§E5.5Cauchy の積分定理

最終更新

正則関数を閉曲線に沿って積分すると値が消えるという事実は、複素関数の局所的な性質と曲線が囲む領域の形を結び付ける。単純な円周の内側では、正則関数が原始関数をもつ場合にこの現象を直接確かめることができる。しかし、複素平面から一点を除いた領域でf(z)=1/zf(z)=1/zを単位円周に沿って積分すると、値は2πi2\pi iになる。被積分関数の正則性だけでは、閉曲線積分の消滅を保証することができない。

Green の定理は実部と虚部の一階連続微分可能性を要求するが、その性質をこの段階の一般の正則関数に仮定することはできない。また、自己交差する閉曲線や、向きの異なる閉曲線を整数係数で組み合わせたサイクルは、一つの領域の境界として記述することができない。

この二つの制約を同時に扱うため、曲線が点の周囲を正味で何周するかを表す回転数を導入し、開集合の外側で回転数がすべて00になるサイクルを零ホモローグと呼ぶ。この条件は、正則性だけでは捉えられない曲線の配置を積分の消滅条件へ組み込むための基本的な概念であり、Cauchy–Goursat の一般形を述べる基礎となる。

本記事では、回転数と零ホモローグ性にもとづく複素積分の消滅条件を解説する。

1 二つの設定を比較する

比較に先立って、一般形の仮定を記述する二つの概念を定める。

定義 1.1.γ\gammaを区分的に一階連続微分可能な閉曲線、p∈C∖∣γ∣p\in\mathbb C\setminus|\gamma|とする。

n(γ,p)=12πi∮γdzz−pn(\gamma,p)=\frac{1}{2\pi i}\oint_{\gamma}\frac{dz}{z-p}

を、γ\gammaのppに関する回転数 (winding number) という。サイクルΓ=∑jnjγj\Gamma=\sum_{j}n_{j}\gamma_{j}とp∉∣Γ∣p\notin|\Gamma|に対しては、§E5.4 定義 3.1の定義により

n(Γ,p)=∑jnj n(γj,p)n(\Gamma,p)=\sum_{j}n_{j}\,n(\gamma_{j},p)

と定める。関数z↦1/(z−p)z\mapsto1/(z-p)は§E5.2 系 1.3と§E5.2 命題 1.2によりC∖{p}\mathbb C\setminus\{p\}上で正則であるため、これらの積分は定義される。

定義 1.2.U⊆CU\subseteq\mathbb Cを開集合、Γ\Gammaを∣Γ∣⊆U|\Gamma|\subseteq Uを満たすサイクルとする。UUの外にあるすべての点ppについて

n(Γ,p)=0n(\Gamma,p)=0

が成り立つとき、Γ\Gammaは UUの内部で零ホモローグ (null-homologous inUU) であるという。

次の図は、二つの設定で許される境界の形を比較する。

例 1.3 (図の右側のサイクル). 図の右側の自己交差する閉曲線をγ1\gamma_{1}、反時計回りの円周をγ2\gamma_{2}とし、Γ=γ1+γ2\Gamma=\gamma_{1}+\gamma_{2}とおく。C∖∣Γ∣\mathbb C\setminus|\Gamma|は四つの成分に分かれる。回転数は、左側の弧の内部で11、右側の弧の内部かつ円周の外部で−1-1、円周の内部で−1+1=0-1+1=0、非有界成分で00である。U=C∖{p}U=\mathbb C\setminus\{p\}と取ると、UUの外の唯一の点ppについてn(Γ,p)=0n(\Gamma,p)=0である。したがって定義 1.2により、Γ\GammaはUUの内部で零ホモローグである。

一方、Γ\Gammaの係数と向きは場所によって異なるので、この配置を一つの有界領域の正向きの境界として表すことはできない。したがって命題 1.4の形の主張は直接には適用できない。

二つの設定の違いを五つの観点で対応させる。

観点 左(Green の定理) 右(Cauchy–Goursat の一般形)
境界の形 有限個の互いに交わらない区分的に一階連続微分可能な正則単純閉曲線 有限個の区分的に一階連続微分可能な閉曲線の整数係数線形結合。自己交差と重複走行を許す
向き 外周は反時計回り、各内周は時計回り。領域はつねに進行方向の左側にある 向きは係数の符号が担う。領域の片側性は要求しない
関数に要求する正則性 実部と虚部が、領域を含む開集合の上で一階連続微分可能である 開集合の上で複素微分可能であればよい。導関数の連続性を仮定しない
証明方法 Green の定理と Cauchy–Riemann 方程式から、二重積分の被積分関数が00になることを計算する Goursat の三角形定理と、有限個の長方形への分割による
領域の外での回転数 定義域の外の点に関する回転数は00である。この結論は境界が一つの有界領域を囲むことから従う 開集合の外の各点に関する回転数が00であることを、仮定として課す

左の設定における計算を先に示す。

命題 1.4.Ω⊆C\Omega\subseteq\mathbb Cを有界な領域とし、D=Ω‾D=\overline\Omegaが§E4.22 定義 1.2の意味で区分的に一階連続微分可能な正則領域であると仮定する。すなわち、∂D\partial Dは有限個の互いに交わらない区分的に一階連続微分可能な正則単純閉曲線からなり、補集合は一つの非有界成分と有限個の穴に分かれ、境界は局所的な片側性を満たす。外周を反時計回り、各穴の境界を時計回りに向きづけたものを∂D\partial Dと書く。f=u+ivf=u+ivがDDを含む開集合の上で正則であり、uuとvvがその開集合の上で一階連続微分可能であると仮定する。このとき

∮∂Df(z) dz=0\oint_{\partial D}f(z)\,dz=0

が成り立つ。

証明.∂D\partial Dを構成する各曲線をγ(t)=ξ(t)+iη(t)\gamma(t)=\xi(t)+i\eta(t)(a≤t≤ba\le t\le b)と表すと、§E5.4 定義 2.2により

∫γf(z) dz=∫ab(u+iv)(ξ′+iη′) dt=∫ab(uξ′−vη′)dt+i∫ab(vξ′+uη′)dt\int_{\gamma}f(z)\,dz=\int_{a}^{b}\bigl(u+iv\bigr)\bigl(\xi'+i\eta'\bigr)\,dt =\int_{a}^{b}\bigl(u\xi'-v\eta'\bigr)dt+i\int_{a}^{b}\bigl(v\xi'+u\eta'\bigr)dt

である。ここでu,vu,vの引数は(ξ(t),η(t))(\xi(t),\eta(t))である。二つの実積分は、実ベクトル場(u,−v)(u,-v)と(v,u)(v,u)のγ\gammaに沿う線積分∫γu dx−v dy\int_{\gamma}u\,dx-v\,dyと∫γv dx+u dy\int_{\gamma}v\,dx+u\,dyの定義そのものである。各曲線について加えて

∮∂Df(z) dz=∮∂D(u dx−v dy)+i∮∂D(v dx+u dy)\oint_{\partial D}f(z)\,dz =\oint_{\partial D}(u\,dx-v\,dy)+i\oint_{\partial D}(v\,dx+u\,dy)

を得る。u,vu,vはDDを含む開集合の上で一階連続微分可能であるから、二つの線積分のそれぞれへ Green の定理(§E4.22 定理 4.1)を適用することができる。第一の積分ではP=uP=u、Q=−vQ=-vとして

∮∂D(u dx−v dy)=∬D(−vx−uy) dx dy,\oint_{\partial D}(u\,dx-v\,dy)=\iint_{D}\bigl(-v_{x}-u_{y}\bigr)\,dx\,dy,

第二の積分ではP=vP=v、Q=uQ=uとして

∮∂D(v dx+u dy)=∬D(ux−vy) dx dy\oint_{\partial D}(v\,dx+u\,dy)=\iint_{D}\bigl(u_{x}-v_{y}\bigr)\,dx\,dy

である。ffは正則であるから、Cauchy–Riemann 方程式(§E5.2 定理 3.1)によりDDの各点でux=vyu_{x}=v_{y}かつuy=−vxu_{y}=-v_{x}が成り立つ。したがって二つの被積分関数はいずれも恒等的に00であり、両方の二重積分は00である。▨

注意 1.5 (この証明が要求している仮定). Green の定理を適用するには、u,vu,vの一階偏導関数が連続でなければならない。この条件は正則性だけからこの時点で引用することができない。また、境界は一つの有界領域を正向きに囲み、局所的な片側性を満たさなければならない。したがって自己交差や整数係数を許す一般のサイクルは対象にならない。 Cauchy–Goursat の一般形は、Goursat の三角形定理を出発点として両方の制限を外す。

2 曲線の向きとホモトピー

三角形の正の向きと、後に単連結領域へ適用するホモトピーの規約を定める。

定義 2.1. 非退化な閉三角形TTの境界∂T\partial Tを、内部が進行方向の左側に来る向きで一周する区分的に一階連続微分可能な閉曲線とする。この向きを正の向き (positive orientation) という。

U⊆CU\subseteq\mathbb Cを開集合とする。連続写像H:[0,1]2→UH:[0,1]^{2}\to Uが区分的に一階連続微分可能 (piecewiseC1C^1) であるとは、[0,1]2[0,1]^2の有限三角形分割が存在して、各閉三角形へのHHの制限の二つの偏導関数が内部で存在し、その閉三角形の上の連続関数へ延長されることをいう。この三角形分割を HHに適合する分割 (triangulation adapted toHH) という。区分的アフィン写像は、この意味で区分的に一階連続微分可能である。

C0,C1:[0,1]→UC_{0},C_{1}:[0,1]\to Uを区分的に一階連続微分可能な閉曲線とする。上の意味で区分的に一階連続微分可能な写像H:[0,1]2→UH:[0,1]^{2}\to Uが

H(0,t)=C0(t),H(1,t)=C1(t),H(s,0)=H(s,1)H(0,t)=C_{0}(t),\qquad H(1,t)=C_{1}(t),\qquad H(s,0)=H(s,1)

を満たすとき、HHを C0C_{0}とC1C_{1}の間の区分的に一階連続微分可能なホモトピー (piecewiseC1C^1homotopy betweenC0C_0andC1C_1) という。定数閉曲線との間にこのようなホモトピーをもつ閉曲線を、UUの中で縮めることができる (null-homotopic inUU) という。

領域DDの中の任意の区分的に一階連続微分可能な閉曲線をDDの中で縮めることができるとき、DDは区分的に一階連続微分可能な閉曲線について単連結 (simply connected with respect to piecewiseC1C^1closed curves) であるという。

