二つの連続写像を連続的に変形して結ぶ関係がホモトピーである。本記事では、ホモトピーを積空間からの連続写像として定義し、レトラクト、変位レトラクトおよび可縮性を区別する。
1 写像のホモトピー
定義 1.1. 位相空間と連続写像に対し、連続写像
がおよびをすべてのについて満たすとき、をからへのホモトピー (homotopy) といい、と書く。
命題 1.2. 位相空間を固定する。連続写像の間のホモトピー関係は同値関係である。
証明. 反射律はによって得られる。がからへのホモトピーなら、はからへのホモトピーであるから、対称律が成り立つ。
がからへのホモトピーで、がからへのホモトピーであるとする。写像を
と定める。二つの式はでともにとなるため、閉集合による貼り合わせ補題からは連続である。したがってであり、推移律も成り立つ。▨
ホモトピーは写像の前後から連続写像を合成しても保たれる。この性質はホモトピー同値を合成するときに用いる。
補題 1.3.がホモトピックであり、とが連続なら、
である。
証明.をからへのホモトピーとする。とおけば、は連続であり、両端でそれぞれとに一致する。▨
2 ホモトピー同値と可縮性
定義 2.1. 連続写像がホモトピー同値写像 (homotopy equivalence) であるとは、連続写像が存在して
となることをいう。このときをのホモトピー逆写像 (homotopy inverse) といい、とはホモトピー同値 (homotopy equivalent) であるという。
空でない位相空間が可縮 (contractible) であるとは、ある点について、恒等写像が定値写像とホモトピックであることをいう。
命題 2.2. 空でない位相空間が可縮であることと、が一点空間とホモトピー同値であることは同値である。
証明.がへ可縮であるとする。一点空間をとし、を唯一の写像、をとする。であり、であるから、はホモトピー同値写像である。
逆に、とがホモトピー逆写像であるとする。はへの定値写像であり、であるから、は可縮である。▨
3 レトラクトと変位レトラクト
定義 3.1. 部分空間に対し、連続写像がを満たすとき、をレトラクション (retraction) といい、をのレトラクト (retract) という。
定義 3.2. 部分空間がの変位レトラクト (deformation retract) であるとは、レトラクションとホモトピーが存在し、
をすべての、、について満たすことをいう。
定理 3.3.が変位レトラクトであるなら、包含写像はホモトピー同値写像である。
証明. 変位レトラクションをとする。レトラクションの定義からである。また、変位を与えるホモトピーはを示す。したがってはのホモトピー逆写像である。▨
例 3.4 (円環から円周への変位レトラクション).とを考える。
と定めると、は常にに属し、、、を満たす。したがってはの変位レトラクトである。
レトラクトであることだけからホモトピー同値性は従わない。実際、とに対する定値写像はレトラクションである。しかし、の点からへ至る道はに存在しないため、はの変位レトラクトではない。この例は、変位レトラクトがレトラクトより強い条件であることを示す。
同相で保たれる性質を位相不変量といい、ホモトピー同値で保たれる性質をホモトピー不変量という。ホモトピー不変量は位相不変量でもあるが、逆は成り立たない。たとえば一点空間とはともに可縮であるためホモトピー同値であるが、両者は同相ではない。また、コンパクト性は同相で保たれる一方、一点空間はコンパクトではコンパクトでないため、コンパクト性はホモトピー不変量ではない。
4 演習
問題 4.1.
- が可縮であることを、から一点空間への写像と一点空間からへの写像を用いて言い換えよ。
- がレトラクトであるという条件だけでは、包含がホモトピー同値になると結論することができない理由を述べよ。
- と一点空間を用いて、位相不変量とホモトピー不変量の違いを説明せよ。
解答.
- が一点空間とホモトピー同値であることと同値である。ホモトピー逆写像の合成の一方は一点空間の恒等写像であり、他方はの恒等写像とホモトピックな定値写像になる。
- レトラクションはだけを与え、を与えない。後者を与える追加条件が変位レトラクションである。
- コンパクト性は同相で保たれる。しかし一点空間はコンパクトではコンパクトでないにもかかわらず、両者は可縮であるためホモトピー同値である。したがってコンパクト性は位相不変量であるが、ホモトピー不変量ではない。
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