§E18.16Mayer–Vietoris 完全列

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空間を二つの開集合へ分けると、各部分と共通部分のホモロジーから全体のホモロジーを復元することができる。写像の符号を鎖複体の段階で固定すると、連結準同型も代表鎖から計算することができる。

1 完全列の構成

定理 1.1 (Mayer–Vietoris 完全列).X=U∪VX=U\cup Vを二つの開集合による被覆とする。包含写像をi:U∩V→Ui:U\cap V\to U、j:U∩V→Vj:U\cap V\to V、k:U→Xk:U\to X、ℓ:V→X\ell:V\to Xと書く。このとき自然な長完全列

⋯→Hn(U∩V)→(i∗,−j∗)Hn(U)⊕Hn(V)→k∗+ℓ∗Hn(X)→δHn−1(U∩V)→⋯\cdots\to H_n(U\cap V) \xrightarrow{(i_*,-j_*)}H_n(U)\oplus H_n(V) \xrightarrow{k_*+\ell_*}H_n(X) \xrightarrow{\delta}H_{n-1}(U\cap V)\to\cdots

がある。

証明. 被覆{U,V}\{U,V\}に従属する小鎖複体をC∗U(X)=C∗(U)+C∗(V)C_*^{\mathcal U}(X)=C_*(U)+C_*(V)とする。写像

α(c)=(c,−c),β(a,b)=a+b\alpha(c)=(c,-c),\qquad \beta(a,b)=a+b

を用いると

0→C∗(U∩V)→αC∗(U)⊕C∗(V)→βC∗U(X)→00\to C_*(U\cap V)\xrightarrow{\alpha} C_*(U)\oplus C_*(V)\xrightarrow{\beta} C_*^{\mathcal U}(X)\to0

は短完全列である。実際、a+b=0a+b=0ならa=−ba=-bはUUとVVの双方に属する鎖なので(a,b)=(c,−c)(a,b)=(c,-c)と書くことができる。小単体定理によりC∗U(X)↪C∗(X)C_*^{\mathcal U}(X)\hookrightarrow C_*(X)はホモロジー同型である。短完全列の長完全列へこの同型を代入すれば表示した列を得る。

連結準同型も確認する。XXの輪体zzを小鎖へ細分し、z=a+bz=a+b(a∈Cn(U)a\in C_n(U)、b∈Cn(V)b\in C_n(V))と書く。∂a=−∂b\partial a=-\partial bはU∩VU\cap Vの鎖であり、

δ[z]=[∂a]\delta[z]=[\partial a]

である。分解を変えた差は共通部分の鎖となるため、相対完全列と同じ代表元の議論によりこの類は一意である。▨

2 球面と楔和

定理 2.1.n≥1n\geq1について

H~k(Sn)≅{Zk=n,0k≠n\widetilde H_k(S^n)\cong \begin{cases} \mathbb Z&k=n,\\ 0&k\neq n \end{cases}

である。

証明.SnS^nを北極と南極を少し越える二つの開半球U,VU,Vで覆う。U,VU,Vは可縮であり、U∩V≃Sn−1U\cap V\simeq S^{n-1}である。被約 Mayer–Vietoris 列では

H~k(Sn)≅H~k−1(Sn−1)\widetilde H_k(S^n)\cong\widetilde H_{k-1}(S^{n-1})

を得る。S0S^0は二点からなりH~0(S0)≅Z\widetilde H_0(S^0)\cong\mathbb Zなので、帰納法により結論が成り立つ。▨

命題 2.2. 基点付き空間(X,x0)(X,x_0)と(Y,y0)(Y,y_0)を取る。x0x_0の開近傍NX⊂XN_X\subset Xとy0y_0の開近傍NY⊂YN_Y\subset Yがあり、それぞれが基点を固定したまま基点へ強変形収縮すると仮定する。このとき

H~n(X∨Y)≅H~n(X)⊕H~n(Y)\widetilde H_n(X\vee Y)\cong \widetilde H_n(X)\oplus\widetilde H_n(Y)

である。

証明. 商写像をq:X⊔Y→X∨Yq:X\sqcup Y\to X\vee Yとし、

U:=q(X⊔NY),V:=q(NX⊔Y)U:=q(X\sqcup N_Y),\qquad V:=q(N_X\sqcup Y)

と置く。これらは開集合であり、X∨Y=U∪VX\vee Y=U\cup Vである。NYN_Yの強変形収縮をXX上の恒等写像と貼り合わせると、UUは埋め込まれたXXへ強変形収縮する。同様にVVはYYへ強変形収縮する。また