注意 2.2 (単連結性の一般論). 本単元は、単連結性を仮定して得られる積分についての結論を扱う。ホモトピー同値、基本群、被覆空間、およびホモトピー類による位相空間の分類を含む位相幾何の一般論は、後続の単元が扱う。

補題 2.3. 領域D⊆CD\subseteq\mathbb Cについて、次の二条件は同値である。

  1. §E5.2 定義 4.6の意味で、DD内のすべての連続な閉曲線を連続なホモトピーによって一点へ縮めることができる。
  2. DD内のすべての区分的に一階連続微分可能な閉曲線を、定義 2.1の意味のホモトピーによって一点へ縮めることができる。

したがって本記事では、いずれの条件も単連結性と呼ぶ。

証明. はじめに、連続な閉曲線C:[0,1]→DC:[0,1]\to Dを折れ線で近似する。[0,1][0,1]は§E2.9 定理 4.3によりコンパクトなので、§E2.19 定理 4.2により曲線像∣C∣|C|もコンパクトである。その各点を中心にDDに含まれる開円板を取り、§E2.19 命題 2.6により有限個B1,…,BmB_1,\ldots,B_mで∣C∣|C|を覆う。C−1(Bj)C^{-1}(B_j)は[0,1][0,1]の有限開被覆である。[0,1][0,1]は§E2.9 定理 4.3と§E2.9 定理 3.1により点列コンパクトなので、この被覆へ§E2.9 補題 2.3を適用する。得られた Lebesgue 数より細かい分割0=t0<⋯<tN=10=t_0<\cdots<t_N=1を取る。このとき各[tj−1,tj][t_{j-1},t_j]はある一つのC−1(Bk)C^{-1}(B_k)に含まれる。P(tj)=C(tj)P(t_j)=C(t_j)とし、各小区間でPPをアフィンに定める。C(0)=C(1)C(0)=C(1)なのでPPも閉曲線である。各小区間でC(t)C(t)とP(t)P(t)は同じ凸円板BkB_kに含まれるから

S(r,t)=(1−r)C(t)+rP(t)(0≤r≤1)(1)S(r,t)=(1-r)C(t)+rP(t)\qquad(0\le r\le1) \tag{1}

はDD内の連続なホモトピーであり、S(r,0)=S(r,1)S(r,0)=S(r,1)を満たす。さらにCCが区分的に一階連続微分可能な場合には、その分点もtjt_jに加えることにより、SSは各小長方形で一階連続微分可能、したがって各小長方形を二分した三角形分割に関して区分的に一階連続微分可能である。

(2)を仮定する。任意の連続な閉曲線CCに対して上の折れ線PPを取る。PPは区分的に一階連続微分可能なので、(2)によりDD内で一点へ縮めることができる。式 (1) のCCからPPへの連続なホモトピーとPPの縮約を、rrの前半と後半へ線形に再パラメータ化してつなぐと、CCの連続な縮約を得る。ゆえに(1)が成り立つ。

逆に(1)を仮定し、区分的に一階連続微分可能な閉曲線CCを取る。(1)により、連続写像H:[0,1]2→DH:[0,1]^2\to Dと点q∈Dq\in Dが存在して

H(0,t)=C(t),H(1,t)=q,H(s,0)=H(s,1)(2)H(0,t)=C(t),\qquad H(1,t)=q,\qquad H(s,0)=H(s,1) \tag{2}

を満たす。H([0,1]2)H([0,1]^2)は§E2.19 定理 4.2によりコンパクトである。その各点を中心にDDに含まれる凸な開円板を取り、§E2.19 命題 2.6により有限部分被覆B1,…,BlB_1,\ldots,B_lを選ぶ。H−1(B1),…,H−1(Bl)H^{-1}(B_1),\ldots,H^{-1}(B_l)へ Lebesgue 数補題を適用する。ここでも[0,1]2[0,1]^2は§E2.9 定理 4.3と§E2.9 定理 3.1により点列コンパクトである。

ss軸とtt軸を Lebesgue 数より十分細かく等分し、tt軸の分点にはCCの一階連続微分可能性に適合する分点も加える。各小長方形を同じ向きの対角線で二分して有限三角形分割T\mathcal Tを作る。各三角形の直径を Lebesgue 数未満に取ったので、各三角形はある一つのH−1(Bk)H^{-1}(B_k)に含まれる。t=0t=0とt=1t=1の分点は同じss座標をもち、三角形分割が両辺で同じ分点を誘導するので、式 (2) の周期境界と整合している。

T\mathcal Tの各頂点vvでK(v)=H(v)K(v)=H(v)と定め、各三角形上で頂点値をアフィンに補間する。共有辺上では両側のアフィン補間が同じ二頂点値を結ぶので、KKは[0,1]2[0,1]^2上で連続である。一つの三角形の三頂点像は共通の凸円板BkB_kに含まれ、その凸包もBkB_kに含まれる。したがってK([0,1]2)⊆DK([0,1]^2)\subseteq Dである。KKは各三角形上でアフィンなので区分的に一階連続微分可能である。式 (2) と境界分割の整合性から

K(s,0)=K(s,1),K(1,t)=qK(s,0)=K(s,1),\qquad K(1,t)=q

が成り立つ。またK(0,⋅)K(0,\cdot)はC(tj)C(t_j)を順に結ぶ折れ線PPである。

底辺の各区間[tj−1,tj][t_{j-1},t_j]は一つの三角形の辺であり、その三角形はあるH−1(Bk)H^{-1}(B_k)に含まれる。したがってC(t)=H(0,t)C(t)=H(0,t)とP(t)=K(0,t)P(t)=K(0,t)は同じ凸円板BkB_kに含まれる。式 (1) で定めたCCからPPへの帯状ホモトピーは、CCの分点を含む分割に関して区分的に一階連続微分可能である。この帯状ホモトピーとKKを変形変数の前半と後半へ線形に再パラメータ化してつなぐと、境界値PPで一致し、周期条件を保つ区分的に一階連続微分可能なホモトピーを得る。このホモトピーはCCをqqへ縮めるので、(2)が成り立つ。▨

3 Goursat の三角形定理

一般形の局所的な核は、三角形の境界に対する積分の消滅である。ここでは導関数の連続性を仮定しない。

定理 3.1 (Goursat の三角形定理).TTを非退化な閉三角形とし、ffがTTを含む開集合の上で正則であるとする。このとき

∮∂Tf(z) dz=0\oint_{\partial T}f(z)\,dz=0

が成り立つ。

証明.I=∮∂Tf(z) dzI=\oint_{\partial T}f(z)\,dz、M=∣I∣M=|I|とおく。TTの三辺の中点を結ぶと四個の閉三角形に分かれる。各境界を正向きに取り、四個の境界積分を加えると、内部に現れる三本の辺はそれぞれ二回、互いに逆向きに現れるので、§E5.4 命題 2.5により相殺する。したがってIIは四個の積分の和であり、少なくとも一つの三角形T1T_{1}について

∣∮∂T1f(z) dz∣≥M4\left|\oint_{\partial T_{1}}f(z)\,dz\right|\ge\frac{M}{4}

が成り立つ。同じ操作を繰り返して、T=T0⊃T1⊃T2⊃⋯T=T_{0}\supset T_{1}\supset T_{2}\supset\cdotsを得る。TTの直径をdd、周長をLLとすると、TnT_{n}の直径はd/2nd/2^{n}、周長はL/2nL/2^{n}であり、

∣∮∂Tnf(z) dz∣≥M4n(1)\left|\oint_{\partial T_{n}}f(z)\,dz\right|\ge\frac{M}{4^{n}} \tag{1}

が成り立つ。

各TnT_{n}からznz_nを選ぶ。m≥nm\ge nならばzm,zn∈Tnz_{m},z_{n}\in T_{n}であるから∣zm−zn∣≤d/2n|z_{m}-z_{n}|\le d/2^{n}であり、(zn)(z_{n})は Cauchy 列である。実部と虚部がそれぞれ実数の Cauchy 列であるから、実数の完備性(§D1.10 定理 1.1)により(zn)(z_{n})はあるz0z_{0}へ収束する。各TnT_{n}は閉集合であり、番号がnn以上のzmz_{m}をすべて含むのでz0∈Tnz_{0}\in T_{n}が全てのnnについて成り立つ。

ffはz0z_{0}で複素微分可能である。したがって任意のε>0\varepsilon>0に対してρ>0\rho>0が存在して、∣z−z0∣<ρ|z-z_{0}|<\rhoを満たすzzについて

f(z)=f(z0)+f′(z0)(z−z0)+η(z)(z−z0),∣η(z)∣≤ε(2)f(z)=f(z_{0})+f'(z_{0})(z-z_{0})+\eta(z)(z-z_{0}),\qquad|\eta(z)|\le\varepsilon \tag{2}

と書くことができる。ここでη(z0)=0\eta(z_{0})=0とおく。d/2n<ρd/2^{n}<\rhoとなるnnを取るとTn⊆D(z0,ρ)T_{n}\subseteq D(z_{0},\rho)である。式 (2) の右辺の最初の二項はα+βz\alpha+\beta z(α=f(z0)−f′(z0)z0\alpha=f(z_{0})-f'(z_{0})z_{0}、β=f′(z0)\beta=f'(z_{0}))の形の一次多項式である。§E5.2 系 1.3と§E5.2 命題 1.2により(αz+βz2/2)′=α+βz\bigl(\alpha z+\beta z^{2}/2\bigr)'=\alpha+\beta zであるから、この一次多項式はC\mathbb C全体で原始関数をもつ。ゆえに§E5.4 定理 4.2により∂Tn\partial T_{n}に沿う積分は00である。残る項に ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)を適用すると、∂Tn\partial T_{n}の上で∣η(z)(z−z0)∣≤ε d/2n|\eta(z)(z-z_{0})|\le\varepsilon\,d/2^{n}であり、∂Tn\partial T_{n}の長さはL/2nL/2^{n}であるから

∣∮∂Tnf(z) dz∣=∣∮∂Tnη(z)(z−z0) dz∣≤ε⋅d2n⋅L2n=ε dL4n\left|\oint_{\partial T_{n}}f(z)\,dz\right| =\left|\oint_{\partial T_{n}}\eta(z)(z-z_{0})\,dz\right| \le\varepsilon\cdot\frac{d}{2^{n}}\cdot\frac{L}{2^{n}}=\frac{\varepsilon\,dL}{4^{n}}

である。式 (1) と合わせてM≤ε dLM\le\varepsilon\,dLを得る。ε>0\varepsilon>0は任意であるからM=0M=0、すなわちI=0I=0である。▨

