§E5.18Riemann の写像定理

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単位円板と上半平面の自己同型が分かっても、一般の領域が単位円板と正則に対応するかどうかは別の問題である。Riemann の写像定理は、複素平面自身を除く単連結領域が単位円板と等角同値であることを主張する。

本記事は、単連結性から正則な対数と平方根を得たうえで、指定点を原点へ写す単射正則写像の族を考える。この族の非空性、指定点における導関数を最大にする極値元の存在、および欠値を仮定した変形による全射性を順に確立する。Montel の定理が極値元を与え、平方根と Schwarz の補題が欠値を排除する。

以下、Ω\Omegaで複素平面の領域(§E5.1 定義 1.3。すなわち空でない連結な開集合)を表し、D={ z∈C:∣z∣<1 }\mathbb D=\{\,z\in\mathbb C : |z|<1\,\}を単位円板と書く。D(a,r)D(a,r)で開円板を、D‾(a,r)={ z∈C:∣z−a∣≤r }\overline{D}(a,r)=\{\,z\in\mathbb C : |z-a|\le r\,\}で閉円板を表し、Z≥1={1,2,3,… }\mathbb{Z}_{\ge 1}=\{1,2,3,\dots\}、Z≥0={0,1,2,… }\mathbb{Z}_{\ge 0}=\{0,1,2,\dots\}と書く。単連結という語は§E5.2 定義 4.6の意味で用いる。a∈Da\in\mathbb Dに対する§E5.16 補題 3.2の写像をφa(z)=(z−a)/(1−a‾z)\varphi_{a}(z)=(z-a)/(1-\overline{a}z)と書く。

1 単連結領域の上の対数と平方根

§E5.10 命題 2.1は、開円板の上で零点をとらない正則関数が正則なmm乗根をもつことを示した。本節は、定義域を開円板から単連結領域へ広げる。証明の骨格は同命題と同じであり、開円板が単連結であることだけを用いていた箇所を、単連結性そのものへ置き換える。

出発点は、ffが零点をもたない正則関数であるときf′/ff'/fが正則であること、および単連結領域では正則関数がつねに原始関数をもつこと(§E5.5 系 8.2)である。f′/ff'/fの原始関数ggをとると、fe−gfe^{-g}の導関数が00になるので、この関数は定数である。定数の値を11に合わせるために、ggに加える定数を一点で調整する。

定理 1.1.Ω⊆C\Omega\subseteq\mathbb Cを単連結な領域とし、ffをΩ\Omegaの上の正則関数で、Ω\Omegaのすべての点zzについてf(z)≠0f(z)\ne0を満たすものとする。このとき次が成り立つ。

  1. Ω\Omegaの上の正則関数ggで、Ω\Omegaのすべての点zzについてeg(z)=f(z)e^{g(z)}=f(z)を満たすものが存在する。
  2. ggとg~\tilde gがともに(1)の条件を満たすならば、整数kkが存在して、Ω\Omegaのすべての点zzについてg~(z)−g(z)=2πik\tilde g(z)-g(z)=2\pi ikが成り立つ。

証明.(1)を示す。ffはΩ\Omegaの上で正則であるから、§E5.6 定理 4.1によりffはΩ\Omegaの上で何回でも複素微分可能であり、とくにf′f'はΩ\Omegaの上で正則である。ffはΩ\Omegaの上で零点をもたないから、§E5.2 命題 1.2 (3)によりf′/ff'/fはΩ\Omegaの上で正則である。Ω\Omegaは単連結な領域であるから、§E5.5 系 8.2によりΩ\Omegaの上の正則関数hhでh′=f′/fh'=f'/fを満たすものが存在する。

z0∈Ωz_{0}\in\Omegaを一つ固定する。f(z0)≠0f(z_{0})\ne0であるから、§E5.3 命題 2.3によりew0=f(z0)e^{w_{0}}=f(z_{0})を満たす複素数w0w_{0}が存在する。

g=h−h(z0)+w0g=h-h(z_{0})+w_{0}

とおく。ggはΩ\Omegaの上で正則であり、g′=h′=f′/fg'=h'=f'/fかつeg(z0)=ew0=f(z0)e^{g(z_{0})}=e^{w_{0}}=f(z_{0})である。

ψ(z)=f(z)e−g(z)\psi(z)=f(z)e^{-g(z)}とおく。§E5.3 命題 1.8と§E5.2 命題 1.2によりψ\psiはΩ\Omegaの上で正則であり、

ψ′=f′e−g−f g′e−g=e−g(f′−f⋅f′f)=0\psi'=f'e^{-g}-f\,g'e^{-g}=e^{-g}\Bigl(f'-f\cdot\frac{f'}{f}\Bigr)=0

がΩ\Omegaの各点で成り立つ。Ω\Omegaは領域であるから§E5.4 命題 4.3によりψ\psiはΩ\Omegaの上で定数であり、その値はψ(z0)=f(z0)e−g(z0)\psi(z_{0})=f(z_{0})e^{-g(z_{0})}である。§E5.3 命題 1.6の加法法則と、§E5.3 定義 1.3が与えるe0=1e^{0}=1によりeg(z0)e−g(z0)=e0=1e^{g(z_{0})}e^{-g(z_{0})}=e^{0}=1であるから、e−g(z0)=1/eg(z0)=1/f(z0)e^{-g(z_{0})}=1/e^{g(z_{0})}=1/f(z_{0})であり、ψ(z0)=1\psi(z_{0})=1である。ゆえにΩ\Omegaのすべての点zzについてf(z)e−g(z)=1f(z)e^{-g(z)}=1であり、同じ加法法則によりeg(z)=f(z)e−g(z)eg(z)=f(z)e^{g(z)}=f(z)e^{-g(z)}e^{g(z)}=f(z)である。

