§E5.23Stirling の公式と剰余評価

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実変数の Stirling の公式は階乗の主要な増大を与えるが、複素変数では対数の枝、負の実軸からの角距離、および打切り後の剰余を同時に制御する必要がある。本記事は Gamma 関数の複素解析的な構成からn!∼2πn (n/e)nn!\sim\sqrt{2\pi n}\,(n/e)^nを回収し、さらに負の実軸を避けた閉扇形で有限項の漸近展開を与える。

周期 Bernoulli 関数を含む Euler–Maclaurin 表示が、切断平面上のlog⁡Γ\log\Gammaと有限項の補正を結ぶ。部分積分後の剰余積分は、切断からの角距離によって一様に評価される。Binet の第二積分表示(§E5.21 定理 3.9)は、この表示の定数を照合するために用いる。

以下、

D0=C∖(−∞,0]D_0=\mathbb C\setminus(-\infty,0]

とし、D0D_0の上では対数の主値Log⁡\operatorname{Log}と偏角の主値Arg⁡\operatorname{Arg}を用いる(§E5.3 定義 2.7、§E5.3 命題 2.10)。

1 切断平面における Euler–Maclaurin 表示

補題 1.1.z=reiθ∈D0z=re^{i\theta}\in D_0(r>0r>0、−π<θ<π-\pi<\theta<\pi)とt≥0t\ge0について

∣z+t∣≥(r+t)cos⁡θ2>0|z+t|\ge(r+t)\cos\frac{\theta}{2}>0

が成り立つ。したがってp>1p>1について

∫0∞dt∣z+t∣p≤sec⁡p(θ/2)(p−1)rp−1\int_0^\infty\frac{dt}{|z+t|^p} \le\frac{\sec^p(\theta/2)}{(p-1)r^{p-1}}

である。

証明. 直接計算すると

∣z+t∣2=r2+t2+2rtcos⁡θ=(r+t)2−4rtsin⁡2θ2|z+t|^2=r^2+t^2+2rt\cos\theta =(r+t)^2-4rt\sin^2\frac{\theta}{2}

である。4rt≤(r+t)24rt\le(r+t)^2であるから

∣z+t∣2≥(r+t)2(1−sin⁡2θ2)=(r+t)2cos⁡2θ2.|z+t|^2\ge(r+t)^2\left(1-\sin^2\frac{\theta}{2}\right) =(r+t)^2\cos^2\frac{\theta}{2}.

∣θ∣<π|\theta|<\piよりcos⁡(θ/2)>0\cos(\theta/2)>0であり、第一の不等式を得る。両辺の−p-p乗をt=0t=0から∞\inftyまで積分すると第二の不等式を得る。▨

定理 1.2.z∈D0z\in D_0について

L(z)=(z−12)Log⁡z−z+12ln⁡(2π)+B22z−12∫0∞B~2(t)(z+t)2 dt(1)L(z) =\left(z-\frac12\right)\operatorname{Log}z-z+\frac12\ln(2\pi) +\frac{B_2}{2z} -\frac12\int_0^\infty\frac{\widetilde B_2(t)}{(z+t)^2}\,dt \tag{1}

とおく。このときLLはD0D_0の上で正則であり、

eL(z)=Γ(z)e^{L(z)}=\Gamma(z)

が成り立つ。したがってΓ\GammaはD0D_0の上で零点をもたず、LLは正の実軸上のln⁡Γ\ln\Gammaと一致する対数の枝である。以下、この枝をlog⁡Γ\log\Gammaと書く。