この証明で微分を用いた箇所は、式 (2) の一点z0z_0における一次近似だけである。f′f'の連続性は仮定していない。

系 3.2.RRを辺が座標軸に平行な閉長方形とし、ffがRRを含む開集合の上で正則であるとする。∂R\partial Rを正の向き、すなわち内部が進行方向の左側に来る向きに取ると

∮∂Rf(z) dz=0\oint_{\partial R}f(z)\,dz=0

が成り立つ。

証明.RRを一本の対角線によって有限個、すなわち二個の閉三角形へ分ける。二つの正向きの境界積分を加えると、対角線は二回、互いに逆向きに現れるので§E5.4 命題 2.5により相殺し、和は∮∂Rf(z) dz\oint_{\partial R}f(z)\,dzに等しい。各三角形へ定理 3.1を適用すると、二つの積分はどちらも00である。▨

4 星形領域における原始関数

定理 4.1. 領域DDが点z0z_{0}に関して星形である、すなわち任意のz∈Dz\in Dについて線分[z0,z][z_{0},z]がDDに含まれると仮定する。ffがDDの上で正則ならば、

F(z)=∫[z0,z]f(w) dwF(z)=\int_{[z_{0},z]}f(w)\,dw

はDDの上で正則であり、F′=fF'=fを満たす。

証明.z,w∈Dz,w\in Dについて線分[z,w][z,w]がDDに含まれる場合を考える。q∈[z,w]q\in[z,w]とs∈[0,1]s\in[0,1]に対して(1−s)z0+sq∈D(1-s)z_{0}+sq\in Dであるから、三点z0,z,wz_{0},z,wを頂点とする閉三角形はDDに含まれる。定理 3.1により

∫[z0,z]f+∫[z,w]f+∫[w,z0]f=0(3)\int_{[z_{0},z]}f+\int_{[z,w]}f+\int_{[w,z_{0}]}f=0 \tag{3}

である。三角形が退化する場合は、三点が一直線上にあるので、線分の分割と向きの反転(§E5.4 命題 2.5と§E5.4 命題 2.6)から直接に (3) が従う。

z∈Dz\in Dを固定する。DDは開集合であるからD(z,ρ)⊆DD(z,\rho)\subseteq Dを満たすρ>0\rho>0が存在する。∣h∣<ρ|h|<\rhoならば[z,z+h]⊆D[z,z+h]\subseteq Dであるから、(3) をw=z+hw=z+hに適用して

F(z+h)−F(z)=∫[z,z+h]f(w) dwF(z+h)-F(z)=\int_{[z,z+h]}f(w)\,dw

を得る。ffはzzで連続であるから、ε>0\varepsilon>0に対して、∣h∣|h|が十分小さければ線分[z,z+h][z,z+h]の上で∣f(w)−f(z)∣≤ε|f(w)-f(z)|\le\varepsilonが成り立つ。定数関数f(z)f(z)の線分に沿う積分はf(z)hf(z)hであるから、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により

∣F(z+h)−F(z)−f(z)h∣=∣∫[z,z+h](f(w)−f(z))dw∣≤ε∣h∣|F(z+h)-F(z)-f(z)h|=\left|\int_{[z,z+h]}\bigl(f(w)-f(z)\bigr)dw\right|\le\varepsilon|h|

である。両辺を∣h∣|h|で割ってh→0h\to0とするとF′(z)=f(z)F'(z)=f(z)を得る。▨

5 回転数の基本性質

回転数は、点ppの周囲を曲線が正味で何周するかを積分によって測る。

補題 5.1 (平面開集合の連結成分).V⊆CV\subseteq\mathbb Cを開集合とする。VVの各連結成分はC\mathbb Cの開集合であり、空でないため領域である。

証明.z∈Vz\in Vとし、NNをVVにおけるzzの任意の近傍とする。VVはC\mathbb Cの開集合であるから、z∈D(z,r)⊆Nz\in D(z,r)\subseteq Nを満たすr>0r>0を取ることができる。開円板D(z,r)D(z,r)は星形なので§E5.2 命題 4.5により連結である。したがってVVは§E2.43 定義 8.1の意味で局所連結であり、§E2.43 命題 8.2により各連結成分はVVの開集合である。VV自身がC\mathbb Cの開集合なので、各連結成分はC\mathbb Cの開集合でもある。連結成分は定義により空でなく連結であるから、領域である。▨

定理 5.2.γ:[a,b]→C\gamma:[a,b]\to\mathbb Cを区分的に一階連続微分可能な閉曲線、p∉∣γ∣p\notin|\gamma|とする。このときn(γ,p)n(\gamma,p)は整数である。さらに、

φ(t)=∫atγ′(s)γ(s)−p ds\varphi(t)=\int_{a}^{t}\frac{\gamma'(s)}{\gamma(s)-p}\,ds

とおくと、φ\varphiは連続でφ(a)=0\varphi(a)=0、eφ(t)=γ(t)−pγ(a)−pe^{\varphi(t)}=\dfrac{\gamma(t)-p}{\gamma(a)-p}が[a,b][a,b]で成り立ち、n(γ,p)=φ(b)/(2πi)n(\gamma,p)=\varphi(b)/(2\pi i)である。

証明.γ′/(γ−p)\gamma'/(\gamma-p)は§E5.4 定義 1.1の意味で区分的に連続である。γ\gammaが一階連続微分可能である各小区間では、実部と虚部へ§D1.19 定理 1.1を適用してφ′(t)=γ′(t)/(γ(t)−p)\varphi'(t)=\gamma'(t)/(\gamma(t)-p)が成り立つ。φ\varphiが[a,b][a,b]の上で連続であることは、§E5.4 命題 1.2と、区分的に連続な関数の積分が上端について連続であること(各小区間で§D1.19 定理 1.1を用い、分点で値がつながることによる)から従う。

ψ(t)=e−φ(t)(γ(t)−p)\psi(t)=e^{-\varphi(t)}\bigl(\gamma(t)-p\bigr)

とおくと、その小区間の上で

ψ′(t)=e−φ(t)(−φ′(t)(γ(t)−p)+γ′(t))=0\psi'(t)=e^{-\varphi(t)}\Bigl(-\varphi'(t)\bigl(\gamma(t)-p\bigr)+\gamma'(t)\Bigr)=0

である。ここで§E5.3 命題 1.8と§E5.4 補題 4.1を用いた。ψ\psiは[a,b][a,b]の上で連続であり、各小区間の内部で導関数が00である。ψ\psiの実部と虚部それぞれへ§D1.14 系 4.1を各小区間の内部で適用すると、ψ\psiは各小区間の内部で定数であり、連続性から閉じた小区間でも定数である。分点で値がつながるのでψ\psiは[a,b][a,b]の上で定数である。ψ(a)=γ(a)−p\psi(a)=\gamma(a)-pであるから

eφ(t)=γ(t)−pγ(a)−pe^{\varphi(t)}=\frac{\gamma(t)-p}{\gamma(a)-p}

を得る。γ\gammaは閉曲線であるからγ(b)=γ(a)\gamma(b)=\gamma(a)であり、eφ(b)=1e^{\varphi(b)}=1である。§E5.3 命題 1.7によりφ(b)=2πik\varphi(b)=2\pi ikを満たす整数kkが存在する。n(γ,p)=φ(b)/(2πi)=kn(\gamma,p)=\varphi(b)/(2\pi i)=kである。▨

系 5.3.定理 5.2の記号のもとで、θ(t)=Im⁡φ(t)+θ0\theta(t)=\operatorname{Im}\varphi(t)+\theta_{0}(θ0\theta_{0}はγ(a)−p=∣γ(a)−p∣eiθ0\gamma(a)-p=|\gamma(a)-p|e^{i\theta_{0}}を満たす実数)とおくと、θ\thetaは連続で

γ(t)−p=∣γ(t)−p∣ eiθ(t)\gamma(t)-p=|\gamma(t)-p|\,e^{i\theta(t)}

を満たし、n(γ,p)=θ(b)−θ(a)2πn(\gamma,p)=\dfrac{\theta(b)-\theta(a)}{2\pi}が成り立つ。γ(t)−p\gamma(t)-pの連続な偏角は実数の定数を加える違いを除いて一意であるから、この表示はθ\thetaの取り方によらない。

証明.定理 5.2よりγ(t)−p=(γ(a)−p)eφ(t)\gamma(t)-p=(\gamma(a)-p)e^{\varphi(t)}である。φ(t)=α(t)+iβ(t)\varphi(t)=\alpha(t)+i\beta(t)と書くと

γ(t)−p=∣γ(a)−p∣ eα(t) ei(θ0+β(t))\gamma(t)-p=|\gamma(a)-p|\,e^{\alpha(t)}\,e^{i(\theta_{0}+\beta(t))}

であり、∣γ(t)−p∣=∣γ(a)−p∣eα(t)|\gamma(t)-p|=|\gamma(a)-p|e^{\alpha(t)}(§E5.3 命題 1.7)であるから主張の表示を得る。θ(b)−θ(a)=β(b)=Im⁡φ(b)\theta(b)-\theta(a)=\beta(b)=\operatorname{Im}\varphi(b)であり、φ(b)=2πi n(γ,p)\varphi(b)=2\pi i\,n(\gamma,p)は純虚数であるからθ(b)−θ(a)=2π n(γ,p)\theta(b)-\theta(a)=2\pi\,n(\gamma,p)である。

一意性を示す。θ\thetaとθ~\tilde\thetaがともに連続で上の表示を満たすとすると、ei(θ(t)−θ~(t))=1e^{i(\theta(t)-\tilde\theta(t))}=1であるから§E5.3 命題 1.7によりg(t)=(θ(t)−θ~(t))/(2π)g(t)=(\theta(t)-\tilde\theta(t))/(2\pi)は[a,b][a,b]の上の整数値をとる実連続関数である。ggが二つの相異なる値g(t1)≠g(t2)g(t_{1})\ne g(t_{2})をとるとすると、その間には整数でない実数ccがあり、中間値の定理(g−cg-cへ§D1.12 定理 1.1を適用する)によりg(t3)=cg(t_{3})=cを満たすt3t_{3}が存在して、ggが整数値をとることに反する。ゆえにggは定数である。▨

命題 5.4.Γ\Gammaをサイクルとする。p↦n(Γ,p)p\mapsto n(\Gamma,p)はC∖∣Γ∣\mathbb C\setminus|\Gamma|の上で局所的に定数であり、したがってC∖∣Γ∣\mathbb C\setminus|\Gamma|の各連結成分の上で定数である。さらに、C∖∣Γ∣\mathbb C\setminus|\Gamma|の非有界成分の上でn(Γ,p)=0n(\Gamma,p)=0である。