(2)を示す。ggとg~\tilde gがともに(1)の条件を満たすとする。eg=fe^{g}=fの両辺を微分すると、§E5.3 命題 1.8と§E5.2 命題 1.2 (4)によりg′eg=f′g'e^{g}=f'であり、eg=fe^{g}=fは零点をもたないからg′=f′/fg'=f'/fである。g~\tilde gについても同じ計算によりg~′=f′/f\tilde g'=f'/fである。よって(g~−g)′=0(\tilde g-g)'=0がΩ\Omegaの各点で成り立ち、Ω\Omegaは領域であるから§E5.4 命題 4.3によりg~−g\tilde g-gはΩ\Omegaの上で定数である。その値をccとおく。Ω\Omegaの点zzを一つとるとeg~(z)=f(z)=eg(z)e^{\tilde g(z)}=f(z)=e^{g(z)}であるから、§E5.3 命題 1.7 (3)によりg~(z)−g(z)=2πik\tilde g(z)-g(z)=2\pi ikを満たす整数kkが存在する。g~−g\tilde g-gは定数ccであるからc=2πikc=2\pi ikであり、この等式はΩ\Omegaのすべての点で成り立つ。▨

注意 1.2 (対数の枝との関係).§E5.3 定義 2.4は、C∖{0}\mathbb C\setminus\{0\}に含まれる領域DDの上の連続関数ℓ\ellであって、DDのすべての点zzについてeℓ(z)=ze^{\ell(z)}=zを満たすものを、DDの上の対数の枝と定めた。定理 1.1を、Ω\Omegaが00を含まない単連結な領域でありffが恒等写像f(z)=zf(z)=zである場合に適用すると、Ω\Omegaの上の対数の枝が存在し、しかもそれが正則であることが従う。正則な関数は連続であるから、定理 1.1 (2)は、この場合に§E5.3 命題 2.5が述べる「二つの枝の差は2πi2\pi iの整数倍である」という主張の特別な場合になっており、同じ結論を与える。

一方、§E5.3 命題 2.6により、原点を中心とする円周を含む領域には対数の枝が存在しない。この命題をC∖{0}\mathbb C\setminus\{0\}へ適用すると、定理 1.1の単連結性の仮定を落とすことができないことが従う。実際、C∖{0}\mathbb C\setminus\{0\}は§E5.3 命題 2.1により領域であり、その上でf(z)=zf(z)=zは零点をもたない。それにもかかわらず、単位円周がC∖{0}\mathbb C\setminus\{0\}に含まれるので、同命題によりeg(z)=ze^{g(z)}=zを満たす連続関数ggはC∖{0}\mathbb C\setminus\{0\}の上に存在しない。定理 1.1 (1)と合わせると、C∖{0}\mathbb C\setminus\{0\}は単連結でないことが従う。

系 1.3.Ω⊆C\Omega\subseteq\mathbb Cを単連結な領域とし、ffをΩ\Omegaの上の正則関数で、Ω\Omegaのすべての点zzについてf(z)≠0f(z)\ne0を満たすものとする。このとき次が成り立つ。

  1. Ω\Omegaの上の正則関数hhで、Ω\Omegaのすべての点zzについてh(z)2=f(z)h(z)^{2}=f(z)を満たすものが存在する。このhhはΩ\Omegaの上で零点をもたない。
  2. hhとh~\tilde hがともに(1)の条件を満たすならば、h~=h\tilde h=hがΩ\Omegaの上で成り立つか、またはh~=−h\tilde h=-hがΩ\Omegaの上で成り立つ。

証明.(1)を示す。定理 1.1 (1)により、Ω\Omegaの上の正則関数ggでeg=fe^{g}=fを満たすものが存在する。h(z)=eg(z)/2h(z)=e^{g(z)/2}とおく。§E5.3 命題 1.8と§E5.2 命題 1.2によりhhはΩ\Omegaの上で正則である。§E5.3 命題 1.6の加法法則により

h(z)2=eg(z)/2eg(z)/2=eg(z)=f(z)h(z)^{2}=e^{g(z)/2}e^{g(z)/2}=e^{g(z)}=f(z)

である。§E5.3 命題 1.7 (1)によりhhはΩ\Omegaの上で零点をもたない。

(2)を示す。hhとh~\tilde hがともに(1)の条件を満たすとする。(1)によりhhは零点をもたないから、§E5.2 命題 1.2 (3)によりq=h~/hq=\tilde h/hはΩ\Omegaの上で正則であり、q2=h~2/h2=f/f=1q^{2}=\tilde h^{2}/h^{2}=f/f=1がΩ\Omegaの上で成り立つ。両辺を微分すると§E5.2 命題 1.2 (2)により2qq′=02qq'=0である。q2=1q^{2}=1よりqqはΩ\Omegaの上で零点をもたないから、Ω\Omegaの各点でq′=0q'=0である。Ω\Omegaは領域であるから§E5.4 命題 4.3によりqqは定数であり、その定数をccとおくとc2=1c^{2}=1、すなわちc=1c=1またはc=−1c=-1である。c=1c=1ならばh~=h\tilde h=hであり、c=−1c=-1ならばh~=−h\tilde h=-hである。▨

2 等角同値と単射な正則写像

主定理が主張する「対応する」の意味を、ここで定める。

定義 2.1.D1,D2⊆CD_{1},D_{2}\subseteq\mathbb Cを領域とする。D1D_{1}とD2D_{2}が等角同値 (conformally equivalent) であるとは、D1D_{1}からD2D_{2}への全単射ffであって、ffがD1D_{1}の上で正則であり、逆写像f−1f^{-1}がD2D_{2}の上で正則であるものが存在することをいう。この条件を満たすffを、D1D_{1}からD2D_{2}への等角写像 (conformal map) という。

注意 2.2 (正則自己同型および角の保存との関係).§E5.16 定義 3.1が定めた領域DDの正則自己同型は、定義 2.1のD1=D2=DD_{1}=D_{2}=Dの場合の等角写像にほかならない。

等角写像という名称の根拠は次のとおりである。ffをD1D_{1}からD2D_{2}への定義 2.1の意味の等角写像とすると、ffは単射であるから、後述の命題 2.3 (1)によりD1D_{1}のすべての点zzでf′(z)≠0f'(z)\ne0である。ゆえに§E5.16 定理 1.2により、ffはD1D_{1}のすべての点で二本の曲線がなす角を保つ。