証明.§E5.22 補題 2.2の∣B~2∣≤C2|\widetilde B_2|\le C_2と補題 1.1により、式 (1) の積分は各z∈D0z\in D_0について絶対収束する。

z0∈D0z_0\in D_0を固定し、ddをz0z_0と切断(−∞,0](-\infty,0]の距離とする。0<η<d/20<\eta<d/2とし、∣h∣≤η|h|\le\eta、0≤s≤10\le s\le1とする。z0+tz_0+tと切断の距離はt≥0t\ge0についてdd以上であるから∣z0+sh+t∣≥d/2|z_0+sh+t|\ge d/2である。またT=2(∣z0∣+η)T=2(|z_0|+\eta)とおくと、t≥Tt\ge Tでは∣z0+sh+t∣≥t/2|z_0+sh+t|\ge t/2である。qt(z)=(z+t)−2q_t(z)=(z+t)^{-2}とおけばqt′′(z)=6(z+t)−4q_t''(z)=6(z+t)^{-4}であり、§E5.4 定理 4.2を線分上で二回用いると

∣qt(z0+h)−qt(z0)h−qt′(z0)∣≤∣h∣H(t),\left|\frac{q_t(z_0+h)-q_t(z_0)}h-q_t'(z_0)\right| \le |h|H(t),

ただし

H(t)={3(2/d)4,0≤t<T,3(2/t)4,t≥TH(t)= \begin{cases} 3(2/d)^4,&0\le t<T,\\ 3(2/t)^4,&t\ge T \end{cases}

とすることができる。HHは(0,∞)(0,\infty)の上で可積分である。したがって差商の積分と∫0∞B~2(t)qt′(z0) dt\int_0^\infty\widetilde B_2(t)q_t'(z_0)\,dtの差はC2∣h∣∫0∞H(t)dtC_2|h|\int_0^\infty H(t)dt以下であり、h→0h\to0で00へ収束する。ゆえに式 (1) の積分はz0z_0で複素微分可能である。z0z_0は任意であるからLLはD0D_0の上で正則である。

右半平面H={Re⁡z>0}H=\{\operatorname{Re}z>0\}で等式を示す。正の整数MMを取り、fz(t)=Log⁡(z+t)f_z(t)=\operatorname{Log}(z+t)とおく。fzf_zは[0,M][0,M]の上で何回でも連続微分可能であり、

fz′(t)=1z+t,fz′′(t)=−1(z+t)2.f_z'(t)=\frac1{z+t},\qquad f_z''(t)=-\frac1{(z+t)^2}.

§E5.22 定理 3.1をm=1m=1として適用すると

∑j=0MLog⁡(z+j)=∫0MLog⁡(z+t) dt+Log⁡z+Log⁡(z+M)2+B22(1z+M−1z)+12∫0MB~2(t)(z+t)2 dt.(2)\begin{aligned} \sum_{j=0}^M\operatorname{Log}(z+j) ={}&\int_0^M\operatorname{Log}(z+t)\,dt +\frac{\operatorname{Log}z+\operatorname{Log}(z+M)}2\\ &+\frac{B_2}{2}\left(\frac1{z+M}-\frac1z\right) +\frac12\int_0^M\frac{\widetilde B_2(t)}{(z+t)^2}\,dt. \end{aligned} \tag{2}

§E5.21 定理 3.9と§E5.21 定理 3.5からG(z)=log⁡Γ(z)G(z)=\log\Gamma(z)はHHの上でG(z+1)−G(z)=Log⁡zG(z+1)-G(z)=\operatorname{Log}zを満たす。したがって

G(z+M+1)−G(z)=∑j=0MLog⁡(z+j).(3)G(z+M+1)-G(z)=\sum_{j=0}^M\operatorname{Log}(z+j). \tag{3}

また、§E5.4 定理 4.2により

∫0MLog⁡(z+t) dt=(z+M)Log⁡(z+M)−(z+M)−zLog⁡z+z.(4)\int_0^M\operatorname{Log}(z+t)\,dt =(z+M)\operatorname{Log}(z+M)-(z+M)-z\operatorname{Log}z+z. \tag{4}