証明.Γ=0\Gamma=0ならば∣Γ∣=∅|\Gamma|=\varnothingであり、回転数は空和として全平面で00であるから、すべての主張は成り立つ。以下ではΓ≠0\Gamma\ne0とする。

∣Γ∣|\Gamma|は有限個のコンパクトな曲線像の和であるからコンパクトである。p0∉∣Γ∣p_{0}\notin|\Gamma|とする。連続関数z↦∣z−p0∣z\mapsto|z-p_0|は§E2.19 定理 4.4により∣Γ∣|\Gamma|上で正の最小値を取るので、2ρ=dist⁡(p0,∣Γ∣)>02\rho=\operatorname{dist}(p_{0},|\Gamma|)>0とおくことができる。∣p−p0∣<ρ|p-p_{0}|<\rhoのとき、∣Γ∣|\Gamma|の上で∣z−p∣≥ρ|z-p|\ge\rhoかつ∣z−p0∣≥2ρ|z-p_{0}|\ge2\rhoであるから

∣1z−p−1z−p0∣=∣p−p0∣∣z−p∣∣z−p0∣≤∣p−p0∣2ρ2\left|\frac{1}{z-p}-\frac{1}{z-p_{0}}\right|=\frac{|p-p_{0}|}{|z-p||z-p_{0}|} \le\frac{|p-p_{0}|}{2\rho^{2}}

である。Γ=∑jnjγj\Gamma=\sum_{j}n_{j}\gamma_{j}の各曲線の長さの和をΛ\Lambda、係数の絶対値の最大をNNとすると、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により

∣n(Γ,p)−n(Γ,p0)∣≤12π⋅NΛ⋅∣p−p0∣2ρ2|n(\Gamma,p)-n(\Gamma,p_{0})|\le\frac{1}{2\pi}\cdot N\Lambda\cdot\frac{|p-p_{0}|}{2\rho^{2}}

である。右辺はp→p0p\to p_{0}で00へ収束するので、∣p−p0∣|p-p_{0}|を十分小さく取れば左辺は11未満である。n(Γ,⋅)n(\Gamma,\cdot)は整数値をとる(定理 5.2と定義の線形性)ので、その近傍で定数である。補題 5.1によりC∖∣Γ∣\mathbb C\setminus|\Gamma|の各連結成分は領域であるから、§E5.1 命題 1.5を各成分へ適用すると、その成分の上で定数である。

非有界成分を考える。∣Γ∣|\Gamma|は有界であるから、∣p∣|p|が十分大きければ∣Γ∣|\Gamma|の上で∣z−p∣≥∣p∣−max⁡z∈∣Γ∣∣z∣|z-p|\ge|p|-\max_{z\in|\Gamma|}|z|は任意に大きくなる。ML 不等式により∣n(Γ,p)∣|n(\Gamma,p)|は∣p∣→∞|p|\to\inftyで00へ収束し、整数値であるから、∣p∣|p|が十分大きいところで00である。非有界成分は連結であり、そのような点を含むので、成分全体で00である。▨

長方形の境界の回転数を計算するために、逆正接についての次の等式を用いる。

補題 5.5.u>0u>0について

arctan⁡u+arctan⁡1u=π2\arctan u+\arctan\frac1u=\frac{\pi}{2}

が成り立つ。また、すべての実数ttについてarctan⁡(−t)=−arctan⁡t\arctan(-t)=-\arctan tが成り立つ。

証明.ϑ=arctan⁡u\vartheta=\arctan uとおくと、u>0u>0とarctan⁡\arctanの値域からϑ∈(0,π/2)\vartheta\in(0,\pi/2)であり、tan⁡ϑ=u\tan\vartheta=uである。したがってπ/2−ϑ∈(0,π/2)\pi/2-\vartheta\in(0,\pi/2)である。加法定理(§D1.24 定理 2.1)とcos⁡(π/2)=0\cos(\pi/2)=0、sin⁡(π/2)=1\sin(\pi/2)=1(§D1.24 補題 4.1と§D1.24 定義 4.2)により

cos⁡(π2−ϑ)=sin⁡ϑ,sin⁡(π2−ϑ)=cos⁡ϑ\cos\Bigl(\frac{\pi}{2}-\vartheta\Bigr)=\sin\vartheta,\qquad \sin\Bigl(\frac{\pi}{2}-\vartheta\Bigr)=\cos\vartheta

である。ϑ∈(0,π/2)\vartheta\in(0,\pi/2)ではsin⁡ϑ>0\sin\vartheta>0かつcos⁡ϑ>0\cos\vartheta>0であるから

tan⁡(π2−ϑ)=cos⁡ϑsin⁡ϑ=1u\tan\Bigl(\frac{\pi}{2}-\vartheta\Bigr)=\frac{\cos\vartheta}{\sin\vartheta}=\frac1u

である。π/2−ϑ\pi/2-\varthetaは(−π/2,π/2)(-\pi/2,\pi/2)に属するので、arctan⁡\arctanがtan⁡\tanの同区間への制限の逆関数であること(§D1.24 定義 4.4)によりarctan⁡(1/u)=π/2−ϑ\arctan(1/u)=\pi/2-\varthetaである。

次に奇関数性を示す。ϑ=arctan⁡t\vartheta=\arctan tとおくとϑ∈(−π/2,π/2)\vartheta\in(-\pi/2,\pi/2)かつtan⁡ϑ=t\tan\vartheta=tである。正弦が奇関数、余弦が偶関数であること(§D1.24 系 2.2)からtan⁡(−ϑ)=−t\tan(-\vartheta)=-tであり、−ϑ∈(−π/2,π/2)-\vartheta\in(-\pi/2,\pi/2)であるからarctan⁡(−t)=−ϑ=−arctan⁡t\arctan(-t)=-\vartheta=-\arctan tである。▨

命題 5.6.

  1. CCを中心aa、半径r>0r>0の反時計回りの円周とすると、∣p−a∣<r|p-a|<rならばn(C,p)=1n(C,p)=1、∣p−a∣>r|p-a|>rならばn(C,p)=0n(C,p)=0である。
  2. RRを辺が座標軸に平行な閉長方形、∂R\partial Rを正の向きの境界とすると、ppがRRの内部にあるならばn(∂R,p)=1n(\partial R,p)=1、p∉Rp\notin Rならばn(∂R,p)=0n(\partial R,p)=0である。

証明. 外側の主張を先に示す。KKを閉円板{∣z−a∣≤r}\{|z-a|\le r\}または閉長方形RRとし、p∉Kp\notin Kとする。KKは有界な閉凸集合であるから、KKを含みppを含まない開半平面VVが存在する。円板の場合はppとaaを結ぶ直線に垂直な直線で分ければよく、長方形の場合はppの座標がRRの座標の範囲を外れる向きに半平面を取ればよい。VVは凸であるから星形であり、w↦1/(w−p)w\mapsto1/(w-p)はVVの上で正則である。定理 4.1により原始関数が存在するので、VVに含まれる閉曲線∂K\partial Kに沿う積分は§E5.4 定理 4.2により00である。

(1)の内側の主張を示す。まずp=ap=aの場合は、§E5.4 例 3.3と同じ計算により

∮Cdzz−a=∫02πireiθreiθ dθ=2πi\oint_{C}\frac{dz}{z-a}=\int_{0}^{2\pi}\frac{ire^{i\theta}}{re^{i\theta}}\,d\theta=2\pi i

であるからn(C,a)=1n(C,a)=1である。開円板{∣z−a∣<r}\{|z-a|<r\}は連結であり∣C∣|C|と交わらないから、命題 5.4によりn(C,⋅)n(C,\cdot)はその上で定数11である。

(2)の内側の主張を示す。R=[x1,x2]×[y1,y2]R=[x_{1},x_{2}]\times[y_{1},y_{2}]とし、ppを原点へ平行移動してx1<0<x2x_{1}<0<x_{2}、y1<0<y2y_{1}<0<y_{2}、p=0p=0としてよい。∂R\partial Rを、角(x2,y1)(x_{2},y_{1})から出発して右辺を上へ、上辺を左へ、左辺を下へ、下辺を右へたどる向きで一周する。系 5.3により、n(∂R,0)n(\partial R,0)はzzの連続な偏角の総変化を2π2\piで割ったものである。

各辺を含む半平面上で、主値の偏角(§E5.3 定義 2.7)を回転して次の偏角を取る。

辺 連続な偏角 始点での値 終点での値
右辺 Arg⁡w\operatorname{Arg}w arctan⁡(y1/x2)\arctan(y_1/x_2) arctan⁡(y2/x2)\arctan(y_2/x_2)
上辺 Arg⁡(−iw)+π/2\operatorname{Arg}(-iw)+\pi/2 arctan⁡(y2/x2)\arctan(y_2/x_2) π−arctan⁡(y2/(−x1))\pi-\arctan(y_2/(-x_1))
左辺 Arg⁡(−w)+π\operatorname{Arg}(-w)+\pi π−arctan⁡(y2/(−x1))\pi-\arctan(y_2/(-x_1)) π+arctan⁡(y1/x1)\pi+\arctan(y_1/x_1)
下辺 Arg⁡(iw)+3π/2\operatorname{Arg}(iw)+3\pi/2 π+arctan⁡(y1/x1)\pi+\arctan(y_1/x_1) 2π+arctan⁡(y1/x2)2\pi+\arctan(y_1/x_2)

§E5.3 定理 1.4により、各表示はeiθ=w/∣w∣e^{i\theta}=w/|w|を満たす。§E5.3 命題 2.10の証明にある右半平面での逆正接表示を各回転へ適用し、補題 5.5を各頂点の正の座標比へ用いると、表の値を得る。隣接する二辺の値は各頂点で一致するので、四つの偏角は∂R\partial R上の一つの連続な偏角になる。一周後の値は始点より2π2\piだけ大きい。連続な偏角の総変化は

(2π+arctan⁡y1x2)−arctan⁡y1x2=2π\Bigl(2\pi+\arctan\frac{y_{1}}{x_{2}}\Bigr)-\arctan\frac{y_{1}}{x_{2}}=2\pi

であり、n(∂R,0)=1n(\partial R,0)=1である。▨

6 Cauchy–Goursat の一般形

補題 6.1.U⊆CU\subseteq\mathbb Cを開集合、Γ\Gammaを∣Γ∣⊆U|\Gamma|\subseteq Uを満たすサイクルとする。このとき、辺が座標軸に平行な線分だけからなるサイクルσ\sigmaで∣σ∣⊆U|\sigma|\subseteq Uを満たすものが存在し、UUの上で正則なすべての関数ggについて

