1 切断平面における Euler–Maclaurin 表示
補題 1.1.z=reiθ∈D0(r>0、−π<θ<π)とt≥0について
∣z+t∣≥(r+t)cos2θ>0が成り立つ。したがってp>1について
∫0∞∣z+t∣pdt≤(p−1)rp−1secp(θ/2)である。
証明. 直接計算すると
∣z+t∣2=r2+t2+2rtcosθ=(r+t)2−4rtsin22θである。4rt≤(r+t)2であるから
∣z+t∣2≥(r+t)2(1−sin22θ)=(r+t)2cos22θ.∣θ∣<πよりcos(θ/2)>0であり、第一の不等式を得る。両辺の−p乗をt=0から∞まで積分すると第二の不等式を得る。▨
定理 1.2.z∈D0について
L(z)=(z−21)Logz−z+21ln(2π)+2zB2−21∫0∞(z+t)2B2(t)dt(1)とおく。このときLはD0の上で正則であり、
eL(z)=Γ(z)が成り立つ。したがってΓはD0の上で零点をもたず、Lは正の実軸上のlnΓと一致する対数の枝である。以下、この枝をlogΓと書く。
証明.§E5.22 補題 2.2の∣B2∣≤C2と補題 1.1により、式 (1) の積分は各z∈D0について絶対収束する。
z0∈D0を固定し、dをz0と切断(−∞,0]の距離とする。0<η<d/2とし、∣h∣≤η、0≤s≤1とする。z0+tと切断の距離はt≥0についてd以上であるから∣z0+sh+t∣≥d/2である。またT=2(∣z0∣+η)とおくと、t≥Tでは∣z0+sh+t∣≥t/2である。qt(z)=(z+t)−2とおけばqt′′(z)=6(z+t)−4であり、§E5.4 定理 4.2を線分上で二回用いると
hqt(z0+h)−qt(z0)−qt′(z0)≤∣h∣H(t),ただし
H(t)={3(2/d)4,3(2/t)4,0≤t<T,t≥Tとすることができる。Hは(0,∞)の上で可積分である。したがって差商の積分と∫0∞B2(t)qt′(z0)dtの差はC2∣h∣∫0∞H(t)dt以下であり、h→0で0へ収束する。ゆえに式 (1) の積分はz0で複素微分可能である。z0は任意であるからLはD0の上で正則である。
右半平面H={Rez>0}で等式を示す。正の整数Mを取り、fz(t)=Log(z+t)とおく。fzは[0,M]の上で何回でも連続微分可能であり、
fz′(t)=z+t1,fz′′(t)=−(z+t)21.§E5.22 定理 3.1をm=1として適用すると
j=0∑MLog(z+j)=∫0MLog(z+t)dt+2Logz+Log(z+M)+2B2(z+M1−z1)+21∫0M(z+t)2B2(t)dt.(2)§E5.21 定理 3.9と§E5.21 定理 3.5からG(z)=logΓ(z)はHの上でG(z+1)−G(z)=Logzを満たす。したがって
G(z+M+1)−G(z)=j=0∑MLog(z+j).(3)また、§E5.4 定理 4.2により
∫0MLog(z+t)dt=(z+M)Log(z+M)−(z+M)−zLogz+z.(4)式 (2)--(4) を用いてM→∞とする。x=z+Mとおくと、xに依存する主項のうち残る量は
(x+21)(Log(x+1)−Logx)−1=∫01x+s21−sds,であり、右辺はM→∞で0へ収束する。§E5.21 補題 3.3の評価∣J(w)∣≤2∣w∣Λ/(Rew)2をw=z+M+1へ適用するとJ(z+M+1)→0である。さらに1/(z+M)→0であり、周期 Bernoulli 関数を含む積分は絶対収束する。ゆえに極限を取ると
G(z)=(z−21)Logz−z+21ln(2π)+2zB2−21∫0∞(z+t)2B2(t)dt=L(z)を得る。
§E5.21 定理 2.1の Gamma 関数はD0の上で正則である。二つの正則関数eLとΓは右半平面で一致し、D0は領域である(§E5.3 命題 2.8)。一致の定理を用いるとD0の全体でeL=Γである。指数関数は零点をもたない(§E5.3 命題 1.7)ので、Gamma 関数もD0の上で零点をもたない。▨
2 閉扇形における漸近展開と剰余評価
定理 2.1 (閉扇形における Stirling の漸近展開と剰余評価).Nを非負整数とし、z=reiθ∈D0(r>0、−π<θ<π)とする。このとき
logΓ(z)=(z−21)Logz−z+21ln(2π)+k=1∑N2k(2k−1)z2k−1B2k+RN(z)(6)と書くことができる。p=2N+2および
Cp=j=0∑p(jp)∣Bj∣とおくと
RN(z)=p(p−1)zp−1Bp−p1∫0∞(z+t)pBp(t)dt(7)であり、
