。e∩Bxe\cap B_xとD(e)∩BxD(e)\cap B_xは、xxだけを共有する二本の多角形線分である。eeの向きに従って円板へ入る端点と円板から出る端点をC−,C+C_-,C_+、D(e)D(e)について同様にD−,D+D_-,D_+と書く。∂Bx\partial B_xの正向きの巡回順序が

C−,D−,C+,D+C_-,D_-,C_+,D_+

なら 局所交点符号 (local intersection sign) をιx(e,D(e))=1\iota_x(e,D(e))=1とし、

C−,D+,C+,D−C_-,D_+,C_+,D_-

ならιx(e,D(e))=−1\iota_x(e,D(e))=-1とする。代数的交点数 (algebraic intersection number) を

IK(C,D)=∑emene ιb(e)(e,D(e))I_K(C,D) =\sum_e m_en_e\,\iota_{b(e)}(e,D(e))

によって定める。

双対辺の向きは、eeの向きに続けてD(e)D(e)の向きを並べると局所円板の向きになるように定めた。従って、上の端点順の定義では、すべての向きづけられた基底辺について

ιb(e)(e,D(e))=1\iota_{b(e)}(e,D(e))=1

である。向きの一方を反転すると、対応する二つの端点が交換されるため、局所交点符号も反転する。この定義は局所円板上の端点順だけを用い、微分構造を必要としない。

命題 5.2.uC,uD∈H1(M;Z)u_C,u_D\in H^1(M;\mathbb Z)とする。PD⁡M(uC)\operatorname{PD}_M(u_C)をKKの一骨格上の PL 一輪体CCで表し、uDu_Dの単体的余輪体代表u~D=∑enee∗\widetilde u_D=\sum_en_e e^*に対して

D=D1u~D=∑eneD(e)D=\mathcal D_1\widetilde u_D=\sum_en_eD(e)

とする。このとき

QM(uC,uD)=IK(C,D)Q_M(u_C,u_D)=I_K(C,D)

である。右辺はC,DC,Dのホモロジー類だけに依存する。

証明.C=∑emeeC=\sum_em_eeと書く。局所交点符号の計算から

IK(C,D1u~D)=∑emene=u~D(C)=⟨uD,[C]⟩.I_K(C,\mathcal D_1\widetilde u_D) =\sum_em_en_e =\widetilde u_D(C) =\langle u_D,[C]\rangle.

命題 2.2と[C]=PD⁡M(uC)[C]=\operatorname{PD}_M(u_C)により、右辺は

⟨uC⌣uD,[M]⟩=QM(uC,uD)\langle u_C\smile u_D,[M]\rangle =Q_M(u_C,u_D)

に等しい。

CCを境界だけ変えると、余輪体uDu_Dによる評価は変わらない。また、補題 1.3により、双対一輪体DDを双対境界だけ変えることはuDu_Dを余境界だけ変えることに対応し、一輪体CCへの評価は変わらない。従ってIK(C,D)I_K(C,D)は二つのホモロジー類だけに依存する。▨

例 5.3 (円環面の経線と緯線). 向きづけられた円環面の重心細分上で、経線を表す一輪体AAを一骨格に、緯線を表す一輪体BBを双対一骨格に取り、共有点の端点順が正になるように向きを選ぶ。このときIK(A,B)=1I_K(A,B)=1である。同じ局所円板でBBを第一の弧、AAを第二の弧として端点順を読むと符号は−1-1になる。対応する一次コホモロジー基底に関する交叉形式の行列は

(01−10)\begin{pmatrix}0&1\\-1&0\end{pmatrix}

となる。

例 5.4 (球面と種数二の曲面).S2S^2ではH1(S2;Z)=0H^1(S^2;\mathbb Z)=0なので、交叉形式は階数零の形式である。Σ2\Sigma_2では二つのハンドルに標準 PL 一輪体の対を一組ずつ取り、交叉形式の行列はJ2J_2になる。異なるハンドルにある一輪体の代数的交点数は零である。

6 演習

問題 6.1.

  1. 双対胞体の次元が元の単体の次元と合わせて22になる理由を、頂点・辺・二単体について説明せよ。
  2. 次数付き交換律だけでは直ちにu⌣u=0u\smile u=0と結論できず、H2(M;Z)H^2(M;\mathbb Z)に捩れがないことが必要になる理由を述べよ。
  3. 種数ggの標準 PL 一輪体Ai,BiA_i,B_iについて、代数的交点数の表を書け。
解答 (解答).
  1. 二単体の双対は重心一点、辺の双対はその辺を横切る閉区間、頂点の双対は頂点を囲む閉円板である。それぞれの次元は0,1,20,1,2であり、元の単体の次元との和は22になる。
  2. 次数付き交換律から得られるのは2(u⌣u)=02(u\smile u)=0だけである。Poincaré 双対によりH2(M;Z)≅H0(M;Z)≅ZH^2(M;\mathbb Z)\cong H_0(M;\mathbb Z)\cong\mathbb Zとなり二捩れがないため、初めてu⌣u=0u\smile u=0と結論することができる。
  3. 同じ種類の一輪体どうしは台を共有しないため、局所交点和は零である。IK(Ai,Bj)=δijI_K(A_i,B_j)=\delta_{ij}であり、順序を逆にした局所端点規約では値が−δij-\delta_{ij}になる。従って行列はJgJ_gになる。

▨

参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.双対胞体分解、二次元 Poincaré 双対および曲面の交叉形式を参考にした。
  2. Glen E. Bredon, Topology and Geometry, Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1993.向き、双対性および代数的交点数の符号規約を参考にした。

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