∫Γg(z) dz=∫σg(z) dz\int_{\Gamma}g(z)\,dz=\int_{\sigma}g(z)\,dz

が成り立つ。とくにp∉Up\notin Uについてn(Γ,p)=n(σ,p)n(\Gamma,p)=n(\sigma,p)である。

証明.Γ=0\Gamma=0ならばσ=0\sigma=0と取れば、台の包含、すべての正則関数に対する積分の等式、および回転数の等式は空和の定義から成り立つ。以下ではΓ≠0\Gamma\ne0とする。

Γ=∑jnjγj\Gamma=\sum_{j}n_{j}\gamma_{j}と書く。各定義区間は§E2.9 定理 4.3によりコンパクトなので、§E2.19 定理 4.2により各∣γj∣|\gamma_j|はコンパクトである。有限和∣Γ∣=⋃j∣γj∣|\Gamma|=\bigcup_j|\gamma_j|もコンパクトであり、§E2.9 系 4.1により有界な閉集合である。

U=CU=\mathbb Cのときはδ=1\delta=1とし、そうでないときはδ=dist⁡(∣Γ∣,C∖U)\delta=\operatorname{dist}(|\Gamma|,\mathbb C\setminus U)とおく。後者でδ>0\delta>0であることを示す。各w∈∣Γ∣w\in|\Gamma|についてw∈Uw\in UでありUUは開集合であるから、B(w,2rw)⊆UB(w,2r_{w})\subseteq Uを満たすrw>0r_{w}>0が存在する。開球B(w,rw)B(w,r_{w})の全体は∣Γ∣|\Gamma|を覆うから、コンパクト性と§E2.19 命題 2.6により有限個B(w1,rw1),…,B(wM,rwM)B(w_{1},r_{w_{1}}),\ldots,B(w_{M},r_{w_{M}})で覆うことができる。δ0=min⁡krwk>0\delta_{0}=\min_{k}r_{w_{k}}>0とおくと、ζ∈∣Γ∣\zeta\in|\Gamma|に対してζ∈B(wk,rwk)\zeta\in B(w_{k},r_{w_{k}})となるkkを取ればB(ζ,δ0)⊆B(wk,2rwk)⊆UB(\zeta,\delta_{0})\subseteq B(w_{k},2r_{w_{k}})\subseteq Uである。ゆえに∣Γ∣|\Gamma|の各点からC∖U\mathbb C\setminus Uまでの距離はδ0\delta_{0}以上であり、δ≥δ0>0\delta\ge\delta_{0}>0である。

Γ\Gammaを構成する閉曲線γ:[a,b]→U\gamma:[a,b]\to Uを一つ取る。γ\gammaの実部と虚部へ§D1.15 定理 3.1を適用すると、γ\gammaは一様連続である。したがって分割a=t0<t1<⋯<tN=ba=t_{0}<t_{1}<\cdots<t_{N}=bを、各jjについて

t∈[tj−1,tj] ⟹ ∣γ(t)−γ(tj−1)∣<δ4t\in[t_{j-1},t_{j}]\ \Longrightarrow\ |\gamma(t)-\gamma(t_{j-1})|<\frac{\delta}{4}

となるように取ることができる。cj=γ(tj−1)c_{j}=\gamma(t_{j-1})とおくと、D(cj,δ)⊆UD(c_{j},\delta)\subseteq Uであり、弧γ∣[tj−1,tj]\gamma|_{[t_{j-1},t_{j}]}はD(cj,δ/4)D(c_{j},\delta/4)に含まれる。

cjc_{j}からγ(tj)\gamma(t_{j})へ実軸方向、次に虚軸方向へ進む二線分の折れ線LjL_{j}を取る。二点の実部または虚部が等しく、対応する線分の長さが00になる場合には、その線分をLjL_jから省く。両方の線分の長さが00になる場合には、LjL_jを点cjc_jにおける定値曲線とみなす。折れ点はRe⁡γ(tj)+iIm⁡cj\operatorname{Re}\gamma(t_{j})+i\operatorname{Im}c_{j}である。LjL_{j}の各点は、実部がRe⁡cj\operatorname{Re}c_{j}とRe⁡γ(tj)\operatorname{Re}\gamma(t_{j})の間、虚部がIm⁡cj\operatorname{Im}c_{j}とIm⁡γ(tj)\operatorname{Im}\gamma(t_{j})の間にある。∣γ(tj)−cj∣<δ/4|\gamma(t_{j})-c_{j}|<\delta/4より、実部と虚部の差はどちらも絶対値がδ/4\delta/4未満であるから、LjL_{j}の各点wwについて

∣w−cj∣≤(δ/4)2+(δ/4)2<δ2|w-c_{j}|\le\sqrt{(\delta/4)^{2}+(\delta/4)^{2}}<\frac{\delta}{2}

である。ゆえにLj⊆D(cj,δ)L_{j}\subseteq D(c_{j},\delta)である。

D(cj,δ)D(c_{j},\delta)は凸であるから星形であり、ggがUUの上で正則ならば定理 4.1によりggはD(cj,δ)D(c_{j},\delta)の上で原始関数FjF_{j}をもつ。弧と折れ線はどちらもD(cj,δ)D(c_{j},\delta)に含まれ、始点と終点を共有するので、§E5.4 定理 4.2により

∫γ∣[tj−1,tj]g=Fj(γ(tj))−Fj(cj)=∫Ljg\int_{\gamma|_{[t_{j-1},t_{j}]}}g=F_{j}(\gamma(t_{j}))-F_{j}(c_{j})=\int_{L_{j}}g

である。jjについて加え、長さが00の線分をすべて省いてから§E5.4 命題 2.6を用いる。非退化な線分が残らない場合はσγ=0\sigma_{\gamma}=0とし、残る場合はそれらをつないだ閉じた折れ線をσγ\sigma_{\gamma}とする。どちらの場合も∫γg=∫σγg\int_{\gamma}g=\int_{\sigma_{\gamma}}gを得る。σγ\sigma_{\gamma}が閉じているのは、γ(tN)=γ(t0)\gamma(t_{N})=\gamma(t_{0})だからである。

Γ\Gammaの各閉曲線についてこの操作を行い、同じ整数係数を与えたものをσ\sigmaとすると、∣σ∣⊆U|\sigma|\subseteq Uであり、UUの上で正則なすべてのggについて∫Γg=∫σg\int_{\Gamma}g=\int_{\sigma}gが成り立つ。p∉Up\notin Uのときz↦1/(z−p)z\mapsto1/(z-p)はUUの上で正則であるから、回転数についての主張も従う。▨

定義 6.2. 辺が座標軸に平行な有限折れ線サイクルσ\sigmaを取る。σ\sigmaの線分がのる水平線と垂直線、およびそれらの端点を通る水平線と垂直線を全て集める。次に、∣σ∣|\sigma|を含む開長方形W=(a0,b0)×(c0,d0)W=(a_{0},b_{0})\times(c_{0},d_{0})を一つ取り、WWの左側と右側に垂直線を二本ずつ、WWの下側と上側に水平線を二本ずつ加える。こうして得た有限個の水平線y=c1<⋯<cMy=c_{1}<\cdots<c_{M}と垂直線x=d1<⋯<dLx=d_{1}<\cdots<d_{L}からなる図形を格子 (grid) と呼ぶ。したがってd1<d2<a0d_{1}<d_{2}<a_{0}、b0<dL−1<dLb_{0}<d_{L-1}<d_{L}、c1<c2<c0c_{1}<c_{2}<c_{0}、d0<cM−1<cMd_{0}<c_{M-1}<c_{M}である。この格子は平面を、有限個の有界な開長方形(セル (cell))と、有限個の非有界な部分へ分ける。二つの格子線の交点で区切られた線分を格子の辺 (edge) といい、垂直な辺には上向き、水平な辺には右向きの向きを与えて有向辺 (oriented edge) という。有向辺は有限個である。

構成により次の二つが成り立つ。第一に、σ\sigmaの各線分は有向辺の和である。第二に、∣σ∣⊆W|\sigma|\subseteq Wであるから、σ\sigmaの線分がのる格子線はd2,…,dL−1d_{2},\ldots,d_{L-1}とc2,…,cM−1c_{2},\ldots,c_{M-1}のいずれかである。垂直線djd_{j}(1<j<L1<j<L)の上の有向辺は、左右に(dj−1,dj)(d_{j-1},d_{j})と(dj,dj+1)(d_{j},d_{j+1})をxxの範囲とする有界なセルをもち、水平線についても同様であるから、σ\sigmaの線分に含まれる各有向辺は両側に有界なセルをもつ。

さらに、最外周の一列のセル、すなわちd1d_{1}、dLd_{L}、c1c_{1}、cMc_{M}のいずれかの上に辺をもつセルについて、次が成り立つ。そのようなセルは、x<a0x<a_{0}、x>b0x>b_{0}、y<c0y<c_{0}、y>d0y>d_{0}のいずれかの開半平面に含まれる。これらの半平面はWWと交わらないので∣σ∣|\sigma|とも交わらず、凸であるから§E5.1 命題 1.4により連結であり、また非有界である。連結な部分集合はC∖∣σ∣\mathbb C\setminus|\sigma|の一つの連結成分に含まれ、非有界であるからその成分は非有界である。ゆえに命題 5.4により、これらの半平面の上でn(σ,⋅)=0n(\sigma,\cdot)=0である。

サイクルΓ=∑jnjγj\Gamma=\sum_{j}n_{j}\gamma_{j}が上の格子について有向辺による表示をもつ (admit an oriented-edge presentation) とは、各jjについてγj\gamma_{j}の定義域の分割が与えられ、各小区間へのγj\gamma_{j}の制限が、一つの有向辺を、その向きまたは逆向きに狭義単調に一度たどる曲線であることをいう。ここで狭義単調とは、その有向辺の一次のパラメータ表示に対して、パラメータが小区間の上で狭義単調な関数になることをいう。本記事で構成する表示は、いずれも線分のアフィンなパラメータ表示によるので、この条件を満たす。

このとき、各有向辺eeについて、γj\gamma_{j}がeeを与えられた向きにたどる小区間の個数から逆向きにたどる小区間の個数を引いた整数をkj,ek_{j,e}と書き、

μe(Γ)=∑jnj kj,e\mu_{e}(\Gamma)=\sum_{j}n_{j}\,k_{j,e}

を Γ\Gammaのeeにおける重み (weight ofΓ\Gammaatee) という。表示に現れない有向辺についてはμe(Γ)=0\mu_{e}(\Gamma)=0である。同じ閉曲線に付いた係数をまとめる操作、零係数の項の除去、および分割点の追加はμe(Γ)\mu_{e}(\Gamma)を変えない。したがって重みは、形式和の項の順序や零係数を含む表示には依存しない。定義から、二つのサイクルの和と符号の反転について