単射な正則写像については、逆写像が自動的に正則になる。次の命題がこれを述べる。主定理の結論を定義 2.1の形で述べるために、この命題を用いる。

命題 2.3.Ω⊆C\Omega\subseteq\mathbb Cを領域、ffをΩ\Omegaの上の単射な正則関数とする。このとき次が成り立つ。

  1. Ω\Omegaのすべての点zzについてf′(z)≠0f'(z)\ne0である。
  2. Ω\Omegaに含まれるすべての開集合VVについてf(V)f(V)は開集合である。とくにf(Ω)f(\Omega)は開集合である。
  3. 逆写像f−1:f(Ω)→Ωf^{-1}:f(\Omega)\to\Omegaはf(Ω)f(\Omega)の上で正則であり、z∈Ωz\in\Omegaとw=f(z)w=f(z)について(f−1)′(w)=1/f′(z)(f^{-1})'(w)=1/f'(z)が成り立つ。

証明. まずffがΩ\Omegaの上で定数でないことを示す。Ω\Omegaは空でない開集合であるから、a∈Ωa\in\Omegaとr>0r>0でD(a,r)⊆ΩD(a,r)\subseteq\Omegaを満たすものが存在する。aaとa+r/2a+r/2はΩ\Omegaの相異なる二点であり、ffは単射であるからf(a)≠f(a+r/2)f(a)\ne f(a+r/2)である。ゆえにffは定数でない。

(1)を示す。z∈Ωz\in\Omegaをとる。Ω\Omegaは開集合であるからD(z,δ)⊆ΩD(z,\delta)\subseteq\Omegaを満たすδ>0\delta>0が存在する。ffはΩ\Omegaの全体で単射であるから、その部分集合D(z,δ)D(z,\delta)の上でも単射である。すなわち§E5.10 定理 3.1 (2)が成り立つので、同定理によりf′(z)≠0f'(z)\ne0である。

(2)は、§E5.10 定理 1.1を領域Ω\Omegaと定数でない正則関数ffへ適用して得られる。

(3)を示す。z0∈Ωz_{0}\in\Omegaをとり、w0=f(z0)w_{0}=f(z_{0})とおく。

第一に、f−1f^{-1}がw0w_{0}で連続であることを示す。ε>0\varepsilon>0をとる。Ω\Omegaは開集合であるから、0<ε′≤ε0<\varepsilon'\le\varepsilonをD(z0,ε′)⊆ΩD(z_{0},\varepsilon')\subseteq\Omegaを満たすようにとることができる。(2)によりf(D(z0,ε′))f(D(z_{0},\varepsilon'))は開集合であり、w0w_{0}を含むから、D(w0,η)⊆f(D(z0,ε′))D(w_{0},\eta)\subseteq f(D(z_{0},\varepsilon'))を満たすη>0\eta>0が存在する。w∈f(Ω)w\in f(\Omega)が∣w−w0∣<η|w-w_{0}|<\etaを満たすとすると、w∈f(D(z0,ε′))w\in f(D(z_{0},\varepsilon'))であるから、f−1(w)f^{-1}(w)はD(z0,ε′)D(z_{0},\varepsilon')の点である。実際、w=f(z1)w=f(z_{1})を満たすz1∈D(z0,ε′)z_{1}\in D(z_{0},\varepsilon')が存在し、ffは単射であるからf−1(w)=z1f^{-1}(w)=z_{1}である。ゆえに∣f−1(w)−z0∣<ε′≤ε|f^{-1}(w)-z_{0}|<\varepsilon'\le\varepsilonである。

第二に、差商の極限を計算する。Ω∖{z0}\Omega\setminus\{z_{0}\}の上の関数

q(z)=f(z)−f(z0)z−z0q(z)=\frac{f(z)-f(z_{0})}{z-z_{0}}

は、§E5.2 定義 1.1によりz→z0z\to z_{0}のときf′(z0)f'(z_{0})へ収束する。(1)によりf′(z0)≠0f'(z_{0})\ne0であるから、δ1>0\delta_{1}>0を、z∈Ωz\in\Omegaかつ0<∣z−z0∣<δ10<|z-z_{0}|<\delta_{1}を満たすすべてのzzについて

∣q(z)−f′(z0)∣<∣f′(z0)∣2\bigl|q(z)-f'(z_{0})\bigr|<\frac{|f'(z_{0})|}{2}

が成り立つようにとることができる。このとき同じ範囲のzzについて∣q(z)∣≥∣f′(z0)∣−∣q(z)−f′(z0)∣>∣f′(z0)∣/2>0|q(z)|\ge|f'(z_{0})|-|q(z)-f'(z_{0})|>|f'(z_{0})|/2>0である。ε>0\varepsilon>0をとり、0<δ2≤δ10<\delta_{2}\le\delta_{1}を、z∈Ωz\in\Omegaかつ0<∣z−z0∣<δ20<|z-z_{0}|<\delta_{2}を満たすすべてのzzについて∣q(z)−f′(z0)∣<ε∣f′(z0)∣2/2|q(z)-f'(z_{0})|<\varepsilon|f'(z_{0})|^{2}/2が成り立つようにとる。この範囲のzzについて

∣1q(z)−1f′(z0)∣=∣q(z)−f′(z0)∣∣q(z)∣ ∣f′(z0)∣<2 ∣q(z)−f′(z0)∣∣f′(z0)∣2<ε\left|\frac{1}{q(z)}-\frac{1}{f'(z_{0})}\right| =\frac{|q(z)-f'(z_{0})|}{|q(z)|\,|f'(z_{0})|} <\frac{2\,|q(z)-f'(z_{0})|}{|f'(z_{0})|^{2}} <\varepsilon

である。

第三に、二つを合わせる。第一の段により、η>0\eta>0が存在して、w∈f(Ω)w\in f(\Omega)かつ∣w−w0∣<η|w-w_{0}|<\etaならば∣f−1(w)−z0∣<δ2|f^{-1}(w)-z_{0}|<\delta_{2}である。さらにw≠w0w\ne w_{0}としz=f−1(w)z=f^{-1}(w)とおくと、ffは単射であるからz≠z0z\ne z_{0}であり、0<∣z−z0∣<δ20<|z-z_{0}|<\delta_{2}である。w=f(z)w=f(z)、w0=f(z0)w_{0}=f(z_{0})であるから

f−1(w)−f−1(w0)w−w0=z−z0f(z)−f(z0)=1q(z)\frac{f^{-1}(w)-f^{-1}(w_{0})}{w-w_{0}}=\frac{z-z_{0}}{f(z)-f(z_{0})}=\frac{1}{q(z)}