式 (2)--(4) を用いてM→∞M\to\inftyとする。x=z+Mx=z+Mとおくと、xxに依存する主項のうち残る量は

(x+12)(Log⁡(x+1)−Log⁡x)−1=∫0112−sx+s ds,\left(x+\frac12\right)\bigl(\operatorname{Log}(x+1)-\operatorname{Log}x\bigr)-1 =\int_0^1\frac{\frac12-s}{x+s}\,ds,

であり、右辺はM→∞M\to\inftyで00へ収束する。§E5.21 補題 3.3の評価∣J(w)∣≤2∣w∣Λ/(Re⁡w)2|J(w)|\le2|w|\Lambda/(\operatorname{Re}w)^2をw=z+M+1w=z+M+1へ適用するとJ(z+M+1)→0J(z+M+1)\to0である。さらに1/(z+M)→01/(z+M)\to0であり、周期 Bernoulli 関数を含む積分は絶対収束する。ゆえに極限を取ると

G(z)=(z−12)Log⁡z−z+12ln⁡(2π)+B22z−12∫0∞B~2(t)(z+t)2 dt=L(z)G(z)=\left(z-\frac12\right)\operatorname{Log}z-z+\frac12\ln(2\pi) +\frac{B_2}{2z} -\frac12\int_0^\infty\frac{\widetilde B_2(t)}{(z+t)^2}\,dt=L(z)

を得る。

§E5.21 定理 2.1の Gamma 関数はD0D_0の上で正則である。二つの正則関数eLe^LとΓ\Gammaは右半平面で一致し、D0D_0は領域である(§E5.3 命題 2.8)。一致の定理を用いるとD0D_0の全体でeL=Γe^L=\Gammaである。指数関数は零点をもたない(§E5.3 命題 1.7)ので、Gamma 関数もD0D_0の上で零点をもたない。▨

2 閉扇形における漸近展開と剰余評価

定理 2.1 (閉扇形における Stirling の漸近展開と剰余評価).NNを非負整数とし、z=reiθ∈D0z=re^{i\theta}\in D_0(r>0r>0、−π<θ<π-\pi<\theta<\pi)とする。このとき

log⁡Γ(z)=(z−12)Log⁡z−z+12ln⁡(2π)+∑k=1NB2k2k(2k−1)z2k−1+RN(z)(6)\log\Gamma(z) =\left(z-\frac12\right)\operatorname{Log}z-z+\frac12\ln(2\pi) +\sum_{k=1}^{N}\frac{B_{2k}}{2k(2k-1)z^{2k-1}}+R_N(z) \tag{6}

と書くことができる。p=2N+2p=2N+2および

Cp=∑j=0p(pj)∣Bj∣C_p=\sum_{j=0}^p\binom pj|B_j|

とおくと

RN(z)=Bpp(p−1)zp−1−1p∫0∞B~p(t)(z+t)p dt(7)R_N(z)=\frac{B_p}{p(p-1)z^{p-1}} -\frac1p\int_0^\infty\frac{\widetilde B_p(t)}{(z+t)^p}\,dt \tag{7}

であり、

∣RN(z)∣≤Cpp(p−1)rp−1(1+sec⁡pθ2)(8)|R_N(z)| \le\frac{C_p}{p(p-1)r^{p-1}} \left(1+\sec^p\frac{\theta}{2}\right) \tag{8}

を満たす。

とくに0<δ<π0<\delta<\piを固定すると、閉扇形

Sδ={z≠0:∣Arg⁡z∣≤π−δ}S_\delta=\{z\ne0:|\operatorname{Arg}z|\le\pi-\delta\}

の上で

∣RN(z)∣≤C2N+2(2N+2)(2N+1)(1+csc⁡2N+2δ2)∣z∣−(2N+1)(9)|R_N(z)| \le\frac{C_{2N+2}}{(2N+2)(2N+1)} \left(1+\csc^{2N+2}\frac{\delta}{2}\right)|z|^{-(2N+1)} \tag{9}