μe(Γ1+Γ2)=μe(Γ1)+μe(Γ2),μe(−Γ)=−μe(Γ)\mu_{e}(\Gamma_{1}+\Gamma_{2})=\mu_{e}(\Gamma_{1})+\mu_{e}(\Gamma_{2}),\qquad \mu_{e}(-\Gamma)=-\mu_{e}(\Gamma)

が成り立つ。ここで和は、二つの表示を並べたものを表示とする。

E(Γ)=⋃e: μe(Γ)≠0eE(\Gamma)=\bigcup_{e:\,\mu_{e}(\Gamma)\ne0}e

を Γ\Gammaの正味の台 (net support ofΓ\Gamma) という。右辺の添字集合が空ならばE(Γ)=∅E(\Gamma)=\varnothingとする。正味の台は∣Γ∣|\Gamma|に含まれるが、一致するとは限らない。

補題 6.3.Γ\Gammaを有向辺による表示をもつサイクルとし、ggを∣Γ∣|\Gamma|の上の連続関数とする。このとき

∫Γg(z) dz=∑eμe(Γ)∫eg(z) dz\int_{\Gamma}g(z)\,dz=\sum_{e}\mu_{e}(\Gamma)\int_{e}g(z)\,dz

が成り立つ。ここで∫e\int_{e}は、有向辺eeをその向きに一定の速さでたどる曲線に沿う積分である。

証明.γj\gamma_{j}の表示の分割をt0<⋯<trt_{0}<\cdots<t_{r}とする。§E5.4 命題 2.6により∫γjg=∑l∫γj∣[tl−1,tl]g\int_{\gamma_{j}}g=\sum_{l}\int_{\gamma_{j}|_{[t_{l-1},t_{l}]}}gである。各小区間への制限は、ある有向辺eeをその向きに狭義単調にたどる曲線であるか、逆向きに狭義単調にたどる曲線である。前者の場合、その制限曲線はeeの標準の径数表示の、狭義単調増加な全単射による再パラメータ化であるから§E5.4 命題 2.5 (1)により積分は∫eg\int_{e}gに等しい。後者の場合、§E5.4 命題 2.5 (2)により積分は−∫eg-\int_{e}gに等しい。eeごとにまとめると∫γjg=∑ekj,e∫eg\int_{\gamma_{j}}g=\sum_{e}k_{j,e}\int_{e}gであり、njn_{j}を掛けてjjについて加えると主張を得る。▨

補題 6.4.Γ\Gammaを有向辺による表示をもつサイクルとし、p∈C∖E(Γ)p\in\mathbb C\setminus E(\Gamma)に対して

NΓ(p)=12πi∑e: μe(Γ)≠0μe(Γ)∫edzz−pN_{\Gamma}(p)=\frac{1}{2\pi i}\sum_{e:\,\mu_{e}(\Gamma)\ne0}\mu_{e}(\Gamma)\int_{e}\frac{dz}{z-p}

と定める。和は重みが00でない有向辺だけにわたる。E(Γ)=∅E(\Gamma)=\varnothingならば右辺は空和であり、NΓN_{\Gamma}は全平面で00である。重みが00の辺を加えても値は変わらないが、ppがその辺の上にある場合には積分が定まらないので、和の範囲をこのように限る。このとき次が成り立つ。

  1. NΓN_{\Gamma}はC∖E(Γ)\mathbb C\setminus E(\Gamma)の上で定まり、連続である。
  2. p∉∣Γ∣p\notin|\Gamma|ならばNΓ(p)=n(Γ,p)N_{\Gamma}(p)=n(\Gamma,p)である。
  3. NΓN_{\Gamma}はC∖E(Γ)\mathbb C\setminus E(\Gamma)の上で整数値をとり、局所的に定数である。
  4. NΓ1+Γ2=NΓ1+NΓ2N_{\Gamma_{1}+\Gamma_{2}}=N_{\Gamma_{1}}+N_{\Gamma_{2}}とN−Γ=−NΓN_{-\Gamma}=-N_{\Gamma}が、いずれの側も定まる点で成り立つ。
  5. 同じサイクルΓ\Gammaの二つの有向辺による表示から定まる二つの関数は、双方が定まる点で一致する。したがってNΓN_{\Gamma}の値は、表示ではなくサイクルΓ\Gammaによって定まる。

証明.(1)を示す。和に現れるのはμe(Γ)≠0\mu_{e}(\Gamma)\ne0である有向辺だけであり、p∉E(Γ)p\notin E(\Gamma)ならばppはそのどの辺にも属さないので、各項は定まる。E(Γ)=∅E(\Gamma)=\varnothingならばNΓ≡0N_{\Gamma}\equiv0であるから連続である。E(Γ)≠∅E(\Gamma)\ne\varnothingの場合には、E(Γ)E(\Gamma)は有限個の閉線分の和なのでコンパクトである。p0∉E(Γ)p_{0}\notin E(\Gamma)とし、§E2.19 定理 4.4により2ρ=dist⁡(p0,E(Γ))>02\rho=\operatorname{dist}(p_{0},E(\Gamma))>0とおく。∣p−p0∣<ρ|p-p_{0}|<\rhoのとき、E(Γ)E(\Gamma)の上で∣z−p∣≥ρ|z-p|\ge\rhoかつ∣z−p0∣≥2ρ|z-p_{0}|\ge2\rhoであるから

∣1z−p−1z−p0∣=∣p−p0∣∣z−p∣ ∣z−p0∣≤∣p−p0∣2ρ2\left|\frac{1}{z-p}-\frac{1}{z-p_{0}}\right| =\frac{|p-p_{0}|}{|z-p|\,|z-p_{0}|}\le\frac{|p-p_{0}|}{2\rho^{2}}

である。各辺の長さの和をΛ\Lambda、重みの絶対値の最大をKKとすると、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により

∣NΓ(p)−NΓ(p0)∣≤12π KΛ ∣p−p0∣2ρ2|N_{\Gamma}(p)-N_{\Gamma}(p_{0})|\le\frac{1}{2\pi}\,K\Lambda\,\frac{|p-p_{0}|}{2\rho^{2}}

であり、右辺はp→p0p\to p_{0}で00へ収束する。

(2)は、p∉∣Γ∣p\notin|\Gamma|のときz↦1/(z−p)z\mapsto1/(z-p)が∣Γ∣|\Gamma|の上で連続であるから、補題 6.3をこの関数へ適用して回転数の定義(定義 1.1)と比べればよい。

(3)を示す。まず、有限個の線分の和∣Γ∣|\Gamma|が内部をもたないことを直接に確かめる。各線分に平行な方向は有限個しかないので、それらのどれとも平行でないベクトルv≠0v\ne0を選ぶことができる。任意のp∈Cp\in\mathbb Cとr>0r>0に対し、直線p+tvp+tvは各線分と高々一点で交わる。したがって∣t∣<r/∣v∣|t|<r/|v|を満たす実数のうち、有限個の交点に対応する値を避けてttを選ぶことができる。このときp+tv∈B(p,r)∖∣Γ∣p+tv\in B(p,r)\setminus|\Gamma|である。ゆえに、どの開球も∣Γ∣|\Gamma|に含まれず、∣Γ∣|\Gamma|の内部は空である。

E(Γ)E(\Gamma)は有限個の閉線分の和なので閉集合である。p∈C∖E(Γ)p\in\mathbb C\setminus E(\Gamma)の相対近傍VVを任意に取る。補集合は開いているので、あるr>0r>0についてB(p,r)⊆V⊆C∖E(Γ)B(p,r)\subseteq V\subseteq\mathbb C\setminus E(\Gamma)とすることができる。上の議論によりこの球は∣Γ∣|\Gamma|に属さない点を含む。したがってC∖∣Γ∣\mathbb C\setminus|\Gamma|はC∖E(Γ)\mathbb C\setminus E(\Gamma)の中で稠密である。(2)と定理 5.2により、NΓN_{\Gamma}はこの稠密な部分集合の上で整数値をとる。整数の全体はC\mathbb Cの閉集合でありNΓN_{\Gamma}は連続であるから、NΓN_{\Gamma}はC∖E(Γ)\mathbb C\setminus E(\Gamma)の全体で整数値をとる。連続で整数値をとる関数は、∣NΓ(p)−NΓ(p0)∣<1|N_{\Gamma}(p)-N_{\Gamma}(p_{0})|<1となる近傍の上で定数であるから、局所的に定数である。

(4)は定義 6.2の重みの加法性から従う。

(5)を示す。二つの表示から定まる関数をN,N~N,\tilde Nとし、それぞれの正味の台をE,E~E,\tilde Eとする。台∣Γ∣|\Gamma|は表示によらずサイクルから定まる(§E5.4 定義 3.1)。p∉∣Γ∣p\notin|\Gamma|ならば、(2)によりN(p)=n(Γ,p)=N~(p)N(p)=n(\Gamma,p)=\tilde N(p)である。p∈C∖(E∪E~)p\in\mathbb C\setminus(E\cup\tilde E)を取る。N−N~N-\tilde Nはこの開集合の上で連続であり、(3)の証明と同じ理由によりC∖∣Γ∣\mathbb C\setminus|\Gamma|はこの開集合の中で稠密であるから、N−N~N-\tilde Nはこの開集合の上で恒等的に00である。▨

補題 6.5.ρ\rhoを有向辺による表示をもつサイクル、e0e_{0}を有向辺とし、AAとBBをe0e_{0}の両側にある有界なセルで、AAがe0e_{0}の向きに対して左側、BBが右側にあるものとする。zA∈Az_{A}\in A、zB∈Bz_{B}\in Bとすると

Nρ(zA)−Nρ(zB)=μe0(ρ)N_{\rho}(z_{A})-N_{\rho}(z_{B})=\mu_{e_{0}}(\rho)

が成り立つ。

証明. セルは開長方形であり、その点はどの格子線にも属さないので、zAz_{A}とzBz_{B}はどの有向辺にも属さない。したがってNρN_{\rho}は両点で定まる。

AAの閉包をRAR_{A}とし、∂RA\partial R_{A}を正向きの四有向辺として表す。AAはe0e_{0}の左側にあるから、e0e_{0}は∂RA\partial R_{A}の中にその向きでちょうど一度現れ、他の三辺はe0e_{0}と異なる。すなわちμe0(∂RA)=1\mu_{e_{0}}(\partial R_{A})=1である。