であり、第二の段の評価により

∣f−1(w)−f−1(w0)w−w0−1f′(z0)∣<ε\left|\frac{f^{-1}(w)-f^{-1}(w_{0})}{w-w_{0}}-\frac{1}{f'(z_{0})}\right|<\varepsilon

である。ε>0\varepsilon>0は任意であったから、f−1f^{-1}はw0w_{0}で複素微分可能であり、その微分係数は1/f′(z0)1/f'(z_{0})である。f(Ω)f(\Omega)は(2)により開集合であり、w0∈f(Ω)w_{0}\in f(\Omega)は任意であったから、f−1f^{-1}はf(Ω)f(\Omega)の上で正則である。▨

3 非空な写像族

以下、証明の主役になる族を定める。指定する一点z0z_{0}は領域Ω\Omegaの任意の点でよく、Ω\Omegaが原点を含むことは仮定しない。

定義 3.1.Ω⊆C\Omega\subseteq\mathbb Cを領域、z0∈Ωz_{0}\in\Omegaとする。Ω\Omegaの上の関数ffからなる集合F(Ω,z0)\mathcal F(\Omega,z_{0})を、次の四つをすべて満たすffの全体として定める。

  1. ffはΩ\Omegaの上で正則である。
  2. ffはΩ\Omegaの上で単射である。
  3. Ω\Omegaのすべての点zzについて∣f(z)∣<1|f(z)|<1である。
  4. f(z0)=0f(z_{0})=0である。

この集合を単位円板への単射正則写像の族 (family of injective holomorphic maps into the unit disk) という。

Ω\Omegaが複素平面自身でないという仮定は、次の命題でΩ\Omegaの外の点を取るために用いる。

命題 3.2.Ω⊆C\Omega\subseteq\mathbb Cを単連結な領域とし、Ω≠C\Omega\ne\mathbb Cとする。z0∈Ωz_{0}\in\Omegaとすると、定義 3.1の族F(Ω,z0)\mathcal F(\Omega,z_{0})は空でない。

証明.Ω≠C\Omega\ne\mathbb Cであるからa∈C∖Ωa\in\mathbb C\setminus\Omegaをとることができる。u(z)=z−au(z)=z-aとおくと、uuはΩ\Omegaの上で正則であり、Ω\Omegaのすべての点zzについてz≠az\ne aであるからu(z)≠0u(z)\ne0である。Ω\Omegaは単連結な領域であるから、系 1.3 (1)により、Ω\Omegaの上の正則関数hhでh(z)2=z−ah(z)^{2}=z-aを満たすものが存在し、hhはΩ\Omegaの上で零点をもたない。

h(z1)=h(z2)h(z_{1})=h(z_{2})とするとz1−a=h(z1)2=h(z2)2=z2−az_{1}-a=h(z_{1})^{2}=h(z_{2})^{2}=z_{2}-aであるからz1=z2z_{1}=z_{2}である。

h(z1)=−h(z2)h(z_{1})=-h(z_{2})を満たすz1,z2∈Ωz_{1},z_{2}\in\Omegaが存在したとする。両辺を二乗するとz1−a=z2−az_{1}-a=z_{2}-aであるからz1=z2z_{1}=z_{2}であり、したがってh(z1)=−h(z1)h(z_{1})=-h(z_{1})、すなわちh(z1)=0h(z_{1})=0である。これはhhが零点をもたないことに反する。ゆえに、Ω\Omegaのすべての点z1,z2z_{1},z_{2}についてh(z1)≠−h(z2)h(z_{1})\ne-h(z_{2})である。

hhは単射であるから、命題 2.3 (2)によりh(Ω)h(\Omega)は開集合である。w0=h(z0)w_{0}=h(z_{0})とおくとw0∈h(Ω)w_{0}\in h(\Omega)であるから、D(w0,r)⊆h(Ω)D(w_{0},r)\subseteq h(\Omega)を満たすr>0r>0が存在する。

Ω\Omegaのすべての点zzについて∣h(z)+w0∣≥r|h(z)+w_{0}|\ge rであることを示す。∣h(z)+w0∣<r|h(z)+w_{0}|<rを満たすz∈Ωz\in\Omegaが存在したとする。ζ=h(z)\zeta=h(z)とおくと∣−ζ−w0∣=∣ζ+w0∣<r|-\zeta-w_{0}|=|\zeta+w_{0}|<rであるから−ζ∈D(w0,r)⊆h(Ω)-\zeta\in D(w_{0},r)\subseteq h(\Omega)であり、−ζ=h(z′)-\zeta=h(z')を満たすz′∈Ωz'\in\Omegaが存在する。すなわちh(z)=−h(z′)h(z)=-h(z')となり、上で示したh(Ω)∩(−h(Ω))=∅h(\Omega)\cap(-h(\Omega))=\varnothingに反する。

そこで

F(z)=r2(h(z)+w0)(z∈Ω)F(z)=\frac{r}{2\bigl(h(z)+w_{0}\bigr)}\qquad(z\in\Omega)

とおく。∣h(z)+w0∣≥r|h(z)+w_0|\ge rであるから分母はΩ\Omegaの上で零点をもたず、§E5.2 命題 1.2 (3)によりFFはΩ\Omegaの上で正則である。Ω\Omegaのすべての点zzについて

∣F(z)∣=r2 ∣h(z)+w0∣≤r2r=12<1|F(z)|=\frac{r}{2\,|h(z)+w_{0}|}\le\frac{r}{2r}=\frac12<1

である。またFFは単射である。実際、F(z1)=F(z2)F(z_{1})=F(z_{2})とするとh(z1)+w0=h(z2)+w0h(z_{1})+w_{0}=h(z_{2})+w_{0}であるからh(z1)=h(z2)h(z_{1})=h(z_{2})であり、hhの単射性によりz1=z2z_{1}=z_{2}である。

b=F(z0)b=F(z_{0})とおくと∣b∣<1|b|<1、すなわちb∈Db\in\mathbb Dである。§E5.16 補題 3.2によりφb\varphi_{b}はD\mathbb Dの正則自己同型でありφb(b)=0\varphi_{b}(b)=0である。f=φb∘Ff=\varphi_{b}\circ Fとおく。FFはΩ\OmegaからD\mathbb Dへの写像でありφb\varphi_{b}はD\mathbb Dの上で正則であるから、§E5.2 命題 1.2 (4)によりffはΩ\Omegaの上で正則である。φb\varphi_{b}はD\mathbb Dの単射でありFFも単射であるから、ffは単射である。φb\varphi_{b}はD\mathbb DをD\mathbb Dへ写すから、Ω\Omegaのすべての点zzについて∣f(z)∣<1|f(z)|<1である。最後にf(z0)=φb(b)=0f(z_{0})=\varphi_{b}(b)=0である。ゆえにffは定義 3.1の四条件を満たし、F(Ω,z0)≠∅\mathcal F(\Omega,z_{0})\ne\varnothingである。▨