が成り立つ。したがってNNを固定したとき、式 (6) はSδS_\deltaの上で一様な有限項の漸近展開である。

証明.定理 1.2の式 (1) を出発点とする。正の偶数qqについて

Tq(z)=−1q∫0∞B~q(t)(z+t)q dtT_q(z)=-\frac1q\int_0^\infty \frac{\widetilde B_q(t)}{(z+t)^q}\,dt

とおく。この積分は§E5.22 補題 2.2と補題 1.1により絶対収束する。正の整数MMまでの積分で部分積分する。Bq+1=0B_{q+1}=0(§E5.22 補題 1.2)とB~q+1′=(q+1)B~q\widetilde B_{q+1}'=(q+1)\widetilde B_qにより端点項は00であり、続いてB~q+2′=(q+2)B~q+1\widetilde B_{q+2}'=(q+2)\widetilde B_{q+1}を用いると

∫0∞B~q(t)(z+t)q dt=qq+1∫0∞B~q+1(t)(z+t)q+1 dt,\int_0^\infty\frac{\widetilde B_q(t)}{(z+t)^q}\,dt =\frac q{q+1}\int_0^\infty \frac{\widetilde B_{q+1}(t)}{(z+t)^{q+1}}\,dt,∫0∞B~q+1(t)(z+t)q+1 dt=−Bq+2(q+2)zq+1+q+1q+2∫0∞B~q+2(t)(z+t)q+2 dt\int_0^\infty\frac{\widetilde B_{q+1}(t)}{(z+t)^{q+1}}\,dt =-\frac{B_{q+2}}{(q+2)z^{q+1}} +\frac{q+1}{q+2}\int_0^\infty \frac{\widetilde B_{q+2}(t)}{(z+t)^{q+2}}\,dt

である。したがって

Tq(z)=Bq+2(q+1)(q+2)zq+1+Tq+2(z).(10)T_q(z)=\frac{B_{q+2}}{(q+1)(q+2)z^{q+1}}+T_{q+2}(z). \tag{10}

無限遠の端点項が00へ収束することは、周期 Bernoulli 関数が有界であることと∣z+M∣→∞|z+M|\to\inftyから従う。

式 (1) は

log⁡Γ(z)=(z−12)Log⁡z−z+12ln⁡(2π)+B22z+T2(z)\log\Gamma(z) =\left(z-\frac12\right)\operatorname{Log}z-z+\frac12\ln(2\pi) +\frac{B_2}{2z}+T_2(z)

と書くことができる。式 (10) をq=2,4,…,2Nq=2,4,\ldots,2Nについて繰り返すと、式 (6) と式 (7) を得る。N=0N=0の場合は和が空であり、式 (1) そのものに等しい。

∣Bp∣≤Cp|B_p|\le C_pと補題 1.1により

∣Tp(z)∣≤Cpp∫0∞dt∣z+t∣p≤Cpp(p−1)rp−1sec⁡pθ2.|T_p(z)| \le\frac{C_p}{p}\int_0^\infty\frac{dt}{|z+t|^p} \le\frac{C_p}{p(p-1)r^{p-1}}\sec^p\frac{\theta}{2}.

この評価を式 (7) へ適用すると式 (8) を得る。∣θ∣≤π−δ|\theta|\le\pi-\deltaならば

cos⁡θ2≥cos⁡π−δ2=sin⁡δ2\cos\frac{\theta}{2}\ge\cos\frac{\pi-\delta}{2}=\sin\frac{\delta}{2}

であるから式 (9) が従う。▨

式 (9) は、打切り次数NNと扇形の開きδ\deltaへの依存をすべて明示している。切断へ近づいてδ→0+\delta\to0^+となると定数が増大する。一方、NNとδ\deltaを固定すればRN(z)=O(∣z∣−(2N+1))R_N(z)=O(|z|^{-(2N+1)})である。§E5.22 補題 1.2の等式はB2kB_{2k}が階乗を含む係数であることを示すため、この有限項の評価からN→∞N\to\inftyにおける級数の収束は従わない。