ρ′=ρ+(−μe0(ρ))∂RA\rho'=\rho+\bigl(-\mu_{e_{0}}(\rho)\bigr)\partial R_{A}とおき、二つの表示を並べたものをρ′\rho'の表示とする。重みの加法性によりμe0(ρ′)=0\mu_{e_{0}}(\rho')=0であるから、e0e_{0}はE(ρ′)E(\rho')に含まれない。e0e_{0}の中点を通りe0e_{0}に垂直な線分を、e0e_{0}の中点の十分近くに取ると、その線分はAA、e0e_{0}の内部、BBの和に含まれる。AAとBBの点はどの有向辺にも属さず、e0e_{0}の内部の点はE(ρ′)E(\rho')に属さないので、この線分はC∖E(ρ′)\mathbb C\setminus E(\rho')に含まれる。ゆえにzAz_{A}とzBz_{B}を線分の両端に取れば、両者はC∖E(ρ′)\mathbb C\setminus E(\rho')の同じ連結成分に属する。補題 6.4 (3)によりNρ′N_{\rho'}は局所的に定数である。また補題 5.1によりC∖E(ρ′)\mathbb C\setminus E(\rho')の各連結成分は領域であるから、§E5.1 命題 1.5を各連結成分へ適用するとNρ′N_{\rho'}はその成分の上で定数であるから、Nρ′(zA)=Nρ′(zB)N_{\rho'}(z_{A})=N_{\rho'}(z_{B})である。同じ理由によりNρ′N_{\rho'}はセルAAとBBのそれぞれの上で定数であるから、この等式はzA∈Az_{A}\in AとzB∈Bz_{B}\in Bの取り方によらない。

∂RA\partial R_{A}については、zA,zB∉∣∂RA∣z_{A},z_{B}\notin|\partial R_{A}|であるから補題 6.4 (2)と命題 5.6によりN∂RA(zA)=1N_{\partial R_{A}}(z_{A})=1、N∂RA(zB)=0N_{\partial R_{A}}(z_{B})=0である。補題 6.4 (4)により

Nρ(zA)−Nρ(zB)=(Nρ′(zA)−Nρ′(zB))+μe0(ρ)(1−0)=μe0(ρ)N_{\rho}(z_{A})-N_{\rho}(z_{B}) =\bigl(N_{\rho'}(z_{A})-N_{\rho'}(z_{B})\bigr)+\mu_{e_{0}}(\rho)\bigl(1-0\bigr)=\mu_{e_{0}}(\rho)

を得る。▨

定理 6.6 (Cauchy–Goursat の一般形).U⊆CU\subseteq\mathbb Cを開集合、ffをUUの上の正則関数とし、Γ\GammaをUUの内部で零ホモローグなサイクルとする。このとき

∫Γf(z) dz=0\int_{\Gamma}f(z)\,dz=0

が成り立つ。

証明.Γ=0\Gamma=0ならば積分は空和として00である。以下ではΓ≠0\Gamma\ne0とする。

補題 6.1により、辺が座標軸に平行な線分だけからなるサイクルσ\sigmaで∣σ∣⊆U|\sigma|\subseteq Uを満たし、UUの上で正則なすべてのggについて∫Γg=∫σg\int_{\Gamma}g=\int_{\sigma}gかつp∉Up\notin Uについてn(Γ,p)=n(σ,p)n(\Gamma,p)=n(\sigma,p)となるものを取る。仮定により、p∉Up\notin Uについてn(σ,p)=n(Γ,p)=0n(\sigma,p)=n(\Gamma,p)=0である。

σ=0\sigma=0ならば∫Γf=∫σf=0\int_{\Gamma}f=\int_{\sigma}f=0である。以下ではσ≠0\sigma\ne0とする。

σ\sigmaから定義 6.2の格子を作る。各線分は有向辺の和であるから、σ\sigmaは定義 6.2の意味で有向辺による表示をもつ。

有界なセルをA1,…,AKA_{1},\ldots,A_{K}とし、各AiA_{i}から一点ziz_{i}を選んでmi=n(σ,zi)m_{i}=n(\sigma,z_{i})とおく。セルの点はどの格子線にも属さないのでzi∉∣σ∣z_{i}\notin|\sigma|であり、この値は定まる。また命題 5.4により、n(σ,⋅)n(\sigma,\cdot)はセルAiA_{i}の上で定数mim_{i}である。

mi≠0m_{i}\ne0であるセルについて、その閉包RiR_{i}がUUに含まれることを示す。q∈Riq\in R_{i}かつq∉Uq\notin Uと仮定する。∣σ∣⊆U|\sigma|\subseteq Uであるからq∉∣σ∣q\notin|\sigma|であり、命題 5.4によりn(σ,⋅)n(\sigma,\cdot)はqqのある近傍で定数である。その近傍は開集合AiA_{i}と交わるので、その定数はmim_{i}であり、n(σ,q)=min(\sigma,q)=m_{i}である。一方q∉Uq\notin Uであるからn(σ,q)=0n(\sigma,q)=0であり、mi=0m_{i}=0となって仮定に反する。ゆえにRi⊆UR_{i}\subseteq Uである。

そこで

τ=∑i: mi≠0mi ∂Ri\tau=\sum_{i:\,m_{i}\ne0}m_{i}\,\partial R_{i}

とおく。各∂Ri\partial R_{i}を四つの有向辺の列として表せば、τ\tauは有向辺による表示をもち、∣τ∣⊆U|\tau|\subseteq Uである。ρ=σ+(−1)τ\rho=\sigma+(-1)\tauとおき、二つの表示を並べたものをρ\rhoの表示とする。形式和を整理すると台から曲線が消える場合があるので、∣ρ∣⊆∣σ∣∪∣τ∣⊆U|\rho|\subseteq|\sigma|\cup|\tau|\subseteq Uである。

各セルの点ziz_{i}においてNρ(zi)=0N_{\rho}(z_{i})=0であることを示す。ziz_{i}は格子線上にないのでzi∉∣σ∣∪∣τ∣z_i\notin|\sigma|\cup|\tau|、したがってzi∉∣ρ∣z_{i}\notin|\rho|である。補題 6.4 (2)と補題 6.4 (4)によりNρ(zi)=n(σ,zi)−n(τ,zi)N_{\rho}(z_{i})=n(\sigma,z_{i})-n(\tau,z_{i})である。命題 5.6により、j≠ij\ne iならばzi∉Rjz_{i}\notin R_{j}であるからn(∂Rj,zi)=0n(\partial R_{j},z_{i})=0であり、j=ij=iのときはn(∂Ri,zi)=1n(\partial R_{i},z_{i})=1である。したがってn(τ,zi)=mi=n(σ,zi)n(\tau,z_{i})=m_{i}=n(\sigma,z_{i})であり、Nρ(zi)=0N_{\rho}(z_{i})=0である。

すべての有向辺eeについてμe(ρ)=0\mu_{e}(\rho)=0であることを示す。eeがσ\sigmaの表示にもτ\tauの表示にも現れないならば、定義によりμe(ρ)=0\mu_{e}(\rho)=0である。現れる場合を考える。σ\sigmaの表示に現れる有向辺は、格子の構成により両側に有界なセルをもつ。

τ\tauの表示に現れる有向辺について示す。τ\tauに現れるのはmi≠0m_{i}\ne0であるセルAiA_{i}の閉包の辺である。格子の構成の最後に述べたとおり、最外周の一列のセルはn(σ,⋅)=0n(\sigma,\cdot)=0となる開半平面に含まれるので、そのようなセルではmi=0m_{i}=0である。したがってmi≠0m_{i}\ne0であるセルは最外周の一列に属さず、Ai=(dj,dj+1)×(ck,ck+1)A_{i}=(d_{j},d_{j+1})\times(c_{k},c_{k+1})と書いたとき2≤j≤L−22\le j\le L-2かつ2≤k≤M−22\le k\le M-2である。その閉包の辺がのる格子線はdj,dj+1,ck,ck+1d_{j},d_{j+1},c_{k},c_{k+1}であり、いずれもd2,…,dL−1d_{2},\ldots,d_{L-1}またはc2,…,cM−1c_{2},\ldots,c_{M-1}に属するから、それらの有向辺も両側に有界なセルをもつ。

したがって、eeの両側の有界なセルをAA(左)とBB(右)とすることができ、補題 6.5により

μe(ρ)=Nρ(zA)−Nρ(zB)=0−0=0\mu_{e}(\rho)=N_{\rho}(z_{A})-N_{\rho}(z_{B})=0-0=0

である。ここでzAz_{A}とzBz_{B}はAAとBBの点である。NρN_{\rho}は補題 6.4 (3)により局所的に定数であり、セルAAとBBは領域であるから、§E5.1 命題 1.5によりNρN_{\rho}はそれぞれのセルの上で定数である。その値は、そのセルから選んだ点ziz_{i}における値00に等しい。

ゆえに、重みの加法性からすべての有向辺でμe(σ)=μe(τ)\mu_{e}(\sigma)=\mu_{e}(\tau)である。この等式は、隣り合う二つのセルが共有する有向辺について、τ\tauの側の重みが二つの係数の差mi−mjm_{i}-m_{j}になって内部で相殺し、残った重みがσ\sigmaの重みに一致することを述べている。

ffはUUの上で正則であり∣σ∣∪∣τ∣⊆U|\sigma|\cup|\tau|\subseteq Uであるから、ffは∣σ∣|\sigma|と∣τ∣|\tau|の上で連続である。補題 6.3をσ\sigmaとτ\tauのそれぞれへ適用すると

∫σf(z) dz=∑eμe(σ)∫ef(z) dz=∑eμe(τ)∫ef(z) dz=∫τf(z) dz\int_{\sigma}f(z)\,dz=\sum_{e}\mu_{e}(\sigma)\int_{e}f(z)\,dz =\sum_{e}\mu_{e}(\tau)\int_{e}f(z)\,dz=\int_{\tau}f(z)\,dz

である。ここで、和に現れる有向辺はσ\sigmaまたはτ\tauの表示に現れるものだけであり、いずれもUUに含まれる。

最後に、mi≠0m_{i}\ne0である各iiについてRi⊆UR_{i}\subseteq Uである。各RiR_iは対角線によって二個の三角形へ有限分割されるため、定理 3.1を適用して内部の対角線を相殺する系 3.2により∮∂Rif(z) dz=0\oint_{\partial R_{i}}f(z)\,dz=0である。したがって

∫Γf(z) dz=∫σf(z) dz=∫τf(z) dz=∑i: mi≠0mi∮∂Rif(z) dz=0\int_{\Gamma}f(z)\,dz=\int_{\sigma}f(z)\,dz=\int_{\tau}f(z)\,dz =\sum_{i:\,m_{i}\ne0}m_{i}\oint_{\partial R_{i}}f(z)\,dz=0