4 極値元の存在

命題 4.1.Ω⊆C\Omega\subseteq\mathbb Cを領域、z0∈Ωz_{0}\in\Omegaとし、定義 3.1の族F=F(Ω,z0)\mathcal F=\mathcal F(\Omega,z_{0})が空でないとする。このとき

M=sup⁡{ ∣f′(z0)∣ ∣ f∈F }M=\sup\bigl\{\,|f'(z_{0})|\ \bigm|\ f\in\mathcal F\,\bigr\}

は実数であって0<M<∞0<M<\inftyを満たし、しかも∣g′(z0)∣=M|g'(z_{0})|=Mを満たすg∈Fg\in\mathcal Fが存在する。

証明.Ω\Omegaは開集合であるから、D‾(z0,r)⊆Ω\overline{D}(z_{0},r)\subseteq\Omegaを満たすr>0r>0が存在する。f∈Ff\in\mathcal Fとすると、円周∣ζ−z0∣=r|\zeta-z_{0}|=rの上で∣f(ζ)∣<1|f(\zeta)|<1、とくに∣f(ζ)∣≤1|f(\zeta)|\le1であるから、§E5.6 系 4.2を関数ff、中心z0z_{0}、半径rr、同系の上界を11、同系の階数mmを11として適用して∣f′(z0)∣≤1/r|f'(z_{0})|\le 1/rを得る。F\mathcal Fは空でないから、集合{ ∣f′(z0)∣:f∈F }\{\,|f'(z_{0})| : f\in\mathcal F\,\}は空でない実数の集合であり、1/r1/rを上界にもつ。ゆえに上限MMが実数として存在し、M≤1/r<∞M\le 1/r<\inftyである。

次にM>0M>0を示す。f∈Ff\in\mathcal Fを一つとる。ffはΩ\Omegaの上で単射な正則関数であるから、命題 2.3 (1)によりf′(z0)≠0f'(z_{0})\ne0である。ゆえにM≥∣f′(z0)∣>0M\ge|f'(z_{0})|>0である。

MMは上限であるから、F\mathcal Fの元の列(fn)n≥1(f_n)_{n\ge1}を、各正の整数nnについて

M−1n<∣fn′(z0)∣≤MM-\frac1n<|f_{n}'(z_{0})|\le M

を満たすように取ることができる。右の不等号はMMが上限であることによる。

F\mathcal Fが§E5.17 定義 4.3の意味で局所一様有界であることを示す。Ω\Omegaの点aaをとると、Ω\Omegaは開集合であるからD(a,ρ)⊆ΩD(a,\rho)\subseteq\Omegaを満たすρ>0\rho>0が存在する。定義 3.1 条件 (c)により、F\mathcal Fのすべての元ffとD(a,ρ)D(a,\rho)のすべての点zzについて∣f(z)∣≤1|f(z)|\le1である。よってF\mathcal Fは局所一様有界である。ゆえに§E5.17 定理 5.1によりF\mathcal Fは§E5.17 定義 4.1の意味で正規族である。列(fn)n≥1(f_{n})_{n\ge 1}へ正規性の定義を適用すると、狭義単調増加な写像κ:Z≥1→Z≥1\kappa:\mathbb{Z}_{\ge 1}\to\mathbb{Z}_{\ge 1}と関数g:Ω→Cg:\Omega\to\mathbb Cが存在して、(fκ(k))k≥1(f_{\kappa(k)})_{k\ge 1}はΩ\Omegaの上でggへ§E5.17 定義 1.1の意味で収束する。

以下で各点における収束を繰り返し用いる。z∈Ωz\in\Omegaをとると、Ω\Omegaは開集合であるからD‾(z,s)⊆Ω\overline{D}(z,s)\subseteq\Omegaを満たすs>0s>0が存在し、§E5.17 補題 1.3によりD‾(z,s)\overline{D}(z,s)はΩ\Omegaに含まれるコンパクト集合である。この集合へ§E5.17 定義 1.1の条件を適用すると、複素数の列(fκ(k)(z))k≥1(f_{\kappa(k)}(z))_{k\ge 1}はg(z)g(z)へ収束する。

§E5.17 定理 2.1を開集合Ω\Omega、正則関数の列(fκ(k))(f_{\kappa(k)})、極限ggへ適用すると、ggはΩ\Omegaの上で正則であり、導関数の列(fκ(k)′)(f_{\kappa(k)}')はΩ\Omegaの上でg′g'へ§E5.17 定義 1.1の意味で収束する。点z0z_0における収束を導関数の列へ適用すると、fκ(k)′(z0)→g′(z0)f_{\kappa(k)}'(z_{0})\to g'(z_{0})であり、したがって∣fκ(k)′(z0)∣→∣g′(z0)∣|f_{\kappa(k)}'(z_{0})|\to|g'(z_{0})|である。

κ\kappaは正の整数に値をとる狭義単調増加な写像であるから、kkについての帰納法によりκ(k)≥k\kappa(k)\ge kである。ゆえに上の不等式により、すべてのkkについて

M−1k≤M−1κ(k)<∣fκ(k)′(z0)∣≤MM-\frac1k\le M-\frac{1}{\kappa(k)}<|f_{\kappa(k)}'(z_{0})|\le M