3 Binet の第二表示との比較

右半平面に限れば、Binet の第二表示から別の剰余評価を得ることができる。次の補題は、両表示の計算と従来の表示との対応を記録するために残すが、定理 2.1の証明には用いない。

補題 3.1.Re⁡z>0\operatorname{Re}z>0、θ=Arg⁡z\theta=\operatorname{Arg}z、t≥0t\ge0とし、NNを非負整数とする。このとき

arctan⁡tz=∑k=0N−1(−1)k2k+1t2k+1z2k+1+ρN(z,t),\arctan\frac tz =\sum_{k=0}^{N-1}\frac{(-1)^k}{2k+1}\frac{t^{2k+1}}{z^{2k+1}}+\rho_N(z,t),ρN(z,t)=(−1)N∫0tτ2Nz2N−1(z2+τ2) dτ\rho_N(z,t)=(-1)^N\int_0^t \frac{\tau^{2N}}{z^{2N-1}(z^2+\tau^2)}\,d\tau

が成り立ち、

∣ρN(z,t)∣≤t2N+1(2N+1)∣z∣2N+1cos⁡θ|\rho_N(z,t)| \le\frac{t^{2N+1}}{(2N+1)|z|^{2N+1}\cos\theta}

である。N=0N=0のとき和は空である。

証明.z=reiθz=re^{i\theta}とすると

∣z2+τ2∣2=(r2+τ2)2−4r2τ2sin⁡2θ≥(r2+τ2)2cos⁡2θ.|z^2+\tau^2|^2 =(r^2+\tau^2)^2-4r^2\tau^2\sin^2\theta \ge(r^2+\tau^2)^2\cos^2\theta.

Re⁡z>0\operatorname{Re}z>0よりcos⁡θ>0\cos\theta>0であるから∣z2+τ2∣≥r2cos⁡θ|z^2+\tau^2|\ge r^2\cos\thetaである。等比数列の有限和をv=τ2/z2v=\tau^2/z^2へ適用すると

zz2+τ2=∑k=0N−1(−1)kτ2kz2k+1+(−1)Nτ2Nz2N−1(z2+τ2).\frac{z}{z^2+\tau^2} =\sum_{k=0}^{N-1}\frac{(-1)^k\tau^{2k}}{z^{2k+1}} +\frac{(-1)^N\tau^{2N}}{z^{2N-1}(z^2+\tau^2)}.

§E5.21 補題 3.3の積分表示に代入し、00からttまで積分すると最初の二式を得る。分母の下からの評価を剰余積分へ適用すると最後の不等式を得る。▨

注意 3.2 (Binet 表示と Euler–Maclaurin 表示の領域).§E5.21 定理 3.9の逆正接は、t>0t>0を固定するとz=±itz=\pm itに分岐点をもつ。ttを00から∞\inftyまで動かしたときの分岐点の集合は虚軸に一致するため、その積分表示は右半平面を越える表示にならない。一方、定理 1.2の被積分関数の特異点はz=−tz=-tにあり、t≥0t\ge0に対応する特異点の集合は非正実軸に一致する。したがって後者はD0D_0の全体で正則な表示を与える。

この定義域の相違は、log⁡Γ\log\Gamma自体の定義域が虚軸までに限られることを意味しない。右半平面だけで定義されるのは Binet の第二表示であり、定理 1.2は同じ関数を切断平面へ延長する。二つの表示の定義域の違いは、対数の枝を形式的に付け替えることではなく、被積分関数の特異点が動く集合の違いから生じる。

4 階乗への適用

系 4.1. 正の整数nnについて

n!=2πn(ne)neθn,0<θn≤112nn!=\sqrt{2\pi n}\left(\frac ne\right)^n e^{\theta_n}, \qquad 0<\theta_n\le\frac1{12n}

が成り立つ。とくに

∣n!2πn (n/e)n−1∣≤e1/1212n\left|\frac{n!}{\sqrt{2\pi n}\,(n/e)^n}-1\right| \le\frac{e^{1/12}}{12n}