∣RN(z)∣≤p(p−1)rp−1Cp(1+secp2θ)(8)を満たす。
とくに0<δ<πを固定すると、閉扇形
Sδ={z=0:∣Argz∣≤π−δ}の上で
∣RN(z)∣≤(2N+2)(2N+1)C2N+2(1+csc2N+22δ)∣z∣−(2N+1)(9)が成り立つ。したがってNを固定したとき、式 (6) はSδの上で一様な有限項の漸近展開である。
証明.定理 1.2の式 (1) を出発点とする。正の偶数qについて
Tq(z)=−q1∫0∞(z+t)qBq(t)dtとおく。この積分は§E5.22 補題 2.2と補題 1.1により絶対収束する。正の整数Mまでの積分で部分積分する。Bq+1=0(§E5.22 補題 1.2)とBq+1′=(q+1)Bqにより端点項は0であり、続いてBq+2′=(q+2)Bq+1を用いると
∫0∞(z+t)qBq(t)dt=q+1q∫0∞(z+t)q+1Bq+1(t)dt,∫0∞(z+t)q+1Bq+1(t)dt=−(q+2)zq+1Bq+2+q+2q+1∫0∞(z+t)q+2Bq+2(t)dtである。したがって
Tq(z)=(q+1)(q+2)zq+1Bq+2+Tq+2(z).(10)無限遠の端点項が0へ収束することは、周期 Bernoulli 関数が有界であることと∣z+M∣→∞から従う。
式 (1) は
logΓ(z)=(z−21)Logz−z+21ln(2π)+2zB2+T2(z)と書くことができる。式 (10) をq=2,4,…,2Nについて繰り返すと、式 (6) と式 (7) を得る。N=0の場合は和が空であり、式 (1) そのものに等しい。
∣Bp∣≤Cpと補題 1.1により
∣Tp(z)∣≤pCp∫0∞∣z+t∣pdt≤p(p−1)rp−1Cpsecp2θ.この評価を式 (7) へ適用すると式 (8) を得る。∣θ∣≤π−δならば
cos2θ≥cos2π−δ=sin2δであるから式 (9) が従う。▨
式 (9) は、打切り次数Nと扇形の開きδへの依存をすべて明示している。切断へ近づいてδ→0+となると定数が増大する。一方、Nとδを固定すればRN(z)=O(∣z∣−(2N+1))である。§E5.22 補題 1.2の等式はB2kが階乗を含む係数であることを示すため、この有限項の評価からN→∞における級数の収束は従わない。
3 Binet の第二表示との比較
右半平面に限れば、Binet の第二表示から別の剰余評価を得ることができる。次の補題は、両表示の計算と従来の表示との対応を記録するために残すが、定理 2.1の証明には用いない。
補題 3.1.Rez>0、θ=Argz、t≥0とし、Nを非負整数とする。このとき
arctanzt=k=0∑N−12k+1(−1)kz2k+1t2k+1+ρN(z,t),ρN(z,t)=(−1)N∫0tz2N−1(z2+τ2)τ2Ndτが成り立ち、
∣ρN(z,t)∣≤(2N+1)∣z∣2N+1cosθt2N+1である。N=0のとき和は空である。
証明.z=reiθとすると
∣z2+τ2∣2=(r2+τ2)2−4r2τ2sin2θ≥(r2+τ2)2cos2θ.Rez>0よりcosθ>0であるから∣z2+τ2∣≥r2cosθである。等比数列の有限和をv=τ2/z2へ適用すると
z2+τ2z=k=0∑N−1z2k+1(−1)kτ2k+z2N−1(z2+τ2)(−1)Nτ2N.§E5.21 補題 3.3の積分表示に代入し、0からtまで積分すると最初の二式を得る。分母の下からの評価を剰余積分へ適用すると最後の不等式を得る。▨
4 階乗への適用
系 4.1. 正の整数nについて
n!=2πn(en)neθn,0<θn≤12n1が成り立つ。とくに
2πn(n/e)nn!−1≤12ne1/12である。
証明.§E5.21 定理 3.9を正の実数nへ適用すると
lnΓ(n)=(n−21)lnn−n+21ln(2π)+J(n)である。§E5.21 補題 3.3により0<arctan(t/n)≤t/n(t>0)であるから、§E5.22 補題 3.3をk=0として用いると
0<J(n)≤n2∫0∞e2πt−1tdt=n2⋅4∣B2∣=12n1.最後の等式ではB2=61を用いた。この値は§E5.22 定義 1.1の母関数で二次の係数を比較すると得られる。
§E5.21 命題 1.6によりn!=nΓ(n)である。上の等式の指数を取り、nを掛けると、θn=J(n)として第一の表示を得る。さらに§E5.20 補題 1.1により
∣eθn−1∣≤θneθn≤12ne1/12であり、第二の不等式が従う。▨
5 演習