である。左辺と右辺はともにk→∞k\to\inftyでMMへ収束するから、∣g′(z0)∣=M|g'(z_{0})|=Mである。M>0M>0でM>0M>0であるから、g′(z0)≠0g'(z_{0})\ne0であり、とくにggはΩ\Omegaの上で定数でない。

ggがΩ\Omegaの上で正則であることは§E5.17 定理 2.1から従う。

ggが単射であることを示す。Ω\Omegaは領域であり、各fκ(k)f_{\kappa(k)}はΩ\Omegaの上の単射な正則関数であり、(fκ(k))(f_{\kappa(k)})はΩ\Omegaの上でggへ§E5.17 定義 1.1の意味で収束する。ゆえに§E5.17 系 3.4により、ggはΩ\Omegaの上で単射であるか、またはΩ\Omegaの上で定数である。g′(z0)≠0g'(z_0)\ne0であるからggは定数でなく、したがって単射である。ここでΩ\Omegaが連結であることを用いた。

Ω\Omegaのすべての点zzについて∣g(z)∣<1|g(z)|<1であることを示す。局所一様収束からfκ(k)(z)→g(z)f_{\kappa(k)}(z)\to g(z)である。三角不等式により∣∣fκ(k)(z)∣−∣g(z)∣∣≤∣fκ(k)(z)−g(z)∣\bigl||f_{\kappa(k)}(z)|-|g(z)|\bigr|\le|f_{\kappa(k)}(z)-g(z)|であるから∣fκ(k)(z)∣→∣g(z)∣|f_{\kappa(k)}(z)|\to|g(z)|であり、すべてのkkについて∣fκ(k)(z)∣<1|f_{\kappa(k)}(z)|<1であることと極限が広義の不等式を保つことから∣g(z)∣≤1|g(z)|\le1である。ここで∣g(z1)∣=1|g(z_{1})|=1を満たすz1∈Ωz_{1}\in\Omegaが存在したとする。Ω\Omegaは開集合であるからD(z1,ρ)⊆ΩD(z_{1},\rho)\subseteq\Omegaを満たすρ>0\rho>0が存在し、D(z1,ρ)D(z_{1},\rho)の全体で∣g(z)∣≤1=∣g(z1)∣|g(z)|\le1=|g(z_{1})|である。Ω\Omegaは領域でggはΩ\Omegaの上で正則であるから、§E5.9 定理 3.1によりggはΩ\Omegaの上で定数である。これはg′(z0)≠0g'(z_0)\ne0に反する。ゆえにΩ\Omegaのすべての点zzについて∣g(z)∣<1|g(z)|<1である。

最後に、すべてのkkについてfκ(k)(z0)=0f_{\kappa(k)}(z_{0})=0であるから、点z0z_0における収束によりg(z0)=0g(z_{0})=0である。

以上によりggは定義 3.1の四条件を満たし、g∈Fg\in\mathcal Fかつ∣g′(z0)∣=M|g'(z_{0})|=Mである。▨

5 欠値変形と Riemann の写像定理

定理 5.1 (Riemann の写像定理).Ω⊆C\Omega\subseteq\mathbb Cを単連結な領域とし、Ω≠C\Omega\ne\mathbb Cとする。z0∈Ωz_{0}\in\Omegaとすると、Ω\OmegaからD={z∈C:∣z∣<1}\mathbb D=\{z\in\mathbb C:|z|<1\}への全単射ffであって、ffがΩ\Omegaの上で正則であり、逆写像f−1f^{-1}がD\mathbb Dの上で正則であり、かつf(z0)=0f(z_{0})=0を満たすものが存在する。とくにΩ\OmegaとD\mathbb Dは定義 2.1の意味で等角同値である。

証明.命題 3.2によりF=F(Ω,z0)\mathcal F=\mathcal F(\Omega,z_{0})は空でない。ゆえに命題 4.1を適用することができ、M=sup⁡{ ∣f~′(z0)∣:f~∈F }M=\sup\bigl\{\,|\tilde f'(z_{0})| : \tilde f\in\mathcal F\,\bigr\}は0<M<∞0<M<\inftyを満たし、∣f′(z0)∣=M|f'(z_{0})|=Mを満たすf∈Ff\in\mathcal Fが存在する。このffを固定する。ffはΩ\Omegaの上で正則かつ単射であり、f(Ω)⊆Df(\Omega)\subseteq\mathbb Dかつf(z0)=0f(z_{0})=0である。

f(Ω)=Df(\Omega)=\mathbb Dであることを、背理法で示す。f(Ω)≠Df(\Omega)\ne\mathbb Dと仮定し、α∈D∖f(Ω)\alpha\in\mathbb D\setminus f(\Omega)をとる。

u=φα∘fu=\varphi_{\alpha}\circ fとおく。§E5.16 補題 3.2によりφα\varphi_{\alpha}はD\mathbb Dの正則自己同型であるから、uuはΩ\Omegaの上で正則であり(§E5.2 命題 1.2 (4))、Ω\Omegaのすべての点zzについて∣u(z)∣<1|u(z)|<1である。uuは単射である。実際、u(z1)=u(z2)u(z_{1})=u(z_{2})とすると、φα\varphi_{\alpha}が単射であるからf(z1)=f(z2)f(z_{1})=f(z_{2})であり、ffが単射であるからz1=z2z_{1}=z_{2}である。さらにuuはΩ\Omegaの上で零点をもたない。実際、u(z)=0u(z)=0とするとφα(f(z))=0\varphi_{\alpha}(f(z))=0であり、φα(w)=0\varphi_{\alpha}(w)=0となるのはw=αw=\alphaのときだけであるからf(z)=αf(z)=\alphaとなって、α∉f(Ω)\alpha\notin f(\Omega)に反する。

Ω\Omegaは単連結な領域でありuuはΩ\Omegaの上で零点をもたない正則関数であるから、系 1.3 (1)により、Ω\Omegaの上の正則関数FFでF(z)2=u(z)F(z)^{2}=u(z)を満たすものが存在する。Ω\Omegaのすべての点zzについて∣F(z)∣2=∣u(z)∣<1|F(z)|^{2}=|u(z)|<1であるから∣F(z)∣<1|F(z)|<1であり、FFはΩ\OmegaからD\mathbb Dへの写像である。FFは単射である。実際、F(z1)=F(z2)F(z_{1})=F(z_{2})とするとu(z1)=F(z1)2=F(z2)2=u(z2)u(z_{1})=F(z_{1})^{2}=F(z_{2})^{2}=u(z_{2})であり、uuの単射性によりz1=z2z_{1}=z_{2}である。