である。

証明.§E5.21 定理 3.9を正の実数nnへ適用すると

ln⁡Γ(n)=(n−12)ln⁡n−n+12ln⁡(2π)+J(n)\ln\Gamma(n) =\left(n-\frac12\right)\ln n-n+\frac12\ln(2\pi)+J(n)

である。§E5.21 補題 3.3により0<arctan⁡(t/n)≤t/n0<\arctan(t/n)\le t/n(t>0t>0)であるから、§E5.22 補題 3.3をk=0k=0として用いると

0<J(n)≤2n∫0∞te2πt−1 dt=2n⋅∣B2∣4=112n.0<J(n) \le\frac2n\int_0^\infty\frac{t}{e^{2\pi t}-1}\,dt =\frac2n\cdot\frac{|B_2|}{4} =\frac1{12n}.

最後の等式ではB2=16B_2=\tfrac16を用いた。この値は§E5.22 定義 1.1の母関数で二次の係数を比較すると得られる。

§E5.21 命題 1.6によりn!=nΓ(n)n!=n\Gamma(n)である。上の等式の指数を取り、nnを掛けると、θn=J(n)\theta_n=J(n)として第一の表示を得る。さらに§E5.20 補題 1.1により

∣eθn−1∣≤θneθn≤e1/1212n|e^{\theta_n}-1| \le\theta_n e^{\theta_n} \le\frac{e^{1/12}}{12n}

であり、第二の不等式が従う。▨

注意 4.2 (初等的な証明との比較). 一変数の基礎解析を扱う単元は、ln⁡n!=∑k=1nln⁡k\ln n!=\sum_{k=1}^n\ln kを積分と比較し、定数を Wallis の公式で決めることによってn!∼2πn(n/e)nn!\sim\sqrt{2\pi n}(n/e)^nを証明した(§D1.27 定理 3.2)。系 4.1は比の11からのずれを具体的に評価し、定理 2.1は複素変数について高次の項まで与える。本記事の定数2π\sqrt{2\pi}は、§E5.21 補題 3.8が Binet の剰余の漸近正規化、Gamma 関数の関数方程式、およびΓ(1/2)=π\Gamma(1/2)=\sqrt\piから決定した値である。

5 演習

問題 5.1.

  • 定理 1.2の式 (2) で、fz′′(t)f_z''(t)の負号と§E5.22 定理 3.1の剰余項の負号が打ち消し合うことを確かめる。有限区間の等式を無限区間へ移すときに、Binet 積分の評価が必要になる箇所を特定する。
  • 定理 1.2では、差分方程式だけでL=log⁡ΓL=\log\Gammaと結論しなかった。周期11の差を正の実軸の無限遠で評価する段階が必要である理由を述べる。
  • 定理 2.1の式 (9) で、切断へ近づくと定数が増大する箇所を特定する。NNとδ\deltaを固定した有限項の漸近展開と、N→∞N\to\inftyにおける級数の収束とを区別する。
  • 注意 3.2に従い、Binet の第二表示と Euler–Maclaurin 表示について、被積分関数の特異点がそれぞれどの集合をなすかを説明する。
  • 系 4.1で、対数の剰余から乗法の剰余へ移る際に指数関数の誤差を別に評価する必要がある理由を述べる。

参考文献

  1. E. T. Whittaker and G. N. Watson, A Course of Modern Analysis, 5th ed., Cambridge University Press, 2021.Euler–Maclaurin の和公式による Gamma 関数の漸近展開を参考にした。
  2. Reinhold Remmert, Classical Topics in Complex Function Theory, Springer, New York, 1998.Gamma 関数の複素解析的な構成と Stirling の公式を参考にした。
  3. National Institute of Standards and Technology, NIST Digital Library of Mathematical Functions.負の実軸を避けた閉扇形における漸近展開((5.11.1))と、より鋭い剰余評価(§5.11(ii))を参考にした。

前提記事