である。▨

注意 6.7 (零ホモローグ性を外すと結論は成り立たない).U=C∖{0}U=\mathbb C\setminus\{0\}、f(z)=1/zf(z)=1/z、Γ\Gammaを単位円周とすると、ffはUUの上で正則であるが∫Γf=2πi≠0\int_{\Gamma}f=2\pi i\ne0である(§E5.4 例 3.3)。このときn(Γ,0)=1≠0n(\Gamma,0)=1\ne0であり、Γ\GammaはUUの内部で零ホモローグでない。したがって定理 6.6の零ホモローグ性は必要である。

7 ホモトピーと単連結領域への帰結

Cauchy–Goursat の一般形は、回転数で表した大域的な障害をもつサイクルを扱う。ここでは、閉曲線のホモトピーが積分を変えないことを直接に示し、縮約可能な閉曲線と単連結領域に対する形を得る。C\mathbb Cを実数の組と同一視すると(§E1.14 定義 4.1)、∣z−w∣|z-w|はR2\mathbb R^{2}の Euclid 距離(§E2.1 定義 3.2)に一致するので、以下では位相空間論 I のコンパクト性(§E2.19 定義 2.1)に関する結果を用いる。

命題 7.1.ggが開集合UUの上で正則であり、HHが定義 2.1の意味でUUの中の区分的に一階連続微分可能な閉曲線C0C_{0}とC1C_{1}の間のホモトピーであるとする。このとき

∫C0g(z) dz=∫C1g(z) dz\int_{C_{0}}g(z)\,dz=\int_{C_{1}}g(z)\,dz

が成り立つ。

証明.[0,1]2[0,1]^{2}はコンパクトであり(§E2.9 定理 4.3)HHは連続であるから、§E2.19 定理 4.2により得られたH([0,1]2)H([0,1]^{2})はコンパクトであり、UUに含まれる。各点w∈H([0,1]2)w\in H([0,1]^{2})について、閉包がUUに含まれる開円板BwB_{w}を取り、コンパクト性と§E2.19 命題 2.6により有限個B1,…,BmB_{1},\ldots,B_{m}を選んでH([0,1]2)H([0,1]^{2})を覆う。開円板は星形であるから、定理 4.1によりggは各BjB_{j}の上で原始関数をもつ。

開被覆H−1(B1),…,H−1(Bm)H^{-1}(B_{1}),\ldots,H^{-1}(B_{m})へ Lebesgue 数補題(§E2.9 補題 2.3)を適用してδ>0\delta>0を得る。ここで[0,1]2[0,1]^2は§E2.9 定理 4.3によりコンパクトであり、§E2.9 定理 3.1により点列コンパクトである。HHに適合する有限三角形分割(定義 2.1)を、各小三角形の直径がδ\delta未満になるまで有限回細分する。Lebesgue 数補題の後半により、得られた各閉小三角形QQは一つのH−1(Bj)H^{-1}(B_j)に含まれる。QQは元の適合分割の一つの三角形に含まれるので、HHのQQへの制限は一階連続微分可能であり、H(∂Q)H(\partial Q)は閉じた区分的に一階連続微分可能な曲線である。またH(∂Q)H(\partial Q)は対応するBjB_jの中の曲線である。ggはBjB_{j}の上に原始関数をもつので、§E5.4 定理 4.2により

∫H(∂Q)g(z) dz=0\int_{H(\partial Q)}g(z)\,dz=0

である。すべての小三角形について加えると、隣り合う二つの小三角形が共有する辺は、同じHHの像を互いに逆向きに一度ずつ通るので§E5.4 命題 2.5により相殺する。残るのは[0,1]2[0,1]^{2}の外周の像であり、t=0t=0の辺とt=1t=1の辺は閉曲線の条件H(s,0)=H(s,1)H(s,0)=H(s,1)により互いに相殺する。したがって∫C1g−∫C0g=0\int_{C_{1}}g-\int_{C_{0}}g=0である。▨

定理 7.2 (縮めることができる閉曲線に対する Cauchy の積分定理).ffが開集合DDの上で正則であるとする。DDの中の区分的に一階連続微分可能な閉曲線CCがDDの中で縮めることができるならば

∮Cf(z) dz=0\oint_{C}f(z)\,dz=0

が成り立つ。とくにDDが単連結ならば、DDの中の任意の区分的に一階連続微分可能な閉曲線に沿う積分は00である。

証明.CCを定数閉曲線C1C_{1}へ縮めるホモトピーに命題 7.1を適用する。C1′≡0C_{1}'\equiv0なので∫C1f=0\int_{C_1}f=0であり、∮Cf=0\oint_Cf=0を得る。単連結の場合は補題 2.3により、任意の区分的に一階連続微分可能な閉曲線をこの意味で縮めることができる。▨

8 系

系 8.1.DDを単連結な領域とし、ffをDDの上の正則関数とする。このとき、DDの中の任意の区分的に一階連続微分可能な閉曲線CC、さらにDDの中の任意のサイクルΓ\Gammaについて

∮Cf(z) dz=0,∫Γf(z) dz=0\oint_{C}f(z)\,dz=0,\qquad \int_{\Gamma}f(z)\,dz=0

が成り立つ。とくに、DDの中の任意のサイクルはDDの内部で零ホモローグである。

証明. 閉曲線の等式は定理 7.2である。p∉Dp\notin Dを取るとz↦1/(z−p)z\mapsto1/(z-p)はDDの上で正則であるから、閉曲線に対する主張をΓ\Gammaの各閉曲線へ適用してn(Γ,p)=0n(\Gamma,p)=0を得る。すなわちΓ\GammaはDDの内部で零ホモローグであり、定理 6.6により∫Γf=0\int_{\Gamma}f=0である。▨

系 8.2.DDを単連結な領域とし、ffをDD上の正則関数とする。このときDD上の正則関数FFが存在してF′=fF'=fを満たす。FFは複素数の定数を加える違いを除いて一意である。

証明.z0∈Dz_{0}\in Dを固定する。§E5.1 命題 1.4により任意のz∈Dz\in Dはz0z_{0}とDDに含まれる折れ線で結ぶことができる。二本の折れ線LLとL~\tilde Lが同じ端点をもつとき、LLの後にL~\tilde Lを逆向きにたどった閉曲線CCについて、系 8.1により∮Cf=0\oint_{C}f=0であり、§E5.4 命題 2.5および§E5.4 命題 2.6により∫Lf=∫L~f\int_{L}f=\int_{\tilde L}fである。したがって

F(z)=∫Lf(w) dw(L は z0 から z への D 内の折れ線)F(z)=\int_{L}f(w)\,dw\qquad(L \text{ は } z_{0} \text{ から } z \text{ への } D \text{ 内の折れ線})

はLLの選び方によらず定まる。

z∈Dz\in Dを固定し、D(z,ρ)⊆DD(z,\rho)\subseteq Dを満たすρ>0\rho>0を取る。∣h∣<ρ|h|<\rhoならば[z,z+h]⊆D[z,z+h]\subseteq Dであり、z0z_{0}からzzへの折れ線にこの線分をつないだものがz0z_{0}からz+hz+hへの折れ線であるから

F(z+h)−F(z)=∫[z,z+h]f(w) dwF(z+h)-F(z)=\int_{[z,z+h]}f(w)\,dw

である。ffはzzで連続なので、任意のε>0\varepsilon>0に対し、∣h∣|h|が十分小さければ[z,z+h][z,z+h]の上で∣f(w)−f(z)∣≤ε|f(w)-f(z)|\le\varepsilonが成り立つ。定数関数f(z)f(z)の同じ線分に沿う積分はf(z)hf(z)hであるから、ML 不等式(§E5.4 命題 3.2)により

∣F(z+h)−F(z)−f(z)h∣=∣∫[z,z+h](f(w)−f(z)) dw∣≤ε∣h∣\left|F(z+h)-F(z)-f(z)h\right| =\left|\int_{[z,z+h]}\bigl(f(w)-f(z)\bigr)\,dw\right|\le\varepsilon|h|

である。h≠0h\ne0について∣h∣|h|で割り、h→0h\to0とするとF′(z)=f(z)F'(z)=f(z)を得る。

一意性について、FFとF~\widetilde Fがともに原始関数ならば(F−F~)′=0(F-\widetilde F)'=0である。§E5.4 命題 4.3をF−F~F-\widetilde Fへ適用すると、F−F~F-\widetilde Fは定数である。▨

注意 8.3 (ホモトピー不変性との関係).命題 7.1は、二つの閉曲線がUUの中でホモトピックであれば積分が等しいことを述べている。この主張をg(z)=1/(z−p)g(z)=1/(z-p)(p∉Up\notin U)へ適用すると、ホモトピックな二つの閉曲線はppに関して同じ回転数をもつ。したがって、C0C_{0}とC1C_{1}がホモトピックならばサイクルC0−C1C_{0}-C_{1}はUUの内部で零ホモローグであり、定理 6.6からも∫C0f=∫C1f\int_{C_{0}}f=\int_{C_{1}}fが従う。したがってホモトピーによる不変性は一般形からも従う。零ホモローグ性とホモトピーの一般的な関係は本記事の範囲外である。

9 演習

問題 9.1 (Green の証明と Goursat の証明).命題 1.4ではu,vu,vの一階連続微分可能性をどこで用いるかを特定せよ。さらに、定理 3.1の証明がf′f'の連続性を用いずに閉じる理由を述べよ。

解答.

Green の定理を二つの実線積分へ適用するために、u,vu,vの一階偏導関数の連続性を用いる。その後、 Cauchy–Riemann 方程式によって二つの面積分の被積分関数を00にする。Goursat の証明は、一点z0z_0での複素微分可能性から得る剰余評価を、直径と周長がともに半減する三角形列へ適用する。したがって必要なのはf′(z0)f'(z_0)の存在だけであり、f′f'の近傍での連続性ではない。▨

参考文献

  1. Lars V. Ahlfors, Complex Analysis, 3rd ed., AMS Chelsea Publishing 385, American Mathematical Society, Providence, R.I., 2021, originally published 1979.回転数と零ホモローグ性による Cauchy の積分定理の一般形を参考にした。
  2. Serge Lang, Complex Analysis, 4th ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1999.長方形の格子による Artin の証明を参考にした。
  3. Robert B. Burckel, An Introduction to Classical Complex Analysis, vol. 1, Birkhäuser, Basel, 1979.回転数の整数値性と格子による分割を参考にした。

前提記事