β=F(z0)\beta=F(z_{0})とおくとβ∈D\beta\in\mathbb Dである。G=φβ∘FG=\varphi_{\beta}\circ Fとおく。FFの性質および§E5.16 補題 3.2により、GGはΩ\Omegaの上で正則であり、単射であり、Ω\Omegaのすべての点zzについて∣G(z)∣<1|G(z)|<1であり、G(z0)=φβ(β)=0G(z_{0})=\varphi_{\beta}(\beta)=0である。ゆえにG∈FG\in\mathcal Fである。

D\mathbb Dの上の写像Ψ\Psiを

Ψ(w)=φ−α((φ−β(w))2)(w∈D)\Psi(w)=\varphi_{-\alpha}\Bigl(\bigl(\varphi_{-\beta}(w)\bigr)^{2}\Bigr)\qquad(w\in\mathbb D)

で定める。−β∈D-\beta\in\mathbb Dかつ−α∈D-\alpha\in\mathbb Dであるから、§E5.16 補題 3.2によりφ−β\varphi_{-\beta}とφ−α\varphi_{-\alpha}はどちらもD\mathbb Dの正則自己同型である。w∈Dw\in\mathbb Dについてφ−β(w)∈D\varphi_{-\beta}(w)\in\mathbb Dであり、∣φ−β(w)2∣=∣φ−β(w)∣2<1|\varphi_{-\beta}(w)^{2}|=|\varphi_{-\beta}(w)|^{2}<1であるからφ−β(w)2∈D\varphi_{-\beta}(w)^{2}\in\mathbb Dであり、Ψ(w)∈D\Psi(w)\in\mathbb Dである。よってΨ\PsiはD\mathbb DからD\mathbb Dへの写像であり、§E5.2 命題 1.2 (2)と§E5.2 命題 1.2 (4)によりD\mathbb Dの上で正則である。

Ψ(0)=0\Psi(0)=0を示す。§E5.16 補題 3.2によりφ−β(0)=(0+β)/(1+β‾⋅0)=β\varphi_{-\beta}(0)=(0+\beta)/(1+\overline{\beta}\cdot0)=\betaである。また

β2=F(z0)2=u(z0)=φα(f(z0))=φα(0)=0−α1−α‾⋅0=−α\beta^{2}=F(z_{0})^{2}=u(z_{0})=\varphi_{\alpha}\bigl(f(z_{0})\bigr)=\varphi_{\alpha}(0) =\frac{0-\alpha}{1-\overline{\alpha}\cdot0}=-\alpha

である。ゆえに

Ψ(0)=φ−α(β2)=φ−α(−α)=−α+α1+α‾(−α)=01−∣α∣2=0\Psi(0)=\varphi_{-\alpha}(\beta^{2})=\varphi_{-\alpha}(-\alpha) =\frac{-\alpha+\alpha}{1+\overline{\alpha}(-\alpha)}=\frac{0}{1-|\alpha|^{2}}=0

である。ここで∣α∣<1|\alpha|<1より1−∣α∣2≠01-|\alpha|^{2}\ne0であることを用いた。

Ψ∘G=f\Psi\circ G=fを示す。§E5.16 補題 3.2はφβ−1=φ−β\varphi_{\beta}^{-1}=\varphi_{-\beta}とφα−1=φ−α\varphi_{\alpha}^{-1}=\varphi_{-\alpha}を述べているから、Ω\Omegaのすべての点zzについて

Ψ(G(z))=φ−α((φ−β(φβ(F(z))))2)=φ−α(F(z)2)=φ−α(u(z))=φ−α(φα(f(z)))=f(z)\Psi\bigl(G(z)\bigr) =\varphi_{-\alpha}\Bigl(\bigl(\varphi_{-\beta}(\varphi_{\beta}(F(z)))\bigr)^{2}\Bigr) =\varphi_{-\alpha}\bigl(F(z)^{2}\bigr) =\varphi_{-\alpha}\bigl(u(z)\bigr) =\varphi_{-\alpha}\bigl(\varphi_{\alpha}(f(z))\bigr) =f(z)

である。

u0=1/2u_{0}=1/2とおくとu0∈Du_{0}\in\mathbb Dかつu0≠0u_{0}\ne0である。w1=φβ(u0)w_{1}=\varphi_{\beta}(u_{0})、w2=φβ(−u0)w_{2}=\varphi_{\beta}(-u_{0})とおく。§E5.16 補題 3.2によりφβ\varphi_{\beta}はD\mathbb Dの単射であり、u0≠−u0u_{0}\ne-u_{0}であるからw1≠w2w_{1}\ne w_{2}である。またw1,w2∈Dw_{1},w_{2}\in\mathbb Dである。φ−β(w1)=u0\varphi_{-\beta}(w_{1})=u_{0}かつφ−β(w2)=−u0\varphi_{-\beta}(w_{2})=-u_{0}であり、u02=(−u0)2u_{0}^{2}=(-u_{0})^{2}であるから

Ψ(w1)=φ−α(u02)=φ−α((−u0)2)=Ψ(w2)\Psi(w_{1})=\varphi_{-\alpha}(u_{0}^{2})=\varphi_{-\alpha}\bigl((-u_{0})^{2}\bigr)=\Psi(w_{2})

である。ゆえにΨ\PsiはD\mathbb Dの上で単射でない。

Ψ\PsiはD\mathbb DからD\mathbb Dへの正則関数でありΨ(0)=0\Psi(0)=0であるから、§E5.16 定理 2.1を適用することができ、§E5.16 定理 2.1 (2)により∣Ψ′(0)∣≤1|\Psi'(0)|\le1である。ここで∣Ψ′(0)∣=1|\Psi'(0)|=1と仮定すると、§E5.16 定理 2.1 (3)により∣λ∣=1|\lambda|=1を満たすλ\lambdaが存在してΨ(w)=λw\Psi(w)=\lambda wがすべてのw∈Dw\in\mathbb Dで成り立つ。この写像はλ≠0\lambda\ne0であるから単射であり、上で示したΨ\Psiの非単射性に反する。ゆえに∣Ψ′(0)∣<1|\Psi'(0)|<1である。

Ψ∘G=f\Psi\circ G=fとG(z0)=0G(z_{0})=0に§E5.2 命題 1.2 (4)を適用すると

f′(z0)=Ψ′(G(z0)) G′(z0)=Ψ′(0) G′(z0)f'(z_{0})=\Psi'\bigl(G(z_{0})\bigr)\,G'(z_{0})=\Psi'(0)\,G'(z_{0})