U∩V=q(NX⊔NY)=NX∨NYU\cap V=q(N_X\sqcup N_Y)=N_X\vee N_Y

は、二つの強変形収縮が基点を固定するため楔点へ収縮する。被約 Mayer–Vietoris 列で共通部分の群が零になるため、中央の写像が同型となる。▨

したがってrr個の円周の楔和GrG_rは

H0(Gr)≅Z,H1(Gr)≅Zr,Hn(Gr)=0 (n≥2)H_0(G_r)\cong\mathbb Z,\qquad H_1(G_r)\cong\mathbb Z^r,\qquad H_n(G_r)=0\ (n\geq2)

を満たす。

3 閉曲面

向きづけ可能な種数ggの標準閉曲面をΣg\Sigma_g、kk枚の実射影平面の連結和をNkN_kと書く。いずれも一枚の標準多角形の内部に円板VVを取り、その補集合を少し厚くした開集合をUUとすると、VVは可縮、U∩V≃S1U\cap V\simeq S^1である。Σg\Sigma_gではU≃G2gU\simeq G_{2g}、NkN_kではU≃GkU\simeq G_kとなる。

Σg\Sigma_gの境界語は

[a1,b1]⋯[ag,bg][a_1,b_1]\cdots[a_g,b_g]

である。一次鎖で各文字の正向きと逆向きが相殺するため、包含H1(S1)→H1(G2g)H_1(S^1)\to H_1(G_{2g})は零写像である。NkN_kの境界語はa12⋯ak2a_1^2\cdots a_k^2なので、対応する写像は

Z⟶Zk,1⟼2(e1+⋯+ek)\mathbb Z\longrightarrow\mathbb Z^k,\qquad 1\longmapsto2(e_1+\cdots+e_k)

である。

定理 3.1.

Hn(Σg)≅{Zn=0,2,Z2gn=1,0それ以外,H_n(\Sigma_g)\cong \begin{cases} \mathbb Z&n=0,2,\\ \mathbb Z^{2g}&n=1,\\ 0&\text{それ以外}, \end{cases}

また

Hn(Nk)≅{Zn=0,Zk−1⊕Z/2Zn=1,0それ以外H_n(N_k)\cong \begin{cases} \mathbb Z&n=0,\\ \mathbb Z^{k-1}\oplus\mathbb Z/2\mathbb Z&n=1,\\ 0&\text{それ以外} \end{cases}

である。

証明. Mayer–Vietoris 列の非自明な部分は

0→H2(M)→Z→φZr→H1(M)→00\to H_2(M)\to\mathbb Z\xrightarrow{\varphi}\mathbb Z^r \to H_1(M)\to0

である。Σg\Sigma_gではφ=0\varphi=0なのでH2≅ZH_2\cong\mathbb Z、H1≅Z2gH_1\cong\mathbb Z^{2g}となる。NkN_kではφ(1)=2(1,…,1)\varphi(1)=2(1,\ldots,1)であり、この写像は単射である。また(1,…,1)(1,\ldots,1)はZk\mathbb Z^kの原始元なので、基底を取り替えると像は2e12e_1が生成する部分群になる。したがってH2=0H_2=0、H1≅Zk−1⊕Z/2ZH_1\cong\mathbb Z^{k-1}\oplus\mathbb Z/2\mathbb Zである。連結性からH0≅ZH_0\cong\mathbb Zであり、二次元より上の鎖は不要なので高次群は零である。▨

系 3.2. 円環面T2=Σ1T^2=\Sigma_1について

H0(T2)≅Z,H1(T2)≅Z2,H2(T2)≅ZH_0(T^2)\cong\mathbb Z,\qquad H_1(T^2)\cong\mathbb Z^2,\qquad H_2(T^2)\cong\mathbb Z

であり、それ以外の次数では零である。

4 演習

問題 4.1.

  1. S1∨S2S^1\vee S^2の被約ホモロジー群を求めよ。
  2. Klein の壺をN2N_2とみなし、その一次および二次ホモロジー群を求めよ。

解答。 第一問では楔和公式からH~1≅Z\widetilde H_1\cong\mathbb Z、H~2≅Z\widetilde H_2\cong\mathbb Zとなり、それ以外は零である。第二問では閉曲面の公式へk=2k=2を代入し、H1(N2)≅Z⊕Z/2ZH_1(N_2)\cong\mathbb Z\oplus\mathbb Z/2\mathbb Z、H2(N2)=0H_2(N_2)=0を得る。

参考文献

  1. Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002.小鎖複体からの Mayer–Vietoris 列と球面・曲面計算の標準的な導出を参考にした。

前提記事