である。絶対値をとるとM=∣f′(z0)∣=∣Ψ′(0)∣ ∣G′(z0)∣M=|f'(z_{0})|=|\Psi'(0)|\,|G'(z_{0})|である。G∈FG\in\mathcal Fであるから∣G′(z0)∣≤M|G'(z_{0})|\le Mであり、∣Ψ′(0)∣<1|\Psi'(0)|<1と命題 4.1が与えるM>0M>0により

M=∣Ψ′(0)∣ ∣G′(z0)∣≤∣Ψ′(0)∣ M<MM=|\Psi'(0)|\,|G'(z_{0})|\le|\Psi'(0)|\,M<M

となる。これは矛盾である。ゆえにf(Ω)=Df(\Omega)=\mathbb Dである。

ffはΩ\OmegaからD\mathbb Dへの全単射であり、Ω\Omegaの上で正則であり、f(z0)=0f(z_{0})=0を満たす。Ω\Omegaは領域でありffは単射であるから、命題 2.3 (3)によりf−1f^{-1}はf(Ω)=Df(\Omega)=\mathbb Dの上で正則である。ゆえにΩ\OmegaとD\mathbb Dは定義 2.1の意味で等角同値である。▨

注意 5.2 (複素平面自身を除くことができない).C\mathbb Cは00に関して星形な領域であり(§E5.2 定義 4.4、§E5.2 命題 4.5)、§E5.2 定義 4.6の末尾の記述により単連結である。それにもかかわらず、C\mathbb CとD\mathbb Dは等角同値ではない。

実際、C\mathbb CからD\mathbb Dへの正則関数ffをとると、すべてのz∈Cz\in\mathbb Cについて∣f(z)∣<1|f(z)|<1、とくに∣f(z)∣≤1|f(z)|\le1であるから、§E5.9 定理 4.1によりffは定数である。C\mathbb Cは二点以上を含むから、定数関数は単射でなく、したがって全単射でもない。ゆえにC\mathbb CからD\mathbb Dへの定義 2.1の意味の等角写像は存在しない。

したがって定理 5.1の仮定Ω≠C\Omega\ne\mathbb Cを落とすことはできない。証明の中でこの仮定を用いたのは命題 3.2の一箇所であり、Ω\Omegaに属さない点aaをとってz−az-aの平方根を作る段である。

注意 5.3 (本記事が扱わない範囲). 二点を挙げる。

第一に、定理 5.1が与える写像が、Ω\Omegaの境界へどのように延びるかという問題を、本記事は扱わない。本記事が示したのはΩ\Omegaの内部における全単射性だけであり、境界の点に対応する値については何も述べていない。

第二に、f(z0)=0f(z_{0})=0に加えてf′(z0)f'(z_{0})の偏角を指定するといった正規化を課したときに、定理 5.1の写像がただ一つに定まるかどうかという問題も、本記事は扱わない。同定理が主張するのは、条件を満たす写像が少なくとも一つ存在することである。

6 演習

問題 6.1.

  • 定理 1.1の証明で、hhに定数−h(z0)+w0-h(z_{0})+w_{0}を加えた。この調整を行わずにψ=fe−h\psi=fe^{-h}とおいた場合、ψ\psiについて何が言えて、何が言えないかを述べる。
  • 系 1.3 (2)の証明で、q=h~/hq=\tilde h/hが定数であることを導く前に、hhが零点をもたないことを用いた。この段を飛ばすと、どの主張を適用することができなくなるかを述べる。
  • 命題 2.3 (3)の証明は、f−1f^{-1}の連続性を先に示してから差商の極限を計算した。連続性を示さずに差商の極限を計算しようとすると、どの段で議論が止まるかを特定する。
  • 命題 3.2で、∣h(z)+w0∣≥r|h(z)+w_{0}|\ge rを示した。この不等式がh(Ω)∩(−h(Ω))=∅h(\Omega)\cap(-h(\Omega))=\varnothingから従う筋道を、−ζ-\zetaがD(w0,r)D(w_{0},r)に属するという条件に即して述べる。
  • 命題 3.2の証明で、Ω≠C\Omega\ne\mathbb Cという仮定を用いた箇所を特定する。この仮定がない場合に、証明のどの段が成り立たなくなるかを述べる。
  • 命題 4.1で、ggが定数でないことをM>0M>0と∣g′(z0)∣=M|g'(z_0)|=Mから導いた。§E5.17 系 3.4の結論から「定数である」という場合を落とすために、この段が必要である理由を述べる。
  • 命題 4.1で、∣g∣≤1|g|\le1から∣g∣<1|g|<1を導くために§E5.9 定理 3.1を用いた。∣g∣≤1|g|\le1だけでは定義 3.1 条件 (c)を満たさない理由を述べる。
  • 定理 5.1の証明で、Ψ\Psiが単射でないことを示すためにu0≠0u_{0}\ne0を要求した。u0=0u_{0}=0ととった場合に、この段の議論が成り立たない理由を述べる。
  • 定理 5.1の証明で、系 1.3を直接適用した箇所を特定する。同定理の証明がΩ\Omegaの単連結性に依存しているのは、この箇所と命題 3.2を引用する箇所の二つであることを、各段の仮定に照らして確かめる。
  • 定理 5.1の証明の最後で、M>0M>0を用いて矛盾を導いた。M=0M=0であった場合に、M≤∣Ψ′(0)∣MM\le|\Psi'(0)|Mから矛盾を導くことができない理由を述べる。

参考文献

  1. Lars V. Ahlfors, Complex Analysis, 3rd ed., AMS Chelsea Publishing 385, American Mathematical Society, Providence, R.I., 2021, originally published 1979.正規族を用いる Riemann の写像定理の証明を参考にした。
  2. John B. Conway, Functions of One Complex Variable I, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1978.解析関数の空間におけるコンパクト性と収束を主題とし、Riemann の写像定理を参考にした。
  3. Walter Rudin, Real and Complex Analysis, 3rd ed., McGraw Hill, 1987.等角写像を主題とし、正規族を扱う節に続いて Riemann の写像定理を参考にした。

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